特許第5831079号(P5831079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831079
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】誘電体磁器組成物および電子部品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/468 20060101AFI20151119BHJP
   H01B 3/12 20060101ALI20151119BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20151119BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   C04B35/46 D
   H01B3/12 313D
   H01B3/12 303
   H01G4/12 358
   H01G4/30 301E
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-203496(P2011-203496)
(22)【出願日】2011年9月16日
(65)【公開番号】特開2013-63876(P2013-63876A)
(43)【公開日】2013年4月11日
【審査請求日】2014年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】塚田 岳夫
(72)【発明者】
【氏名】和田 智志
(72)【発明者】
【氏名】山下 健太
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−227482(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/155945(WO,A1)
【文献】 AHN,C. et al,"Effect of particle size distribution on microstructure and piezoelectric properties of MnO2-added 0,Journal of Materials Science,2008年 8月13日,Vol.43, No.17,p.6016-6019
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00,35/468
H01B 3/12
H01G 4/12,4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式KNbOで表される第一の相と、一般式BaTiOで表される第二の相との混晶体から成る主成分を有し、副成分としてMn、Siの元素を含有し、前記第一の相と第二の相からなる主成分100mol%としたとき、前記Mnの含有量はMnCO換算で、0.5mol%以上、5.0mol%以下、前記Siの含有量はSiO換算で、0.2mol%以上、3.0mol%以下を満足し、且つ、前記KNbOで表される第一の相の占める割合をaとし、前記BaTiOで表される第二の相の占める割合をbとしたとき、1.2<a/b<5.7の関係を満足することすることを特徴とする誘電体磁器組成物。
【請求項2】
誘電体と電極とを有する電子部品であって、前記誘電体が、請求項に記載の誘電体磁器組成物より成ることを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器組成物および電子部品にかかわり、さらに詳しくは、広範囲の温度範囲で良好な比誘電率と温度特性が得られる誘電体磁器組成物およびその誘電体磁器組成物を用いた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、誘電体磁器組成物及び誘電体磁器コンデンサや圧電素子等の電子部品としては、例えば主成分として(Ba,Sr,Ca)(Ti,Zr)Oを含む磁器組成物が用いられてきた(例えば、特許文献1〜3参照)
これらの組成物において、例えばBaTiOはキュリー点が125℃付近であり、150℃以上の高温領域では、室温の比誘電率に比較して大きく低下してしまい、また、100℃以上の領域では、キュリー点近傍となるために、室温に比べて比誘電率が著しく増大してしまうために、単体では比誘電率の温度変化率が非常に大きく実用に耐えられない。このため、副成分として例えば希土類元素を混入することによって、磁器コンデンサとして実用領域である−55℃〜150℃における比誘電率の温度依存性を制御し、広く産業分野で用いられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−169090号公報
【特許文献2】特開2006−342025号公報
【特許文献3】特開2005−194138号公報 また、例えばPbTiO3−BaZrO3で示されるような2成分系の誘電体磁器成分は、PbTiO3のキュリー点が490℃前後であることを利用して、300℃程度まで比誘電率の温度依存性を比較的少なくできるが、組成にPbを用いなくてはならない。
【0004】
一方、鉛を含有しないニオブ酸系の圧電磁器組成物が周知である。(例えば、特許文献4〜6参照)が、いずれの文献にも、誘電体磁器組成物について広い温度域における比誘電率の温度依存性を少なくすることについては開示されていない。また、特許文献6には、広い温度領域で比誘電率の温度依存性を小さくする試みは行われているが、その温度領域が、−55℃から400℃の範囲で静電容量変化率(ΔC/C)が±22%を超えており必ずしも満足な特性が得られているとは言えない。また、耐電圧については明記されていない。
【0005】
【特許文献4】特開2003−252681号公報
【特許文献5】特開2009−227482号公報
【特許文献6】特開2009−249244号公報
【0006】
例えば車載用途などの電子部品においては、従来においては、例えばEIA規格X8S(−55℃〜150℃)において静電容量変化率が±22%以内(ΔC/C=±22%以内)を満たす誘電体磁器コンデンサが必要とされている。自動車内のスペースをより広くし、より快適な操縦環境を得ようとする場合、電子部品はよりいっそう自動車エンジン周域に近づけて使用されるため、現在規定されているEIA規格で保証されている最高温度よりもさらに高い、150℃を超える温度領域においても、ΔC/C=±22%を満たす誘電体磁器コンデンサが求められている。
【0007】
さらに、SiCやGaN系の半導体を用いたパワーデバイスの使用温度域は400℃付近の高温領域まで求められはじめており、平滑用のコンデンサとして利用するためには、例えば−55〜400℃の温度範囲においてもΔC/C=±22%を満たすことが好ましい。しかしながら、−55〜400℃の温度範囲においてΔC/C=±22%以内を満たす誘電体磁器組成物については何ら記載されていなかった。
【0008】
また、EIA規格X8Sを満たすことのできる誘電体磁器コンデンサで、例えば、BaTiO、SrTiO、CaTiOなどを主成分とする誘電体磁器コンデンサは、希土類元素である、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどの希土類元素を使用することによって、その特性を達成している。これらのレアアースを用いずとも従来のEIA規格X8S特性を達成しうることができれば、希少元素を使用せずとも従来の特性を達成することができ、近年の希少元素の高騰など、市場原理に依存することを防ぐことができる。
【0009】
従来、例えばPbTiOを主成分とすることによって、150℃以上の高い温度でΔC/C=±22%以内を満たす誘電体磁器コンデンサは存在するが、組成にPbが存在するために、原料として例えばPbO、PbO、Pbなどを用いなければならず、生産工程において、これら原料の環境への拡散が起こりうるため、これを解決することは、近年の環境との調和が求められる技術として有望である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような観点から、広範囲な温度領域(例えば、−55〜400℃)において静電容量変化率(例えば、ΔC/C=±22%以内)が小さく、400℃付近の高温領域に至るまでの諸特性に優れ、比誘電率が大きく、耐電圧の高い鉛を含有しないニオブ酸系の誘電体磁器組成物と、その誘電体磁器組成物を用いた電子部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記目的を達成するために、鋭意検討を行った結果、特定組成の誘電体磁器組成物を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、上記課題を解決する本発明に係る誘電体磁器組成物は、一般式KNbOで表される第一の相と、一般式BaTiOで表される第二の相を主成分とし、副成分としてMn及びSiを含有し、前記第一の相と第二の相からなる主成分100mol%としたとき、前記Mnの含有量はMnCO換算で、0.5mol%以上、5.0mol%以下、前記Siの含有量はSiO換算で、0.2mol%以上、3.0mol%以下を満足し、且つ、前記KNbOで表される第一の相の占める割合をaとし、前記BaTiOで表される第二の相の占める割合をbとしたとき、1.2<a/b<5.7の関係を満足することすることを特徴とする。
【0013】
前記第一の相と第二の相からなる主成分100mol%としたとき、前記Mnの含有量はMnCO換算で、0.5mol%以上、5.0mol%以下であることが望ましい。
【0014】
前記第一の相と第二の相からなる主成分100mol%としたとき、前記Siの含有量はSiO換算で、0.2mol%以上、3.0mol%以下であることが望ましい。
【0015】
前記KNbOで表される第一の相の占める割合をaとし、前記BaTiOで表される第二の相の占める割合をbとしたとき、1.2<a/b<5.7の関係を満足することが望ましい。
【0016】
また、これらの前記誘電体磁器組成物を用いて誘電体磁器コンデンサや圧電素子などの電子部品として利用することが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、その主成分に、Pb、Bi、Sbなどの環境に負荷を及ぼす重金属元素を使用することなく広範囲な温度領域(例えば、−55〜400℃)における静電容量変化率が±22%以内に平坦化でき良好な温度特性と高い比誘電率を示すことができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、広範囲の温度領域で高い比誘電率を示すことができ、例えば25℃における比誘電率が500以上の特性を有する誘電体磁器組成物が得られる。
【0019】
また、本発明によれば、副成分としてMn及びSiを含有させることにより、比較的高い耐電圧を示すため、定格電圧の高い電子部品を提供可能となる。
【0020】
したがって、本発明にかかわる誘電体磁器組成物としては、高温領域での使用が求められる車載用途や、さらにより高温領域まで求められている、SiCやGaN系の半導体を用いたパワーデバイス用の平滑用のコンデンサや、自動車のエンジンルーム内のノイズ除去に用いる電子部品として最適である。
【0021】
また、本発明に関わる誘電体磁器組成物は、EIA規格X8S特性(−55℃〜150℃におけるΔC/C=±22%以内)満足できるため、X8S特性のコンデンサとしても利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施形態に基づき説明する。
【0023】
本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、一般式KNbOで表される第一の相と、一般式BaTiOで表される第二の相との混晶体から成る主成分を有し、副成分としてMn、Siの元素を含有することを特徴としている。
【0024】
前記KNbOとBaTiOとの混晶体から成る主成分とすることで、100℃以下では、BaTiOが有する高い比誘電率を利用し、150℃以上では、KNbOが有する高い比誘電率を利用することができる。その結果、−55〜400℃において、500以上の高い比誘電率を示すことができる。
【0025】
更に、KNbOとBaTiOとの含有割合を特定の割合とすることで、上記の温度領域における容量温度特性を平坦化することができ、静電容量の変化率を±22%の範囲内とすることが可能となる。
【0026】
前記第一の相と第二の相からなる主成分を100mol%としたとき、前記Mnの含有量はMnCO換算で、0.5mol%未満では、粒界の抵抗及びBaTiOの絶縁抵抗向上に効果が無いため、10V/mm以上の耐電圧が得られず、一方、5.0mol%を超えてしまうと、緻密な焼結体が得られ難くなるため、耐電圧が10V/mm以下となってしまう。
【0027】
このため、Mnの含有量はMnCO換算で、0.5mol%以上、5.0mol%以下である
【0028】
前記第一の相と第二の相からなる主成分を100mol%としたとき、前記Siの含有量がSiO換算で0.2mol%未満の場合は、粒界の抵抗及びBaTiOとKNbOの固溶抑制に効果が無いため、10V/mm以上の耐電圧が得られず、一方、3.0mol%を超えてしまうと、常誘電体成分が増加してしまい、比誘電率が500未満となってしまう。
【0029】
このため、Siの含有量はSiO換算で、0.2mol%以上、3.0mol%以下である
【0030】
前記KNbOで表される第一の相の占める割合をaとし、前記BaTiOで表される第二の相の占める割合をbとしたとき、a/bが1.2以下の場合には、BaTiOで表される第二の相の占める割合が多くなり、BaTiOの150℃以降の常誘電体への転移により、容量低下が顕著になる。このため、150℃以降の容量温度特性の悪化が著しく、静電容量の変化率±22%以内を満足できなくなる。
【0031】
逆に、a/bが5.7以上のときには、BaTiOで表される第二の相の占める割合が少なくなり、200℃以降のKNbOの斜方晶から正方晶への転移、400℃付近の正方晶から立方晶への転移による比誘電率のピークが顕著に生じるため、150℃以上の温度領域での容量温度特性の悪化が著しく、静電容量の変化率±22%以内を満足できなくなる。
【0032】
このため、前記a、bは1.2<a/b<5.7の関係を満足している
【0033】
本発明に係る電子部品は、誘電体と電極とを有する電子部品であって、前記記載の誘電体磁器組成物で構成して成る誘電体層と、内部電極層とを有している積層型の電子部品。あるいは上記記載の誘電体磁器組成物を用いた電子部品としては、特に限定されないが、セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
【0034】
また、第一の相であるKNbOのKの一部をLiおよびNaから選択される少なくとも1種類で適量置換することや、Nbの一部をTaで適量置換することで、容量温度特性をより制御することが可能となり、良好な温度特性を得ることができる。
【0035】
第二の相であるBaTiOのBaの一部をCa、SrおよびMgから選択される少なくとも1種類で適量置換することや、Tiの一部をZr,Hf,Co,V,Ta,Cr,Mo,W,Mgの中から選択される少なくとも1種類で適量置換することで、容量温度特性をより制御することが可能となり、良好な温度特性を得ることができる。
【0036】
本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、KNbOで表される第一の相と、BaTiOで表される第二の相とを特定の割合で設定したコンポジット構造を取ることで、比誘電率500以上を示し、−55〜400℃という広い温度範囲において、静電容量変化率が±22%を満足し、Mn及びSiを含有することで耐電圧を10kV/mm以上を確保することが可能となる。
【0037】
上記のように、本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、高温領域において良好な特性を示すため、SiCやGaN系のパワーデバイスの使用温度域(たとえば200〜250℃)において好適に用いることができる。また、自動車のエンジンルームなど、過酷な環境下において、ノイズ除去用などの電子部品として好適に用いられる。
【0038】
次に、本実施形態に係る誘電体磁器組成物の製造方法の一例を説明する。
【0039】
まず、誘電体磁器組成物を構成する主成分の原料を準備する。本実施形態では、KNbO及びBaTiOの原料を準備する。これらの準備については、例えば市販の水熱合成法、蓚酸塩法、ゾル−ゲル法等を用いて作製したBaTiOの粉体を用いても良い。さらに、KNbOの粉体は、KCO,Nbを原料として、混合、仮焼き、粉砕を行う、固相合成法を用いて作製した粉体を用いても良い。
【0040】
次に、副成分の原料も準備する。本実施形態では、MnCO及びSiOの原料を準備する。原料としては、特に限定されず、上記した各成分の酸化物や複合酸化物、または焼成によりこれら酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択して用いることができる。
【0041】
予めKNbOの粉体と、BaTiOの粉体を前述の方法にて準備し焼成条件を調整することにより、本発明の誘電体磁器組成物は一般式(K,Ba)(Nb,Ti)O12で表されるような固溶体の生成を極力少なく制御することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る誘電体磁器組成物が、上記の副成分を含有する場合には、副成分の原料も準備する。副成分の原料としては、特に限定されず、上記した各成分の酸化物や複合酸化物、または焼成によりこれら酸化物や複合酸化物となる各種化合物、例えば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択して用いることができる。
【0043】
準備した原料を、所定の組成比となるように秤量して混合し、原料混合物を得る。混合する方法としては、たとえば、ボールミルを用いて行う湿式混合や、乾式ミキサーを用いて行う乾式混合が挙げられる。
【0044】
得られた原料混合物は、バインダ樹脂を添加し造粒して、造粒物としてもよいし、バインダ樹脂や溶剤とともにペースト化して、スラリーとしてもよい。また、造粒物やスラリーとする前に、原料混合物を仮焼してもよい。
【0045】
造粒物やスラリーを成形する方法としては特に制限されず、たとえば、シート法、印刷法、乾式成形、湿式成形、押出成形などが挙げられる。本実施形態では、乾式成形を採用し、造粒物を金型に充填して圧縮加圧(プレス)することにより成形する。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜決定すればよいが、本実施形態では円盤状の成形体とする。
【0046】
得られた成形体は、必要に応じて、脱バインダ処理した後、焼成される。
【0047】
焼成条件は、組成等に応じて適宜決定すればよいが、焼成温度は、好ましくは900〜1200℃、保持時間は、好ましくは1〜24時間である。
【0048】
焼成後、必要に応じて、アニール処理を行い、焼結体としての誘電体磁器組成物を得る。本発明には必ずしも前記アニール処理を行う必要はないが、アニール処理条件を調整することにより、KNbOとBaTiOとの固溶体の生成する量を制御可能である。次いで、得られた誘電体磁器組成物に端面研磨を施し、電極を形成する。
【0049】
このようにして製造された本実施形態の誘電体磁器組成物は、セラミックコンデンサなどの電子部品に好適に使用される。なお、上記では、本実施形態に係る誘電体磁器組成物として、円盤状の誘電体磁器組成物を例示したが、シート法などにより、積層型の電子部品の誘電体層を構成する誘電体磁器組成物としてもよい。
【0050】
また、本実施形態の誘電体磁器組成物は、良好な圧電特性(例えば、圧電定数:d33=40pC/N)も有しているため、圧電体素子にも好適に使用される。
【0051】
さらに、本発明に係る誘電体磁器組成物は、単板型のコンデンサ等の電子部品に用いてもよいし、積層型のコンデンサ等の電子部品に用いてもよい。あるいは、圧電体素子に用いてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下の実施例および比較例において、各種物性評価は、以下のように行った
【0054】
比誘電率εs
コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、アジレントテクノロジー社製4294Aを用いて、周波数1kHz、測定電圧1Vとし、静電容量Cを測定した。そして、比誘電率εs(単位なし)を、誘電体磁器組成物の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量Cとに基づき算出した。本実施例では、εsが500以上を良好とした。
【0055】
静電容量温度特性
コンデンサ試料をDespatch社製恒温槽内に載置し、−55〜400℃の温度範囲で1Vの電圧での静電容量を測定し、+25℃での静電容量(C25)に対する静電容量(誘電率)の変化率(ΔC/C(%))を、ΔC/C={(C−C25)/C25}×100の式より算出した。本実施例では、静電容量変化率が±22%の範囲にあるものを良好とした(S特性)。
【0056】
画像解析による第一の相及び第二の相の領域の評価
焼成して得られた誘電体磁器組成物に対して、FIB(集束イオンビーム)を用いてマイクロ−サンプリングを行い、TEM試料を作製した。この試料に対しJEM2200FSを用いSTEM像観察を行いSTEM−EDSマッピング行った。観察視野は、3.0μm×3.0μmとし、各試料に対し5視野以上観察を行った。これらの方法で得られた組成マップを用いて、第一の相の元素であるK、Nbと第二の相の元素であるBa、Tiの領域を特定し、各5視野以上の結果の平均面積を用いて、a/bの割合を算出した。本実施例では、良好な容量の温度特性を得るために、1.2<a/b<5.7の範囲に制御した。
【0057】
実施例1
まず、出発原料として平均粒径が500nmのKNbO、および平均粒径が200nmのBaTiO及び50nm以下のMnCO、SiOを準備した。準備した原料を、表1に示す値となるように、それぞれ秤量し、分散媒としての水及び水系分散剤と共にボールミルにより17時間湿式混合した。そして、混合物を乾燥して誘電体磁器組成物の原料粉末を得た。
【0058】
表1に示している実験No.1〜5はKNbOと、BaTiOを70mol%と30mol%なるように配合した主成分に、副成分としてMnCOを0.5mol%〜5.0mol%およびSiOを1.0mol%を含有させたサンプルである。なお、『※』のついたものは比較例である。実験No.6はMnCOとSiOをどちらとも含有していないサンプルである。さらに、実験No.7、8はMnCOを添加した本実施例との比較例を示した。
【0059】
【表1】
【0060】
得られた原料粉末に対し、バインダ樹脂としてPVBを2重量%添加し、250MPaの圧力で成形することにより、直径10mm、厚さ約1mmの円盤状のグリーン成形体を得た。これを空気中で、700℃、10時間加熱して脱バインダ処理を行った。
【0061】
次いで、得られた脱バインダ後の成形体を、空気中で、1100〜1200℃、10時間、焼成することにより、円盤状の焼結体を得た。得られた円盤状の焼結体は、KNbOとBaTiOとの固溶体相の生成量を調整するため、さらにアニール処理を行った。アニール条件は、空気中で、825℃、30分間、熱処理を行った。さらに、得られた焼結体を研磨し、その主表面にAg電極を塗布し、空気中、650℃で20分間焼付け処理を行うことによって、円盤状のセラミックコンデンサの試料を得た。
【0062】
各サンプルについて上記した特性の評価を行った。結果を表2に示す。また、表中の斜体で表した数値は本発明の目的物性の範囲を外れる数値を示している。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示すように、MnCOとSiOをどちらとも含有していない実験No.6と比べて、本実施例の範囲内である実験No.1〜5は、耐電圧が10KV/mm以上を示している。また、比較例である実験No.7、8は、耐電圧が10KV/mm以下となっている。
【0065】
実施例2
まず、出発原料として平均粒径が500nmのKNbO、および平均粒径が200nmのBaTiO及び50nm以下のMnCO、SiOを準備した。準備した原料を、表3に示す値となるように、それぞれ秤量し、分散媒としての水及び水系分散剤と共にボールミルにより17時間湿式混合した。そして、混合物を乾燥して誘電体磁器組成物の原料粉末を得た。
【0066】
表3に示している実験No.9〜13はKNbOと、BaTiOを70mol%と30mol%なるように配合した主成分に、副成分としてMnCOを2.5mol%およびSiOを0.2mol%〜3.0mol%を含有させたサンプルである。なお、『※』のついたものは本実施例の範囲外を示す比較例である。実験No.14、15はSiOを添加した本実施例との比較例を示した。なお、MnCOとSiOをどちらとも含有していないサンプルの特性は実験No.6を参照のこと。
【0067】
【表3】
【0068】
得られた原料粉末に対し、バインダ樹脂としてPVBを2重量%添加し、250MPaの圧力で成形することにより、直径10mm、厚さ約1mmの円盤状のグリーン成形体を得た。これを空気中で、700℃、10時間加熱して脱バインダ処理を行った。
【0069】
次いで、得られた脱バインダ後の成形体を、空気中で、1100〜1200℃、10時間、焼成することにより、円盤状の焼結体を得た。得られた円盤状の焼結体は、KNbOとBaTiOとの固溶体相の生成量を調整するため、さらにアニール処理を行った。アニール条件は、空気中で、825℃、30分間、熱処理を行った。さらに、得られた焼結体を研磨し、その主表面にAg電極を塗布し、空気中、650℃で20分間焼付け処理を行うことによって、円盤状のセラミックコンデンサの試料を得た。
【0070】
各サンプルについて上記した特性の評価を行った。結果を表4に示す。また、表中の斜体で表した数値は本発明の目的物性の範囲を外れる数値を示している。
【0071】
【表4】
【0072】
表4に示すように、MnCOとSiOをどちらとも含有していない実験No.6と比べて、本実施例の範囲内である実験No.9〜13は、耐電圧が10KV/mm以上を示している。また、SiOの含有量が0.2mol%未満と比較例である実験No.14は、耐電圧が10KV/mm以下となっている。3.0mol%を超え、比較例である実験No.15は、25℃の比誘電率が500未満となっている。
【0073】
実施例3
まず、出発原料として平均粒径が500nmのKNbO、および平均粒径が200nmのBaTiO及び50nm以下のMnCO、SiOを準備した。準備した原料を、表5に示す値となるように、それぞれ秤量し、分散媒としての水及び水系分散剤と共にボールミルにより17時間湿式混合した。そして、混合物を乾燥して誘電体磁器組成物の原料粉末を得た。
【0074】
表5に示している実験No.16〜18は本実施例の範囲内のサンプルであり、実験No.19〜20は比較例を示したものである。
【0075】
【表5】
【0076】
得られた原料粉末に対し、バインダ樹脂としてPVBを2重量%添加し、250MPaの圧力で成形することにより、直径10mm、厚さ約1mmの円盤状のグリーン成形体を得た。これを空気中で、700℃、10時間加熱して脱バインダ処理を行った。
【0077】
次いで、得られた脱バインダ後の成形体を、空気中で、1100〜1200℃、10時間、焼成することにより、円盤状の焼結体を得た。得られた円盤状の焼結体は、KNbOとBaTiOとの固溶体相の生成量を調整するため、さらにアニール処理を行った。アニール条件は、空気中で、825℃、30分間、熱処理を行った。さらに、得られた焼結体を研磨し、その主表面にAg電極を塗布し、空気中、650℃で20分間焼付け処理を行うことによって、円盤状のセラミックコンデンサの試料を得た。
【0078】
各サンプルについて上記した特性の評価を行った。結果を表6に示す。また、表中の斜体で表した数値は本発明の目的物性の範囲を外れる数値を示している。
【0079】
【表6】
【0080】
表6に示すように、第一の相であるKNbOと、第二の相であるBaTiOの割合を、本実施例の範囲内、1.2<a/b<5.7の範囲にすることにより、静電容量の変化率を±22%以内に制御できることが確認できる。比較例である実験No.19は、200℃以上の温度領域での静電容量の変化率が±22%以内を満足していない。更に、第一の相の割合が高い比較例である実験No.20は、200℃以上の温度領域での静電容量の変化率が±22%以内を満足していないと共に、耐電圧も10KV/mm以下となっている。
【0081】
実施例4
まず、出発粉として平均粒径が500nmのKの一部をNaで置換した(K0.75Na0.25)NbOおよびKの一部をLiで置換した(K0.75Li0.25)NbO、Nbの一部をTaで置換したK(Nb0.90Ta0.10)Oと、平均粒径が200nmのBaTiOを準備し、表7に示す配合比になるように、それぞれ秤量し、分散媒としての水を用いでボールミルにより17時間湿式混合した。その後、得られた混合物を乾燥して原料粉末を得た。
【0082】
次に、出発粉として平均粒径が500nmのKNbOと、平均粒径が200nmのBaの一部をCa,Sr,Mgで置換した(Ba0.75Ca0.25)TiO、(Ba0.75Sr0.25)TiO、(Ba0.75Mg0.25)TiO及び、Tiの一部をZr,Co,Moで置換したBa(Ti0.90Zr0.10)O、Ba(Ti0.90Co0.10)O、Ba(Ti0.90Mo0.10)Oを準備し、表7に示す組合せ、配合比になるようにそれぞれ秤量し、分散媒としての水を用いでボールミルにより17時間湿式混合した。その後、得られた混合物を乾燥して原料粉末を得た。
【0083】
表7に示している実験No.3は置換していない実施例を示している。実験No.21〜23は、KNbOのK及びNbを一部置換した実施例である。また、実験No.24〜29は、BaTiOのBa及びTiを一部置換した実施例である。
【0084】
【表7】
【0085】
得られた原料粉末に対し、バインダ樹脂としてPVBを2重量%添加し、250MPaの圧力で成形することにより、直径10mm、厚さ約1mmの円盤状のグリーン成形体を得た。これを空気中で、700℃、10時間加熱して脱バインダ処理を行った。
【0086】
次いで、得られた脱バインダ後の成形体を、空気中で、1100〜1200℃、10時間、焼成することにより、円盤状の焼結体を得た。得られた円盤状の焼結体は、KNbOとBaTiOとの固溶体相の生成量を調整するため、さらにアニール処理を行った。アニール条件は、空気中で、825℃、30分間、熱処理を行った。さらに、得られた焼結体を研磨し、その主表面にAg電極を塗布し、空気中、650℃で20分間焼付け処理を行うことによって、円盤状のセラミックコンデンサの試料を得た。
【0087】
各サンプルについて上記した特性の評価を行った。結果を表8に示す。
【0088】
【表8】
【0089】
表8に示すように、置換していない実験No.3に対し、K及びNbを一部置換した実験No.21〜23、また、BaTiOのBa及びTiを一部置換した実験No.24〜29でも、静電容量の変化率を±22%以内に制御できることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
広範囲な温度領域において比誘電率の変化率が小さく、耐電圧が高いため、車載用としてエンジンルームに近接する環境下や、さらに、SiCやGaN系の半導体を用いたパワーデバイス用の平滑用のコンデンサとしての用途にも適用できる。