特許第5831346号(P5831346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831346
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20151119BHJP
   B60L 3/00 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   H02P7/63 302S
   B60L3/00 J
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-96747(P2012-96747)
(22)【出願日】2012年4月20日
(65)【公開番号】特開2013-225977(P2013-225977A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】浦野 徹
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−112136(JP,A)
【文献】 特開2010−90785(JP,A)
【文献】 特開2007−236109(JP,A)
【文献】 特開2009−158256(JP,A)
【文献】 特開2013−121233(JP,A)
【文献】 特開2013−225978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車両動力用のモータを駆動するための交流電力を生成するインバータと、
前記インバータを冷却する冷却通路に冷却媒体を送り込むポンプと、
前記モータの作動状態を切り替えるためのシフト装置により選択されたシフトポジションを検出するシフトポジションセンサと、
前記シフトポジションセンサで検出されたシフトポジションが走行レンジに切り換わると前記ポンプを始動させるポンプ制御手段と、
前記シフトポジションが前記走行レンジへ切り換えられた場合に、その切り換え時から所定時間が経過するまでの間、前記モータの車両出力トルクを制限するモータ制御手段と、を備える
ことを特徴とする、車両制御装置。
【請求項2】
前記モータ制御手段は、前記切り換え時からの時間経過に伴って前記モータの車両出力トルクの制限を小さくする
ことを特徴とする、請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記インバータの温度を取得する温度取得手段を備え、
前記モータ制御手段は、前記温度取得手段で取得された前記インバータの温度が高くなるにつれて前記モータの車両出力トルクの制限が大きくなるように修正する
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記ポンプの回転数を検出する回転数センサを備え、
前記モータ制御手段は、前記回転数センサで検出された前記回転数が増加するにつれて、前記モータの車両出力トルクの制限が小さくなるように修正する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動用モータ及びインバータを搭載した車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源としての電気モータを搭載した電気自動車やハイブリッド車には、電気モータの動力源となる交流電力を電気モータへ供給するインバータが搭載されている。インバータは、駆動用バッテリと電気的に接続されており、バッテリに蓄電されている直流電力を交流電力に変換して電気モータへ供給する。インバータには、IGBTと呼ばれる高電圧,大電流に耐え得るトランジスタやサイリスタ等のスイッチング素子が複数内蔵されており、複数の素子がスイッチング制御(切り換え制御)されることで交流電力が生成される。
【0003】
インバータは、電気モータの作動中は常に交流電力を生成しているため、内蔵されているスイッチング素子が発熱して高温になる。特に、モータ出力が大きいほどスイッチング素子には大電流が流れるため、インバータはより高温になる。
そのため、従来から、車両にはインバータを冷却するための冷却装置が設けられている。例えば、特許文献1に記載の技術では、冷却装置として、インバータを冷却する冷却水の循環路がインバータの周囲に設けられている。この循環路には、ウォータポンプとラジエータとが介装され、ラジエータで冷やされた冷却水をウォータポンプによって循環させることでインバータの過熱が防止される。このように、冷却装置はインバータ保護のためには欠かせないものであり、特にウォータポンプはインバータの冷却に必要な冷却水の流量を常に冷却通路に流通させておくための、非常に重要な装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−112136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インバータを冷却するための冷却媒体(例えば、冷却水や冷却オイル等)を冷却通路に送り込むためのポンプを常に作動させておくことは、ポンプの寿命を早めることになるため、寿命確保という観点から見れば不要な作動は可能な限り抑制することが望まれる。一方、ポンプは、一度停止後に再び作動が開始された場合、インバータの冷却に必要な流量を送り込むことができるようになるまでに一定の時間を要する。そのため、流量が十分でない状態でインバータに大電流が流れると、インバータ内のスイッチング素子がオーバーヒートにより焼損してしまうおそれがあり、むやみにポンプを停止させることができない。このように、ポンプの寿命確保とインバータの保護との両立が困難であるという課題がある。
【0006】
本件はこのような課題に鑑み案出されたもので、ポンプの寿命確保とインバータの保護とを両立することができるようにした、車両制御装置を提供することを目的とする。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示する車両制御装置は、車両に搭載された車両駆動用のモータを駆動するための交流電力を生成するインバータと、前記インバータを冷却する冷却通路に冷却媒体を送り込むポンプと、前記モータの作動状態を切り替えるためのシフト装置により選択されたシフトポジションを検出するシフトポジションセンサと、前記シフトポジションセンサで検出されたシフトポジションが走行レンジに切り換わると前記ポンプを始動させるポンプ制御手段と、前記シフトポジションが前記走行レンジへ切り換えられた場合に、その切り換え時から所定時間が経過するまでの間、前記モータの車両出力トルクを制限するモータ制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
つまり、前記ポンプ制御手段は、前記シフトポジションセンサで検出されたシフトポジションが前記走行レンジに切り換わる前は前記ポンプを停止させており、前記走行レンジへの切り換えに伴い前記ポンプの作動を開始する。
なお、前記シフト装置には、シフトレバーやシフトボタン等が含まれ、前記冷却媒体には、冷却水や冷却オイル等が含まれる。また、ここでいう「車両出力トルク」は、前記モータが出力するトルクの大きさを意味する。
【0009】
(2)前記モータ制御手段は、前記切り換え時からの時間経過に伴って前記モータの車両出力トルクの制限を小さくすることが好ましい。
(3)また、前記インバータの温度を取得する温度取得手段を備え、前記モータ制御手段は、前記温度取得手段で取得された前記インバータの温度が高くなるにつれて前記モータの車両出力トルクの制限が大きくなるように修正することが好ましい。
【0010】
(4)また、前記ポンプの回転数を検出する回転数センサを備え、前記モータ制御手段は、前記回転数センサで検出された前記回転数が増加するにつれて、前記モータの車両出力トルクの制限が小さくなるように修正することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
開示の車両制御装置によれば、シフトポジションが走行レンジに切り換わる前はポンプは停止しているため、ポンプの不要な作動を極力抑制してポンプの寿命を確保することができる。また、この場合はモータがトルクを発生しないため、ポンプを停止させてもインバータがオーバーヒートするおそれはない。
【0012】
さらに、ポンプは、シフトポジションが走行レンジに切り換わると始動されるため、モータの作動中は冷却媒体を冷却通路に送り込むことができ、インバータを冷却することができる。ただし、ポンプがインバータの冷却に必要とされる流量(必要流量)を冷却通路に流通させるまでには、ある程度の時間がかかる。そのため、本制御装置では、シフトポジションが走行レンジへ切り換えられた場合は、切り換え時から所定時間が経過するまでの間はモータの車両出力トルクを制限することで、この所定時間はインバータの発熱量を抑制する。
【0013】
つまり、シフトポジションが走行レンジに切り換えられ、ポンプが必要流量を送り込むことができるようになるまでの間は、モータの車両出力トルクを抑制することでインバータの過熱(オーバーヒート)を防止することができる。したがって、本制御装置によれば、ポンプの寿命確保とインバータの保護とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る車両制御装置が適用された車両の構成を示すブロック図である。
図2】インバータの冷却装置をモデル化した図である。
図3】モータ制御を説明するためのものであり、(a)が時間経過に対する出力トルクTの補正率Aを表した補正率マップ、(b)が時間経過に対する出力トルクTの制限率Rを表した制限率フィルタである。
図4】一実施形態に係る車両制御装置による制御内容を説明するフローチャートであり、(a)はポンプ制御に関するフローP、(b)はモータ制御に関するフローMである。
図5】モータ制御の他の例を説明するためのものであり、(a)がインバータ温度Hに応じた修正率Bを取得するためのマップ、(b)がポンプ回転数Npに応じた修正率Cを取得するためのマップ、(c)が時間経過に対するモータの出力トルクTの最大値TMAXを示したマップである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により実施の形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
[1.装置構成]
本実施形態に係る車両制御装置の構成について、図1を用いて説明する。ここでは、電気自動車に本制御装置を備えた場合を説明する。
【0016】
図1に示すように、電気自動車(車両)10には、駆動用の電気モータ(車両動力用モータ)11(以下、モータ11という),電力を蓄電するバッテリ12,交流電力を生成するインバータ13,冷却用のウォータポンプ(ポンプ)14,シフトレバー(セレクターを含む;シフト装置)15,アクセルペダル16が設けられている。
【0017】
モータ11は、例えば高出力の永久磁石式同期型モータであり、インバータ13から供給される交流電力を受けてロータ(回転子)を回転させ、電気エネルギを機械エネルギに変換する電動機である。モータ11は図示しない駆動輪と機械的に接続され、モータ11の駆動力は駆動輪へ伝達されて車両10を走行させる。モータ11の回転数Nm[rpm]は、インバータ13で変換される交流電力の周波数に比例し、モータ11のトルクT[Nm]は、モータ11に供給する電流の大きさに比例する。そのため、インバータ13を制御することでモータ11の回転数Nm及びトルクTを調整することができる。
【0018】
バッテリ12は、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池であり、高電圧直流電流がインバータ13によって交流に変換された後、モータ11へ供給される。
インバータ13は、バッテリ12と電気的に接続され、バッテリ12から供給される直流電流を三相交流電流へ変換して、モータ11へ供給する電力変換装置である。インバータ13には、複数(例えば三つ)のスイッチング素子が内蔵されており、複数の素子が後述するモータ制御部4からの指令に基づいてスイッチング制御されることで、三相交流電流を生成する。また、これらのスイッチング素子をスイッチングする切り換え周期(各スイッチング素子に電流が流れる時間)を変更することで交流電流の周波数を変更できるようになっている。
【0019】
スイッチング素子は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やサイリスタ等であり、ここでは高耐圧、大電流により適したIGBTを用いる。IGBTは、モータ11が作動しているときは常にスイッチング制御されて交流電力を生成している。このとき、IGBTには比較的大きな電流が流れているため、IGBTは発熱して高温になる。特にIGBTに大電流が流れたときは、最も発熱量が大きく、これによりインバータ13の温度Hも高温となる。これを冷却するために、インバータ13の周辺には冷却装置が設けられる。
【0020】
冷却装置は、ウォータポンプ14,冷却通路17及びラジエータ18から構成される。ウォータポンプ14は、冷却通路17(図2参照)に冷却媒体(例えば、冷却水)を流通させる(送り込む)電動ポンプ(電動圧送装置)であり、バッテリ12から供給される電力によって作動する。なお、ここでは冷却媒体として冷却水が用いられる例を説明するが、冷却媒体として冷却オイルが用いられてもよい。
【0021】
図2に示すように、インバータ13の周辺には冷却通路17が設けられ、冷却通路17を冷却媒体が流通することでインバータ13の熱を吸収し、これによりインバータ13が冷却される。冷却通路17は、冷却媒体が一方向に流れる循環回路であり、この冷却通路17上にはウォータポンプ14及びラジエータ18が介装されている。なお、ラジエータ18は冷却媒体の熱を放熱するための装置である。ここでは、ウォータポンプ14及び冷却通路17はインバータ13専用のポンプ及び冷却通路として構成されているが、他の装置(例えばバッテリ,モータ等)を冷却する構成と併用されていてもよい。
【0022】
ウォータポンプ14の作動/非作動(停止)は、後述のポンプ制御部3によって制御される。ウォータポンプ14は、回転数に応じて吐出量(冷却通路17に送り込むことができる冷却媒体の流量)が決定される。ここでは、ウォータポンプ14は、作動が開始されると、所定流量(必要流量)Qを吐出できる所定回転数NpQまでポンプ回転数Npを自動的に上昇させ、所定回転数NpQまで上昇した後は所定回転数NpQを維持する。つまり、ウォータポンプ14はポンプ制御部3によって作動/停止(オンオフ)制御のみ行われるものである。なお、この所定流量Qは、インバータ13を十分冷却可能な冷却媒体の流量である。
【0023】
シフトレバー15は、ドライバの操作によって車両10の走行状態を選択して切り替えるための切替装置(シフト装置)であり、運転席近傍に設けられる。シフトレバー15は、ここでは、パーキング(Pレンジ),ニュートラル(Nレンジ),ドライブ(Dレンジ),リバース(Rレンジ)の各レンジに切り替えられるように構成されている。ドライバは、シフトレバー15を切り替え操作することで走行状態を選択する。なお、シフト装置はレバーに限られず、例えばボタン式であってもよい。
【0024】
シフトレバー15には、シフトレバー15で選択されている現在のシフトポジション(操作位置)SPを検出するシフトポジションセンサ25が設けられる。シフトポジションセンサ25は、例えばシフトレバー15の操作位置に応じたポジション信号(ポジション情報)を出力する。シフトポジションセンサ25で検出されたポジション情報は、後述の車両ECU1に随時伝達される。
【0025】
すなわち、シフトレバー15の切り替え操作とモータ11の作動とは連動しており、例えばシフトレバー15がPレンジ又はNレンジに切り替えられたときは、モータ11は停止されて無負荷状態となる。また、シフトレバー15がDレンジ又はRレンジに切り替えられたときは、モータ11は作動される。以下、Pレンジ及びNレンジ以外のレンジ(ここでは、Dレンジ及びRレンジ)を「走行レンジ」と呼ぶ。つまり走行レンジとは、モータ11が仕事をしている(モータ11に負荷がかかっている)状態を意味する。
【0026】
アクセルペダル16の近傍には、アクセルペダル16の開度θを検出するアクセル開度センサ(APS)26が設けられる。アクセル開度センサ26は、例えばドライバによるアクセルペダル16の踏み込み操作量に応じた開度信号(開度情報)を出力する。アクセル開度センサ26で検出されたアクセル開度情報は、随時車両ECU1に伝達される。
また、車両10の任意の位置に設けられた車速センサ27は、自車両の車速Vを検出するものであり、例えば駆動輪の回転速度に応じた車速信号(車速情報)を出力する。車速センサ27で検出された車速情報は、随時車両ECU1に伝達される。
【0027】
また、車両10には、これら装置を制御する電子制御装置(Electric Control Unit,以下ECUという)が設けられる。ここでは、インバータ13及びウォータポンプ14を制御するインバータECU2と車両10を統合制御する車両ECU(EV−ECU)1とが設けられている。インバータECU2及び車両ECU1は、それぞれメモリ(ROM,RAM)及びCPU等で構成されるコンピュータである。また、車両10には、これらの他にも図示しないバッテリECUや空調ECU,ブレーキECU等の各種ECUが設けられる。
【0028】
車両ECU1は、各種ECUと情報伝達可能に接続されている。車両ECU1は、その入力側にシフトポジションセンサ25,アクセル開度センサ26,車速センサ27が接続され、ドライバからの意思(要求)や車両の走行状態等を監視し、各種ECUへ情報を伝達する。また、インバータECU2は、その出力側にインバータ13及びウォータポンプ14が接続される。本制御装置は、主にインバータECU2に備えられる機能によって実現される。
【0029】
[2.制御構成]
インバータECU2は、ポンプ制御部3としての機能要素と、車両動力用のモータ制御部4としての機能要素とを有する。
【0030】
ポンプ制御部(ポンプ制御手段)3は、モータ11の作動状態に応じて、ウォータポンプ14の作動/非作動を制御するものである。具体的には、ポンプ制御部3は、車両ECU1からシフトポジションセンサ25で検出されたポジション情報を取得し、シフトポジションSPが走行レンジでないとき(すなわち、モータ11が無負荷状態の場合)は、ウォータポンプ14を停止させる。一方、ポンプ制御部3は、シフトポジションSPが走行レンジであるとき(すなわち、モータ11に負荷がかかっている場合)は、ウォータポンプ14を作動させる。
【0031】
つまり、ポンプ制御部3は、車両ECU1から取得したポジション情報に基づいて、モータ11が停止している場合は、ウォータポンプ14を停止させて不要な作動を抑制する。一方、シフトポジションSPが走行レンジに切り換えられてモータ11が仕事をする場合は、ウォータポンプ14を始動させ、冷却通路17に冷却媒体を流通させてインバータ13を冷却する。
【0032】
モータ制御部(モータ制御手段)4は、ドライバからの出力要求と現在の走行状態とに基づいて、モータ11の作動を制御するためにインバータ13を制御するものであり、目標トルク設定部4aとしての機能要素と、出力トルク制御部4bとしての機能要素とを備える。
【0033】
目標トルク設定部4aは、シフトポジションセンサ25で検出されたシフトポジションSP,アクセル開度センサ26で検出されたアクセル開度θ,車速センサ27で検出された車速Vから、ドライバの要求するトルク(目標トルク)TTGTを演算して設定するものである。具体的には、目標トルク設定部4aは、まず車両ECU1からポジション情報を取得して、シフトポジションSPがPレンジ又はNレンジであれば、目標トルクTTGTを0に設定する。
【0034】
一方、目標トルク設定部4aは、シフトポジションSPが走行レンジであれば、続けて開度情報及び車速情報を取得し、アクセル開度θと車速Vとから目標トルクTTGTを設定する。目標トルクTTGTの設定手法は任意であり、例えば、シフトポジションSP毎に(ここではDレンジ及びRレンジ毎に)、アクセル開度θと車速Vと目標トルクTTGTとの関係を予めマップ化しておき、これらマップを用いて目標トルクTTGTを設定する。
【0035】
出力トルク制御部4bは、目標トルク設定部4aで設定された目標トルクTTGTから指示トルク(トルク指令値)TCを設定し、指示トルクTCに応じたトルクをモータ11に出力させるためにインバータ13を制御するものである。出力トルク制御部4bは、図3(a)に示すマップを用いて目標トルクTTGTにフィルタ処理をして指示トルクTCを設定する。図3(a)は、時刻t0からの経過時間に対する出力トルク(車両出力トルク)Tの補正率Aを表した補正率マップである。なお、ここでいう「出力トルクT」とは、モータ11が実際に出力するトルクを意味し、出力トルク制御部4bが設定する指示トルクTCと同一とみなしてもよい。
【0036】
出力トルク制御部4bは、目標トルク設定部4aで設定された目標トルクTTGTに補正率A(0<A≦1)を乗じた値を指示トルクTCとして設定する(すなわち、TC=A×TTGT)。つまり、この補正率Aは、実際にモータ11に出力させる出力トルクTを決定するために用いる補正係数である。図3(a)に示すように、補正率Aは、時刻t0では初期補正率A0(A0<1)に設定され、時間経過に伴って徐々に(滑らかに)大きくなるように設定されている。そして、時刻t1において補正率A=1に設定され、時刻t1以降は常に補正率Aは1に設定されている。
【0037】
ここで、時刻t0は、シフトポジションSPがPレンジ又はNレンジから走行レンジへ切り換えられた「切り換え時」である。また、時刻t1は、ウォータポンプ14の回転数Npが所定回転数NpQに達した時刻である。また、切り換え時t0から時刻t1までの時間は、ウォータポンプ14の作動開始からポンプ回転数Npが所定回転数Np0まで上昇するのに要する時間であり、これを所定時間Z(Z=t1−t0)とする。ここでは、ウォータポンプ14はオンオフ制御のみ行われるものであるため、所定回転数NpQまで上昇するのに要する所定時間Zは、予め所定の値が設定されている。
【0038】
つまり、出力トルク制御部4bは、シフトポジションSPがPレンジ又はNレンジから走行レンジに切り換えられた場合に、切り換え時t0から所定時間Zが経過するまでの間は、目標トルクTTGTに1よりも小さい補正率Aを乗じて指示トルクTCを設定する。言い換えると、出力トルク制御部4bは、所定時間Zの間は目標トルクTTGよりも小さい指示トルクTCを設定して、モータ11の出力トルクTを制限する。なお、補正率Aは、切り換え時t0から徐々に大きく設定されているため、目標トルクTTGTに対する出力トルクTの制限は徐々に小さくなる。
【0039】
出力トルク制御部4bが所定時間Zの間、モータ11の出力トルクTを制限する理由について説明する。シフトポジションSPがPレンジ又はNレンジの場合、ポンプ制御部3はウォータポンプ14を停止させており、シフトポジションSPが走行レンジに切り換えられたときにウォータポンプ14の作動を開始する。しかし、ウォータポンプ14のポンプ回転数Npは、作動開始(始動時)から徐々に増大するため所定回転数NpQまで上昇するには所定の時間Zを要する。
【0040】
つまり、所定時間Zの間は、ウォータポンプ14によるインバータ13の冷却が不足する可能性がある。例えば、この所定時間Zの間に、モータ11の出力トルクTを最大にしたいという要求がドライバから入力されると、インバータ13はモータ11へ大電流を流す必要があるため過熱(オーバーヒート)してしまうおそれがある。そのため、出力トルク制御部4bは、ウォータポンプ14のポンプ回転数Npが所定回転数NpQに上昇するまでの所定時間Zの間は、モータ11の出力トルクTを制限してインバータ13を保護する。
【0041】
なお、補正率Aを別の表現にすると、モータ11の出力トルクTの制限率Rとも表すことができる。図3(b)は、切り換え時t0からの時間経過に対する出力トルクTの制限率Rを表した制限率フィルタである。なお、制限率Rとは、1から補正率Aを減じた値である(すなわち、R=1−A)。図3(b)に示すように、制限率Rは、時刻t0では初期制限率R0に設定され、時刻t1以降では0に設定される。また、時刻t0から時刻t1までの間(所定時間Zの間)は、制限率Rは徐々に(滑らかに)小さく設定される。
【0042】
つまり、モータ11の出力トルクTは、シフトポジションSPの走行レンジへの切り換え時t0において最も制限され、その後は徐々に制限が小さくなる。換言すると、出力トルク制御部4bは、目標トルクTTGTに対して、制限率フィルタによってフィルタ処理をして指示トルクTCを設定し、出力トルクTを制限する。
【0043】
なお、出力トルク制御部4bは、切り換え時t0から所定時間Z以上の時間が経過したときは、補正率Aは常に1(制限率Rは常に0)に設定されているため、目標トルクTTGTを指示トルクTCとして設定し、設定した指示トルクTCをモータ11が出力するようにインバータ13を制御する。つまり、ウォータポンプ14の回転数Npが所定回転数NpQまで上昇した後は、出力トルクTの制限は行わない。なお、ここでは、図3(a)の補正率マップが予めインバータEUC2に記憶されており、出力トルク制御部4bは、これを用いてモータ11の出力トルクTを制御する。つまり、補正率Aは、切り換え時t0から経過した時間によってある値に定まる。なお、補正率マップの代わりに図3(b)の制限率フィルタが記憶されていてもよい。
【0044】
[3.フローチャート]
次に、図4(a)及び(b)を用いてインバータECU2で実行される制御の手順の例を説明する。図4(a)はポンプ制御部3によって実行される制御フローPであり、図4(b)はモータ制御部4によって実行される制御フローMである。これらフローP及びフローMは、それぞれ所定の制御周期で互いに独立して動作するとともに、フローMにはフローPのフラグ情報が伝達される。また、下記の各ステップは、コンピュータのハードウェアに割り当てられた各機能(手段)が、ソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することによって実施される。本車両制御装置は、パワースイッチ(電源スイッチ)がオンにされたら、図4(a)及び(b)に示すフローP及びフローMをスタートする。
【0045】
図4(a)に示すように、フローPのステップP10では、シフトポジションセンサ25で検出されたシフトポジションSPが車両ECU1から取得される。ステップP20では、取得されたシフトポジションSPがPレンジ又はNレンジであるか否かが判定される。シフトポジションSPがPレンジ又はNレンジであるときは、ステップP30へ進んでフラグFがF=0に設定され、ウォータポンプ(WP)14が停止されて(ステップP40)、フローPがリターンされる。つまり、モータ11が停止しているときはウォータポンプ14を停止させることで、ウォータポンプ14の寿命が確保される。
【0046】
一方、シフトポジションSPがPレンジ又はNレンジでないときは、ステップP35へ進んでフラグFがF=1に設定され、ウォータポンプ14が作動されて(ステップP45)、フローPがリターンされる。これにより、モータ11の作動中はウォータポンプ14によるインバータ13の冷却が実施されるため、インバータ13のオーバーヒートが抑制される。ここで、フラグFは、シフトポジションSPが走行レンジであるか否かをチェックするための変数である。フラグFがF=0のときは、シフトポジションSPが走行レンジ以外(Pレンジ又はNレンジ)であることを意味し、フラグFがF=1のときは、シフトポジションSPが走行レンジであることを意味する。このフラグFはフローMで用いられる。
【0047】
図4(b)に示すように、フローMのステップM10では、フラグFがF=1であるか否かが判定される。このステップでは、シフトポジションSPが走行レンジであるか否か、すなわちモータ11が作動しているか否かが判断される。フローPのステップP35においてフラグFがF=1に設定されていれば、ステップM20においてフラグGがG=0であるか否かが判定される。また、フローPのステップP30においてフラグFがF=0に設定されていれば、ステップM100へ進み、フラグGがG=0に設定される。
【0048】
ここで、フラグGは、タイマによる計測が開始されているか否かをチェックするための変数であり、フラグG=0はタイマ計測が行われていないことを意味し、フラグG=1はタイマが計測中であることを意味する。ステップM10においてフラグFがF=1であると判定され、続くステップM20においてフラグGがG=0であると判定されたときは、シフトポジションSPがPレンジ又はNレンジから走行レンジへ切り換えられた切り換え時t0であるため、ステップM30においてタイマによる計測が開始される。これにより、図3(a)に示す補正率マップの横軸の時間が決定される。
【0049】
続くステップM40では、フラグGがG=1に設定され、ステップM50では、車両ECU1からポジション情報,開度情報及び車速情報の各種情報が取得される。ステップM60では、これらの各種情報から目標トルクTTGTが設定される。次いでステップM70では、補正率マップからタイマの計測時間tでの補正率Aが取得される。そして、ステップM80では、目標トルクTTGT及び補正率Aから指示トルクTCが設定され、続くステップM90では、設定された指示トルクTCがインバータ13に伝達され、モータ11が制御されてフローMがリターンされる。
【0050】
次の制御周期において、フラグFがF=1であれば(シフトポジションSPが走行レンジのままであれば)、ステップM20の判定ではNOルートからステップM50へ進む。そして、この制御周期での各種情報が取得されて、目標トルクTTGTが再び設定される(ステップM60)。次いで、この制御周期でのタイマの計測時間tに対応する補正率Aが新たに取得されて(ステップM70)、この時刻tでの指示トルクTCが設定される(ステップM80)。そして、ステップM90においてモータ制御が実行され、これらのステップが繰り返し実行される。
【0051】
また、駐車や信号待ち等でシフトポジションSPが走行レンジからPレンジ又はNレンジに切り換えられた場合は、フローPではステップP30においてフラグFがF=0に設定されるとともにウォータポンプ14が停止される。そして、フローMでは、ステップM10においてNOルートからステップM100,M110へ進み、タイマが停止されるとともに、それまでカウントしていた計測時間tがリセットされる。つまり、シフトポジションSPがPレンジ又はNレンジに切り換えられると、補正率マップの横軸の時間が0にリセットされる。そして、次にシフトポジションSPが走行レンジに切り換えられたときは、その切り換え時t0からの経過時間(タイマの計測時間t)に応じた補正率Aが取得される。
【0052】
[4.効果]
したがって、本実施形態に係る車両制御装置によれば、シフトポジションSPが走行レンジに切り換わる前はウォータポンプ14を停止させているため、ウォータポンプ14の不要な作動を極力抑制してウォータポンプ14の寿命を確保することができる。また、この場合はモータ11がトルクを発生しないため、ウォータポンプ14を停止させてもインバータ13がオーバーヒートするおそれはない。
【0053】
さらに、ウォータポンプ14は、シフトポジションSPが走行レンジに切り換わると始動される。ただし、ウォータポンプ14がインバータ13の冷却に必要とされる流量(必要流量)を冷却通路17に流通させるまでには、ある程度の時間がかかる。そのため、本制御装置では、シフトポジションSPが走行レンジへ切り換えられた場合は、切り換え時t0から所定時間Zが経過するまでの間はモータ11の出力トルクTを制限することで、この所定時間Zはインバータ13の発熱量を抑制する。
【0054】
つまり、シフトポジションSPが走行レンジに切り換えられ、ウォータポンプ14が必要流量を送り込むことができるようになるまでの間は、モータ11の出力トルクTを抑制することでインバータ13のオーバーヒートを防止することができ、インバータ13を保護することができる。したがって、本制御装置によれば、ウォータポンプ14の寿命確保とインバータ13の保護とを両立することができる。
【0055】
また、モータ11の出力トルクTを制限するために、図3(a)に示す補正率マップを用いることで、簡素な制御構成でモータ11の出力トルクTを制限することができる。このとき、シフトポジションSPの走行レンジへの切り換え時t0からの時間経過に伴って、モータ11の出力トルクTの制限が小さくなるように設定されているため、切り換え時t0から所定時間Zが経過したときに、急激に出力トルクTが大きくなるようなことがなく、安全性を高めるとともにドライバビリティを向上させることができる。
【0056】
[5.変形例]
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
上記実施形態では、モータ11の出力トルクTを制限するときに、図3(a)に示す補正率マップを用い、シフトポジションSPの走行レンジへの切り換え時t0からの時間経過に応じて補正率Aを取得しているが、モータ11の出力トルクTの制限手法は上記したものに限られない。
【0057】
例えば、切り換え時t0から所定時間Zが経過するまでの間、図3(a)の補正率マップに加え、インバータ13の温度Hを監視しながらモータ11の出力トルクTをさらに制限する構成であってもよい。この場合、車両10には、図1中に二点鎖線で示すように、インバータ13の温度Hを検出する温度センサ(温度取得手段)23が設けられる。温度センサ23は、例えばインバータ13の内部の発熱しやすいスイッチング素子近傍に設けられ、このスイッチング素子の温度をインバータ13の代表温度Hとして出力する。温度センサ23で検出されたインバータ温度Hは、随時インバータECU2へ伝達される。
【0058】
出力トルク制御部4bは、上記実施形態と同様、図3(a)に示す補正率マップから、切り換え時t0からの経過時間に応じた補正率Aを取得する。さらに、切り換え時t0から所定時間Zが経過するまでの間、図5(a)に示すマップから、インバータ13の温度Hに応じた修正率Bを取得する。ここで、図5(a)は、インバータ13の温度Hが高くなるにつれて出力トルクTの制限が大きくなるように、出力トルクTの補正率A(又は制限率R)を修正する修正率Bを示したマップである。つまり、インバータ温度Hが低いほど修正率Bは高く、インバータ温度Hが高いほど修正率Bは低く設定されている。なお、修正率Bは、その値が低いほど補正率Aを低い値に修正する(つまり、出力トルクTの制限を大きくするように修正する)。
【0059】
例えば、ある時間tX(t0<t<t1)において補正率AがA=0.8であった場合、上記実施形態では、指示トルクTCは目標トルクTTGTの0.8倍に設定されるが、ここでは、さらにこの時間tXにおけるインバータ温度Hに対応した修正率Bが取得され、補正率Aに修正率Bを乗じた値を目標トルクTTGTにさらに乗じて指示トルクTCとする。なお、修正率Bは、A×Bの値が0よりも大きく1以下(0<A×B≦1)となるような値である。このようにして設定された指示トルクTCをインバータ13に伝達してモータ11を制御することにより、出力トルクTの制限が修正される。
【0060】
つまり、出力トルク制御部4bは、インバータ13の温度Hが高くなるにつれて、モータ11の出力トルクTの制限が大きくなるように修正する。これにより、インバータ13の温度Hを常に監視しながら出力トルクTの制限を修正することが可能なため、インバータ13のオーバーヒートを確実に防ぐことができる。さらに過剰な出力トルクTの制限が抑制されるため、ドライバビリティを向上させることができる。
【0061】
なお、インバータ13の温度Hを取得する手段は、温度センサ23に限られない。例えば、外気温度を検出する外気温度センサを設け、インバータECU2においてインバータ13の作動時間と電流の大きさとに基づいてインバータ13の温度上昇を推定し、外気温度センサで検出した温度に推定した温度上昇を加算してインバータ13の温度Hを取得してもよい。
【0062】
また、他の例として、切り換え時t0から所定時間Zが経過するまでの間、図3(a)の補正率マップに加え、ウォータポンプ14の回転数Npを監視しながらモータ11の出力トルクTを制限する構成であってもよい。つまり、上記実施形態では、ウォータポンプ14はポンプ制御部3によってオンオフ制御のみ行われるものであったが、ウォータポンプ14の回転数(回転速度)Npを制御することで冷却通路17に吐出する流量を制御できるものであってもよい。この場合、車両10には、図1中に二点鎖線で示すように、ウォータポンプ14の回転数Npを検出する回転数センサ24が設けられ、回転数センサ24で検出されたポンプ回転数Npは、随時インバータECU2へ伝達される。
【0063】
出力トルク制御部4bは、上記実施形態と同様、図3(a)に示す補正率マップから、切り換え時t0からの経過時間に応じた補正率Aを取得する。さらに、切り換え時t0から所定時間Zが経過するまでの間、図5(b)に示すマップから、ウォータポンプ14の回転数Npに応じた修正率Cを取得する。ここで、図5(b)は、ウォータポンプ14の回転数Npが増加するにつれて出力トルクTの制限が小さくなるように、出力トルクTの補正率A(又は制限率R)を修正する修正率Cを示したマップである。つまり、ポンプ回転数Npが低いほど修正率Cは低く、ポンプ回転数Npが高いほど修正率Cは高く設定されている。なお、修正率Cは、その値が高いほど補正率Aを高い値に修正する(つまり、出力トルクTの制限を小さくするように修正する)。
【0064】
例えば、ある時間tX(t0<t<t1)において補正率AがA=0.8であった場合、上記実施形態では、指示トルクTCは目標トルクTTGTの0.8倍に設定されるが、ここでは、さらにこの時間tXにおけるポンプ回転数Npに対応した修正率Cが取得され、補正率Aに修正率Cを乗じた値を目標トルクTTGTにさらに乗じて指示トルクTCとする。なお、修正率Cは、A×Cの値が0よりも大きく1以下(0<A×C≦1)となるような値である。このようにして設定された指示トルクTCをインバータ13に伝達してモータ11を制御することにより、出力トルクTの制限が修正される。
【0065】
つまり、出力トルク制御部4bは、ウォータポンプ14の回転数Npが増加するにつれて、モータ11の出力トルクTの制限が小さくなるように修正する。これにより、ウォータポンプ14の冷却性能を監視しながら出力トルクTを修正することが可能なため、インバータ13のオーバーヒートを確実に防ぐことができる。さらに過剰な出力トルクTの制限が抑制されるため、ドライバビリティを向上させることができる。
【0066】
なお、出力トルク制御部4bは、図5(a)及び(b)に示すマップを両方用いてモータ11の出力トルクTの制限を修正してもよい。つまり、目標トルクTTGTに、補正率Aと修正率B及びCとを乗じて指示トルクTCを設定してもよい。
【0067】
また、さらに他の例として、図3(a)に示す補正率マップの代わりに、図5(c)に示すようなマップを用いて出力トルクTの制限を行ってもよい。この図5(c)のマップは、予めインバータECU2に記憶されており、出力トルクTの上限値TULが設定されている。図5(c)に示すように、出力トルクTの上限値TULは、切り換え時t0では最も低く設定されており、所定時間Zになるまでの間は徐々に大きく設定され、所定時間Z以降はモータ11の最大トルクTMAXに設定されている。
【0068】
出力トルク制御部4bは、設定した目標トルクTTGTがその時刻における上限値TUL以上の場合は、上限値TULを指示トルクTCとして設定する。一方、目標トルクTTGTがその時刻における上限値TULよりも小さい場合は、目標トルクTTGTを指示トルクTCとして設定する。つまり、出力トルク制御部4bは、設定された目標トルクTTGTが予め設定された上限値TUL以上になった場合のみ、目標トルクTTGTを上限値TULでクリップして指示トルクTCとする。このような構成により、出力トルクTの制限は本当に必要な場合のみ実施され、ドライバビリティを向上させることができる。
【0069】
また、図3(a)に示す補正率マップの初期補正率A0をインバータ温度H又はポンプ回転数Npに応じて修正するように構成してもよい。例えば、切り換え時t0のインバータ温度Hが低いほど初期補正率A0を高く修正することで、最も出力トルクTが制限される切り換え時t0のトルク制限が小さくなり、ドライバビリティを向上させることができる。
【0070】
また、図3(a)の補正率マップの所定時間Zをポンプ回転数Np又はインバータ温度Hに応じて修正するように構成してもよい。例えば、上記実施形態では、所定時間Zが予め設定された固定値とされているが、ポンプ制御部3によりウォータポンプ14の回転数Npが制御可能であれば、所定時間Zをポンプ回転数Npに応じて修正することで、出力トルクTが制限される時間を変更することができる。これにより、ウォータポンプ14の寿命確保とインバータ13の保護に加え、ドライバビリティを考慮した適切な制御を実施することができる。
【0071】
なお、ここで説明したモータ制御の手法は例示であって、これら以外の方法によりモータ11の出力トルクTを制限してもよい。また、上記したマップはいずれも徐々に(滑らかに)変化するものを例示したが、例えばステップ状(階段状)に変化するマップを用いてもよい。
また、上記したシフトポジションSPは一例であって、例えば、Lレンジ(低速モード)やBレンジ(ハイブリッド自動車や電気自動車においてエンジンブレーキ効果が強くなるモード)のように、上記四つのレンジ以外のレンジが設けられていてもよい。また、MT車のようにモータ11の作動状態が細かく分類されていてもよい。このような場合は、モータ11が無負荷状態とならない(すなわち、モータ11が停止していない)レンジは、モータ11が作動する走行レンジとなる。
【0072】
また、上記実施形態では電気自動車10に本制御装置が適用された例を説明したが、電気モータとエンジンとを動力源とするハイブリッド自動車に本制御装置を適用することも当然可能である。また、ウォータポンプは、ハイブリッド車であれば電動ポンプに限らず、エンジンによって駆動されるものでもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 車両ECU
2 インバータECU
3 ポンプ制御部(ポンプ制御手段)
4 モータ制御部(モータ制御手段)
4a 目標トルク設定部
4b 出力トルク制限部
10 電気自動車(車両)
11 モータ(車両動力用のモータ,電気モータ)
12 バッテリ
13 インバータ
14 ウォータポンプ(ポンプ)
15 シフトレバー(シフト装置)
16 アクセルペダル
17 冷却通路
18 ラジエータ
23 温度センサ(温度取得手段)
24 回転数センサ
25 シフトポジションセンサ
26 アクセル開度センサ(APS)
27 車速センサ
0 切り換え時
Z 所定時間
図1
図2
図3
図4
図5