(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記第2電池の出力と前記第2電池の出力上限値との差が所定値未満になった場合、前記第1電池の出力を増加させ、前記第1電池の出力増加後の前記第1電池の電圧を用いて前記第2電池の出力上限値を算出し直す、請求項1〜3のいずれかに記載の車両。
前記制御装置は、前記電気負荷の要求出力と前記第1、2電池の電圧と前記第1、2電池の内部抵抗とを用いて前記第1電池の出力下限値および前記第2電池の出力上限値を算出し、前記第1電池の出力が前記第1電池の出力下限値以上かつ前記第2電池の出力が前記第2電池の出力上限値以下となるように前記第1、第2電池の出力を制御する、請求項1に記載の車両。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態による車両の全体ブロック図である。
図1を参照して、車両は、電源システム1と、電気負荷2と、電子制御装置(Electronic Control Unit、以下「ECU」という)100とを含む。
【0016】
電気負荷2は、電源システム1からの電力で車両駆動力を発生する。電気負荷2は、インバータ30と、第1モータジェネレータ32−1(以下「MG1」ともいう)と、第2モータジェネレータ32−2(以下「MG2」ともいう)とを含む。車両は、エンジン(図示せず)およびMG2の少なくともいずれかの駆動力によって走行するハイブリッド車両である。
【0017】
なお、本発明による車両は、ハイブリッド車両に限定されるものではなく、電力を用いて駆動力を得ることが可能な車両(電気自動車、プラグインハイブリッド車両、燃料電池車など)であればよい。
【0018】
MG1は、エンジンの動力を用いて発電可能に構成される。MG1によって発電された電力は電源システム1およびMG2へ供給される。
【0019】
MG2は、電源システム1から供給される電力およびMG1により発電された電力の少なくとも一方を用いて車両駆動力を発生する。なお、車両の制動時には、MG2による回生発電が行なわれる。MG2により発電された回生電力は、電源システム1へ供給される。
【0020】
インバータ30は、ECU100からの制御信号に基づいて制御される。インバータ30は、第1インバータ30−1と、第2インバータ30−2とを含む。第1インバータ30−1、第2インバータ30−2は、たとえば、三相分のスイッチング素子を含むブリッジ回路から成る。第1インバータ30−1および第2インバータ30−2は、電源システム1に対して互いに並列に接続される。そして、第1インバータ30−1および第2インバータ30−2は、電源システム1から供給される直流電力を交流電力に変換してそれぞれMG1およびMG2へ出力する。また、第1インバータ30−1および第2インバータ30−2は、それぞれMG1およびMG2が発電する交流電力を直流電力に変換して電源システム1へ出力する。
【0021】
電源システム1は、主正極線MPLおよび主負極線MNLによって電気負荷2(具体的にはインバータ30)に接続される。
【0022】
電源システム1は、電池B1,B2と、昇圧コンバータ12と、平滑コンデンサC1,C2とを含む。
【0023】
電池B1,B2は、どちらも、ニッケル水素やリチウムイオン等を含んで構成される二次電源である。電池B1は、昇圧コンバータ12を介して電気負荷2に接続される。一方、電池B2は、昇圧コンバータ12を介さずに電気負荷2に直接接続される。したがって、昇圧コンバータ12(電池B1)と電池B2とは、電気負荷2に対して互いに並列に接続される。
【0024】
一般的に、電池のOCV(Open Circuit Voltage、電流を流さない状態における両端子間電圧)は、電池のSOC(State Of Charge)や温度に応じて変化する。また、電池のCCV(Closed Circuit Voltage、電流を流している状態における両端子間電圧)は、電池の内部抵抗による電圧降下が生じるため、OCVよりも低い値となる。具体的には、電池の内部抵抗を「R」、電池を流れる電流を「I」とした場合、CCV=OCV−IRとなる。
【0025】
以下の説明においては、特記しない限り、「V
1,V
2」はそれぞれ電池B1,B2の実電圧(OCVとCCVとの区別をしない電圧)を示す。また、「OCV
1,OCV
2」はそれぞれ電池B1,B2のOCVを示し、「CCV
1、CCV
2」はそれぞれ電池B1,B2のCCVを示す。
【0026】
本実施の形態において、電池B2のOCV
2は、電池B1のOCV
1よりも高い値に設定される。たとえば、SOCが制御上限値(たとえば80%)、電池温度が常温(たとえば25℃)のときに、OCV
1=200V程度、OCV
2=400V程度に設定してもよい。
【0027】
昇圧コンバータ12は、スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2と、リアクトルL1とを含む。スイッチング素子Q1,Q2は、主正極線MPLと主負極線MNLとの間に互いに直列に接続される。スイッチング素子Q1,Q2として、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。
【0028】
ダイオードD1,D2は、それぞれスイッチング素子Q1,Q2に逆並列に接続される。リアクトルL1の一方端は、正極線PL1を介して電池B1の正極端子に接続される。リアクトルL1の他方端は、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との間の点に接続される。
【0029】
平滑コンデンサC1は、正極線PL1と負極線NL1との間に接続され、正極線PL1および負極線NL1の間の電力変動成分を低減する。平滑コンデンサC2は、主正極線MPLと主負極線MNLとの間に接続され、主正極線MPLおよび主負極線MNLに含まれる電力変動成分を低減する。
【0030】
昇圧コンバータ12のスイッチング動作は、ECU100からの制御信号によって制御される。昇圧コンバータ12の停止時(スイッチング動作を行なっていない時)は、昇圧コンバータ12は、電池B1から入力される電圧V
1をそのまま主正極線MPLおよび主負極線MNLの間に出力する。一方、昇圧コンバータ12の作動時(スイッチング動作を行なっている時)は、昇圧コンバータ12は、電池B1から入力される電圧V
1を電圧V
1と昇圧マージンαとの合計以上の電圧に昇圧して、主正極線MPLおよび主負極線MNLの間に出力する。昇圧マージンαは、昇圧コンバータ12の個々の仕様によって定まる値である。このように、昇圧コンバータ12の出力電圧は、停止時には「V
1」になり、作動時には「V
1+α以上の電圧」になる。したがって、昇圧コンバータ12の出力電圧を、V
1未満の電圧にすることはできず、また、V
1とV
1+αとの間の電圧にすることもできない。たとえば、V
1=200V、α=30Vとすると、昇圧コンバータ12の出力電圧は、200Vとなるか、あるいは230V以上となる。
【0031】
昇圧コンバータ12の出力電圧と電圧V
2とが同じでない場合、電圧が高い方からの電力が電気負荷2に供給され、電圧が低い方からの電力は電気負荷2には供給されない。すなわち、昇圧コンバータ12の出力電圧が電圧V
2よりも高い場合は、電池B1からの電力が電気負荷2に供給される。逆に、昇圧コンバータ12の出力電圧が電圧V
2よりも低い場合は、電池B2からの電力が電気負荷2に供給される。
【0032】
一方、昇圧コンバータ12の出力電圧と電圧V
2とが同じである場合、電池B1,B2の双方からの電力が電気負荷2に供給される。この際、電池B1,B2の出力(単位:ワット)の比率は、昇圧コンバータ12のスイッチング動作のデューティ比をリアクトルL1を流れる電流ILを用いてフィードバック制御することによって、調整することができる。
【0033】
さらに、車両は、電流センサ24−1,24−2,24−3と、電圧センサ25−1,25−2,26とを備える。電流センサ24−1は、電池B1を流れる電流I
1を検出する。電流センサ24−2は、電池B2を流れる電流I
2を検出する。電流センサ24−3は、リアクトルL1を流れる電流ILを検出する。電圧センサ25−1は、電池B1の電圧V
1を検出する。電圧センサ25−1は、電池B2の電圧V
2を検出する。電圧センサ26は、主正極線MPLおよび主負極線MNLの間の電圧VHを検出する。これらの各センサは、検出結果をECU100へ出力する。
【0034】
ECU100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵し、メモリに記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、所定の演算処理を実行するように構成される。
【0035】
ECU100は、車速、アクセル開度(ユーザによるアクセルペダルの操作量)に基づいて車両要求出力Pv(ユーザが要求する車両駆動力、単位はワット)を算出し、車両要求出力Pvを実現するように車両の各機器(電気負荷2、エンジンなど)を制御する。なお、以下の説明では、車両要求出力Pvを、エンジンを用いずにMG1,MG2の出力(電池B1,B2の電力)で実現する場合を例示的に説明する。
【0036】
以上のような構成を備える車両において、V
2>V
1+αである場合、昇圧コンバータ12を作動させて昇圧コンバータ12の出力電圧を電圧V
2に合わせることで、電池B1,B2の双方からの電力を電気負荷2に出力させることができる。
【0037】
しかしながら、電池B2に電流I
2が流れると、電池B2の内部抵抗R
2の影響によってV
2=OCV
2−I
2R
2となり、V
2は降下する。この影響でV
2がV
1+αを下回ってしまうと、昇圧コンバータ12の出力電圧をV
2レベルに合わせることができず、電池B1,B2の双方の電力を電気負荷2に出力することができなくなってしまう。たとえばV
2の降下によってV
1<V
2<V
1+αとなった場合を想定すると、昇圧コンバータ12の作動時は、昇圧コンバータ12の出力電圧(=V
1+α以上の電圧)がV
2よりも高くなるため、電池B1の電力のみが電気負荷2に出力される。一方、昇圧コンバータ12の停止時は、昇圧コンバータ12の出力電圧(=V
1)がV
2よりも低くなるため、電池B2の電力のみが電気負荷2に出力される。
【0038】
そこで、本実施の形態によるECU100は、V
2がV
1+αを下回らないように、電池B2の出力P
2を制限する。具体的には、ECU100は、各電池のSOCや温度をパラメータとしてOCV
1、OCV
2、R
2を算出し、算出されたOCV
1、OCV
2、R
2を用いてV
2がちょうどV
1+αまで降下するときの電池B2の出力P
2を算出する。そして、ECU100は、算出された出力P
2を電池B2の出力上限値P
2max1に設定し、実際の出力P
2を出力上限値P
2max1未満に制限する。
【0039】
図2は、ECU100が電池B1,B2の出力を制御する際の処理手順を示すフローチャートである。
図2に示す各ステップ(以下、ステップを「S」と略す)は、ハードウェア処理によって実現してもよいしソフトウェア処理によって実現してもよい。
図2のフローチャートは、ECU100の作動中に所定周期で繰り返し実行される。
【0040】
S10にて、ECU100は、車速とアクセル開度と車両要求出力Pvとの対応関係が予め定められたマップなどを参照して、実際の車速およびアクセル開度に対応する車両要求出力Pvを算出する。
【0041】
S11にて、ECU100は、OCV
1、OCV
2、R
2を用いてV
2がちょうどV
1+αまで降下するときの出力P
2を算出し、算出された出力P
2を電池B2の出力上限値P
2max1に設定する。なお、OCV
1,OCV
2,R
2は、各電池のSOCや温度をパラメータとするマップなどを参照して算出される。
【0042】
ここで、出力上限値P
2max1の具体的な算出方法の一例を以下に説明する。
電池B2に電流I
2が流れる場合、電池B2の内部抵抗R
2の影響により、V
2(=CCV
2)は、OCV
2に対してI
2R
2分だけ降下する(V
2=OCV
2−I
2R
2となる)。したがって、電池B2の許容電圧降下量をV
downとすると、V
downは下記の式(1a)で表わすことができる。
【0043】
V
down=I
2R
2=OCV
2−(OCV
1+α) …(1a)
出力上限値P
2max1は、その定義より、V
2がOCV
2からV
downだけ降下するときの電池B2の出力P
2であるから、下記の式(1b)の関係式が成立する。
【0044】
P
2max1=(OCV
2−V
down)I
2 …(1b)
ここで、式(1a)より、V
down=OCV
2−(OCV
1+α)、I
2={OCV
2−(OCV
1+α)}/R
2であるから、これらの式を用いて式(1b)を変形すると、下記の式(1c)となる。
【0045】
P
2max1=(OCV
1+α)(OCV
2−OCV
1−α)/R
2 …(1c)
上記の式(1c)にOCV
1、OCV
2、R
2を代入することによって、P
2max1を算出することができる。
【0046】
S12にて、ECU100は、S10で算出されたPvおよびS11で算出されたP
2max1のいずれか小さい方を選択し、選択された値を電池B2の出力P
2に設定する。したがって、PvがP
2max1未満である場合はP
2=Pv(<P
2max1)となり、PvがP
2max1を超える場合はP
2=P
2max1となる。これにより、電池B2の出力P
2が出力上限値P
2max1未満に制限されることになる。
【0047】
S13にて、ECU100は、Pv−P
2を電池B1の出力P
1に設定する。したがって、PvがP
2max1未満である場合、P
2=Pvであるから、P
1=0となる。一方、PvがP
2max1を超える場合、P
2=P
2max1であるから、P
1=Pv−P
2max1となる。これらの説明から明らかなように、本実施の形態においては、電池B2の電力が電池B1の電力よりも優先的に使用される。すなわち、PvがP
2max1を超えるまでは、Pv相当の電力が電池B2から出力され、電池B1の電力は出力されない。一方、PvがP
2max1を超えると、電池B2の出力はP
2max1に制限され、P
2max1を超える分が電池B1から出力される。
【0048】
図3は、ECU100によって制御される電池B1,B2の出力および電圧の変化態様の一例を示す図である。
【0049】
時刻t1以前は、PvがP
2max1未満であるため、P
2=Pv、P
1=0となる。したがって、電池B2のみに電流I
2が流れ、V
2はOCV
2よりもI
2R
2だけ降下する(V
2=OCV
2−I
2R
2)。一方、電池B1には電流が流れないため、V
1はOCV
1に維持される。ただし、時刻t1以前は、V
2の電圧降下後においても、V
2>V
1+αである。
【0050】
時刻t1でPvがP
2max1まで増加すると、P
2がP
2max1に達し、V
2=V
1+αとなる。
【0051】
時刻t1〜t2の期間においては、PvがP
2max1を超えている。この期間において、P
2をP
2max1以上にすると、V
2の電圧降下量がさらに大きくなり、V
2がV
1+αを下回ってしまう。そこで、本実施の形態では、P
2がP
2max1に制限される。これにより、V
2はOCV
1+αに維持されるので、V
2がV
1+αを下回ることが回避される。そのため、電池B1,B2のどちらか一方からしか電気負荷2に電力を出力することができなくなってしまうことを抑制することができる。
【0052】
なお、時刻t1〜t2の期間において、PvがP
2max1を超えた分は、電池B1の出力P
1でまかなわれる。そのため、時刻t1〜t2の期間は、
図3に示すように、電池B1にも電流I
1が流れ、V
1がOCV
1よりもI
1R
1分だけ降下することになる。
【0053】
時刻t2以降は、再びPvがP
2max1未満となるので、時刻t1以前と同様、P
2=Pv、P
1=0となる。したがって、V
2>V
1+αとなる。
【0054】
以上のように、本実施の形態では、内部抵抗による電圧降下によってV
2がV
1+αを下回らないように、電池B2の出力P
2を制限する。そのため、電池B1,B2のどちらか一方からしか電気負荷2に電力を出力することができなくなってしまうことを抑制することができる。
[実施の形態2]
上述の実施の形態1においては、上述したように、PvがP
2max1を超えた分は電池B1の出力P
1でまかなわれる。そのため、電池B1にも電流I
1が流れ、V
1がOCV
1よりもI
1R
1分だけ降下する(V
1=OCV
1−I
1R
1となる)。このV
1の降下分を考慮すれば、V
2の降下をさらに許容できるはずである。
【0055】
そこで、本実施の形態においては、P
2がP
2max1を超えそうなときには、電池B1の出力を増加させてV
1を降下させ、降下後のV
1(=CCV
1)を用いて電池B2の出力上限値を改めて算出し直す。その他の構造、機能、処理は、前述の実施の形態1と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0056】
図4は、本実施の形態のよるECU100が電池B1,B2の出力を制御する際の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図4に示したステップのうち、前述の
図2に示したステップと同じ番号を付しているステップについては、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0057】
S20にて、ECU100は、S10で算出されたPvがS11で算出されたP
2max1を超えそうか否かを判定する。たとえば、ECU100は、PvとP
2max1との差が所定値未満である場合に、PvがP
2max1を超えそうであると判定する。
【0058】
PvがP
2max1を超えそうではない場合(S20にてNO)、ECU100は、S21にてP
1=0に設定し、S22にてP
2=Pvに設定する。
【0059】
一方、PvがP
2max1を超えそうである場合(S20にてYES)、ECU100は、S23にて、Wout1およびPvのいずれか小さい方を選択し、選択された値を電池B1の出力P
1に設定する。ここで、Wout1は、電池B1の状態(SOC、温度など)によって決まる電池B1の最大出力である。したがって、PvがWout1未満である場合はP
1=Pvとなり、PvがWout1を超える場合はP
1=Wout1となる。いずれの場合であっても、電池B1に電流I
1が流れるため、V
1(=CCV
1)がOCV
1−I
1R
1に降下する。
【0060】
S24にて、ECU100は、CCV
1、OCV
2、R
2を用いてV
2がちょうどV
1+αまで降下するときの出力P
2を算出し、算出された出力P
2を電池B2の出力上限値P
2max2に設定する。
【0061】
出力上限値P
2max2は、上述のP
2max1と同様の考え方で算出することができる。すなわち、電池B1,B2にそれぞれ電流I
1,I
2が流れる場合、内部抵抗R
1,R
2の影響により、V
1(=CCV
1)=OCV
1−I
1R
1、V
2(=CCV
2)=OCV
2−I
2R
2となる。したがって、電池B2の許容電圧降下量V
downは下記の式(2a)で表わすことができる。
【0062】
V
down=I
2R
2=OCV
2−(CCV
1+α) …(2a)
出力上限値P
2max2は、その定義より、V
2がOCV
2からV
downだけ降下するときの電池B2の出力P
2であるから、下記の式(2b)の関係式が成立する。
【0063】
P
2max2=(OCV
2−V
down)I
2 …(2b)
ここで、式(3a)より、V
down=OCV
2−(CCV
1+α)、I
2={OCV
2−(CCV
1+α)}/R
2であるから、これらの式を用いて上記の式(2b)を変形すると、下記の式(2c)となる。
【0064】
P
2max2=(CCV
1+α)(OCV
2−CCV
1−α)/R
2 …(2c)
上記の式(2c)にCCV
1、OCV
2、R
2を代入することによって、P
2max2を算出することができる。なお、式(2c)は、上述した式(1c)の「OCV
1」を「CCV
1」に代えたものである。
【0065】
S25にて、ECU100は、Pv−P
1およびP
2max2のいずれか小さい方を選択し、選択された値を電池B2の出力P
2に設定する。これにより、電池B2の出力P
2は、V
1の降下分を考慮して算出し直された出力上限値P
2max2未満に制限されることになる。
【0066】
図5は、本実施の形態によるECU100によって制御される電池B1,B2の出力および電圧の変化態様の一例を示す図である。
【0067】
時刻t11以前は、PvがP
2max1を超えそうではないと判定され、P
2=Pv、P
1=0となる。
【0068】
時刻t11でPvがP
2max1を超えそうであると判定されると、電池B1の出力P
1が0から所定のレートでWout1まで増加される。これにより、電池B1に電流I
1が流れるため、V
1はOCV
1よりも降下する。このV
1の降下分だけ、V
2の降下(P
2の増加)が可能になる。
【0069】
そこで、本実施の形態によるECU100は、時刻t11以降において、V
2=V
1(=CCV
1)+αとなるときのP
2を、出力上限値P
2max2として算出し直す。P
2max2は、V
1の降下が考慮されているので、P
2max1よりも高い値となる。そのため、上述の実施の形態1と同様にV
2がV
1+αを下回ってしまうことを回避しつつ、上述の実施の形態1よりも多くの電力を電池B1,B2から引き出すことが可能となる。すなわち、上述の実施の形態1では、電池B1,B2の合計最大出力はP
2max1+Wout1となるが、本実施の形態では、電池B1,B2の合計最大出力をP
2max2+Wout1(>P
2max1+Wout1)にまで高めることができる。
【0070】
なお、本実施の形態では、時刻t11〜t12の期間は、P
1が最大出力Wout1とされ、不足分(=Pv−Wout1)がP
2でまかなわれる。そのため、P
2は不足分(=Pv−Wout1)に応じて変化するので、V
2も不足分(=Pv−Wout1)に応じて変化する。
【0071】
時刻t12以降は、再びPvがP
2max1を超えそうではないと判定される。そのため、時刻t11以前と同様、P
2=Pv、P
1=0となる。したがって、V
2はV
1+αよりも高い値となる。
【0072】
以上のように、本実施の形態では、PvがP
2max1を超えそうになると、電池B1の出力P
1を増加させてV
1を降下させ、降下後のV
1(=CCV
1)を用いて電池B2の出力上限値を改めて算出し直す。そのため、上述の実施の形態1と同様にV
2がV
1+αを下回ってしまうことを回避しつつ、上述の実施の形態1よりも多くの電力を電池B1,B2から引き出すことが可能となる。
[実施の形態3]
上述の実施の形態2においては、電池B1,B2の併用時に、P
1を最大出力Wout1に固定し、不足分(=Pv−Wout1)をP
2でまかなっていた。
【0073】
これに対し、本実施の形態では、電池B1,B2の併用時に、電池B1,B2の電力を最大限まで引き出すように、P
1とP
2とを協調させて決定する。その他の構造、機能、処理は、前述の実施の形態1と同じであるため、ここでの詳細な説明は繰り返さない。
【0074】
図6は、本実施の形態によるECU100が電池B1,B2の出力を制御する際の処理手順を示すフローチャートである。なお、
図6に示したステップのうち、前述の
図2、4に示したステップと同じ番号を付しているステップについては、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0075】
PvがP
2max1を超えそうである場合(S20にてYES)、ECU100は、S30にて、OCV
1、OCV
2、R
1、R
2を用いて、V
2=V
1+αかつP
1+P
2=PvとなるときのP
1、P
2を算出し、算出したP
1、P
2をそれぞれ電池B1の出力下限値P
1min、電池B2の出力上限値P
2max3に設定する。
【0076】
以下、V
2=V
1+αかつP
1+P
2=PvとなるときのP
1、P
2の算出手法の一例について説明する。なお、下記の式(3a)〜(3n)に限っては、「V
1」はOCV
1を示し、「V
2」はOCV
2を示すものとする。
【0077】
P
1、P
2は、その定義より下記の式(3a)〜(3d)を同時に満たす値でなければならない。
【0078】
V
2−I
2R
2=V
1−I
1R
1+α …(3a)
P
1=(V
1−I
1R
1)I
1 …(3b)
P
2=(V
2−I
2R
2)I
2 …(3c)
Pv=P
1+P
2 …(3d)
式(3a)を変形すると、下記の式(3e)が導かれる。
【0079】
I
2R
2=V
2−V
1−α+I
1R
1 …(3e)
また、式(3b)〜(3d)より、下記の式(3f)〜(3h)が導かれる。
【0080】
Pv=(V
1−I
1R
1)I
1+(V
2−I
2R
2)I
2 …(3f)
R
2Pv=(V
1−I
1R
1)I
1R
2+(V
2−I
2R
2)I
2R
2 …(3g)
R
2Pv=(V
1−I
1R
1)I
1R
2
+(V
1+α−I
1R
1)(V
2−V
1−α+I
1R
1) …(3h)
式(3h)をI
1について整理すると、下記の式(3i)となる。
【0082】
ここで、B=R
2V
1−R
1V
2+2R
1(V
1+α)、C=(V
1+α)
2−(V
1+α)V
2+R
2Pvとすれば、I
2は下記の式(3j)で表わされる。
【0084】
また、式(3c)より、下記の式(3k)が導かれる。
【0086】
これらから、P
1、P
2はそれぞれ下記の式(3m)、(3n)で表わされる。
【0088】
ECU100は、上記の式(3m)、(3n)で算出されるP
1、P
2を、それぞれP
1min、P
2max3に設定する。
【0089】
S31にて、ECU100は、電池B1の出力P
1を、出力下限値P
1minに設定する。S32にて、ECU100は、電池B2の出力P
2を、出力上限値P
2max3に設定する。このように、P
1=P
1min、P
2=P
2max3とすることで、V
2=V
1+αとし、かつP
1+P
2を最大にすることができる。
【0090】
なお、P
1+P
2を最大にする必要がない場合は、P
1≧P
1minの範囲でP
1を変更したり、P
2≦P
2max3の範囲でP
2を変更したりすることは可能である。たとえば、P
1>P
1min、P
2<P
2max3とした場合、V
2>V
1+αとなるため、問題はない。一方、P
1<P
1min、P
2>P
2max3としてしまうと、V
2<V
1+αとなってしまうため、このような範囲にP
1、P
2を設定することはできない。
【0091】
図7は、本実施の形態によるECU100によって制御される電池B1,B2の出力および電圧の変化態様の一例を示す図である。
【0092】
時刻t21以前は、Pv<P
2max1のため、P
2=Pv、P
1=0となる。この期間はV
2>V
1+αとなる。
【0093】
時刻t21〜t22の期間は、Pv>P
2max1となる。この期間は、電池B1,B2の双方の出力でPvがまかなわれる。この際、本実施の形態では、P
1と協調させてP
2を決定する。具体的には、P
1=P
1min、P
2=P
2max3とする。これにより、V
2=V
1+αとしつつ、電池B1,B2の電力を最大限まで引き出すことができる。
【0094】
時刻t22以降は、再びPv<P
2max1となるため、時刻t21以前と同様、P
2=Pv、P
1=0となる。この期間もV
2>V
1+αとなる。
【0095】
以上のように、本実施の形態では、PvがP
2max1を超えそうになると、電池B1の出力P
1を増加させて、電池B1,B2を併用する。この際、電池B1,B2の電力を最大限まで引き出すように、P
1とP
2とを協調させて決定する。そのため、V
2がV
1+αを下回ってしまうことを回避しつつ、電池B1,B2から最大限の電力を引き出すことができる。
[電池B2の接続態様の変形例]
上述の実施の形態1〜3では、
図1に示すように、電池B2を電気負荷2(主正極線MPLおよび主負極線MNL)に直接接続していた。この回路構成においては、MG2の回生電力を用いて電池B1,B2の双方を充電できる。
【0096】
しかしながら、電池B2と電気負荷2との接続態様は
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0097】
たとえば、
図8に示すように、電池B2の正極と主正極線MPLとの間に、電池B2の正極から主正極線MPLに向かう方向を順方向とするダイオードD3を設けてもよい。この回路構成では、MG2の回生発電時に電池B2に過電流が流れ込むのを防ぐことができる。
【0098】
また、
図9に示すように、電池B2の正極と主正極線MPLとの間に、上述のダイオードD3と、ダイオードD3に並列接続されるスイッチング素子Q3とを設けるようにしてもよい。この回路構成では、MG2の回生発電時において、電池B2の充電と過電流防止とをスイッチング素子Q3のオンオフを制御することによって選択的に実現することができる。
【0099】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。