特許第5831409号(P5831409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831409
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化用触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 27/185 20060101AFI20151119BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20151119BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20151119BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20151119BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   B01J27/185 AZAB
   B01J32/00
   B01D53/86 222
   B01J35/02 H
   B01J37/08
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-200629(P2012-200629)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-54597(P2014-54597A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】井元 瑠伊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大地
(72)【発明者】
【氏名】長尾 諭
(72)【発明者】
【氏名】井部 将也
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4505046(JP,B2)
【文献】 特開2013−132580(JP,A)
【文献】 Ikeue K. et al.,Thermostable Rh Catalysts Supported on Metal Phosphates: Effect of Aging on Catalytic Activity for N,Bull. Chem. Soc. Jpn.,2010年,Vol.83,No.3,page.291-297
【文献】 Machida M. et al.,AlPO4 as a Support Capable of Minimizing Threshold Loading of Rh in Automotive Catalysts,Chem. Mater.,2009年,Vol.21,page.1796-1798
【文献】 角谷定宣 他,トリジマイト型オルソリン酸アルミニウム担持アルミナの合成と触媒性能,日本セラミックス協会年会講演予稿集,2013年 3月11日,1P120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリディマイト型リン酸アルミニウム焼成体上に、0.50nm以上、2.0nm以下の平均粒径を有するPt、Rh、Pdからなる群から選択される少なくとも1種の白金族金属を担持してなる、排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記白金族金属がPdである、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
焼成体に対する前記白金族金属の担持量が、0.0001wt%〜2.0wt%である、請求項1または2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
pHが3.5〜4.5になるように調整した水溶液から得たリン酸アルミニウムを1000℃〜1200℃の温度で2時間以上焼成してリン酸アルミニウム焼成体を得る工程と、
前記リン酸アルミニウム焼成体上に、0.50nm以上、2.0nm以下の平均粒径を有するPt、Rh、Pdからなる群から選択される少なくとも1種の白金族金属を担持させる工程と、
を含んでなる、排ガス用浄化触媒の製造方法。
【請求項5】
前記白金族金属がPdである、請求項4に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項6】
焼成体に対する前記白金族金属の担持量が、0.0001wt%〜2.0wt%である、請求項4または5に記載の排ガス浄化触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス浄化用触媒及びその製造方法に関し、さらに特に、排気ガス浄化用白金族金属および卑金属担持リン酸アルミニウム触媒、例えば、自動車等の内燃機関から排出される排ガスに含まれる有害成分を浄化する白金族金属および卑金属担持リン酸アルミニウム触媒、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、排ガス規制が世界的に年々強化されている。
この対応策として、内燃機関においては、排ガス浄化用触媒が用いられる。この排ガス浄化用触媒において、排ガス中のハイドロカーボン(以下、HCと略記することもある。)、COおよび窒素酸化物を効率的に浄化するために、触媒成分としてPt、Pd、Rh等の白金族元素などを含め種々の触媒が使用されている。
【0003】
特許文献1は、トリディマイト型結晶構造を有し、BET比表面積が50〜150m/gである耐熱性AlPO化合物と、該AlPO化合物に担持されているPt、Pd及びRhからなる群から選択される少なくとも1種の貴金属成分とからなることを特徴とする排気ガス浄化用触媒(特許文献1の請求項1)を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4、505、046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排ガス浄化触媒中に含まれる貴金属の量を減らすこと、ならびにエンジンから排出される熱、および燃料に含まれる硫黄成分などによって劣化しにくい排ガス浄化触媒が求められている。さらに排ガス浄化基準に適応するために、エンジン始動時、低速運転時のような排ガス温度が低い条件においても、上記成分をさらに良好に除去できる排ガス浄化装置が必要とされている。
【0006】
従来技術に示されるPd担持AlPO4触媒の熱耐久処理後の活性では、薬液中の担持されるPdの平均粒径によっては、Pdの粒成長が進行し、他の従来の触媒よりも低活性を示し、活性を高めるために改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意努力した結果、トリディマイト型結晶構造を有するAlPOを担体とした白金族金属を担持する触媒において、触媒製造時に白金族金属の平均粒径を制御することによって、上記課題を解決することができ、非常に優れた結果を得ることができることを見いだした。
【0008】
本発明の態様は、以下のようである。
(1)トリディマイト型リン酸アルミニウム焼成体上に、0.50nm以上、2.0nm以下の平均粒径を有するPt、Rh、Pdからなる群から選択される少なくとも1種の白金族金属を担持してなる、排ガス浄化用触媒。
(2)前記白金族金属がPdである、(1)に記載の排ガス浄化用触媒。
(3)焼成体に対する前記白金族金属の担持量が、0.0001wt%〜2.0wt%である、(1)または(2)に記載の排ガス浄化触媒。
(4)pHが3.5〜4.5になるように調整した水溶液から得たリン酸アルミニウムを1000℃〜1200℃の温度で2時間以上焼成してリン酸アルミニウム焼成体を得る工程と、
前記リン酸アルミニウム焼成体上に、Pt、Rh、Pdからなる群から選択される少なくとも1種の白金族金属を担持させる工程と、
を含んでなる、排ガス用浄化触媒の製造方法。
(5)前記白金族金属がPdである、(4)に記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
(6)焼成体に対する前記白金族金属の担持量が、0.0001wt%〜2.0wt%である、(4)または(5)に記載の排ガス浄化触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る排ガス浄化触媒は、排ガス浄化触媒中に含まれる貴金属の量を減らし、ならびにエンジンから排出される熱に対する耐熱性、およびリン酸アルミニウムの有する硫黄などの耐被毒性に優れた性能を活かしつつ、熱耐久処理後であっても、低温で非常にすぐれた触媒活性を発現できるだけでなく、従来の触媒よりもさらなる高活性を示すことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、触媒の活性評価の際の昇温パターンを示すグラフである。
図2図2は、NOx浄化特性、すなわち、製造直後のPd担持AlPO触媒の各Pdの平均粒径((a)実施例1:0.70nm、(b)実施例2:1.0nm、(c)実施例3:2.0nm)、(d)比較例1:0.3nm、(e)比較例2:2.3nm)を有する各サンプルについて、熱耐久処理後のNOxガスの浄化率を測定して、製造直後のPd粒子の平均粒径(nm)に対して、プロットしたグラフである。
図3図3は、製造直後のPd担持AlPO触媒の各Pdの平均粒径((a)実施例1:0.70nm、(b)実施例2:1.0nm、(c)実施例3:2.0nm、(d)比較例1:0.3nm、(e)比較例2:2.3nm)を有する各サンプルについて、熱耐久処理後のパラジウムの結晶子径(nm)を測定して、製造直後のPd粒子の平均粒径(nm)に対して、プロットしたグラフである。
図4図4は、SiO、AlPO、Alの各サンプルについて、O1sの束縛エネルギー(eV)に対する強度をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
なお、本明細書中において、無機物の化合物の名称、または(下記に例示するような)含有される金属の比を用いた表記により、これらの組成を有するように生成させても、不純物などを含めて現実的に生成してしまう組成をも含むものとする。したがって、無機物の化合物の名称または含有される金属の比を用いた表記により、例えば、無機化合物の構造中において、例えば、酸素、水素、窒素などの元素が、化学式中±1原子数以下で過剰または過少に存在している組成の無機化合物、すなわち、例えば、リン酸アルミニウムの場合、AlPO中で、例えば酸素の数が±1の場合のAlPO〜AlPOをも含み、またAl/Pの比率が1±約0.3のものも含み、さらに化合物中に表記されていない水素を不純物として有するものなどをも含むものである。
【0012】
本発明に係るリン酸アルミニウム焼成体は、トリディマイト型結晶構造を有するものである。ただし、トリディマイト型結晶構造の他に、バーリナイト型結晶構造、クリストバライト型結晶構造、またはアモルファスを含むこともできる。
【0013】
本発明に係るリン酸アルミニウム焼成体としては、公知の方法により得られたリン酸アルミニウム焼成体を、特に制限なく用いることができる。
【0014】
リン酸アルミニウム焼成体の製造方法は特に限定されず、中和法などの公知の方法を採用することができる。例えば、Al含有化合物の水溶液中に、Alに対するPのモル比がほぼ当量になるようにリン酸水溶液を加え、さらにアンモニア水を加えてpHを調整して得られた沈殿物を分離して乾燥後、上記の焼成温度で焼成する方法が挙げられる。Al含有化合物としては、例えば、水酸化物、硝酸化物等金属塩が挙げられ、具体的には、Al(OH)、Al(NO等が挙げられる。
【0015】
上記のアルミニウム塩とリン酸を含む混合溶液において用いられる溶媒としては、アルミニウム含有化合物とリン酸を溶解させることができる任意の溶媒、例えば、水などの水性溶媒や有機溶媒等を使用することができる。
【0016】
そして本発明に係るリン酸アルミニウム焼成体は、トリディマイト型結晶構造を有し、例えば、
(a)所定のpHのリン酸アルミニウム水溶液から得たリン酸アルミニウムを所定の温度で所定の時間焼成する方法、
(b)リン酸アルミニウム焼成体を製造するに際して、アルミニウムイオンに対して、リン酸イオンを過剰量加えて、未反応のリン酸イオンを生成物中に残留させる方法、
(c)リン酸アルミニウム焼成体の製造原料中に、所望の細孔径を生成できる直径を有するオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂、フェノール系樹脂等の熱可塑性樹脂などの発泡剤を混合させて、焼成工程で発泡剤を焼失させる方法など、広範な方法により得られたものを用いることができる。
【0017】
ここで、上記(a)における、リン酸アルミニウム生成時の水溶液pH、焼成温度、焼成時間は、トリディマイト型結晶構造に悪影響を与えなければ、特に制限無く、それぞれ約3.0〜約10.0、約1000℃〜1200℃、約1時間〜約10時間の範囲内などの通常使用される条件を使用できる。
【0018】
本発明に係る浄化触媒は、上記リン酸アルミニウム焼成体に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)からなる群から選択される少なくとも1種の白金族金属を担持させて成るものである。担持の形態については、特に制限なく、焼成体上に白金族金属がおおよそ一様に担持されていればよい。
【0019】
担持される白金族金属ナノ粒子の平均粒径は、約0.40nm以上、約0.50nm以上、約0.60nm以上、約0.70nm以上、約0.80nm以上、約0.90nm以上、約1.0nm以上であることができ、約2.2nm以下、約2.1nm以下、約2.0nm以下、約1.9nm以下、約1.8nm以下、約1.7nm以下、約1.6nm以下、約1.5nm以下、約1.4nm以下、約1.3nm以下、約1.2nm以下、約1.1nm以下であることができる。
その中でも約0.50nm以上、約2.0nm以下であることが好ましい。
【0020】
白金族金属のリン酸アルミニウム焼成体に対する量は、約0.0001wt%以上、約0.001wt%以上、約0.01wt%以上、約0.1wt%以上、約0.20wt%以上、約0.30wt%以上であることができ、約2.0wt%以下、約1.9wt%以下、約1.8wt%以下、約1.7wt%以下、約1.6wt%以下、約1.5wt%以下、約1.4wt%以下、約1.3wt%以下、約1.2wt%以下、約1.1wt%以下、約1.0wt%以下、約0.90wt%以下、約0.80wt%以下、約0.70wt%以下、約0.60wt%以下、約0.50wt%以下、約0.40wt%以下であることができる。
担持の形態については、特に制限なく、焼成体の担体上に白金族金属がおおよそ一様に担持されていればよい。
【0021】
白金族金属ナノ粒子をリン酸アルミニウム焼成体に担持させる方法としては、リン酸アルミニウム焼成体に悪影響を与えなければ、特に制限なく、含浸担持法、表面析出法等、一般的な方法を用いることができる。
【0022】
白金族金属ナノ粒子の粒径を揃えるために、所望の粒径の白金族金属の粒子を提供できる白金族金属のコロイドを用いることもできる。他の白金族金属源、例えば酢酸白金族金属化合物、硝酸白金族金属化合物、塩化白金族金属化合物、これらから合成した白金族金属ナノ粒子を用いてもよい。ただし、リン酸アルミニウムは、強酸に易溶であるため、硝酸イオン、塩化物イオン等を含まないことが好ましい。
【0023】
本発明に係る触媒では、下記実施例1〜3、および図2のグラフに示すように、約0.50nm〜約2.0nmの平均粒径を有するPd粒子を含浸法により担持したAlPO触媒では、熱耐久処理後でも、600℃のNOxについて、約78%の浄化率を示す従来触媒(Pd担持Al)(図2中(d)〜(e))より優れた浄化率80%超の浄化能(図2中(a)〜(c))を示しており、高活性を有する白金族金属の最適粒径範囲が存在することが確認された。
【0024】
そして、熱耐久処理後の結晶子径について調べてみると、下記実施例1〜3および比較例1、2、ならびに図3のグラフに示されるように、約0.50nm未満および約2.0nm超の白金族金属を含浸法により担持したAlPO触媒では、熱耐久処理後において、約40nm超(図3中(d)、(e))に結晶子径が大幅に成長してしまっているが、約0.50nm以上、約2.0nm以下の白金族金属を含浸法により担持したAlPO触媒では((図3中(a)〜(c))では約40nm未満と、結晶子径の成長が抑制されていたことが判明した。
【0025】
一方、下記比較例3〜7および図3のグラフに示されるように、熱耐久処理後の結晶子径については、従来触媒であるPd担持Al触媒では約10nm〜約25nm(図3中(f)〜(j))とそれほど大きくは成長していない。
【0026】
そして、本発明の態様に係る触媒では、熱耐久処理後に結晶子径((図3中(a)〜(c))が従来触媒より大きくなっている((図3中(f)〜(j))にもかかわらず、触媒活性((図2中(a)〜(c))は、従来触媒より高い(図2中点線)という、驚くべき結果が得られている。
【0027】
こうしたことから、熱耐久処理後でも、あまり白金族金属の結晶子径が成長しない従来触媒である白金族金属担持Al触媒とは対照的に、白金族金属担持AlPO触媒では、熱耐久処理後の触媒の活性に、触媒製造時の白金族金属粒子の平均粒径が、大きく影響するようであることが判明した。そして、白金族金属担持AlPO触媒製造時の白金族金属の平均粒径を約0.50〜約2.0nmとすることにより、熱耐久処理前後のいずれにおいても、白金族金属の結晶子径の成長を抑制して、NOxなどの排ガスに対して80%以上の素晴らしい浄化能を示すことができるだけでなく、従来触媒よりも遙かにすぐれた浄化能を有することが判明した。
【0028】
相互作用の仮指標である、担体の酸素イオンの電子密度(XPSで測定したO(酸素)の1s束縛エネルギー)(図4)を見てみると、AlPO4のO1s束縛エネルギーは、Al23のO1s束縛エネルギーより高く、酸性質であって、相互作用が小さい。
【0029】
何らかの理論に拘束されることを望まないが、酸性担体では、白金族金属と担体との相互作用がこのように小さいため、熱耐久処理前の白金族金属の粒径が小さすぎると白金族金属が熱耐久処理時に担体上を移動しやすく、白金族金属粒子同士が融合して粒成長が進行すると考えられる。一方、熱耐久処理前の白金族金属の平均粒径が大きい場合は、近傍の白金族金属粒子との融合が起こりやすくなり、粒成長し、活性が低下すると考えられる。したがって、AlPO4のような、白金族金属との相互作用の小さい酸性担体においては、適度な粒径の白金族金属を担持させることで、熱耐久処理後の白金族金属の粒成長、そして粒成長による活性低下を抑制することができると考えられる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
<合成例1:AlPO4の合成>
工程1−1:室温下で、ビーカーにイオン交換水50mlを加え、撹拌子を入れ、撹拌した。
工程1−2:0.05molの硝酸アルミニウム9水和物(ナカライテスク製)を秤量し、上記イオン交換水に加え、撹拌しながら溶解させた。
工程1−3:別のビーカーに85wt%のリン酸(ナカライテスク製)をリン酸量換算で0.05mol秤量し、工程1−2の水に加え、撹拌を続けた(ビーカーに残ったリン酸は、イオン交換水を用いて、混合液のビーカーに加えた)。
工程1−4:混合液のビーカーに、28wt%アンモニア水(ナカライテスク製)を、ピペットを用いて少量ずつ滴下し、pHが4.3±0.3となるように調整した。
工程1−5:混合液のビーカーに蓋をして12時間室温で撹拌した。
工程1−6:混合液を遠心分離機(3000rpm×10分間)にかけ、沈殿物と上澄みに分けた。
工程1−7:沈殿物にイオン交換水を適量加え、もう一度遠心分離機にかけた(洗浄工程)。
工程1−8:沈殿物を120℃の乾燥機で12時間乾燥させた。
工程1−9:乾燥物を乳鉢に入れ、乳棒を使って解砕し、粉末状にした。
工程1−10:粉末を電気炉中1100℃で5時間焼成し、約6gの粉末を得た。

<製造例1:Pd担持体の製造>
工程2−1:室温下で、AlPO4粉末を6g秤量し、イオン交換水30mlと撹拌子を入れたビーカーに入れ、撹拌した。
工程2−2:Pd粒子の平均粒径0.7nmの硝酸パラジウム水溶液を、Pd担持量が0.50wt%となるよう秤量し、工程2−1のビーカーに加え、撹拌した。
工程2−3:工程2−2のビーカーを加熱撹拌し、水分がなくなるまで蒸発乾固させた。
工程2−4:工程2−3の乾固物を120℃の乾燥機中で12時間乾燥させた。
工程2−5:乾燥物を乳鉢に入れ、乳棒を使って解砕し、粉末状にした。
工程2−6:この担持粉末を電気炉中500℃で3時間焼成した。
工程2−7:焼成後の粉末をペレット状に成型した。
【0032】
(実施例1)
上記<合成例1>および<製造例1>の手順により、平均粒径0.70nmのPd担持AlPO4触媒を得た。
(実施例2、3)
工程2−2中の硝酸パラジウム水溶液の代わりに、パラジウム−pvpコロイド溶液(Pd粒子の平均粒径:1.0nm)(実施例2)、パラジウム−pvpコロイド溶液(Pd粒子の平均粒径:2.0nm)(実施例3)をそれぞれ用いたことを除き、(実施例1)と同様の手順で、触媒粉末(実施例2、3)を得た。
(比較例1、2)
工程2−2中の硝酸パラジウム水溶液の代わりに、酢酸パラジウム水溶液(Pd粒子の平均粒径:0.30nm)(比較例1)、パラジウム−pvpコロイド溶液(Pd粒子の平均粒径:2.3nm)(比較例2)をそれぞれ用いたことを除き、(実施例1)と同様の手順で、触媒粉末(比較例1、2)を得た。
(比較例3〜7)
担体として<合成例1>で得たAlPOの代わりに、Al(サソール製、La1.0wt%添加Al)を使用した以外は、それぞれ比較例1、実施例1、実施例2、実施例3、比較例2と同様の手順で触媒粉末(比較例3〜7)を得た。
【0033】
<製造後のPdの平均粒径の測定>
Pd粒子の平均粒径は、硝酸パラジウムもしくは酢酸パラジウム等の水溶液であるPd薬液またはコロイド水溶液を採取し、ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ−2(大塚電子株式会社製)を用いて室温下で測定し、粒子径分布の積算値50%における粒径とした。
【0034】
<熱耐久処理後のPdの結晶子径の測定>
熱耐久処理後のPdの結晶子径を、試料水平型強力X線回析装置 RINT−TTRIII(メーカー名:(株)リガク)を用いて測定した。
結晶子径の算出には2θ=40.0〜40.2°付近をPdのピークとして使用した。
【0035】
(触媒評価法)
触媒粉末を2tの圧力を加えて圧縮成形した後、これを粉砕し直径2.5mm程度のペレットに圧縮成形したものを評価サンプルとした。
<熱耐久処理>
工程3−1:ペレットを3g秤量し、COとO2ガスおよび水蒸気を添加できるアルミナ製反応管に入れた。
工程3−2:この反応管を電気炉で加熱し、反応管内に、2体積%のCO(残余N)のガスと、5体積%のO(残余N)のガスとを2分間隔で交互に流通させた。水蒸気をガスに常時5体積%添加した。また、ガス量は10L/分とした。
工程3−3:アルミナ製反応管内の温度が1000℃になるよう、電気炉を加熱し、5時間の間ガス流通下で保持した。
【0036】
<触媒の活性評価>
熱耐久処理後の触媒の活性評価を、ガス流通式の触媒評価装置を用いて浄化率を測定することにより行った。
サンプル量は、各1.5gとした。
モデルガスとして、体積で、CO:0.65%、C:3000ppmC、NO:1500ppm、O:0.7%、HO:3%、CO:10%、N:残余のモデルガスを用いた。ガス流量は、15L/分であり、SVは約300000時間−1であった。
浄化率測定は、図1のグラフに示すように、150℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し(昇温)、5分間、150℃に保った後に(安定化)、20℃/分で600℃まで昇温し(昇温)、600℃で3分間維持して、触媒通過後のガス組成を、赤外分光計(メーカー名:(株)堀場製作所、型番:MEXA−6000FT)を用いて測定し(浄化率測定保持)、この測定値から下記の式により浄化率を算出した。
浄化率(%)=(触媒の入りガス濃度(体積%)−触媒の出ガス濃度(体積%))/触媒の入りガス濃度(体積%)×100
【0037】
(結果)
実施例1〜3および比較例1〜2で得られたリン酸アルミニウム焼成体の粉末をX線回折計器(メーカー名:(株)リガク、型番:RINT)で測定したところ、トリディマイト型結晶構造を有するリン酸アルミニウム焼成体の生成が確認された。
【0038】
さらに、図1および図2に触媒特性評価結果のグラフを示す。
本発明に係る触媒では、下記実施例1〜3、および図2のグラフに示されているように、平均粒径0.50nm〜2.0nmのPd粒子を含浸法により0.50wt%担持したAlPO触媒では、600℃のNOxについて、熱耐久処理後でも、驚いたことに、約78%の浄化率を示す従来触媒(Pd担持Al)(図2中(d)〜(e))より優れた浄化率80%超の浄化能(図2中(a)〜(c))を示した。
【0039】
そして、下記実施例1〜3および比較例1、2、ならびに図3のグラフに示されるように、0.50nm未満および2.0nm超の平均粒径のPd粒子を含浸法により担持したAlPO触媒では、熱耐久処理後において、約40nm超(図3中(d)、(e))と、結晶子径が大幅に成長してしまい、本発明に係る触媒(図3中(a)〜(c))より、大きな粒径となってしまった。
【0040】
上記のように、本発明の態様に係る平均粒径0.50nm〜2.0nmのPd粒子を担持したAlPO触媒(実施例1〜3)は、平均粒径が0.50nm未満若しくは2.0nm超(比較例1、2)であるPd粒子を担持するAlPO触媒、およびPd担体Al触媒(比較例3〜7)の両方に対して、熱耐久処理後でも良好な触媒活性を維持した。そして、本発明の態様に係る触媒と、比較例および従来の触媒との性能差には、上記平均粒径0.50nm〜2.0nmのPd粒子による、AlPO上での粒成長の抑制が、大きく影響することが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上のように、本発明に係る排ガス浄化触媒は、熱耐久処理後であっても、低温条件下において、排ガス浄化触媒として良好な性能を有するものである。こうしたことから、本発明に係る酸化触媒の用途は、排ガス浄化触媒に限られず、広い分野において様々な用途に利用することができる。
図1
図2
図3
図4