(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シード層は、Cr、Ti、Ta、Pd、Ni又はNiCrからなる接着層と、前記接着層に重ねて設けられた前記めっき層と同一材料からなるめっき下地層とをこの順で形成してなる2層構造を有する、請求項1又は2に記載のコイル部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、セミアディティブ法では液体の感光性樹脂をスピンコート法により塗布し、これを露光および現像してレジストパターンを形成しているため、レジストパターンを十分に厚く形成することが難しかった。したがって、例えば100μm程度の非常に厚いコイルパターンを形成することが困難であった。
【0006】
また、コイルパターンの底面はスパッタリング等で形成されたシード層からなり、下地面との密着性が高いが、コイルパターンの側面は電解めっきにより成長した部分からなり、当該コイルパターンを形成した後に形成された絶縁樹脂材料と接しているため、コイルパターンの側面と絶縁樹脂材料との密着性が悪いという問題がある。コイルパターンには大電流が流れるので発熱によって熱膨張しやすいが、コイルパターンの側面と絶縁樹脂材料との密着性が悪いとコイルパターンが熱膨張と収縮を繰り返したときに絶縁樹脂材料から剥離しやすく、コイルパターンと絶縁樹脂材料との隙間に水分が侵入してコイルパターンのマイグレーションが生じるおそれがある。このような問題はコイル導体の断面がハイアスペクトであるほど顕著である。
【0007】
また、セミアディティブ法では、コイルパターンの形成時に使用したレジストパターンが除去され、コイルパターン間のスペースには新たな絶縁樹脂材料がスピンコート法により充填される。しかし、コイルパターンをハイアスペクトにするとその上方を覆う絶縁樹脂材料の上面の凹凸が激しくなり、多層コイル構造において上層のコイルパターンの加工精度が大幅に低下するという問題がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、コイルパターンをハイアスペクトにしても熱剥離やマイグレーションを防止することができ、高性能で信頼性の高いコイル部品およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、ハイアスペクトなコイルパターンであっても上面の平坦性を確保することができ、コイル層を積み重ねやすいコイル部品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明によるコイル部品は、少なくとも一つのコイル層を有し、前記コイル層は、開口パターンを有するフレーム層と、前記フレーム層と同一平面上に形成されたコイルパターンを含む導体層とを備え、前記開口パターンは、前記コイルパターンのネガパターンを含み、前記コイルパターンは、前記開口パターンの内部に形成されており、前記コイルパターンは、前記開口パターンの少なくとも内側側面を覆うシード層と、前記シード層の表面に設けられためっき層とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、コイルパターンのシード層がフレーム層の内側側面に接して設けられているので、フレーム層との接着力を高めることができる。したがって、コイルパターンをアイアスペクトにしても熱剥離やマイグレーションを防止することができ、高性能で信頼性の高いコイル部品を提供することができる。
【0012】
本発明において、前記シード層は前記めっき層と異なる材料を含むことが好ましい。この場合、前記シード層は、Cr、Ti、Ta、Pd、Ni又はNiCrからなる接着層と、前記接着層に重ねて設けられた前記めっき層と同一材料からなるめっき下地層とをこの順で形成してなる2層構造を有することが特に好ましい。このようなシード層を有するコイルパターンによれば、フレーム層との接着性を高めることができ、高性能で信頼性の高いコイル部品を実現することができる。
【0013】
前記コイルパターンの断面のアスペクト比は1以上であることが好ましい。また、前記開口パターンの前記内側側面を覆う前記シード層の高さは前記フレーム層の高さの半分以上であることが好ましい。コイルパターンのアスペクト比が1以上であれば小型で直流抵抗が低いコイルを実現できる反面、コイルパターンの熱剥離やマイグレーションが発生しやすい。しかし、上記構成によればかかる問題を解決することができ、シード層の高さがフレーム層の高さの半分以上であれば本発明におけるコイルパターンの側面とフレーム層との接着性を高める効果を確実に得ることができる。
【0014】
前記フレーム層は樹脂シートからなることが好ましい。コイルパターンをハイアスペクトにすると直流抵抗を低減でき、高性能なコイル部品を実現できるが、コイルパターンの熱剥離やマイグレーションが発生しやすい。さらに、スパイラルパターンの上面の凹凸が激しくなり、その上層にコイルパターンを積層する場合に下地面の平坦性の確保が難しい。しかし、フレーム層に樹脂シートを用いた場合にはかかる問題を容易に解決することができ、多層構造のコイル部品を容易に製造することができる。
【0015】
前記開口パターンの平面形状はスパイラルパターンを含み、前記コイルパターンはスパイラル導体を含むことが好ましい。コイルパターンがハイアスペクトなスパイラル導体である場合、熱剥離やマイグレーションの問題が発生しやすい。さらに、スパイラルパターンの上面の凹凸が激しくなり、その上層にコイルパターンを積層する場合にその下地面の平坦性の確保が難しい。しかし、本発明によればかかる問題を解決することができ、信頼性の高いコイル部品を実現することができる。
【0016】
前記開口パターンの前記内側側面は、前記フレーム層の積層方向の下方から上方に向かって開口幅が狭くなるように傾斜した逆テーパー形状を有することが好ましい。この構成によれば、コイルパターンのシード層がフレーム層の内側側面に接して設けられた構造のコイル部品を例えばイオンミリング法を用いて容易に製造することができる。
【0017】
本発明によるコイル部品は、複数の前記コイル層の積層構造を有することが好ましい。コイルパターンがハイアスペクトである場合、スパイラルパターンの上面の凹凸が激しくなり、その上層にコイルパターンを積層する場合に下地面の平坦性の確保が難しい。しかし、本発明によればかかる問題を解決することができ、信頼性の高いコイル部品を実現することができる。
【0018】
また、本発明によるコイル部品の製造方法は、フレーム層を形成する工程と、前記フレーム層と同一平面上にコイルパターンを含む導体層を形成する工程とを備え、前記フレーム層を形成する工程は、樹脂シートを貼り付ける工程と、前記樹脂シートに前記コイルパターンのネガパターンを含む開口パターンを形成する工程とを含み、前記導体層を形成する工程は、前記開口パターンが形成された前記樹脂シートの全面にシード層を形成する工程と、前記樹脂シートの上面に形成されたシード層を選択的に除去し、当該シード層を前記開口パターンの少なくとも内側側面に残す工程と、電解めっきにより前記シード層上にめっき層を形成して前記開口の内部に前記シード層と前記めっき層からなる前記導体層を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、樹脂シートをコイル間絶縁材料(永久材)として用いるので、ハイアスペクトなコイルパターンを確実に形成することができ、またコイルパターンとフレーム層との密着性を高めることができる。また、樹脂シートを用いることでコイルパターンの上面の平坦性を高めることができ、その上層に積み上げられるコイルパターンの加工精度を高めることができる。したがって、多層構造のコイル部品の信頼性を高めることができる。
【0020】
前記樹脂シートの上面に形成されたシード層を選択的に除去する工程においては、当該シード層を前記開口パターンの前記内側側面及び底面に残すことが好ましい。これによれば、開口パターンの内部にコイル層を確実に形成することができる。
【0021】
本発明において、前記コイルパターンの断面のアスペクト比は1以上であることが好ましい。また、前記樹脂シートの上面に形成されたシード層を選択的に除去する工程は、イオンの出射方向に対して前記フレーム層の上面を斜めに傾けた状態でイオンミリングすることにより行うことが好ましい。これによれば、ハイアスペクトなコイルパターンを有する多層構造のコイル部品を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、コイルパターンをハイアスペクトにしても熱剥離やマイグレーションを防止することができ、高性能で信頼性の高いコイル部品およびその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、ハイアスペクトなコイルパターンであっても上面の平坦性を確保することができ、コイル層を積み重ねやすいコイル部品およびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品1の外観構造を示す略斜視図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品1は4端子構造を有するコモンモードフィルタであって、基板10と、基板10の上面に設けられた機能層11と、機能層11の上面に設けられた第1〜第4バンプ電極12a〜12dと、バンプ電極12a〜12dの形成位置を除いた機能層11の上面に設けられたカバー層13とを備えている。
【0027】
図示のように、コイル部品1は略直方体状の表面実装型チップ部品であり、上面1a、底面1b、X方向と平行な2つの側面1c,1d、Y方向と平行な2つの側面1e,1fを有している。なお、
図1のコイル部品1は実装面が上向きの状態であり、実装時には上下反転し、バンプ電極12a〜12d側を下向きにして使用される。
【0028】
基板10は、コイル部品1の機械的強度を確保する役割を果たすものである。基板10の材料としては例えば焼結フェライト等の磁性セラミック材料を用いてもよく、アルミナや非磁性フェライト等の非磁性セラミック材料を用いてもよい。磁性セラミック材料を用いた場合には基板10をコイル素子の閉磁路として機能させることができる。特に限定されるものではないが、チップサイズが0.65×0.50×0.30(mm)であるとき、基板10の厚さは0.2mm程度とすることができる。
【0029】
機能層11は、基板10とカバー層13との間に設けられたコイル素子を含む層である。詳細は後述するが、機能層11は絶縁層と導体層とを交互に積層してなる多層構造を有している。このように、本実施形態によるコイル部品1はいわゆる薄膜タイプであって、磁性コアに導線を巻回した構造を有する巻線タイプとは区別されるものである。
【0030】
第1〜第4のバンプ電極12a〜12dは、コイル素子の外部端子電極である。第1および第2のバンプ電極12a、12bはコイル部品1の上面1aと一方の側面1cに露出面を有するL字電極を構成しており、第3および第4のバンプ電極12c、12dはコイル部品1の上面1aと反対側の側面1dに露出面を有するL字電極を構成している。
【0031】
カバー層13は、コイル部品1の実装面を構成する層であり、基板10と共に機能層11を機械的および電気的に保護する。ただし、カバー層13の機械的強度は基板10よりも小さいため、強度面では補助的な役割を果たすものである。さらにカバー層13は、第1〜第4のバンプ電極12a〜12dを機械的に支持する役割を果たす。カバー層13としては、フェライト粉を含有するエポキシ樹脂(複合フェライト)を用いてもよく、フェライト粉を含有しないエポキシ樹脂を用いてもよい。複合フェライトを用いた場合にはカバー層13をコイル部品1の閉磁路として機能させることができる。
【0032】
図2は、コイル部品1の層構造を詳細に示す略分解斜視図である。
【0033】
図2に示すように、機能層11は、基板10からカバー層13に向かって順に積層された絶縁層15a〜15eと、絶縁層15a〜15d上にそれぞれ形成されたフレーム層16a〜16dと、フレーム層16aとともに絶縁層15a上に形成された第1のスパイラル導体19を含む導体層17aと、フレーム層16bとともに絶縁層15b上に形成された第2のスパイラル導体20を含む導体層17bと、フレーム層16cとともに絶縁層15c上に形成された第3のスパイラル導体21を含む導体層17cと、フレーム層16dとともに絶縁層15d上に形成された第4のスパイラル導体22を含む導体層17dとを備えている。
【0034】
絶縁層15a〜15eは、異なる導体層に設けられた導体パターン間を絶縁すると共に、導体パターンが形成される下地面の平坦性を確保する役割を果たす。特に、絶縁層15aは、基板10の表面の凹凸を吸収し、導体パターンの加工精度を高める役割を果たす。絶縁層15a〜15eの材料としては、電気的絶縁性に優れ、加工が容易な感光性樹脂を用いることが好ましく、特に限定されるものではないが、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂を用いることができる。絶縁層の厚さは5〜10μmであることが好ましい。
【0035】
フレーム層16a〜16dは、同一平面上に形成される導体パターンと同一形状の開口パターン(ネガパターン)を有する絶縁樹脂層である。フレーム層16a〜16dは、導体パターンの側面を支持する役割を果たすものであり、そのため導体パターン間の隙間を埋めるように設けられている。フレーム層16a〜16dの材料としては、電気的絶縁性に優れ、加工が容易な感光性樹脂シートを用いることが好ましく、特に限定されるものではないが、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂を用いることができる。フレーム層16a〜16dの厚さは例えば100μmとすることができる。
【0036】
絶縁層15a上には第1のスパイラル導体19とともに第1の引き出し導体23および内部端子電極29a〜29dが設けられており、絶縁層15b上には第2のスパイラル導体20とともに第2の引き出し導体24および内部端子電極29a〜29dが設けられている。絶縁層15c上には第3のスパイラル導体21とともに第3の引き出し導体25および内部端子電極29a〜29dが設けられており、絶縁層15d上には第4のスパイラル導体22とともに第4の引き出し導体26および内部端子電極29a〜29dが設けられている。内部端子電極29a〜29dは、絶縁層15b〜15eを貫通するように設けられたスルーホール電極である。
【0037】
第1のスパイラル導体19の外周端は第1の引き出し導体23を介して第1の内部端子電極29aに接続されており、第2のスパイラル導体20の外周端は第2の引き出し導体24を介して第3の内部端子電極29cに接続されている。さらに、第1および第2のスパイラル導体19,20の内周端どうしは絶縁層15bを貫通する第1のスルーホール導体27を介して互いに接続されている。そのため、第1および第2のスパイラル導体19,20は2つのコイルの直列回路からなる単一のインダクタを構成している。
【0038】
第3のスパイラル導体21の外周端は第3の引き出し導体25を介して第2の内部端子電極29bに接続されており、第4のスパイラル導体22の外周端は第4の引き出し導体26を介して第4の内部端子電極29dに接続されている。さらに、第3および第4のスパイラル導体21,22の内周端どうしは絶縁層15dを貫通する第2のスルーホール導体28を介して互いに接続されている。そのため、第3および第4のスパイラル導体21,22は2つのコイルの直列回路からなる単一のインダクタを構成している。
【0039】
第1〜第4のスパイラル導体19〜22は実質的に同一の平面形状を有しており、しかも平面視で同じ位置に設けられて互いに重なり合っている。第1のスパイラル導体19はその外周端から内周端に向かって時計回りであり、第2のスパイラル導体20は逆にその内周端から外周端に向かって時計回りであるので、内部端子電極29aから内部端子電極29cに電流を流すとき、第1および第2のスパイラル導体19、20にそれぞれ流れる電流により発生する磁束の向きは同じになる。同様に、内部端子電極29bから内部端子電極29dに電流を流すとき、第3および第4のスパイラル導体21,22にそれぞれ流れる電流により発生する磁束の向きは互いに同じになり、さらに上記第1および第2のスパイラル導体19、20による磁束の向きとも同じになる。したがって、第1〜第4のスパイラル導体19〜22間には強い磁気結合が生じている。
【0040】
第1〜第4のスパイラル導体19〜22の外形は円形スパイラルである。円形スパイラル導体は高周波での減衰が少ないため、高周波用インダクタンスとして好ましく用いることができる。なお、スパイラル導体は真円であってもよく、長円であってもよく、楕円であってもよい。また、略矩形であってもかまわない。なお、第1〜第4のスパイラル導体19〜22の上下方向の位置関係は特に限定されず、例えば第1および第2のスパイラル導体19,20を第3および第4のスパイラル導体21,22よりも上層に配置してもかまわない。
【0041】
絶縁層15d上には第1〜第4のバンプ電極12a〜12dがそれぞれ設けられている。第1〜第4のバンプ電極12a〜12dは内部端子電極29a〜29dにそれぞれ接続されている。なお、本明細書において「バンプ電極」とは、フリップチップボンダーを用いてCu,Au等の金属ボールを熱圧着することにより形成されるものとは異なり、めっき処理により形成された厚膜めっき電極を意味する。特に限定されるものではないが、バンプ電極の材料としてはCuを用いることが好ましい。バンプ電極の厚さは、カバー層13の厚さと同等かそれ以上であり、0.08〜0.1mm程度とすることができる。
【0042】
図3は、
図2のY
0−Y
0線に沿った機能層11の側面断面図である。
【0043】
図3に示すように、機能層11は、第1〜第4のコイル層14a〜14dをこの順で積層してなる多層構造を有しており、第1のコイル層14aは絶縁層15a、フレーム層16aおよび導体層17aからなり、第2のコイル層14bは絶縁層15b、フレーム層16bおよび導体層17bからなり、第3のコイル層14cは絶縁層15c、フレーム層16cおよび導体層17cからなり、第4のコイル層14dは絶縁層15d、フレーム層16dおよび導体層17dからなる。
【0044】
第1〜第4の絶縁層15a〜15dの上面にはフレーム層16a〜16dがそれぞれ設けられており、フレーム層16a〜16dには開口パターン18a〜18dがそれぞれ形成されている。開口パターン18a〜18dは第1〜第4のスパイラル導体19〜21等の導体パターンのネガパターンであり、開口パターン18a〜18dの内部に導体層17a〜17dの導体パターンが形成されている。
【0045】
第2のスパイラル導体20の内周端は、絶縁層15bを貫通するスルーホール導体27を介して第1のスパイラル導体19の内周端に接続されており、第4のスパイラル導体22の内周端は、第4の絶縁層15dを貫通するスルーホール導体28を介して第3のスパイラル導体21の内周端に接続されている。導体層17b〜17dの内部端子電極29a〜29dはその下地面を構成する絶縁層15b〜15dを貫通して下層の内部端子電極29a〜29dに接続されており、さらにバンプ電極12a〜12dは第5の絶縁層15eを貫通して対応する内部端子電極29a〜29dにそれぞれ接続されている。
【0046】
直流抵抗を低減するため、第1〜第4のスパイラル導体19〜22はできるだけ厚いほうがよく、その断面のアスペクト比は1以上であることが好ましい。具体的には、スパイラル導体の厚さを100μmとし、幅を20μmとすることができる。アスペクト比が高いスパイラル導体を高精度に形成するためには、直立するスパイラル導体の側面がしっかりと支持されている必要があり、本実施形態ではスパイラル導体19〜22の側面がフレーム層16a〜16dよって支持されている。
【0047】
スパイラル導体19〜22を含む各導体層17a〜17dの導体パターンは、シード層30とめっき層31の積層構造を有し、シード層30は開口パターン18a〜18dの底面のみならず内側側面も覆っている。シード層30はその下地面に密着する緻密な導体層であるため、下地面との密着性が高く、導体パターンの熱剥離やマイグレーションが生じにくい。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によるコイル部品1は、スパイラル導体19〜22を含む導体パターンがシード層30とめっき層31からなり、シード層30は開口パターンの底面と内側側面の両方を覆っているので、アスペクト比が高いスパイラル導体19〜22を容易に形成することができる。また、導体パターンのマイグレーションや熱剥離の問題がなく、高性能で信頼性の高いコイル部品を実現することができる。
【0049】
次にコイル部品1の製造方法について説明する。
【0050】
図4は、コイル部品1の製造方法を説明するための略断面図である。なお、
図4では説明の便宜上、1つのコイル部品だけを示しているが、実際の製造では一枚の大きな集合基板上に複数個のコイル部品を同時に形成する量産工程が採られる。
【0051】
コイル部品1の製造では、まず基板10を用意し(
図4(a))、基板10の上面に機能層11を形成する(
図4(b)〜(i))。機能層11はいわゆる薄膜工法によって形成される。薄膜工法とは、感光性樹脂を塗布し、これを露光および現像して絶縁層を形成した後、絶縁層の表面に導体パターンを形成する工程を繰り返すことにより、絶縁層および導体層が交互に形成された多層膜を形成する方法である。本実施形態による機能層11は、第1〜第5の絶縁層15a〜15eと第1〜第4の導体層17a〜17dとをこの順で交互に積層したものである。さらに本実施形態では、第1〜第4の導体層17a〜17dと同一平面上にコイル間絶縁材料(永久材)としての第1〜第4のフレーム層16a〜16dがそれぞれ形成される。
【0052】
機能層11の形成工程では、まず基板10の上面の全面に絶縁層15aを形成する(
図4(b))。絶縁層15aは感光性樹脂をスピンコート法により塗布し、露光することにより形成することができる。
【0053】
次に、絶縁層15aの上面にフレーム層16aを形成する(
図4(c))。フレーム層16aは感光性樹脂シートを貼り付けることにより形成することが好ましい。これによれば十分な厚さのフレーム層を形成することができ、またその上面の平坦性を高めることができる。
【0054】
次に、フレーム層16aを露光および現像することにより開口パターン18aを形成する(
図4(d))。この開口パターン18aは、絶縁層15a上に形成されるスパイラル導体19、引き出し導体23、内部端子電極29a〜29dを含む導体パターンのネガパターンである。
【0055】
次に、パターニングされたフレーム層16aの全面にシード層30を形成する(
図4(e))。シード層30はスパッタリングまたは無電解めっきにより形成することができる。シード層30はCrからなる接着層と、Cuからなるめっき下地層をこの順で成膜してなる2層膜(Cu/Cr膜)であることが好ましい。この場合、Cr膜およびCu膜の厚さはそれぞれ10nm(100Å)および100nm(1000Å)とすることができる。Crの代わりにTi、Ta、Pd、Ni、NiCr等を用いてもよい。この工程により、シード層30はフレーム層16aの上面Saのみならず開口パターン18aの底面Sbや内側側面Scにも形成される。
【0056】
次に、フレーム層16aの上面Saに形成されたシード層30だけを選択的に除去し、フレーム層16aの上面Saを露出させる(
図4(f))。この工程は例えばシード層30が形成されたフレーム層16aの上面Saのみを化学的に研磨することにより行ってもよく、あるいは斜めミリング法により行ってもよい。斜めミリング法は
図5に示すように、破線の矢印で示すアルゴンイオンの出射方向に対して被研磨面を垂直ではなく斜めに傾けてミリングする方法である。その際、被研磨面の研磨量が面内で均一になるように被研磨面を自転させることが好ましい。斜めミリング法によれば、開口パターン18aの内側側面Scを覆うシード層30の上端部がわずかに除去されるものの、内側側面Scの大部分と底面Sbにシード層30を残すことができる。特にアスペクト比が高い導体パターンにおいてその効果が顕著である。
【0057】
開口パターン18aの内側側面Scを覆うシード層30の
高さは、フレーム層16aの高さの半分以上であれば良い。シード層30の高さがフレーム層16aの高さの半分以上であれば、スパイラル導体19の側面とフレーム層16aとの接着性を高める効果を確実に得ることができる。
【0058】
次に、電解銅めっきによりシード層30上にCuからなるめっき層31を形成し、これにより開口パターン18aの内部のシード層30とめっき層31からなる導体層17aを形成する(
図4(g))。導体層17aの導体パターンは第1のスパイラル導体19、第1の引き出し導体23および第1〜第4の内部端子電極を含むことが好ましい。導体層17aの厚さは約100μmであることが好ましい。また、第1のスパイラル導体の線幅が例えば10μm程度であり、そのアスペクト比は非常に高いが、第1のスパイラル導体の側面はフレーム層によって支持されているので、アスペクト比が高いスパイラル導体を確実に形成することができる。
【0059】
次に、フレーム層16aおよび導体層17aからなる下地層の上面に絶縁層15bを形成するとともに、絶縁層15bを貫通するスルーホールを形成する(
図4(h))。スルーホールを有する絶縁層15bは、感光性樹脂をスピンコート法により塗布し、これを露光および現像することにより形成することができる。
【0060】
その後、フレーム層の形成から絶縁層の形成までの一連の工程(
図4(c)〜(h))を繰り返すことにより、フレーム層16b、導体層17b、絶縁層15c、フレーム層16c、導体層17c、絶縁層15d、フレーム層16d、導体層17dおよび絶縁層15eを順に形成する(
図4(i))。以上により、機能層11が完成する。
【0061】
次に、機能層11の上面にバンプ電極12a〜12dおよびカバー層13を形成する。バンプ電極12a〜12dはセミアディティブ法により形成することができる。またカバー層13は樹脂ペーストを充填し、硬化させることにより形成することができる。その後、ダイシング、バレル研磨、バレルめっき等の所定の工程を経てコイル部品1が完成する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によるコイル部品1の製造方法によれば、コイルパターンをめっき成長させる際に用いるフレーム層の材料として樹脂シートを用いるので、ハイアスペクトなコイルパターンを確実に形成することができる。また、導体パターンを電解めっきにより形成した後もフレーム層をコイル間絶縁材料(永久材)としてそのまま使用するので、開口パターンの底面と内側側面の両方にシード層を形成することができ、コイルパターンとフレーム層との密着性を高めることができる。また、樹脂シートを用いることでハイアスペクトなコイルパターンの上面の平坦性を高めることができ、その上層に積み上げられるコイルパターンの加工精度を高めることができる。したがって、多層構造のコイル部品の信頼性を高めることができる。
【0063】
図6は、本発明の第2の実施の形態によるコイル部品1の製造方法を示す略断面図である。
【0064】
図6に示すように、本実施形態によるコイル部品1の製造方法の特徴は、露光時の光の回り込みを利用して開口パターン18a(及び18b〜18d)の内側側面が逆テーパー形状となるように形成する点にある。
図6(a)に示すように、フォトマスク41を通過した光源40からの光はわずかに回り込んでフレーム層16a上に照射される。このフレーム層16aを現像することにより、
図6(b)に示すように、フレーム層16aにはその積層方向の下方から上方に向かって開口幅が狭くなるように傾斜した逆テーパー形状の内側側面を有する開口パターン18aが形成される。なお、積層方向の下方から上方に向かう方向とは積層方向の順方向であって、フレーム層と垂直な方向のうち基板10から離れる方向をいう。
【0065】
その後、
図6(c)に示すように、開口パターン18aが形成されたフレーム層16aの全面にシード層30を形成し、さらに
図6(d)で示すように、フレーム層16aの上面に形成されたシード層30を除去する。このとき、フレーム層16aの上面を矢印で示すアルゴンイオンの入射方向と垂直に向けてイオンミリングを実施する。開口パターン18aの内側側面が下端から上端に向かって開口幅が狭くなるように傾斜した逆テーパー形状を有するので、開口パターン18aの内側側面はアルゴンイオンの入射方向に対する影となる。したがって、開口パターン18aの内側側面に形成されたシード層30は除去されず、フレーム層16aの上面と開口パターン18aの底面に形成されたシード層30のみが除去される。
【0066】
このように、シード層30が開口パターン18aの底面に形成されず内側側面にのみ形成される場合であっても、開口パターン18aの内部に形成された導体パターンは、シード層30を介して開口パターン18aの内側側面と密着しているので、熱剥離等を抑制することができる。以上はコイル層14aの説明であるが、コイル層14b〜14dについても同様である。
【0067】
図7は、本発明の第2の実施の形態によるコイル部品2の層構造を詳細に示す略分解斜視図である。
【0068】
図7に示すように、本実施形態によるコイル部品2は2端子構造を有する電源用コイルであり、第1および第2のバンプ電極12a,12cを備えるものである。絶縁層15a〜15e、フレーム層16a〜16d、導体層17a〜17dの基本的な構成は第1の実施形態と同じであるが、第1〜第4のスパイラル導体19〜22は直列に接続されて単一のインダクタを構成している点が第1の実施形態と異なっている。
【0069】
第1のスパイラル導体19の外周端は第1の引き出し導体23を介して第1の内部端子電極29aに接続されており、第4のスパイラル導体22の外周端は第4の引き出し導体26を介して第2の内部端子電極29cに接続されている。第1および第2のスパイラル導体19,20の内周端どうしは絶縁層15bを貫通する第1のスルーホール導体27を介して互いに接続されている。第3および第4のスパイラル導体21,22の内周端どうしは絶縁層15dを貫通する第2のスルーホール導体28を介して互いに接続されている。さらに、第2および第3のスパイラル導体20、21の外周端どうしは絶縁層15cを貫通する第3のスルーホール導体32を介して互いに接続されている。そのため、第1、第2、第3および第4のスパイラル導体19,20,21,22は4つのコイルの直列回路からなる単一のインダクタを構成している。第1の内部端子電極29aは第1のバンプ電極12aに接続されており、第2の内部端子電極29cは第2のバンプ電極12cに絶属されている。
【0070】
第1〜第4のスパイラル導体19〜22は平面視で同じ位置に設けられて互いに重なり合っている。第1のスパイラル導体19はその外周端から内周端に向かって時計回りであり、第2のスパイラル導体20は逆にその内周端から外周端に向かって時計回りであり、第3のスパイラル導体21はその外周端から内周端に向かって時計回りであり、第4のスパイラル導体22は逆にその内周端から外周端に向かって時計回りである。そのため、内部端子電極29aから内部端子電極29cに電流を流すとき、第1〜第4のスパイラル導体19〜22にそれぞれ流れる電流により発生する磁束の向きは同じになる。したがって、第1〜第4のスパイラル導体19〜22間には強い磁気結合が生じている。
【0071】
本実施形態においても、第1〜第4の絶縁層15a〜15dの上面にはフレーム層16a〜16dが設けられており、フレーム層16a〜16dには開口パターン18a〜18dがそれぞれ形成されている。そしてスパイラル導体19〜22を含む各導体層17a〜17dの導体パターンは、シード層30とめっき層31の積層構造を有し、シード層30は開口パターン18a〜18dの底面のみならず内側側面も覆っている(
図3参照)。シード層30はその下地面に密着する緻密な導体層であるため、下地面との密着性が高く、導体パターンの熱剥離やマイグレーションが生じにくい。したがって、アスペクト比が高いスパイラル導体19〜22を容易に形成することができる。また、導体パターンのマイグレーションや熱剥離の問題がなく、高性能で信頼性の高いコイル部品を実現することができる。
【0072】
本実施形態によるコイル部品2は、
図4〜
図6に示した製造方法で製造することができる。すなわち、コイル部品2の製造では、コイルパターンをめっき成長させる際に用いるフレーム層の材料として樹脂シートを用いるので、ハイアスペクトなコイルパターンを確実に形成することができる。また、導体パターンを電解めっきにより形成した後もフレーム層をコイル間絶縁材料(永久材)としてそのまま使用するので、開口パターンの底面と内側側面の両方にシード層を形成することができ、コイルパターンとフレーム層との密着性を高めることができる。また、樹脂シートを用いることでハイアスペクトなコイルパターンの上面の平坦性を高めることができ、その上層に積み上げられるコイルパターンの加工精度を高めることができる。したがって、多層構造のコイル部品の信頼性を高めることができる。
【0073】
図8は、本発明の第3の実施の形態によるコイル部品3の層構造を詳細に示す略断面図である。
【0074】
図8に示すように、本実施形態によるコイル部品3の特徴は、第1〜第4のスパイラル導体19〜22の内側の中空部を貫通する磁性コア33を備えている点にある。磁性コア33は、フレーム層16a〜16d並びに絶縁層15b〜15eを貫通するように設けられている。このような磁性コア33が設けられている場合には、第1〜第4のスパイラル導体19〜22のインダクタンスを高めることができ、より高性能なコイル部品を提供することができる。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0076】
例えば、上記実施形態ではコイルパターンとしてスパイラル導体を例に挙げたが、例えばミアンダパターン等の他のコイルパターンを用いてもよい。また、上記のコイル部品1は4層のコイル層を有する多層コイル構造であるが、コイル層の総数は特に限定されず、5層以上であってもよく3層以下であってもよく、単層コイル構造であってもよい。ただし、本発明は多層コイル構造において有利な効果を発揮することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、絶縁層15aの上面にフレーム層16aを形成しているが、絶縁層15aを省略し、フレーム層16aおよび導体層17aを基板10の上面にそれらを直接形成することも可能である。