特許第5831585号(P5831585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831585
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】運転支援装置および運転支援方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20151119BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   G08G1/16 C
   B60R21/00 624C
   B60R21/00 624F
   B60R21/00 626A
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-90187(P2014-90187)
(22)【出願日】2014年4月24日
(62)【分割の表示】特願2011-542993(P2011-542993)の分割
【原出願日】2009年11月27日
(65)【公開番号】特開2014-142965(P2014-142965A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 寛暁
【審査官】 岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−143309(JP,A)
【文献】 特開2003−072578(JP,A)
【文献】 特開2006−331304(JP,A)
【文献】 特開2009−274482(JP,A)
【文献】 特開平08−087700(JP,A)
【文献】 特開2004−102536(JP,A)
【文献】 特開2007−008281(JP,A)
【文献】 特開2005−145402(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0153313(US,A1)
【文献】 特開平06−274797(JP,A)
【文献】 特開2002−029438(JP,A)
【文献】 特開2001−310719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が車線内を走行するように運転支援する運転支援装置であって、
前記車両前方の走行路面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像から、前記走行路面の区画線を検出するとともに、区画線を検出できない区間に仮想的な区画線を設定する画像処理手段と、
前記区画線または前記仮想的な区画線から前記車両が逸脱しないように前記車両を制御して前記運転支援を行う支援手段と、
前記区画線または前記仮想的な区画線から前記車両が逸脱しそうな場合に警告を行う警告手段とを備え、
前記支援手段が運転支援を行うことができる状況にあるとき、前記区画線か前記仮想的な区画線かにかかわらず前記車両が線を逸脱しそうな場合は、前記警告手段を作動させ、
前記支援手段が運転支援を行うことができない状況にあるとき、
前記車両が前記区画線から逸脱しそうな場合は、前記警告手段を作動させ、
前記車両が前記仮想的な区画線から逸脱しそうな場合は、前記警告手段を作動させないことを特徴とする、運転支援装置。
【請求項2】
車両が車線内を走行するように運転支援する運転支援装置であって、
前記車両前方の走行路面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像から、前記走行路面の区画線を検出するとともに、区画線を検出できない区間に仮想的な区画線を設定する画像処理手段と、
前記区画線または前記仮想的な区画線から前記車両が逸脱しないように前記車両を制御して前記運転支援を行う支援手段と、
前記区画線または前記仮想的な区画線から前記車両が逸脱しそうな場合に警告を行う警告手段とを備え、
前記車両が前記区画線から逸脱しそうな場合は、前記支援手段が運転支援を行うことができる状況にあるか否かにかかわらず、前記警告手段を作動させ、
前記車両が前記仮想的な区画線から逸脱しそうな場合、前記支援手段が運転支援を行うことができる状況にあるか否かに応じて前記警告手段を作動させるか作動させないかを判断することを特徴とする、運転支援装置。
【請求項3】
前記車両が前記仮想的な区画線から逸脱しそうな場合、前記支援手段が運転支援を行うことができる状況にあるときには前記警告手段を作動させ、前記支援手段が運転支援を行うことができない状況にあるときには前記警告手段を作動させないことを特徴とする、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記支援手段が運転支援を行うことができない状況となる条件は、前記車両のワイパーが作動している状態、前記車両のハンドルの操舵トルクが予め定められた値より大きい状態、前記車両の車速が予め定められた範囲にある状態、前記車両のターンシグナルが作動している状態、および前記車両のブレーキが操作されている状態のうち、少なくとも何れか1つの状態に前記車両が該当していることである、請求項1または3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、前記区画線を検出できないとき、直近に検出した同じ側の区画線を延長した線を前記仮想的な区画線として設定する、請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、左右何れか一方の区画線を検出できないとき、検出できた他方の区画線の位置から、これまでに検出した右側区画線と左側区画線の間隔を隔てた位置に前記仮想的な区画線を設定する、請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項7】
車両が車線内を走行するように運転支援する運転支援方法であって、
撮像手段が、前記車両前方の走行路面を撮像する撮像ステップと、
画像処理手段が、前記撮像した画像から、前記走行路面の区画線を検出するとともに、区画線を検出できない区間に仮想的な区画線を設定する画像処理ステップと、
支援手段が、前記区画線または前記仮想的な区画線から前記車両が逸脱しないように前記車両を制御して前記運転支援を行う運転支援ステップと、
警告手段が、前記区画線または前記仮想的な区画線から前記車両が逸脱しそうな場合に警告を行う警告ステップとを備え、
前記運転支援ステップにおいて前記支援手段が運転支援を行うことができる状況にあるとき、前記区画線か前記仮想的な区画線かにかかわらず前記車両が線を逸脱しそうな場合は、前記警告ステップによる警告を行い、
前記運転支援ステップにおいて前記支援手段が運転支援を行うことができない状況にあるとき、
前記車両が前記区画線から逸脱しそうな場合は、前記警告ステップによる警告を行い、
前記車両が前記仮想的な区画線から逸脱しそうな場合は、前記警告ステップによる警告を行わないことを特徴とする、運転支援方法。
【請求項8】
車両が車線内を走行するように運転支援する運転支援方法であって、
撮像手段が、前記車両前方の走行路面を撮像する撮像ステップと、
画像処理手段が、前記撮像した画像から、前記走行路面の区画線を検出するとともに、区画線を検出できない区間に仮想的な区画線を設定する画像処理ステップと、
支援手段が、前記区画線または前記仮想的な区画線から前記車両が逸脱しないように前記車両を制御して前記運転支援を行う運転支援ステップと、
警告手段が、前記区画線または前記仮想的な区画線から前記車両が逸脱しそうな場合に警告を行う警告ステップとを備え、
前記車両が前記区画線から逸脱しそうな場合は、前記運転支援ステップにおいて前記支援手段が運転支援を行うことができる状況にあるか否かにかかわらず、前記警告ステップによる警告を行い、
前記車両が前記仮想的な区画線から逸脱しそうな場合、前記運転支援ステップにおいて前記支援手段が運転支援を行うことができる状況にあるか否かに応じて、前記警告ステップによる警告を行うか行わないかを判断することを特徴とする、運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置および運転支援方法に関し、より特定的には、車両に搭載され、当該車両の乗員に対して警告を行うことができる運転支援装置および運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設置されたカメラなどにより、上記車両が走行している走行路面のレーンマーカー(以下、単に区画線と称すことがある)を認識する技術がある。例えば、車両が走行している走行路面のレーンマーカーを認識する装置の一例として例えば特許文献1に開示された装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−044836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている技術は、走行路面の右側区画線および左側区画線の何れか一方の区画線に基づいて他方の白線を推定するものである。上記特許文献1に開示されている技術は、具体的には、走行路面に描かれている区画線を認識し、右側区画線および左側区画線の何れか一方が検出された場合、この検出された区画線(例えば、右側区画線)に設定する複数のサンプル点の座標と、当該サンプル点に対応する道路幅算出パラメータ、および車両が走行する車線の道路幅のデータに基づいて、検出されていない方の区画線(例えば、左側区画線)の位置を推定するものである。
【0005】
ところで、近年、車両に設置されたカメラなどにより、上記車両が走行している走行路面の区画線を認識し、当該認識結果に基づいてドライバーが行うハンドル操作を補助する装置が実用化されている。例えば、カメラによって検出された走行路面の区画線に基づいて、車両に搭載されている各種装置の動作を制御して、車両が車線内(右側区画線と左側区画線との間のエリア)を走行するようにドライバーの運転操作を補助する装置(例えば、操舵支援装置と称す)が実用化されている。なお、このような装置は、あくまでドライバーの運転操作の補助であるため、ドライバーの運転操作を妨げないように、車両が右側区画線または左側区画線から逸脱しそうになった場合には、一般的には上記補助を停止させるようになっている。
【0006】
そのため、車両には、上記操舵支援装置とともに、車両が右側区画線または左側区画線から逸脱しそうであると判断した場合や、逸脱すると判断した場合、事前に車両のドライバーに対して、警告を行う装置(例えば、車線逸脱警報装置)が搭載されているのが一般的である。
【0007】
しかしながら、車両が走行している走行路面の区画線を認識する際に、例えば、上述した上記特許文献1に開示されている技術を用いた場合、検出されていない方の区画線の位置を推定し、当該推定された位置に基づいて実際に区画線が存在しない区間に一時的に仮想的な区画線を設定することになる。そして、一時的に設定された仮想的な区画線に基づいて、車線逸脱警報を行った場合、実際には区画線が存在しない区間でも車線逸脱警報が行われてしまうことがあり、ドライバーは違和感を抱くことがあった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の走行環境に応じてドライバーに対して行う警告を変化させることのできる運転支援装置および運転支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下に示すような特徴を有する。
本発明の第1の局面は、車両が車線内を走行するように運転支援する運転支援装置である。この運転支援装置は、車両前方の走行路面を撮像する撮像手段と、撮像手段が撮像した画像から走行路面の区画線を検出するとともに、区画線を検出できない区間に仮想的な区画線を設定する画像処理手段と、区画線または仮想的な区画線から車両が逸脱しないように車両を制御して運転支援を行う支援手段と、区画線または仮想的な区画線から車両が逸脱しそうな場合に警告を行う警告手段とを備え、支援手段が作動するとき、区画線か仮想的な区画線かにかかわらず車両が線を逸脱しそうな場合は警告手段を作動させ、支援手段が作動しないとき、車両が区画線から逸脱しそうな場合は警告手段を作動させ、車両が仮想的な区画線から逸脱しそうな場合は警告手段の作動をやめることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の局面は、車両が車線内を走行するように運転支援する運転支援装置である。この運転支援装置は、車両前方の走行路面を撮像する撮像手段と、撮像手段が撮像した画像から走行路面の区画線を検出するとともに、区画線を検出できない区間に仮想的な区画線を設定する画像処理手段と、区画線または仮想的な区画線から車両が逸脱しないように車両を制御して運転支援を行う支援手段と、区画線または仮想的な区画線から車両が逸脱しそうな場合に警告を行う警告手段とを備え、車両が区画線から逸脱しそうな場合は支援手段の作動状況にかかわらず警告手段を作動させ、車両が仮想的な区画線から逸脱しそうな場合は支援手段の作動状況に応じて警告手段の作動を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の局面は、上記第2の局面において、車両が仮想的な区画線から逸脱しそうな場合、支援手段が作動するときには警告手段を作動させ、支援手段が作動しないときには警告手段を作動させないことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の局面は、上記第1または第3の局面において、支援手段が作動しない条件は、車両のワイパーが作動している状態、車両のハンドルの操舵トルクが予め定められた値より大きい状態、車両の車速が予め定められた範囲にある状態、車両のターンシグナルが作動している状態、および車両のブレーキが操作されている状態のうち、少なくとも何れか1つの状態に車両が該当していることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の局面は、上記第1または第2の局面において、画像処理手段は、区画線を検出できないとき、直近に検出した同じ側の区画線を延長した線を仮想的な区画線として設定することを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の局面は、上記第1または第2の局面において、画像処理手段は、左右何れか一方の区画線を検出できないとき、検出できた他方の区画線の位置から、これまでに検出した右側区画線と左側区画線の間隔を隔てた位置に仮想的な区画線を設定することを特徴とする。
【0015】
本発明の第7の局面は、車両が車線内を走行するように運転支援する運転支援方法である。この運転支援方法は、車両前方の走行路面を撮像する撮像ステップと、撮像した画像から走行路面の区画線を検出するとともに、区画線を検出できない区間に仮想的な区画線を設定する画像処理ステップと、区画線または仮想的な区画線から車両が逸脱しないように車両を制御して運転支援を行う運転支援ステップと、区画線または仮想的な区画線から車両が逸脱しそうな場合に警告を行う警告ステップとを備え、運転支援ステップが運転支援を作動するとき、区画線か仮想的な区画線かにかかわらず車両が線を逸脱しそうな場合は警告ステップによる警告を行い、運転支援ステップが運転支援を作動しないとき、車両が区画線から逸脱しそうな場合は警告ステップによる警告を行い、車両が仮想的な区画線から逸脱しそうな場合は警告ステップによる警告を行わないことを特徴とする。
【0016】
本発明の第8の局面は、車両が車線内を走行するように運転支援する運転支援方法である。この運転支援方法は、車両前方の走行路面を撮像する撮像ステップと、撮像した画像から走行路面の区画線を検出するとともに、区画線を検出できない区間に仮想的な区画線を設定する画像処理ステップと、区画線または仮想的な区画線から車両が逸脱しないように車両を制御して運転支援を行う運転支援ステップと、区画線または仮想的な区画線から車両が逸脱しそうな場合に警告を行う警告ステップとを備え、車両が区画線から逸脱しそうな場合は運転支援ステップによる運転支援の作動状況にかかわらず警告ステップによる警告を行い、車両が仮想的な区画線から逸脱しそうな場合は運転支援ステップによる運転支援の作動状況に応じて警告ステップによる警告を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記本発明の第1乃至第3の局面によれば、例えば、運転支援が解除された場合において仮想的な区画線から車両が逸脱する場合に発せられる警告を解除するので、区画線が無い場所で警告が発せられることによる違和感を低減することができる。また、運転支援が解除された場合において仮想的な区画線から車両が逸脱する場合に発せられる警告を解除するので、つまり、言い換えると、運転支援が行われている場合においては仮想的な区画線から車両が逸脱する場合において警告を発することが可能である。これによって、例えば走行レーンに沿った運転支援が行われている場合には、仮想定な区画線を含む区画線から車両が逸脱する場合には警告が発せられる。従って、仮想定な区画線を含む区画線から車両が逸脱する場合に警告が必要な区間においては当該警告を発することができ、警告を発するとドライバーが違和感を抱くような区間においては警告を発しないようにすることができる。つまり、車両の走行環境に応じてドライバーに対して行う警告を変化することができる。
【0018】
上記本発明の第4の局面によれば、例えば、ドライバーが車線変更をするためにハンドルやターンシグナル等を操作した場合、仮想線に対して警告がされることがないので、実際に区画線が無い場所で警告が発せられるといったような違和感をドライバーは抱くことがない。言い換えると、ドライバーが意図的に車両の進行方向を変えた場合に仮想線を逸脱したとしても警告がされることがないので、ドライバーは違和感を抱くことがない。
【0019】
上記本発明の第5の局面によれば、右側区画線または左側区画線の何れか一方または両方が存在しない区間においても仮想線を設定することができる。
【0020】
上記本発明の第6の局面によれば、右側区画線または左側区画線の何れか一方が存在しない区間においても、仮想線を設定することができる。
【0021】
第7の局面の運転支援方法によれば、上述した第1の局面の運転支援装置と同様の効果を得ることができ、第8の局面の運転支援方法によれば、上述した第2の局面の運転支援装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】運転支援装置の構成の一例を示すブロック図
図2】運転支援ECU1における処理の流れの一例を示したフローチャート
図3図2のステップS14での処理を説明するためのフローチャート
図4】走行路面の右側および左側の何れか一方に区画線の無い分岐区間を示す図
図5】走行路面の右側および左側の何れか一方に区画線の無い合流区間を示す図
図6】区画線の無い右左折レーンが存在する走行路面を示す図
図7】追い越し車線が現れるような区間を示す図
図8】カープールレーンを示す図
図9】バスの停留所における乗降区間を示す図
図10】交差点を示す図
図11】自車両mvの走行路面の一例を示した図
図12】LDW作動条件の一例を示した図
図13】LKA作動条件の一例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る運転支援装置について説明する。なお、本実施形態では、当該運転支援装置が車両(具体的には、乗用車を想定し、以下、自車両mvと称す)に搭載される例について説明する。図1は、当該運転支援装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
図1において、運転支援装置は、運転支援ECU(Electrical Control Unit)1を備えている。この運転支援ECU1には、カメラ2、レーダ装置3、車両情報取得装置4、電動パワーステアリング(Electric Power Steering、以下EPSと称す)5、表示装置6、および音声出力装置7等が接続されている。
【0025】
運転支援ECU1は、後述するカメラ2、レーダ装置3、および車両情報取得装置4等からの情報に基づいて自車両mvに搭載されたEPS5、表示装置6および音声出力装置7等を制御し、ドライバーの運転をサポートする。
【0026】
カメラ2は、例えばCCDカメラ、CMOSカメラ、赤外線カメラ等であり、自車両mvの前方を撮像する。そして、カメラ2は、例えば、所定時間間隔で自車両mvの前方を撮像し、当該撮像した画像を運転支援ECU1に出力する。なお、カメラ2が設置される位置は、自車両mvの前方を撮像するため、当該自車両mvの進行方向に向けられており、ドライバーの運転の妨げにならない、例えばバックミラー裏側等に設置される。なお、カメラ2は、請求項に記載の撮像手段の一例に相当する。
【0027】
レーダ装置3は、自車両mvの所定の位置(例えば、前照灯や方向指示器などが搭載されている位置)に設置され、自車両mvの外側に向けて電磁波を照射し、自車両mv前方の周囲を監視している。具体的には、レーダ装置3は、自車両mvの前方の周囲に向けて電磁波を照射し、当該レーダ装置3の検出範囲内に存在するターゲット(他車両、自転車、歩行者、建造物など物体)を検出する。そして、レーダ装置3は、例えば、自車両mvの前方および側方周囲に存在するターゲットを検出し、当該ターゲットを検出した信号を、運転支援ECU1に出力する。
【0028】
車両情報取得装置4は、自車両mvの走行に関する情報を取得する。なお、車両情報取得装置4の一例として、例えば、自車両mvが走行する際の車速を検出する車速検出装置、自車両mvのステアリングハンドルのステアリングロッドに取り付けられ当該ステアリングハンドルに与えられた操舵トルクを検出する操舵トルク検出装置等が挙げられる。
【0029】
また、車両情報取得装置4には、例えば、自車両mvのワイパーを駆動させるための装置や方向指示器を点灯させるための装置、自車両mvのブレーキ装置も含まれる。つまり、例えば、自車両mvのドライバーが、ワイパーを駆動させたり、方向指示器を点灯させたり、ブレーキ操作を行ったりした場合、ドライバーがそれぞれ駆動や操作等をしたことを示す情報を車両情報取得装置4は取得する。
【0030】
また、ドライバーの運転をサポートするために行われる各種制御を開始または停止させるためのスイッチのON/OFFを示す情報も車両情報取得装置4は取得する。なお、ドライバーの運転をサポートするために行われる各種制御を総称して安全措置と称す。
【0031】
ここで、運転支援ECU1が行う各種安全措置の一例について説明する。
【0032】
運転支援ECU1は、カメラ2によって検出された走行路面のレーンマーカー(右側区画線および左側区画線)に基づいて、自車両mvに搭載されている各種装置(後述のEPS5等)の動作を制御して、例えば、自車両mvが車線内(右側区画線と左側区画線との間のエリア)を走行するように運転支援を行う。なお、運転支援ECU1は、請求項に記載の画像処理手段、支援手段、算出手段、解除手段、禁止手段の一例に相当する。
【0033】
また、一方で、自車両mvのドライバーが意図せずに、当該自車両mvの走行すべき走行レーン(右側区画線と左側区画線との間のエリア)から逸脱すると判断したと仮に想定した場合、運転支援ECU1からの指示に従って、後述のEPS5は、ドライバーが行うハンドル操作を補助したり、自車両mvが走行レーンから逸脱する可能性が高い場合などに、例えば、自車両mvが区画線内の中央付近を走行するように自車両mvに搭載されている各種装置(後述のEPS5等)の動作を制御したりして、ドライバーのハンドル操作の支援を行う。
【0034】
なお、カメラ2が撮像した画像に基づいて、自車両mvが安全に走行レーン内を走行できるように然るべき措置を行うものであればよく、運転支援ECU1が自車両mvが当該自車両mvの走行すべき走行レーン(右側区画線と左側区画線との間のエリア)から逸脱すると判断した場合に行う制御は、上述したドライバーのハンドル操作の支援に限られない。また、以下の説明で、カメラ2が撮像した画像に基づいて、運転支援ECU1が自車両mvが安全に走行レーン内を走行できるように然るべき措置を行う制御を、特に、LKA(Lane keep Assist)制御と称す。
【0035】
また、運転支援ECU1は、カメラ2によって検出された走行路面のレーンマーカー(右側区画線および左側区画線)に基づいて、ドライバーが意図せずに、自車両mvが当該自車両mvの走行すべき走行レーン(右側区画線と左側区画線との間のエリア)から逸脱しそうであると判断した場合や、逸脱すると判断した場合、事前に自車両mvのドライバーに対して、後述の表示装置6や音声出力装置7を介して警告を行う。なお、カメラ2が撮像した画像に基づいて、運転支援ECU1が後述の表示装置6や音声出力装置7を介して警告を行う制御を、特に、LDW(Lane Departure Warning)制御と称す。
【0036】
なお、上述のLKA制御は、一般的にドライバーの運転操作を妨げないように、右側区画線または左側区画線からある程度逸脱したところで、当該LKA制御は停止されるようになっている。そのため、上記LDW制御は、LKA制御が停止されるある程度前から、当該LKA制御が停止する旨を表示装置6や音声出力装置7を介してドライバーに警告を行う、LKA制御の、いわゆる支援の限界を予めドライバーに報知するといった性質も有している。
【0037】
このように、運転支援ECU1は、カメラ2から得られる情報(具体的には、カメラ2が撮像した自車両mv前方の撮像画像)を用い、自車両mvが区画線内を逸脱すると判断した場合、当該自車両mvが安全に走行レーン内を走行できるように、自車両mvおよび当該自車両mvのドライバーに対して、警告や警報、ハンドル操作の支援等(つまり、LDW制御やLKA制御)を行うことにより、事故などの安全性が危惧される状況においては危険を未然に回避することができる。なお、以下の説明において、上述したLKA制御およびLDW制御等の総称として車線維持制御と称すことがある。
【0038】
なお、上述した車線維持制御(LKA制御およびLDW制御)の他に、例えば、運転支援ECU1は、以下の安全措置を行うこともできる。
【0039】
例えば、運転支援ECU1は、レーダ装置3から得られる情報に基づいて、自車両mvと当該自車両mvの前方を走行している他車両との間の距離を一定に保つ制御を行う。また、運転支援ECU1は、自車両mvと当該自車両mv前方を走行している速度の遅い他車両とが接近し、自車両mvと当該他車両とが接触する可能性があると判断した場合、自車両mvのドライバーに対して図1の表示装置6や音声出力装置7を介して警告を行ったり、エンジンECU(図示せず)に指示し自車両mvのスピードを減速させたりする。さらに、運転支援ECU1は、レーダ装置3から得られる情報に基づいて、物体(他車両や路側物など)と自車両mvとが衝突する危険があるか否かを判断したり、当該物体との衝突の危険性が高い場合には、ドライバーに対して警告を行ったり、自車両mvに備わったブレーキ装置(図示せず)を制御してドライバーが行うブレーキ操作をアシストしたりする。さらに、運転支援ECU1が、物体と自車両mvとの衝突は避けられないと判断した場合に、シートベルトを巻き取ったり、シートを駆動させたりすることにより、自車両mvの乗員の拘束性を高め、衝突被害を低減する。
【0040】
図1の説明に戻って、EPS5は、運転支援ECU1からの指示に従って、ドライバーが行うハンドル操作を補助したり、自車両mvが走行レーンから逸脱する可能性が高い場合などに、例えば、自車両mvが車線内(右側区画線と左側区画線との間のエリアの中央付近)を走行するようにドライバーのハンドル操作を支援したりする。なお、一例として、図1にはEPS5を示したが、EPS5に限られず、例えば、自車両mvのエンジンのトルクを制御するエンジンECU(図示せず)や自車両mvのドライバーが行うブレーキ操作をアシストするブレーキ装置(図示せず)等も運転支援ECU1からの指示に従って駆動するようにしてもよい。つまり、運転支援ECU1からの指示に従って、自車両mvを動的に制御することによって上記車線維持制御を実施する装置は、EPS5に限られるものではない。
【0041】
次に、図1の表示装置6は、自車両mvの運転席に着席して当該自車両mvを運転するドライバーから視認可能な位置(運転席前面の計器盤等の中等)に設けられる、液晶ディスプレイ、発光ダイオード(LED)、有機ELディスプレイなどの表示媒体である。また、表示装置6は、ハーフミラー(反射ガラス)を運転席前面のフロントガラスの一部に設け、当該ハーフミラーに情報等の虚像を蛍光表示するヘッドアップディスプレイ(Head-Up Display)等、他の表示装置であってもよい。これによって、自車両mvのドライバーは、運転席に着席し正面(走行方向)を向いたまま、表示装置6に表示された情報を確認することができる。
【0042】
音声出力装置7は、各種情報を音声で自車両mvのドライバーに提供するものである。具体的には、音声出力装置7は、運転支援ECU1からの指示に応じた警告や情報をドライバーに報知する。また、音声出力装置7は、具体的には、自車両mvに備わっているスピーカー等である。なお、音声出力装置7は、請求項に記載の警告手段の一例に相当する。
【0043】
次に、図2を参照しつつ、本実施形態に係る運転支援装置の運転支援ECU1において行われる処理の流れの一例を説明する。図2は、本実施形態に係る運転支援装置の運転支援ECU1における処理の流れの一例を示したフローチャートである。図2に示すフローチャートは、例えば、運転支援ECU1が当該運転支援ECU1内に備えられている図示しない記憶部に記憶されている所定のプログラムを実行することにより行われる。また、図2に示すフローチャートの処理は、運転支援ECU1の電源がON(例えば、運転支援装置が搭載された自車両mvのイグニッションスイッチがON)されることによって開始される。また、当該フローチャートに示した処理は、運転支援ECU1の電源がOFF(例えば、運転支援装置が搭載された自車両mvのイグニッションスイッチがOFF)されることによって終了される。なお、以下の説明において、イグニッションスイッチをIGと称す。
【0044】
また、本実施形態に係る運転支援装置の運転支援ECU1は、上述したように各種安全措置を実施するが、本フローチャートでは上記各種安全措置のうち、特に上記LKA制御およびLDW制御、つまり車線維持制御について主に説明する。
【0045】
まず、図2のステップS11において、運転支援ECU1は、IGがONであるか否かを判断する。そして、IGがONであると判断した場合(YES)、次のステップS12に処理を進める。一方、運転支援ECU11は、IGがONではない、つまりIGがOFFであると判断した場合(NO)、当該フローチャートでの処理を終了する。
【0046】
ステップS12において、運転支援ECU1は、車両情報取得装置4から自車両mvの車両情報を取得する。なお、当該ステップS12において、運転支援ECU1が、車両情報取得装置4する車両情報とは、例えば、車線維持制御を行わせるためのスイッチ(例えば、LKAメインスイッチ等)が、ドライバーによって押下されていることを示す情報などである。
【0047】
ステップS13において、運転支援ECU1は、車線維持制御を開始するか否かを判断する。具体的には、運転支援ECU1は、ステップS12で取得した車両情報を参照して、車線維持制御を開始するか否かを判断する。そして、例えば、運転支援ECU1は、ステップS12で取得した車両情報から、例えばLKAメインスイッチがドライバーによって押下されている場合など、判断を肯定し(YES)、次のステップS14に処理を進める。一方、例えば、運転支援ECU1は、ステップS12で取得した車両情報から、例えばLKAメインスイッチがドライバーによって押下されていなかった場合など、判断を否定し(NO)、上記ステップS12に処理を戻す。
【0048】
ステップS14において、運転支援ECU1は、道路情報を算出する。以下、図3を用いて、運転支援ECU1が、ステップS14において行う道路情報を算出する処理について説明する。
【0049】
図3は、図2のステップS14で、運転支援ECU1が行う、道路情報を算出する処理の一例を示すフローチャートである。
【0050】
図3のステップS21において、運転支援ECU1は、カメラ2からカメラ画像を取得する。具体的には、運転支援ECU1は、カメラ2によって撮像された自車両mv前方の画像、つまり自車両mv前方の走行路面の画像を当該カメラ2から取得する。そして、運転支援ECU1は、次のステップS22に処理を進める。
【0051】
ステップS22において、運転支援ECU1は、区画線を検出する。具体的には、運転支援ECU1は、上記ステップS21で取得した画像(車両前方の走行路面の画像)について、エッジ点を抽出する処理などを施すことにより、右側区画線および左側区画線(つまり、自車両mvが走行している走行路面の両側に引かれた線)を検出する。そして、運転支援ECU1は、次のステップS23に処理を進める。
【0052】
ところで、上記ステップS22において、運転支援ECU1は、右側区画線および左側区画線の少なくとも何れか一方の区画線を検出できないと、後述する中央線(自車両mvが走行するときの目標軌道となる線)を決めることができない。そこで、運転支援ECU1は、上記ステップS22の次の処理であるステップS23において、右側区画線および左側区画線ともに検出できたか否かを判断する。そして、運転支援ECU1は、当該ステップS23での処理を肯定した場合(YES)、ステップS25に処理を進める。一方、運転支援ECU1は、当該ステップS23での処理を否定した場合(NO)、ステップS24に処理を進め、仮想線な区画線を設定する。
【0053】
ここで、運転支援ECU1がステップS24において行う処理について説明する。つまり、運転支援ECU1が、右側区画線および左側区画線の少なくとも何れか一方の区画線を検出できなかった場合、検出されなかった側に仮想的な区画線(以下、単に仮想線と称す)を設定する処理について説明する。
【0054】
なお、右側区画線および左側区画線の少なくとも何れか一方の区画線が検出できない場合の具体例として、例えば、右側区画および左側区画線の何れか一方に区画線の区画線が無く、エッジを検出できなかったり、右側区画および左側区画線の何れか一方の区画線がカメラ2が認識できない程、区画線の色が薄かったりする場合等が挙げられる。
【0055】
なお、右側区画線および左側区画線の少なくとも何れか一方の区画線が無く、エッジを検出できない場合とは、より具体的に(i)走行路面の右側および左側の何れか一方に区画線の無い区間、(ii)走行路面における車線増加区間、(iii)走行路面のレーン幅が変化する区間等が挙げられる。
【0056】
以下、上記(i)〜上記(iii)の具体例を図4図9を参照しつつ挙げる。なお、図4図9では、車両が右側通行である国(例えば米国、欧州など)の走行路面を自車両mvが走行しているものと仮に想定して説明する。また、後述の説明のため、図4図9の図中には参照符号および矢印を付してある。
【0057】
例えば、上記(i)の例として、例えば、図4に示すような、走行路面の右側および左側の何れか一方に区画線の無い分岐区間が挙げられる(図4では自車両mvの右側に区画線の無い例を示した)。また、上記(i)の例として、図5に示すような走行路面の右側および左側の何れか一方に区画線の無い合流区間が挙げられる(図5では自車両mvの右側に区画線の無い例を示した)。さらに、上記(i)の例として、図6に示すような区画線の無い右左折レーンが存在する走行路面(図6では区画線の無い左折レーンを示した)等が挙げられる。
【0058】
また、上記(ii)の例としては、例えば、図7に示すような自車両mvの左側に追い越し車線が現れるような区間等が挙げられる。なお、上述した、図6に示すような区画線の無い右左折レーンが存在する走行路面も上記(ii)の例に含めることもできる。
【0059】
さらに、上記(iii)の例としては、図8に示すようなカープールレーンの出口区間S1、や図9に示すようなバスの停留所における乗降区間S2等が挙げられる。なお、カープールレーンとは、一部の国(例えば米国)において、複数人が乗車している車両、または環境基準を満たす車両のみ走行可能な走行レーンのことである。カープールレーンは、左側の1本の黄またはオレンジ等に着色された境界線と右側の複数本の境界線などにより他のレーンとで区別される。また、カープールレーンの入り口部では右側の線が内側に傾斜しており当該カープールレーンに車両を誘導する侵入口を形成し、カープールレーンの出口部の右側の線はレーンが分岐するように外側に屈曲している。なお、図8で示した例では、自車両mvは、カープールレーンの出入口区間付近を走行しているものを示した。
【0060】
なお、上記ステップS23においての判断が否定される場合とは、(iv)右側区画線および左側区画線が検出できない区間も含まれる。
【0061】
上記(iv)右側区画線および左側区画線が検出できない区間の具体例として、例えば、右側区画および左側区画線ともに区画線が無い、図10に示す交差点等が挙げられる。
【0062】
図3のフローチャートの説明に戻って、ステップS24において、運転支援ECU1は、図4図10で例示したような、右側区画線および左側区画線の少なくとも何れか一方が検出できない場合、検出されなかった側に仮想線を設定する。
【0063】
ステップS24において、まず、第1の方法として、運転支援ECU1は、右側区画線および左側区画線の何れか一方が検出できない場合、当該運転支援ECU1が過去に検出した、右側区画線および左側区画線から走行路面の幅員に基づいて、区画線を決定する。例えば、図11に示すような走行路面を仮に想定して、より具体的に説明する。
【0064】
図11は、自車両mvの走行路面の一例を示した図である。図11に示すように、例えば、自車両mvの左側には、左側区画線Lが存在するとし、自車両mvの右側の右側区画線Rは途中で切れていると仮に想定する。なお、単に区画線が切れている場合だけではなく、カメラ2が認識できない程、区画線の色が薄かったりする場合等も含む。この場合、運転支援ECU1は、検出することのできた左側区画線Lから、所定の距離W1離れた位置の自車両mvの右側に仮想線(図11の破線Rf)を設定する。より具体的には、例えば、運転支援ECU1は、過去に検出した右側区画線と左側区画線(つまり、図11では、右側区画線Rおよび左側区画線L)との距離W2に基づいて、自車両mvの右側の右側区画線Rが途中で切れた箇所から、検出することのできた左側区画線Lから、距離W2離れた位置に右側区画線が存在しているものとして、仮想線Rfを設定する。
【0065】
また、ステップS24における処理の第2の方法として、運転支援ECU1は、右側区画線および左側区画線の何れか一方が検出できない場合、以下の方法を用いても仮想線を設定することができる。なお、以下の説明において、一例として、上述した、走行路面の右側および左側の何れか一方に区画線の無い分岐区間を示す図4を再度参照して説明する。
【0066】
例えば、図4に示すように、自車両mvの右側に分岐区間があり、当該分岐区間に区画線が無い場合、図中の矢印arS方向に直進する自車両mvにとっては、区画線の無い区間が生じることになる。この場合、運転支援ECU1は、カメラ2からの画像に基づいて自車両mvが右側区画線Rが得られなくなったポイント(図中のポイントPcR)まで来たと判断したとき、これまでに得られた右側区画線Rに基づき、当該右側区画線Rを延長した線を仮想線Rfとして設定する。
【0067】
このように、運転支援ECU1は、右側区画線および左側区画線の何れか一方が検出できない場合でも、上記第1の方法および/または上記第2の方法を用いることにより、仮想線を設定することができる。言い換えると、直進する自車両mvにとって、右側区画線および左側区画線の何れか一方がない車線を走行したとしても、上記第1の方法および/または上記第2の方法を用いることにより仮想線を設定することができる。
【0068】
また、図10で例示したような右側区画および左側区画線ともに区画線が無い交差点等においては、特に上記第2の方法を用いることにより仮想線を設定することができる。例えば、図10に示すように、この場合、運転支援ECU1は、カメラ2からの画像に基づいて自車両mvが左側区画線Lおよび右側区画線Rが得られなくなったポイントまで来たと判断したとき、これまでに得られた左側区画線Lおよび右側区画線Rに基づき、当該左側区画線Lおよび右側区画線Rをそれぞれ延長した線を仮想線Lfおよび仮想線Rfとして設定する。なお、図10に示したような場合でも、上記第1の方法、つまり、これまで検出することのできた区画線の幅員に基づいて仮想線を設定することもできる。
【0069】
なお、上記第1の方法および第2の方法の説明において、車両が右側通行である国(例えば米国、欧州など)の走行路面を自車両mvが走行しているものとして説明した。しかしながら、これに限らず、上記第1の方法および第2の方法は、車両が左側通行である国(例えば日本国内)の走行路面を自車両mvが走行している場合も適用できることは言うまでもない。
【0070】
図3の説明に戻って、運転支援ECU1は、ステップS25において、右側区画線Rおよび左側区画線L、またはそれらに対応する仮想線に基づいて、自車両mvが走行するときの目標軌道となる中央線CLを設定する。そして、運転支援ECU1は、当該フローチャートの処理を終了して、図2のステップS15に処理を戻す。
【0071】
なお、ステップS25において、運転支援ECU1が行う処理の一例として、図11を再度参照して説明する。運転支援ECU1は、これまでの処理で検出することのできた右側区画線R(または右側区画線Rに対応する仮想線Rf)と左側区画線L(または左側区画線Lに対応する仮想線Lf)とから車線幅W1を求め、当該車線幅W1のほぼ中心を通り、走行路面に沿う向きの線を自車両mvが走行するときの目標軌道となる中央線CLを設定する。そして、運転支援ECU1は、図3に示したフローチャートの処理を終了する。なお、図4図10でそれぞれ示した走行路面のように直線道路ではなくカーブでも、運転支援ECU1は、例えば、自車両mvに備わっているヨーレートセンサ等から目標軌道となる中央線CLを設定すればよい。
【0072】
図2の説明に戻って、ステップS15において、運転支援ECU1は、車両情報取得装置4から車両情報を取得する。そして、運転支援ECU1は、次のステップS16に処理を進める。
【0073】
ステップS16において、運転支援ECU1は、LDW制御が必要であるか否かを判断する。そして、当該ステップS16での判断を肯定(YES)した場合、次のステップS17に処理を進め、判断を否定(NO)した場合、ステップS15に処理を戻す。
【0074】
ここで、ステップS16においての処理で判断が肯定される場合とは、具体的には、運転支援ECU1が、上記ステップS15において取得した車両情報や上記ステップS14で算出した道路情報に基づいて、例えば、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が右側区画線R(右側区画線Rに対応する仮想線Rf)、または左側区画線L(左側区画線Lに対応する仮想線Lf)に到達すると判断した場合等である。
【0075】
なお、運転支援ECU1は、上記ステップS16において、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が右側区画線R(右側区画線Rに対応する仮想線Rf)、または左側区画線L(左側区画線Lに対応する仮想線Lf)に到達すると判断した場合でも、例えば、図12に示すLDW作動条件を満たしていなかったり、後述のLDW一時中断条件に当てはまる場合は、当該ステップS16の判断を否定(NO)する。
【0076】
具体的には、運転支援ECU1によってLDW制御が必要であると判断された場合でも、例えば、図12に示すように、LKAスイッチがONにされていなかったり(図12のD1a)、自車両mvが、所定速度v1内で走行していなかったり(図12のD1b)、右側区画線R(または右側区画線Rに対応する仮想線Rf)および左側区画線L(または左側区画線Lに対応する仮想線Lf)が認識されていなかったりした場合である(図12のD1c)には、LDW制御は行われない。なお、上述した所定速度v1とは、特に限定されるものではないが、例えば、約50km/h〜約60km/hで設定される。
【0077】
また、自車両mvのドライバーが車線変更を目的とした意図したハンドル操作を行ったり、例えば車線変更をするためにターンシグナルを出したり、例えば自車両mvを停止させるためにブレーキ操作を行ったり、ワイパーが作動していたり、システムに異常があった場合は、LDW作動条件を満たさない。つまり、運転支援ECU1が、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が右側区画線R(右側区画線Rに対応する仮想線Rf)、または左側区画線L(左側区画線Lに対応する仮想線Lf)に到達すると判断した場合でも、図12のLDW作動条件のD1a〜D1hを満たしていなければ、LDW制御は行われない。
【0078】
ステップS16での判断が肯定(YES)された、つまり、運転支援ECU1が、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が右側区画線R(右側区画線Rに対応する仮想線Rf)、または左側区画線L(左側区画線Lに対応する仮想線Lf)に到達すると判断された場合等の次のステップS17において、運転支援ECU1は、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が到達する区画線は仮想線であるか否かを判断する。そして、運転支援ECU1は、当該ステップS17の判断を否定した場合(NO)、ステップS18に処理を進める。一方、運転支援ECU1は、当該ステップS17の判断を肯定した場合(YES)、つまり、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が到達する区画線は仮想線である場合、ステップS19に処理を進める。
【0079】
ステップS18において、運転支援ECU1は、自車両mvが当該自車両mvの走行すべき走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うLDW制御をする。そして、運転支援ECU1は、ステップS20に処理を進める。
【0080】
上記ステップS17での処理が肯定(YES)された次のステップS19において、運転支援ECU1は、仮想線に対して警告するか否かを判断する。具体的には、運転支援ECU1は、当該ステップS19において、仮想線に対して警告するか否かの判断は、仮想線におけるLKA作動状況に応じて判断する。
【0081】
ここで、一般的なLKA作動状況について簡単に説明する。図13は、LKA作動条件の一例を示した図である。運転支援ECU1は、例えば、図13に示すように、LKA作動条件D2a〜D2iを全て満たした場合に、運転支援ECU1は、LKA制御を行うことができる。具体的には、LKA制御は、まず、前提としてLKAスイッチがONされていなければならない(図13のD2a)。そして、自車両mvが、所定速度v2内で走行しており、右側区画線R(または右側区画線Rに対応する仮想線Rf)および左側区画線L(または左側区画線Lに対応する仮想線Lf)が認識されていることが必要である(図13のD2bおよびD2c)。
【0082】
また、一般的にLKA制御は、自車両mvが、例えば自動車専用道路などの走行時に用いられることを想定しているため、上述した所定速度v2とは、大凡70km/h以上(具体的には、約65km/h〜約100km/h)で設定される。そして、LKA制御は、自車両mvが、例えば自動車専用道路などの走行時に、当該車線の中央付近(目標軌道である中央線CL付近)を走行するために、EPS5等を制御して、小さな操舵力を付加し、自車両mvのドライバーのハンドル操作の支援を行うことでドライバーの負荷低減を図るものである。そのため、自車両mvのドライバーが車線変更を目的とした意図したハンドル操作を行ったり、例えば車線変更をするためにターンシグナルを出したり、例えば停止するためにブレーキ操作を行ったりした場合は、LKA制御は作動しなくなる。言い換えると、図13に示すように、LKA制御が作動するためには、作動条件D2d〜D2fの条件を満たしている必要がある。
【0083】
さらに、ワイパーが作動している場合は、LKA制御は作動しなくなる。例えば、ドライバーがワイパーを作動させなければならない状況は、一般的には雨天時であると考えられる。そのため、運転支援ECU1は、雨天時にカメラ2によって自車両mvが走行している走行路面を撮像し、例えば区画線等を認識する場合、認識精度が低下する場合がある。また、一方で、LKA制御は、例えば、EPS5等を制御して、自車両mvのドライバーのハンドル操作の支援を行うように、自車両mvを動的に制御するものである。そのため、高い精度で、例えば区画線等を認識する必要があるため、雨天時など認識精度が低下する場合と予め分かっている場合は、LKA制御は作動しなくなる。言い換えると、LKA制御が作動するためには、図13に示すように、さらに、作動条件D2gの条件を満たしている必要がある。
【0084】
なお、LKA制御システムが異常であり、レーダクルーズコントロールが上記作動速度v3内でセットされていない場合も、LKA制御は作動しなくなる。言い換えると、LKA制御が作動するためには、図13に示すように、さらに、作動条件D2h〜D2iの条件を満たしている必要がある。
【0085】
なお、レーダクルーズコントロールとは、例えば、自車両mvに搭載されたレーダ装置3からの情報に基づいて、自車両mvの前方を走行する先行車両を認識し、予め定められた設定速度内で、車速に応じた車間距離を保つように、自車両mvに備わったブレーキ装置等を制御するものである。なお、レーダクルーズコントロールでも、速度を予め設定することができるため、当該レーダクルーズコントロールにおいて予め設定する速度が上記所定速度v2で設定されている必要がある。
【0086】
また、例えば、自車両mvの大凡半分以上が区画線を跨いだ場合や、ドライバーが手放し運転していることが検出された場合も、LKA制御は作動しなくなる。つまり、仮にLKA制御中であっても当該LKA制御は一時中断される(LKA一時中断条件)。
【0087】
このように、運転支援ECU1は、図13に示したLKA作動条件を全て満たしており、かつ上述のLKA一時中断条件に該当しない場合、運転支援ECU1は、LKA制御を行うことができる。
【0088】
図2のステップS19の処理の説明に戻って、運転支援ECU1は、ステップS19において、上述したLKA作動状況に応じて判断する。具体的には、運転支援ECU1は、上述したLKA作動条件を全て満たしており、かつ上述のLKA一時中断条件に該当しない場合、当該ステップS19の判断を肯定(YES)、つまり、仮想線に対しても警告すると判断する。
【0089】
そして、運転支援ECU1は、ステップS18において、運転支援ECU1は、自車両mvが当該自車両の走行すべき走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6および音声出力装置7を介して行うLDW制御をする。
【0090】
一方、運転支援ECU1は、上述したLKA作動条件を全て満たしていなかったり、上述のLKA一時中断条件に該当する場合、当該ステップS19の判断を否定(NO)、つまり、仮想線に対しては警告しないと判断する。
【0091】
このように、LDW制御が必要であると判断された場合でも、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が到達する区画線は、実線か仮想線か否かによって、LDW制御が異なることになる。つまり、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が到達する区画線が実線である場合は、上記ステップS19の判断にかかわらず、図12に示したLDW作動条件を満たしていれば、LDW制御が行われることになる。
【0092】
なお、図12に示したLDW作動条件は一例であり、例えば、以下のように設定することも可能である。上述したように、LDW制御は、自車両mvが当該自車両mvの走行すべき走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うものであり、事故などの安全性が危惧される状況においては危険を未然に回避するためには、重要な制御となる。
【0093】
例えば、ワイパーが作動している場合は、図12に示したLDW作動条件を満たすことができないが、実線の場合は、ワイパーが作動している場合でも図12に示したLDW作動条件を満たすようにしてもよい。つまり、LDW作動条件のD1gを考慮せず、LDW制御を行ってもよい。一般的に、ドライバーがワイパーを作動させなければならない状況は、雨天時であると考えられる。そのため、運転支援ECU1は、雨天時にカメラ2によって自車両mvが走行している走行路面を撮像し、例えば区画線等を認識する場合、認識精度が低下する場合がある。そのため、LKA制御は、例えば、EPS5等を制御して、自車両mvのドライバーのハンドル操作の支援を行うように、自車両mvを動的に制御するものである。そのため、高い精度で、例えば区画線等を認識する必要があるため、雨天時など認識精度が低下する場合と予め分かっている場合は、LKA制御は作動しなくなる。しかし、一方で、LDW制御は、自車両mvが当該自車両mvの走行すべき走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うものであり、事故などの安全性が危惧される状況においては危険を未然に回避するためには、重要な制御である。そのため、雨天時にカメラ2によって認識された区画線の認識精度がLKA制御で求められる精度ほど高くなくとも、LDW制御を作動させるようにしてもよい。
【0094】
さらに、ドライバーが意図したハンドル操作をした場合、図12に示したLDW作動条件を満たすことができないが、実線の場合、ドライバーが意図したハンドル操作をした場合でも図12に示したLDW作動条件を満たすようにしてもよい。つまり、LDW作動条件のD1dを考慮せず、LDW制御を行ってもよい。例えば、自車両mvのドライバーが、当該自車両mvの前方にある障害物を避けようとしてハンドル操作を行った場合、自車両mvが走行するときの目標軌道となる線から外れることになる。このとき、自車両mv前方の障害物を避けようとしてハンドル操作を行った場合、LKA制御は行われると、ドライバーは煩わしさを感じることになる。そのため、図13で示したように、ドライバーが意図的なハンドル操作を行った場合、LKA制御は行われないようになっている。しかし、一方で、例えば、自車両mvのドライバーが、当該自車両mvの前方にある障害物を避けようとしてハンドル操作を行い、例えば、区画線をはみ出して対向車線に近づいた場合、事故などの安全性が危惧される状況においては危険を未然に回避するためのLDW制御は作動させるようにしてもよい。
【0095】
図2のステップS20において、運転支援ECU1は、当該フローチャートの処理を終了するか否かを判断する。運転支援ECU1は、例えば、運転支援システムが搭載された車両のイグニッションスイッチがOFFされた場合に当該フローチャートの処理を終了する。一方、運転支援ECU1は、処理を継続すると判断した場合、上記ステップS12に戻って処理を繰り返す。
【0096】
なお、図2で示したフローチャートの処理では、上記ステップS13において、車線維持制御を開始するか否かが判断され、例えば、LKAメインスイッチがドライバーによって押下されている場合、判断を肯定し(YES)、次のステップS14で右側区画線および左側区画線の少なくとも何れか一方の区画線を検出できないとき、仮想線を設定した。しかしながら、上述したように、仮想線に対して警告するか否かの判断は、LKA作動状況に応じて判断するものであるから、例えば、右側区画線および左側区画線の少なくとも何れか一方の区画線を検出できないときにLKA作動条件を満たしていなかったり、一時中断条件を満たしている場合は、仮想線を設定しなかったり、仮想線を設定する距離をLKA作動中のときと比べて短くするようにしてもよい。
【0097】
また、図2で示したフローチャートのステップS17おいて、運転支援ECU1は、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が到達する区画線は仮想線であるか否かを判断した。このとき、例えば、運転支援ECU1は、仮想線の長さ(距離)を考慮して上記ステップS17を行ってもよい。つまり、運転支援ECU1は、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が到達する区画線は仮想線である場合、さらに当該仮想線の長さ(距離)は、予め定められた距離を超えるか否かをさらに判断してもよい。そして、運転支援ECU1は、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が到達する区画線は仮想線であり、かつ当該仮想線の長さ(距離)が予め定められた距離を超えた場合、当該ステップS17の判断を肯定(YES)するようにしてもよい。
【0098】
以上説明したように、運転支援ECU1は、自車両mvの走行環境に応じてドライバーに対して行う警告を変化させることができる。ここで、図4図10で例示した、より具体的な場面を想定して、LDW制御の可否について説明する。例えば、(i)走行路面の右側および左側の何れか一方に区画線の無い区間である、図4で示した分岐区間を例について、まず説明する。
【0099】
図4において、LKA制御中の自車両mvが位置Aで、運転支援ECU1によって、例えば、LDW制御が必要であると判断されたと仮に想定する(図2のステップS16でYES)。この場合、自車両mvの位置Aにおける、右側区画線Rおよび左側区画線Lは実線であるため、図2のステップS17の判断は否定(NO)され、走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うLDW制御がなされる。
【0100】
なお、図12および図13で説明したように、ワイパーが作動している場合は、LKA制御は作動しなくなるが、上述したように走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うLDW制御をしてもよい。さらに、自車両mvのドライバーが車線変更を目的とした意図したハンドル操作を行った場合もLKA制御は作動しなくなるが、走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うLDW制御をしてもよい。また、LKA作動条件の1つである所定速度v2内で自車両mvが走行していなくとも、LDW作動条件である所定速度v1内で自車両mvが走行していれば、LKA制御は作動しなくなるが、走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うLDW制御はなされる。
【0101】
図4において、その後、図中の矢印arS方向に直進し、自車両mvが位置Bまで走行し、この位置Bで図中の矢印arR方向、つまり仮想線Rfの方向に進行しようとして、運転支援ECU1によって、LDW制御が必要であると判断されたと仮に想定する(図2のステップS16でYES)。この場合、自車両mvの位置Bにおいて、右側区画線は仮想線Rfであるため、図2のステップS17の判断は肯定(YES)される。そして、図2のステップS19で、運転支援ECU1によって、仮想線Rfに対して警告が必要か否かが判断される。具体的には、運転支援ECU1は、上述したLKA作動条件を全て満たしており、かつ上述のLKA一時中断条件に該当しない場合、走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うLDW制御はなされる。
【0102】
より具体的に説明すると、図4の位置Bで、例えば、自車両mvのドライバーが、図13に示したLKA作動条件のうちの1つを満たしていなかった場合(例えば、車線変更を意図したハンドル操作がされた場合)、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が仮想線Rfに到達すると判断された場合でもLDW制御はなされない。また、これに対し、図2のステップS17で説明したように、車線変更を意図したハンドル操作がされた場合、予め定められた時間後に到達する線が実線であった場合は、LDW制御はなされることはある。
【0103】
このようにすれば、例えば、図4に示した分岐区間で、自車両mvのドライバーが、図4中の矢印arR方向に進むためにハンドルを切った場合でもLDW制御が行われることがない。言い換えると、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が到達する区画線は、実線か仮想線か否かによって、LDW制御を行うか否かの判断に違いがない場合、例えば、図4に示した分岐区間で、自車両mvのドライバーが、図4中の矢印arR方向に進むためにハンドルを切った場合、仮想線Rfを実線であると判断し、実際に区画線が無い場所でも不要なLDW制御を行ってしまうことになる。
【0104】
つまり、図4に示した分岐区間で、自車両mvのドライバーが、図4中の矢印arR方向に進むためにハンドルを切って分岐方向に進行する場合、当然に自車両mvの前輪は区画線に到達してしまうが、この場合の警告は不要である。従って、この場合、実線の無い箇所において、LDW制御はされず、ドライバーは実線の無い区間でLDW制御がなされることによる違和感を低減することができる。
【0105】
なお、(ii)走行路面における車線増加区間である、図7に示した自車両mvの左側に追い越し車線が現れるような区間等や(iv)右側区画線および左側区画線が検出できない区間である、図10に示した交差点等も同様である。
【0106】
次に、より具体的な場面として、(iii)走行路面のレーン幅が変化する区間である、図8に示すようなカープールレーンの出口区間S1を例に、LDW制御の可否について説明する。
【0107】
図8において、LKA制御中の自車両mvが位置Cで、運転支援ECU1によって、例えば、LDW制御が必要であると判断されたと仮に想定する(図2のステップS16でYES)。この場合、自車両mvの位置Cにおける、右側区画線Rおよび左側区画線Lは実線であるため、図2のステップS17の判断は否定(NO)され、走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うLDW制御がなされる。
【0108】
そして、図8において、その後、図中の矢印arS方向に直進し、自車両mvが位置Dまで走行し、この位置Dで図中の矢印arR方向、つまり仮想線Rfの方向に進行しようとして、運転支援ECU1によって、LDW制御が必要であると判断されたと仮に想定する(図2のステップS16でYES)。この場合、自車両mvの位置Dにおいて、右側区画線は仮想線Rfであるため、図2のステップS17の判断は肯定(YES)される。そして、図2のステップS19で、運転支援ECU1によって、仮想線Rfに対して警告が必要か否かが判断される。具体的には、運転支援ECU1は、上述したLKA作動条件を全て満たしており、かつ上述のLKA一時中断条件に該当しない場合、走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うLDW制御はなされる。
【0109】
より具体的に説明すると、図8の位置Dで、例えば、自車両mvのドライバーが、図13に示したLKA作動条件のうちの1つを満たしていなかった場合(例えば、車線変更を意図したハンドル操作がされた場合)、予め定められた時間後に自車両mvの前輪が仮想線Rfに到達すると判断された場合でもLDW制御はなされない。
【0110】
なお、上述したように、車線変更を意図したハンドル操作がされた場合、予め定められた時間後に到達する線が実線であった場合は、LDW制御はなされることはある。つまり、図8に示すようなカープールレーンの出口区間において、例えば、車線変更を意図したハンドル操作がされたとする。この場合は、図8の仮想線Rfに対してはLDW制御は行われない。しかしながら、図12および図13で説明したように、ワイパーが作動している場合は、LKA制御は作動しなくなるが、走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6や音声出力装置7を介して行うLDW制御をしてもよい。
【0111】
さらに、自車両mvのドライバーが車線変更を目的とした意図したハンドル操作を行った場合もLKA制御は作動しなくなるが、走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6および音声出力装置7を介して行うLDW制御をしてもよい。また、LKA作動条件の1つである所定速度v2内で自車両mvが走行していなくとも、LDW作動条件である所定速度v1内で自車両mvが走行していれば、LKA制御は作動しなくなるが、走行レーンから逸脱しそうである旨の警告を自車両mvのドライバーに対して、表示装置6および音声出力装置7を介して行うLDW制御はなされる。つまり、自車両mvがカープールレーンから出た後の当該自車両mvの右側にある区画線、すなわち、実線R2に対してはLDW制御がなされることがある。
【0112】
なお、図9に示したバスの停留所における乗降区間についても同様である。
【0113】
上記実施形態で説明した態様は、単に具体例を示すものであり、本願発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。よって、本願の効果を奏する範囲において、任意の構成を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明に係る、運転支援装置および運転支援方法は、車両の走行環境に応じてドライバーに対して行う警告を変化させることのできる、車両に搭載される運転支援装置および運転支援方法等に有用である。
【符号の説明】
【0115】
1…運転支援ECU
2…カメラ
3…レーダ装置
4…車両情報取得装置
5…EPS
6…表示装置
7…音声出力装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13