特許第5831725号(P5831725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セイコーエプソン株式会社の特許一覧
特許5831725インクジェット記録用非水系インク組成物、インクセット、およびインクジェット記録方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831725
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月9日
(54)【発明の名称】インクジェット記録用非水系インク組成物、インクセット、およびインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20151119BHJP
   C09D 11/36 20140101ALI20151119BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20151119BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20151119BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20151119BHJP
【FI】
   C09D11/322
   C09D11/36
   C09D11/40
   B41J2/01 501
   B41M5/00 E
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-227097(P2014-227097)
(22)【出願日】2014年11月7日
(62)【分割の表示】特願2010-197483(P2010-197483)の分割
【原出願日】2010年9月3日
(65)【公開番号】特開2015-42758(P2015-42758A)
(43)【公開日】2015年3月5日
【審査請求日】2014年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】棹 亮人
(72)【発明者】
【氏名】窪田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】成相 マキ
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−180332(JP,A)
【文献】 特開2007−146002(JP,A)
【文献】 特開2009−227812(JP,A)
【文献】 特開2009−074034(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01867690(EP,A1)
【文献】 特開2009−227813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/322
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/36
C09D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントイエロー180を含む顔料と、ポリ塩化ビニルと、下記一般式(1)で示される溶剤と、を含有
前記ポリ塩化ビニルと前記一般式(1)で示される溶剤とを質量基準で1:5〜1:25となる量比で含む、インクジェット記録用非水系インク組成物。
【化12】
(式(1)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、RおよびRはメチル基またはエチル基を表す。)
【請求項2】
請求項1において、
前記顔料の含有量が、0.5質量%以上4質量%以下である、インクジェット記録用非水系インク組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記一般式(1)で示される溶剤のRが、メチル基またはn−ブチル基である、インクジェット記録用非水系インク組成物。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記一般式(1)で示される溶剤のRが、炭素数1のアルキル基である、インクジェット記録用非水系インク組成物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
前記一般式(1)で示される溶剤の含有量が、2質量%以上50質量%以下である、インクジェット記録用非水系インク組成物。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれか一項において、
前記ポリ塩化ビニルの含有量が、0.05質量%以上5質量%以下である、インクジェット記録用非水系インク組成物。
【請求項7】
複数のインクジェット記録用非水系インク組成物を備えたインクセットであって、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のインクジェット記録用非水系インク組成物を少なくとも1種含むことを特徴とする、インクセット。
【請求項8】
請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載のインクジェット記録用非水系インク組成物の液滴を吐出し、塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体の表面に該液滴を付着させて画像を記録する、インクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用非水系インク組成物、インクセット、およびインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット記録用ヘッドのノズルから吐出させた微小なインク滴によって画像や文字を記録するいわゆるインクジェット記録方法は、主に紙等の吸水性の記録媒体表面への記録に利用されてきた。このようなインクジェット記録方法に用いられるインクジェット用インクとしては、水に水溶性染料等の色材を添加した水系インクが広く普及している。しかしながら、インクジェット記録方法は、近年様々な分野において多種多様な記録媒体表面への記録に利用されるようになってきている。そこで、多種多様な記録媒体表面への記録に対応するために、水系インクに代えて、溶媒として実質的に水を含まない非水系インクが開発された。
【0003】
このような非水系インクの具体例として、特許文献1には、塩化ビニル系樹脂への密着性を向上させる観点から、ポリ塩化ビニルを溶解できる有機溶剤、顔料および樹脂から構成される非水系インクが提案されている。また、特許文献2には、塩化ビニル系樹脂に対する印字適性を確保する観点から、顔料、有機溶剤、ポリ塩化ビニルおよび脱塩酸反応防止剤を含む非水系インクが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方で、樹脂や顔料のような分散質を含むインクは、いわゆる分散系であるため、チキソトロピー性を示すことが知られている。このチキソトロピー性は、極性溶媒と分散質との水素結合による会合体の構造変化や樹脂のコンフォメーションの変化等に起因して発現すると言われている。そして、インクジェット記録方式におけるインク滴形成時(特に高周波数を利用する場合)には、このチキソトロピー性がインクの吐出安定性に影響を及ぼすことが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−15672号公報
【特許文献2】特開2008−274034号公報
【特許文献3】特開2008−238031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の非水系インクは、塩化ビニル系樹脂への記録を前提としているため、対象グリコールジエーテル(グライム)やN−メチルピロリドン等の特定の溶媒を使用する必要があった。しかしながら、このような特定の溶媒を用いた場合、インクの吐出安定性を確保するための適度なチキソトロピー性が損なわれてしまうことがあり、良好な吐出安定性を確保することが困難であった。
【0007】
さらに、従来の非水系インクから構成されるインクセットは、添加される顔料種によって耐光性が異なることがあり、耐光性の弱い顔料を含有する非水系インクを一部に備える場合には、記録媒体上に記録される文字や画像のカラーバランスの劣化を引き起こすことがあった。
【0008】
本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、吐出安定性に優れると共に、顔料の耐光性を向上できるインクジェット用非水系インク組成物、およびそれを備えたインクセットを提供するものである。また、本発明に係る幾つかの態様は、前記インクジェット用非水系インク組成物を用いたインクジェット記録方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係るインクジェット記録用非水系インク組成物の一態様は、
顔料と、ポリ塩化ビニルと、下記一般式(1)で示される溶剤と、を含有することを特徴とする。
【化1】
(式(1)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基を表し、RおよびRはメチル基またはエチル基を表す。)
【0011】
適用例1のインクジェット記録用非水系インク組成物によれば、上記一般式(1)で示される溶剤を含有することにより良好な吐出安定性が得られる。さらに、前記顔料の耐光性が弱い場合には、上記一般式(1)で示される溶剤中に溶解しているポリ塩化ビニルと前記顔料とが相互作用することにより、前記顔料の耐光性を向上させることができる。
【0012】
[適用例2]
適用例1のインクジェット記録用非水系インク組成物において、前記顔料が、C.I.ピグメントイエロー180を含むことができる。
【0013】
適用例2のインクジェット記録用非水系インク組成物によれば、耐光性の弱いC.I.ピグメントイエロー180と上記一般式(1)で示される溶剤中に溶解しているポリ塩化ビニルとが相互作用することにより、C.I.ピグメントイエロー180の耐光性を向上させることができる。
【0014】
[適用例3]
適用例1または適用例2のインクジェット記録用非水系インク組成物において、前記一般式(1)で示される溶剤のRが、メチル基またはn−ブチル基であることができる。
【0015】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例のインクジェット記録用非水系インク組成物において、前記一般式(1)で示される溶剤の含有量が、2質量%以上50質量%以下であることができる。
【0016】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例のインクジェット記録用非水系インク組成物において、前記ポリ塩化ビニルの含有量が、0.05質量%以上5質量%以下であることができる。
【0017】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例のインクジェット記録用非水系インク組成物において、前記ポリ塩化ビニルと前記一般式(1)で示される溶剤とを質量基準で1:5〜1:25となる量比で含むことができる。
【0018】
[適用例7]
本発明に係るインクセットの一態様は、
複数のインクジェット記録用非水系インク組成物を備えたインクセットであって、適用例1ないし適用例6のいずれか一例に記載のインクジェット記録用非水系インク組成物を少なくとも1種含むことを特徴とする。
【0019】
適用例7のインクセットによれば、耐光性の弱い顔料を含有する非水系インク組成物を備える場合であっても、該顔料の耐光性を向上させることができるので、記録媒体上に記録される文字や画像のカラーバランスの劣化を効果的に抑制することができる。
【0020】
[適用例8]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
適用例1ないし適用例7のいずれか一例に記載のインクジェット記録用非水系インク組成物の液滴を吐出し、塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体の表面に該液滴を付着させて画像を記録することを特徴とする。
【0021】
適用例8のインクジェット記録方法によれば、前記インクジェット記録用非水系インク組成物を用いるのでインクジェットヘッドからの良好な吐出安定性を確保できると共に、記録媒体上に記録される文字や画像のカラーバランスの劣化を効果的に抑制することができる。また、前述した非水系インク組成物には、前記一般式(1)で示される溶剤が含まれており、該溶剤は、塩化ビニル系樹脂と相互作用する。そのため、塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体の表面に前述した非水系インク組成物の液滴を付着させて画像を記録することで、該画像を記録媒体上に強固に定着させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
【0023】
1.インクジェット記録用非水系インク組成物
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録用非水系インク組成物(以下、単に「非水系インク組成物」ともいう)は、顔料と、ポリ塩化ビニルと、後述する特定の溶剤と、を少なくとも含有する。本発明において、「非水系インク組成物」とは、インク組成物を製造する際に水を意図的に添加しないという意味であり、インク組成物を製造中または保管中に不可避的に混入する微量の水分を含んでいても構わない。
【0024】
以下、本実施の形態に用いられる各成分について詳細に説明する。
【0025】
1.1.溶剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、下記一般式(1)で示される溶剤を少なくとも含有する。
【0026】
【化2】
【0027】
鋭意検討の結果、前記一般式(1)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、RおよびRがメチル基またはエチル基であることが好適であることが判明した。「炭素数1〜8のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基等であることができる。前記一般式(1)で示される溶剤を含む非水系インク組成物は、インクの良好な吐出安定性を確保することができる。これは、前記一般式(1)で示される溶剤によって、インクに適度なチキソトロピー性が付与されたためであると推察される。また、前記一般式(1)で示される溶剤は、ポリ塩化ビニルとの相溶性が高い。その結果、前記一般式(1)で示される溶剤と相溶したポリ塩化ビニルと、顔料とが相互作用することで、前記顔料の耐光性を向上させることができる。
【0028】
前記一般式(1)で示される溶剤のHLB値は、8.0以上20.0以下、好ましくは8.5以上18.5以下、より好ましくは12.0以上18.5以下である。前記一般式(1)で示される溶剤のHLB値が前記範囲内にあると、ポリ塩化ビニルとの相溶性の点でより好適となる。なお、本明細書におけるHLB値とは、有機概念図における無極性値(I)と有機性値(O)との比(以下、単に「I/O値」ともいう)から下記式(2)により算出された値である。
HLB値=(無極性値(I)/有機性値(O))×10 …(2)
具体的には、I/O値は、藤田穆著、「系統的有機定性分析混合物編」、風間書房、1974年;黒木宣彦著、「染色理論化学」、槙書店、1966年;井上博夫著、「有機化合物分離法」、裳華房、1990年、の各文献に基づいて算出することができる。
【0029】
本実施の形態に係る非水系インク組成物中における前記一般式(1)で示される溶媒の含有量は、好ましくは2質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上50質量%以下である。前記一般式(1)で示される溶媒の含有量が前記範囲であると、インクの吐出安定性を確保することができる。また、前記一般式(1)で示される溶媒の含有量が前記範囲であると、顔料の耐光性を向上させるのに必要な量のポリ塩化ビニルを溶解することができる。
【0030】
1.2.ポリ塩化ビニル
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、ポリ塩化ビニルを少なくとも含有する。ポリ塩化ビニルは、前記一般式(1)で示される溶媒に溶解させることができる。その結果、前記一般式(1)で示される溶剤中に溶解したポリ塩化ビニルと顔料とが相互作用することで、該顔料の耐光性を向上させることができる。なお、ポリ塩化ビニルを溶解させた状態にしなければ、ポリ塩化ビニルと顔料とが十分に相互作用することができず、該顔料の耐光性を向上させることはできない。
【0031】
本発明において、「ポリ塩化ビニル」には、塩化ビニルモノマーを単独重合させたものに限定されず、塩化ビニルモノマーと他のモノマー(例えば、酢酸ビニルモノマー等)との共重合体も含まれる。
【0032】
前記ポリ塩化ビニルの平均重合度は、特に限定されないが、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1100である。平均重合度が1500を超えるポリ塩化ビニルを添加すると、非水系インク組成物の粘度が上昇する傾向があり、その結果インクの吐出安定性を確保できない場合がある。また、平均重合度が1500を超えるポリ塩化ビニルは、前記一般式(1)で示される溶媒に溶解しづらい傾向があり、顔料の耐光性を向上させる効果が低い場合がある。一方、平均重合度が300未満のポリ塩化ビニルについても、顔料の耐光性を向上させる効果が低い場合がある。なお、ポリ塩化ビニルの平均重合度は、「JIS K 6720−2」の備考欄に記載の平均重合度算出方法に準じて求めることができる。
【0033】
本実施の形態に係る非水系インク組成物中におけるポリ塩化ビニルの含有量は、好ましくは0.05質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。ポリ塩化ビニルの含有量が前記範囲であると、前記一般式(1)で示される溶媒中に溶解したポリ塩化ビニルと顔料とが相互作用することで、顔料の耐光性を向上させる効果が得られる。ポリ塩化ビニルの含有量が前記範囲未満であると、顔料の耐光性を向上させる効果が不十分となる場合がある。一方、ポリ塩化ビニルの含有量が前記範囲を超えると、ポリ塩化ビニルが溶け残る場合があり、ノズルの目詰まりを引き起こすなど吐出安定性を損なうことがある。
【0034】
本実施の形態に係る非水系インク組成物においては、前記ポリ塩化ビニルと前記一般式(1)で示される溶剤とを質量基準で、1:5〜1:25となる量比で含むことが好ましい。前記量比の範囲内であれば、前記一般式(1)で示される溶剤中に前記ポリ塩化ビニルを容易に溶解させることができるので、顔料の耐光性を向上できると共に、ノズルの目詰まりが起こりにくくなる。
【0035】
1.3.顔料
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、色材として顔料を少なくとも含有する。前記顔料としては、従来の非水系インク組成物に通常用いられている有色無機顔料または有色有機顔料等の顔料を用いることができる。本実施の形態に係る非水系インク組成物によれば、いずれの顔料を用いても耐光性を向上させることができるが、特に耐光性の弱い顔料を用いた場合にその効果が発現する。
【0036】
顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料;フタロシアニン顔料、ペリレンおよびペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料;塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキ;ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料;カーボンブラック等の無機顔料等が挙げられる。顔料粒子の平均一次粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは50nm以上500nm以下である。
【0037】
本実施の形態に係る非水系インク組成物をマゼンタまたはレッドインクとする場合の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメ
ントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド224等が挙げられる。
【0038】
本実施の形態に係る非水系インク組成物をオレンジまたはイエローインクとする場合の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180等が挙げられる。
【0039】
本実施の形態に係る非水系インク組成物をグリーンまたはシアンインクとする場合の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等が挙げられる。
【0040】
本実施の形態に係る非水系インク組成物をブラックインクとする場合の顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)等が挙げられる。
【0041】
前記例示した顔料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0042】
前記例示した顔料の中でも、耐光性の弱い顔料を用いると、耐光性向上の効果が発現するため好ましい。本明細書において、「耐光性の弱い顔料」とは、以下の耐光性試験の結果から導き出すことができる。
【0043】
プリンター(ローランドDG社製、型式「SP−300V」)を使用して、濃度100%にて塩化ビニル系樹脂(スリーエム社製、製品名「IJ−40」)上に非水系インク組成物をベタ印刷してこれを試験片とする。この試験片をキセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、型式「XL75」)を用いて、70,000Luxの照射量で500時間曝露し、曝露前後のOD値を測定する。曝露前後におけるOD値の減少率が30%以上50%未満である場合には、該非水系インク組成物に含まれる顔料は「耐光性の弱い顔料」であるとみなすことができる。
【0044】
このような「耐光性の弱い顔料」としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー180、185、155等が挙げられる。
【0045】
本実施の形態に係る非水系インク組成物中における顔料の含有量は、用途や記録特性によって適宜選択することができるが、好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、特に好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0046】
1.4.その他の添加剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、必要に応じて、前記一般式(1)で示される溶剤以外の有機溶剤、界面活性剤、分散剤等を添加してもよい。
【0047】
1.4.1.その他の有機溶剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、塩化ビニル系樹脂等の記録媒体に対してインクを強固に固着させる観点から、常温常圧下で液体のアルキレングリコール化合物およびラクトンから選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、アルキレングリコール化合物を含有することがより好ましい。
【0048】
アルキレングリコール化合物としては、国際公開第2002/055619パンフレットに記載されているような、エチレングリコール化合物またはプロピレングリコール化合物であることが好ましい。
【0049】
好ましいエチレングリコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、またはポリエチレングリコールのモノエーテルないしはジエーテルが挙げられ、好ましくはジエチレングリコール化合物である。また、好ましいプロピレングリコール化合物としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、またはポリプロピレングリコールのモノエーテルないしはジエーテルが挙げられ、好ましくはジプロピレングリコール化合物である。
【0050】
前記ジエチレングリコール化合物としては、例えば、下記一般式(3)で示されるジエチレングリコール化合物を用いることができる。
【0051】
【化3】
【0052】
式(3)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはRCO基である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基である。「炭素数1〜4のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基であることができる。式(3)で示されるジエチレングリコール化合物の具体例としては、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0053】
前記ジプロピレングリコール化合物としては、例えば、下記一般式(4)で示されるジプロピレングリコール化合物を用いることができる。
【0054】
【化4】
【0055】
式(4)中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、またはRCO基である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基である。「炭素数1〜4のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、またはtert−ブチル基であることができる。式(4)で示されるジプロピレン
グリコール化合物としては、例えば、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
【0056】
ラクトンとしては、炭素原子数6以下のラクトンが好ましく、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンであることがより好ましい。
【0057】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において用いることができる前記ジエチレングリコール化合物、前記ジプロピレングリコール化合物、およびラクトンは、それらの沸点が常圧下で、それぞれ好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上である。
【0058】
また、本実施の形態に係る非水系インク組成物において用いることができる前記ジエチレングリコール化合物およびジプロピレングリコール化合物は、それらの20℃での蒸気圧が、好ましくは1hPa以下、より好ましくは0.7hPa以下である。
【0059】
前述したような高沸点および低蒸気圧の条件を満たすジエチレングリコール化合物およびジプロピレングリコール化合物を用いることにより、局所的排気設備または排ガス処理設備を設ける負担が軽減され、作業環境の向上が可能となり、また周辺環境への環境負荷も軽減することが可能となる。
【0060】
本実施の形態に係る非水系インク組成物においては、前記ジエチレングリコール化合物を含有することが好ましく、その含有量は、印刷特性によって適宜選択することができるが、非水系インク組成物全体の質量に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0061】
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、前述したジエチレングリコール化合物、ジプロピレングリコール化合物、ラクトンないしはそれらの混合物に加えて、さらに、常温常圧下で液体であり、下記一般式(5)で示されるポリエチレングリコールモノエーテル化合物を含有してもよい。
【0062】
【化5】
【0063】
式(5)中、R10およびR11は、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)である。nは、3〜6の整数である。「炭素数1〜6のアルキル基」は、直鎖状または分岐状のアルキル基であることができ、例えば前記「炭素数1〜4のアルキル基」に加えて、直鎖状もしくは分岐状のペンチル基またはヘキシル基であることができる。
【0064】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において用いることができる前記ポリエチレングリコールモノエーテル化合物は、その沸点が常圧下で、好ましくは200℃以上、より好ましくは250℃以上である。また、その引火点は、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上である。このようなポリエチレングリコールモノエーテル化合物を用いることにより、非水系インク組成物に揮発抑制性を付与することができる。例えば、インクカートリッジからインクジェット記録用ヘッドへ非水系インク組成物を輸送するチューブ内での非水系インク組成物の揮発を抑制することにより、チューブ内での固形分の堆積を防止ないし軽減することができる。
【0065】
好ましいポリエチレングリコールモノエーテル化合物としては、例えば、トリエチレン
グリコールモノエーテル化合物(例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、又はトリエチレングリコールモノブチルエーテル)、または、前記一般式(5)においてnが4〜6であるポリエチレングリコールモノエーテル化合物(特に、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル)の混合物、例えば、テトラエチレングリコールモノメチルエーテルと、ペンタエチレングリコールモノメチルエーテルと、ヘキサエチレングリコールモノメチルエーテルと、の混合物が挙げられる。
【0066】
また、本実施の形態に係る非水系インク組成物は、前記例示した有機溶媒の他に、以下に例示する有機溶媒をさらに含有してもよい。
【0067】
その他の有機溶媒としては、好ましくは極性有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、フッ化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等)、カルボン酸エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)等が挙げられる。
【0068】
本実施の形態に係る非水系インク組成物が、前記ジエチレングリコール化合物、前記ジプロピレングリコール化合物、および前記ラクトンの少なくともいずれか1種を含み、前記ポリエチレングリコールモノエーテル化合物を含まない場合には、前記ジエチレングリコール化合物、前記ジプロピレングリコール化合物、および前記ラクトンの総量が、全有機溶媒成分の75質量%以上を占めることが好ましい。
【0069】
また、本実施の形態に係る非水系インク組成物が、前記ジエチレングリコール化合物、前記ジプロピレングリコール化合物、および前記ラクトンに加えて、前記ポリエチレングリコールモノエーテル化合物を含む場合には、前記ジエチレングリコール化合物、前記ジプロピレングリコール化合物、前記ラクトン、および前記のポリエチレングリコールモノエーテル化合物の総量は、全有機溶媒成分の80質量%以上を占めることが好ましい。
【0070】
1.4.2.界面活性剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、前記有機溶媒の他に、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる観点から、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。
【0071】
シリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましい。具体例としては、BYK−347、348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0072】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
【0073】
また、ポリオキシエチレン誘導体としては、アセチレングリコール系界面活性剤を用いることが好ましい。具体例としては、サーフィノール82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィンSTG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)、ニッサンノニオンA−10R、A−13R(いずれも日油株式会社製)、フローレンTG−740W、D−90(共栄社化学株式会社製)、ノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
【0074】
本実施の形態に係る非水系インク組成物中における界面活性剤の含有量は、好ましくは
0.05質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
【0075】
1.4.3.分散剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、顔料の分散安定性を向上させる観点から、通常の非水系インク組成物において用いられる任意の分散剤を用いることができる。分散剤としては、有機溶媒の溶解パラメーターが8〜11であるときに有効に作用する分散剤を用いることが好ましい。このような分散剤の具体例としては、ヒノアクトKF1−M、T−6000、T−7000、T−8000、T−8350P、T−8000E(いずれも武生ファインケミカル株式会社製)等のポリエステル系高分子化合物、Solsperse20000、24000、32000、32500、33500、34000、35200、37500(いずれもLUBRIZOL社製)、Disperbyk−161、162、163、164、166、180、190、191、192(いずれもビックケミー・ジャパン社製)、フローレンDOPA−17、22、33、G−700(いずれも共栄社化学株式会社製)、アジスパーPB821、PB711(いずれも味の素株式会社製)、LP4010、LP4050、LP4055、POLYMER400、401、402、403、450、451、453(いずれもEFKAケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0076】
本実施の形態に係る非水系インク組成物において、前記分散剤の含有量は、分散すべき顔料によって適宜選択することができるが、非水系インク組成物中の顔料の含有量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上200質量部以下、より好ましくは30質量部以上120質量部以下である。
【0077】
1.4.4.その他の添加剤
本実施の形態に係る非水系インク組成物には、さらに通常の非水系インク組成物に含まれるその他の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤や紫外線吸収剤等の安定剤、バインダー樹脂等が挙げられる。
【0078】
酸化防止剤としては、例えばBHA(2,3−ブチル−4−オキシアニソール)、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)等が挙げられる。本実施の形態に係る非水系インク組成物中における酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上3質量%以下である。
【0079】
紫外線吸収剤としては、例えばベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。本実施の形態に係る非水系インク組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下である。
【0080】
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、インクの粘度を調整する目的でバインダー樹脂を添加してもよい。バインダー樹脂としては、例えばアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロースアセテートブチレート等の繊維系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。なお、バインダー樹脂は、その添加量により塩化ビニル系樹脂に対するインクの定着性をさらに良好とすることもできる。
【0081】
1.4.5.非水系インク組成物の製造方法
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、公知の方法によって製造することができるが、具体的には以下のような手法を採りうる。まず、前記式(1)で示される溶剤、ポリ
塩化ビニル、その他の有機溶剤を秤取り、撹拌・混合することにより混合溶剤を得る。次いで、得られた混合溶剤の一部を取り分けて、そこに分散剤、顔料の順に添加し、ホモジナイザーを用いて粉砕処理する。その後、ボールミル、ビーズミル、超音波またはジェットミル等で顔料分散液を調製し、所望のインク特性を有するように調整する。続いて、得られた顔料分散液に、混合溶媒の残部およびその他の添加剤(例えば、界面活性剤やバインダー樹脂)を撹拌下に加えることで非水系インク組成物を得ることができる。
【0082】
1.4.6.物性
本実施の形態に係る非水系インク組成物は、印字品質とインクジェット用インク組成物としての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上50mN/mであることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0083】
また、同様の観点から、本実施の形態に係る非水系インク組成物の20℃における粘度は、2mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上10mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、粘弾性試験機MCR−300(Pysica社製)を用いて、20℃の環境下で、Shear Rateを10〜1000に上げていき、Shear Rate200時の粘度を読み取ることにより測定することができる。
【0084】
2.インクセット
本実施の形態に係るインクセットは、複数の非水系インク組成物を備えたインクセットであり、前述した非水系インク組成物を少なくとも1種含むことを特徴とする。
【0085】
耐光性の弱い顔料を含有する非水系インク組成物がインクセット中の一部に含まれる場合には、そのインクセットによって記録媒体上に記録される文字や画像は全体的に変退色するのではなくその一部の色のみが変退色するので、カラーバランスの劣化が顕著となる。しかしながら、前述した非水系インク組成物によれば、顔料の耐光性を向上させることができる。したがって、前述した耐光性の弱い顔料を含有する非水系インク組成物がインクセット中の一部に含まれる場合であっても、記録媒体上に記録される文字や画像のカラーバランスの劣化を効果的に抑制することができる。
【0086】
3.インクジェット記録方法
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、前述した非水系インク組成物の液滴を吐出し、塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体の表面に該液滴を付着させて画像を記録することを特徴とする。本実施の形態に係るインクジェット記録方法によれば、前述した非水系インク組成物を用いるのでインクジェットヘッドからの良好な吐出安定性を確保できると共に、記録媒体上に記録される文字や画像のカラーバランスの劣化を効果的に抑制することができる。
【0087】
また、前述した非水系インク組成物には、前記一般式(1)で示される溶剤が含まれており、該溶剤は、塩化ビニル系樹脂と相互作用する。そのため、本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体の表面に前述した非水系インク組成物の液滴を付着させて画像を記録することで、記録媒体上に強固に定着される点で優れている。
【0088】
本実施の形態に係るインクジェット記録方法における記録媒体としては、塩化ビニル系樹脂を含有するものであれば特に限定されない。塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体と
しては、硬質もしくは軟質の塩化ビニル系フィルムまたはシート等が挙げられる。前述した非水系インク組成物は、塩化ビニル系樹脂基材における無処理表面への画像の記録を可能ならしめるものであり、従来の受容層を有する記録媒体のごとく、高価な記録媒体の使用を不要とする優れた効果を有するが、インク受容層により表面処理された基材であっても適用できることは言うまでもない。
【0089】
本実施の形態に係るインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置は、特に限定されないが、ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置が好ましい。ドロップオンデマンド型のインクジェット記録装置には、記録ヘッドに配設された圧電素子を用いて記録を行う圧電素子記録方法を採用したもの、記録ヘッドに配設された発熱抵抗素子のヒーター等による熱エネルギーを用いて記録を行う熱ジェット記録方法を採用したもの等があるが、いずれの記録方法も採用することができる。また、本実施の形態に係る非水系インク組成物は、撥インク処理された吐出ノズル表面に対して不活性であるという利点を有するので、例えば撥インク処理された吐出ノズル表面を有するインクジェット記録用ヘッドから吐出させるインクジェット記録方法に有利に用いることができる。
【0090】
4.実施例
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0091】
4.1.溶剤の合成
4.1.1.溶剤A
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよびメタノール6.408gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(6)で示される溶剤Aを得た。
【化6】
なお、得られた溶剤Aの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、18.3であった。
【0092】
4.1.2.溶剤B
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび1−ブタノール14.824gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(7)で示される溶剤Bを得た。
【化7】
なお、得られた溶剤Bの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、12.2であった。
【0093】
4.1.3.溶剤C
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド25.441gおよびメタノール6.408gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(8)で示される溶剤Cを得た。
【化8】
なお、得られた溶剤Cの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、13.8であった。
【0094】
4.1.4.溶剤D
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび1−ヘキサノール20.434gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(9)で示される溶剤Dを得た。
【化9】
なお、得られた溶剤Dの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、10.0であった。
【0095】
4.1.5.溶剤E
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび2−エチルヘキサノール26.046gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(10)で示される溶剤Eを得た。
【化10】
なお、得られた溶剤Eの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、8.5であった。
【0096】
4.1.6.溶剤F
撹拌装置、熱電対および窒素ガス導入管を備えた300mlセパラブルフラスコに、N,N−ジメチルアクリルアミド19.828gおよび1−オクタノール26.046gを入れ、窒素ガスを導入しながら撹拌した。次に、ナトリウム t−ブトキシド0.338gを加え、35℃で4時間反応を行った。加熱終了後、リン酸150mgを加え、溶液を均一にした後、3時間放置した。溶液を濾過して、析出物を除去し、さらにエバポレーターで未反応物を除いた。このようにして、下記式(11)で示される溶剤Fを得た。
【化11】
なお、得られた溶剤Fの、有機概念図におけるI/O値から上記式(2)により算出されたHLB値は、8.5であった。
【0097】
4.2.非水系インク組成物の調製
容器に、表1〜表3に記載の濃度に相当する量の溶剤、ポリ塩化ビニルをそれぞれのインク毎に投入し、マグネティックスターラーを用いて30分間混合撹拌して混合溶剤を得た。
得られた混合溶剤の一部を取り分けて、そこにSolsperse37500(LUBRIZOL社製、商品名)およびC.I.ピグメントイエロー180(クラリアントジャパン製、商品名「PV FAST YELLOW HG」)を所定量添加して、ホモジナイザーを用いて粉砕処理した。その後、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルで分散処理を行うことにより、顔料分散液を得た。
得られた顔料分散液に、混合溶剤の残部およびBYK−340(ビックケミー・ジャパン株式会社製、フッ素系界面活性剤)を添加してさらに1時間混合撹拌してから、5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過することで、表1〜表3に記載のイエローインク組成物を得た。なお、表中の数値は、質量%を表す。
【0098】
なお、表中で使用した材料は、下記の通りである。
・C.I.ピグメントイエロー180(クラリアントジャパン製、商品名「PV FAST YELLOW HG」、イエロー顔料)
・Solsperse37500(商品名、LUBRIZOL社製、分散剤)
・ジエチレングリコールジエチルエーテル(商品名、日本乳化剤株式会社製、溶剤)
・ジエチレングリコールジメチルエーテル(商品名、日本乳化剤株式会社製、溶剤)
・ポリ塩化ビニルA(商品名「カネカビニールS−400」、株式会社カネカ製、平均重合度480)
・ポリ塩化ビニルB(商品名「カネカビニールS−1001N」、株式会社カネカ製、平均重合度1050)
・ジメチルスルホキシド(商品名、関東化学株式会社製、溶剤)
・スルホラン(商品名、関東化学株式会社製、溶剤)
・N−メチルピロリドン(商品名、関東化学株式会社製、溶剤)
・BYK−340(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製、フッ素系界面活性剤)・添加剤1:2‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐メチルフェノール(商品名「KEMISORB71」、ケミプロ化成株式会社製)
・添加剤2:2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン(商品名「KEMISORB10」、
ケミプロ化成社製)
・添加剤3:2−[4,6−ビス2,4−ジメチルフェニル−1,3,5−トリアジン−
2−イル]−5−オクチルオキシフェノール(商品名「KEMISORB102」、ケミ
プロ化成株式会社製)
・添加剤4:3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸2,4−ジ−tert−ブチルフェニル(商品名「KEMISORB112」、ケミプロ化成株式会社製)・添加剤5:セバシン酸ビス1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル(商品名「KEMISTAB29」、ケミプロ化成株式会社製)
【0099】
4.3.非水系インク組成物の評価試験
4.3.1.高周波数対応性試験
プリンター(JローランドDG社製、型式「SP−300V」)に搭載されているヘッドを用いて、ヘッド駆動周波数を変化させ、各周波数における吐出インク滴の飛翔状態について「液滴形状」や「飛行曲がり」がなく吐出されているか、それらの評価項目が連続吐出時にも保障されるか(連続吐出安定性)を評価し、それらの評価項目を全て満足する最高周波数を求めた。評価結果を表1〜表3に併せて示す。
【0100】
4.3.2.ノズルの目詰まり試験
プリンター(JローランドDG社製、型式「SP−300V」)に各水準のインクを充填し、室温25℃、湿度45%RHの環境下で放置した。但し、プリンターを放置している間は、タイマーによる定期クリーニングを行わないようにあらかじめ設定しておいた。放置開始後1週間毎にノズルチェックを行って、手動クリーニングを行わずに正常なノズルチェックが印刷できた週数を評価点とした。なお、評価は最大8週間まで行った。評価結果を表1〜表3に併せて示す。
【0101】
4.3.3.耐光性試験
プリンター(JローランドDG社製、型式「SP−300V」)を使用して、濃度100%にて塩化ビニル系樹脂(スリーエム社製、製品名「IJ−40」)上にベタ印刷して試験片とした。この試験片をキセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、型式「XL75」)を用いて、70,000Luxの照射量で500時間曝露し、曝露前後のOD値を測定した。曝露前後におけるOD値の減少率に基づいて、以下のように評価基準を設けた。評価結果を表1〜表3に併せて示す。
A:OD値の減少率が20%未満。
B:OD値の減少率が20%以上30%未満。
C:OD値の減少率が30%以上50%未満。
【0102】
4.3.4.耐オゾン性試験
「4.3.3.耐光性試験」と同様にして、試験片を得た。この試験片をオゾンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、型式「OMS−H」)を用いて、24℃、64%RHの条件下、20ppm濃度のオゾンに曝露した。曝露開始から240時間経過時に、濃度計(商標名「Spectrolino」、GretagMacbeth社製)を使用して各印刷物に記録されている各色のOD値を測定した。測定条件は、光源をD50とし、さらに視野角を2度とした。なお、色毎にフィルター条件のみ変更(シアンにはRed、マゼンタにはGreen、イエローにはBlueの各フィルターを用い、ブラックについてはフィルターなし)して測定を行った。得られた測定結果から下記式(12)を用いて光学濃度残存率(ROD値)を求めた。
ROD(%)=(D/D0)×100 …(12)
(式(12)中、Dは曝露試験後のOD値、D0は曝露試験前のOD値を表す。)
ROD値に基づいて、以下のように評価基準を設けた。評価結果を表1〜表3に併せて示す。
A:ROD値が90%以上。
B:ROD値が70%以上90%未満。
C:ROD値が70%未満。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
【表3】
【0106】
4.3.5.評価結果
実施例1〜実施例8によれば、溶剤Aないし溶剤Fのいずれか1種を含有することで、高周波数対応性およびノズルの目詰まり試験で良好な結果が得られ、良好な吐出安定性を確保できることが判った。また、溶剤Aないし溶剤Fのいずれか1種とポリ塩化ビニルとが共存することで顔料の耐光性および耐オゾン性を向上できることが判った。
【0107】
実施例9〜実施例14については、前述した実施例1〜実施例8とほぼ同様の結果となった。但し、実施例1〜実施例8の結果と比較すると、ポリ塩化ビニルの添加量を増量すると、顔料の耐光性および耐オゾン性をさらに向上できることが判った。
【0108】
比較例1によれば、溶剤Aないし溶剤Fを含有しないので、高周波数対応性の評価試験では良好な結果が得られなかった。また、溶剤Aないし溶剤Fを含有しないことによりポリ塩化ビニルAをインク中に完全に溶解させることができず、ノズルの目詰まり試験、耐光性および耐オゾン性の評価試験でも良好な結果が得られなかった。
【0109】
比較例2〜比較例3によれば、溶剤Aまたは溶剤Bを含有することで、高周波数対応性およびノズルの目詰まり試験で良好な結果が得られ、良好な吐出安定性を確保できることが判った。しかしながら、ポリ塩化ビニルを含有しないので、顔料の耐光性および耐オゾン性を向上できないことが判った。
【0110】
比較例4〜比較例12によれば、溶剤Aないし溶剤Fの代わりにジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチルピロリドンのいずれか1種を用いると、高周波数対応性およびノズルの目詰まり試験で良好な結果が得られなかった。この結果より、溶剤Aないし溶剤Fは、他の溶剤よりもインクの吐出安定性を確保する点で有利であることが示された。
【0111】
比較例13〜比較例17によれば、紫外線吸収剤である添加剤1〜5を含有するため、耐光性には優れることが判明した。しかしながら、ポリ塩化ビニルを含有していないため、耐オゾン性については良好な結果が得られなかった。
【0112】
また、以上に示した例から、ポリ塩化ビニルを添加しない場合と比較すると、いずれの溶剤を用いた場合でもポリ塩化ビニルを添加することでノズルの目詰まりが起きやすくなるが、溶剤Aまたは溶剤Bを用いた場合にはポリ塩化ビニルの添加量を増量してもノズルの目詰まりの起きやすさがそれほど変化しないことが判った。これは、溶剤Aまたは溶剤Bに対するポリ塩化ビニルの溶解性が他の溶剤よりも高いことによるものと考えられる。
【0113】
4.4.インクセットの作製
顔料の種類を変更したこと以外は、「4.2.非水系インク組成物の調製」と同様にして、表4に記載のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色の非水系インク組成物を調製し、この4色の非水系インク組成物からなるインクセットを2種類作製した。なお、表中の数値は、質量%を表す。
【0114】
なお、表中で使用した顔料は、下記の通りである。
・C.I.ピグメントイエロー180(クラリアントジャパン製、商品名「PV FAST YELLOW HG」、イエロー顔料)
・C.I.ピグメントレッド122(東洋インキ製造株式会社製、商品名「LIONOGEN Magenta R」、マゼンタ顔料)
・C.I.ピグメントブルー15:3(大日精化工業株式会社製、商品名「シアニンブルー4920」、シアン顔料)
・C.I.ピグメントブラック7(三菱化学株式会社製、商品名「MA−7」、ブラック
顔料)
なお、その他の成分については、既出した成分と同様であるので記載を省略する。
【0115】
【表4】
【0116】
4.5.インクセットの評価試験
4.5.1.インクセットとしての信頼性の評価
「4.3.3.耐光性試験」および「4.3.4.耐オゾン性試験」と同様にして、各色の耐光性および耐オゾン性の評価を行った。得られた耐光性および耐オゾン性の評価結果に基づいて、以下のようにインクセットとしての信頼性評価基準を設けた。評価結果を表4に併せて示す。
A:耐光性および耐オゾン性の評価結果が、4色全てAである。
B:耐光性および耐オゾン性の評価結果が、4色のうち1色以上についてBであり、残りの色についてはAである。
C:耐光性および耐オゾン性の評価結果が、4色のうち1色以上についてCであり、残りの色についてはAまたはBである。
【0117】
4.5.2.評価結果
実施例15によれば、インクセットとしての信頼性に優れることが判った。一方、比較例18によれば、インクセットとしての信頼性に劣ることが判った。インクセットとしての信頼性が劣る場合は、特にグリーンのような2次色以上の画像を記録すると問題が生じる。例えば、グリーンの画像を印刷した場合に、イエローだけがより褪色してしまうと、画像としてのカラーバランスが大きく損なわれてしまう。よって、本発明に係るインクセットであれば、インクセットとしての信頼性に優れるため、記録した画像のカラーバランスを保持することが可能となる。
【0118】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。