(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
伸縮に伴って内部から液体を排出するダンパ本体と、ダンパ本体から排出される液体を吸収するタンクとの間に設けられる液圧回路において、上記ダンパ本体と上記タンクとを連通する排出通路と、当該排出通路の途中に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える減衰弁と、上記排出通路に並列される副排出通路と、当該副排出通路の途中に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える副減衰弁と、上記副排出通路を開閉する弁体と当該弁体の背面側に設けられて上記タンクへ連通される背圧室とを有するロジック弁と、上記ダンパ本体内の圧力が所定圧以上となると当該ダンパ本体内の圧力を利用して上記背圧室と上記タンクとの連通を断つ遮断機構とを備え、
上記遮断機構は、上記背圧室と上記タンクとを連通する制御通路の途中に設けられて当該制御通路を開閉する遮断弁と、当該遮断弁へ上記ダンパ本体内の圧力を作用させるパイロット通路と、当該パイロット通路の途中に設けられて上記ダンパ本体内の圧力が所定圧以上となると当該パイロット通路を開放するシーケンス弁とを備え、
上記遮断弁は、上記制御通路を開閉する弁本体と、当該弁本体を上記制御通路を開放する方向へ附勢する弾性体とを備え、上記弁本体が上記パイロット通路を介してダンパ本体内の圧力を受けると上記弾性体の附勢力に抗して上記制御通路を遮断することを特徴とする液圧回路。
【背景技術】
【0002】
免震装置は、地盤と構造物との間に介装されるボールアイソレータやゴムといった支持装置を備え、構造物を地盤に対して変位可能に支持しており、地震動の構造物への伝達を絶縁するようになっている。また、この免震装置には、上記のような支持装置の他に、地盤と構造物との間に介装されるダンパを備えており、構造物の振動をダンパが発生する減衰力で減衰させて構造物の振動を抑制するようになっている。
【0003】
他方、制振装置は、たとえば、構造物の柱と梁との間や、上層の梁と下層の梁との間にダンパを介装して構成され、ダンパが発生する減衰力で構造物の変形を抑制して、構造物の振動を抑制するようになっている。
【0004】
このような免震装置や制振装置に使用されるダンパにあっては、大きな振動に対して大きな減衰力を発揮し、小さな振動に対しては小さな減衰力を発揮することが好ましい。
【0005】
というのは、小さな振動に対してダンパが大きな減衰力を発揮すると、ダンパの減衰力が過剰となって構造物を減衰力で加振してしまうことがあり、却って構造物の振動が大きくなってしまう場合がある。また、大きな振動に対してダンパの減衰力が過少な場合には、構造物の振動を充分に抑制できないという問題が生じる。
【0006】
このような問題に対処するため、減衰力を可変にすべく電磁弁を用いるダンパがあるが、例えば、停電などで電力の確保ができないときでもダンパの減衰力を可変にすることが好ましく、機械的に減衰力を可変にできる構造を採用したい場合がある。そこで、従来のダンパにあっては、ストローク量に応じて機械的に減衰力を可変にするために、ダンパ本体の側方にバイパス路を形成し、このバイパス路を開閉する開閉弁を設けるものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【0007】
このダンパは、ダンパ本体の側方に設けられて内部に上記バイパス路が形成されるハウジングと、一部がハウジング内に挿入されて両端がハウジングから突出するスプールとを備えている。このスプールは、ダンパ本体に平行しており、その一端がダンパ本体が取付られる制振対象に連結されて、ダンパ本体が伸縮するとハウジングに対して変位するようになっていて、ハウジングとの位置関係によってバイパス路が開閉される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図示した実施の形態に基づいて、この発明を説明する。一実施の形態における液圧回路Cは、
図1に示すように、伸縮に伴って内部から液体を排出するダンパ本体Dと、ダンパ本体D
から排出される液体を吸収するタンクTとの間に設けられている。そして、この液圧回路Cは、ダンパ本体DとタンクTとを連通する排出通路1と、排出通路1の途中に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える減衰弁2と、排出通路1に並列される副排出通路3と、副排出通路3の途中に設けられて通過する液体の流れに抵抗を与える副減衰弁4と、副排出通路3を開閉するロジック弁5と、遮断機構6とを備えて構成されている。
【0017】
また、この液圧回路C、ダンパ本体DおよびタンクTでダンパを構成していて、ダンパは、図示はしないが、たとえば、地盤と構造物との間にボールアイソレータや積層ゴム等といった弾性体とともに介装されて免震装置の一部として機能したり、構造物の柱と梁との間や上層の梁と下層の梁との間等に介装されて制振装置の一部として機能することができるが、液圧回路Cおよびダンパの用途はこれに限定されるものではない。
【0018】
また、ダンパ本体Dは、この実施の形態では、
図1および
図2に示すように、シリンダ11と、シリンダ11内に摺動自在に挿入されるピストン12と、一端がピストン11に連結されてシリンダ11内に移動自在に挿入されるロッド13と、シリンダ11内にピストン12で区画したピストン室Pとロッド室Rとを備えて構成される。ダンパ本体Dには、タンクTからピストン室Pへ向かう液体の流れのみを許容する吸込通路14と、ピストン室Pからロッド室Rへ向かう液体の流れのみを許容する整流通路15とが設けられていて、液圧回路Cにおける排出通路1は、上記したロッド室RとタンクTとを連通している。
【0019】
そして、シリンダ11の外周側には、このシリンダ11を覆う外筒20が設けられており、シリンダ11と外筒20との間の環状隙間でタンクTを形成している。シリンダ11と外筒20の
図2中左端は、ロッド13が挿通されるロッドガイド21にて閉塞されている。また、シリンダ11の
図2中右端は、ボトム部材22にて閉塞され、外筒20の
図2中右端は蓋23によって閉塞されている。シリンダ11は、ボトム部材22とともに、外筒20の両端に固定される上記したロッドガイド21と蓋23で挟持されて外筒20内に収容固定されている。さらに、ロッドガイド21の側方には、バルブブロック24が着脱可能に取り付けられており、このバルブブロック24内に液圧回路Cが設けられている。
【0020】
また、ピストン室P内とロッド室R内には、この場合、作動油等の液体が充填されており、タンクT内にも液体が貯留されている。ここでは、上記液体は作動油となるが、他の液体を使用してもよく、錆等の弊害がなければ水、水溶液等を使用しても差し支えない。
【0021】
吸込通路14は、途中に、タンクTからピストン室Pへ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁14aを備えており、吸込通路14をタンクTからピストン室Pへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路に設定されている。この吸込通路14は、この実施の形態の場合、
図2に示すように、ボトム部材22に設けられている。
【0022】
整流通路15も同様に、途中に、ピストン室Pからロッド室Rへ向かう液体の流れのみを許容する逆止弁15aを備えており、整流通路15をピストン室Pからロッド室Rへ向かう液体の流れのみを許容する一方通行の通路としている。この整流通路15は、この実施の形態の場合、
図2に示すように、ピストン12に設けられている。
【0023】
なお、吸込通路14と整流通路15は、上記した部材以外に設けることも可能であるが、これらをダンパ内に設けることで、ダンパを小型にできる利点がある。また、ボトム部材22と蓋23とを一部品で構成して吸込通路14を当該部品に設けるようにしてもよい。
【0024】
上記のように構成されたダンパ本体Dは、伸長する場合、ピストン室Pの容積が拡大されロッド室Rが圧縮されて容積が縮小されるので、拡大されるピストン室PにはタンクTから吸込通路14を介して液体が供給されてロッド室Rから押し出された液体は液圧回路Cを介してタンクTへ排出される。また、ダンパ本体Dは、収縮する場合、ピストン室Pが圧縮されて容積が縮小されロッド室Rの容積が拡大されるので、圧縮されるピストン室Pから拡大するロッド室Rに整流通路15を介して液体が移動するとともに、シリンダ11内にロッド13が侵入する体積分の液体がシリンダ11内で過剰となるために、この過剰分の液体が液圧回路Cを介してタンクTへ排出される。つまり、この実施の形態のダンパは、伸長しても収縮しても液体の流れは常に一方向となる、いわゆる、ユニフロー型のダンパとして構成されており、シリンダ11内からタンクTへ排出される液体が液圧回路Cを通過する際に抵抗が与えられて減衰力を発揮するようになっている。また、この実施の形態では、上述したように、タンクTは、シリンダ11内から排出される液体を吸収するだけでなく、ダンパ本体Dの伸長時の際にシリンダ11内で不足する液体をシリンダ11内へ供給するようになっており、このようなダンパ本体Dの作動に必要かつ充分な量の液体を内部に貯留している。
【0025】
なお、この場合、ロッド13の横断面積は、ピストン12の横断面積の二分の一になるようにしてあり、ダンパ本体Dの伸長側と収縮側のストローク量が同じであれば伸長時でも収縮時でも同じ体積の液体がシリンダ11からタンクTへ排出されることになる。そのため、ダンパは、液柱剛性を無視すれば、伸長側と収縮側のストローク速度が同じであれば伸長時でも収縮時でも等しい減衰力を発揮することが可能であり、伸長側と収縮側の減衰力に偏りをもたせたくない免震装置や制振装置に最適となる。
【0026】
つづいて、液圧回路Cについて詳細に説明する。排出通路1は、ダンパ本体D内のロッド室RとタンクTとを連通しており、その途中には、減衰弁2が設けられている。この減衰弁2は、排出通路1を開閉する弁体2aと、排出通路1を閉じる方向へ弁体2a附勢するばね2bと、減衰弁2よりも上流側の圧力をばね2bに対向して排出通路1を開く方向へ弁体2aに作用させる圧力導入路2cとを備えて構成されている。そして、減衰弁2は、ロッド室Rを上流としてロッド室R内の圧力が開弁圧に達すると、圧力導入路2cを介して弁体2aに作用する上流側の圧力によって押圧されてばね2bが圧縮されることで排出通路1を開放するようになっており、排出通路1をロッド室RからタンクTへ向かう液体の流れにのみを許容する一方通行の通路としている。なお、この例では、減衰弁2が逆止弁としての機能を併せ備えているが、別途、逆止弁を設けておけば減衰弁2は、双方向通行を許容する絞り弁等とされてもよい。
【0027】
副排出通路3は、排出通路1に並列されていて、ダンパ本体D内のロッド室RとタンクTとを連通している。この副排出通路3の途中には、副減衰弁4が設けられており、副減衰弁4は、減衰弁2と同様に、副排出通路3を開閉する弁体4aと、副排出通路3を閉じる方向へ弁体4a附勢するばね4bと、副減衰弁4よりも上流側の圧力をばね4bに対向して副排出通路3を開く方向へ弁体4aに作用させる圧力導入路4cとを備えて構成されている。そして、副減衰弁4は、ロッド室Rを上流としてロッド室R内の圧力が開弁圧に達すると、圧力導入路4cを介して弁体4aに作用する上流側の圧力によって押圧されてばね4bが圧縮されることで副排出通路3を開放するようになっており、副排出通路3をロッド室RからタンクTへ向かう液体の流れにのみを許容する一方通行の通路としている。なお、この例では、副減衰弁4が逆止弁としての機能を併せ備えているが、別途、逆止弁を設けておけば副減衰弁4は、減衰弁2と同様に、双方向通行を許容する絞り弁等とされてもよい。
【0028】
ロジック弁5は、副排出通路3の途中に設けた環状の弁座5aと、当該弁座5aに離着座して副排出通路3を開閉する弁体5bと、当該弁体5bの背面側に設けられて制御通路7を介してタンクTへ連通される背圧室5cと、弁体5bを弁座5aに着座させる方向、つまり、副排出通路3を閉じる方向へ附勢するばね5dとを備えて構成されている。また、弁体5bには、上記弁座5aよりも上流側となるロッド室Rの圧力を弁体5bの背面側の背圧室5cへ導く孔5eが設けられ、この孔5eの途中には絞り5fが設けられている。
【0029】
つづいて、遮断機構6は、ダンパ本体D内の圧力として、この場合、ロッド室R内の圧力が所定圧以上となると、当該ロッド室R内の圧力を利用して背圧室5cとタンクTとの連通を断つようになっている。より詳しくは、遮断機構6は、ダンパ本体Dが伸縮する際に高圧となるダンパ本体D内の圧力を利用するようにしており、この場合、ダンパ本体Dがユニフロー型に設定されていて、伸縮する際に高圧なるロッド室R内の圧力をダンパ本体D内の圧力として利用し、この圧力が所定圧以上となると、背圧室5cとタンクTとの連通を断つこととしている。
【0030】
具体的には、遮断機構6は、背圧室5cとタンクTとを連通する制御通路7の途中に設けられて当該制御通路7を開閉する遮断弁8と、当該遮断弁8へ上記ダンパ本体D内の圧力として、この場合、ロッド室Rの圧力を作用させるパイロット通路9と、当該パイロット通路9の途中に設けられて上記ロッド室R内の圧力が所定圧以上となると当該パイロット通路9を開放するシーケンス弁10とを備えて構成されている。
【0031】
制御通路7は、上記のように背圧室5cとタンクTとを連通しており、この制御通路7の途中には、遮断弁8と可変絞り弁Oとが直列に設けられている。そして、遮断弁8で制御通路7を開閉することにより、ロジック弁5の開閉を制御することができるようになっている。より詳細には、遮断弁8が制御通路7を開放すると、ロジック弁5の背圧室5cがタンクTに連通された状態となり、背圧室5cには孔5eを介して副排出通路3のロジック弁5よりも上流側の圧力であるロッド室R内の圧力が絞り5fによって減圧されて作用する。ロジック弁5の弁体5bには、ロッド室R内の圧力によって弁座5aから後退する方向、つまり、離座する方向の力が作用するのに対し、背圧室5c内の圧力によって弁座5aへ前進する方向、つまり、着座する方向の力が作用する。上述したように、背圧室5cにはロッド室R内の圧力が減圧されて作用しているため、弁体5bを弁座5aから離座させる方向の力の方が大きく、この力がばね5dの附勢力に打ち勝つと、弁体5bが弁座5aから離座して副排出通路3が開放される。すなわち、ロジック弁5は、ダンパ本体D内の圧力として、この場合、ロッド室R内の圧力が弁体5bを後退させることが可能な圧力(開弁圧)に達すると開弁することになる。反対に、制御通路7が遮断弁8によって遮断されると、背圧室5cとタンクTとの連通が断たれた状態となるため、背圧室5cを圧縮する方向へ弁体5bを移動させることができず、弁体5bがロックされてロジック弁5は副排出通路3を遮断することになる。絞り5fは、背圧室5cの圧力を調節する機能とロジック弁5の開弁圧を設定する機能とを発揮し、背圧室5cの圧力を弁体5bの正面側の圧力よりも減圧させることでロジック弁5の開弁を実現する。なお、可変絞り弁Oは、背圧室5cの圧力を調節するべく設けられるものであり、可変絞り弁Oにおける液体の流れに与える抵抗を大きくすればするほど、可変絞り弁Oにおける圧力損失が大きくなり、遮断弁8を開く場合において背圧室5c内の圧力が大きくなるので、ロジック弁5の開弁圧は大きくなる。
【0032】
上記から理解できるように、遮断弁8で制御通路7を開放すれば、ロジック弁5が開弁可能となって副排出通路3を開放でき、遮断弁8が閉じると、ロジック弁5が閉弁して副排出通路3は遮断されることになる。
【0033】
つぎに、遮断弁8は、スプリングオフセットの2位置切換弁として構成され、制御通路7を開放して背圧室5cとタンクTとを連通状態とする連通ポジション8bと制御通路7を遮断する遮断ポジション8cとを備えた弁本体8aと、制御通路7を開放する方向へ弁本体8aを附勢する弾性体としてのばね8dとを備えている。遮断弁8は、基本的には、ばね8dによって押圧されて、連通ポジション8bを採るようになっている。なお、弾性体には、弁本体8aを附勢することができれば、ばね8d以外のものを利用可能である。
【0034】
そして、パイロット通路9は、ロッド室Rの圧力を弁本体8aに上記ばね8dの附勢力に対向して制御通路7を遮断する方向へ弁本体8aを移動させるように作用させるようになっており、その途中には、パイロット通路9を開閉するシーケンス弁10が設けられている。
【0035】
シーケンス弁10は、この場合、パイロット通路9を開閉する弁体10aと、パイロット通路9を閉じる方向へ弁体10a附勢するばね10bと、シーケンス弁10よりも上流側の圧力をばね10bに対向してパイロット通路9を開く方向へ弁体10aに作用させる圧力導入路10cとを備えて構成されている。そして、シーケンス弁10は、ダンパ本体D内の圧力としてのロッド室R内の圧力が所定圧となる開弁圧に達すると、圧力導入路10cを介して弁体10aに作用する上流側の圧力によって押圧されてばね10bが圧縮されることでパイロット通路9を開放するようになっている。
【0036】
また、パイロット通路9は、ドレーン通路16を介して制御通路7の途中であって可変絞り弁OとタンクTとの間に連通されていて、制御通路7を通じてタンクTに連通される。なお、ドレーン通路16の途中には、絞り17が設けられており、この絞り17は、パイロット通路9を介して弁本体8aにロッド室R内の圧力を作用させるために設けられるものである。ドレーン通路16は、制御通路7と独立してタンクTに連通されてもよい。
【0037】
そして、ダンパ本体Dのロッド室R内の圧力がシーケンス弁10の開弁圧に達しない状態では、シーケンス弁10はパイロット通路9を遮断し、遮断弁8の弁本体8aにはパイロット通路9を通じてロッド室R内の圧力が作用しないため、遮断弁8は、ばね8dに附勢されて連通ポジション8bを採り、ロジック弁5は上流のロッド室R内の圧力が開弁圧に達すると副排出通路3を開放する。これに対して、ダンパ本体Dの伸縮に伴うロッド室R内の圧力の上昇により、ロッド室R内の圧力がシーケンス弁10の開弁圧に達すると、シーケンス弁10がパイロット通路9を開放される。すると、遮断弁8の弁本体8aにパイロット通路9を介してロッド室Rの圧力が作用し、遮断弁8は遮断ポジション8cへ切換って、ロジック弁5の弁体5bがロックされて副排出通路3が遮断されることになる。
【0038】
なお、この液圧回路Cにあっては、ダンパ本体Dのロッド室RとタンクTとを連通するリリーフ通路18が設けられており、リリーフ通路18の途中には、ロッド室R内の圧力が予め設定される設定圧に達するとリリーフ通路18を開放してダンパ本体D内の液体をタンクTへ逃がすリリーフ弁19が設けられている。このリリーフ弁19は、上記したようにダンパ本体D内の圧力が過剰となる際に液体をタンクTに逃がすほか、温度上昇によって液体の体積が増加した場合にもダンパ本体D内から液体をタンクTへ逃がす温度補償機能も兼ねることができる。
【0039】
つづいて、液圧回路Cおよびダンパの動作について説明する。上述したように、ダンパにおけるダンパ本体Dが外力によって伸縮すると、シリンダ11内から液体が押し出され、液圧回路Cを介してタンクTへ排出される。
【0040】
ダンパ本体Dの伸縮速度が低く、ロッド室R内の圧力がシーケンス弁10の開弁圧に達しない場合、シーケンス弁10は閉弁した状態となってパイロット通路9が遮断された状態となる。パイロット通路9が遮断された状態にあると、上述したように、遮断弁8は連通ポジション8bを採り、制御通路7は背圧室5cをタンクTへ連通することになる。この状態において、副排出通路3のロジック弁5よりも上流側の圧力であるロッド室Rの圧力がロジック弁5の開弁圧に達すると、ロジック弁5は開弁して副排出通路3を開放する。
【0041】
したがって、ダンパの伸縮速度が低いとロジック弁5が開弁可能な状態におかれることになる。そして、ダンパの伸縮速度が至極低く、液圧回路Cの上流側の圧力であるロッド室R内の圧力がロジック弁5の開弁圧に達しない場合には排出通路1のみが開放されて、ダンパは、減衰弁2が通過する液体に与える抵抗に応じて減衰力を発揮する。よって、ダンパの伸縮速度が極低速域にある際のダンパの減衰特性は、
図3中の線aで示すようになり、減衰係数は高くなる。
【0042】
次に、ダンパの伸縮速度は低くいもののロッド室R内の圧力がロジック弁5の開弁圧に達する場合には、副排出通路3も開放されて液体が排出通路1だけでなく副排出通路3を介してタンクTへ移動することになる。この場合、ダンパは、減衰弁2および副減衰弁4が通過する液体に与える抵抗に応じて減衰力を発揮するので、ダンパの伸縮速度が低速域にある際のダンパの減衰係数は、
図3中の線bで示すように、ロジック弁5が閉弁している状態のときよりも低下することになる。
【0043】
これに対して、ダンパの伸縮速度が高くなり、ロッド室R内の圧力がシーケンス弁10の開弁圧に達するようになると、シーケンス弁10が開弁してパイロット通路9が開放されて、遮断弁8の弁本体8aにロッド室Rの圧力が作用して遮断弁8が遮断ポジション8cへ切換わり、制御通路7は遮断される。
【0044】
すると、ロジック弁5の弁体5bがロックされて副排出通路3は遮断されるため、排出通路1のみが開放されて、ダンパは、減衰弁2が通過する液体に与える抵抗に応じて減衰力を発揮する。よって、ダンパの伸縮速度が高速域にある際のダンパの減衰特性は、
図3中の線cで示すようになり、ロジック弁5が開弁した状態に比較して減衰係数は高くなる。なお、ダンパの伸縮速度が非常に高くなって、ダンパ本体D内の圧力がリリーフ弁19の開弁圧である上記設定圧に達する場合には、リリーフ弁19が開弁して圧力をタンクTへ逃がすので、
図3の線dで示すように、伸縮速度が高
々速域にある際のダンパの減衰特性は、リリーフ弁19の開弁によって減衰係数が再度低くなるような特性となる。
【0045】
なお、減衰弁2に開弁圧を設定する場合、線aに切片を与えることができ、ダンパの伸縮速度が0であってもダンパが減衰力を発生することができる。また、ロジック弁5の開弁圧を非常に小さくすることで、ダンパの伸縮速度が極低速域にあっても、減衰弁2だけでなく副減衰弁4も開弁して液体が排出通路1のみならず副排出通路3をも通過し得るようにすることができ、極低速域から低い減衰係数をもつ減衰特性を実現することも可能である。
【0046】
このように本実施の形態のダンパにあっては、ダンパの伸縮速度に応じて減衰係数を可変にすることができ、加速度の小さな振動に対しては、低い減衰力を発揮し、加速度の大きな振動に対しては、高い減衰力を発揮することができるので、地震動に対する構造物の振動の抑制に適し、免震装置や制振装置の利用に最適となる。
【0047】
上記したダンパにあっては、遮断弁8は、ダンパの伸縮速度に依存して連通ポジション8bと遮断ポジション8cに自動的に切換るので、ダンパにおける減衰係数を伸縮速度に依存して自動的に切換えることができる。なお、遮断弁8に、遮断弁8が遮断ポジション8cに切換ると、この遮断ポジション8cに保持するディテント機構等のバルブ位置保持機構を設けるようにしてもよく、その場合は、一旦、ダンパの伸縮速度が高速域に達して、遮断弁8が遮断ポジション8cに切換ってロジック弁5が遮断状態にロックされると、そのまま、減衰係数が高い状態に維持される。この場合、ロジック弁5のロックを解除するのに、遮断弁8の弁体8aに連結されるレバーを設けておき、レバーの操作によって連通ポジション8bに復帰させるようにしてもよい。
【0048】
このように、液圧回路Cおよびダンパは、ダンパ本体内の圧力を利用して減衰力を可変にでき、減衰力調整部である液圧回路Cをダンパ内に収容することが可能となる。したがって、本発明の液圧回路Cおよびダンパによれば、減衰力調整部である液圧回路Cがダンパ外の部材と協働せずに独立してダンパの減衰力を自動的に調整することができるので、液圧回路Cがダンパ外の部材と干渉することがなくなり、また、液圧回路Cとダンパ外に設けられる部材との取付位置に応じて位置合わせ等が必要とならないので、ダンパを利用箇所に取り付ける設置時に煩雑な作業を要求されることがなくなる。
【0049】
また、遮断機構6が、背圧室5cとタンクTとを連通する制御通路7の途中に設けられて制御通路7を開閉する遮断弁8と、遮断弁8へダンパ本体D内の圧力を作用させるパイロット通路9と、パイロット通路9の途中に設けられてダンパ本体D内の圧力が所定圧以上となるとパイロット通路9を開放するシーケンス弁10とを備え、遮断弁8が制御通路7を開閉する弁本体8aと、弁本体8aを制御通路7を開放する方向へ附勢する弾性体8dとを備え、弁本体8aがパイロット通路9を介してダンパ本体D内の圧力を受けると弾性体8dの附勢力に抗して制御通路7を遮断するようにしたので、大きな圧力を受けるロジック弁5の液圧による開閉制御を簡単な回路構成で実現でき、経済性に優れる。
【0050】
さらに、制御通路7の途中に可変絞り弁Oを設けたことで、ロジック弁5の開弁圧を簡単にチューニングすることができ、ダンパの減衰特性の調整が非常に容易となる。
【0051】
またさらに、液圧回路Cがバルブブロック24内に設けられることで、バルブブロック24の交換によって、液圧回路Cの換装が可能となり、ダンパのメンテナンスや修理が簡単となる利点がある。
【0052】
なお、本実施の形態においては、減衰特性の変化を説明するために、ダンパの伸縮速度に極低速、低速、高速、高々速といった区分を設けているが、これらの区分の境の速度はそれぞれ任意に設定することができる。具体的には、極低速と低速の境界を決する速度は、ロジック弁5の開弁圧で設定することができ、低速と高速の境界を決する速度は、シーケンス弁10の開弁圧で設定することができ、高速と高々速の境界を決する速度は、リリーフ弁19の開弁圧で設定することができる。したがって、上記に説明したダンパの減衰特性は、一例であって、減衰特性を任意に設定することができるのは当然である。
【0053】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。