(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記複数のオリフィスのうち周方向幅が最大となる最大幅オリフィスおよび上記複数のオリフィスのうち周方向幅が最小となる最小幅オリフィスは、上記リーフバルブまたは上記弁座にあって、互いに径方向の反対側に位置決めされてなる請求項1に記載の緩衝器。
上記複数のオリフィスのうち周方向幅が最大となる最大幅オリフィスおよび上記複数のオリフィスのうち周方向幅が最小となる最小幅オリフィス以外の他のオリフィスは、上記リーフバルブまたは上記弁座にあって、上記最大幅オリフィスと上記最小幅オリフィスとの間に位置決めされてなる請求項1または請求項2に記載の緩衝器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の緩衝器にあっては、バルブ構造によって、オリフィス特性の減衰作用と、バルブ特性の減衰作用とがなされる点で、問題がある訳ではないが、利用の実際を勘案すると、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0011】
すなわち、上記のバルブ構造にあって、リーフバルブは、外周側端部に周方向に等間隔で設けられる複数のオリフィスにおける流路面積を同一にするので、開弁圧に達すると、全周が一挙に撓んで開弁し、緩衝器の減衰特性は、オリフィス特性からバルブ特性に切り換わる。
【0012】
ここで、オリフィス特性は、2乗曲線で示され、バルブ特性は、2/3乗曲線で示されるため、従来の緩衝器にあっては、
図6中に破線図で示すように、オリフィス特性がバルブ特性に切り換わる際に、減衰特性が急変することになり、ロッド加速度、つまり、ピストン加速度の急変に繋がり、コトコト音等の異音の発生原因になる不具合がある。
【0013】
そこで、この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、オリフィス特性とバルブ特性とを滑らかに連続させるバルブ構造を備える緩衝器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するため、この発明の構成を、隔壁体で区画される一方室と他方室との連通時に減衰作用をなすバルブ構造を有する緩衝器において、上記バルブ構造は、上記隔壁体における上記一方室または上記他方室に対向する端面に形成される弁座と、この弁座に外周側端部を離着座する環状のリーフバルブと、このリーフバルブの外周側端部にこのリーフバルブの径方向に形成の切欠または上記弁座にこの弁座の径方向に形成の凹溝からなる複数のオリフィスを有し、これら複数のオリフィスは、周方向幅を不等幅にしてなるとする。
【0015】
それゆえ、この発明の緩衝器にあっては、バルブ構造がリーフバルブの外周側端部に形成される切欠または弁座に形成される凹溝からなる複数のオリフィスを有するから、作動油が動き始めると、各オリフィスにおける流量は異なるが、複数のオリフィスによる圧力損失があり、オリフィス特性の減衰作用がなされる。
【0016】
そして、バルブ構造にあっては、複数のオリフィスがオリフィスにおける周方向幅、すなわち、オリフィス幅を不等幅にするから、作動油の流速が上がると、静的でなく動的に見ると、リーフバルブにおいて、オリフィス幅を最も広くするオリフィスを有する外周側端部が最初に撓み始める。
【0017】
つまり、リーフバルブにおける外周側端部の弁座に対する吸着力は、オリフィス幅が狭いオリフィスを有する外周側端部と、オリフィス幅が広いオリフィスを有する外周側端部とを比較すると、オリフィス幅を広くするオリフィスを有する外周側端部の方が小さくなる。
【0018】
したがって、リーフバルブにあっては、オリフィス幅を最も広くするオリフィスを有する外周側端部が最初に撓み、次に、オリフィス幅を最初のオリフィスよりも狭くするオリフィスを有する外周側端部が撓み、それぞれ圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0019】
そして、作動油の流速がさらに上がると、リーフバルブにおいて、オリフィス幅をさらに狭くするオリフィスを有する外周側端部が撓み、最後には、オリフィス幅を最も狭くするオリフィスを有する外周側端部が撓み、それぞれ圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0020】
つまり、この発明におけるバルブ構造にあっては、全体としてみると、オリフィス特性の減衰作用がなされているときにバルブ特性の減衰作用がなされることになり、また、リーフバルブは、全周となる外周側端部を一挙に撓ませずして、オリフィスを有する各外周側端部における開弁のタイミングをずらして、バルブ特性の減衰作用がなす。
【0021】
このことから、この発明におけるバルブ構造にあっては、
図6中に実線図で示すように、オリフィス特性が緩やかな切り換え線でバルブ特性に連続することになる。
【発明の効果】
【0022】
その結果、この発明による緩衝器によれば、オリフィス特性とバルブ特性とを急激な変化点を有することなく滑らかに連続させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明する。この発明による緩衝器は、たとえば、車両におけるサスペンションに組み込まれる。
【0025】
そして、この緩衝器は、
図1に示すところでは、作動油を収容するシリンダ1と、このシリンダ1内に出入自在に挿通されるロッド2と、このロッド2の
図1中で下端部となる先端部2aに保持されてシリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内に一方室R1と他方室R2とを区画する隔壁体たるピストン3とを有してなる。
【0026】
そして、図示するところでは、緩衝器が正立型に設定され、シリンダ1が下端側部材とされて車両における車軸側に連結され、ロッド2が上端側部材とされて車両における車体側に連結される。
【0027】
なお、図示しないが、緩衝器が正立型に設定されるのに代えて、倒立型に設定されても良く、また、図示する単筒型に形成されるのに代えて、複筒型に形成されても良い。
【0028】
緩衝器が以上のように形成される一方で、この緩衝器に具現化されるバルブ構造は、図示するところでは、緩衝器におけるシリンダ1内に挿入のピストン3部分に具現化されてなる。そこで、以下には、この発明におけるバルブ構造について説明する。
【0029】
ピストン3は、シリンダ1内に挿入される環状に形成されて、シリンダ1内の
図1中で上方側室となる一方室R1と
図1中で下方側室となる他方室R2との連通を許容する伸側のポート3aおよび圧側のポート3bを有する。
【0030】
伸側のポート3aの
図1中で下端となる下流側端は、他方室R2に対向するピストン3の下端に形成の環状溝3c(
図2参照)に開口し、伸側のポート3aの
図1中で上端となる上流側端は、一方室R1に対向するピストン3の上端に形成の環状溝3dに開口する。
【0031】
そして、圧側のポート3bの
図1中で上端となる下流側端は、ピストン3の上端に形成の環状溝3eに開口し、圧側のポート3bの
図1中で下端となる上流側端は、ピストン3の下端に開口する。
【0032】
また、ピストン3は、伸側のバルブ4の内周側端部(符示せず)を着座させる内周側固定部3fと、この内周側固定部3fの外周側に形成されてこの内周側固定部3fとの間に上記環状溝3cを区画する環状に形成の弁座3g(
図2参照)とを下端に有してなる。
【0033】
そしてまた、ピストン3は、圧側のバルブ5の内周側端部(符示せず)を着座させる内周側固定部3hと、この内周側固定部3hの外周側に形成されてこの内周側固定部3
hとの間に上環状溝3dを区画する環状に形成の弁座3iと、この弁座3iの外周側に形成されてこの弁座3iとの間に上記の環状溝3eを区画する環状に形成の弁座3jとを上端に有してなる。
【0034】
なお、
図2に示すピストン3の横断面にあって、中央部は、ロッド2における先端部2a(
図1参照)が挿通する孔(符示せず)になる。
【0035】
一方、伸側のバルブ4は、ピストン3の下端に積層される複数枚の環状に形成のリーフバルブ41,42,43,44,45(
図1中の拡大図参照),46(
図1参照)からなる。伸側のバルブ4の内周側端部は、ピストン3における内周側固定部3fと、ロッド2の先端ネジ部2bにねじ付けられるピストンナット6との間に挟まれてなる。
【0036】
そして、この伸側のバルブ4にあって、ピストン3の下端に積層されて内周側端部が内周側固定部3fに定着されるリーフバルブ41は、外周側部で環状溝3cを開放可能に閉塞し、外周側部の端部が外周側端部(符示せず)とされて弁座3gに離着座自在とされ、
図1中の拡大図に示すように、切欠41aを有してなる。
【0037】
このリーフバルブ41に形成の切欠41a(
図3中には符号41aとしては示さない)が、
図3に示すように、周方向に90度の間隔で4箇所に設けられている(
図3中の符号Oa,Ob,Oc,Od参照)。
【0038】
そして、この切欠41aは、
図1に示すように、リーフバルブ41に同じ外径となるリーフバルブ42が積層されて流路面積を有するオリフィスOになり、このオリフィスOは、弁座3gの内側たる環状溝3cと、弁座3gの外側たる他方室R2との連通を許容する。
【0039】
ちなみに、伸側のバルブ4にあっては、
図1中の拡大図にも示すように、上記のリーフバルブ42の
図1中で下面となる背面に外径をリーフバルブ42より順次小さくするリーフバルブ43,44,45、および、リーフバルブ46(
図1参照)が積層される。
【0040】
なお、
図3に示すリーフバルブ41の平面にあって、中央部は、ロッド2における先端部2a(
図1参照)が挿通する孔(符示せず)になる。
【0041】
伸側のバルブ4が上記のように形成されるのに対して、圧側のバルブ5は、図示するところでは、二枚の同じ外径の環状に形成のリーフバルブ51,52を積層してなる。圧側のバルブ5の内周側端部は、ピストン3における内周側固定部3hと、ロッド2における先端部2aと軸部(符示せず)との間に設けられる段差部2cとの間に挟まれてなる。
【0042】
そして、この圧側のバルブ5にあって、ピストン3の上端に積層されて内周側端部が内周側固定部3hに定着されるリーフバルブ51は、外周側部で環状溝3eを開放可能に閉塞し、外周側端部(符示せず)が弁座3jに離着座自在とされ、この外周側端部に切欠51aを有してなる。
【0043】
このリーフバルブ51に形成の切欠51aは、リーフバルブ51に同じ外径となるリーフバルブ52が積層されることで流路面積を有するオリフィスO1となり、このオリフィスO1は、弁座3jの内側たる環状溝3eと、弁座3jの外側たる一方室R1との連通を許容する。
【0044】
また、この圧側のバルブ5にあっては、ピストン3の上端に形成の環状溝3dに上方から照準される孔(符示せず)を有し、この孔は、環状溝3dと一方室R1との連通を許容する。
【0045】
以上のように、この発明におけるバルブ構造にあっては、伸側のバルブ4を形成するリーフバルブ41は、切欠41aからなるオリフィスOを有し、圧側のバルブ5を形成するリーフバルブ51は、切欠51aからなるオリフィスO1を有してなる。
【0046】
このことから、伸側のバルブ4を形成するリーフバルブ41がオリフィス幅を不等幅にする複数のオリフィスO(Oa,Ob,Oc,Od)を有することを度外視して説明すると、緩衝器では、以下のようにして減衰作用がなされる。
【0047】
たとえば、
図1中で、ピストン3がシリンダ1内を上昇する緩衝器の伸長作動時に低速で伸長すると、一方室R1からの伸側のポート3aに続く環状溝3cにある作動油は、リーフバルブ41におけるオリフィスOを通過して他方室R2に流出することになり、オリフィスOによる圧力損失でオリフィス特性の減衰作用がなされる。
【0048】
また、
図1中で、ピストン3がシリンダ1内を下降する緩衝器の収縮作動時に低速で収縮すると、他方室R2からの圧側のポート3bに続く環状溝3eにある作動油は、リーフバルブ51におけるオリフィスO1を通過して一方室R1に流出することになり、オリフィスO1による圧力損失でオリフィス特性の減衰作用がなされる。
【0049】
そして、上記の緩衝器にあって、伸長速度が速くなると、環状溝3gにある作動油は、リーフバルブ41の外周側端部を撓ませ、弁座3gとの間を通過し、他方室R2に流出することになり、その際の圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0050】
また、上記の緩衝器にあって、収縮速度が速くなると、環状溝3eにある作動油は、リーフバルブ51の外周側端部を撓ませ、弁座3jとの間を通過し、一方室R1に流出することになり、その際の圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0051】
ところで、この発明にあっては、たとえば、リーフバルブ41におけるオリフィスOは複数とされ、また、オリフィスOの周方向幅、つまり、オリフィス幅を不等幅にしてなるが、以下には、このことについて説明する。
【0052】
リーフバルブ41は、前記したように、複数の切欠41a、つまり、図示するところでは、
図3に示すように、周方向に言わば等間隔となる4個の切欠41a(
図1参照)を有し、この切欠41aは、
図1に示すように、同径に形成のリーフバルブ42が背面に積層されることで流路面積を有するオリフィスO、すなわち、
図3に示すように、4個のオリフィスOa,Ob,Oc,Odになる。
【0053】
ちなみに、この発明が意図するところからすると、オリフィスOの数は、2個以上であれば良く、
図3に示す4個とされるほか、図示しないが、5個あるいは6個とされても良く、その数の相違がこの発明の成立を妨げるものではない。
【0054】
そして、
図3に示す4個のオリフィスOa,Ob,Oc,Odは、オリフィスOの成立根拠となる切欠41aにおけるリーフバルブ41の周方向に沿うことになる周方向幅、すなわち、オリフィス幅を不等幅にする。
【0055】
図3に示すところで説明すると、たとえば、オリフィスOaにおけるオリフィス幅Waを1.0mmとし、オリフィスObにおけるオリフィス幅Wbを1.2mmとし、オリフィスOcにおけるオリフィス幅Wcを1.4mmとし、オリフィスOdにおけるオリフィス幅Wdを1.6mmとするように不等幅にする。
【0056】
なお、
図3に示すところは、この発明の理解を助けるものであるから、上記の数値に対応する状態には正確には描かれていない。
【0057】
ところで、上記のオリフィス幅Wa,Wb,Wc,Wdを不等幅にする各オリフィスOa,Ob,Oc,Odにあっては、作動油の流量は異なる。
【0058】
作動油が動き始めると、各オリフィスOa,Ob,Oc,Odを作動油が通過することになり、このときの圧力損失でオリフィス特性の減衰作用をなす。
【0059】
一方、オリフィス幅Wa,Wb,Wc,Wdを不等幅にする各オリフィスOa,Ob,Oc,Odを有するリーフバルブ41について、これを動的に観察すると、作動油の流速が上がることで、オリフィス幅を最大にする最大幅オリフィスであるオリフィスOdを有する外周側端部が最初に撓み、弁座3gとの間を通過して他方室R2に流出し、その際の圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0060】
つまり、リーフバルブ41における外周側端部の弁座3gに対する吸着力は、オリフィス幅が狭いオリフィスOaを有する外周側端部と、オリフィス幅が広いオリフィスOdを有する外周側端部とを比較すると、オリフィス幅を広くするオリフィスOdを有する外周側端部の方が小さくなる。
【0061】
したがって、リーフバルブ41にあっては、オリフィス幅を最も広くするオリフィスOdを有する外周側端部が最初に撓み、次に、オリフィス幅を最初のオリフィスOdよりも狭くするオリフィスOcを有する外周側端部が撓み、それぞれ圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0062】
そして、作動油の流速がさらに上がると、リーフバルブ41において、オリフィス幅を最も広くするオリフィスOdよりオリフィス幅を狭くするオリフィスOcを有する外周側端部が撓み、その際の圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0063】
また、作動油の流速がさらに上がると、リーフバルブ41において、オリフィス幅を言わば3番目に狭くするオリフィスObを有する外周側端部が撓み、さらに作動油の流速が上がると、最後にオリフィス幅を最も狭くする最小幅オリフィスであるオリフィスOaを有する外周側端部が撓み、それぞれ圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0064】
つまり、この発明におけるバルブ構造にあっては、全体としてみると、オリフィス特性の減衰作用がなされているときにバルブ特性の減衰作用がなされることになり、また、リーフバルブ41は、全周となる外周側端部を一挙に撓ませずして、各オリフィスOa,Ob,Oc,Odを有する各外周側端部における開弁のタイミングをずらして、バルブ特性の減衰作用をなす。
【0065】
このことから、この発明におけるバルブ構造にあっては、
図6中に実線図で示すように、オリフィス特性が緩やかな切り換え線でバルブ特性に連続することになる。
【0066】
その結果、この発明による緩衝器によれば、ピストン速度が低速領域にあるときに最適となるオリフィス特性の減衰特性と、ピストン速度が高速領域にあるときに最適となるバルブ特性の減衰特性とが急激な変化点を有することなく滑らかに切り換わり、減衰特性の急変によるロッド加速度、つまり、ピストン加速度の急変が発現されず、コトコト音等の異音を発生しないことになる。
【0067】
以上のことから、この発明におけるバルブ構造において、リーフバルブ41における不等幅となる各オリフィスOa,Ob,Oc,Odの配置位置については、リーフバルブ41における周方向に言わば複数となる外周側端部における開弁のタイミングを同じにしないように配慮される。
【0068】
そして、図示するところでは、
図3中の上端部にオリフィス幅を最も狭くするオリフィスOaが位置決めされ、反対側となる
図3中の下端部にオリフィス幅を最も広くするオリフィスOdが位置決めされるとしている。また、図示するところでは、
図3中の右端部にオリフィスOaよりオリフィス幅を広くするオリフィスObが位置決めされ、
図3中の左端部にオリフィスObよりオリフィス幅を広くするオリフィスOcが位置決めされるとしている。ちなみに、上記のオリフィスObおよびオリフィスOcの配設位置については、これが左右逆にされても良い。
【0069】
戻って、オリフィス幅を最も広くするオリフィスOdの反対側にオリフィス幅を最も狭くするオリフィスOaが位置決めされることで、オリフィスOdを有するリーフバルブ41における
図3中で下端部となる外周側端部が撓んだ後に、オリフィスOaを有するリーフバルブ41における反対側となる
図3中における上端部となる外周側端部が撓む事態が招来されなくなる。
【0070】
つまり、オリフィスによる減衰作用がなされた後のバルブによる減衰作用は、リーフバルブの外周側端部を撓ませてなされるから、仮に、オリフィス幅を最も広くするオリフィスOdの反対側に次にオリフィス幅を狭くするオリフィスOcが位置決めされる場合には、リーフバルブ41が下端部を撓ませた後に上端部を撓ませることになり、その後の左右端部の撓み作動を阻害し易くする。
【0071】
そこで、図示するところにあっては、上記したところを避けるために、オリフィス幅を最も広くするオリフィスOdの反対側にオリフィス幅を最も狭くするオリフィスOaが位置決めされるとし、上下となるオリフィスOaとオリフィスOdとの間にオリフィスOdよりオリフィス幅を狭くする、つまり、次なる不等幅のオリフィスOcおよびオリフィスObを位置決めさせるとしている。
【0072】
これによって、リーフバルブ41にあっては、オリフィス幅を最も広くするオリフィスOdを有する外周側端部が撓んでから、このオリフィスOdよりもオリフィス幅を狭くするオリフィスOcを有する外周側端部が撓み、ついで、オリフィスObを有する外周側端部が撓み、最後に、オリフィス幅をもっとも狭くするオリフィスOaを有する外周側端部が撓むことになり、リーフバルブ41における各オリフィスOa,Ob,Oc,Odを有する外周側端部における開弁のタイミングがずれるようになる。
【0073】
上記したところは、伸側のバルブ4を形成するリーフバルブ41についてであるが、同様のことは、圧側のバルブ5を形成するリーフバルブ51についても言い得る。
【0074】
すなわち、圧側のバルブ5を形成するリーフバルブ51に設けられるオリフィスO1が複数とされ、また、各オリフィスO1がオリフィス幅を不等幅にする場合には、リーフバルブ41の場合と同様の作用効果を呈することになる。
【0075】
ところで、上記したところでは、オリフィスOはリーフバルブ41に形成の切欠41aからなるとしたが、
図4に示すように、オリフィスOa,Ob,Oc,Odが環状に形成の弁座3gに形成された凹溝3kからなる場合でも同様である。
【0076】
ちなみに、凹溝3kは、一般的には、打刻からなるが、切削形成されても良く、また、弁座3gの型抜き成形の際に型成形されるとしても良い。
【0077】
そして、オリフィスOa,Ob,Oc,Odが凹溝3kからなるとき、この凹溝3kが形成される弁座3gについては、これが環状に形成されるのに代えて、
図5に示すように、十字状に形成されて、環状溝3cに代わる独立開口窓3mを形成するとしても良い。
【0078】
なお、この
図5に示す実施形態の場合には、リーフバルブ41は、周方向の位置合せをすることなく積層されれば足りるが、これに代えて、図示しないが、十字状に形成の弁座3gが凹溝3kからなるオリフィスOを有せず、積層されるリーフバルブ41が切欠41aからなるオリフィスOを有する場合には、切欠41aからなるオリフィスOが正規の場所に位置決めされるべく、キー構造の利用などで位置合せが必要になる。
【0079】
また、図示しないが、この発明の具現化にあって、つまり、複数の不等幅となるオリフィスを設けるとき、一部は、切欠のみからなり、残りは凹溝からなるとしたり、一部は、切欠および凹溝の双方からなるとしたり自由である。
【0080】
戻って、
図4に示すところについて説明すると、オリフィスOa,Ob,Oc,Odを形成する凹溝3kは、弁座3gにこの弁座3gの径方向に形成され、弁座3gにリーフバルブ41が着座することでオリフィスOとして出現し、弁座3gを挟んで、内側の環状溝3cと外側の他方室R2(
図1参照)との連通を許容する。
【0081】
また、この凹溝3kからなるオリフィスOa,Ob,Oc,Odは、前記した
図3に示す切欠41aからなるオリフィスOa,Ob,Oc,Odの場合と同様に、凹溝3kにおける弁座3gの周方向に沿う幅たるオリフィス幅Wa,Wb,Wc,Wdに順位があり、配置位置も規制されている。
【0082】
つまり、
図4中の上端部にオリフィス幅を最も狭くするオリフィスOaが位置決めされ、
図4中の下端部にオリフィス幅を最も広くするオリフィスOdが位置決めされるとしている。
【0083】
そして、図示するところでは、
図4中の右端部にオリフィスOaよりオリフィス幅を広くするオリフィスObが位置決めされ、
図4中の左端部にオリフィスObよりオリフィス幅を広くするオリフィスOcが位置決めされるとしている。
【0084】
ちなみに、オリフィスObおよびオリフィスOcの配設位置については、これが左右逆にされても良く、また、オリフィスの幅が同じとされても良い。
【0085】
それゆえ、この
図4に示す弁座3gに凹溝3kからなるオリフィスOa,Ob,Oc,Odを有する実施形態にあっても、全てのオリフィスOa,Ob,Oc,Odによる圧力損失で、オリフィス特性の減衰作用がなされる。
【0086】
そして、作動油の流速が上がると、リーフバルブ41において、オリフィス幅を最大にするオリフィスOdに対向する外周側端部が最初に撓み、弁座3gとの間を通過して他方室R2に流出し、その際の圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0087】
そして、作動油の流速がさらに上がると、リーフバルブ41において、オリフィス幅を最も広くするオリフィスOdよりオリフィス幅を次に狭くするオリフィスOcに対向する外周側端部が撓み、その際の圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0088】
また、作動油の流速がさらに上がると、リーフバルブ41において、オリフィス幅を言わば3番目に狭くするオリフィスObに対向する外周側端部が撓み、さらに作動油の流速が上がると、オリフィス幅を最も狭くするオリフィスOaに対向する外周側端部が撓み、それぞれ圧力損失によるバルブ特性の減衰作用がなされる。
【0089】
つまり、
図4に示す実施形態のバルブ構造にあっても、全体としてみると、オリフィス特性の減衰作用がなされているときにバルブ特性の減衰作用がなされることになり、また、リーフバルブ41は、全周となる外周側端部を一挙に撓ませずして、オリフィスを有する各外周側端部における開弁のタイミングをずらして、バルブ特性の減衰作用をなす。
【0090】
このことから、この
図4に示すバルブ構造にあっても、
図6中に実線図で示すように、オリフィス特性が緩やかな切り換え線でバルブ特性に連続することになる。
【0091】
前記したところでは、弁座3gがシリンダ1内に挿入される隔壁体たるピストン3に形成されるとして説明したが、これに代えて、図示しないが、弁座3gがシリンダ1の下端部内に設けられるベースバルブにおける隔壁体たるバルブディスクに形成されるとしても良い。
【0092】
隔壁体がベースバルブにおけるバルブディスクとされるとき、緩衝器は、たとえば、複筒型に形成され、バルブディスクで区画される一方室は、シリンダ1内にピストン3で区画される下方側室となり、他方室は、シリンダ1の外のリザーバとなる。
【0093】
そして、前記したところでは、オリフィスが周方向に4個設けられるとしたが、周方向に5個または6個設けられるとしても良く、この場合には、オリフィス幅を最小にするオリフィスと、周方向に沿って位置決めされるオリフィス幅を最大にするオリフィスとの間に、オリフィス幅を不等幅にする他のオリフィスが1個または2個位置決めされる。
【0094】
また、前記したところでは、伸側のバルブ4にあって、環状に形成のリーフバルブ41が外周側端部にオリフィスを有するとしたが、これに代えて、図示しないが、オリフィスが環状に形成のリーフバルブ41の内周側端部に形成されてなるとしても同様の作用効果が得られる。
【0095】
さらに、前記したところでは、リーフバルブ41が環状に形成されてなるとしたが、これに代えて、図示しないが、リーフバルブが円板状に形成されて、外周側端部にオリフィスを有するとしても良い。
【0096】
そしてさらに、前記したところでは、オリフィスを形成する切欠41aまたは凹溝3kが、どちらかの一方とされて、リザーバ41あるいは弁座3gに設けられるとしたが、これに代えて、図示しないが、リーフバルブ41に形成される切欠41aからなるオリフィスと、弁座3gに形成される凹溝3kからなりオリフィスとが併用されるとしても良い。