(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5831983
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】防護柵
(51)【国際特許分類】
E01F 15/04 20060101AFI20151126BHJP
【FI】
E01F15/04 B
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-7069(P2012-7069)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-147796(P2013-147796A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】500538715
【氏名又は名称】株式会社住軽日軽エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】飯田 尚明
(72)【発明者】
【氏名】藤井 肇
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−156167(JP,A)
【文献】
特開2008−063931(JP,A)
【文献】
特開2011−106134(JP,A)
【文献】
特開2011−153405(JP,A)
【文献】
特開2011−017137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/00−15/14
E01D 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路側縁の地覆部に立設された支柱の間に横桟が架設された防護柵であって、
上記支柱を立設固定するベース部と、
上記ベース部より柵の長手方向に延在する幅広に形成され、上記地覆部上に載置される補強部材と、を具備し、
上記ベース部と補強部材は、上記補強部材に突設され、上記ベース部に設けられた連結用貫通孔を貫通する連結ボルトと、上記ベース部の上方に突出する上記連結ボルトの突出部に締結される連結ナットとで構成される連結部材にて連結され、
上記ベース部と補強部材の重合部に設けられた貫通孔及び上記補強部材の左右の延在部に設けられた貫通孔を貫通するアンカーボルトに固定ナットを締結して上記地覆部に固定される、
ことを特徴とする防護柵。
【請求項2】
請求項1記載の防護柵において、
上記ベース部と補強部材の重合部における上記支柱に関して道路側の左右に上記貫通孔が設けられ、上記重合部における上記支柱に関して道路側と反対側が上記連結部材によって連結される、ことを特徴とする防護柵。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防護柵において、
上記アンカーボルトを貫通する上記貫通孔は、柵の長手方向に沿う直状の長孔にて形成されている、ことを特徴とする防護柵。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の防護柵において、
上記アンカーボルトを貫通する上記貫通孔は、柵の長手方向に沿う傾斜状の長孔にて形成されている、ことを特徴とする防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の地覆部に設置される防護柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、橋梁や山間部の道路には、通行車両の落下等を防止するために、道路側縁に設けられたコンクリート製の地覆部に立設された支柱の間に横桟が架設された防護柵が使用されている。
【0003】
従来のこの種の防護柵として、支柱を立設固定するベース部と、地覆部に載置される補強部材における道路側となる前部左右側と、道路側と反対側となる後部左右側の複数箇所、例えば4箇所に貫通孔が設けられ、地覆部に突設(植設)されるアンカーボルトを貫通孔に貫通し、アンカーボルトにナットを締結して固定する構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、強度をもたせるために地覆部の内部には鉄筋が配置されている。
【0004】
また、上記特許文献1に記載の防護柵においては、強度を増すために、アンカーボルトは前後寸法の中央より道路側の前方に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−153405号公報(特許請求の範囲、
図1〜
図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の防護柵においては、貫通孔を長孔にて形成することで多少の位置調整は可能であるが、アンカーボルトの取付位置がベース部の箇所に限られており、しかも、アンカーボルトは地覆部内の鉄筋の配置位置からずらした位置に設ける必要があるため、支柱の設置位置の自由度が制限され、設置作業に手間を要する懸念がある。
【0007】
また、ベース部の大きさは、支柱の大きさや材料等の制約により限度があるため、アンカーボルトの取付位置が既存のベース部の箇所では十分な強度が得られないという懸念がある。
【0008】
この発明は上記事情に鑑みてなされたもので、道路の地覆部への設置作業を容易にすることができると共に、強固に固定することができる防護柵を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は、道路側縁の地覆部に立設された支柱の間に横桟が架設された防護柵であって、上記支柱を立設固定するベース部と、上記ベース部より柵の長手方向に延在する幅広に形成され、上記地覆部上に載置される補強部材と、を具備し、上記ベース部と補強部材は
、上記補強部材に突設され、上記ベース部に設けられた連結用貫通孔を貫通する連結ボルトと、上記ベース部の上方に突出する上記連結ボルトの突出部に締結される連結ナットとで構成される連結部材にて連結され、上記ベース部と補強部材の重合部に設けられた貫通孔及び上記補強部材の左右の延在部に設けられた貫通孔を貫通するアンカーボルト
に固定ナットを締結して上記地覆部に固定される、ことを特徴と
する。
【0010】
このように構成することにより、補強部材の延在部に設けられた貫通孔を貫通するアンカーボルトによって補強部材を地覆部に固定した状態で、連結部材によって支柱を立設固定するベース部を補強部材に連結し、ベース部と補強部材の重合部に設けられた貫通孔を貫通するアンカーボルトによって固定することができる。
【0011】
この発明において、ベース部と補強部材の重合部における
支柱に関して道路側の左右に貫通孔を設け、重合部における
支柱に関して道路側と反対側を連結部材によって連結する方が好ましい。
【0012】
このように構成することにより、車両の衝突荷重に対して、上方に引張力が生じる支柱の道路側を左右の貫通孔を貫通するアンカーボルトによって支持することができる。
【0013】
また、この発明において、アンカーボルトを貫通する貫通孔は、柵の長手方向に沿う直状の長孔にて形成されるか、又は、柵の長手方向に沿う傾斜状の長孔にて形成されるのがよい。
【0014】
このように構成することにより、支柱を立設固定するベース部と地覆部に載置される補強部材を、これらベース部と補強部材に設けられた直状又は傾斜状の長孔にて形成される貫通孔を位置調整可能に貫通するアンカーボルトによって固定することができる。
【発明の効果】
【0015】
(1)補強部材の延在部に設けられた貫通孔を貫通するアンカーボルトによって補強部材を地覆部に固定した状態で、連結部材によって支柱を立設固定するベース部を補強部材に連結し、ベース部と補強部材の重合部に設けられた貫通孔を貫通するアンカーボルトによって固定することができるので、防護柵の道路の地覆部への設置の自由度が得られ、設置作業を容易にすることができる。しかも、アンカーボルトの間隔を広くすることができるので、防護柵を強固に固定することができる。
【0016】
(2)ベース部と補強部材の重合部における
支柱に関して道路側の左右に貫通孔を設け、重合部における
支柱に関して道路側と反対側を連結部材によって連結することにより、車両の衝突荷重に対して、上方に引張力が生じる支柱の道路側を左右の貫通孔を貫通するアンカーボルトによって支持することができるので、上記(1)に加えて、更に防護柵を強固に固定することができる。
【0017】
(3)アンカーボルトを貫通する貫通孔は、柵の長手方向に沿う直状の長孔にて形成されるか、又は、柵の長手方向に沿う傾斜状の長孔にて形成することにより、ベース部と補強部材を、これらベース部と補強部材に設けられた直状又は傾斜状の長孔にて形成される貫通孔を位置調整可能に貫通するアンカーボルトによって固定することができる。したがって、上記(1),(2)に加えて、更に防護柵の道路の地覆部への設置作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明に係る防護柵の設置状態の一部を断面で示す正面図である。
【
図2】上記防護柵の設置状態の一部を断面で示す側面図である。
【
図4】上記防護柵の設置前の状態を示す側面図である。
【
図6】
図3のII−II線に沿う拡大断面図である。
【
図7】この発明における貫通孔の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
この発明に係る防護柵は、
図1ないし
図5に示すように、道路1の側縁に設けられる地覆部2に適宜間隔をおいて立設される複数の支柱3と、隣接する支柱3の間に架設される複数例えば3本の横桟4とで主に構成されている。
【0021】
上記のように構成される防護柵は、支柱3を立設固定するベース部10と、ベース部10より柵の長手方向に延在する幅広に形成され、地覆部2上に載置される補強部材20と、を連結部材である連結ボルト30と連結ナット31とで連結すると共に、ベース部10と補強部材20の重合部にそれぞれ設けられた固定用の貫通孔11,21(以下に固定用貫通孔11,21という)及び補強部材20の左右の延在部20aに設けられた固定用の貫通孔21(以下に固定用貫通孔21という)を貫通するアンカーボルト40とアンカーボルト40にねじ結合する固定ナット41によって地覆部2に固定されている。
【0022】
なお、強度をもたせるために地覆部2は、コンクリート製であって、内部には図示しない鉄筋が配置されている。
【0023】
上記支柱3は、
図3に示すように、中空矩形状に形成されており、上端の開口部はキャップ部材3aによって閉塞されている。また、支柱3の上部、中間部及び下部の3箇所には断面が略扁平中空矩形状の横桟4が架設固定される。この場合、横桟の中空部内にスリーブ5が挿入固定され、支柱3及び横桟4を貫通する取付ボルト6をスリーブ5にねじ結合することによって横桟4が架設固定される。
【0024】
上記ベース部10は、矩形板状のベース部本体12と、このベース部本体12に、例えば溶接によって立設される断面コ字状の支持体13とで形成されている。ベース部10の支持体13が支柱3の下端開口部内に挿入され、支柱3の側方から支柱を貫通する固定ボルト14を支持体13にねじ結合することによって支柱3がベース部10に立設固定される。
【0025】
上記ベース部10のベース部本体12は、柵の長手方向に沿う寸法に対して長手方向と直交する幅方向に沿う寸法が短い矩形状に形成されており、支持体13に関して道路側の左右側には、柵の長手方向に沿う長孔にて形成される2つの固定用貫通孔11が設けられている。一方、支持体13に関して道路側と反対側の左右側には、柵の長手方向に沿う長孔にて形成される2つの連結用の貫通孔15(以下に連結用貫通孔15という)が設けられている。
【0026】
上記補強部材20は、ベース部10の幅より若干広く、かつベース部10より柵の長手方向に延在する幅広に形成される矩形板状に形成されており、その中央部上面にベース部10のベース部本体12が載置される。補強部材20のベース部本体12が載置する重合部において、道路側の左右2箇所にはベース部本体12に設けられた固定用貫通孔11と一部が合致する長孔にて形成される固定用貫通孔21が設けられており、道路側と反対側の左右2箇所にはベース部本体12に設けられた連結用貫通孔15と合致可能な連結ねじ孔23が設けられている。この場合、
図4に示すように、連結ねじ孔23の下端開口部は皿孔にて形成されている。
【0027】
また、補強部材20の左右の延在部20aにおける道路側と反対側には、柵の長手方向に沿う直状の長孔にて形成される固定用貫通孔22が設けられている。
【0028】
上記連結ボルト30は皿状頭部30aを有しており、補強部材20の下方から挿入されて補強部材20に設けられた連結ねじ孔23にねじ結合した状態で突設される。なお、この場合、連結ボルト30の皿状頭部30aと連結ねじ孔23の皿孔とを溶接Wにて固定してもよい。上記のようにして突設された連結ボルト30の突出部がベース部本体12に設けられた連結用貫通孔15を貫通し、その突出部に座金32を介して連結ナット31を締結することによってベース部10と補強部材20とが連結される。この場合、連結ボルト30は皿状頭部30aを有し、補強部材20の連結ねじ孔23の下端開口部は皿状に形成されているため、連結ボルト30の頭部30aは補強部材20の下面より突出することがなく、補強部材20の地覆部2上への載置に影響を及ぼすことがない。
【0029】
次に、防護柵の設置手順について説明する。まず、工場等で予め支柱3と支持体13とベース部10を組付け、また、補強部材20の下方から連結ねじ孔23に連結ボルト30を挿入して連結ボルト30をねじ結合して突設する。この場合、連結ボルト30の皿状頭部30aと連結ねじ孔23の皿孔とを溶接Wにて固定してもよい。
【0030】
一方、現場において、地覆部2の所定の支柱3の設置位置における道路側の2箇所と、道路側と反対側の2箇所の計4箇所にアンカーボルト40(具体的には、アンカーボルト40a,40b,40c,40d)を突設(植設)する。
【0031】
次に、補強部材20に設けられた固定用貫通孔21,22に、アンカーボルト40a,40b,40c,40dを貫挿する。この際、固定用貫通孔21,22は、柵の長手方向に沿う直状の長孔にて形成されているので、アンカーボルト40a,40b,40c,40dの突設位置と固定用貫通孔21,22との位置調整が可能である。
【0032】
この状態で、補強部材20の延在部20aに設けられた固定用貫通孔22を貫通したアンカーボルト40c,40dに座金42を介して固定ナット41を締結して補強部材20を地覆部2に固定する(
図4参照)。
【0033】
次に、支柱3に固定されたベース部10に設けられた固定用貫通孔11にアンカーボルト40a,40bを貫挿すると共に、連結用貫通孔15に連結用ボルト30を貫挿する。この状態で、ベース部10から突出するアンカーボルト40a,40bに座金42を介して固定ナット41を締結すると共に、ベース部10から突出する連結ボルト30に座金32を介して連結ナット31を締結する。
【0034】
上記のようにして地覆部2上に補強部材20を固定した後、補強部材20を介してベース部10を立設固定する。その後、ベース部10に立設固定された支柱3間に横桟4を架設して、防護柵を設置する。
【0035】
なお、上記実施形態では、ベース部10と補強部材20の重合部に設けられる固定用貫通孔11,21と、補強部材20の延在部20aに設けられる固定用貫通孔22が、柵の長手方向に沿う直状の長孔にて形成される場合について説明したが、
図7に示す実施形態のように、上記固定用貫通孔11,21,22を、柵の長手方向に沿う傾斜状の長孔にて形成してもよい。なお、固定用貫通孔11,21,22の傾斜方向を全て同一にせずに、傾斜方向を変えてハの字状にしてもよい。
【0036】
このように、固定用貫通孔11,21,22を、柵の長手方向に沿う傾斜状の長孔にて形成することにより、アンカーボルト40a,40b,40c,40dの突設位置と固定用貫通孔11,21,22における柵の長手方向及び柵の幅方向の位置調整が可能となる。
【0037】
なお、
図7に示すように、連結用貫通孔15も固定用貫通孔11,21と同様に柵の長手方向に沿う傾斜状の長孔にて形成することにより、連結用貫通孔15と固定用貫通孔11,21とがベース部本体12の中心に対して対称の位置に設けられるので、ベース部10のベース部本体12を反転させて同様に使用することができる効果がある。
【0038】
なお、
図7において、その他の部分は上記第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0039】
上記のように構成される実施形態の防護柵によれば、補強部材20の延在部20aに設けられた固定用貫通孔22を貫通するアンカーボルト40c,40dによって補強部材20を地覆部2に固定した状態で、連結ボルト30と連結ナット31によって支柱3を立設固定するベース部10を補強部材20に連結し、ベース部10と補強部材20の重合部に設けられた固定用貫通孔11を貫通するアンカーボルト40a,40bによって固定することができるので、内部に鉄筋が配置された地覆部2への設置作業においても鉄筋を避けて設置する自由度が得られ、設置作業を容易にすることができる。また、アンカーボルト40a,40b,40c,40dの間隔を広くとることができるので、防護柵を強固に固定することができる。
【0040】
また、ベース部10と補強部材20の重合部における道路側の左右に固定用貫通孔11,21を設け、重合部における道路側と反対側を連結ボルト30によって連結することにより、車両の衝突荷重に対して、上方に引張力が生じる支柱3の道路側を左右の固定用貫通孔11,21を貫通するアンカーボルト40a,40bによって支持することができる。更に、ベース部10より柵の長手方向に延在する補強部材20の延在部20aに設けられた固定用貫通孔22に挿入されるアンカーボルト40c,40dによって支持することができるので、更に防護柵を強固に固定することができる。
【0041】
また、アンカーボルト40a,40b,40c,40dを貫通する固定用貫通孔11,21,22を、柵の長手方向に沿う直状の長孔にて形成するか、又は、柵の長手方向に沿う傾斜状の長孔にて形成することにより、ベース部10と補強部材20を、これらベース部10と補強部材20に設けられた直状又は傾斜状の長孔にて形成される固定用貫通孔11,21,22を位置調整可能に貫通するアンカーボルト40a,40b,40c,40dによって固定することができる。したがって、更に防護柵の道路の地覆部への設置作業を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 道路
2 地覆部
3 支柱
4 横桟
10 ベース部
11 固定用貫通孔
15 連結用貫通孔
20 補強部材
20a 延在部
21,22 固定用貫通孔
23 連結ねじ孔
30 連結ボルト(連結部材)
31 連結ナット(連結部材)
40,40a〜40d アンカーボルト
41 固定ナット