(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、一実施の形態における車両用緩衝器Dは、シリンダ1と、当該シリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン3と、シリンダ1内にピストン3で区画される伸側作動室R1と圧側作動室R2と、液室Lと、シリンダ1の側方に設けられて外方へ開口する中空部4aを有するバルブケース4と、当該バルブケース4内に収容されて副作動室6と副液室7とに区画する隔壁5と、圧側作動室R2から副作動室6へ通じる連絡路4bと、液室Lから副液室7へ通じる液室通路4cと、隔壁5に設けられて副作動室6と副液室7とを連通する減衰通路8と、バルブケース4内に収容されて減衰通路8を開閉し副作動室6から副液室7へ向かう液体の流れのみを許容するとともに液体の流れに抵抗を与える減衰バルブとしての圧側バルブ11と、上記中空部4aの開口を閉塞する蓋31と、当該蓋31に隔壁5を固定する固定部材32とを備えて構成されており、図示しない車両の車体と車軸との間に介装されて伸縮時に減衰力を発揮して車体の振動を抑制するものである。
【0015】
また、本実施の形態における車両用緩衝器Dの場合、上記構成の他に、液室Lを加圧する加圧手段Pと、伸側作動室R1と圧側作動室R2とを連通する伸側通路9と、伸側作動室R1と液室Lとを連通する吸込通路10と、伸側通路9を開閉し伸側作動室R1から圧側作動室R2へ向かう液体の流れのみを許容するとともに液体の流れに抵抗を与える伸側バルブ12と、吸込通路10の途中に設けられて液室Lから伸側作動室R1へ向かう液体の流れのみを許容する吸込チェック弁13とを備えている。
【0016】
以下、車両用緩衝器Dの各部材について詳細に説明する。この実施の形態では、シリンダ1は、外周側に配置されるアウターチューブ2内に収容されており、このアウターチューブ2内であってシリンダ1の下方に液室Lが設けられている。つまり、アウターチューブ2は、シリンダよりも長く、この例では、液室Lは上記した伸側作動室R1および圧側作動室R2よりも下方に設けられている。このように、シリンダ1は、アウターチューブ2によって外周が覆われており、この場合、アウターチューブ2との間に環状の隙間を形成している。また、シリンダ1内には、ピストン3が摺動自在に挿入されていて、シリンダ1内は、
図1中上方の伸側作動室R1と下方の圧側作動室R2とに区画されている。
【0017】
なお、シリンダ1は、内周が表面処理されており、ピストン3と円滑な摺動を実現できるようになっている。このように、アウターチューブ2よりも短いシリンダ1の表面処理を行えばよいので、長いアウターチューブ2の表面処理を行わなくて済むから加工コストを低減でき、ピストン3から入力される図中横方向の力をシリンダ1で受けるので、アウターチューブ2に軽量で比較的軟らかい金属を使用することも可能となる。
【0018】
ピストン3は、環状とされており、ピストンロッド15の中間に固定されている。具体的には、ピストンロッド15は、上部15aと、下部15bとで構成され、上部15aの下端に設けた螺子軸15cを下部15bの上端に設けた螺子孔15dに螺子締結することで一体とされ、上部15aと下部15bでピストン3を挟み込んでピストン3を固定している。なお、本実施の形態では、車両用緩衝器Dは、ピストン3がピストンロッド15の中間に固定され、ピストンロッド15の上端と下端とがアウターチューブ2から外部へ突出する、いわゆる、両ロッド型の緩衝器とされているが、ピストンロッド15の下部15bを廃止して上部15aの下端にピストン3を固定する、いわゆる、片ロッド型の緩衝器とされてもよい。
【0019】
戻って、ピストン3は、シリンダ1内を伸側作動室R1と圧側作動室R2とに区画していて、伸側作動室R1と圧側作動室R2とを連通する伸側通路9を備えている。そして、ピストン3の
図1中下端には、伸側通路9の下端を開閉する環状のリーフバルブでなる伸側バルブ12が積層されている。伸側バルブ12は、ピストン3がシリンダ2に対して
図1中上方へ移動する伸長作動時において液体が伸側通路9を圧縮される伸側作動室R1から拡大される圧側作動室R2へ向けて流れる際に、開弁して当該液体の流れに抵抗を与えるようになっている。反対に、収縮作動時には、伸側通路9を閉塞して、圧側作動室R2から伸側作動室R1へ向かう液体の流れを阻止する。
【0020】
なお、伸側バルブ12は、伸側作動室R1から圧側作動室R2へ向かう液体の流れのみを許容し、当該液体の流れに抵抗を与えればよいので、リーフバルブ以外の減衰バルブとされてもよく、チョークやオリフィス等といった双方向通行を許すバルブとチェック弁との組み合わせとされてもよいし、また、リーフバルブの背面をピストン3側へ向けて附勢するばねを備える構造を採用してもよい。
【0021】
アウターチューブ2は、上方に内径を小径にして設けた上方小径部2aと、上方小径部2aよりも
図1中上方の開口部内周に設けた雌螺子部2bと、下方の内周を小径にして設けた下方小径部2cと、下方小径部2cよりも下方に設けられて内周側へ突出する環状凸部2dと、当該環状凸部2dの内周に設けた内周螺子部2eと、下端外周に設けた雄螺子部2fと、下方小径部2cの上端段部から開口して環状凸部2dの下端段部へ通じる穿孔2gと、側方に突出するように一体化されるバルブケース4と、外周であってバルブケース4よりも上方に設けた外周螺子部2hとを備えている。
【0022】
雄螺子部2fには
、アウターチューブ2を車両の図示しない車軸側へ連結可能なブラケット
61が螺着される。また、外周螺子部2hには、環状の懸架ばね受14が螺着されている。この懸架ばね受14は、車両の車体を支承する懸架ばねSを支持するものであり、ピストンロッド15の上端に連結される上方側の懸架ばね受60と協働して、この懸架ばねを挟持するようになっている。この場合、懸架ばね14は、外周螺子部2hの軸方向設置範囲内であれば、アウターチューブ2に対する軸方向取付位置を変更することが可能であるが、アウターチューブ2に対して固定的に取り付けるようにされてもよい。
【0023】
アウターチューブ2は、シリンダ1よりも長く、上記した上方小径部2aの内周には、シリンダ1内に移動自在に挿入されるピストンロッド15の
図1中上部15a側を軸支する環状のロッドガイド16が嵌合されている。また、アウターチューブ2の下方小径部2cには、ピストンロッド15の
図1中下部15b側を軸支する環状のロッドガイド17が嵌合されている。
【0024】
ロッドガイド16は、下方に設けられて切欠16bを備えた筒状のソケット部16aと、外周に装着されて上方小径部2aの内周に密着してアウターチューブ2とロッドガイド16との間をシールするシールリング16cとを備えている。このソケット部16aの内周には、環状の吸込チェック弁13が収容されている。また、このソケット部16aには、吸込チェック弁13の下方に環状の弁固定部材18が装着されている。この弁固定部材18は、これを軸方向に貫くポート18aと、外周に上記ソケット部16a内に嵌合する筒状の嵌合部18bと
を備え、下方側がシリンダ1の上端開口端内周に嵌合される。このように、弁固定部材18をロッドガイド16とシリンダ1に嵌合すると、弁固定部材18の嵌合部18bとロッドガイド16とで吸込チェック弁13の外周が挟持される。吸込チェック弁13は、上記したように外周側が固定されるので内周のみの撓みが許容される。また、吸込チェック弁13は、内周をロッドガイド16に密着させる状態では、シリンダ1とアウターチューブ2との隙間に通じる切欠16bとポート18aとの連通を遮断するが、撓んで開弁すると切欠16bとポート18aとを連通する。ロッドガイド17は、環状であって
図1中上端から外周へ通じる孔17aを備えている。
【0025】
また、ロッドガイド16よりも上方には、当該ロッドガイド16とピストンロッド15との間をシールする環状のシール部材19とスペーサ39とが積層され、アウターチューブ2の下方小径部2cの内周であって環状凸部2dとロッドガイド17との間にはピストンロッド15とアウターチューブ2との間をシールする環状のシール部材20とスペーサ40が収容される。
【0026】
そして、アウターチューブ2の内方に、スペーサ40、シール部材20、ロッドガイド17、シリンダ1、弁固定部材18、吸込チェック弁13、ロッドガイド16、シール部材19およびスペーサ39の順に収容し、雌螺子部2bに外周に螺子部を持つナット21を螺着すると、上記したアウターチューブ2内に収容される各部材がナット21と環状凸部2dとで挟持されてアウターチューブ2に固定される。このようにして上記シール部材19,20とシールリング16cとでピストンロッド15とアウターチューブ2との間が密にシールされ、伸側作動室R1および圧側作動室R2は、液密に保たれている。
【0027】
また、アウターチューブ2の環状凸部2dの内周に設けた内周螺子部2eには、筒状のロッド挿通筒22が螺着されている。ロッド挿通筒22は、下端にアウターチューブ2の内周に嵌合するキャップ24を備え、ピストンロッド15の下部15bの挿通を許容しており、ピストンロッド15のアウターチューブ2に対する上下動を可能としている。
【0028】
上述のようにアウターチューブ2内にシリンダ1を収容して固定すると、アウターチューブ2における上方小径部2aと下方小径部2cとの間の内面とシリンダ1の外面との間には、環状の隙間が形成される。この隙間は、アウターチューブ2の下方小径部2cの上端段部から開口して環状凸部2dの下端段部へ通じる穿孔2gによってアウターチューブ2の下方に設けた液室Lへ通じている。したがって、この場合、シリンダ1とアウターチューブ2との間に形成される隙間と、ポート18a、切欠16bおよび穿孔2gで伸側作動室R1と液室Lとを連通する吸込通路10を形成している。なお、シリンダ1とアウターチューブ2との間に形成される隙間は環状隙間に限られず、形状は問われない。
【0029】
液室Lは、アウターチューブ2の環状凸部2dよりも下方の内周と上記したロッド挿通筒22の外周の双方に軸方向移動可能に摺接する環状のフリーピストン23によって画成されている。また、アウターチューブ2とロッド挿通筒22との間の空隙はロッド挿通筒22の下端に設けた環状のキャップ24で閉塞されており、フリーピストン23は、このキャップ24と協働して、アウターチューブ2とロッド挿通筒22との間に気室Gを画成している。そして、この気室G内の圧力で、フリーピストン23を
図1中上方へ押圧して液室Lを加圧しており、これによって、附勢手段としての気体ばねを形成している。
【0030】
すなわち、この実施の形態の場合、加圧手段Pは、アウターチューブ2内に摺動自在に挿入されるフリーピストン23と、当該フリーピストン23を液室Lへ向けて附勢する附勢手段としての気体ばねとで構成されている。また、キャップ24には、気室Gへ通じる気道24aが設けられており、気道24aをバルブ24bによって閉塞することで気室Gは気密に保たれる。そして、気道24aを介して気室Gへ気体を供給したり、気室Gから気体を排出したりして、気室G内の圧力を調節することができるようになっている。この車両用緩衝器Dにあっては、気室Gと気体とで気体ばねを構成して液室Lを加圧することができ、液室Lの圧力は、上記した吸込通路10を通じて伸側作動室R1と圧側作動室R2へ伝播するので、シリンダ1内をも加圧することができる。なお、この実施の形態の場合、気体ばねで液室Lを加圧するが、気体ばねの他に、コイルばね等といった気体ばね以外のばねを附勢手段として用いてもよく、加圧手段としては、その他にも、液室L内に内部に気体を充填した金属ベローズやダイヤフラム等を収容し、これを加圧手段としてもよく、金属ベローズやフリーピストン23を使用する場合には、内部に気体ばね以外のばねを設けるようにしてもよい。附勢手段をフリーピストン23で区画した気室G内に封入した気体で液室Lを加圧する気体ばねとすることで、附勢手段における附勢力の調節が容易となるだけでなく、金属製のコイルばね等を用いるものに比較して車両用緩衝器Dを軽量化することができる利点がある。
【0031】
つづいて、バルブケース4は、アウターチューブ2の側方に設けられていて、この実施の形態の場合、下方に向けて開口する中空部4aを備えており、この中空部4aは、シリンダ1の軸線方向で上記伸側作動室R1および上記圧側作動室R2よりも下方に配置されている。この場合、バルブケース4は、アウターチューブ2の側方に一体化されて、これらで一部品となっている。なお、バルブケース4は、アウターチューブ2と別部品で構成して、アウターチューブ2に一体化するようにしてもよい。また、このバルブケース4の開口部は、蓋31によって閉塞されており、この蓋31に螺合して隔壁5および圧側バルブ11をバルブケース4に固定する軸状の固定部材32が設けられている。
【0032】
詳しくは、バルブケース4は、下端から開口する中空部4aと、中空部4aと圧側作動室R2とを連通する連絡路4bと、中空部4aと液室Lとを連通する液室通路4cとを備えている。連絡路4bは、詳しくは、ロッドガイド17の外周の孔17aの開口端に面し、この孔17aを通じて、圧側作動室R2へ連通されている。液室通路4cは、この実施の形態では、液室Lの上端に通じており、液室L側の出口端がフリーピストン23の摺動範囲に配置しないようになっていて、フリーピストン23の外周に装着されるシールリング50を当該出口端でかじることがないようになっている。
【0033】
そして、この実施の形態では、連絡路4bの中空部4a側の出口端は、伸側作動室R1の下端及び圧側作動室R2の下端よりも下方側へ配置されている。そのため、この実施の形態では、中空部4aが下方へ向けて開口しており、車両用緩衝器Dを
図1に示す姿勢から天地逆向きの姿勢にして中空部4aの開口を上方へ向ける場合、蓋31をとっても中空部4aを外部へ開放しても、中空部4a内の液体の液面が連絡路4bの中空部側の出口端よりも上方にあれば伸側作動室R1および圧側作動室R2へ外部の気体が侵入することがないようになっている。つまり、車両用緩衝器Dを
図1に示す姿勢から天地逆向きの姿勢にして中空部4aの開口を上方へ向けた場合、連絡路4bの中空部4a側の出口端が伸側作動室R1と圧側作動室R2よりも上方に配置されるので、連絡路4bから伸側作動室R1と圧側作動室R2への気体の侵入が防止される。なお、この実施の形態では、液室Lは、フリーピストン23で気室Gと区画されているので、車両用緩衝器Dを
図1に示す姿勢から天地逆向きの姿勢にした状態においてフリーピストン23が液室Lの下端の移動限界まで移動して移動が拘束されるか、或いは、予めフリーピストン23の移動を拘束しておけば、中空部4a内の液体の液面が液室通路4cの中空部4a側の出口端よりも上方にある限り、液室Lへ気体が侵入しない。このように、フリーピストン23や金属ベローズ、ダイヤフラムといった気室Gと液室Lとを分離する部材を設けておき、液室Lの容積が変化しないように拘束すれば、蓋31を取り外した際の中空部4a介しての液室Lへの気体の侵入を防止できる。
【0034】
なお、中空部4aの開口方向は任意に設定することができ、たとえば、中空部4aが
図1中横方向或いは上方へ向けて開口する場合であっても、中空部4aの開口を上方へ向けた状態において、連絡路4bの中空部4a側の出口端を伸側作動室R1の上端及び圧側作動室R2の上端よりも上方側へ配置すればよい。そうすることで、伸側作動室R1および圧側作動室R2への外部の気体の侵入を防止できる。液室通路4cの中空部4a側の出口端に関しては、液室Lが気室Gと区画するフリーピストン23などの部材を設けない場合、液室Lの下端より少なくとも上方へ配置し、気体の侵入を防止できるように配慮すればよい。このように、バルブケース4に対して中空部4aの開口方向と、液室Lを気室Gから区画する部材の有無とに応じて、連絡路4bの中空部4a側の出口端と伸側作動室R1および圧側作動室R2との位置関係、液室通路4cの中空部4a側の出口端と液室Lとの位置関係を気体の侵入を防止できるように決定すればよい。
【0035】
また、バルブケース4の中空部4aには、隔壁5が嵌合されている。この隔壁5は、外周をバルブケース4の中空部4aの内面に接していて、当該中空部4a内を
図1中上方側の副作動室6と
図1中下方側の副液室7とに区画している。副作動室6は、上記した連絡路4bおよび孔17aを介して圧側作動室R2へ通じており、また、副液室7は、上記した液室通路4cを介して液室Lに通じている。
【0036】
隔壁5は、環状であって、副作動室6と副液室7とを連通する減衰通路8と、同じく副作動室6と副液室7とを連通する補償通路33とを備えている。そして、隔壁5は、バルブケース4内に収容される固定部材32の外周に装着されることで、バルブケース4に固定されている。
【0037】
また、隔壁5の
図1中下面となる副液室面には、固定部材32の外周に固定されて減衰通路8の
図1中下端開口部を開閉する環状のリーフバルブでなる減衰バルブとしての圧側バルブ11が積層され、
図1中上面となる副作動室面には、固定部材32の外周に固定されて補償通路33の
図1中上端開口部を開閉する環状のリーフバルブでなる補償チェック弁34が積層されている。なお、減衰バルブとしての圧側バルブ11は、圧側作動室R2から液室Lへ向かう液体の流れのみを許容し当該流れに対して抵抗を与えるものであればよいので、リーフバルブ以外の減衰バルブとされてもよく、チョークやオリフィス等といった双方向通行を許すバルブとチェック弁との組み合わせとされてもよいし、また、リーフバルブの背面を
隔壁5側へ向けて附勢するばねを備える構造を採用してもよい。さらに、圧側バルブ11は、補償通路33の
図1中上端開口部を閉塞しないようになっており、補償チェック弁34もまた減衰通路8の
図1中下端開口部を閉塞しないようになっている。
【0038】
蓋31は、この場合、固定部材32の下端が螺着される芯部31aと、この芯部31aの上端側外周に設けられるフランジ31bと、フランジ31bの外周に設けた筒状の外筒部31cと、当該外筒部31cの下端外周にバルブケース4の下端の開口部内周、つまり、中空部4aの下端内面に嵌合するフランジ状の嵌合部31dを備え、この嵌合部31dの下方側には螺子部31eが設けられていて、バルブケース4の下端内周に螺着されている。このように、蓋31がバルブケース4に取り付けられて中空部4a内に収容されると、嵌合部31dよりも上方側である外筒部31cとバルブケース4との間に環状隙間が形成される。なお、蓋31の芯部31aは、上端側から穿った螺子孔31fが設けられていて、この螺子孔31fに固定部材32の下端が螺着されている。なお、嵌合部31dの外周面は、外筒部31cから徐々に拡径するようにして設けられており、嵌合部31dの上端が彎曲面を備えている。また、この実施の形態にあっては、蓋31の芯部31aの下端の外周形状を真円以外の形状としておくと、この下端外周を図示しない工具で把持することができ、蓋31のバルブケース4への脱着が容易となる。
【0039】
つづいて、固定部材32は、軸部32aと、軸部32aの
図1中上端に設けたフランジ32bと、軸部32aの先端である
図1中下端外周に設けた螺子部32cとを備え、この螺子部32cを上記した螺子孔31fに螺着して蓋31に一体化される。
【0040】
そして、固定部材32の軸部32aの外周には、隔壁5および圧側バルブ11の他、被固定部材として環状のスペーサ41、補償チェック弁34、間座42、筒状のスペーサ43、間座44が上記隔壁5および圧側バルブ11とともに装着される。
【0041】
固定部材32の軸部32aの外周に、環状のスペーサ41、補償チェック弁34、隔壁5、圧側バルブ11、間座42、筒状のスペーサ43、間座44を順に装着し、蓋31の螺子孔31fに螺子部32cを螺着することで、これらバルブケース4内に収容される全ての部材がアッセンブリ化される。このアッセンブリ化されたこれら部材は、蓋31をバルブケース4に螺着することで中空部4a内に収容されつつ、バルブケース4に固定される。なお、間座42,44およびスペーサ43は、バルブケース4の軸方向長さによっては廃止したり、設置数を増減することができる。また、蓋31の嵌合部31dの外周には、シールリング45が装着されており、このシールリング45がバルブケース4に密着して中空部4aが液密に保たれる。
【0042】
さらに、この車両用緩衝器Dにあっては、液体を一杯に満たしたバルブケース4内、すなわち、中空部4a内に、蓋31、固定部材32、隔壁5、圧側バルブ11および上記した被固定部材を収容した際、これら部材がバルブケース4内の液体を押しのける容積が、上記連絡路4bと上記液室通路4cのバルブケース4への中空部4a側の出口端のうち中空部4aの開口端側に配置される出口端における開口端側の縁より開口端側の中空部内容積よりも小さくなるよう設定されている。つまり、この場合、蓋31、固定部材32、隔壁5、圧側バルブ11および上記した被固定部材がバルブケース4内で占める容積を、バルブケース4の液室通路4cの出口端の中空部開口端側の縁である
図1中下端の縁から中空部4aの
図1中下端開口端までの範囲Xの中空部内容積よりも小さくしてある。なお、蓋31、固定部材32、隔壁5、圧側バルブ11および上記した被固定部材がバルブケース4内で占める容積は、上記したように、これらの部材がバルブケース4内の液体を押しのける容積であるので、上記蓋31に
図1中下端側から設けた孔(符示せず)が複数あるが、これら孔は上記占める容積に影響しない。
【0043】
したがって、この車両用緩衝器Dを
図1に示す状態から天地逆向きにしてバルブケース4の開口が上方を向くようにし、蓋31とともにアッセンブリ化された各部材をバルブケース4から抜き取っても、連絡路4bから圧側作動室R2内の液体が噴き出すこともなく、蓋31とともにアッセンブリ化された各部材の容積とバルブケース4の液室通路4cより下方側の容積との関係が上述のようになっているので、この状態(
図1とは天地逆向きにした状態)における液面は、液室通路4cの上端よりも必ず上方側に配置されるようになるので、液室通路4cおよび連絡路4bを介して外方の気体が圧側作動室R2や液室Lへ侵入することがない。
【0044】
そして、圧側バルブ11のリーフバルブの外径や積層枚数等を変更した後、再度、蓋31にアッセンブリ化し、バルブケース4に一杯に液体を満たして、固定部材32側からバルブケース4へアッセンブリ化された各部材を挿入していくと、各部材によって押しのけられた液体はバルブケース4からあふれ、気体が混入することなく、各部材をバルブケース4内に収容及び固定することができる。
【0045】
なお、バルブケース4を閉塞する蓋31は、フランジ31bと外筒部31cとの境の外周にテーパ面31gを備えていて、気体が溜まらないように配慮されている。また、蓋31の嵌合部31dよりも上方側である外筒部31cとバルブケース4との間には環状隙間が形成され、蓋31の嵌合部31dの上端が彎曲面を備えているので、アッセンブリ化された各部材をバルブケース4内へ挿入していく段階で、各部材に押しのけられた液体は、蓋31の外周を通して円滑にバルブケース4外へ排出されて、気体がバルブケース4内に取り残される事態の発生を確実に阻止することができる。なお、アッセンブリ化された各部材をバルブケース4内に挿入する作業にて、気体のバルブケース4内への残留を確実に阻止する効果は、嵌合部31dの上端外周面形状をテーパ面とすることでも得ることができる。つまり、嵌合部31dの上端面と外筒部31cの外周のなす角度が90度以上であればよい。
【0046】
この車両用緩衝器Dにあっては、バルブケース4をシリンダ1の側方に設けて、このバルブケース4内から、蓋31、固定部材32、隔壁5、圧側バルブ11および被固定部材を取り除いても、圧側作動室R2および液室Lに気体が侵入する恐れがないので、減衰バルブとしての圧側バルブ11を簡単かつ短時間で交換することが可能となるから、車両用緩衝器Dの圧縮側の減衰特性を簡単かつ短時間で調整できるようになる。
【0047】
なお、連絡路4bと液室通路4cは、いずれをバルブケース4の下方側に配置してもよい。また、液室Lを圧側作動室R2および伸側作動室R1よりも
図1中下方に配置することで、車両用緩衝器Dのシリンダ1の側方に配置されるのはバルブケース4のみとなるから、車両用緩衝器Dへの懸架ばね受14の装着が容易となる利点があり、中空部4aの開口を下方へ向けているので、減衰バルブを中空部4aに対して着脱する際に減衰バルブを始めこれとアッセンブリ化された各部材が懸架ばね受14に干渉することがないから、減衰バルブの調整がより一層容易となるが、液室Lをシリンダ1の側方に配置することも可能であるし、中空部4aの開口方向は、任意に設定できるのは上記した通りである。
【0048】
さらに、この実施の形態では、蓋31と固定部材32とこれに一体化される隔
壁5、圧側バルブ11および被固定部材が蓋31のバルブケース4への螺着によってバルブケース4へ固定されるが、バルブケース4の開口端外周に、袋状のナットを螺着して、蓋31とこれらアッセンブリ化された各部材をバルブケース4と袋状ナットとで挟持して固定することもできるし、蓋31とこれらアッセンブリ化された各部材をバルブケース4の中空部4aの開口側から取り外すことができれば他の固定方法によって固定するようにしてもよい。
【0049】
つづいて、上述のように構成された車両用緩衝器Dの作動について説明する。まず、
図1中でピストン3が上方へ移動して車両用緩衝器Dが伸長する場合について説明する。この伸長作動時においてピストン3の上昇によって圧縮される伸側作動室R1の液体は、伸側バルブ12を押し開いて圧側作動室R2へ移動する。したがって、車両用緩衝器Dが伸長作動する際には、伸側バルブ12が開いて液体の流れに抵抗を与えるため、伸側バルブ12によって伸側減衰力が発生される。この場合、車両用緩衝器Dは、両ロッド型に設定されており、伸側バルブ12が開弁し伸側作動室R1と圧側作動室R2とが連通され、伸側作動室R1で減少する容積に見合って圧側作動室R2の容積が増大するため、液室Lとシリンダ1内とで液体の出入りがないが、車両用緩衝器Dが片ロッド型に設定される、つまり、ピストンロッド17の下部17bを廃した場合には、補償チェック弁34が開いて液室Lから不足する液体が圧側作動室R2へ供給されることになる。
【0050】
次に、
図1中でピストン3が下方へ移動して車両用緩衝器Dが収縮する場合について説明する。この収縮作動時においてピストン3の下降によって圧縮される圧側作動室R1の液体は、圧側バルブ11を押し開いて液室Lへ移動する。したがって、車両用緩衝器Dが収縮作動する際には、圧側バルブ11が開いて液体の流れに抵抗を与えるため、圧側バルブ11によって圧側減衰力が発生される。また、拡大される伸側作動室R1には、吸込チェック弁13が開弁することで、液室Lから液体が供給される。
【0051】
このように車両用緩衝器Dは作動するが、この車両用緩衝器Dにあっては、液室Lと液室Lを加圧する加圧手段Pを備えているので、シリンダ1内の伸側作動室R1と圧側作動室R2内の液柱剛性を高めることができる。
【0052】
そして、この車両用緩衝器Dにあっては、伸長行程時に圧縮される伸側作動室R1が何ら抵抗の無い通路を介して液室Lに連通されることがなく、収縮行程時においても圧縮される圧側作動室R2が圧側バルブ8を介して液室Lに連通されるため何ら抵抗の無い通路介して液室Lに連通されることがないので、その伸縮両行程時において液室Lが圧縮側の室として振る舞うことがなく液体の液柱剛性の低下を招くことがない。
【0053】
このように、車両用緩衝器Dによれば、伸側作動室R1と圧側作動室R2の液柱剛性を高めることができるだけでなく、伸縮行程時においても液室Lが圧縮側の室として振る舞うことなく液柱剛性が低下しないので、伸縮時のピストン速度が低速である場合であっても減衰力発生応答性を向上することができ、車両における乗り心地をも向上することができる。したがって、この車両用緩衝器Dにあっては、車両旋回時、制動時や加速時といった車体の姿勢変化を姿勢変化初期からしっかり抑制することができる。
【0054】
さらに、この車両用緩衝器Dにあっては、アウターチューブ2の側方に設けたバルブケース4内に減衰通路8を備えた隔壁5を設け、当該減衰通路8を開閉し副作動室6から副液室7へと向かう液体の流れのみを許容するとともに液体の流れに抵抗を与える圧側バルブ11をバルブケース4内に収容したので、減衰力発生応答性を高めつつ、アウターチューブ2の外周に懸架ばねSを支承する懸架ばね受14を設けることができるとともに、圧側バルブ11をアウターチューブ2外に設置しているからシリンダ長も短くなるので、車両への搭載性も犠牲になることがない。
【0055】
また、車両用緩衝器Dでは、伸側作動室R1を起点とすれば、液体の流れは、伸側作動室R1から圧側作動室R2、液室Lを経て伸側作動室R1へ循環する一方通行の流れとなるので、車両用緩衝器Dの伸縮の切り換わりにて液体の流れが反転しなくなる。このように、液体の流れの反転が生じなくなるので、車両用緩衝器Dの伸縮の切り換わりにおける減衰力発生遅れを抑制することが可能となる。また、この車両用緩衝器Dでは、補償通路33および補償チェック弁34とを廃止することも可能であるが、これらを設けておく場合には、圧側作動室R2内で圧力が減少した場合に液室Lから圧側作動室R2へ液体を速やかに供給することができ、圧側作動室R2の圧力を補償してバキュームを防止することが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態における車両用緩衝器Dでは、両ロッド型とされているので、伸縮作動に際して、液室Lとシリンダ1内とで液体の出入りがなくいため、液室L内での圧力変動がなく、更なる減衰力発生応答性の向上に寄与できる。
【0057】
なお、上記したところでは、減衰バルブを圧側バルブ11としているが、伸側作動室R1を副作動室6に連通するようにすれば、減衰バルブを車両用緩衝器Dが伸長作動する際に減衰力を発生する伸側バルブとして機能させることもでき、その場合には、たとえば、伸側バルブ12を廃止して伸側通路9を圧側通路とし利用しピストン3に圧側バルブとして機能するリーフバルブ等のバルブを設けるようにしてもよい。また、この場合、吸込通路10を廃止して、液室Lを圧側作動室R2へ連通する通路を設けて、この通路を介して車両用緩衝器Dの伸長作動時に圧側作動室R2へ液体を供給するようにしておくとよく、シリンダ1とアウターチューブ2との間の環状隙間を利用して伸側作動室R1と副作動室6とを連通するようにすることできる。
【0058】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。