特許第5832003号(P5832003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5832003-防汚性フックドラグ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5832003
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】防汚性フックドラグ
(51)【国際特許分類】
   A47G 27/02 20060101AFI20151126BHJP
【FI】
   A47G27/02 102
   A47G27/02 101B
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-22086(P2015-22086)
(22)【出願日】2015年2月6日
【審査請求日】2015年2月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】315001763
【氏名又は名称】比楽紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081891
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【弁理士】
【氏名又は名称】堀家 和博
(72)【発明者】
【氏名】比楽 一郎
【審査官】 青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4348482(JP,B2)
【文献】 特開平02−131710(JP,A)
【文献】 特開平11−089701(JP,A)
【文献】 実開平03−064078(JP,U)
【文献】 実開平06−022392(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次基布(13)にパイル(10)を植設して成るフックドラグ生機のバックステッチ面(17)に、全面に図柄模様(11)が描出された二次基布(12)が裏打ちされている防汚性フックドラグ。
【請求項2】
二次基布(12)がセルロース系繊維を含有している請求項1の防汚性フックドラグ。
【請求項3】
一次基布(13)の周縁(14)が折り返されて二次基布(12)の周縁(15)を包み込んでおり、その包み込む一次基布(13)の周縁(14)が裏面を縁取る縁枠(16)を形成している請求項1と2の何れかの防汚性フックドラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支枠に張設された一次基布にフック機(例えば、特許文献1,2,3,4,5参照)によってパイルを植設して成るフックドラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一次基布の裏面に現れるパイル糸のバックステッチを覆い隠すために、フックドラグは裏面に二次基布を裏打ちして仕上げられる(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭45−16109号公報
【特許文献2】実公昭45−16110号公報
【特許文献3】実公昭48−05517号公報
【特許文献4】実公昭55−28795号公報(実開昭52−10457)
【特許文献5】実公平01−39747号公報(実開昭63−24293)
【特許文献6】特許第4348482号公報(特開2007−111474)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フックドラグの生産工場から販売店頭に到る流通経路におけるパイル面の汚染を回避するために、フックドラグはパイル面を内側に向けバックステッチ面を外側に向けてロール巻きにして取り扱われている。
【0005】
そうするとパイル面が汚染したり変退色することはないが、外側に現れるバックステッチ面が汚染したり変退色することがある。
その場合でも、フックドラグの使用状態では、バックステッチ面が裏向きになるので、バックステッチ面の汚染や変退色は使用に支障をきたさない。
【0006】
とは言え、店頭におけるバックステッチ面の汚染や変退色は、購買意欲を損ない、商品価値を損ない、フックドラグの販売促進上障害となる。
【0007】
勿論、ロール巻きしたフックドラグを包装紙で包み込む方法もあるが、店頭で顧客が品定めをする上で包装紙は障害となるし、包装紙の廃棄に手間取るなど、包装紙はトラブルのもとになる。
【0008】
そこで本発明は、包装紙を使用することなく、バックステッチ面の汚染や変退色による不都合を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る防汚性フックドラグは、一次基布13にパイル10を植設して成るフックドラグ生機のバックステッチ面17に、全面に図柄模様11が描出された二次基布12が裏打ちされていることを第1の特徴とする。
【0010】
本発明に係る防汚性フックドラグの第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、二次基布12がセルロース系繊維を含有している点にある。
【0011】
本発明に係る防汚性フックドラグの第3の特徴は、上記第1および第2の何れかの特徴に加えて、一次基布13の周縁14が折り返されて二次基布12の周縁15を包み込んでおり、その包み込む一次基布13の周縁14が裏面を縁取る縁枠16を形成している点にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、裏面には図柄模様11が描出されており、生産工場から販売店頭に到る流通経路において裏面に付着した塵埃や擦り疵、付着した液体の滲み痕、局部的日焼け等の局部的汚染や変退色は、その裏面に描出されている図柄模様11の構図の中に埋没して目立ち難く、顧客の購買意欲を損ない商品価値を損なうことがなく、防汚性に優れ、包装紙による梱包を必要とせず、従って、生産工場での梱包作業や店頭での陳列作業が簡略化され、顧客にとっては随時パイル面を覗いて品定めをすることが出来、販売促進上好ましい防汚性フックドラグを経済的に得ることが出来る。
【0013】
本発明によると、フックドラグはバックステッチ面を裏向きに床面に置き敷き使用されるので、裏面に描出された図柄模様11は、使用上美観を呈するものではないが、小売店の店頭では店内の美観を高め、人目を惹き、購買意欲を喚起するので、販売促進機能に優れた防汚性フックドラグが得られる。
【0014】
そして、裏面に図柄模様11の描出されたフックドラグは、従来公知ではないが故に、需要者に強い印象を与えるので、自他商品の識別が容易で出所表示機能に優れたフックドラグが得られる。
【0015】
セルロース系繊維を含有している二次基布12を裏打ちする場合、その含有するセルロース系繊維は吸湿して膨潤し収縮し、二次基布が吸湿収縮する。一方、一次基布13にはバックステッチ17からパイル10に到る無数のパイル糸が貫通しており、その貫通しているパイル糸の繊維分だけ一次基布は繊維密度が緻密で収縮し難くなる。
そのため、セルロース系繊維を含有している二次基布12の裏打ちされたフックドラグ18が吸湿するとき、一次基布13と二次基布12の収縮差に応じてバイメタル式に裏側に反り易くなり、床面に置き敷きた使用状態においてフックドラグの周縁、特に周縁のコーナー(四隅)が反り上がり難くなり、その反り上がった周縁に爪先が引っ掛かって転倒する危険が回避される。
【0016】
又、セルロース系繊維を含有している二次基布12を裏打ちする場合、裏打ち用樹脂エマルジョン・ラテックス系接着剤中の水分をセルロース系繊維が吸収するので、二次基布12がフックドラグ生機に接着し易く、フックドラグ生機のバックステッチ17に対する二次基布12の剥離強度がアップする。
【0017】
そして、一次基布13の周縁14を折り返して二次基布12の周縁15を包み込み、その折り返した一次基布13の周縁14によって二次基布12の周縁15を縁取る縁枠16を形成する場合、周縁14において二次基布12が剥離することなく、又、二次基布12に描出された図柄模様11は額に収められた絵画のように清楚な美観を呈し、フックドラグ18の商品価値が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係るフックドラグの裏返された裏面の一部切截斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
周縁のコーナーで反り上がり難くするには、パイル10の長さを10mm以上にし、フックドラグ生機を重厚にするとよい。
【0020】
二次基布12には、織物、編物、不織布の何れも使用することが出来る。
二次基布12は、ポリエステル繊維、ナイロン、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維等の熱可塑性合成繊維とセルロース系繊維を混用して構成するほか、セルロース系繊維だけで構成することも出来、又、ポリエステル繊維、ナイロン、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維等の熱可塑性合成繊維だけで構成することも出来る。
木綿、麻、ラミー、ケナフ等の植物繊維、レーヨン、アセテート、キュプラ、ポリノジック等の吸湿性化学繊維は、セルロース系繊維として二次基布に用いることが出来る。
【0021】
フックドラグの裏面となる二次基布12の表面に防汚剤を付与して防汚処理を施しておくことは、二次基布自体を汚染変退色し難くする上で好ましい実施態様となる。
又、二次基布自体を汚染変退色し難くする上では、ポリエステル繊維マルチフィラメント糸、ナイロンマルチフィラメント糸、ポリプロピレン繊維マルチフィラメント糸等の熱可塑性合成繊維マルチフィラメント糸を二次基布12に用いることが望ましい。
【0022】
図柄模様11は、草木や雲等の風景を模した複雑な図柄であってもよいし、水玉模様、絣模様、縞模様、格子模様、市松模様等の単純な幾何学図柄であってもよく、雲柄やぼかし模様や皺模様等の輪郭の朧な図柄模様は、流通経路において二次基布に発生し易い擦り疵や滲み痕、日焼け等の輪郭の朧な局部的汚染や変退色を解消する上で効果的である。
【0023】
商標や文字やマーク、その他の単純な図形は図柄模様11として採用することが出来、それによってフックドラグ18の出所を表示することも出来る。
【0024】
図柄模様11は、捺染プリント装置やジャカード柄出装置によって描出するほか、特に輪郭の朧な図柄模様では、スプレー捺染装置やストーンウォッシュ、サンダリング等の局部的研摩装置によって描出することが出来る。
【0025】
如何なる構図や図柄を採用し、又、如何なる描出方法を採用する場合でも、図柄模様11を二次基布12の全面に描出することが肝要であり、そうすることによってフックドラグ18の裏面に発生する汚染や変退色を目立ち難くし店頭での美観を保つことが可能となる。
【0026】
フックドラグの裏面となる二次基布12の表面にはエチレン・酢酸ビニル系樹脂やエチレン・スチレン・酢酸ビニル系樹脂等の粘着性樹脂による防滑処理が施される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、タフテッドカーペット、ウイルトンカーペット、アキスミンスターカーペット、平織カーペット、手織り段通の敷物類の裏面に図柄模様の描出された二次基布を裏打ちして利用することが出来る。
【符号の説明】
【0028】
11:図柄模様
12:二次基布
13:一次基布
14:周縁
15:周縁
16:縁枠
17:バックステッチ
18:フックドラグ
【要約】
【課題】生産工場から販売店頭に到る流通経路におけるバックステッチ面の汚染や変退色によるフックドラグの商品価値の低下を回避する。
【解決手段】一次基布13にパイル10を植設して成るフックドラグ生機のバックステッチ面17に、全面に図柄模様11が描出された二次基布12を裏打ちし、生産工場から販売店頭に到る流通経路において、バックステッチ面に汚染や変退色が発生しても、図柄模様11の構図の中に汚染や変退色が埋没して目立ち難くする。フックドラグ生機の一次基布13の周縁14を折り返して二次基布12の周縁15を包み込み、その包み込む一次基布13の周縁14によってフックドラグ18の裏面を縁取ると二次基布12が剥離し難くなり、図柄模様11が額に収められた絵画のように清楚な美観を呈し、フックドラグ18の商品価値が高まる。
【選択図】図1
図1