(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5832008
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】住宅用分電盤
(51)【国際特許分類】
H02B 1/40 20060101AFI20151126BHJP
【FI】
H02B9/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-267644(P2010-267644)
(22)【出願日】2010年11月30日
(65)【公開番号】特開2012-120324(P2012-120324A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年11月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】羽生 党正
(72)【発明者】
【氏名】品田 邦明
(72)【発明者】
【氏名】吉川 良
【審査官】
出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−116607(JP,A)
【文献】
特開2001−211526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部機器を収納するケースの基部周縁部から前面側に突設される側壁が周囲を囲繞するよう設けられる住宅用分電盤のケース構造であって、
前記側壁には、該側壁の縁部が外方背面側に折り返される折り返し部が形成されるとともに、
前記折り返し部の内面側には該折り返し部と前記側壁とをつなぐ補強リブが形成される一方、
前記折り返し部における縁部外周から、更に前記前面側に突設されて、前記住宅用分電盤の周囲を囲繞するよう設けられる側壁が形成されたことを特徴とする住宅用分電盤のケース構造。
【請求項2】
前記折り返し部においては、
前記基部の周縁部から前面側に突設される側壁と、
前記縁部外周から前記前面側に突設される側壁との間に、
前面側からみて段差部を設けて構成されたことを特徴とする請求項1記載の住宅用分電盤のケース構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の住宅用分電盤のケース構造を備えて構成された住宅用分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や店舗等における住宅用分電盤に関し、特に、住宅用分電盤のキャビネットを構成するケースの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用分電盤は、キャビネットの内部に、主開閉器、該主開閉器の二次側に接続される母線、該母線と各々接続される分岐開閉器などの内部機器を組み込んだもので、住宅等における電路の引込口装置として用いられている。適用される電路は、通常、交流50Hz又は60Hzの単相2線式電路(100V)、もしくは単相3線式電路(100/200V)が印加される電路である。
【0003】
前記キャビネットは、住宅用分電盤の外郭を構成するもので、一般的に、前記内部機器を取付ける中底を取付け固定し、住宅用分電盤の上下左右の側面及び背面を覆う壁を形成するケースと、内部機器の操作面側に臨む前面側を覆うよう前記ケース前面側に設けられるカバーとを備えて構成される。
【0004】
このような住宅用分電盤においては、特許文献1の
図4、特許文献2の
図2に示されるように、キャビネットを構成するケースにおける上下左右の側面は、側壁により囲繞されて形成されている。そしてケースの背面側から前面側に至る間で、側壁の前面側周囲が外方に一段拡大されて段差部分が形成されている。住宅用分電盤を持ち運んだり、壁面に取り付ける際には、前記段差部分に指を掛け前面側のカバーを押さえて挟むように把持していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−36769号公報
【特許文献2】特開2005−229746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したような段差部分は、前記ケースの基部から前面側に突設される側壁の一部に外方向に拡大した部分が形成され、更に前面側に向けて側壁が突設されることにより、一続きになって形成されているものである。該段差部分は、本来、住宅用分電盤を壁面に設けた開口部にはめ込む際の嵌め込み量を規制するためのもので、住宅用分電盤を持ち運んだり、壁面に取り付ける際の把持に用いる部位として形成されたものではない。
このため、前記段差部分は、住宅用分電盤の把持部として使用した場合には次のような課題点が想定される。
【0007】
前記ケースの側壁における段差部分は、住宅用分電盤における前記前面側−背面側を、天地方向と鉛直方向にして住宅用分電盤を把持する場合には、把持した部分の側壁が前面側に引っ張られるように力を受けるが、ケースを構成している材料(樹脂材料又は金属材料)の特性上、引っ張り方向への耐性には強いため、また、上下左右の側壁並びに基部が協同することにより、住宅用分電盤の自重が全体的に分散されて保持を行うことができる。
【0008】
しかしながら、住宅用分電盤の分岐回路数が多くなる場合や、内部機器が多数載置されている場合など、住宅用分電盤の自重が重くなるような場合には、側壁並びに基部だけでは住宅用分電盤の自重を支えきれず、住宅用分電盤の中央部分に撓みを生ずる可能性がある。
【0009】
また、前記前面側−背面側を、天地方向と平行にして住宅用分電盤を把持する場合においても、同様に住宅用分電盤に撓みを生ずる可能性がある。加えて、前記ケースの左右の側壁における段差部分は、住宅用分電盤を取付ける壁面の天地方向に沿って形成されているから、前記段差部分を把持して住宅用分電盤を保持することには尚の事適しておらず、把持しにくくなることに加えて、把持した部分に加わる荷重並びに応力が大きくなり、側壁の耐性が小さい面方向の曲げ力が加わることにより、住宅用分電盤に撓みや歪が生じ易くなりケース自体や内部機器に損傷が起きる可能性がある。
【0010】
また、本来把持部でない部分を把持することにより、住宅用分電盤を誤って落下した場合等には、作業者の脚部を怪我したり、住宅用分電盤自体が損傷する虞がある。
【0011】
側壁の強度を上げるために、側壁の板厚を増すことが考えられるが、板厚を増すと、住宅用分電盤の内部スペースを圧迫することとなり、住宅用分電盤の内側における電気配線に必要なガタースペースが縮小してしまうという課題がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、住宅用分電盤を構成するケース自体の強度を向上することができ、該住宅用分電盤の保持や持ち運びを作業者が安全に行うことができるとともに、電気配線に必要な住宅用分電盤内部のガタースペースは確保することができる住宅用分電盤のケースの構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る住宅用分電盤の構造は、上述の課題を解決すべく構成されたもので、内部機器を収納するケースの基部周縁部から前面側に突設される側壁が周囲を囲繞するよう設けられる住宅用分電盤のケース構造であって、前記側壁には、該側壁の縁部が外方背面側に折り返される折り返し部が形成されるとともに、前記折り返し部の内面側には該折り返し部と前記側壁とをつなぐ補強リブが形成される一方、前記折り返し部における縁部外周から、更に前記前面側に突設されて、前記住宅用分電盤の周囲を囲繞するよう設けられる側壁が形成されたことを特徴として構成するとよい。
【0014】
かかる構成によれば、ケースの基部から突設される側壁に折り返し部が形成されるから、住宅用分電盤を構成するケース自体の強度を向上することができる。該住宅用分電盤の保持や持ち運びを行うときにケースの撓みや歪を抑えることができ、安全に保持や持ち運びを行うことができる。
また、ケース内側において基部から前面側の側壁にかけてリブを形成することで、ケースの強度をより向上させることができる。
【0015】
また、本発明に係る住宅用分電盤の構造は、前記折り返し部においては、前記基部の周縁部から前面側に突設される側壁と、前記縁部外周から前記前面側に突設される側壁との間に、前面側からみて段差部を設けて構成してもよい。
【0016】
かかる構成によれば、前記段差部が設けられることにより、ケース内部が前方方向にかけて広がる構成となる。ケース内部に配線される電線をケース周縁部に沿って配設される段差部に沿って這わせることにより、電線の流れを整流化でき、統一感をもたせて配線作業を行うことができる。また、折り返し部が形成されることにより、住宅用分電盤の把握部としての持ち代が増加することにより、安定して住宅用分電盤を把持することができる。
【0017】
また、前記
住宅用分電盤のケース構造を備えて住宅用分電盤を構成してもよい。
【0018】
かかる構成によれば、ケース強度が増し、持ち運び保持し易い住宅用分電盤を提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上の如く、本発明によれば、住宅用分電盤を構成するケース自体の強度を向上することができ、該住宅用分電盤の保持や持ち運びを作業者が安全に行うことができるとともに、電気配線に必要な住宅用分電盤内部のガタースペースは確保することができる住宅用分電盤のケースの構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態を示す住宅用分電盤の背面図を示す。
【
図2】同実施形態に係るケース背面側からの斜視図を示す。
【
図3】同実施形態に係るケース前面側からの斜視図を示す。
【
図4】同実施形態に係るケース内側前面側からの斜視図を示す。
【
図5】同実施形態に係るケース内側前面側の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明の実施形態を
図1乃至
図5を用いて詳細に説明する。
【0022】
(住宅用分電盤の概要説明)
第1の実施形態に係る住宅用分電盤100は、単相3線式の商用電路に用いられるものである。該住宅用分電盤は、キャビネットの内部に、電流制限器、主開閉器、該主開閉器の二次側において接続部材を介して接続される母線、該母線と各々接続される分岐開閉器、これら内部機器を取付ける中底を設けて構成される。
図1には住宅用分電盤100のキャビネットを構成するカバーを取り外し、内部機器が露出する状態で臨んだ図を示しており、110が電流制限器取付部、111が主開閉器取付部、112が分岐開閉器取付部としての中底である。
【0023】
前記キャビネットは、住宅用分電盤100の外郭を構成するもので、一般的に、前記内部機器を取付ける中底を取付け固定し、住宅用分電盤の上下左右の側面及び背面を覆う壁を形成するケース120と、内部機器の操作面側に臨む前面側を覆うよう前記ケース前面側に設けられるカバー(図示していない)とを備えて構成される。
【0024】
ケース120には、壁面等に取り付けられる基部101と、該基部周縁部から連なり前面側に突設される側壁102が基部の周囲を囲繞するように設けられている。
【0025】
説明のために、ケース120の側壁102を、第一の側壁102a、第二の側壁102b、第三の側壁102cと分け、前記基部101の周縁部に連なり前面側に突設される側壁を第一の側壁102aとし、該第一の側壁102aの前面側から外方に一段拡大されて背面側に折り返される折り返し部103を経て背面側に延設される側壁を第三の側壁102cとし、前記折り返し部103における縁部外周から更に前面側に突設される側壁を第二の側壁102bとして説明を行う。
【0026】
ケース120の側壁102には、該ケースの外方背面側に折り返される折り返し部103を形成して構成している。このため、側壁が部分的に102aと102cとの二重構造となり、ケース側壁の強度を向上させることができる。そして、前記折り返し部103における縁部外周から更に前面側に突設される第二の側壁102bを設ける構成とし、折り返し部103において、前面側からみて外方に一段拡大された部分には段差部を形成して構成している。
【0027】
前記折り返し部103の内面側には、前記第一の側壁102aと第三の側壁102cとをつなぐ補強リブ104が複数形成されている。これにより、二重化構造となった側壁同士を補強リブでつなぎ合わせ、より強度を強度を向上させることができる構成としている。側壁間を該補強リブでつなぎ合わせることにより、側壁同士を接離させる方向に対する耐性が増すことに加え、側壁同士をすり合わせる方向への耐性も増し、結果として、ケース全体としての撓みや歪の低減につながる。
【0028】
更に、ケース内側には、基部101から側壁の前面側にかけて補強リブ106が形成されている。これにより、基部に対する側壁の変位を抑制させることができ、よりケース全体としての撓みや歪の低減につながる。
【0029】
また、前記段差部105が側壁の周縁部に沿って形成されている。段差部105により、ケース内部が前方方向にかけて広がる構成となる。作業者が配線作業を行う場合、ケース内部に配線される電線を前記段差部105に沿って這わせることにより、電線の流れを整流化でき、統一感をもたせて配線作業を行うことができる。
【0030】
また、電線の種類(住宅用分電盤における上下2段に亘って配設される分岐開閉器の上側の段の配線、下側の段の配線、アース線など)ごとに分けて、基部上、段差部上に配線が可能となり、統一感を持たせつつ、配線種別を分けて整然と配線を行うことができる。
【0031】
また、折り返し部が形成されることにより、住宅用分電盤の把握部としての持ち代が増加することにより、安定して住宅用分電盤を把持することができる。
【0032】
また、天地方向において、中央部には凹部103が形成されている。該凹部103は、前記基部101の背面側からケース側壁102の前方にかけて形成されるとともに、前記凹部103がケース内側にも突設して設けられている。
【0033】
ケース120の背面視においては、該ケースの基部101における左右略中央部に凹みが形成され、該凹みが基部101から前面側に延設される側壁にもそのまま続いて形成されている。ケース120の左右側面部分に該当するケース側壁102と基部101との接触面積が凹みの線分だけ増加し、また、ケース120の基部101とケースの側壁102とが立体的に接続支持され、凹部103全体が基部101から側面に至る補強リブとしての役割を担う。
【0034】
また、
図4に示したように、前記凹部103における側壁102の前面側は、前記第一の段差部分105が前記凹部103のケース内側への突設部分だけ内側に延設されて形成された壁面に連続的に続くよう接続される。
【0035】
このため、特許文献1、特許文献2に示されたような、ケースの基部の上下左右をケースの側壁により単純に四角形状に囲繞する場合と比べて、ケース側壁102の左右外方への曲げ強さ、前記天地方向への曲げ強さなどが増加するとともに、ケース120の水平方向、天地方向、斜め方向への撓みや捩れ、歪に対する耐性を増加させることができる。
【0036】
一方で、前記凹部107により、住宅用分電盤100の天地方向には、該凹部107の窪んだ部分と本来の側壁102部分との間に段差108(第二の段差という)が形成される。また、住宅用分電盤100の背面側から前面側の方向には、前記凹部107の窪んだ部分と側壁102の外方に一段拡大されて形成されている折り返し部103に段差部105よりも大きな段差(第三の段差109)が形成される。
【0037】
これにより、住宅用分電盤100を施工するときの持ち運びや壁面等への取付保持の際には、前記第二の段差108部や第三の段差109部に指を掛けて持ち運び保持することにより、持ち運び保持の仕方の自由度が増し、前記補強されたケース120と相まって天地方向への住宅用分電盤の自重を安定して支えることができる。
【0038】
本実施形態においては、前記第二の段差108部は、前記窪んだ部分と本来の側壁部分との間がなだらかに接続されるよう斜面を設けて形成している。前記窪んだ部分と本題の側壁部分を会談のステップのように直角の段差を設けて形成してもよいが、なだらかな斜面を形成することにより、段差108部と他の側壁とが急峻でなくなり、住宅用分電盤を臨んだ場合の段差部分への視覚的な注目度を突出させることなく、デザイン的にも一体感をもたせたうえで、把持部としての機能と、補強リブとしての機能を併せ持たせているものである。
【0039】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、本発明のケース構造を用いた住宅用分電盤は、単相3線式の商用電路の他、単相2線式の電路や三相3線式の電路他に用いることができる。また、住宅用分電盤の他、標準盤のケースに適用したり、一般的な樹脂製のケースに代えて金属性のケースに適用することができる。
【0041】
例えば、第一の実施形態において、ケース120の側壁102に形成された凹部103を前記天地方向において複数設けて形成してもよい。補強リブとしての役割が増加することでよりケースの強度を増加させた住宅用分電盤を構成することができる。
【符号の説明】
【0042】
100 住宅用分電盤
101 基部
102 側壁
103 凹部
104 第二の段差
105 第一の段差
106 第三の段差
110 電流制限器取付部
111 主開閉器取付部
112 分岐開閉器取付部