(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、自動車101の側面図であり、本発明の第1の実施形態に係る冷暖房装置を示す。
【0016】
以下、本発明の第1の実施形態を、
図1を用いて詳細に説明する。
【0017】
自動車101には、乗車空間102、前方空間103および後方空間104がある。本発明に基づく冷暖房装置1は、第1の貯留部2、第2の貯留部3、流路4および搬送部5を備える。
【0018】
蓄熱用媒体を貯留する第1の貯留部2は、乗車空間内部102内に設けられ、蓄熱用媒体を貯留する第2の貯留部は、乗車空間外部に設けられる。第1の実施形態では、第1の貯留部2は乗車空間102の上部に設けられ、第2の貯留部3は後方空間104に配される。
【0019】
流路4は、第1の貯留部2と第2の貯留部3の間に設けられ、内部を蓄熱用媒体が流れる。この蓄熱用媒体は、水、アルコール、CO
2、フロン等、空気より熱容量が大な媒体であればよい。
【0020】
搬送部5は、第1の貯留部2から第2の貯留部3へ、または第2の貯留部3から第1の貯留部2へ蓄熱用媒体を搬送する。
【0021】
動力源6は、搬送部5に動力を供給する。たとえば、専用のモータからの動力であっても良いし、エンジンの回転動力等であっても良い。
【0022】
次に、本発明に基づく冷暖房装置1の熱暑時の機能について説明する。
【0023】
乗車空間102内で冷房を開始する冷房条件を満たすと、搬送部5が第1の貯留部2から第2の貯留部3へ流路4を介して蓄熱用媒体を搬送する。この蓄熱用媒体の搬送の後に、又は、蓄熱用媒体の移動中、蓄熱用媒体の移動の前から、空気調和機によって冷房がなされる。
【0024】
好適には、この冷房条件は、ロックキーの接近、ドアロック解除またはエンジンの始動などが考えられる。
その他、ユーザが冷房を必要とする条件によって、蓄熱用媒体の搬送が行われて良い。
【0025】
この構成によって、たとえば、炎天下に駐車した自動車101に再び乗車しようとするとき、ロックキーが接近し、ロックが解除される。さらに、運転者がエンジンを始動させると、この何れかの条件が冷房条件となって、蓄熱用媒体が第1の貯留部から第2の貯留部に搬送される。
【0026】
この構成によって、自動車101に乗車者が乗り込む前後に、高温となった乗車空間102内から熱容量の高い蓄熱用媒体を乗車空間外、ここでは後方空間104に移動させることができる。その結果、乗車空間102内の熱容量が小さくなり、乗車空間102は比較的早く冷房効果を得ることができる。
【0027】
また、乗車空間102内で温度を維持する必要がある温度維持条件を満たすと、搬送部5が第2の貯留部3から第1の貯留部2へ蓄熱用媒体を搬送する。
【0028】
好適には、この温度維持条件は、乗車空間102が設けられる自動車101が駐車、停車した場合である。
その他、ユーザが保温を必要とする条件によって、蓄熱用媒体の搬送が行われて良い。
【0029】
この構成によって、たとえば、自動車101が停車または駐車すると、第2の貯留部3から第1の貯留部2に蓄熱部媒体が搬送されることによって、再び乗車空間102内の熱容量が上昇する。その結果、高い外気温による乗車空間102の温度上昇の影響を緩和することができる。
【0030】
次に、本発明に基づく冷暖房装置1の寒冷時の機能について説明する。
【0031】
乗車空間102内で暖房を開始する暖房条件を満たすと、搬送部5が第1の貯留部2から第2の貯留部へ流路4を介して蓄熱用媒体を搬送する。暖房は、たとえば、自動車101の空気調和機によってなされる。
【0032】
好適には、この暖房条件は、ロックキーの接近、ドアのロック解除またはエンジンの始動などが考えられる。
【0033】
この構成によって、たとえば、寒冷下に駐車した自動車101に再び乗車しようとするとき、ロックキーが接近し、ロックが解除される。さらに、運転者がエンジンを始動させると、この何れかの条件が暖房条件となって、蓄熱用媒体が第1の貯留部から第2の貯留部に搬送される。
【0034】
この構成によって、自動車101に乗車者が乗り込む前後に、低温となった乗車空間102内から熱容量の高い蓄熱用媒体を乗車空間外、ここでは後方空間104に移動させることができる。その結果、乗車空間102内の熱容量が小さくなり、乗車空間102は比較的早く暖房効果を得ることができる。
【0035】
以上述べたことから、本発明の冷暖房装置1は、熱暑時であっても、寒冷時であっても基本的な機能は同一である。ただし、寒冷地での走行が多く予定される自動車101において本発明を利用する場合は、蓄熱用媒体の凍結を防止する必要がある。このため、アルコール系等の不凍液を蓄熱用媒体に加えてもよい。
【0036】
次に、自動車101が外気温の影響を比較的長時間受ける場合の機能について説明する。
【0037】
乗車空間102内で温度を維持する必要がある温度維持条件を満たすと、搬送部5が第2の貯留部3から第1の貯留部2へ蓄熱用媒体を搬送する。
【0038】
好適には、この温度維持条件は、乗車空間102が設けられる自動車101が駐車、停車した場合である。
【0039】
さらに好適には、この温度維持条件は、乗車空間102が設けられる自動車101のロックまたはエンジンの停止である
【0040】
この構成によって、具体的には、たとえば、自動車101が停車または駐車し、エンジンが停止し、さらにはロックされて、運転者や他の乗車者が自動車101から離れて直ぐには戻らない条件が成立すると、第2の貯留部3から第1の貯留部2に蓄熱部媒体が搬送される。その結果、再び乗車空間102内の熱容量が上昇し、乗車空間102の温度が過度に上昇または低下するのを防止する。
【0041】
また、第1の貯留部は乗車空間102内部、または乗車空間102に隣接して設けられるが、具体的には、ルーフパネル裏面、シート下、シート内、インストルメントパネル裏面、リアパネル裏面、ボンネット内、ハンドル内部、ドア内部などが考えられる。
【0042】
<本発明の第2の実施形態>
図2は、本発明の第2の実施形態に係る冷暖房装置を1示す。
【0043】
基本的に、本発明の第1の実施形態と同様の構成・作用・効果を有し、異なる点は、第1の貯留部2が乗車空間102下部に設けられている点である。
【0044】
このように構成したことによって、第2の実施形態は第1の実施形態よりも、すなわち乗車空間102において、上部よりも下部の方が第1の貯留部2を設けるための空間を確保しやすいため、より多量の熱媒体を使用することができる。
その結果、乗車空間102全体の熱容量を大きく変化させることが可能である。
また、蓄熱用媒体と第1の貯留部2を合わせた重量は下部に位置した場合の方が、車体がより安定し、本発明の冷暖房装置1を備えることによって自動車101の走行を妨げることがない。
【0045】
<本発明の第3の実施形態>
図3は、本発明の第3の実施形態に係る冷暖房装置を示す。
【0046】
基本的に、本発明の第1の実施形態と同様の構成・作用・効果を有し、異なる点は、本発明の冷暖房装置1が、自動車101の前方空間103に設けられている点である。
特に、第2の貯留部3を自動車101の前方部分に設けて、自動車101の走行時に前方空間103内を流れる走行風が第2の貯留部3に直接当たるように配置する。
なお、走行風はあくまで一例であり、空気調和機によって、第2の貯留部3を冷却しえても良いし、送風ファンによって第2の貯留部3を冷却しても良い。その他の方法によって冷却することも可能である。
【0047】
このように構成したことによって、温められた状態で第1の貯留部2から搬送された蓄熱用媒体を第2の貯留部3において効果的に冷却することが可能となる。
これによって、冷却された蓄熱用媒体を第1の貯留部2に送り込むことができることから、より乗車空間の温度上昇を防ぐことが可能となる。
また、第1の貯留部2で温度上昇し、その後第2の貯留部3に搬送された蓄熱用媒体を急速に冷やすことが可能となる。
これによって、一度冷暖房装置1を使用した後に、再度自動車101をユーザが停車させて使用した場合にも、一度目と同じように乗車空間102の温度上昇を防ぐことをより確実に可能にする。
【0048】
<本発明の第4の実施形態>
図4は、本発明の第4実施形態に係る冷暖房装置を示す。
【0049】
基本的に、本発明の第3の実施形態と同様の構成・作用・効果を有し、異なる点は、第2の貯留部3とエンジン7との間に蓄熱用媒体を温める熱交換器8を設けた点である。
【0050】
熱交換器8は、タンク側熱交換器8a、エンジン側熱交換器8b、第1の管路8c、第2の管路8dおよび熱交換器用搬送部9を備える。
第2の貯留部3に搬送された蓄熱用媒体は、第1の管路8cを介してエンジン側熱交換器8bに搬送され、エンジン7の熱で温められる。温められた蓄熱用媒体は第2の管路8dを介してタンク側熱交換器8aに搬送される。これら一連の搬送には、熱交換器用搬送部9が用いられる。
そして、熱交換器8によって温められた蓄熱用媒体は、第1の実施形態同様、第2の貯留部3から第1の貯留部2に搬送される。
なお、第2の貯留部3の加熱は、エンジン7の排熱に限定されない。例えば、空気調和機等によるものであっても良いし、その他の方法によっても良い。
【0051】
このようにしたことによって、第3の実施形態のように外部の気温が熱い状態のみならず外部の気温が低い状態においてもより効果的に冷暖房装置1を運用することが可能となる。
具体的には、外気温が高い場合には、熱交換器8及び熱交換器用搬送部9によって、第2の貯留部3に貯留された蓄熱用媒体を加熱することができる。
そして、暖かくなった蓄熱用媒体を第1の貯留部2に供給することで、乗車空間102の温度下降をより緩和することが可能となる。
【0052】
つまり、この第4の実施形態では、外部環境が暖かい場合には第3の実施形態と同じように第2の貯留部3の蓄熱用媒体を冷却することも可能であるし、外部環境が冷たい場合には第2の貯留部3の蓄熱用媒体を加熱することも可能としている。
これによって、どのような環境でも、より適切に、冷暖房装置1を運用することが可能となる。