特許第5832199号(P5832199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5832199黒色系樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形してなる成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5832199
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】黒色系樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形してなる成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20151126BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20151126BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20151126BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20151126BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20151126BHJP
   C08K 5/3465 20060101ALI20151126BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20151126BHJP
【FI】
   C08L67/04ZBP
   C08L69/00
   C08L55/02
   C08L33/12
   C08K3/04
   C08K5/3465
   !C08L101/16
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-185408(P2011-185408)
(22)【出願日】2011年8月29日
(65)【公開番号】特開2013-47288(P2013-47288A)
(43)【公開日】2013年3月7日
【審査請求日】2014年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上川 泰生
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−077349(JP,A)
【文献】 特開2007−191538(JP,A)
【文献】 特開2006−161024(JP,A)
【文献】 特開2007−308648(JP,A)
【文献】 特開2010−222553(JP,A)
【文献】 米国特許第05300350(US,A)
【文献】 特開2008−001766(JP,A)
【文献】 特開2009−209175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/14
C08K 3/00 − 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂(C)、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)および黒色系着色剤(E)を含有する樹脂組成物であって、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)は、メチルメタクリレートとスチレンからなる共重合体であり、メチルメタクリレートの比率が60質量%以上であり、該樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量が20〜50質量%、ポリカーボネート樹脂(B)の含有量が30〜60質量%、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂(C)の含有量が2〜20質量%、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)の含有量が0.5〜10質量%、黒色系着色剤(E)の含有量が0.1〜5質量%であることを特徴とする黒色系樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、1〜15質量%のコアシェル型アクリル系重合体(F)を含有することを特徴とする請求項1に記載の黒色系樹脂組成物。
【請求項3】
黒色系着色剤(E)が、カーボンブラックおよび/またはニグロシンであることを特徴とする請求項1または2に記載の黒色系樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、0.1〜5質量%のカルボジイミド化合物(G)を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の黒色系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の黒色系樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色系樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の見地から、ポリ乳酸樹脂をはじめとするバイオマス原料の樹脂が注目されている。バイオマス由来の樹脂のなかでも、ポリ乳酸樹脂は耐熱性が高く、大量生産が可能であるためコストが安いことから、有用性が高い樹脂の一つである。
【0003】
さらに、ポリ乳酸樹脂はトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として製造することが可能であるため、石油等の枯渇資源の節約に貢献することができる。また、ポリ乳酸樹脂は植物由来の樹脂であるため、その原料中の炭素は、大気中の炭素を固定化したものである。したがって、石油のように地中の炭素を地表に持ち込まないため、二酸化炭素排出量増大による地球温暖化の問題を防止することができる。
【0004】
ポリ乳酸樹脂はバイオマス由来樹脂の中では耐熱性の高いものである。しかしながら、ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂などの汎用樹脂と比較すると、耐熱性は必ずしも十分とはいえない場合がある。また、ポリ乳酸樹脂は、機械物性、とりわけ衝撃強度が低く、上述のような汎用樹脂が使用されている自動車部品や、家電筐体などに使用する際には、要求される性能を十分に満足していないという問題がある。
【0005】
このようなポリ乳酸樹脂の欠点を補うため、ポリ乳酸樹脂と、ポリ乳酸樹脂以外の樹脂とのアロイ樹脂が検討されている。特に、ポリ乳酸樹脂と耐熱性および耐衝撃性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂とのアロイ樹脂や、ポリ乳酸樹脂とアクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂のようなゴム強化スチレン樹脂とのアロイ樹脂などが提案されている。このようなアロイ樹脂は、石油由来原料のみから得られた樹脂と比較すると、石油資源の節約、および二酸化炭素排出量の低減といった環境負荷を低減する効果がある。
【0006】
しかしながら、このようなアロイ樹脂には、外観がパール光沢を有するという性質がある。このようなパール光沢を有するアロイ樹脂に着色剤を直接混合する場合、白色系着色剤を混合するのであれば問題ないが、黒色系着色剤配合する場合には、得られた樹脂組成物を成形体とした場合に、やや白っぽい外観になってしまい、漆黒感のある良好な外観が得られないという問題があった。
【0007】
漆黒感のある良好な外観を有する成形体を得るための方法として、樹脂組成物から成形体を得た後に、該成形体表面を黒色に塗装するといった方法や、アロイ樹脂に添加する黒色系着色剤の量を多くする方法などが挙げられる。しかしながら、これらの方法を採用した場合には、環境負荷が増大したり、コストアップに繋がったり、耐衝撃性が低下したりするという問題がある。
【0008】
したがって、このような樹脂組成物のパール光沢を低減させるために、アロイ樹脂の相溶性や分散性を改善することが検討されている。例えば、特許文献1においては、ポリ乳酸樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂あるいはスチレン樹脂ユニットをグラフトにより含む高分子化合物、および難燃剤を配合してなる難燃性樹脂組成物が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、ポリ乳酸系重合体と、ポリ塩化ビニル系樹脂などの熱可塑性樹脂と、グラフト共重合体とからなる耐衝撃性熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
【0010】
さらにまた、特許文献3には、ポリ乳酸樹脂と、芳香族ポリカーボネート樹脂と、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物およびカルボジイミド化合物より選ばれる少なくとも一種を配合してなる樹脂組成物が記載されている。
【0011】
特許文献1〜3のいずれの方法においても、外観の向上や物性改善効果が発現されている。しかしながら、特許文献1〜3の樹脂組成物は、黒色系着色剤で着色した場合に、品位の高い漆黒感を得るためには、多量の黒色系着色剤を添加する必要がある。したがって、耐衝撃性などの物性とコストとのバランスという面では、いまだ満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−56247号公報
【特許文献2】特開2005−320409号公報
【特許文献3】特開2007−56246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の課題は、上記問題を解決するものであり、ポリ乳酸樹脂を使用した樹脂組成物において、機械的強度、耐衝撃性に優れるとともに、漆黒感のある黒色外観に優れ、各種の製品に広く用いることが可能となる黒色系樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ乳酸樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂、メチルメタクリレート/スチレン共重合体および黒色顔料を、特定の割合で含有する黒色系樹脂組成物は、上記の課題を解決しうることを見出し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち本発明は、以下の内容を要旨とするものである。
(1)ポリ乳酸樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂(C)、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)および黒色系着色剤(E)を含有する樹脂組成物であって、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)は、メチルメタクリレートとスチレンからなる共重合体であり、メチルメタクリレートの比率が60質量%以上であり、該樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量が20〜50質量%、ポリカーボネート樹脂(B)の含有量が30〜60質量%、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂(C)の含有量が2〜20質量%、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)の含有量が0.5〜10質量%、黒色系着色剤(E)の含有量が0.1〜5質量%であることを特徴とする黒色系樹脂組成物。
(2)さらに、1〜15質量%のコアシェル型アクリル系重合体(F)を含有することを特徴とする(1)の黒色系樹脂組成物。
(3)黒色系着色剤(E)が、カーボンブラックおよび/またはニグロシンであることを特徴とする(1)または(2)の黒色系樹脂組成物。
(4)さらに、0.1〜5質量%のカルボジイミド化合物(G)を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかの黒色系樹脂組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかの黒色系樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の効果】
【0016】
本発明の黒色系樹脂組成物によれば、ポリ乳酸樹脂を使用していながらも優れた機械的強度、耐衝撃性を有し、かつ他の樹脂を混合したアロイ樹脂でありながら、品位のある漆黒の外観を有する成形体を得ることが可能となる。さらに、本発明の黒色系樹脂組成物を射出成形等に付することより成形体を得ることができ、該成形体は機械機構部品、電気・電子部品、建築部材、自動車部品および日用品など各種用途に有効に利用されうるものである。さらに、本発明の黒色系樹脂組成物は、天然物由来の樹脂を利用しているので、石油等の枯渇資源の節約や、二酸化炭素排出量の削減に貢献できるなど、産業上の利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の黒色系樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」と称する場合がある)は、ポリ乳酸樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂(以下、「ABS樹脂」と略称する場合がある)(C)、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)および黒色系着色剤(E)を含有してなるものである。
【0018】
まず、ポリ乳酸樹脂(A)について説明する。ポリ乳酸樹脂(A)としては、ポリ(L−乳酸)、ポリ(D−乳酸)、およびこれらの混合物または共重合体等を挙げることができる。
【0019】
本発明におけるポリ乳酸樹脂(A)において、D−乳酸含有量が1.0モル%以下であるか、または、D−乳酸含有量が99.0モル%以上であることが好ましい。D−乳酸含有量がこの範囲内であることにより、結晶性に優れるため、得られた樹脂組成物は成形性に優れる(つまり、成形サイクルが短くなる)ものになるとともに、該樹脂組成物から得られた成形体は、耐熱性が向上したものとなる。
【0020】
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD−乳酸含有量とは、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位のうち、D−乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D−乳酸含有量が1.0モル%のポリ乳酸樹脂(A)の場合、このポリ乳酸樹脂(A)は、D−乳酸単位が占める割合が1.0モル%であり、L−乳酸単位が占める割合が99.0モル%である。
【0021】
ポリ乳酸樹脂(A)の後述の測定方法によるメルトフローレート(以下、「MFR」と略称する場合がある)は、0.1〜50g/10分が好ましく、0.2〜20g/10分がより好ましく、0.5〜15g/10分がさらに好ましい。MFRが50g/10分を超えると、溶融粘度が低すぎて成形物の機械的特性や耐熱性が劣る場合がある。一方、MFRが0.1g/10分未満であると成形加工時の負荷が高くなり、操業性が低下する場合がある。
【0022】
ポリ乳酸樹脂(A)は、公知の溶融重合法により、あるいは必要に応じてさらに固相重合法を併用して製造される。
【0023】
本発明の黒色系樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量は、20〜50質量%であることが必要であり、中でも25〜40質量%であることが好ましい。ポリ乳酸樹脂(A)の含有量が20質量%未満では、環境負荷を十分に低減することができない。一方、含有量が50質量%を超えると、他の樹脂の含有量が少なくなるため、機械的強度や耐衝撃性に劣る樹脂組成物となる。
【0024】
次にポリカーボネート樹脂(B)について説明する。
本発明に使用するポリカーボネート樹脂(B)とは、ビスフェノール類残基とカーボネート残基からなる樹脂をいう。
【0025】
ビスフェノール類としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAと略称する。)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下、ビスフェノールTMCと略称する。)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジチオジフェノール、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジクロロジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−2,5−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、ビスフェノールAとビスフェノールTMCが好ましい。これらを単独で使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
【0026】
ポリカーボネート樹脂(B)は、公知の方法で製造することができる。例えば、ビスフェノール類とホスゲン、または、ビスフェノール類とジフェニルカーボネートとを反応させ製造する方法が挙げられる。
【0027】
ポリカーボネート樹脂(B)の極限粘度は0.35〜0.64の範囲にあることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(B)の極限粘度が0.35未満であると、得られる成形品の衝撃強度が不足する場合があり、一方、ポリカーボネート樹脂(B)の極限粘度が0.64を超えると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、混練押出しおよび射出成形が困難になる場合がある。
【0028】
本発明の黒色系樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂(B)の含有量は、30〜60質量%であることが必要であり、中でも35〜55質量%であることが好ましい。ポリカーボネート樹脂(B)の含有量が30質量%未満では、機械的強度や耐衝撃性、耐熱性に劣る樹脂組成物となる。一方、含有量が60質量%を超えると、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量が少なくなるため、環境負荷を十分に低減することができない。
【0029】
次に、ABS樹脂(C)について説明する。
本発明におけるABS樹脂としては、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの乳化重合による三元共重合体、アクリロニトリル−スチレン樹脂とニトリルゴム(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)との混合物、ニトリルゴムへのスチレンのグラフト共重合物など公知のものを用いることができる。なかでも、乳化重合による三元共重合体が好ましく用いられる。ABS樹脂(C)の共重合組成は、ブタジエン成分が15〜80質量%、アクリロニトリル成分とスチレン成分の合計が85〜20質量%であり、アクリロニトリル成分とスチレン成分の質量比が5/95〜50/50の割合が適当である。
【0030】
なお、ABS樹脂(C)中には、これら3成分の他、イソプレン、フェニルマレイミド、メチルアクリレート、メチルメタクリレートなどの共重合成分を少量含有していてもよい。
【0031】
本発明の黒色系樹脂組成物中のABS樹脂(C)の含有量は、2〜20質量%であることが必要であり、中でも5〜18質量%であることが好ましい。ABS樹脂(C)の含有量が2質量%未満では、機械的強度や耐衝撃性に劣る樹脂組成物となる。一方、含有量が20質量%を超えると、樹脂組成物中のポリ乳酸樹脂(A)の含有量が少なくなるため、環境負荷を十分に低減することができず、さらに、耐熱性に劣るものとなる。
【0032】
次に、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)について説明する。
本発明で使用するメチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)とは、スチレンモノマーと、当該スチレンモノマーと共重合可能なメチルタクレートモノマーの共重合体である。本発明の黒色系樹脂組成物において、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)を所定量含有させることにより、樹脂組成物中の黒色系着色剤(E)の分散性が良好となり、また、上記した(A)〜(C)成分の相溶性も向上させることができる。したがって、黒色系着色剤(E)を多量に添加することなく、十分に黒色に着色した樹脂組成物を得ることができ、品位の高い漆黒感を有する樹脂組成物を得ることができる。そして、樹脂組成物の相溶性も向上させることができることから、機械的強度や耐衝撃性を向上させる効果もある。なお、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)以外の分散剤を用いたとしても、黒色系着色剤(E)の分散性を十分に向上させることはできない。
【0037】
また、スチレンモノマーとメチルタクレートモノマーの共重合比率としては、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)中のメチルタクレートモノマー由来部分の比率が、60質量%以上であることが必要であるメチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)として、このような共重合体を用いることで、黒色外観の向上の効果がより高まるという利点がある。このような共重合体は、市販品を好適に利用することができ、具体例としては、電気化学工業社製 「アクリロイ KT−80」などが挙げられる。
【0039】
本発明の黒色系樹脂組成物中のメチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)の含有量は、0.5〜10質量%であることが必要であり、中でも0.5〜6質量%であることが好ましい。メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)の含有量が0.5質量%未満では、上記したような黒色系着色剤を十分に分散させる効果に乏しく、品位の高い漆黒感を有する成形体を得ることが困難となる。一方、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)の含有量が10質量%を超えると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性や機械的強度が低下する。
【0040】
黒色系着色剤(E)について説明する。
黒色系着色剤(E)としては、顔料・染料ともに使用でき、顔料系としては、カーボンブラック、鉄黒、チタン系黒色顔料などが挙げられる。染料系としては、アニリン・ニトロベンゼンを縮合したアジン化合物であるニグロシンなどがあげられる。中でも、物性や良好な黒色外観の観点から、カーボンブラックやニグロシンが好ましい。これらの着色剤は複数種を併用してもよい。
【0041】
本発明の黒色系樹脂組成物中の黒色系着色剤(E)の含有量は、0.1〜5質量%であることが必要であり、中でも0.5〜3質量%であることが好ましい。黒色系着色剤(E)の含有量が0.1質量%未満では、十分に黒色に着色することができず、品位のある漆黒感を有する成形体を得ることができない。一方、黒色系着色剤(E)の含有量が5質量%を超えると、得られる樹脂組成物の耐衝撃性や機械的強度が低下する。
【0042】
本発明の黒色系樹脂組成物中においては、上述の成分(A)〜(E)に加えて、さらに、コアシェル型アクリル系重合体(F)を含有することが好ましい。コアシェル型アクリル系重合体(F)を含有することで、樹脂組成物の耐衝撃性をより向上させることができる。
【0043】
コアシェル型アクリル系重合体とは、内層にゴム層を有し、外層に(メタ)アクリル系樹脂を有する層からなるものである。コアシェル型アクリル系重合体の構造の一例として、コア(内層)が、アクリル成分、シリコーン成分、スチレン成分、ニトリル成分、共役ジエン成分、ウレタン成分またはエチレンプロピレン成分等を重合させたゴム等から構成され、かつ、シェル(外層)が、メタクリル酸メチル重合体等から構成されるものが挙げられる。
【0044】
コアシェル型アクリル系重合体(F)としては、市販品を好適に使用することができ、例えば、三菱レイヨン社製「メタブレン」、鐘淵化学工業社製「カネエース」、呉羽化学工業社製「パラロイド」、ロームアンドハース社製「アクリロイド」、武田薬品工業社製「スタフィロイド」、クラレ社製「パラペットSA」などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
本発明の黒色系樹脂組成物中のコアシェル型アクリル系重合体樹脂(F)の含有量は、1〜15質量%であることが必要であり、中でも3〜12質量%であることが好ましい。コアシェル型アクリル系重合体樹脂(F)の含有量が1質量%未満では、耐衝撃性を向上させる効果に乏しい。一方、含有量が15質量%を超えると、樹脂組成物中の耐熱性が低下する。
【0046】
そして、本発明の黒色系樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂の湿熱耐久性を向上させるために、さらにカルボジイミド化合物(G)を含有していることが好ましい。
【0047】
カルボジイミド化合物(G)とは、(−N=C=N−)で表されるカルボジイミド基を分子内に有する化合物をいう。なお、カルボジイミド基を分子内に1個有する化合物をモノカルボジイミド化合物と表し、カルボジイミド基を分子内に2個以上有する化合物を多価カルボジイミド化合物と表す。
【0048】
カルボジイミド化合物(G)としては、モノカルボジイミド化合物と多価カルボジイミド化合物を併用することが好ましい。
【0049】
モノカルボジイミド化合物と多価カルボジイミド化合物を併用することで、それぞれを単独で用いる場合より、湿熱耐久性が向上する。その理由は明らかでないが、以下のように推測できる。
【0050】
ポリ乳酸分子の加水分解は、カルボン酸末端基により促進されることが知られている。モノカルボジイミド化合物は、分子量が小さく動きやすいため分散性に優れ、すばやくポリ乳酸分子のカルボン酸末端と反応して、ポリ乳酸分子の末端を封鎖する。一方、ポリ乳酸が加水分解してカルボン酸末端が新たに発生すると、多価カルボジイミド化合物が、発生したカルボン酸末端と反応し、鎖延長して分子量を増大させるため、分子量低下が抑制される。このため、湿熱耐久性が飛躍的に向上すると推測される。
【0051】
カルボジイミド化合物(G)として、モノカルボジイミド化合物と多価カルボジイミド化合物を併用する場合において、モノカルボジイミド化合物の含有量と多価カルボジイミド化合物の含有量の質量比率は、10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、30/70〜70/30の範囲がより好ましい。モノカルボジイミド化合物と多価カルボジイミド化合物との質量比率が、この範囲にあると、極めて優れた湿熱耐久性が得られるという効果が奏される。
【0052】
モノカルボジイミド化合物としては、N,N´−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−クロルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−3,4−ジクロルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,5−ジクロルフェニルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−o−トルイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジシクロヘキシルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−p−クロルフェニルカルボジイミド、ヘキサメチレン−ビス−シクロヘキシルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジフェニルカルボジイミド、エチレン−ビス−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N´−ジフェニルカルボジイミド、N,N´−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N´−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−2,6−ジ−tert−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トルイル−N´−フェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´−ジ−p−トルイルカルボジイミド、N,N′−ベンジルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−フェニルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−フェニルカルボジイミド、N−オクタデシル−N′−トリルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N′−トリルカルボジイミド、N−フェニル−N′−トリルカルボジイミド、N−ベンジル−N′−トリルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−エチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−o−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−エチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2−イソブチル−6−イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,4,6−トリイソブチルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。中でも、湿熱耐久性の点から、N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドが好ましい。
【0053】
多価カルボジイミド化合物としては、ポリ(1,6−ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)カルボジイミド、ポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)カルボジイミド等が挙げられる。中でも、ポリ(4,4′−メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)カルボジイミド、ポリ(1,5−ジイソプロピルベンゼン)カルボジイミドが好ましい。
【0054】
カルボジイミド化合物(G)は、公知の方法により製造することができる。例えば、ジイソシアネート化合物の脱二酸化炭素反応により製造する方法が挙げられる。本発明において、カルボジイミド化合物(G)には、末端にイソシアネート基が残存していてもよい。
【0055】
本発明の黒色系樹脂組成物中のカルボジイミド化合物(G)の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましく、中でも0.5〜3質量%であることが好ましい。カルボジイミド化合物(G)の含有量が0.1質量%未満では、湿熱耐久性を向上させる効果に乏しい場合がある。一方、含有量が5質量%を超えると、耐熱性や耐衝撃性が低下する場合がある。
【0056】
また、本発明の樹脂組成物中には、上記したようなポリ乳酸樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂(C)、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)以外の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニルスルフィド樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
【0057】
本発明の樹脂組成物には、機械的強度や耐熱性の向上を目的として、ガラス繊維などの無機充填材を含有させてもよい。その含有量は、通常、最終的に得られる樹脂組成物100質量部に対し、1〜50質量部程度である。
【0058】
ガラス繊維としては、従来公知の任意のガラス繊維を用いることが可能である。また、樹脂との密着性を高めるために、ガラス繊維の表面に処理を施してもよい。本発明の樹脂組成物にガラス繊維を含有させる方法としては、押出機において、ホッパーから、あるいはサイドフィーダを用いて混練の途中から添加することができる。また、ガラス繊維をマスターバッチ加工することで、成形時にベース樹脂で希釈し、使用することもできる。
【0059】
本発明の樹脂組成物には、難燃性を付与する目的で、難燃剤を配合することが可能である。難燃剤としては、リン酸エステル、ホスフィン酸金属塩などのリン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機系難燃剤が挙げられる。これらの難燃剤を、2種以上併用することもできる。
【0060】
難燃剤の含有量は、最終的に得られる本発明の樹脂組成物100質量部に対して、5〜30質量部であることが好ましい。難燃剤の含有量が5質量部未満であると、樹脂組成物の難燃性が不十分となる場合がある。一方、難燃剤の含有量が30質量部を超えると、樹脂組成物の強度が低下する傾向がある。
【0061】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、耐光剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、充填材、結晶核剤等を添加することができる。
【0062】
熱安定剤や酸化防止剤としては、たとえばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物、ビタミンEが挙げられる。
【0063】
充填材としては、無機充填材、有機充填材が挙げられる。ガラス繊維以外の無機充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維等が挙げられる。
【0064】
有機充填材としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然に存在するポリマーやこれらの変性品が挙げられる。
【0065】
結晶核剤としては、無機結晶核剤、有機結晶核剤が挙げられる。無機結晶核材としては、タルク、カオリン等が挙げられる。
【0066】
有機結晶核材としては、ソルビトール化合物、安息香酸およびその化合物の金属塩、燐酸エステル金属塩、ロジン化合物、脂肪酸アミド化合物、芳香族アミド化合物、フェニルホスフォン酸金属塩、スルフォン酸金属塩等が挙げられる。
【0067】
なお、本発明の樹脂組成物に、これら各種の難燃剤を混合する方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができる。
【0068】
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。各々の原料を配合する方法は、特に限定されるものではなく、樹脂組成物中に各成分が均一に分散されている状態になればよい。具体的には、カルボジイミド化合物(G)を含有しない場合は、溶融混練の順番として、ポリ乳酸樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂(C)、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)および黒色系着色剤(E)、さらに必要に応じてコアシェル型アクリル系重合体(F)やその他の添加剤を、タンブラーあるいはヘンシェルミキサーを用いて均一にブレンドする。次いで、溶融混練してペレット化する方法が挙げられる。
【0069】
なお、カルボジイミド化合物(G)を含有する場合は、溶融混練の順番として、ポリ乳酸樹脂(A)、ポリカーボネート樹脂(B)、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合樹脂(C)、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(D)および黒色系着色剤(E)、さらに必要に応じてコアシェル型アクリル系重合体(F)やその他の添加剤を溶融混練させたあとに、カルボジイミド化合物(G)を溶融混練させると、樹脂組成物の物性、耐久性が向上しやすい。
【0070】
また、本発明の樹脂組成物の製造方法において、各々の原料を配合する方法としては、任意の有機溶媒に各原料を混合させて溶液を得、次いで、該溶液から溶媒を除く方法なども用いることができる。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、およびシート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。とりわけ、射出成形法が好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形、射出プレス成形等も採用できる。
【0072】
本発明の樹脂組成物に適した射出成形条件としては、成形上および性能上の問題がなければ、特に制限されないが、シリンダ温度を180〜260℃、より好ましくは190〜250℃の範囲とするのが適当である。また、金型温度は100℃以下にするのがよい。成形温度が低すぎると、成形体にショートが発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすくなったりする。逆に成形温度が高すぎると、樹脂組成物が分解し、得られる成形体の強度が低下したり、着色が発生したりする等の問題が発生する場合がある。
【0073】
本発明の樹脂組成物は、結晶化を促進させることにより、その耐熱性を高めることができる。結晶化を促進させる方法としては、例えば、射出成形時に、金型内での冷却にて結晶化を促進させる方法がある。その場合には、金型温度を樹脂組成物の結晶化温度±20℃で所定時間冷却するのが望ましい。離型性を考慮してさらにその後、金型温度を樹脂組成物のガラス転移温度以下まで下げてから、金型を開いて成形品を取り出してもよい。
【0074】
また、成形後に結晶化を促進させる方法としては、得られた成形体に再度、結晶化温度±20℃で熱処理することが好ましい。ガラス転移温度が複数存在する場合は、成形上、問題ないガラス転移温度を選択すればよい。
【0075】
本発明の樹脂組成物から得られる本発明の成形体としては、射出成形体、押出成形体、ブロー成形体、フイルム、繊維およびシートなどが挙げられる。特に、射出成形体、なかでも薄肉の射出成形体として好適に利用できる。また、これらの成形体は、電気・電子部品、機械部品、光学機器、建築部材、自動車部品および日用品など各種用途に利用することができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
1.評価項目
(1)メルトフローレート(MFR)
JIS規格K−7210(試験条件4)に従い、190℃、荷重21.2Nまたは220℃、荷重98Nで測定した。本発明においては、220℃、荷重98NにおけるMFRが10g/min以上であることが、成形加工性の面で好ましい。
【0078】
(2)極限粘度
1,1,2,2−テトラクロロエタンを測定溶媒として、濃度1g/dl、温度25℃の条件で測定した。
【0079】
(3)熱変形温度(DTUL)
得られた試験片(10×4mm)を用い、ISO規格75−1、2に従い、荷重1.8MPaの熱変形温度を測定した。荷重1.8MPaにおいて、60℃以上が望ましい。
【0080】
(4)曲げ強度
得られた試験片(10×4mm)を用い、ISO規格178に従い、変形速度1mm/分で荷重をかけ、曲げ強度を測定した。
【0081】
(5)衝撃強度(シャルピー衝撃強度)
得られたノッチ(V字型切込み)付き試験片を用い、ISO規格179−1eAに従い、シャルピー衝撃強度を測定した。本発明においては、実使用に供する観点から、シャルピー衝撃強度が9kJ/m以上であることが好ましい。
【0082】
(6)黒色外観
得られた試験片(10×4mm)について、携帯用鮮明度光沢度計(財団法人日本色彩研究所製、「PGD」)を用い、成形体の鮮明度光沢度を測定した。なお、鮮明度光沢度の値は、2.0〜0.1までの数字であり、数字が大きいほど優れる。本発明においては、鮮明度光沢度の値が1.0以上であると、黒色外観(漆黒感)に優れるものであると判断する。
【0083】
(7)耐湿熱性
得られた試験片(10×4mm)を用い、温度60℃、湿度95%RHの環境下で1500時間処理した後、(4)と同様に曲げ強度を測定した。そして、未処理品の曲げ強度の値に対する強度保持率を下記式で算出した。
強度保持率(%)=[(処理後試験片の曲げ強度)/(未処理の試験片の曲げ強度)]×100
【0084】
2.原料
(1)ポリ乳酸樹脂
ネーチャーワークス社製「NatureWorks 3001DK」(MFR:10g/10分、融点:168℃)
【0085】
(2)ポリカーボネート樹脂
住友ダウ社製「200−13」(極限粘度:0.49)
【0086】
(3)ABS樹脂
テクノポリマー社製、「ABS150」
【0087】
(4)メチルメタクリレート/スチレン共重合体
・メチルメタクリレートとスチレンの共重合体〔メチルメタクリレート/スチレン(モル比)=90/10、電気化学工業社製「KT−80」
・メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートとスチレンの共重合体〔メチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート/スチレン(モル比)=24/7/69 東亜合成社製「ARUFON UG−4040」
【0088】
(5)黒色系着色剤
・カーボンブラック(三菱化学社製、「#45B」)
・ニグロシン(オリエント化学社製、「PC−0850」)
【0089】
(6)コアシェル型アクリル系重合体
内層としてゴム層を有し、外層にアクリル系重合体がグラフトされた、コアシェル型重合体(三菱レイヨン社製、「メタブレンC−223A」)
【0090】
(7)モノカルボジイミド化合物
N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(ラインケミー社製、「スタバクゾールI」)
【0091】
(8)多価カルボジイミド化合物
日清紡社製、「LA−1」(イソシアネート基含有率:1〜3%)
【0092】
<実施例1〜17>
表1に示す割合で、各原料を二軸押出機(東芝機械社製、「TEM‐37BS」)に供給し、加工温度260℃で、溶融混練押出しをおこなった。なお、原料は、事前に全て混合して、押出機のホッパーに供給した。そして、吐出された樹脂組成物をペレット状にカッティングした。
【0093】
【表1】
【0094】
さらに、得られた樹脂組成物(ペレット状のもの)を、熱風乾燥機を用いて、80℃で5時間乾燥処理した後、射出成形機(東芝機械社製、「IS−80G型」)を用いて成形し、各種の性能評価に適したサイズの試験片を得た。いずれの試験片を得る際にも、シリンダ設定温度(射出温度)230℃で溶融して、射出圧力120MPa、射出時間15秒で、60℃(金型温度)の金型に充填し、30秒間保持した後、取り出した。
【0095】
<比較例1〜8>
表2に示す割合で、各原料を二軸押出機(東芝機械社製、「TEM‐37BS」)に供給し、加工温度260℃で、溶融混練押出しをおこなった以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。そして、得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に各種試験片を得た。
【0096】
【表2】
【0097】
実施例および比較例にて得られた樹脂組成物および成形体について、各種物性評価を行った結果を、まとめて表1および表2に示す。
【0098】
実施例1〜17で得られた樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性および成形加工性に優れ、漆黒感に顕著に優れるものであった。
【0099】
実施例2で得られた樹脂組成物は、コアシェル型アクリル系重合体が含有されていなかったため、耐衝撃性に改善の余地を残すものであったが、十分に実用に耐えうるものであった。
【0100】
カルボジイミド化合物を配合した実施例10〜15で得られた樹脂組成物は、1000hの湿熱処理後も優れた強度保持率を有しており、耐湿熱性に優れるものであった。また、実施例12と実施例13との対比から、カルボジイミド化合物の総量が同じ組成で比較した場合、所定の割合でモノカルボジイミドと多価カルボジイミドを併用したものは、それぞれを単独で使用した場合よりも耐湿熱性に優れていることが明らかである。
【0101】
実施例10で得られた樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂の含有量が本発明の好ましい範囲よりも少なかったため、耐衝撃性および耐熱性に改善の余地を残すものであったが、十分に実使用に耐えうるものであった。
【0102】
実施例16で得られた樹脂組成物は、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の含有量が好ましい範囲よりも少ないため、耐衝撃性に改善の余地を残すものであったが、十分に実使用に耐えうるものであった。
【0103】
実施例17で得られた樹脂組成物は、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の含有量が好ましい範囲よりも多いため、耐熱性に改善の余地を残すものであったが、十分に実使用に耐えうるものであった。
【0104】
比較例1で得られた樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が過少であり、ポリ乳酸樹脂の含有量が過多であった。そのため、耐熱性および耐衝撃性に劣るものであった。
【0105】
比較例2で得られた樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂が過少であり、ポリカーボネート樹脂が過多であった。そのため、環境負荷を低減する効果を有しておらず、またMFRの値も低いものとなった。
【0106】
比較例3で得られた樹脂組成物は、メチルメタクリレート/スチレン共重合体の含有量が過少であった。そのため、黒色系着色剤の含有量が同じである実施例1と比較すると、黒色外観に顕著に劣るものであった。これにより、本発明においては、黒色系着色剤を多量に添加することなく優れた漆黒感を有する樹脂組成物を得るために、メチルメタクリレート/スチレン共重合体と黒色系着色剤とを併用することが必須であることが明らかである。
【0107】
比較例4で得られた樹脂組成物は、メチルメタクリレート/スチレン共重合体の含有量が過多であった。そのため、耐衝撃性に顕著に劣るものとなった。
【0108】
比較例5で得られた樹脂組成物は、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の含有量が過少であったため、耐衝撃性に劣るものであった。
【0109】
比較例6で得られた樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂の含有量が過少であり、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の含有量が過多であった。そのため、耐衝撃性と耐熱性に劣るものとなった。
【0110】
比較例7で得られた樹脂組成物は、黒色系着色剤の含有量が過少であったため、黒色外観に顕著に劣るものであった。
【0111】
比較例8で得られた樹脂組成物は、黒色系着色剤の含有量が過多であったため、耐衝撃性に劣るものであった。