【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ロボティクス・メカトロニクス講演会2012(ROBOMEC2012)講演概要集1P1−F03「可変剛性省エネルギー制御法のピック&プレイス作業への適用」一般社団法人 日本機械学会
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
(構成)
図1は、この発明の実施の形態1であるスカラ型ロボットを用いたロボットシステムの構成を示す説明図である。同図に示すように、実施の形態1のロボット1は、一方の作業領域(PICK領域)からワーク(図示せず)をつまみ上げ、他方の作業領域である作業領域(PLACE領域)42に運ぶ作業を実施する。
【0014】
ロボット1はベース部10、アーム部11、アーム部12、関節部21、関節部22、可変弾性体31、及び可変弾性体32を主要構成部として有する。
【0015】
ベース部10は固定部13に固定され、X軸に沿って設けられる。アーム部11はベース部10に関節部21を介して取り付けられ、アーム部11は関節部21の中心部を回転軸としてXY平面上で回転可能である。
【0016】
アーム部12は関節部22を介してアーム部11に取り付けられ、アーム部12は関節部22の中心部を回転軸としてXY平面上で回転可能である。すなわち、実施の形態1におけるロボット1において,省エネルギー動作の対象となる関節数は関節部21及び関節部22の2つである。
【0017】
また、関節部21及び22に並列に弾性値が可変設定可能な可変弾性体31及び32が取り付けられる。すなわち、可変弾性体31の一端がベース部10に他端がアーム部11にそれぞれ固定されることにより、可変弾性体31はベース部10及びアーム部11間に設けられ、可変弾性体32の一端はアーム部11に他端はアーム部12にそれぞれ固定されことにより、可変弾性体32はアーム部11及びアーム部12間に設けられる。
【0018】
(原理)
図1において、ロボット1の手先(アーム部12の先端部分、正確にはアーム部12の先端部分に取り付けられる付加軸(図示せず))が到達する空間内の点のXY座標を、目標手先位置9α、目標手先位置9β、目標手先位置9γ及び平衡角度点Xeとする。なお、目標手先位置9αと目標手先位置9βとはX軸に対して対称な位置関係にある。
【0019】
平衡角度点Xeはx軸上の平衡角度点(中立点、アーム部11及びアーム部12の関節角q
1及び関節角q
2が“0”となった状態でX軸上に配置され、可変弾性体31及び32による弾性力が関節部21及び22に作用しなくなる点)である。関節部21及び22においてモータ等のアクチュエータ(図示せず)により回転トルクが印加されることにより、アーム部11及び12を関節部21及び22を回転軸として回転動作させることができる。なお、アクチュエータと関節の間に減速器(図示せず)を設けても良い。
【0020】
ロボット1のアーム部11及び12のリンク長をそれぞれl
1及びl
2とし、関節部21及び22によるベース部10及びアーム部11の延長線に対する角度である関節角(回転角)をそれぞれq
1及びq
2とし、関節部21及び22に並列に設けられた可変弾性体31及び32の弾性値をk
1及びk
2としている。
【0021】
なお、弾性値k
1及びk
2は可変設定可能である。可変設定する機構としては、例えば、実施の形態2で詳述する弾性体制御部15及び16に相当する構成が考えられる。
【0022】
可変弾性体31及び32は弾性値k
1及びk
2に従って関節角q
1及びq
2に比例した反力を発生し、各関節部21及び22には上記反力に応じたトルクが、アクチュエータの(モータ)トルクに重畳される。
【0023】
なお、可変弾性体31及び32がバネで構成される場合において、バネ定数は、バネに負荷を加えたときの、荷重を伸びで割った比例定数となる。一方、弾性値(剛性値)は,バネ定数に影響を与える物性のパラメータである。両者は比例関係にあるため、ほぼ同じ意味合いになる。
【0024】
このような構成において、ロボット1のアーム部12の先端部が平衡角度点Xeから目標手先位置9βに移動して静止し、付加軸(図示せず)を動かしてワークを把持し、その後、平衡角度点Xeを経由して、目標手先位置9αに移動する。その後、目標手先位置9αで静止して、付加軸を動かしてワークをリリースし、次に平衡角度点Xeを経由して目標手先位置9γ(目標手先位置9βと異なる)に移動して静止し、付加軸を動かしてワークを把持し、次に平衡角度点Xeを経由して、再び目標手先位置9αに移動する。さらに、目標手先位置9αで静止して、付加軸を動かしてワークをリリースする。このように、ロボット1はアーム部11及び12による回転動作によって、繰り返し実行される作業領域41,42間の往復運動を行うことができる。なお、目標手先位置9α〜9γへの静止時に関節角度を固定するためのブレーキを用いる態様も考えられる。
【0025】
実施の形態1のロボットシステムではロボット1の上述した作業領域41,42間で繰り返し実行される往復運動を想定している。この往復運動を実施するための、省エネルギー制御則を考える。ここでいう、省エネルギー化とは、アクチュエータを駆動するエネルギー投入量の最小化を図ることを言う。
【0026】
そして、ロボット制御部5は、後述する演算式により求めた省エネルギー制御則に沿って、繰り返し実行される上記往復運動が実施できるように、ロボット1を制御する。
【0027】
(制御則)
実施の形態1では、以下の式(1)で示すPD(比例微分)フィードバック制御則、式(2)で示す剛性調整則を用いる。
【0029】
ここで、エネルギー評価を行うにあたり、以下の式(3)を設定する。
【0031】
実施の形態1では、投入エネルギーJnをなるべく小さくすべく、関節部21及び22用のアクチュエータのトルクτを小さくできる制御を考える。
【0032】
式(1)〜式(3)で決定する条件下で、移動の目標地点(目標手先位置)をたどる目標軌道を得るため,関節部21及び22用のアクチュエータへのトルク指令、弾性値k
1及びk
2の変化に関する制御則を以下で示す式(4)を用いて計算する。実施の形態1では、可変弾性体31及び32の弾性値k
1及びk
2を全体のポテンシャルエネルギーが一定になるように変化させることを目標としている。その結果、目標軌道も定まる。
【0033】
なお、上記したポテンシャルエネルギーとは、
図1において、ロボット1のアーム部12の先端が目標手先位置9α(9β,9γ)に位置する場合における可変弾性体31及び32に蓄積された弾性エネルギーを意味する。
【0034】
まず、ロボットの運動方程式は、以下の式(4)で表される。
【0036】
実施の形態1において、可変弾性体31及び32それぞれの弾性値k
1及びk
2は、ロボットの先端が平衡角度点Xe(Y軸上の点)を通過するとき、その値が変更される。理想的には瞬間的に切り替えられるが、実際には,時間遅れを伴って切り替わる。
【0037】
上記弾性値k
1及びk
2の切り替え時の変化の遅れは可変剛性機構の特性によるため機構の弾性値変化の遅れを可変弾性体31及び32の固有周波数により確認する。可変剛性機構の応答遅れだけを見る場合、減数係数ζ=1にして以下の式(5)で示す伝達関数を設定する。ζ=1はオーバーシュートしないように制御則を設定することで実現できる。
【0039】
次に、入力をステップ応答にした出力を逆ラプラス変換から以下の式(6)として導入する。
【0041】
なお、式(5)及び式(6)において、ω
nは可変弾性体31及び32用に設定される固有周波数である。
図2は固有周波数ω
nによる出力の関係を示すグラフである。同図において、L1,L2,L3,L4及びL5は可変弾性体31及び32の固有周波数ω
n(Hz)が0.01,0.1,1,10,100の場合の応答特性を示している。同図に示すように、固有周波数ω
nが大きい程、出力応答性は良い。
【0042】
以下、ロボットの運動について、線形なダイナミクスから共振状態となるときの振幅比rと、角周波数ωを求めるべく、理想的には可変弾性体31及び32用のアクチュエータのトルクτが“0”となるバネ運動方程式となる式(7)及び式(8)を導出する。なお、式(7)及び式(8)において、k
1及びk
2は前述したように可変弾性体31及び32の弾性値であり、m
2はアーム部12の重量であり、I
1及びI
2はアーム部11及び12の慣性モーメントである。
【0044】
ここで、以下の式(9)及び式(10)に示すように、変数a,bを設定すると、振幅比rと角周波数ωは以下の式(11)及び式(12)で決定する。
【0047】
(目標振幅)
逆運動学による目標手先位置から目標関節角度、すなわち、振幅A
d1,A
d2を以下の式(13)及び式(14)から導出する。なお、振幅とは繰り返し実行される上記往復運動の実行時における関節角の変動幅を意味する。また、これらの式において、添え字の“d”は目標手先位置(
図1では、dはα〜γ(目標手先位置9α〜目標手先位置9γ)のいずれか)であり、添え字の“1”,“2”はアーム部11及び12を示しており、“1”がアーム部11、“2”がアーム部12を示している。また、前述したようにl
1及びl
2はアーム部11,12のリンク長を示しており、x
d及びy
dは目標手先位置dにおけるX座標及びY座標を示している。
【0049】
(目標振幅比)
各関節部21,22の目標振幅から弾性値k
1及びk
2を導出すべく、必要な関節部21,22間の目標振幅比rを以下の式(15)により求める。なお、目標角周波数は
図2の応答特性を考慮して予め決定される。なお、目標角周波数とは、例えば目標手先位置が目標手先位置9βの場合、上記往復運動時における平衡角度点Xe〜目標手先位置9β間(一方目標区間)の目標位置到達周波数を意味し、目標手先位置が目標手先位置9αの場合、上記往復運動時における平衡角度点Xe〜目標手先位置9α間(他方目標区間)間の目標位置到達周波数を意味する。
【0050】
この際、アーム部11及び12の回転動作時において、上記一方目標区間の目標角周波数ω(目標位置到達周波数)はアーム部11及び12間で同一に設定され、上記他方目標区間の目標角周波数ω(目標位置到達周波数)はアーム部11及び12間で同一に設定される動作条件が課される。
【0052】
(目標弾性値)
式(15)により決定した目標振幅比r及び予め決定された目標角周波数ωから、式(11)及び式(12)を解法することにより、以下の式(16)及び式(17)に示すように、振幅比rと目標角周波数ωとに基づき、目標角周波数ωを可変弾性体31及び32の固有振動数とする目標弾性値(k
1及びk
2)が算出される。また、上記一方目標区間及び上記他方目標区間の目標振幅比rが同一の場合、目標位置が変化しても滑らかな起動変化が可能となる。
【0053】
なお、式(16)及び式(17)では、目標手先位置9βの場合の弾性値k
1及びk
2を示している。すなわち、繰り返し実行される上記往復運動における平衡角度点Xe〜目標手先位置9βの区間(上記一方目標区間)に設定される可変弾性体31及び32の弾性値k
1及びk
2を示している。
【0054】
また、前述したように、目標手先位置9αは目標手先位置9βに対してX軸対象であるため、式(16)及び式(17)は、上記往復運動時における平衡角度点Xe〜目標手先位置9αの区間(上記他方目標区間)に設定される可変弾性体31及び32の弾性値k
1及びk
2に等しくなる。したがって、式(16)及び式(17)で示される弾性値が作業領域42の目標手先位置9αを目標位置とした場合の上記他方目標区間において設定すべき弾性値k
1及びk
2となる。
【0056】
その後、目標手先位置9βを他の目標手先位置に切り替える場合、例えば、作業領域41における目標手先位置9βから目標手先位置9γに切り替える場合、以下の式(18)及び式(19)を満足して、目標手先位置9β(9α)及び目標手先位置9γに位置するときのポテンシャルエネルギーを一定にする弾性値k
1及びk
2を以下の式(20)及び式(21)により設定する。なお、式(20)及び式(21)は目標手先位置9γとした場合の可変弾性体31及び32の弾性値k
1及びk
2を示している。すなわち、繰り返し実行される上記往復運動における平衡角度点Xe〜目標手先位置9γの区間(上記一方目標区間)に設定されるべき可変弾性体31及び32の弾性値k
1及びk
2を示している。
【0059】
(変更後目標角周波数)
同様に、作業領域41における目標手先位置が目標手先位置9βから目標手先位置9γに切り替わる場合、式(22)に示すように、目標手先位置9β(9α)及び目標手先位置9γ間のポテンシャルエネルギーが一定になるように、式(20)及び式(21)に従い弾性値を変化させたときの目標角周波数を求める。なお、式(22)は目標手先位置を目標手先位置9γとした場合の目標角周波数を示しており、この目標角周波数が可変弾性体31及び32の固有周波数となる。
【0061】
(目標関節角度軌道)
上述した式(13)〜式(22)に基づき、以下の式(23)に示すように、目標軌道を作成することができる。なお、式(23)において、q
β1及びq
β2は目標手先位置9βとした場合の関節部21及び22の関節角度(回転角度)、q
γ1及びq
γ2は目標手先位置を目標手先位置9γとした場合の関節部21及び22の関節角度を示している。
【0063】
以上により、目標軌道を実現する制御則の設計ができる。これにより、目標軌道も定まる。
【0064】
(制御動作)
このように、実施の形態1では、一方の作業領域41内における目標手先位置9β,9γ(一方目標位置)と他方の作業領域42内における目標手先位置9α(他方目標位置)との間を、平衡角度点Xeを通過させながら、アーム部11及び12を回転させて上記往復運動させる際、弾性値k
1及びk
2は以下のように設定される。
【0065】
ロボット制御部5により、上記一方目標区間(作業領域41〜平衡角度点Xe)において共振動作可能な弾性値k
1及びk
2が一方目標位置用弾性値として設定され、上記他方目標区間(作業領域42〜平衡角度点Xe)において共振動作可能な弾性値k
1及びk
2が他方目標位置用弾性値として設定される。
【0066】
例えば、目標手先位置9αから目標手先位置9γに移動する場合、目標手先位置9αから平衡角度点Xeまでの区間(上記他方目標区間)において可変弾性体31及び32の弾性値が上記他方目標位置用弾性値として弾性値k
α1,k
α2(=k
β1,k
β2)に設定され、平衡角度点Xeから目標手先位置9γまでの区間(上記一方目標区間)において可変弾性体31及び32の弾性値が上記一方目標位置用弾性値として弾性値k
γ1,k
γ2に設定される。
【0067】
そして、上述した目標角周波数の動作条件下で、ロボット制御部5はロボット1を以下のように制御する。
【0068】
ロボット制御部5は、ロボット1の上記往復運動の平衡角度点Xeの通過時において、上記一方目標区間は上記一方目標位置用弾性値となり、上記他方目標区間は上記他方目標位置用弾性値となるように弾性値k
1及びk
2の切り替え制御を行う。なお、ロボット制御部5は可変弾性体31及び32の弾性値設定、目標軌道に沿ったアクチュエータの駆動制御等、ロボット1に関するあらゆる制御が可能である。
【0069】
したがって、目標手先位置9αから平衡角度点Xeまでの区間(上記他方目標区間)において可変弾性体31及び32は共振動作を実行し、かつ、目標手先位置9γから平衡角度点Xeまでの区間(上記一方目標区間)においても可変弾性体31及び32は共振動作を実行する。
【0070】
すなわち、空気抵抗、関節部21及び22における回転時に摩擦抵抗等を無視した場合、上記回転動作を実現する駆動源である関節部21及び22を駆動するアクチュエータによるトルクτを“0”にして、ロボット1に上記往復運動を実行させることができる。
【0071】
その結果、実施の形態1のロボット1は、繰り返して上記往復運動を実行する場合、関節部21及び22を駆動するアクチュエータの消費エネルギーを大幅に削減することができる効果を奏する。
【0072】
さらに、実施の形態1では、上記一方目標位置用弾性値と上記他方目標位置用弾性値とは、上記一方目標位置に到達時の可変弾性体31及び32に蓄積されたポテンシャルエネルギー(一方目標位置用ポテンシャルエネルギー)と、上記他方目標位置に到達時の可変弾性体31及び32に蓄積されたポテンシャルエネルギー(他方目標位置用ポテンシャルエネルギー)とが同一になるように設定されている。
【0073】
したがって、実施の形態1のロボットシステムは、上記一方目標位置用ポテンシャルエネルギーと上記他方目標位置用ポテンシャルエネルギーとが同一になるように上記一方目標位置用弾性値及び上記他方目標位置用弾性値を設定することにより、ロボット1によって繰り返し実行される往復運動のさらなる省エネルギー化を図ることができる。
【0074】
<実施の形態2>
図3は、この発明の実施の形態2であるスカラ型ロボットを用いたロボットシステムで用いられるロボットの構成を示す説明図である。
【0075】
関節部21及び22に並列に可変弾性体31及び32を設けた場合において、可変弾性体31及び32の弾性力が関節部21及び22による回転動作に影響を与えないように、影響度合“0”状態に設定できる弾性力除去機能を有するのが実施の形態2のロボット2である。なお、実施の形態2においても、実施の形態1と同様、ロボット2はロボット制御部5相当の制御部によって制御される。
【0076】
同図に示すように、ベース部10,アーム部11間において、ベース部10の固定点27に可変弾性体31(バネ)の一端を固定し、弾性体制御部15によって可変弾性体31の他端を関節部21の中心部を含むアーム部11上の移動区間D15内を移動可能にしている。
【0077】
具体的には、弾性体制御部15はモータ23、ネジ25、及びナット29で構成され、可変弾性体31の他端である吊り元に接続されたナット29がネジ25に取り付けられている。ネジ25はモータ23の駆動により回転され、ネジ25の回転によりナット29、すなわち、可変弾性体31の他端は移動区間D15間を移動可能となる。
【0078】
同様にして、アーム部11,アーム部12間において、アーム部12の固定点28に可変弾性体32(バネ)の一端を固定し、弾性体制御部16によって可変弾性体32の他端を関節部22の中心部を含むアーム部11上の移動区間D16内を移動可能にしている。
【0079】
弾性体制御部16は弾性体制御部15と同様、モータ24、ネジ25、及びナット30で構成され、可変弾性体32の他端である吊り元に接続されたナット30がネジ26に取り付けられる。ネジ26はモータ24の駆動により回転され、ネジ26の回転によりナット30、すなわち、可変弾性体32の他端は移動区間D16間を移動可能となる。
【0080】
したがって、弾性体制御部15及び16により、ナット29及びナット30を関節部21及び22の中心点に固定することにより、可変弾性体31及び32が関節部21及び22による回転動作に影響を与えない、影響度合“0”状態に設定できる。
【0081】
このように、実施の形態2のロボット2における弾性体制御部15及び16は弾性力除去機能を有することにより、可変弾性体31及び32の他端を関節部21及び22の中心点に固定して可変弾性体31及び32の弾性力による回転動作への影響度合を“0”状態に設定することができる。
【0082】
したがって、実施の形態2のロボット2は、上記影響度合“0”状態に設定することにより、関節部21及び22に並列にバネ等の弾性体を設けない従来のロボットと同様、関節部21及び22の駆動用に設けたアクチュエータにより、任意の軌道上を加減速移動し、任意の目標手先位置で停止することができる。
【0083】
一方、弾性体制御部15及び16により、可変弾性体31及び32の他端(ナット29及び30)を関節部21及び22の中心点でなく、移動区間D15及びD16上の所望位置に設定することにより、可変弾性体31及び32の弾性値k
1及びk
2をそれぞれ所望の弾性値に設定することができる。
【0084】
すなわち、実施の形態1のロボット1のように、実施の形態2のロボットを制御することにより、省エネルギー化を図った往復運動を行なうことが出来る。
【0085】
このように、実施の形態2のロボット2は、高速動作が必要なときには、弾性体制御部15及び16の弾性力除去機能により、可変弾性体31及び32を影響度合“0”にして、アクチュエータを通常のロボット同様に制御して上記往復運動の高速化を図ることができる。
【0086】
一方、省エネルギー動作が必要になれば、弾性体制御部15及び16による弾性力除去機能を発揮させずに、可変弾性体31及び32の弾性値を実施の形態1と同様の制御則で変化させ、アクチュエータへのエネルギー投入を抑制して、省エネルギー化を図った上記往復運動を実行することができる。
【0087】
このように、実施の形態2は、弾性体制御部15及び16による可変弾性体31及び32の他端の位置を設定することにより、高速化及び省エネルギー化のうち所望する態様で上記往復運動をロボット2に実行させることができる。
【0088】
なお、
図3に示した構成以外にも、可変弾性体31及び32の他端(吊り元)とアーム部11の接続点との間にクラッチを設け、接続・非接続を切り替え、接続状態時は省エネルギー化、非接続状態時には高速化を図った上記往復運動を実行させる構成も考えられる。
【0089】
上述したように、実施の形態2のロボットシステムにおいて、ロボット2は弾性体制御部15及び16を有している。このため、実施の形態1のロボットシステムと同様、省エネルギー化した上記往復運動をロボット2に実行させたり、上記弾性力除去機能により可変弾性体31及び32の弾性力による回転動作への影響度合を“0”にして、ロボット2を可変弾性体31及び32が存在しない構成のロボットとして上記往復運動の高速化を図ったりすることができる。
【0090】
<実施の形態3>.
実施の形態3のロボットシステムは、実施の形態1のロボットシステムの動作モードに加え、アーム部12の先端に関し、任意の作業目標手先位置・姿勢(実施の形態1で述べた目標手先位置9α〜9γ等)を教示する教示モードを備える。
【0091】
図4は、この発明の実施の形態3であるスカラ型ロボットを用いたロボットシステムの構成を示す説明図である。実施の形態3のロボット3は、実施の形態2のロボット2と同様、弾性体制御部15及び16に相当の弾性値制御機能(弾性力除去機能を含む)を有しており、実施の形態2では、実施の形態1のロボット制御部5に相当するロボット制御部6内にプログラム記憶手段として記憶部7を有している。記憶部7は教示モード用に設けられる。
【0092】
実施の形態2のロボットシステムは、いわゆるダイレクトティーチ、あるいは、ロボット制御部6に有線あるいは無線で接続されるティーチングペンダント8によるリモート操作により、ロボット3を、所望する作業目標手先位置に移動させる。ダイレクトティーチの場合は実施の形態2のロボット2の弾性体制御部15及び16相当の制御部を制御し、弾性力除去機能を発揮させ可変弾性体31及び32の弾性力の回転動作への影響度合“0”にして行う。また、ダイレクトティーチの場合は手動で関節位置を変更することになる。リモートティーチの場合は、アクチュエータに微少動作指令を加えて少しずつ関節位置を駆動させることになる。教示点は初めて教える場合と、教示点を追加する場合があるが、いずれでも同様に追加できる。
【0093】
そして、ロボット3の先端に取り付けられたエンドエフェクタあるいはロボットハンドが、ロボット3の作業空間内に存在する目標手先位置および目標姿勢に到達するように、ロボット3の各関節角度、関節位置を動かして行き、目標に到達したときに静止させる。目標手先位置に到達したことは、作業者の目視、あるいはセンサの指示値により確認することができる。
【0094】
目標手先位置に到達した場合に、ロボットの関節部21及び22それぞれの関節角q
1及びq
2を、プロクラム記憶手段である記憶部7に記憶させる。記憶させる目標手先位置が目標手先位置9α、〜9γ(以下、単に「α,β,γ」と略記する場合あり)の3点の場合は、同じ作業を3回繰り返し、関節部21及び22それぞれのqα、qβ、qγが記憶部7に記憶させられる。
【0095】
つぎに、目標手先位置9α〜9γを巡回するシーケンスを記憶部7に記憶させる。これは、ロボット言語による記述、あるいはフローチャートによる記述を用いる。ロボット言語の場合は、{mov α,mov β,mov α,mov γ}というように作業者がロボット制御部6上あるいは他のパソコン上で実行可能なテキストエディタソフトウェア等を用いて作成したテキストデータを記憶部7に記憶させることで実現される。
【0096】
その結果、目標手先位置に関し、{α→β→α→γ→α→β・・・}という動きを繰り返すことになる。フローチャートの場合は、作業者がロボット制御部6あるいは他のパソコン上のフローチャート専用エディタソフトウェアで作成した{α→β→α→γ}と記したフローチャートのデータを記憶部7に記憶させる。
【0097】
このとき、各目標手先位置への移動は、省エネモード(可変弾性体31及び32を有効に機能させるモード)で移動するか通常モード(高速動作可能に可変弾性体31及び32の回転動作への影響度合を“0”にするモード)で移動するかも併せて指定する。あるいは、ロボットプログラム中で省エネモードと通常モードの切り替え宣言を記述しておくこともできるものとする。例えば次のとおり、{mov α,省エネモード;mov β,省エネモード;mov α,省エネモード;mov γ,省エネモード}と記載してもよく、ロボットシステムのロボット制御部6用の操作盤にモード切替スイッチを設けても良い。
【0098】
すべての目標手先位置の教示完了後、あるいは新規目標手先位置の追加教示完了後、ロボット3のアーム部11及び12の共振動作上の平衡角度点Xe(実施の形態1のように、アーム部11及び12がX軸に沿って伸びている状態等)が求められ、アーム部11及び12が平衡角度点Xeを通過する際に、可変弾性体31及び32の弾性値k
1及びk
2を変化させるが、弾性値の値及び変化させる順番を計算で求めて、記憶部7に記憶させる。具体的には、アーム部11及び12用の関節部21及び22に並列に設けられる可変弾性体31及び32の弾性値k
1及びk
2を以下のように切り替えることが、記憶部7に記憶させる。
【0099】
可変弾性体31の弾性値を{k
α1→k
β1→k
α1→k
γ1}で変化させ、可変弾性体32の弾性値を{k
α2→k
β2→k
α2→k
γ2}で変化させる。
【0100】
教示モードにおける目標手先位置の記憶と各種計算が完了すると、ロボット制御部6の制御下で通常モードあるいは省エネモードでロボット3による上記往復運動を実行することができる。
【0101】
このように、実施の形態3のロボットシステムは、教示モードにて確認しながら他方目標位置(目標手先位置9α)及び一方目標位置(目標手先位置9β,9γ)を設定して、省エネルギー化あるいは高速化を図った、他方目標位置及び一方目標位置間の往復運動をロボットに実行させることができる。
【0102】
(その他)
ロボット制御部5及びロボット制御部6による、弾性値k
1及びk
2等の設定処理、ロボット1〜3の制御動作等の一連の処理は、例えば、ソフトウェアに基づくCPUを用いたプログラム処理によって実行される。
【0103】
実施の形態3のロボットシステムにおけるロボット制御部6内の記憶部7は、HDD、DVD、メモリなどによって構成される。
【0104】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。