(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
態様および実施形態は、一般的に、外部キャビティを使用してレーザ・ソースを高パワーおよび高輝度にスケーリングする分野に関し、更に特定すれば、一次元または二次元レーザ・ソース双方を使用する外部キャビティ・ビーム結合方法および装置に関するものである。一実施形態では、外部共振システムは、一次元または二次元レーザ・エレメント、光学システム、分散性エレメント、および部分的に反射するエレメントを含む。光学システムとは、2つの基本的な機能を実行する1つ以上の光学エレメントである。第1の機能は、ビーム結合次元に沿って全てのレーザ・エレメントを分散性エレメント上で重ね合わせることである。第2の機能は、非ビーム結合次元に沿った全てのエレメントが、出力カプラに対して垂直に伝搬していることを確保することである。この光学システムができるだけ少ない損失を生ずることの確証を得るために、注意しなければならない。そういうことから、これら2つの機能によって、1つの共振キャビティ(resonance cavity)を全てのレーザ・エレメントに使用可能にする。他の実施形態では、WBC外部共振システムは、波長安定化一次元または二次元レーザ・エレメントと、光学システムと、分散性エレメントとを含む。一次元または二次元波長安定化レーザ・エレメントは、一意の波長を有し、波長チャープ体積型ブラッグ格子からのフィードバックを使用するレーザ・エレメント、分散フィードバック(DFB)レーザ・エレメント、または分散ブラッグ反射(DBR)レーザ・エレメントというような、種々の手段を使用して得ることができる。ここで、光学システムの主要な機能は、全てのビームを分散性エレメント上に重ね合わせることである。波長安定レーザ・エレメントの外部には出力カプラ・ミラーがないので、非ビーム結合次元に沿って平行なビームを有することは、重要性が低くなる。更に、態様および実施形態は、高パワーおよび/または高輝度多重波長外部共振レーザに関し、非常に低い出力パワーから数百そして数メガワットもの出力パワーの重ね合わせビームまたは同軸ビームを発生する。
【0010】
具体的には、態様および実施形態は、これらの外部共振システムのレーザ・エレメントによって放出されたビームを操作し、WBC方法を使用してこれらを結合して所望の出力プロファイルを生成する方法および装置に関する。波長ビーム結合方法は、非対称的なビーム・エレメントをそれらの各遅相軸および進相軸次元を横切って結合するために開発されてきた。本発明が提供しようとする1つの利点は、遅相および進相軸WBC方法、ならびにこれら2つの混成において使用するために、入力ビームを空間的にまたは向きによって、選択的に再構成する能力である。他の利点は、他の入力ビームに対して固定位置関係があるときに、入力ビームを選択的に再構成することである。
【0011】
図1Aは、基本的なWBCアーキテクチャを示す。これは、米国特許第6,192,062号、および第6,208,679号の基本である。この特定の図では、WBCは、配列次元即ち遅相次元に沿って、ブロード・エリア・エミッタに対して行われる。個々のビーム104は、図では、破線または1本の線によって示されており、ビームの長さ次元、即ち、長い方の次元がブロード・エリア・エミッタに対して配列次元、即ち、遅相分散次元を表し、高さ次元、即ち、短い方の次元は、進相分散次元を表す。(
図8の左側も参照のこと。)この関連技術では、4つのエミッタを有するバー102が示されている。これらのエミッタは、各放出ビーム104の遅相次元端が互いに1つの行に沿って横に一直線状になるように、整列されている。行のことをアレイと呼ぶこともある。しかしながら、いずれのレーザ発振エレメント(lasing element)でも使用してもよく、特に、広い利得帯域幅を有するレーザ・エレメントを使用してもよいと考えられる。通例、進相分散次元に沿って各ビームを平行化するために、平行化レンズ106が使用される。場合によっては、平行化光学系を別々の進相軸平行化レンズおよび遅相軸平行化レンズで構成することができることもある。通例、変換光学系108が、入力正面ビュー112によって示されるように、WBC次元110に沿って各ビームを結合するために使用される。変換光学系108は、円筒形または球面レンズあるいはミラーとするとよい。そして、変換光学系108は、結合されたビームを分散性エレメント114(ここでは、反射回折格子として示されている)上に重ね合わせる。一次回折ビームは、部分反射ミラーに入射する。レーザ・エレメントのバック・ファセットと部分反射ミラーとの間に、レーザ・キャビティが形成されている。したがって、結合ビームは、次に、単一出力プロファイルとして、出力カプラ116上に伝えられる。次いで、この出力カプラは、出力正面ビュー118によって示されるように、結合ビーム120を透過させる。尚、出力カプラがないシステムを作成することも考えられる。例えば、波長安定レーザ・エレメントを備え、各レーザ・エレメントが一意の波長を有する一次元または二次元システムを、いくつかの方法で設けることができる。1つのシステムまたは方法では、ビーム結合次元に沿って、外部波長チャープ体積型ブラッグ格子からのフィードバックがあるレーザ・エレメントを使用する。他のものは、内部分散フィードバック(DFB)レーザ・エレメントまたは内部分散ブラッグ反射(DBR)レーザ・エレメントを使用する。これらのシステムでは、分散性エレメントから透過される単一出力プロファイルは、118と同じプロファイルを有する。出力カプラ116は、部分的に反射型のミラーまたは表面、あるいは光学皮膜でもよく、ダイオード・アレイ102の中にある全てのレーザ・エレメントに対して共通のフロント・ファセットとして作用することができる。放出されたビームの一部は、反射されて、この外部共振システム100aにおけるダイオード・アレイ102の光学利得および/またはレーザ発振部分に戻される。外部キャビティとは、各レーザ・エミッタの放出アパーチャまたはファセット(表記せず)からある距離だけ副ミラーが変位されているレーザ発振システムである。一般に、外部キャビティでは、放出アパーチャまたはファセットと出力カプラまたは部分的反射面との間に、追加の光学エレメントが配置されている。
【0012】
同様に、
図1Bは、4つのエミッタを有するレーザ・ダイオード・バーのスタック(積み重ね)を示し、これらのバーは3つ上下にスタックされている(
図8の左側も参照のこと)。
図1Aと同様に、この実施形態ではエミッタの二次元アレイである、
図1Bの入力正面ビュー112は、組み合わせられて出力正面ビュー118またはエミッタ120の単一列を生成する。外部キャビティ100bにおいて放出されたビームは、配列次元に沿って、結合された。ここで、変換光学素子108は、アレイに沿ってビームを結合するために使用される円筒形レンズである。しかしながら、全てのビームを分散性エレメント上で重ね合わせるように光学エレメントを構成し、非ビーム結合次元に沿ったビーム全てが,出力カプラに対して垂直に伝搬していることの確証を得るように、これらの光学エレメントまたは光学システムの組み合わせを使用することもできる。このような光学システムの単純な例をあげるとすれば、ビーム結合次元に沿ってしかるべき焦点距離を有する単一円筒形レンズ、および非ビーム結合次元に沿って無限焦点テレスコープを形成する2枚の円筒形レンズであり、光学システムは画像を一部反射ミラー上に投影する。同じ機能を遂行するために、この光学システムの多くの変形を設計することができる。
【0013】
図1Bの配列次元は、また、マルチモード・ダイオード・レーザ・エミッタの場合における各放出ビームの遅相次元と同じ軸である。このため、このWBCシステムを遅相軸結合と呼ぶこともでき、結合次元はビームの同じ次元となる。
【0014】
対照的に、
図1Cは、120で示されるように、エレメントの二次元アレイを形成するレーザ・ダイオード・アレイ102のスタック150を示し、
図1Aおよび
図1Bにおいて配列次元に沿って結合する代わりに、WBC次元が、ここでは、エミッタのスタック(積み重ね)次元に従う。ここでも、スタック次元は、放出されるビームの各々の進相軸次元と整列されている。ここでは、入力正面ビュー112は、出力正面ビュー118を生成するために組み合わせられており、出力正面ビュー118ではエミッタの単一列120が示されている。
【0015】
3つの構成には全て種々の欠点がある。
図1Aおよび
図1Bに示した構成の主な欠点の1つは、ビーム結合が配列次元に沿って行われることである。したがって、外部キャビティの動作は、ダイオード・アレイの欠陥によって大きく左右されることになる。ブロード・エリア半導体レーザ・エミッタが使用される場合、ビーム結合が進相軸次元に沿って行われる場合程、WBCシステムにおけるスペクトル利用は効率的でない。
図1Cに示した構成の主な欠点の1つは、外部ビーム整形またはビーム対称化が、ファイバへの効率的な結合には必要になることである。多数のエミッタを有する高パワー・システムに必要とされるビーム対称化光学素子は、複雑で厄介(non-trivial)となる場合もある。
図1Cの他の欠点は、出力ビームの品質が1つのレーザ・バーのそれに制限されることである。典型的な半導体またはダイオード・レーザ・バーは、バー毎に19から49個のエミッタを有し、1つの次元ではほぼ回折限界のビーム品質を有し、配列次元に沿って数百倍回折制限を受けるビーム品質を有する。ビーム対称化の後、出力ビーム120を結合することができるファイバは、せいぜい100μm/0.22開口数(NA)程度である。更に高いビーム品質を得るためには、エミッタ・バーの数を減らすことが必要となる。例えば、50μm/0.22NAファイバに結合するためには、5エミッタ出力ビームが必要となる。多くの工業用レーザの用途では、更に高い輝度のレーザ・ビームが要求される。例えば、用途の中には、19または49個の代わりに、2エミッタ出力ビームが必要とされる場合もある。2エミッタ出力ビームは、設計許容範囲および余裕が遙かに大きくコアの直径が小さいファイバに結合することができる。コア直径およびNAにおけるこの追加の余裕は、高パワー(kW−級)のパワー・レベルにおける信頼性の高い動作には重要である。5−エミッタ・バーまたは2−エミッタ・バーを調達することは可能であるが、標準的な19または49エミッタ・バーと比較すると、バー当たりのパワーが著しく減少するために、コストおよび複雑さが遙かに高くなる。本開示では、以上の欠点全てを解消する方法を開示する。以前の図、即ち、
図1Aから
図1Cは、予め配列されている、即ち、固定位置のレーザ・エミッタのアレイおよびスタックを示した。一般に、アレイまたはスタックは、特定の一次元または二次元プロファイルを生成するために、機械的または光学的に配置される。つまり、レーザ・エレメントの予め設定されている条件を記述するために、固定位置が使用されたのであり、多数のエミッタまたはファイバ・レーザがV字形の溝に機械的に離間されている半導体またはダイオード・レーザ・バー、更にはエミッタと共に固定位置にパッケージングされてくる他のレーザ・エミッタの場合のように、レーザ・エレメントは互いに対して機械的に固定される。あるいは、固定位置は、レーザ・エミッタが動かないWBCシステムでは、レーザ・エミッタの固着場所(secured placement)を指す場合もある。予め配列する(pre-arranging)とは、WBCシステムの入力プロファイルとして使用される光学アレイまたはプロファイルに言及する。多くの場合、予め配列されている位置は、機械的に固定された位置にエミッタが構成された結果である。また、予め配列されたと固定位置は、相互交換可能に使用されてもよい。固定位置または事前配置光学システムの例を、
図5A〜
図5Cに示す。
【0016】
図5A〜
図5Cは、先行技術の光学的に配列された一次元および二次元アレイの図示例を指す。
図5Aは、個々の光学エレメント510を光学的に配列したスタックを示す。ミラー520は、光学エレメント530からの光ビームを配列するために使用され、各光学エレメント530は近場画像540を有し、個々の光学エレメント510のスタック560(水平次元)に対応する画像550(各光学エレメント530からの光ビームを含む)を生成する。光学エレメント500をスタック状に配列しなくてもよいが、ミラー520は、画像550が光学エレメント510のスタック560に対応するように現れるように、光ビームを配列する。同様に、
図5Bにおいて、ミラー520は、ダイオード・バーまたはアレイ575のスタック560に対応する画像550を形成するために、ダイオード・バーまたはアレイ570からの光ビームを配列するために使用することができる。この例では、各ダイオード・バーまたはアレイ570は、当該バーまたはアレイの中にある個々のエレメント各々からの光ビーム545を含む、近場画像540を有する。同様に、ミラー520も、
図5Cに示すように、画像550に対応する個々のスタック585の明白なより大きな全体的なスタック560に、レーザ・スタック580を光学的に配列するために使用することができる。
【0017】
先行技術において「アレイ(配列)次元」という用語を定義するために使用されている呼称(nomenclature)は、並列状に配置された1つ以上のレーザ・エレメントを指し、この場合、配列次元も遅相軸に沿っている。この呼称の理由の1つは、多数のエミッタを有するダイオード・バーは、このように配列されることが多く、各ビームの遅相次元が行即ちアレイに沿うように各エミッタが並列状に整列されているからである。本願に限って言えば、アレイまたは行は、1つの次元を横切って配列されている個々のエミッタまたはビームを指すこととする。アレイのエミッタの個々の遅相または進相次元も配列次元に沿って整列されてもよいが、この整列は想定されないものとする。本明細書において記載される実施形態の中には、アレイ即ち行に沿って整列された各ビームの遅相次元を個別に回転させるものもあるので、これは重要である。加えて、ビームの遅相軸とは、ビームの広い方の次元を指し、通例、最遅相発散次元(slowest diverging dimension)でもあり、一方進相軸は、ビームの狭い方の次元を指し、通例、最進相発散次元となる。また、遅相軸は、単一モード・ビームも指すこともある。
【0018】
加えて、先行技術の中には、「スタック(積み重ね)またはスタック(積み重ね)次元」を2つ以上の互いにスタックされたアレイと定義するものがあり、この場合、ビームの進相次元は、スタック次元と同じである。これらのスタックは、予め機械的または光学的にスタックされたものである。しかしながら、本願に限って言えば、スタックとは、ビームまたはレーザ・エレメントの列を指し、進相次元に沿っていてもまたは沿っていなくてもよい。特に、先に論じたように、個々のビームまたはエレメントをスタック即ち列内部で回転させることができる。
【0019】
実施形態の中には、各放出ビームの配列次元および遅相次元が最初に同じ軸を横切って方向付けられていることを注記することが有用である場合もあるが、これらの次元は、本願において記載するように、互いに対してあるオフセット角度をなして方向付けられるのであってもよい。他の実施形態では、配列次元およびエミッタの一部のみが、アレイに沿って配列されているか、またはWBCシステムにおけるある位置において完全に同じ軸に整列されている。例えば、ダイオード・バーの配列次元は、配列次元に沿って配置されたエミッタを有することができるが、スマイル(多くの場合、バーの変形または反り)のために、個々のエミッタの遅相放出次元は、配列次元から多少歪んでいるかまたはずれている。
【0020】
一般的な「市販の既製品」即ちCOTS高パワー・レーザ・ダイオード・アレイおよびスタックは、ブロード・エリア半導体またはダイオード・レーザ・エレメントに基づく。通例、これらのエレメントのビーム品質は、進相軸に沿って回折制限を受け、更にレーザ・エレメントの遅相軸に沿って何倍も回折制限を受ける。尚、以下の論述は主に単一レーザ・ダイオード、ダイオード・バー、およびダイオード・スタックに言及すると考えればよいが、本発明の実施形態は、レーザ・ダイオードには限定されず、ファイバ・レーザおよび増幅器、個別にパッケージングされたダイオード・レーザ、量子カスケード・レーザ(QCL)、テーパー型レーザ、リッジ導波路(RWG)レーザ、分散フィードバック(DFB)レーザ、分散ブラッグ反射(DBR)レーザ、格子結合表面放出レーザ、垂直キャビティ表面放出レーザ(VCSEL)を含む他のタイプの半導体レーザ、ならびにその他のタイプのレーザおよび増幅器を含む、多くの異なるタイプのレーザ・エミッタとでも使用できることは認められてしかるべきである。
【0021】
本明細書において記載する実施形態の全ては、ダイオード・レーザ単一エミッタ、バー、およびスタック、ならびにこのようなエミッタのアレイのWBCに適用することができる。ダイオード・レーザ・エレメントのスタックを採用するこれらの実施形態では、機械的スタックまたは光学的スタック手法を採用することができる。加えて、HRコーティングがダイオード・レーザ・エレメントのファセットにおいて指示されている場合、平行化光学素子およびバルクHRミラーを含むがこれらに限定されない外部キャビティ光学コンポーネントがARコーティングと組み合わせて使用されるのであれば、HRコーティングをARコーティングと置き換えることができる。この手法は、例えば、ダイオード増幅エレメントのWBCと共に使用される。また、遅相軸は、レーザ放出の劣等ビーム品質方向(worse beam quality direction)としても定義される。遅相軸は、通例、ダイオード・レーザ・エレメントの放出アパーチャの平面において半導体チップと平行な方向に対応する。進相軸は、レーザ放出の優等ビーム品質方向(better beam quality direction)として定義される。進相軸は、通例、ダイオード・レーザ・エレメントの放出アパーチャの平面において半導体チップに対して垂直な方向に対応する。
【0022】
単一半導体チップ・エミッタ1000の一例を
図10に示す。アパーチャ1050は、初期ビーム・プロファイルも示す。ここでは、1050における高さ1010は、スタック次元に沿って測定される。1050における幅1020は、配列次元に沿って測定される。高さ1010は、1050において、幅1020よりも短い次元である。しかしながら、高さ1010の方が速く広がり、即ち、ビーム・プロファイル1052に発散する。ビーム・プロファイル1052は、初期アパーチャ1050からある距離だけ離れたところに現れる(place)。このように、進相軸はスタック次元に沿っている。幅1020は、幅1040によって示されるように、 高さ1030よりも遅いレートで広がる、即ち、発散し、高さ1030よりも小さい寸法となる。このように、ビーム・プロファイルの遅相軸は、配列次元に沿っている。図示しないが、1000のような多数の単一エミッタを、配列次元に沿って並列にバー状に配置することができる。
【0023】
ビームを主にそれらの遅相軸次元に沿って結合することに対する欠点には、指向誤差、スマイル、およびその他の位置ずれによって生ずるレーザ発振非効率によるパワーおよび輝度の低下を含むことができる。
図2に示すように、スマイルのあるレーザは、ダイオード・レーザ実装プロセスが原因でときとして中央部が反ってしまうダイオード・アレイによって生ずることが多く、アレイに沿った個々のエミッタが、スマイルの湾曲を表す典型的な湾曲を形成する。指向誤差とは、ダイオード・バーに沿った個々のエミッタが、放出点から垂直以外の角度でビームを放出することによって生ずる。指向誤差は、スマイルに関係があると考えられる。例えば、スマイルのあるダイオード・レーザ・バーが水平進相軸平行化レンズによって撮像されるときにおけるこのダイオード・レーザ・バーのバー方向に沿った可変指向の影響に関係があると考えられる。これらの誤差は、変換レンズ、格子、および出力カプラで構成される外部キャビティからのフィードバックが、ダイオード・レーザ・エレメントに向かっても結合しない原因となる。この結合不良の悪影響のために、WBCレーザが波長ロックを破る(break)こともあり、ダイオード・レーザまたは関連のあるパッケージングが、結合不良即ち位置ずれしたフィードバックが光学利得媒体に再入射しないことによる損傷を受ける可能性がある。例えば、フィードバックが、ダイオード・バーに接触するまたは近接する何らかのエポキシまたははんだに衝突し、ダイオード・バーを破局的に故障させることもあり得る。
【0024】
図2の行1は、全く誤差のない1つのレーザ・ダイオード・バー202を示す。図示する実施形態は、ヒート・シンク上に取り付けられ、進相軸平行化光学系206によって平行化されたダイオード・バーの一例である。列Aは、平行化光学系206を通過する出力ビーム211の軌道の斜視図または3−D図を示す。列Dは、放出され平行化光学系206を通過したビーム211の軌道の側面図を示す。列Bは、レーザ・ファセットの正面ビューを示し、個々のレーザ・エレメント213各々の平行化光学系206に対する位置を示す。行1に示すように、レーザ・エレメント213は完全に直線状である。加えて、平行化光学系206は、全てのレーザ・エレメント213に対して中心に位置付けられている。列Cは、この種の入力によって、システムから予期される出力ビームを示す。行2は、指向誤差があるダイオード・レーザ・アレイを示す。行2の列Bによって示されるように、レーザ・エレメントおよび平行化光学系は、互いに多少偏倚している。その結果、図示のように、放出されたビームは望ましくない軌跡を有し、外部キャビティに対するレーザ発生効率を低下させる可能性がある。加えて、出力プロファイルが偏倚されて、システムを非効率的にしたり、または余分な変更を行わせる原因となる可能性もある。行3は、パッケージングの不具合があるアレイを示す。レーザ・エレメントはもはや直線上に並んでおらず、バーの湾曲がある。これは「スマイル」(smile)と呼ばれることもある。行3に示すように、スマイルは、均一の経路がない、即ち、システムに共通の方向がないので、一層厳しい軌跡の問題を招く可能性がある。行3の列Dは、更に、種々の角度で射出するビーム211を示す。行4は、平行化レンズが歪んでおりまたは傾いており、レーザ・エレメントと整列していない状態を示す。その結果、出力ビームは全体的に最も大きな平行化誤差または歪み誤差を有するので、恐らく、全ての内で最悪となる。殆どのシステムでは、ダイオード・アレイおよびスタックにおける実際の不具合は、行2、3、および4における不具合の組み合わせである。VBGおよび回折格子を使用する方法2および3の双方では、欠陥のあるレーザ・エレメントによって、出力ビームは光軸に対して平行に向かわなくなる。これらの光軸から外れたビームのために、レーザ・エレメントの各々は異なる波長でレーザ発振する結果となる。複数の異なる波長がシステムの出力スペクトルを広げて、前述のように広くなる。
【0025】
ダイオード・レーザ・バーのスタックのスタック(積み重ね)次元(ここでは、主に進相次元でもある)に沿ってWBCを行う利点の1つは、
図2に示すようなスマイルを補償することである。指向誤差およびその他の整列誤差は、配列方向(主に遅相次元でもある)に沿ってWBCを行うことによっては補償されない。ダイオード・バー・アレイは、通例19から49個またはそれ以上のある幅のエミッタを有することもある。注記したように、ダイオード・バー・アレイは、配列次元が、各エミッタの遅相次元が他のエミッタと並列状に位置合わせされるところとなるように、形成されるのが通例である。その結果、WBCを配列次元に沿って使用すると、ダイオード・バー・エミッタが19個のエミッタまたは49個のエミッタを有するかには関係なく(または他のいずれの数のエミッタであっても)、その結果は1つのエミッタのそれとなる。対照的に、同じ単一ダイオード・バー・アレイの直交即ち進相次元に沿ってWBCを行うと、その結果、放出された各ビームはスペクトル輝度が高くなる、即ち、スペクトル帯域幅が狭くなるが、ビーム数の減少はない(空間輝度の増大がないことと等価である)。
【0026】
この点について
図8に示す。
図8の左側には、エミッタ1および2のアレイの正面ビューが示されており、遅相次元に沿ったWBCが行われている。右側に沿って、同じアレイ1および2を使用して、進相次元に沿ったWBCが行われている。アレイ1を比較すると、遅相次元に沿ったWBCは、出力プロファイルを1つのビームのそれに低減するが、進相次元に沿ったWBCは、アレイ1の右側に沿って示すように、スペクトル帯域幅を狭めるが、出力プロファイルのサイズを1つのビームのそれに縮小することはない。
【0027】
COTSダイオード・バーおよびスタックを使用すると、スタック次元に沿ったビーム結合による出力ビームは、通常、非常に非対称になる。結果的に得られるビーム・プロファイルを光りファイバに結合しようとするとき、ビーム・プロファイルの対称化、即ち、ビーム・プロファイル比を小さくして1に等しくなるように近づけることは重要である。複数のレーザ・エミッタを結合する用途の多くは、広いシステムのある地点においてファイバ結合を必要とする。つまり、出力プロファイルに対する制御の幅が広がることは、本願の別の利点である。
【0028】
図8におけるアレイ2を更に分析すると、出力プロファイルの非常に高い輝度の対称化が望まれる場合、進相次元に沿ってWBCを行う実用的なレーザ・ダイオード・アレイには、アレイ当たりのエミッタ数に制限があることが示される。先に論じたように、通例、レーザ・ダイオード・バーにおけるエミッタは、それらの遅相次元に沿って並列に整列されている。ダイオード・バーにレーザ・エレメントを追加する毎に、出力ビーム・プロファイルにおける非対称性が増加していく。進相次元に沿ってWBCを行うと、ある数のレーザ・ダイオード・バーが互いにスタックされても、結果的に得られる出力プロファイルは、相変わらず1つのレーザ・ダイオード・バーのそれとなる。例えば、OCTS19−エミッタのダイオード・レーザ・バーを使用すると、期待することができる最良のことは、出力を100μm/0.22NAファイバに結合することである。つまり、小さいコアに結合しようとする程、バー当たりのエミッタの数を少なくしなければならない。対称化の比率に寄与するためには、レーザ・ダイオード・アレイにおけるエミッタの数を単純に5つのエミッタに固定することができる。しかしながら、レーザ・ダイオード・バー当たりのエミッタ数が少ない程、一般的に、バー当たりのコスト上昇、または出力パワーのワット当たりのコスト上昇を招く結果となる。例えば、5つのエミッタを有するダイオード・バーのコストは、2,000ドル程度であると考えられるが、49個のエミッタを有するダイオード・バーのコストもほぼ同じ価格であると考えられる。しかしながら、49個のエミッタを有するバーは、5個のエミッタを有するバーよりも1桁まで大きい、全パワー出力を有することができる。つまり、エミッタ数が多いCOTSダイオード・バーおよびスタックを使用して非常に高い輝度の出力ビームを達成できることが、WBCシステムにとって有利となる。エミッタ数が多いバーには、その他にも、所与のファイバ結合パワー・レベルに対してバー当たりのパワーをあるレベルに持っていく場合に、エミッタ当たりのパワーを下げて使用できるという利点があり、これによって、ダイオード・レーザ・バーの寿命を延ばすことまたはバーの信頼性を高めることができる。
【0029】
この問題に取り組む一実施形態を
図3Aに示す。
図3Aは、光回転体305を有するWBCシステム300aの模式図を示す。光回転体305は、平行化レンズ306の後ろでありそして変換光学系308の前に置かれている。尚、変換光学系308は、ある数のレンズまたはミラー、あるいは他の光学コンポーネントによって構成することができることは注記してしかるべきである。光回転体305は、入力正面ビュー312において示されている各放出ビームの進相次元および遅相次元を個々に回転させて、再指向正面ビュー(re-oriented front view)307を生成する。尚、光回転体は、他のビームには関係なく各ビームを選択的に個々に回転させることができること、または全てのビームを同じ角度だけ同時に回転させることができることは、注記してしかるべきである。また、2本以上のビームの集合体(cluster)を同時に回転させることができることも注記してしかるべきである。WBCを配列次元に沿って行った後に結果的に得られる出力が、出力正面ビュー318において、1つのエミッタとして示されている。分散性エレメント314が反射回折格子として示されているが、分散性プリズム、グリズム(プリズム+格子)、透過格子、およびエシェル格子(Echelle grating)であってもよい。この図示した特定の実施形態は、4つのレーザ・エミッタのみを示すが、先に論じたように、このシステムはそれよりも遙かに多いエレメント、例えば、49個を含むレーザ・ダイオード・アレイも利用することができる。この図示した特定の実施形態は、特定の波長帯域(例えば、976nm)における1つのバーを示すが、実際には、全て同じ特定の波長帯域で、並列状に配列された多数のバーで構成することができる。更に、多数の波長帯域(例えば、976nm、915nm、および808nm)を1つのキャビティにおいて組み合わせることもでき、各帯域は多数のバーで構成することができる。WBCは各ビームの進相次元を横切って(across)行われたので、より高い輝度のシステム(バーの欠陥に感応しないことによる効率向上)を設計することが一層容易となる。加えて、帯域幅の狭域化およびパワー出力増大も全て達成される。既に論じたように、WBCシステム300aの実施形態の中には、出力カプラ316および/または平行化レンズ(1つまたは複数)306を含まなくてもよいものもあることは注記してしかるべきである。更に、指向誤差およびスマイルの不具合は、スタック次元(この実施形態では、これは進相次元でもある)に沿って結合することによって補償される。
図3Bは、レーザ・アレイ302のスタック350が2−D入力プロファイル312を形成することを除いて、3Aと同様の実施態様を示す。キャビティ300bは、同様に、平行化レンズ(1つまたは複数)306、光回転体305、変換光学系308、分散性エレメント314(ここでは、回折格子)、および部分的に反射面を有する出力カプラ316によって構成されている。ビームの各々は、光回転体305によって個々に回転させられて、回転体通過後プロファイル(after rotator profile)307を形成する。WBC次元は、配列次元に沿っているが、回転によって、ビームの各々はその進相軸を横切って結合される。進相軸WBCは、ライン幅が非常に狭くスペクトル輝度が高い出力を生成する。これらは、通常、溶接のような工業用途には理想的である。変換光学系308が、回転されたビームを分散性エレメント314上に重ね合わせた後、単一出力プロファイルが生成され、部分的に反射してキャビティを通過してレーザ・エレメントに戻される。ここでは、出力プロファイル318は非常に非対称的な3本のビームからなる1本の線で構成されている。
【0030】
図3Cは、2−Dレーザ・エレメントに適用したときの同じ実施態様を示す。このシステムは、2−Dレーザ・エレメント302、光回転体305、変換光学システム(308および309a−b)、分散性エレメント314、および部分的に反射するミラー316によって構成されている。
図3Cは、レーザ・ダイオード・バー302のスタック350を示しており、各バーは、光回転体305を有する。外部キャビティ300cにおいて示されるように、ダイオード・バー302(全部で3つ)の各々は4つのエミッタを含む。入力正面ビュー312が光回転体305によって向きを変えられた後、この向きを変えられた正面ビュー307では、各ビームの遅相次元がスタック次元に沿って整列されている。WBCはこの次元に沿って行われ、この次元はこの場合各ビームの遅相軸であり、出力正面ビュー318は、ここでは、ビームの単一列を構成し、各ビームの遅相次元がスタック次元に沿って方向付けられている。光学系309aおよび309bは、配列次元に沿って撮像するための円筒形テレスコープ(telescope)を規定する。3つの円筒形レンズの機能は、2つの主要な機能を与えることである。中央の円筒形レンズは変換レンズであり、その主要な機能は全てのビームを分散性エレメント上に重ね合わせることである。2つの他の円筒形レンズ309aおよび309bは、非ビーム結合次元に沿って、無限焦点円筒形テレスコープを形成する。その主要な機能は、非ビーム結合に沿った全てのレーザ・エレメントが、部分的反射ミラーに対して垂直な伝搬となることを確実にすることである。したがって、
図3Cに示すような実施態様は、
図1Cに示したものと同じ利点を有する。しかしながら、
図1Cに示した実施態様とは異なり、出力ビームは入力ビームと同じではない。
図3Cにおける出力ビーム318内にあるエミッタの数は、スタックにおけるバーの数と同じである。例えば、2−Dレーザ・ソースが3−バー・スタックで構成され、各バーが49個のエミッタを含む場合、
図1Cにおける出力ビームは、49個のエミッタによる単一バーとなる。しかしながら、
図3Cでは、出力ビームは、3つのエミッタのみによる単一バーとなっている。このため、出力ビームの品質または輝度は、1桁よりも多く高くなる。この輝度の向上は、ファイバ結合にはとても重要である。更に高いパワーおよび輝度を求めるスケーリングには、多数のスタックを並列状に配置することができる。
【0031】
この構成を更に例示するために、例えば、3−バー・スタックのWBCを行い、各バーが19個のエミッタで構成されていると仮定する。これまで、3つの選択肢があった。第1に、波長ビーム結合を配列次元に沿って行って、
図1Bに示すように3本のビームを発生することができる。第2に、波長ビーム結合をスタック次元に沿って行い、
図1Cに示すように19本のビームを発生することができる。第3に、ビーム回転体を使用して配列次元に沿って波長ビーム結合を行って、
図3Cに示すように、19本のビームを発生することができる。3つの構成全てには、種々のトレードオフがある。第1の場合では、最も高い空間輝度を与えるが、スペクトル輝度は最も低い。第2の場合では、最も低い空間輝度を与え、スペクトル輝度はそれなりであり、ファイバに結合するためにビーム対称化を必要としない。第3の場合では、最も低い空間輝度を与えるが、スペクトル輝度は最も高く、光ファイバに結合するためにはビーム対称化が必要となる。用途によっては、この方がより望ましい場合もある。
【0032】
非対称性の低減を例示するために、
図3Dを描いて、300bのシステムが光回転体を有していなかった場合の最終出力プロファイル319a、およびシステムが光回転体を含む場合の出力プロファイル319bを示す。これらの図は同じ倍率で描かれていないが、これらの図は、この構成を有し各ビームの遅相寸法に沿ってWBCが行われるシステムにおいて、光回転体を利用することによって得られた平均を示す。短くそして幅が広い319bの方が、高くそして細い319aよりも、ファイバ結合には適している。
【0033】
種々の光回転体の例を
図4A〜
図4Cに示す。
図4Aは、入力ビーム411aを411bの新たな向きに回転させる円筒形レンズ(419aおよび419b)のアレイを示す。同様に、
図4Bは、ある角度をなしてプリズムに入射する入力411aを示し、その結果新たな向き、即ち、回転ビーム411bが得られる。
図4Cは、1組の階段状ミラー(step mirror)417を使用する実施形態を示し、入力411aを80から90度の角度で回転させ、これらの他の入力ビームによってビーム411bの新たな整列ができ、ビーム411bはそれらのぞれぞれの進相軸に沿って並んでいる。これらのデバイスおよびその他は、偏光非感応(non-polarization sensitive) および偏光感応手段双方によって回転を生じさせることができる。これらのデバイスの多くは、入射するビームが少なくとも進相軸次元において平行化されている場合、一層効果的となる。また、光回転体は、90度未満、90度、および90度よりも大きい角度を含む種々の角度で、ビームを選択的に回転させることができることも言うまでもない。
【0034】
以上の実施形態における光回転体は、個々のビーム、行または列、およびビームの集合体を選択的に回転させることができる。実施形態の中には、80〜90度の範囲というような、1組の回転角度を、プロファイル全体またはプロファイルの部分集合に適用するものもある。他の場合には、可変回転角度を各ビーム、行、列、またはプロファイルの部分集合に一意に適用する。(
図9Aおよび
図9B参照)。例えば、1本のビームを時計回り方向に45度回転させることができ、一方隣接するビームを半時計回り方向に45度回転させる。また、1本のビームを10度回転させ、他のビームを70度回転させることも考えられる。本システムが与える柔軟性は、種々の入力プロファイルに適用することができ、これによって、どのように出力プロファイルを形成すべきか決定し易くなる。
【0035】
放出ビームの遅相および進相次元間の中間角度に沿ってWBCを実行することも、本発明の範囲に十分該当する(例えば、
図9Bにおける6を参照のこと)。本明細書において記載するいくつかのレーザ・エレメントは、電磁放射線を生成し、光学利得媒体を含む。放射線即ちビームが光路部から射出すると、これらは通常一連のマイクロ・レンズを通過して遅相次元および/または進相次元に沿って平行化される。この特徴のために、この章において既に記載した実施形態は、光回転体を含んでいた。この光回転体は、各ビームの遅相次元または進相次元のいずれかに沿って変換レンズによってビームが分散性エレメント上に重ね合わせられる前に、各ビームを選択的に回転させる。出力カプラは、部分的にビームをシステム内のレーザ・エレメントに向けて逆に反射させるために、コーティングされていても、されていなくてもよく、戻されたビームは、これらがレーザ・エレメントの後部において全反射ミラーで反射されるまで、光学利得エレメント部分においてより多くの外部キャビティ・フィードバックを発生するのに役立つ。以上で列挙した光学エレメントおよび列挙しなかったその他のものの第2部分反射面に対する位置は、光学エレメントが外部共振システム内部にあるのか、またはレーザ発振キャビティ(lasing cavity)の外部にあるのか判断する助けとなる。図示しない実施形態の中には、第2部分反射ミラーが、光学利得エレメントの端部に、そして平行化または回転光学系の前に位置する場合もある。
【0036】
種々のWBC方法を利用するためにビームおよび構成を操作する他の方法は、空間再配置エレメント(spatial repositioning element)を使用することを含む。この空間再配置エレメントは、外部キャビティ内において、光回転体の位置と同様の位置に配置することができる。例えば、
図6は、外部共振WBCシステム600において、平行化レンズ606の後ろで変換光学系(1つまたは複数)608の前に配置された空間再配置エレメント603を示す。空間再配置エレメントの目的は、エレメントのアレイを新たな構成に構成し直すことである。
図6は、N個のエレメントを有する3−バー・スタックが、N/2個のエレメントを有する6−バー・スタックに構成され直される場合を示す。空間再配置は、特に、スタック650が機械的スタックである600のような実施形態において有用であり、またはダイオード・バー・アレイ602およびそれらの出力ビームが機械的または光学的に互いに重ね合わされている実施形態において有用である。この種の構成では、レーザ・エレメントが互いに固定位置を有する。空間再配置エレメントを使用することによって、進相次元に沿ったWBCにとって一層理想的となる新たな構成を形成することができる。この新たな構成は、出力プロファイルをファイバ結合に一層相応しくする。
【0037】
例えば、
図7はエミッタ172の二次元アレイが、空間再配置ステップ703において、ペリスコープ・ミラー(periscope mirror)のアレイのような空間再配置光学エレメントによって構成し直される実施形態を示す。再構成正面ビュー707によって示される構成し直されたアレイは、ここでは、WBCステップ710がWBC次元を横切って行われるように、準備が整っている。WBC次元は、ここでは、各エレメントの進相次元である。この実施形態例700における元の二次元プロファイルは、縦に12個のエミッタ横に5個のエミッタから成るアレイである。このアレイが空間再配置エレメントを透過した後またはこれによって反射された後、縦に4個のエレメント横に15個のエレメントから成る新たなアレイが形成される。双方のアレイにおいて、エミッタは、各々の遅相次元が垂直となり、一方進相軸が水平となるように、配列されている。WBCは、進相次元に沿って行われ、第2アレイにおける15個のエミッタ列が、縦に4個のエミッタがある1つの列に押しつぶされる(collapse)。この出力は、既に、WBCが元のアレイに対して行われた場合よりも対称的になっている、元のアレイであれば、その結果、縦に15個のエミッタがある1つの列ができたであろう。図示のように、更に、各エミッタを90度回転させる個々の回転ステップ705によってこの新たな出力を対称化することもできる。すると、遅相次元に沿って1ビーム幅で縦に4つのエレメントがスタックされた、WBC後の正面ビュー721が生成される。これは、ファイバに結合するのに更に相応しくなっている。
【0038】
一次元または二次元プロファイルとなっているエレメントを構成し直す1つの方法は、そのプロファイルを「切断」するまたはセクションに分解して、各セクションをしかるべく整列し直すことである。例えば、
図7において、713では2回の切断715が行われた。各セクションは、並列状に配置されて707が形成された。これらの光学的切断は、713のエレメントが予め配列されていた、即ち、固定位置の関係を有していたことを記せば、評価することができる。また、初期の入力ビーム・プロファイルを再配置するために、あらゆる回数の切断を行うことを想像することも、十分に範囲内に該当する。これらのセクションの各々は、並列状に配置されることに加えて、望ましければ、上に重ねることまたは不規則に並べることも可能である。
【0039】
空間再配置エレメントは、偏光されたおよび偏光されないペリスコープ光学系の双方、ならびにその他の再配置光学系を含む種々の光学エレメントによって構成することができる。
図4aに示したような階段状ミラーも、空間再配置エレメントになるように構成し直すことができる。
【0040】
尚、空間再配置エレメントおよび光回転体は、同じ外部共振システム、または共振システムの内側および外側の組み合わせにおいて使用してもよいことも考えられる。最初にエレメントが現れる順序は、それほど重要ではなく、一般に所望の出力プロファイルによって決定される。
【0041】
本発明の範囲を包含するがそれを限定しない追加の実施形態を
図9Aおよび
図9Bに示す。
図9Aの1に示すシステムは、遅相次元に沿って横並びに整列されている4本のビームから成る1つのアレイを示す。光回転体が、個別に、各ビームを回転させる。次いで、これらのビームは進相次元に沿って結合され、WBCによって1本のビームに減縮される。この構成では、4本のビームを容易に49本以上のビームにすることができることを注記するのは重要である。また、エミッタの一部が物理的に他のエミッタから取り外される場合、個々のエミッタを機械的に回転させて、理想的なプロファイルに構成するとよいことも注記するとよいであろう。機械式回転体は、摩擦スライダ、ロッキング・ベアリング(locking bearing)、チューブ、およびレーザ・エレメントを回転させるように構成されているその他のメカニズムを含む種々のエレメントによって構成することができる。一旦所望の位置が得られたなら、次に、レーザ・エレメントを適所に固定することができる。また、所望のプロファイルに応じてビーム・プロファイルを調節することができる自動回転システムを実装してもよいことも考えられる。この自動システムは、所望に応じて出力プロファイルを変化させるために、レーザまたは光学エレメントを機械的に再配置することができ、あるいは新たな光学エレメントをシステム内およびシステム外に挿入することもできる。
【0042】
図9Aに示すシステム2は、3つのスタック・アレイを有する二次元アレイを示し、4本のビームが各々遅相次元に沿って整列されている。(
図3Cと同様)このスタック・アレイが光回転体を通過し進相次元に沿ったWBCを受けると、縦に3ビームが遅相次元に沿って上下に整列された1本の列が形成される。この場合も、このシステムにおいて示した3つのスタック・アレイが50個のエレメントを有するとすると、同じ出力プロファイルが作られるが、この方が輝度が高く、高い出力パワーを有することが認められよう。
【0043】
図9Bにおけるシステム3は、4本のビームから成る菱形パターンを示し、これらのビームは全て実質的に互いに平行である。また、このパターンはランダムなパターンを示すこともできる。これらのビームを回転させ進相次元に沿って結合すると、3本のビームが遅相次元に沿って上下に整列された1本の列が得られる。エミッタの故障またはその他の理由によって、エレメントが失われたダイオード・レーザ・バーまたはスタックが、システム3の例である。システム4は、ビームが整列されておらず、1本のビームを回転させて第2ビームと整列させて、双方のビームが進相次元に沿って結合されて1本のビームを形成するようにしたシステムを示す。システム4は、レーザ・ダイオード・アレイを使用することを超えてWBC方法を拡大する多数の可能性を実証する。例えば、システム4における入力ビームは、二酸化炭素(CO
2)レーザ、半導体またはダイオード・レーザ、ダイオード励起ファイバ・レーザ、ランプ励起またはダイオード励起Nd:YAGレーザ、ディスク・レーザ等から発生することができる。結合すべきレーザのタイプおよびレーザの波長を混合し一致させる能力は、本発明の範囲に包含される別の優位性である。
【0044】
システム5は、WBC次元と完全に整列させるためにビームを回転させないシステムを示す。その結果、進相次元に沿ったWBCの優位性の多くを維持する混成出力が得られる。様々な実施形態では、ビームをWBC次元と整列させるためには、90度完全に回転させる。WBC次元は、多くの場合、進相次元と同じ方向即ち次元であった。しかしながら、システム5は、そしてシステム6も、ビームの光学的回転が、全体的に(システム6)または個々に(システム5)、1本以上のビームの進相次元がWBC次元に対して角度θ(theta)をなす、即ち、ある度数だけ偏倚されるようなものであればよいことを示す。90度の完全な偏倚によって、WBC次元が遅相次元と整列するが、45度の偏倚では、ビームの遅相および進相次元間の中間の角度に、WBC次元が向けられる。これは、遅相および進相次元が互いに直交するからである。一実施形態では、WBC次元が、ビームの進相次元から約3度の角度θを有する。
【0045】
以上の説明は、単なる例示に過ぎない。好ましい実施形態を含む本発明の少なくとも1つの実施形態の様々な態様についてこのように説明したので、種々の変更、修正、および改良が当業者には容易に想起されることは認められてしかるべきである。このような変更、修正、および改良は、本開示の一部であることを意図しており、本発明の主旨および範囲に該当することを意図している。したがって、以上の説明および図面は、単なる一例に過ぎないこととする。