(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窓部の径方向寸法内に前記ハブギヤの外径寸法と前記押圧部材の内径寸法とが収まるよう設定されるとともに、当該ハブギヤの外径寸法が前記押圧部材の内径寸法より小さく設定された部位を有し、当該ハブギヤの外径縁面と押圧部材の内径縁面との間で油路が形成されたことを特徴とする請求項2記載のトルクダンパ装置。
前記窓部は、前記駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を有する多板クラッチと軸方向で対向する位置に形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のトルクダンパ装置。
前記締結手段にて一体化されたハブギヤ及び押圧部材は、前記窓部の開口縁部により前記トルク伝達部材に対する径方向の移動が規制されたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載のトルクダンパ装置。
前記トルク伝達部材における窓部が形成された部位は、段状に屈曲して形成されるとともに、当該窓部の一方の開口縁部及び他方の開口縁部によって前記締結手段にて一体化されたハブギヤ及び押圧部材の径方向の移動が規制されたことを特徴とする請求項6記載のトルクダンパ装置。
車両が具備するトルクコンバータのトルコンカバー内に配設されるとともに、作動位置と非作動位置とで移動可能とされ、当該作動位置で前記駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を圧接可能なクラッチピストンを具備するものとされ、当該クラッチピストンが非作動位置にあるとき、前記トルクコンバータを介してエンジンのトルクを車輪に伝達させ、当該クラッチピストンが作動位置にあるとき、前記トルクコンバータを介さずエンジンのトルクを車両に伝達させることを特徴とする請求項1〜8の何れか1つに記載のトルクダンパ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のロックアップクラッチ装置において、ハブギヤとリベット等の締結手段にて締結されて一体化されるとともに、当該ハブギヤからのトルクをダンパスプリングに伝達し得る押圧部材を具備させようとした場合、当該押圧部材、ハブギヤ及びトルク伝達部材が装置の軸方向に対して組み付けられることとなり、大型化してしまう虞があった。なお、このような不具合は、上記の如きロックアップクラッチ装置に限られず、駆動側クラッチ板と被動側クラッチ板との圧接又は圧接の解除を行わせ、エンジンのトルクを伝達又は遮断させ得るとともに、伝達されたトルクの変動を減衰して出力し得るトルクダンパ装置について生じ得るものである。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、押圧部材、ハブギヤ及びトルク伝達部材が装置の軸方向に対して組み付けられても、当該軸方向の寸法を小さくして小型化を図ることができるトルクダンパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、圧接した状態でエンジンのトルクを伝達可能とされるとともに、当該圧接が解かれた状態でエンジンのトルク伝達を遮断可能な駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板と、前記被動側クラッチ板を嵌入して保持可能なスプラインが形成されるとともに、当該被動側クラッチ板が前記駆動側クラッチ板と圧接した状態でエンジンのトルクが伝達されるハブギヤと、該ハブギヤを介してエンジンのトルクが伝達可能とされ、そのトルク変動を減衰するためのバネ特性を有したダンパスプリングと、前記ハブギヤと締結手段にて締結されて一体化されるとともに、当該ハブギヤからのトルクを前記ダンパスプリングに伝達し得る押圧部材と、前記ダンパスプリングを保持するとともに、当該ダンパスプリングを介して伝達されたトルクを出力可能なトルク伝達部材とを具備したトルクダンパ装置であって、前記トルク伝達部材は、その肉厚寸法内に前記締結手段を位置させ
て前記ハブギヤ又は押圧部材を軸方向にオーバーラップさせた窓部が形成されるとともに、当該窓部にて前記ハブギヤと前記押圧部材とが締結されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のトルクダンパ装置において、前記窓部は、前記ハブギヤ及び押圧部材と共に移動する締結手段の軌跡に沿って形成された長孔から成ることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のトルクダンパ装置において、前記窓部の径方向寸法内に前記ハブギヤの外径寸法と前記押圧部材の内径寸法とが収まるよう設定されるとともに、当該ハブギヤの外径寸法が前記押圧部材の内径寸法より小さく設定
された部位を有し、当該ハブギヤの外径縁面と押圧部材の内径縁面との間で油路が形成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載のトルクダンパ装置において、前記締結手段は、前記ハブギヤと押圧部材とを締結させるリベットから成ることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3の何れか1つに記載のトルクダンパ装置において、前記窓部は、前記駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を有する多板クラッチと軸方向で対向する位置に形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか1つに記載のトルクダンパ装置において、前記締結手段にて一体化されたハブギヤ及び押圧部材は、前記窓部の開口縁部により前記トルク伝達部材に対する径方向の移動が規制されたことを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のトルクダンパ装置において、前記トルク伝達部材における窓部が形成された部位は、段状に屈曲して形成されるとともに、当該窓部の一方の開口縁部及び他方の開口縁部によって前記締結手段にて一体化されたハブギヤ及び押圧部材の径方向の移動が規制されたことを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7の何れか1つに記載のトルクダンパ装置において、前記ダンパスプリングは、1次ダンパスプリング
から成り、前記トルク伝達部材に伝達されたトルク変動を吸収するための2次ダンパスプリング
を有し、当該1次ダンパスプリング及び2次ダンパスプリングが互いに異なる円周上にそれぞれ配設されるとともに直列に作用するものとされたことを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8の何れか1つに記載のトルクダンパ装置において、車両が具備するトルクコンバータのトルコンカバー内に配設されるとともに、作動位置と非作動位置とで移動可能とされ、当該作動位置で前記駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を圧接可能なクラッチピストンを具備するものとされ、当該クラッチピストンが非作動位置にあるとき、前記トルクコンバータを介してエンジンのトルクを車輪に伝達させ、当該クラッチピストンが作動位置にあるとき、前記トルクコンバータを介さずエンジンのトルクを車両に伝達させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の発明によれば、トルク伝達部材は、その肉厚寸法内に締結手段を位置させ
てハブギヤ又は押圧部材を軸方向にオーバーラップさせた窓部が形成されるとともに、当該窓部にてハブギヤと前記押圧部材とが締結されたので、押圧部材、ハブギヤ及びトルク伝達部材が装置の軸方向に対して組み付けられても、トルクダンパ装置の軸方向の寸法を小さくして小型化を図ることができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、窓部は、ハブギヤ及び押圧部材と共に移動する締結手段の軌跡に沿って形成された長孔から成るので、ハブギヤ及び押圧部材の動作を良好に維持しつつトルクダンパ装置の軸方向の寸法を小さくして小型化を図ることができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、窓部の径方向寸法内にハブギヤの外径寸法と押圧部材の内径寸法とが収まるよう設定されるとともに、当該ハブギヤの外径寸法がトルク部材の内径寸法より小さく設定された
部位を有し、当該ハブギヤの外径縁面と押圧部材の内径縁面との間で油路が形成されたので
、作動オイルの流れを円滑に行わせることができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、締結手段は、ハブギヤと押圧部材とを締結させるリベットから成るので、ハブギヤと押圧部材との締結強度を向上させつつトルクダンパ装置の軸方向の寸法を小さくして小型化を図ることができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、窓部は、駆動側クラッチ板及び被動側クラッチ板を有する多板クラッチと軸方向で対向する位置に形成されたので、板厚寸法が大きくなる締結手段を避けて多板クラッチを設ける必要がなくなり、レイアウトの自由度を向上させることができる。
【0021】
請求項6、7記載の発明によれば、締結手段にて一体化されたハブギヤ及び押圧部材は、窓部の開口縁部によりトルク伝達部材に対する径方向の移動が規制されたので、ハブギヤ及び押圧部材が径方向にずれてしまうのを確実に防止することができる。したがって、窓部は、トルクダンパ装置の軸方向の寸法を低減させる機能と、ハブギヤ及び押圧部材のずれ防止機能とを併せ持つことができる。
【0022】
請求項8記載の発明によれば、ダンパスプリングは、1次ダンパスプリング
から成り、トルク伝達部材に伝達されたトルク変動を吸収するための2次ダンパスプリング
を有し、当該1次ダンパスプリング及び2次ダンパスプリングが互いに異なる円周上にそれぞれ配設されるとともに直列に作用するものとされたので、捩り角度を大きく設定できるとともに、
第1ダンパスプリング及び第2ダンパスプリングの低剛性化を可能としつつ十分な振動吸収性能を得ることができる。
【0023】
請求項9記載の発明によれば、クラッチピストンが非作動位置にあるとき、トルクコンバータを介してエンジンのトルクを車輪に伝達させ、当該クラッチピストンが作動位置にあるとき、トルクコンバータを介さずエンジンのトルクを車両に伝達させるので、ロックアップクラッチ装置に良好に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るトルクダンパ装置10は、トルクコンバータ1(流体継手)内に配設されたロックアップクラッチ装置を構成するもので、
図1〜13に示すように、クラッチピストン11と、ハブギヤ12と、押圧部材13と、トルク伝達部材14と、複数の駆動側クラッチ板15a及び被動側クラッチ板15bが交互に配設されて成る多板クラッチ15と、サイドプレート16と、センタープレート17と、ダンパスプリング(第1ダンパスプリングS1及び第2ダンパスプリングS2)とから主に構成されている。
【0026】
トルクコンバータ1は、自動車(主にAT車)等に配設され、エンジンからのトルクを増幅してミッション及び車輪に伝達するためのもので、
図2、3に示すように、当該エンジンの駆動力が伝達されて軸回りに回転可能とされるとともに液体(作動油)を液密状態で収容したトルコンカバー5と、該トルコンカバー5の同図中左側の壁5b側に形成されて当該トルコンカバー5と共に回転するポンプ2と、該ポンプ2と対峙しつつトルコンカバー5内における同図中右側の壁5a側に回転可能に配設され、タービンハブ7を介して出力軸6と連結されたタービン3と、一方向クラッチ9を介して車両のトランスミッションに支持されて回転しないステータシャフトと連結されたステータとを具備するとともに、トルコンカバー5の同図中右側の壁5a側とタービン3との間にロックアップクラッチ装置を構成するトルクダンパ装置10を内在して成るものである。
【0027】
トルコンカバー5(具体的には、トルコンカバー5における右側の壁5a側)は、連動部材8を介して車両のクランクシャフト(不図示)と連結されており、エンジンが駆動するとそのトルク(駆動力)がトルコンカバー5に伝達されるよう構成されている。そして、エンジンの駆動力にてトルコンカバー5及びポンプ2が回転すると、その回転トルクが液体(作動油)を介してタービン3側にトルク増幅されつつ伝達される。しかして、トルク増幅されてタービン3が回転すると、該タービン3とタービンハブ7を介してスプライン嵌合した出力軸6が回転し、車両等が具備するトランスミッションに当該トルクが伝達される。
【0028】
本実施形態に係るロックアップクラッチ装置は、トルクダンパ装置10及びクラッチピストン11で構成されており、任意タイミングでトルコンカバー5とタービン3とを直結(機械的な連結)することにより、液体によるトルク伝達に比べ、トルクの伝達ロスの低減を図るためのものである。すなわち、クラッチピストン11が非作動位置(非直結状態)にあるとき、トルクコンバータ1を介してエンジンのトルクを車輪に伝達させ、当該クラッチピストン11が作動位置(直結状態)にあるとき、トルクコンバータ1を介さずエンジンのトルクを車両に伝達させるようになっているのである。
【0029】
クラッチピストン11は、トルコンカバー5の図中右側の壁5aとの間における流体(作動油)に対して作動圧を付与又は当該作動圧を解除することにより、作動位置(
図2、3中左側位置)と非作動位置(同図中右側位置)とで同図左右方向に移動可能とされ、当該作動位置でトルコンカバー5側に配設された駆動側クラッチ板15aを押圧可能なものである。すなわち、トルコンカバー5の右側の壁5a内周面から内側(図中左側)に向かって突出形成された固定部5aaにスプラインが形成され、当該スプラインに複数枚の駆動側クラッチ板15aが嵌合されて配設されているのである。これにより、駆動側クラッチ板15aは、図中左右方向への移動が許容されるとともに固定部5aaに対する回転方向への相対的移動が規制されている。
【0030】
ハブギヤ12は、
図4、5に示すように、複数の被動側クラッチ板15bを嵌入して保持可能なスプライン12aが形成されるとともに、当該被動側クラッチ板15bが駆動側クラッチ板15aと圧接した状態でエンジンのトルクが伝達されるものである。また、ハブギヤ12には、外側に膨出した膨出部12cが周方向に対して複数(本実施形態においては4つ)形成されており、それぞれの膨出部12cには、リベットR1を挿通し得る挿通孔12bが形成されている。
【0031】
しかして、クラッチピストン11が非作動位置から作動位置に移動すると、駆動側クラッチ板15aと被動側クラッチ板15bとが圧接して、エンジンのトルクがハブギヤ12に伝達されるのである。なお、ハブギヤ12に形成されたスプライン12aによって、被動側クラッチ板15bは、
図2、3中左右方向への移動が許容されるとともに、ハブギヤ12に対する回転方向への相対的移動が規制されている。
【0032】
ところで、被動側クラッチ板15bは、平面視で略円環形状部材から成るとともに、その円周に亘ってライニング(摩擦材)が形成されており、クラッチピストン11が作動位置に至ると、交互に配設された駆動側クラッチ板15aと被動側クラッチ板15bとが圧接し、ライニングの摩擦力によって両者が連結(トルク伝達が可能な状態)されるようになっている。なお、クラッチピストン11に対する作動圧が解除されて、当該クラッチピストン11が非作動位置に至ると、駆動側クラッチ板15aと被動側クラッチ板15bとの圧接が解かれて両者の連結が解かれる(トルク伝達が遮断)ようになっている。
【0033】
押圧部材13(「ダンパスプリングプレート」と称される部材)は、ハブギヤ12とリベットR1(締結手段)にて締結されて一体化されるとともに、当該ハブギヤ12からのトルクをダンパスプリング(本実施形態においては第1ダンパスプリングS1)に伝達し得るものである。かかる押圧部材13は、
図6、7に示すように、外側に突出した押圧部13aと、内側に膨出した膨出部13cとが周方向に対して複数(押圧部13aは6つ、膨出部13cは4つ)形成されており、それぞれの膨出部13cには、リベットR1を挿通し得る挿通孔13bが形成されている。
【0034】
そして、挿通孔12bと挿通孔13bとが合致するようにハブギヤ12及び押圧部材13を重ね合わせ、これら挿通孔12b及び挿通孔13bにリベットR1を挿通して突端をカシメることにより、
図15に示すように、ハブギヤ12と押圧部材13とが締結されて一体化されることとなる。なお、本実施形態においては、挿通孔12b及び挿通孔13bにリベットR1を挿通させて締結させているが、他の汎用的な締結手段(ボルト及びナット等)であってもよい。
【0035】
トルク伝達部材14(「ダンパプレート」と称される部材)は、ダンパスプリング(本実施形態においては1次ダンパスプリングS1及び2次ダンパスプリングS2)を保持するとともに、当該ダンパスプリングを介して伝達されたトルクをタービンハブ7を介して出軸軸6に出力可能なもので、
図8、9に示すように、1次ダンパスプリングS1を収容する収容凹部14aと、2次ダンパスプリングS2を収容する収容孔部14bと、円弧状に切り欠かれて形成された複数(本実施形態においては4つ)の窓部14cと、挿通孔14dを有して構成されている。
【0036】
1次ダンパスプリングS1及び2次ダンパスプリングSS2は、ハブギヤ12を介してエンジンのトルクが伝達可能とされ、そのトルク変動を減衰するためのバネ特性を有したコイルスプリングから成り、本実施形態においては、変位方向(伸縮方向)に対して円弧状に屈曲したアーク形状のコイルスプリングから成る。なお、1次ダンパスプリングS1及び2次ダンパスプリングS2は、アーク形状のコイルスプリングに代えて、例えば直線状のコイルスプリングを円弧状に配設するようにしてもよい。
【0037】
しかるに、押圧部材13及びトルク伝達部材14が組み付けられた状態において、押圧部材13の押圧部13aが収容凹部14aに保持された1次ダンパスプリングS1の端部にそれぞれ位置するよう構成されており、多板クラッチ15からエンジンのトルクが入力してハブギヤ12及び押圧部材13が回転する過程において、押圧部13にて1次ダンパスプリングS1をそれぞれ押圧して圧縮し得るようになっている。すなわち、ハブギヤ12及び押圧部材13に伝達されたトルクは、1次ダンパスプリングS1を介してトルク伝達部材14に伝達されることとなり、当該1次ダンパスプリングS1にてトルク変動が吸収されるのである。
【0038】
サイドプレート16は、
図10、11に示すように、トルク伝達部材14の収容孔部14bと対応した形状及び位置に形成されて2次ダンパスプリングS2を収容し得る収容孔部16aと、当該トルク伝達部材14の挿通孔14dと対応した挿通孔16bとが形成された略円板状部材から成る。そして、挿通孔14dと挿通孔16bとが合致するようにトルク伝達部材14及びサイドプレート16を重ね合わせ、これら挿通孔14d及び挿通孔16bにリベットを挿通して突端をカシメることにより、トルク伝達部材14とサイドプレート16とが締結されて一体化されることとなる。
【0039】
センタープレート17は、トルク伝達部材14及びサイドプレート16に対して相対回転可能とされるとともに、
図12、13に示すように、トルク伝達部材14の収容孔部14b及びサイドプレート16の収容孔部16aと対応した位置に形成されて2次ダンパスプリングS2を収容し得る収容孔部17aと、リベットR2を挿通可能な挿通孔17bとが形成された略円板状部材から成る。そして、挿通孔17bとタービンハブ7に形成された孔とを合致させつつリベットR2を挿通させ、当該リベットR2の突端をカシメることにより、
図2、3に示すように、トルクダンパ装置10をタービンハブ7に連結させることが可能とされている。
【0040】
しかるに、トルク伝達部材14、サイドプレート16及びセンタープレート17が組み付けられた状態において、トルク伝達部材14の収容孔部14b、サイドプレート16の収容孔部16a、及びセンタープレート17の収容孔部17aに2次ダンパスプリングS2が収容されるよう構成されており、多板クラッチ15からエンジンのトルクが入力して1次ダンパスプリングS1を介してトルク伝達部材14に伝達された後、当該トルク伝達部材14及びサイドプレート16が回転する過程において、収容孔部14b及び収容孔部16aの開口縁部にて2次ダンパスプリングS2をそれぞれ押圧して圧縮し得るようになっている。すなわち、トルク伝達部材14及びサイドプレート16に伝達されたトルクは、2次ダンパスプリングS1を介してセンタープレート17に伝達されることとなり、当該2次ダンパスプリングS2にてトルク変動が吸収されるのである。
【0041】
このように、本実施形態においては、1次ダンパスプリングS1及び2次ダンパスプリングS2が互いに異なる円周上(すなわち、第1ダンパスプリングS1が外側、第2ダンパスプリングS2が内側)にそれぞれ配設されるとともに、これら1次ダンパスプリングS1及び2次ダンパスプリングS2が直列に作用するよう構成されている。これにより、捩り角度を大きく設定できるとともに、ダンパスプリング(1次ダンパスプリング及び2次ダンパスプリングS2)全体の低剛性化を可能としつつ振動吸収性能を向上させることができる。なお、1次ダンパスプリングS1と2次ダンパスプリングS2とは、互いに異なるバネ特性(例えば、径又は巻き数が異なるもの等)とされており、任意の剛性に設定され得るようになっている。
【0042】
しかして、上記構成によれば、クラッチピストン11が作動位置に至り、駆動側クラッチ板15aと被動側クラッチ板15bとが圧接すると、ハブギヤ12及び押圧部材13が所定角度回転して1次ダンパスプリングS1を圧縮させつつトルク伝達部材14及びサイドプレート16を同方向に押圧して回転させるとともに、当該トルク伝達部材14及びサイドプレート16が所定角度回転して2次ダンパスプリングS2を圧縮させつつセンタープレート17を同方向に押圧して回転させることにより、タービンハブ7にトルクを出力させることができる。これにより、1次ダンパスプリングS1と2次ダンパスプリングS2とが直列に作用し、振動吸収機能を果たすこととなる。
【0043】
ここで、本実施形態に係るトルク伝達部材14は、
図3、8、15に示すように、その肉厚寸法内にリベットR1(締結手段)を位置させ得る窓部14cが形成されるとともに、当該窓部14cにて(当該窓部14cを介して)ハブギヤ12と押圧部材13とが締結されている。具体的には、窓部14cは、各リベットR1に対応した位置に形成された貫通孔から成るとともに、駆動側クラッチ板15aと被動側クラッチ板15bとが圧接することによってハブギヤ12及び押圧部材13が回転する際、当該ハブギヤ12及び押圧部材13と共に孤状に移動するリベットR1(締結手段)の軌跡に沿って形成された長孔(
図8参照)から成る。
【0044】
しかして、
図15に示すように、リベットR1をトルク伝達部材14における窓部14cに臨ませることで、当該トルク伝達部材14の肉厚寸法内にリベットR1の一部(特に、頭部又はカシメ部等の出張り部)、及びハブギヤ12若しくは押圧部材13を位置させる(すなわち、軸方向にオーバーラップさせる)ことができ、そのオーバーラップさせた寸法だけ、軸方向の寸法を低減させることができるのである。
【0045】
また、本実施形態に係るトルク伝達部材14における窓部14cが形成された部位は、
図14に示すように、段状に屈曲して形成されており、一方の開口縁部14caと他方の開口縁部14cbとが軸方向(同図中左右方向)に対して異なる位置となるよう構成されている。そして、トルク伝達部材14に対してリベットR1にて一体化されたハブギヤ12及び押圧部材13を組み付けると、
図15に示すように、ハブギヤ12における膨出部12cの突端面A(
図4参照)が窓部14cにおける一方の開口縁部14caと微小寸法離間して対峙するとともに、押圧部材13における膨出部13cの突端面B(
図6参照)が窓部14cにおける他方の開口縁部14cbと微小寸法離間して対峙するようになっている。すなわち、トルク伝達部材14における窓部14cが形成された部位は、段状に屈曲して形成されるとともに、当該窓部14cの一方の開口縁部14ca及び他方の開口縁部14cbによってリベットR1にて一体化されたハブギヤ12及び押圧部材13の径方向の移動が規制されているのである。
【0046】
したがって、リベットR1にて一体化されたハブギヤ12及び押圧部材13がトルク伝達部材14に対して外径方向に移動しようとすると、ハブギヤ12における膨出部12cの突端面Aが窓部14cにおける一方の開口縁部14caと干渉して同方向(外径方向)へのずれを規制することができるとともに、リベットR1にて一体化されたハブギヤ12及び押圧部材13がトルク伝達部材14に対して内径方向に移動しようとすると、押圧部材13における膨出部13cの突端面Bが窓部14cにおける他方の開口縁部14cbと干渉して同方向(内径方向)へのずれを規制することができる。
【0047】
さらに、本実施形態においては、窓部14cの径方向寸法内(長孔における幅方向寸法内)にハブギヤ12の外径寸法と押圧部材13の内径寸法とが収まるよう設定されるとともに、当該ハブギヤ12の外径寸法が押圧部材13の内径寸法より小さく設定されている。これにより、
図1に示すように、窓部14cにおいてハブギヤ12の外径縁面と押圧部材13の内径縁面との間が軸方向に対して開口して油路Gが形成されることとなり、作動オイルの流れを円滑に行わせることができる。
【0048】
特に、本実施形態においては、多板クラッチ15(ロックアップクラッチ)が形成されたトルクコンバータ1内に配設されたトルクダンパ装置10に適用されているため、トルクコンバータ1内の作動オイルを油路Gにて円滑に流動させることができ、当該トルクコンバータ1の内圧上昇を抑制することができる。したがって、トルクコンバータ1の内圧上昇するのに伴って多板クラッチ15の作動オイルの油圧を上げる必要がなくなり、燃費を向上させることができる。
【0049】
またさらに、窓部14cは、
図3に示すように、駆動側クラッチ板15a及び被動側クラッチ板15bを有する多板クラッチ15と軸方向(同図中左右方向)で対向する位置に形成されたので、板厚寸法が大きくなるリベットR1(締結手段)を避けて多板クラッチ15を設ける必要がなくなり、レイアウトの自由度を向上させることができる。また、本実施形態においては、窓部14cの所定範囲に油路Gが形成されているので、当該油路Gを介して作動オイルが多板クラッチ15に流れることとなり、当該多板クラッチ15の作動をより確実に行わせることができる。
【0050】
上記実施形態によれば、トルク伝達部材14は、その肉厚寸法内にリベットR1(締結手段)を位置させ得る窓部14cが形成されるとともに、当該窓部14cにてハブギヤ12と押圧部材13とが締結されたので、押圧部材13、ハブギヤ12及びトルク伝達部材14が装置の軸方向に対して組み付けられても、トルクダンパ装置10の軸方向の寸法を小さくして小型化を図ることができる。特に、本実施形態に係る窓部14cは、ハブギヤ12及び押圧部材13と共に移動するリベットR1(締結手段)の軌跡に沿って形成された長孔から成るので、ハブギヤ12及び押圧部材13の動作を良好に維持しつつトルクダンパ装置10の軸方向の寸法を小さくして小型化を図ることができる。なお、本実施形態に係る締結手段は、ハブギヤ12と押圧部材13とを締結させるリベットR1から成るので、ハブギヤ12と押圧部材13との締結強度を向上させつつトルクダンパ装置10の軸方向の寸法を小さくして小型化を図ることができる。
【0051】
さらに、本実施形態によれば、リベットR1(締結手段)にて一体化されたハブギヤ12及び押圧部材13は、窓部14cの開口縁部によりトルク伝達部材14に対する径方向の移動が規制されたので、ハブギヤ12及び押圧部材13が径方向にずれてしまうのを確実に防止することができる。したがって、窓部14cは、トルク伝達部材14の肉厚寸法内にハブギヤ12及び押圧部材13が締結された一体化部材及びリベットR1等の締結手段の一部をオーバーラップさせてトルクダンパ装置10の軸方向の寸法を低減させる機能と、ハブギヤ12及び押圧部材13のずれ防止機能とを併せ持つことができる。
【0052】
またさらに、本実施形態によれば
、1次ダンパスプリングS1及び2次ダンパスプリングS2が互いに異なる円周上にそれぞれ配設されるとともに直列に作用するものとされたので、捩り角度を大きく設定できるとともに、
1次ダンパスプリングS1及び2次ダンパスプリングS2の低剛性化を可能としつつ十分な振動吸収性能を得ることができる。また、本実施形態によれば、クラッチピストン11が非作動位置にあるとき、トルクコンバータ1を介してエンジンのトルクを車輪に伝達させ、当該クラッチピストン11が作動位置にあるとき、トルクコンバータ1を介さずエンジンのトルクを車両に伝達させるので、ロックアップクラッチ装置に良好に適用することができる。
【0053】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えばトルク伝達部材、ハブギヤ或いは押圧部材等の形状や大きさ等に応じて、窓部14cの大きさや形状を種々変更したものであってもよい。また、本実施形態においては、クラッチピストンを具備し、当該クラッチピストンが非作動位置にあるとき、トルクコンバータを介してエンジンのトルクを車輪に伝達させ、当該クラッチピストンが作動位置にあるとき、トルクコンバータを介さずエンジンのトルクを車両に伝達させるロックアップクラッチに適用されているが、トルクコンバータを具備しない車両に適用したものに適用してもよい。
【0054】
さらに、本実施形
態は、1次ダンパスプリングS1及び2次ダンパスプリングSが互いに異なる円周上にそれぞれ配設されるとともに直列に作用するものとされているが、1次ダンパスプリングS1のみ有するもの(すなわち、周方向に亘って一列だけダンパスプリングが設けられたもの)、或いは1次ダンパスプリングS1及び2次ダンパスプリングS2が並列に作用するものであってもよい。