特許第5832479号(P5832479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本特殊陶業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000002
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000003
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000004
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000005
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000006
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000007
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000008
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000009
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000010
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000011
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000012
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000013
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000014
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000015
  • 特許5832479-ガスセンサ 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5832479
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20151126BHJP
   G01N 27/419 20060101ALI20151126BHJP
【FI】
   G01N27/58 B
   G01N27/46 327Z
【請求項の数】10
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2013-118076(P2013-118076)
(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公開番号】特開2014-52363(P2014-52363A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2014年9月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-177408(P2012-177408)
(32)【優先日】2012年8月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109298
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 昇
(72)【発明者】
【氏名】古田 斉
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−228955(JP,A)
【文献】 特開2011−117937(JP,A)
【文献】 特開昭62−204151(JP,A)
【文献】 特開2005−153449(JP,A)
【文献】 特開2004−061323(JP,A)
【文献】 特開2004−327256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
G01N 27/419
G01N 27/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の固体電解質体と、該固体電解質体を挟んで当該固体電解質体上に形成された一対の電極と、を有する検出素子を備えるとともに、
前記一対の電極のうち、一方の電極は、被測定ガスに接する検知電極であり、他方の電極は、酸素基準部として機能する基準電極であるガスセンサにおいて、
前記基準電極には、前記固体電解質体の表面に沿って延設された多孔質の基準電極リードが接続されており、
前記基準電極リードは、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、
前記基準電極リードの比抵抗は、前記基準電極の比抵抗より低く、
前記セラミックの焼結平均一次粒子径は、前記貴金属の焼結平均一次粒子径より大きいことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記基準電極リードの通気量は、前記基準電極の通気量の66.4%以上であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記検出素子を加熱する発熱体を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
被測定ガス中の特定ガスを検出するための検出素子と、
絶縁層上に形成されて、前記検出素子を加熱する多孔質の発熱体と、
を備えたガスセンサであって、
前記発熱体には、前記絶縁層の表面に沿って延設された多孔質の発熱体リードが接続されており、
前記発熱体リードは、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、
前記発熱体リードの比抵抗は、前記発熱体の比抵抗より低く、
前記セラミックの焼結平均一次粒子径は、前記貴金属の焼結平均一次粒子径より大きいことを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
前記発熱体リードの通気量は、前記発熱体の通気量の20%以上であることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
板状の固体電解質体と、該固体電解質体を挟んで当該固体電解質体上に形成された一対の電極と、を有する検出素子と、
絶縁層上に形成されて、前記検出素子を加熱する多孔質の発熱体と、
を備え、
前記一対の電極のうち、一方の電極は、被測定ガスに接する検知電極であり、他方の電極は、酸素基準部として機能する基準電極であるガスセンサであって、
前記基準電極には、前記固体電解質体の表面に沿って延設された多孔質の基準電極リードが接続されるとともに、前記発熱体には、前記絶縁層の表面に沿って延設された多孔質の発熱体リードが接続されており、
前記基準電極リード及び発熱体リードは、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、
前記基準電極リードの比抵抗は、前記基準電極より低く、且つ、前記発熱体リードの比抵抗は、前記発熱体より低く、
前記基準電極リード及び前記発熱体リードのセラミックの焼結平均一次粒子径は、前記貴金属の焼結平均一次粒子径より大きいことを特徴とするガスセンサ。
【請求項7】
前記基準電極リードの通気量は、前記基準電極の通気量の66.4%以上であり、且つ、前記発熱体リードの通気量は、前記発熱体の通気量の20%以上であることを特徴とする請求項6に記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記貴金属は、白金、パラジウム、白金−パラジウム合金、白金−金合金のいずれか1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記貴金属の焼結平均一次粒子径は、1.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【請求項10】
前記セラミックの焼結平均一次粒子径は、1.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のガスセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象ガス(被測定ガス)中の特定ガス濃度等を検出するためのセンサ素子や、そのセンサ素子を加熱する発熱体を備えたガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの排気ガス中の特定ガス(例えば酸素)の濃度に応じ、大きさの異なる起電力が生じる検出素子を備えたガスセンサが知られている。
この種のガスセンサとしては、例えば下記特許文献1に記載の様に、固体電解質体を挟むように一対の電極(検知電極と基準電極)を設けた検出素子と、検出素子を加熱する発熱体を絶縁基板の内部に配置したヒータ部材とを積層したセンサ素子を備えたガスセンサが知られている。
【0003】
また、下記特許文献2に記載の様に、酸素ポンプセル及び酸素濃度検出セルを備えたガスセンサが知られている。このガスセンサでは、酸素濃度検出セルの一対の電極(検知電極と基準電極)間に発生する起電力が基準電圧となるように、酸素ポンプセルの一対の電極間に流す電流の大きさや向きが制御され、これにより、ガス検出室(測定室)に対して酸素の汲み出し汲み入れが行われる。そして、酸素ポンプセルに流れる電流に基づいて、排ガス中に含まれる酸素濃度、ひいては排気ガスの空燃比を特定する。
【0004】
上述した従来技術においては、検知電極、基準電極、及び発熱体には、それぞれ回路等との導通のために、固体電解質体や絶縁基板の表面に沿って導通部(リード)が設けられている。そして、これらのリードは、通常、検知電極、基準電極、及び発熱体と同じ貴金属等の材料で一括して形成されている。
【0005】
このうち、基準電極及び発熱体については、従来、材料中に貴金属粒が大きいもの(例えばPtの平均粒径が1.5μm以上)を使用していたが、リードの方が導電性を高くする必要があるので、リードも同様な材料で形成すると、抵抗を小さくするために、貴金属の使用量が増えてしまう。
【0006】
この対策として、リードに使用する材料中の貴金属粒を小さくすること(例えばPtの平均粒径1.5μm未満)によって、貴金属の使用量を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−55758号公報
【特許文献2】特開2007−33114号公報
【特許文献3】特開2011−117937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の様に、貴金属粒の粒径を小さくすると、センサ素子の製造時に、材料の焼結が促進され、リードが隙間の無い(或いは隙間の少ない)焼結体となってしまう。
【0009】
そのため、例えば基準電極のリードの隙間が少なくなると、通気性が悪いので、基準源となる酸素を流通させることができず(例えば基準電極に溜めた酸素のガス抜きができず)、その結果、基準電極として機能することができなくなってしまう。
【0010】
また、例えば発熱体のリードの隙間が少なくなると、通気性が悪いので、温度上昇に伴って発熱体内部のガス圧が上昇した場合は、内部ガス(酸素)と貴金属との反応が加速され、その結果、リードが断線して、早期故障に繋がる恐れがある。
【0011】
なお、これとは別に、リードの表面に多孔質のカーボンパターンを形成して、通気量を多くする技術(特許文献3参照)もあるが、その場合には、構造が複雑になり、製造工程も多くなってしまう。
【0012】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、リードに使用する材料中の貴金属粒を小さくして導電性を高めた場合でも、簡易な構造によって、基準電極や発熱体のリードにおいて高い通気性を確保することができるガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明では、第1態様として、板状の固体電解質体と、該固体電解質体を挟んで当該固体電解質体上に形成された一対の電極と、を有する検出素子を備えるとともに、前記一対の電極のうち、一方の電極は、被測定ガスに接する検知電極であり、他方の電極は、酸素基準部として機能する基準電極であるガスセンサにおいて、前記基準電極には、前記固体電解質体の表面に沿って延設された多孔質の基準電極リードが接続されており、前記基準電極リードは、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、前記基準電極リードの比抵抗は、前記基準電極の比抵抗より低く、前記セラミックの焼結平均一次粒子径は、前記貴金属の焼結平均一次粒子径より大きいことを特徴とする。
【0014】
本第1態様では、基準電極には多孔質の基準電極リードが接続されており、この基準電極リードは、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、基準電極リードの比抵抗は、基準電極の比抵抗より低い。従って、基準電極リードは高い導電性を有している。
【0015】
特に、本第1態様では、基準電極リード内のセラミックの焼結平均一次粒子径(粒径)は、貴金属の焼結平均一次粒子径より大きい。つまり、この基準電極リードにおいては、大きな焼結平均一次粒子径を有するセラミックが、多孔質の構造を規定する骨材として機能し、その周囲に、小さな焼結平均一次粒子径を有する貴金属が密着して配置された構造であるので、従来に比べて大きな通気性を有している。
【0016】
このような基準電極リードを製造する際には、貴金属に混ぜる共素地としてセラミックの平均一次粒子径を大きくする(比表面積を小さくする)。このようにセラミックの平均一次粒子径を大きくすると、焼結の際の駆動力が小さくなり、原型を留め易くなる。すなわち、焼成の際には、大きな粒径のセラミックは収縮をあまりせずに柱・骨格を形成し、一方、平均一次粒子径の小さな貴金属は、セラミックの柱・骨格の周囲にそって密に焼結するとともに、貴金属がセラミックの周囲に密着することにより、基準電極リードの構造体中に隙間が発生する。これによって、通気量を確保することができるので、別途カーボンパターンを設けることなく通気性を高めることができる。
【0017】
この様に、本第1態様では、基準電極リードに使用する材料中の貴金属粒を小さくして導電性を高めた場合でも、簡易な構造で、高い通気性を確保することができる。よって、基準電極に基準源となる酸素を容易に流通できるので(例えば基準電極に溜めた酸素のガス抜きが容易にできるので)、基準電極として十分な機能を発揮できるという顕著な効果を奏する。
【0018】
なお、基準電極リード内のセラミックの焼結平均一次粒子径と貴金属の焼結平均一次粒子径とについては、例えばセラミックの焼結平均一次粒子径が貴金属の焼結平均一次粒子径より1.6倍以上であると、十分な通気性を有する好適な間隙を形成できるので望ましい。
【0019】
ここで、平均一次粒子径とは、同一の組成及び構成を有する最小単位の粒子(一次粒子)の径(即ち、貴金属粒の粒径又はセラミック粒の粒径)を示している(以下同様)。なお、原料中及び焼結後の焼結体中においても、上述した特性を有するものは、一次粒子という表現を用いる。また、一次粒子が凝集して形成された粒子を、二次粒子と称する。
特に、焼結平均一次粒子径として表現する場合は、焼結体における平均一次粒子径を示しており、この焼結平均一次粒子径は、焼成後の焼結体の断面をSEM等で観察し、二次粒子を除いて一次粒子のみをカウントすることで算出できる。
【0020】
(2)本発明は、第2態様として、前記基準電極リードの通気量は、前記基準電極の通気量の66.4%以上であることを特徴とする。
本第2態様では、基準電極リードの通気量は、基準電極の通気量の66.4%以上であるので、後述する実験例から明らかな様に、十分な通気性を有している。よって、基準電極としての機能を十分に発揮できる。
【0021】
なお、基準電極として高い機能を発揮するためには、基準電極リードの通気量としては、0.44×10−6cc/sec以上が好適である。
【0022】
(3)本発明では、第3態様として、前記検出素子を加熱する発熱体を備えたことを特徴とする。
本第3態様では、発熱体によって検出素子を加熱することにより、固体電解質体を速やかに活性化温度にまで上昇させることができる。
(4)本発明では、第4態様として、被測定ガス中の特定ガスを検出するための検出素子と、絶縁層上に形成されて、前記検出素子を加熱する多孔質の発熱体と、を備えたガスセンサであって、前記発熱体には、前記絶縁層の表面に沿って延設された多孔質の発熱体リードが接続されており、前記発熱体リードは、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、前記発熱体リードの比抵抗は、前記発熱体の比抵抗より低く、前記セラミックの焼結平均一次粒子径は、前記貴金属の焼結平均一次粒子径より大きいことを特徴とする。
【0023】
本第1態様では、多孔質の発熱体には多孔質の発熱体リードが接続されており、この発熱体リードは、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、発熱体リードの比抵抗は、発熱体の比抵抗より低い。従って、発熱体リードは高い導電性を有している。
【0024】
特に、本第4態様では、発熱体リード内のセラミックの焼結平均一次粒子径は、貴金属の焼結平均一次粒子径より大きい。つまり、この発熱体リードにおいては、大きな焼結平均一次粒子径を有するセラミックが、多孔質の構造を規定する骨材として機能し、その周囲に、小さな焼結平均一次粒子径を有する貴金属が密着して配置された構造であるので、従来に比べて大きな通気性を有している。
【0025】
このような発熱体リードを製造する際には、貴金属に混ぜる共素地としてセラミックの平均一次粒子径を大きくするが、セラミックの平均一次粒子径を大きくすると、焼結の際の駆動力が小さくなり、原型を留め易くなる。すなわち、焼成の際には、大きな粒径のセラミックは収縮をあまりせずに柱・骨格を形成し、一方、平均一次粒子径の小さな貴金属は、セラミックの柱・骨格の周囲にそって密に焼結するとともに、発熱体リードの構造体中に隙間が発生する。よって、通気性を高めることができる。
【0026】
この様に、本第4態様では、上述した発熱体リードの構成によって、発熱体リードに使用する材料中の貴金属粒を小さくして導電性を高めた場合でも、簡易な構造で、高い通気性を確保することができる。
【0027】
また、発熱体が高温になって内部圧力が増加すると、発熱体の内部の残留酸素と例えば発熱体リード内の貴金属との反応が促進されて貴金属酸化物が発生し易くなる。これは、貴金属と酸素との反応速度は、温度と圧力とに依存するからである。そして、酸化還元が繰り返されると粒成長が進むので、その結果、表面張力で収縮が起こり、局所的に貴金属の繋がりが太い部分と細い部分とができる。この細い部分では、抵抗値が増大するので、その部位の温度が上昇すると、発熱体が形成されている基板自身の粒成長が促進される。その結果、基板にひけ(変形)が生じるので、それによって、発熱体リードが断線することがある。
【0028】
それに対して、本第4態様では、上述の様な発熱体リードの構成を備えているので、発熱体内部の残留酸素を、発熱体リードを介して効率よく逃がすことができる。そのため、残留酸素と貴金属との反応が生じにくいので、発熱体リードの断線を効果的に抑制することができる。
【0029】
なお、発熱体リード内のセラミックの焼結平均一次粒子径と貴金属の焼結平均一次粒子径とについては、例えばセラミックの焼結平均一次粒子径が貴金属の焼結平均一次粒子径より1.6倍以上であると、十分な通気性を有する好適な間隙を形成できるので望ましい。
【0030】
(5)本発明では、第5態様として、前記発熱体リードの通気量は、前記発熱体の通気量の20%以上であることを特徴とする。
本第2態様では、発熱体リードの通気量は、発熱体の通気量の20%以上であるので、後述する実験例から明らかな様に、十分な通気性を有している。よって、発熱体リードの断線を、一層効果的に低減することができる。
【0031】
なお、発熱体として高い耐久性を発揮するためには、発熱体リードの通気量としては、0.065×10−6cc/sec以上が好適である。
【0032】
(6)本発明は、第6態様として、板状の固体電解質体と、該固体電解質体を挟んで当該固体電解質体上に形成された一対の電極と、を有する検出素子と、絶縁層上に形成されて、前記検出素子を加熱する多孔質の発熱体と、を備え、前記一対の電極のうち、一方の電極は、被測定ガスに接する検知電極であり、他方の電極は、酸素基準部として機能する基準電極であるガスセンサであって、前記基準電極には、前記固体電解質体の表面に沿って延設された多孔質の基準電極リードが接続されるとともに、前記発熱体には、前記絶縁層の表面に沿って延設された多孔質の発熱体リードが接続されており、前記基準電極リード及び発熱体リードは、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、前記基準電極リードの比抵抗は、前記基準電極より低く、且つ、前記発熱体リードの比抵抗は、前記発熱体より低く、前記基準電極リード及び前記発熱体リードのセラミックの焼結平均一次粒子径は、前記貴金属の焼結平均一次粒子径より大きいことを特徴とする。
【0033】
本第6態様のガスセンサは、上述した第1態様及び第4態様の構成を備えている。従って、前記第1態様及び第4態様と同様な効果を奏する。
(7)本発明は、第7態様として、前記基準電極リードの通気量は、前記基準電極の通気量の66.4%以上であり、且つ、前記発熱体リードの通気量は、前記発熱体の通気量の20%以上であることを特徴とする。
【0034】
本第6態様のガスセンサは、上述した第2態様及び第5態様の構成を備えている。従って、前記第2態様及び第5態様と同様な効果を奏する。
(8)本発明は、第8態様として、前記貴金属は、白金、パラジウム、白金−パラジウム合金、白金−金合金のいずれか1種であることを特徴とする。
【0035】
本第8態様は、貴金属として耐熱性を有する好適な物質を例示したものである。
(9)本発明は、第9態様として、前記貴金属の焼結平均一次粒子径は、1.5μm以下であることを特徴とする。
【0036】
基準電極リードや発熱体リードの貴金属の焼結平均一次粒子径が、1.5μmを上回る場合には、貴金属粒同士の接触面積が少なく、比抵抗を下げることが容易ではない。また、基準電極リードや発熱体リードを薄膜印刷する場合には、(焼成後にそのような粒径となる材料では)粒が大き過ぎて好適に印刷できない。よって、本第9形態の範囲が好適である。
【0037】
(10)本発明は、第10態様として、前記セラミックの焼結平均一次粒子径は、1.5μm以下であることを特徴とする。
【0038】
基準電極リードや発熱体リードのセラミックの焼結平均一次粒子径が、1.5μmを上回る場合には、(焼成後にそのような粒径となる材料では)基準電極リードや発熱体リードが形成される基板との接触面積が少なく、基板との密着性を高めることが難しい。よって、本第10形態の範囲が好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1実施形態の空燃比センサを軸方向に沿って破断して示す説明図である。
図2】第1実施形態におけるセンサ素子を示す斜視図である。
図3】第1実施形態におけるセンサ素子を分解して示す斜視図である。
図4】(a)は第1実施形態における基準電極部を拡大して示す平面図、(b)は(a)におけるA−A断面を示す断面図である。
図5】(a)は第1実施形態におけるヒータを拡大して示す平面図、(b)は(a)におけるB−B断面を示す断面図である。
図6】第2実施形態の空燃比センサを軸方向に沿って破断して示す説明図である。
図7】第2実施形態におけるセンサ素子を示す斜視図である。
図8】第2実施形態におけるセンサ素子を分解して示す斜視図である。
図9】(a)は第2実施形態における基準電極部を拡大して示す平面図、(b)は(a)におけるC−C断面を示す断面図である。
図10】(a)は第2実施形態におけるヒータを拡大して示す平面図、(b)は(a)におけるD−D断面を示す断面図である。
図11】実験例2における基準室形成電流の印加状態とセンサ出力との関係を示すグラフである。
図12】発熱体と発熱体リードとの通気量比と、その通気量比における寿命劣化の状態を示す表である。
図13】基準電極と基準電極リードとの通気量比を示す表である。
図14】各リードの白金の焼結平均粒子径と、比抵抗の判定結果を示す表である。
図15】各リードのアルミナの焼結平均粒子径と、密着性の判定結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明のガスセンサの実施の形態について説明する。
[第1実施形態]
以下では、ガスセンサとして、被測定ガス中の酸素濃度(従って空燃比)を検出できる空燃比センサの実施形態について説明する。
【0041】
a)まず、本実施形態の空燃比センサの全体構成について、図1に基づいて説明する。
この空燃比センサは、例えば、自動車に搭載した内燃機関の排気管(図示しない)に取り付けられて、排気管内を流通する排ガス中の酸素ガス成分の濃度に基づき空燃比を検出するものである。なお、図1の下方を空燃比センサの先端側とし、その反対側を後端側として説明する。
【0042】
図1に示す様に、本実施形態の空燃比センサ1は、主として、筒状のハウジング3と、略筒状の保持体5と、この保持体5を介してハウジング3内に保持される板状のセンサ素子7とを備えている。
【0043】
このうち、前記ハウジング3は、筒状の主体金具9と、金属製の外筒11と、筒状の金属製のプロテクタ13とにより構成されている。
主体金具9は、その外周に雄ねじ部14を備えており、雄ねじ部14を内燃機関の排気管に形成された雌ねじ孔部(図示せず)に締着することにより、主体金具9自身が排気管に固定される。
【0044】
外筒11は、その先端開口部15を主体金具9の後端小径部17に嵌め合わせ、外方から同軸的にレーザ溶接によって固着されている。
プロテクタ13は、内側プロテクタ19及び外側プロテクタ21により、2重壁構造となっている。
【0045】
内側プロテクタ19は、後端開口部23を主体金具9の先端小径部25の外側から嵌め、レーザ溶接によって固着されており、側壁には複数の内側連通孔27が形成されている。外側プロテクタ21は、後端開口部28を、内側プロテクタ19の外側から嵌め、レーザ溶接によって固着されており、側壁には複数の外側連通孔29が形成されている。
【0046】
また、前記保持体5は、金属カップ31と、セラミックホルダ33と、滑石リング35と、スリーブ37とを備えている。
セラミックホルダ33は、アルミナ製であり、金属カップ31内に嵌め込まれている。滑石リング35は、金属カップ31の内部及び主体金具9の内部の一部にわたり充填されている。スリーブ37は、アルミナ製であり、滑石リング35を後端側から押さえるように、主体金具9に嵌装されている。
【0047】
スリーブ37には、径方向に突出する大径部39が形成されており、大径部39の後端に円環状の金属パッキン41が配置されている。そして、主体金具9のカシメ部43が、金属パッキン41を介してスリーブ37の大径部39を先端側に向けて押圧するようにカシメられている。
【0048】
更に、前記センサ素子7は、その長手方向中間部位にて、保持体5内に同軸的に嵌装されており、このセンサ素子7は、後に詳述する様に、その先端側に、検出部45を有するとともに、後端側に、電極パッド47、49、51、53(図3参照)を備えている。なお、検出部45は、保持部5より先端側(即ち被測定ガスが導入される空間内)に突出している。
【0049】
また、前記空燃比センサ1は、ハウジング3の外筒11に収容したセパレータ55及びグロメット57を備えている。
セパレータ55は、アルミナからなり、センサ素子7の後端部を覆っている。セパレータ55は、内部に4つの接続端子59、61(図1では2つを示す)を保持しており、各接続端子59、61は、空燃比センサ1の外部に引き出される4本の被覆導線63、65(図1では2本を示す)と各電極パッド47〜53とをそれぞれ電気的に接続している。なお、セパレータ55は、自身の外周面と外筒11の内周面との間に嵌装された保持部材67により保持されている。
【0050】
グロメット57は、フッ素ゴムからなり、外筒11の後端開口部69内に保持されている。このグロメット57は、4つの挿通孔71、73(図1では2つを示す)を有し、各挿通孔71、73に、セパレータ55から引き出された4本の被覆導線63、65が気密的に挿通されている。
【0051】
b)次に、空燃比センサ1の要部であるセンサ素子7について、図2及び図3に基づいて説明する。
図2に示すように、センサ素子7は、酸素濃度の検出を行う板状の検出素子71と、この検出素子71に貼り合わされ、検出素子71を早期に活性化させるための加熱を行う板状のヒータ部材73とを備えている。
【0052】
このセンサ素子7の先端側(図2の下方)には、検出部45の周囲を覆うように、多孔質のセラミック(例えばアルミナ)からなる多孔質保護層75が設けられている。
一方、センサ素子7の後端側には、その表面及び裏面に、上述した電極パッド47〜53が形成されている(図2では表面の電極パッド47、49のみを示す)。
【0053】
以下に、検出素子71とヒータ部材73との構成を詳しく説明する。
<検出素子71の構成>
図3に示すように、検出素子71は、酸素イオン伝導性を有する板状の固体電解質体77を備えている。なお、図3では、図面右側を先端側、その反対側を後端側として説明する。
【0054】
この固体電解質体77は、イットリア(Y)をジルコニア(ZrO)に添加して焼成した部分安定化ジルコニア(YSZ)から構成されている。なお、この部分安定化ジルコニア中のイットリアの添加量は、例えば5mol%である。
【0055】
また、検出素子7は、その表面側に、中間層79及び検知電極部81を備えるとともに、絶縁層83及び電極保護層85を備えている。
中間層79は、部分安定化ジルコニアからなり、固体電解質体77の表面に形成されている。なお、中間層79におけるイットリアの添加量は、例えば4.3mol%であるが、この中間層79を省略してもよい。
【0056】
検知電極部81は、先端側に配置された矩形状の検知電極87と、検知電極87から後端側に線状に延出された検知電極リード89とからなる。この検知電極87及び検知電極リード89は、主成分である貴金属にセラミックス等を添加した材料によって形成されている。具体的には、貴金属としては例えば白金(Pt)を用いるとともに、セラミックスとしては例えばジルコニアを用い、それらの割合は、例えば白金86質量%、ジルコニア1質量%である。
【0057】
検知電極リード89は、検知電極87から固体電解質体77の表面に沿って後端側に向かって延出され、絶縁層83のスルーホール部91を介して電極パッド49に接続されている。
絶縁層83は、例えばアルミナからなる矩形状の緻密層であり、検知電極リード89を覆うように、固体電解質体77の表面に積層されている。
【0058】
電極保護層85は、例えばアルミナからなる矩形状の多孔質層であり、検知電極87の被毒を防止するために、検知電極87の表面を覆うように形成されている。
一方、検出素子7の裏面側には、通気性を有する多孔質の基準電極部93が形成されている。この基準電極部93は、先端側に配置された矩形状の多孔質の基準電極95と、基準電極95から後端側に線状に延出された多孔質の基準電極リード97とからなる。
【0059】
基準電極リード97は、基準電極95から固体電解質体77の裏面に沿って後端側に向かって延出され、固体電解質体77のスルーホール部99、絶縁層83のスルーホール部101を介して電極パッド47に接続されている。
【0060】
詳しくは、前記基準電極部93は、図4に拡大して示すように(図4(a)では裏面側から見た状態示し、図4(b)では上下を逆に記載してある)、固体電解質体77上に形成された基準電極リード97の先端部97aの上に、基準電極95の側端より後端側に突出する突出部95aが積層されるようにして、基準電極95と基準電極リード97とが電気的に接続されて一体に形成されている。なお、突出部95aは基準電極95と同様な構成である。
【0061】
特に、本実施形態では、基準電極95と基準電極リード97との構成が大きく異なっている。
具体的には、基準電極95と基準電極リード97は、貴金属(例えば白金)を主成分とするとともに、セラミック(例えばジルコニア)を含有してなり、更に、基準電極リード97の比抵抗は基準電極95の比抵抗より低く、且つ、セラミックの焼結平均一次粒子径は貴金属の焼結平均一次粒子径より大きい。しかも、基準電極リード97の通気量は、基準電極95の通気量の20%以上である。更に、セラミックの焼結平均一次粒子径と貴金属の焼結平均一次粒子径とは、共に1.5μm以下である。
【0062】
詳しくは、基準電極95の組成は、白金86質量%、ジルコニア14質量%であり、その比抵抗は例えば96μΩ・cmである。また、白金の焼結平均一次粒子径は例えば10μmであり、ジルコニアの焼結平均一次粒子径は例えば0.8μmであり、基準電極95の通気量は例えば0.663×10−6cc/secである。
【0063】
一方、基準電極リード97の組成は、白金94質量%、アルミナ6質量%であり、その比抵抗は例えば13μΩ・cmである。また、白金の焼結平均一次粒子径は例えば0.6μmであり、アルミナの焼結平均一次粒子径は例えば1μmであり、基準電極リード97の通気量は例えば0.44×10−6cc/secである。
<ヒータ部材73の構成>
図3に戻り、ヒータ部材73は、例えばアルミナからなる一対の絶縁層103、105と、この一対の絶縁層103、105の間に挟持された多孔質のヒータ107とを備えている。
【0064】
ヒータ107は、通電により発熱する多孔質の発熱体109と、この発熱体109の両接続端部109a、109b(図5参照)から延出する一対の多孔質の発熱体リード111、113とからなり、発熱体109は、例えば蛇行状或いはジグザグ状に形成されている。
【0065】
なお、発熱体リード111は、絶縁層105のスルーホール部115を介し電極パッド51に接続されており、発熱体リード113は、絶縁層105のスルーホール部117を介し電極パッド53に接続されている。
【0066】
詳しくは、前記ヒータ93は、図5に拡大して示すように、絶縁層105上に形成された発熱体リード111、113の先端部111a、113aの上に、発熱体109の接続端部109a、109bが積層されるようにして、発熱体109と発熱体リード111、113とが電気的に接続されて一体に形成されている。
【0067】
特に、本実施形態では、発熱体109と発熱体リード111、113との構成が大きく異なっている。
具体的には、発熱体109と発熱体リード111、113は、貴金属(例えば白金)を主成分とするとともに、セラミック(例えばジルコニア)を含有してなり、更に、発熱体リード111、113の比抵抗は発熱体109の比抵抗より低く、且つ、セラミックの焼結平均一次粒子径は貴金属の焼結平均一次粒子径より大きい。しかも、発熱体リード111、113の通気量は、発熱体109の通気量の20%以上である。更に、セラミックの焼結平均一次粒子径と貴金属の焼結平均一次粒子径とは、共に1.5μm以下である。
【0068】
詳しくは、発熱体109の組成は、白金86質量%、アルミナ14質量%であり、その比抵抗は例えば80μΩ・cmである。また、白金の焼結平均一次粒子径は例えば3.0μmであり、アルミナの焼結平均一次粒子径は例えば0.4μmであり、発熱体109の通気量は例えば0.34×10−6cc/secである。
【0069】
一方、発熱体リード111、113の組成は、白金94質量%、アルミナ6質量%であり、その比抵抗は例えば13μΩ・cmである、また、白金の焼結平均一次粒子径は例えば0.6μmであり、アルミナの焼結平均一次粒子径は例えば1.0μmであり、発熱体リード111、113の通気量は例えば0.064×10−6cc/secである。
【0070】
c)次に、センサ素子7の製造方法について、前記図3に基づいて説明する。
なお、基準電極部93とヒータ107の製造方法以外は、従来と同様であるので、基準電極部93とヒータ107の製造方法を中心に説明する。
【0071】
まず、例えば特開2008−14764号公報に記載の様に、従来と同様な手法(例えばドクターブレード法)によって、検出素子71の製造に使用する絶縁層83や固体電解質体77のグリーンシートを作製する。例えばアルミナを主成分とする材料を用いて絶縁層83となるグリーンシートを作製し、部分安定化ジルコニアを主成分とする材料を用いて固体電解質体となるグリーンシートを作製する。
【0072】
次に、検知電極部81や基準電極部93を形成する材料からなるペーストを用いて、例えばスクリーン印刷によって、固体電解質体77の表裏面に検知電極部81や基準電極部93のパターンを形成する。
【0073】
特に、本実施形態では、基準電極部93のパターンを形成する際には、まず、基準電極リード97を構成する材料を用いて、固体電解質体77上に基準電極リード97のパターンを形成する。ここで、基準電極リード97の材料としては、上述した基準電極リード97の構造を形成するための材料を使用する。具体的には、平均一次粒子径0.6μmの白金を94質量%、平均一次粒子径1.0μmのアルミナを6質量%含む材料に、有機材料等を加えてペースト化したものを用いる。
【0074】
その後、基準電極95を構成する材料を用いて、前記基準電極リード97のパターンの先端に、基準電極95の突出部95aが重なるようにして、固体電解質体77上に基準電極95のパターンを形成する。ここで、基準電極95を構成する材料としては、上述した基準電極95の構造を形成するための材料を使用する。具体的には、平均一次粒子径10μmの白金を86質量%、平均一次粒子径0.8μmのジルコニアを14質量%含む材料に、有機材料等を加えてペースト化したものを用いる。
【0075】
なお、検知電極部81を形成する材料としては、従来と同様な材料を用いる。具体的には、平均一次粒子径10μmの白金を86質量%、平均一次粒子径0.8μmのジルコニアを14質量%含む材料に、有機材料等を加えてペースト化したものを用いる。
【0076】
一方、従来と同様な手法(例えばドクターブレード法)によって、ヒータ部材73の製造に使用する絶縁層103、105のグリーンシートを作製する。例えばアルミナを主成分とする材料を用いて絶縁層103、105となるグリーンシートを作製する。
【0077】
次に、ヒータ107を形成する材料からなるペーストを用いて、例えばスクリーン印刷によって、絶縁層105の表面にヒータ107のパターンを形成する。
特に、本実施形態では、ヒータ107のパターンを形成する際には、まず、一対の発熱体リード111、113を構成する材料を用いて、絶縁層105上に発熱体リード111、113のパターンを形成する。ここで、発熱体リード111、113を構成する材料としては、上述した発熱体リード111、113の構造を形成するための材料を使用する。具体的には、平均一次粒子径0.6μmの白金を94質量%、平均一次粒子径1.0μmのアルミナを6質量%含む材料に、有機材料等を加えてペースト化したものを用いる。
【0078】
その後、発熱体109を構成する材料を用いて、前記各発熱体リード111、113のパターンの先端に、発熱体109の接続端部109a、109bが重なるようにして、絶縁層体105上に発熱体109のパターンを形成する。ここで、発熱体109構成する材料としては、上述した発熱体109の構造を形成するための材料を使用する。具体的には、平均一次粒子径3.0μmの白金を86質量%、平均一次粒子径0.4μmのジルコニアを14質量%含む材料に、有機材料等を加えてペースト化したものを用いる。
【0079】
その後、上述した未焼成の(各パターンを有する又は有しない)各グリーンシートや、その他必要な各材料(例えば中間層79や電極保護層85の材料など)を、前記図3に示す様に積層し、所定の焼成温度で一体に焼成した。なお、スルーホール部91、101、115、117や電極パッド47〜53は、従来と同様に、定法によって形成した。
【0080】
これによって、センサ素子7を得ることができるので、このセンサ素子7を、従来と同様に組み付けることにより、空燃比センサ1を製造することができる。
d)次に、本実施形態の空燃比センサ1の効果について説明する。
【0081】
・本実施形態の空燃比センサ1では、下記の様にして空燃比を求めることができる。
空燃比センサ1の検知電極87を排ガスに晒すとともに、基準電極95に酸素基準源となる酸素を供給する(即ち大気を導入する)することにより、検知電極95と基準電極95とにおける酸素濃度の違いによって起電力を生じる。この起電力は、酸素濃度の違いに対応しているので、起電力から酸素濃度(従って空燃比)を求めることができる。
【0082】
・また、本実施形態では、基準電極95には多孔質の基準電極リード97が接続されており、この基準電極リード97は、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、基準電極リード97の比抵抗は、基準電極95の比抵抗より低い。従って、基準電極リード97は高い導電性を有している。
【0083】
特に、本実施形態では、基準電極リード97内のセラミックの焼結平均一次粒子径は、貴金属の焼結平均一次粒子径より大きく、基準電極リード97の通気量は、基準電極95の通気量の66.4%以上である。
【0084】
つまり、本実施形態では、上述した基準電極95の基準電極リード97の構成によって、基準電極リード97に使用する材料中の貴金属粒を小さくして導電性を高めた場合でも、簡易な構造で、高い通気性を確保することができる。よって、基準電極95に基準源となる酸素を容易に流通できるので、基準電極95として十分な機能を発揮できるという顕著な効果を奏する。
【0085】
・更に、本実施形態では、多孔質の発熱体109には多孔質の発熱体リード111、113が接続されており、この発熱体リード111、113は、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、発熱体リード111、113の比抵抗は、発熱体109の比抵抗より低い。従って、発熱体リード111、113は高い導電性を有している。
【0086】
特に、本実施形態では、発熱体リード111、113内のセラミックの焼結平均一次粒子径は、貴金属の焼結平均一次粒子径より大きく、発熱体リード111、113の通気量は、発熱体109の通気量の20%以上である。
【0087】
つまり、本実施形態では、上述した発熱体109の発熱体リード111、113の構成によって、発熱体リード111、113に使用する材料中の貴金属粒を小さくして導電性を高めた場合でも、簡易な構造で、高い通気性を確保することができる。
【0088】
しかも、本実施形態では、発熱体リード111、113の通気性が高いので、発熱体109の内部の温度が上昇して圧力が高くなった場合でも、発熱体109内部の残留酸素を、発熱体リード111、119を介して効率よく逃がすことができる。そのため、残留酸素と貴金属との反応が生じにくいので、発熱体リード111、113の断線を効果的に抑制することができる。
【0089】
e)変形例
本実施形態では、検出素子71とヒータ部材73とを備えたセンサ素子7について説明したが、ヒータ部材73を省略することもできる。この場合は、基準電極部93が外部に露出しないように、絶縁層103で覆う。
【0090】
また、本実施形態では、基準電極部93として、上述した基準電極95及び基準電極リード97からなる構成について説明したが、基準電極部93として、従来の構成の基準電極部(基準電極及び基準電極リードが同様な構造の基準電極部)を用い、ヒータ部材73のみ本実施形態の構成としてもよい。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
【0091】
a)まず、本実施形態の空燃比センサの全体構成について、図6に基づいて説明する。
この空燃比センサは、排気管内を流通する排ガス中の酸素ガス成分の濃度に基づき空燃比を検出する、いわゆる全領域空燃比センサである。なお、図6の下方を空燃比センサの先端側とし、その反対側を後端側として説明する。
【0092】
図6に示す様に、本実施形態の空燃比センサ201は、前記第1実施形態と同様に、主として、筒状のハウジング203と、略筒状の保持体205と、この保持体205を介してハウジング203内に保持される板状のセンサ素子207とを備えている。
【0093】
このうち、ハウジング203は、前記第1実施形態と同様に、筒状の主体金具209と、金属製の外筒211と、筒状の金属製のプロテクタ213とにより構成されている。
具体的には、主体金具209の後端側には、外筒211が固定され、先端側には、内側プロテクタ215及び外側プロテクタ217からなる2重壁構造のプロテクタ213が固定されている。
【0094】
また、前記保持体5は、前記第1実施形態と同様に、金属カップ219と、アルミナ製のセラミックホルダ221と、滑石リング223と、アルミナ製のスリーブ227とを備えている。なお、滑石リング223は、先端部229と後端部231の2重構造となっている。
【0095】
前記スリーブ227の大径部233の後端には、円環状の金属パッキン235が配置され、主体金具209のカシメ部237によって、同様にカシメられている。
更に、前記センサ素子207は、その長手方向中間部位にて、保持体205内に同軸的に嵌装されており、このセンサ素子207は、後に詳述する様に、その先端側に、検出部239を備えるとともに、後端側に、電極パッド241、242、243、244、245(図7図8参照)を備えている。
【0096】
また、前記空燃比センサ201は、ハウジング203の外筒211に収容したセパレータ246及びグロメット247を備えている。
セパレータ246は、先端セパレータ248及び後端セパレータ249からなり、先端セパレータ248は、センサ素子207の後端部を覆っている。なお、先端セパレータ248は、その外周面と外筒211の内周面との間に嵌装した保持部材250により保持され、後端セパレータ249は、先端セパレータ248とグロメット247との間に挟まれている。
【0097】
このセパレータ246の内部には、5つの接続端子251、253、255(図6では3つを示す)を保持されており、各接続端子251〜255は、空燃比センサ201の外部に引き出される5本の被覆導線257、259、261、263、265(図6では3本を示す)と各電極パッド241〜245とをそれぞれ電気的に接続している。
【0098】
なお、グロメット247には、5本の被覆導線257〜265が気密的に挿通されている。
b)次に、空燃比センサ201の要部であるセンサ素子207について、図7及び図8に基づいて説明する。
【0099】
図7に示すように、センサ素子207は、酸素濃度の検出を行う板状の検出素子271と、この検出素子271に貼り合わされ、検出素子271を早期に活性化させるための加熱を行う板状のヒータ部材273とを備えている。
【0100】
このセンサ素子207の先端側(図7の下方)には、検出部239の周囲を覆うように、多孔質のセラミック(例えばアルミナ)からなる多孔質保護層275が設けられている。
【0101】
一方、センサ素子207の後端側には、その表面及び裏面に、上述した電極パッド241〜245が形成されている。
以下に、検出素子271とヒータ部材273との構成を詳しく説明する。
<検出素子271の構成>
図8に示すように、検出素子271は、主として、酸素ポンプセル281及び酸素濃度検出セル283を備えている。
【0102】
詳しくは、図8の上方より、第1絶縁層285、外側ポンプ電極部287、第1固体電解質体289、内側ポンプ電極部291、第2絶縁層301、検知電極部303、第2固体電解質体305、基準電極部307を備えている。
【0103】
なお、酸素ポンプセル281は、第1固体電解質体289とその両側の外側ポンプ電極部287及び内側ポンプ電極部291とにより構成されており、酸素濃度検知セル283は、第2固体電解質体305とその両側の検知電極部303及び基準電極部307とにより構成されている。
【0104】
前記構成のうち、第1絶縁層285及び第2絶縁層は、例えばアルミナからなる緻密層であり、第1固体電解質体289及び第2固体電解質体303は、前記第1実施形態と同様に、例えばイットリアを5mol%含む部分安定化ジルコニアからなる固体電解質層である。
【0105】
なお、第1絶縁層285の先端側には開口部309が設けられており、その開口部309には、例えばアルミナからなる多孔質保護層311が形成されている。また、第2絶縁層301の先端側には、ガス検出室(測定室)327を備えるとともに、測定室327と外部との境界部分には、一対の多孔質の拡散制限部329を備えている。
【0106】
前記外側ポンプ電極部287及び内側ポンプ電極部291は、従来と同様に、例えば貴金属の白金86質量%、ジルコニア14質量%からなる。
このうち、外側ポンプ電極部287は、その先端側に外側ポンプ電極313を備えるとともに、外側ポンプ電極313から延びる外側リード315を備えている。この外側リード315の後端は、第1絶縁層285のスルーホール部317を介して電極パッド241に接続されている。
【0107】
同様に、内側ポンプ電極部291は、その先端側に内側ポンプ電極319を備えるとともに、外側ポンプ電極319から延びる外側リード321を備えている。この内側リード321の後端は、第1固体電解質体289のスルーホール部323及び第1絶縁層285のスルーホール部325を介して電極パッド242に接続されている。
【0108】
前記検知電極部303は、先端側の検知電極331と、検知電極331から後端側に延びる検知電極リード335とからなる。この検知電極リード335の後端は、第2絶縁層301のスルーホール部337を介して、内側リード321の後端に接続されている。
【0109】
この検知電極331及び検知電極リード335は、前記第1実施形態と同様な組成であり、主成分である貴金属にセラミックス等を添加してなる材料によって形成されている。
一方、前記基準電極部307は、前記第1実施形態と同様に、先端側に配置された多孔質の基準電極339と、基準電極339から後端側に延びる多孔質の基準電極リード341とからなる。
【0110】
この基準電極リード341の後端は、第2固体電解質体305のスルーホール部343、第2絶縁層301のスルーホール部345、第1固体電解質体289のスルーホール部347、第1絶縁層285のスルーホール部349を介して電極パッド243に接続されている。
【0111】
詳しくは、前記基準電極部307は、図9に拡大して示すように(図9(a)では裏面側から見た状態示し、図9(b)では上下を逆に記載してある)、第2固体電解質体305上に形成された基準電極リード341の先端部341aの上に、基準電極339の側端より後端側に突出する突出部339aが積層されるようにして、基準電極339と基準電極リード341とが電気的に接続されて一体に形成されている。
【0112】
特に、本実施形態では、基準電極339と基準電極リード341との構成が大きく異なっている。
具体的には、前記第1実施形態と同様に、基準電極339と基準電極リード341は、貴金属(例えば白金)を主成分とするとともに、セラミック(例えばジルコニア)を含有してなり、更に、基準電極リード341の比抵抗は基準電極339の比抵抗より低い。また、セラミックの焼結平均一次粒子径は貴金属の焼結平均一次粒子径より大きく、且つ、両方の粒子とも焼結平均一次粒子径は1.5μm以下であり、しかも、基準電極リード341の通気量は、基準電極95の通気量の66.4%以上である。
【0113】
なお、基準電極339及び基準電極リード341の組成、比抵抗、白金及びジルコニアの平均一次粒子径、通気量は、前記第1実施形態と同様である。
<ヒータ部材273の構成>
図8に戻り、ヒータ部材273は、前記第1実施形態と同様に、例えばアルミナからなる一対の絶縁層351、353と、この一対の絶縁層351、353の間に挟持された多孔質のヒータ355とを備えている。
【0114】
ヒータ355は、通電により発熱する多孔質の発熱体357と、この発熱体357の両接続端部357a、357b(図10参照)から延びる一対の多孔質の発熱体リード359、361とからなる。
【0115】
なお、発熱体リード359は、絶縁層353のスルーホール部363を介して電極パッド244に接続され、発熱体リード361は、絶縁層353のスルーホール部365を介して電極パッド245に接続されている。
【0116】
詳しくは、前記ヒータ355は、図10に拡大して示すように、絶縁層353上に形成された発熱体リード359、361の先端部359a、361aの上に、発熱体357の接続端部357a、357bが積層されるようにして、発熱体357と発熱体リード359、361とが電気的に接続されて一体に形成されている。
【0117】
特に、本実施形態では、発熱体357と発熱体リード359、361との構成が大きく異なっている。
具体的には、前記第1実施形態と同様に、発熱体357と発熱体リード359、361は、貴金属(例えば白金)を主成分とするとともに、セラミック(例えばジルコニア)を含有してなり、更に、発熱体リード359、361の比抵抗は発熱体357の比抵抗より低い。また、セラミックの焼結平均一次粒子径は貴金属の焼結平均一次粒子径より大きく、且つ、両方の粒子とも焼結平均一次粒子径は1.5μm以下であり、しかも、発熱体リード359、361の通気量は、発熱体357の通気量の20%以上である。
【0118】
なお、発熱体357と発熱体リード359、361の組成、比抵抗、白金及びジルコニアの焼結平均一次粒子径、通気量は、前記第1実施形態と同様である。
c)次に、上述した構成を備えた空燃比センサ201の基本的な動作を説明する。
【0119】
まず、酸素濃度検知セル283の基準電極339から検知電極319に向けて微小電流を通電する。この通電より、基準電極339側から検知電極319側に固体電解質体305を介して被測定ガス中の酸素が汲み込まれ、基準電極339が酸素基準部として機能する。
【0120】
次に、両電極339、331間に発生する起電力Vsを検出し、この起電力Vsが基準電圧となるように、酸素ポンプセル281の両ポンプ電極313、319間に流すポンプ電流Ipの大きさや向きを制御する。そして、空燃比センサ201から出力されるポンプ電流Ipの大きさと向きに基づいて、被測定ガス中に含まれる酸素濃度、ひいては排ガスの空燃比を特定する。
【0121】
d)次に、センサ素子207の製造方法について説明する。
なお、基準電極部307とヒータ355の製造方法以外は、従来と同様であるので、基準電極部307とヒータ355の製造方法を詳しく説明する。
【0122】
まず、例えば特開2008−14764号公報に記載の様に、従来と同様な手法(例えばドクターブレード法)によって、検出素子271の製造に使用する絶縁層285、301や固体電解質体289、305のグリーンシートを作製する。例えばアルミナを主成分とする材料を用いて絶縁層285、301となるグリーンシートを作製し、部分安定化ジルコニアを主成分とする材料を用いて固体電解質体となるグリーンシートを作製する。
【0123】
次に、外側ポンプ電極部287、内側ポンプ電極部291、検知電極部303、基準電極部307を形成する材料からなるペーストを用いて、例えばスクリーン印刷によって、
固体電解質体289の表裏面に外側ポンプ電極287や内側ポンプ電極291のパターンを形成し、また、固体電解質体305の表裏面に検知電極部303や基準電極部307のパターンを形成する。
【0124】
特に、本実施形態では、基準電極部307のパターンを形成する際には、前記第1実施形態と同様に、まず、基準電極リード341を構成する材料を用いて、固体電解質体305上に基準電極リード341のパターンを形成する。ここで、基準電極リード341の材料としては、上述した基準電極リード341の構造を形成するための材料を使用する。具体的には、平均一次粒子径0.6μmの白金を94質量%、平均一次粒子径1.0μmのアルミナを6質量%含む材料に、有機材料等を加えてペースト化したものを用いる。
【0125】
その後、基準電極339を構成する材料を用いて、前記基準電極リード341のパターンの先端に、基準電極339の突出部339aが重なるようにして、固体電解質体305上に基準電極339のパターンを形成する。ここで、基準電極339を構成する材料としては、上述した基準電極339の構造を形成するための材料を使用する。具体的には、平均一次粒子径10μmの白金を86質量%、平均一次粒子径0.8μmのジルコニアを14質量%含む材料に、有機材料等を加えてペースト化したものを用いる。
【0126】
なお、外側ポンプ電極部287、内側ポンプ電極部291、検知電極部81を形成する材料としては、従来と同様な材料を用いる。具体的には、平均一次粒子径10μmの白金を86質量%、平均一次粒子径0.8μmのジルコニアを14質量%含む材料に、有機材料等を加えてペースト化したものを用いる。
【0127】
一方、従来と同様な手法(例えばドクターブレード法)によって、ヒータ部材273の製造に使用する絶縁層351、353のグリーンシートを作製する。例えばアルミナを主成分とする材料を用いて絶縁層351、353となるグリーンシートを作製する。
【0128】
次に、ヒータ355を形成する材料からなるペーストを用いて、例えばスクリーン印刷によって、絶縁層353の表面にヒータ355のパターンを形成する。
特に、本実施形態では、ヒータ355のパターンを形成する際には、まず、一対の発熱体リード359、361を構成する材料を用いて、絶縁層353上に発熱体リード359、361のパターンを形成する。ここで、発熱体リード359、361を構成する材料としては、上述した発熱体リード359、361の構造を形成するための材料を使用する。具体的には、平均一次粒子径0.6μmの白金を94質量%、平均一次粒子径1.0μmのアルミナを6質量%含む材料に、有機材料等を加えてペースト化したものを用いる。
【0129】
その後、発熱体357を構成する材料を用いて、前記各発熱体リード359、361のパターンの先端に、発熱体357の接続端部357a、347bが重なるようにして、絶縁層体353上に発熱体357のパターンを形成する。ここで、発熱体357を構成する材料としては、上述した発熱体357の構造を形成するための材料を使用する。具体的には、平均一次粒子径3.0μmの白金を86質量%、平均一次粒子径0.4μmのアルミナを14質量%含む材料に、有機材料等を加えてペースト化したものを用いる。
【0130】
その後、上述した未焼成の(各パターンを有する又は有しない)各グリーンシートや、その他必要な各材料(例えば多孔質保護層311、拡散律速部329、331の材料など)を、前記図8に示す様に積層し、所定の焼成温度で一体に焼成した。なお、スルーホール部349、317、325、347、323、345、337、343、365、363や電極パッド241〜245などは、従来と同様に、定法によって形成した。
【0131】
これによって、センサ素子207を得ることができるので、このセンサ素子207を、従来と同様に組み付けることにより、空燃比センサ201を製造することができる。
e)次に、本実施形態による作用効果について説明する。
【0132】
・本実施形態の空燃比センサ201では、基準電極339には多孔質の基準電極リード341が接続されており、この基準電極リード341は、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、基準電極リード341の比抵抗は、基準電極339の比抵抗より低い。従って、基準電極リード341は高い導電性を有している。
【0133】
特に、本実施形態では、基準電極リード341内のセラミックの焼結平均一次粒子径は、貴金属の焼結平均一次粒子径より大きく、基準電極リード341の通気量は、基準電極339の通気量の66.4%以上である。
【0134】
つまり、本実施形態では、上述した基準電極339の基準電極リード341の構成によって、基準電極リード341に使用する材料中の貴金属粒を小さくして導電性を高めた場合でも、簡易な構造で、高い通気性を確保することができる。よって、基準電極339に溜めた酸素のガス抜きが容易にできるので、基準電極339として十分な機能を発揮できるという顕著な効果を奏する。
【0135】
・また、本実施形態では、多孔質の発熱体357には多孔質の発熱体リード359、361が接続されており、この発熱体リード359、361は、貴金属を主成分とするとともに、セラミックを含有してなり、発熱体リード359、361の比抵抗は、発熱体357の比抵抗より低い。従って、発熱体リード359、361は高い導電性を有している。
【0136】
特に、本実施形態では、発熱体リード359、361内のセラミックの焼結平均一次粒子径は、貴金属の焼結平均一次粒子径より大きく、発熱体リード359、361の通気量は、発熱体357の通気量の20%以上である。
【0137】
つまり、本実施形態では、上述した発熱体リード359、361の構成によって、発熱体リード359、361に使用する材料中の貴金属粒を小さくして導電性を高めた場合でも、簡易な構造で、高い通気性を確保することができる。
【0138】
更に、本実施形態では、発熱体リード359、361の通気性が高いので、発熱体357の内部の温度が上昇して圧力が高くなった場合でも、発熱体357内部の残留酸素を、発熱体リード359、361を介して効率よく逃がすことができる。そのため、残留酸素と貴金属との反応が生じにくいので、発熱体リード359、361の断線を効果的に抑制することができる。
【0139】
f)変形例
本実施形態では、検出素子271とヒータ部材273とを備えたセンサ素子207について説明したが、ヒータ部材273を省略することもできる。
【0140】
また、基準電極部307として、上述した基準電極339及び基準電極リード341からなる構成について説明したが、基準電極部307として、従来の構成の基準電極部(基準電極及び基準電極リードが同様な構造の基準電極部)を用い、ヒータ部材273のみ本実施形態の構成としてもよい。
[実験例]
次に、本発明の効果を確認した実験例について説明する。
<実験例1>
本実験例は、発熱体及び発熱体リードを備えたヒータについて、発熱体と発熱体リードとにおける通気量(単位面積当たりの通気量)の違いによるヒータの耐久性を調べたものである。
【0141】
具体的には、発熱体と発熱体リードとの通気量を図12に示す様に違えて、前記第1実施形態と同様なヒータ部材をそれぞれ作製した。
なお、通気量は、発熱体と発熱体リードとにおいて、それぞれの白金とアルミナの原料の平均一次粒子径を違えることによって異なるように設定した。また、発熱体と発熱体リードとの通気量は、VIC社製 コンソール型全自動Heリークディテクター MS−50を用いて測定した。
【0142】
そして、前記ヒータ部材を用いて、1100℃で、1000時間にわたりヒータに通電を行って連続耐久性の実験を行った。その結果を、図12に示す。
【0143】
なお、図12では、発熱体の通気量(A)(0.34×10−6cc/sec)に対する発熱体リードの通気量(B)の割合である通気量比B/A(%)と、その通気量比における寿命劣化の状態を示している。ここで、寿命劣化が無しとは、基準となる試料(即ち前記通気量比が100%の試料)の故障時間(即ち断線までの時間)と同等の故障時間(詳しくは550時間)を示し、寿命劣化有りとは基準となる試料の故障時間より450時間下回る時間(即ち100時間未満)であったことを示している。
【0144】
図12からわかるように、発熱体の通気量に対する発熱体リードの通気量の割合(B/A)が19%を上回ると、寿命劣化が無く、優れた連続耐久性を有することは明らかである。
【0145】
<実験例2>
本実験例は、基準電極及び基準電極リードを備えた基準電極部について、基準電極リードにおける通気量(単位面積当たりの通気量)の違いによる空燃比センサの出力及びその時間的変化を調べたものである。
【0146】
具体的には、基準電極リードの通気量を図13に示す様に違えて、前記第1実施形態と同様なセンサ素子を備えた空燃比センサをそれぞれ作製した。なお、基準電極リード以外は、前記第1実施形態と同様であり、また、基準電極の通気量は、各試料とも同じ(ここでは、0.663×10−6cc/sec)とした。
なお、通気量は、基準電極リードの白金とアルミナの原料の平均一次粒子径を違えることによって異なるように設定した。また、基準電極と基準電極リードとの通気量は、VIC社製 コンソール型全自動Heリークディテクター MS−50を用いて測定した。
【0147】
そして、各試料の前記空燃比センサを用いて、通気量と出力との関係を調べた。具体的には、素子温度が700℃の時に、空燃比センサの基準電極リードに。例えば(10μAの)電流(基準室形成電流)を5〜60秒間流し、その後、電流を遮断したときの空燃比センサの出力挙動を調べた。なお、出力を求める際の測定雰囲気は大気中である。
その結果を、図11及び図13に記す。なお、図13では、基準電極の通気量(A)(0.663×10−6cc/sec)に対する基準電極リードの通気量(B)の割合である通気量比B/A(%)を示している。
ここで、図13の試料No.16が、(基準電極リードの)原料のPtの平均一次粒子径(0.6μm)より大きな平均一次粒子径(1.0μm)のセラミックを用いたものであり、十分な通気量が確保されている。
一方、試料No.17〜19は、(基準電極リードの)原料のPtの平均一次粒子径より小さな平均一次粒子径のセラミックを用いた比較例である。
更に、試料No.20は、Ptとセラミックの平均一次粒子径(10μm)より小さな平均一次粒子径(0.8μm)のセラミックを用いたものであり、十分な通気量が確保されているが、導電性を確保するために多くのPtが使用されている。
【0148】
図11及び図13から明らかなように、本発明例の試料No.16及び比較例の試料No.20では、基準室形成電流の印加状態に対応した出力が得られた。即ち、印加電流に対応した十分な出力及び印加電流のオフに対応した出力電圧の低下が得られた。
それに対して、比較例の試料No.17〜18では、基準室形成電流の印加を中止した後にも大きなセンサ出力が残っており好ましくない。
この結果から、試料No.16のように、基準電極リードの通気量は、基準電極の66.4%以上であれば優れた性能を発揮することが分かる。
【0149】
<実験例3>
本実験例は、基準電極リード及び発熱体リードについて、貴金属の焼結平均粒子径の違いによる比抵抗の変化を調べたものである。
【0150】
具体的には、基準電極リード及び発熱体リードの白金の焼結平均粒子径を図14に示す様に違えて、第1実施形態と同様なセンサ素子を備えた空燃比センサをそれぞれ作製した。
【0151】
そして、各試料の前記空燃比センサを用いて、比抵抗の変化を調べた。具体的には、比抵抗が従来値の80μΩ・cmを下回った場合は○、同等、もしくは上回った場合は×と判定した。
その結果を、図14に記す。
【0152】
ここで、Ptの焼結平均一次粒子径が2μm以上である試料No.21〜23では、比抵抗が80μΩ・cmを上回ったため、×と判定された。それに対し、Ptの焼結平均一次粒子径が1.5μm以下である試料No.24〜26では、比抵抗が80μΩ・cmを下回ったため、○と判定された。
【0153】
<実験例4>
本実験例は、基準電極リード及び発熱体リードについて、セラミックの焼結平均粒子径の違いによる基板への密着性を調べたものである。
【0154】
具体的には、基準電極リード及び発熱体リードのアルミナの焼結平均粒子径を図15に示す様に違えて、第1実施形態と同様なセンサ素子を備えた空燃比センサをそれぞれ作製した。
【0155】
そして、各試料の前記空燃比センサを用いて、ピーリング試験を行って各リードの基板への密着性を調べた。具体的には、焼成後の各リードに対し、JIS Z 1522に規定されたテープを貼り、その後、引張り試験器で該テープを3cm/sの速度で垂直に引きはがし、各リードが基板から剥がれが生じなかった場合は○、剥がれが生じた場合は×と判定した。
その結果を、図15に記す。
【0156】
ここで、アルミナの焼結平均一次粒子径が1.6μmである試料No.28では、剥がれが生じたため、×と判定された。それに対し、アルミナの焼結平均一次粒子径が1.5μm以下である試料No.27では、剥がれが生じなかったため、○と判定された。
【0157】
尚、本発明は、以上詳述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
例えば、上記実施形態では、被測定ガス中の特定成分のガス濃度を検出するガスセンサとして、被測定ガス中の酸素濃度(従って空燃比)を検出する空燃比センサを例示したが、これに限定されない。本発明は、基準酸素部を自己生成するガスセンサであれば適用でき、例えば被測定ガス中のNOx濃度を検出するNOxセンサにおいて、酸素基準極として機能する基準電極部の基準電極リードを、上記実施形態あるいは変形例に例示した構成とすることができる。
【符号の説明】
【0158】
1、201…空燃比センサ
7、207…センサ素子
71、271…検出素子
73、273…ヒータ部材
77、289、305…固体電解質体
87、331…検知電極
95、339…基準電極
97、341…基準電極リード
109、357…発熱体
111、113、359、361…発熱体リード
図11
図12
図13
図14
図15
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10