(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリブチレンテレフタレート(A)を含む離型フィルムであって、当該離型フィルムに含まれるオリゴマー量が2500ppm以下であり、当該ポリブチレンテレフタレート(A)100質量部に対して、核剤(B)を0.01〜0.5質量部含んでなることを特徴とする離型フィルム。
核剤(B)が、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、ナトリウム2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート、ステアリン酸マグネシウム、及びエチレン・ビスステアリン酸アミドの何れかである請求項1記載の離型フィルム。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板、フレキシブルプリント配線基板、多層プリント配線基板などの製造工程において、プリプレグ又は耐熱フィルムを介して銅張り積層板又は銅箔を熱プレスする際には離型フィルムが使用されている。また、フレキシブルプリント基板の製造工程において、電気回路を形成したフレキシブルプリント基板本体に、熱硬化型接着剤又は熱硬化性接着シートによってカバーレイフィルム又は補強板を熱プレス接着する際に、カバーレイフィルムとプレス熱板とが接着するのを防止するために、離型フィルムが用いられている。
【0003】
かかる用途に用いられる離型フィルムとしては、結晶性ポリメチルペンテンフィルムを使用する方法(特許文献1:特開平2−175247号公報)、トリアセテート、フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのフィルムを使用する方法(特許文献2:特開平7−15103号公報)など、耐熱性を有する種々のフィルムを用いることが提案されており、銅張り積層板と加圧成形する際の温度により、適宜選択されて使用されている。
【0004】
そして、離型フィルムは銅張り積層板と加圧成形後は容易に離型フィルムを除去する必要があることから、作業性を向上させる為に、離型性(低剥離強度)に優れる離型フィルムへの要求が高まっている。
【0005】
一方、
図1に示す構成で、プリント配線基板3と一部に窓部4を有するエポキシ樹脂を接着剤とするカバーレイフィルム(保護フィルム)2とを重ねて、上下を離型フィルム1で挟んで加熱・加圧成形した後に、カバーレイフィルム2から離型フィルム1を剥がす場合に、カバーレイフィルム2と離型フィルム1が奇麗に剥がすことができない場合があることが判った。
【0006】
そこで、本発明者らは、その原因を調べたところ、
図2に示すように、カバーレイフィルム2と離型フィルム1が奇麗に剥がすことができない要因は、加熱・加圧成形時にカバーレイフィルム2の窓部4(端部)に、エポキシ樹脂系接着剤が軟化溶融してカバーレイフィルム2の端部から流れ出たエポキシ樹脂系接着剤の流れ出し部5と離型フィルム1が接触しており、その結果、エポキシ樹脂系接着剤の流れ出し部5と離型フィルム1とが接着して、奇麗に剥がすことができないことが判った。
【0007】
そして、エポキシ樹脂系接着剤の流れ出し部5と離型フィルム1との離型性が不充分である場合には、離型時にエポキシ樹脂系接着剤が欠けてカバーレイフィルム2とプリント配線基板3の接着強度が損なわれ、カバーレイ2がプリント配線板3から剥がれる虞があったり、またエポキシ樹脂系接着剤の断片が残ると、後の工程での不具合につながる事が分かった。
【0008】
また、離型性を改良する方法としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルムの離型面に、シリコーン系離型剤などを塗布する方法(特許文献3:特開2003−62939号公報)などが提案されている。
【0009】
さらに、熱処理などによるポリマーからのフィルム表面に析出してくるオリゴマーを封止するとともに、離型層との密着性に優れたポリエステルフィルムを得るために、ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に、アミノ基を有するシラン化合物とエポキシ基を有するシラン化合物とを含む塗布液を塗布して、塗布層の表面に析出する環状三量体量を2.80mg/m
2以下とする方法(特許文献4:特開2002−105230号公報)、押出成形時のキャスティングロール汚れ及び/又は熱成形時の金型汚れが発生し難いポリエチレンテレフタレート系樹脂シート及びその成形品を得るために、固有粘度が0.60〜1.30dl/gであり、ゲルマニウム金属(以下Geと略記)が含有され、かつオリゴマー(環状三量体)含有量が0.6重量%以下であるポリエチレンテレフタレート系樹脂シートとする方法(特許文献5:特開2001−294682号公報)、二軸延伸ポリエステルフィルムの製膜時における工程汚れを防止し表面欠点をなくして生産性を高める為に、押出機にポリエステル樹脂を供給し、炭酸ガスを該押出機に圧入し、該樹脂を、口金よりシート状に成形して押し出し、冷却ドラム上で急冷固化して未延伸シートを得、その後二軸延伸を行なう方法(特許文献6:特開平10−138331号公報)など、種々の方法が提案されているが、何れも、実施例にはポリエチレンテレフタレートフィルムが記載されているだけである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ポリブチレンテレフタレート(A)>
本発明の離型フィルムを構成するポリブチレンテレフタレート(A)は、オリゴマー量が通常、2500ppm以下、好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1500ppm以下のポリブチレンテレフタレートである。
【0018】
ポリブチレンテレフタレートに含まれるオリゴマー量の下限値は特に限定はされないが、通常、100ppmである。
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)に含まれるオリゴマーは、ポリブチレンテレフタレートの重合時に生じる1,4−ブタンジオールとテレフタル酸からなる環状2量体及び環状3量体である。
【0019】
本発明に係るオリゴマーの量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した量である。
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)は、好ましくは、固有粘度(IV)が1.0〜1.3、より好ましくは1.0〜1.2の範囲にある。
【0020】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)の固有粘度(IV)は、フェノール/テトラクロロエタン(重量比1/1)の混合溶媒を用いて、30℃で測定した溶液粘度から求められる。
【0021】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)は、減圧下もしくは不活性ガス流通下で200℃以上の温度で固相重合した原料を使用することが好ましい。固相重合することによりフィルム成形しやすい固有粘度に調整でき、さらに末端カルボン酸基量の減少、オリゴマーの減少が期待できる。
【0022】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)は、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸との重合体を骨格に有する限り、1,4−ブタンジオールとテレフタル酸とからなる、所謂、PBTと称されるポリブチレンテレフタレートであっても、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテル、ポリエステル、あるいはポリカプロラクタムなどとのブロック共重合体であってもよい。
【0023】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)は、例えば、三菱エンジニアリングプラスチックス社から、商品名 ノバデュラン5010CS(オリゴマー量:1300ppm、IV:1.1)、ノバデュラン5505S(オリゴマー量:2100ppm、IV:1.2)として、製造・販売されている。
【0024】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)の融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて300℃で5分間加熱溶融した後、液体窒素で急冷して得たサンプル10mgを用い、窒素気流中、10℃/分の昇温速度で発熱・吸熱曲線を測定したときの、融解に伴う吸熱ピークの頂点温度を融点(Tm)(℃)とした。
【0025】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)には、本発明の目的を損なわない範囲で、慣用の添加剤などを配合することが出来る。斯かる添加剤としては、特に制限されず、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤の他、滑剤、紫外線吸収剤、触媒失活剤、結晶造核剤などが挙げられる。これらの添加剤は、重合途中または重合後に添加することが出来る。更に、本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)に、所望の性能を付与するため、難燃剤、染顔料などの着色剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤などを配合することが出来る。
【0026】
安定剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−オクチルフェノール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3',5'−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕等のフェノール化合物、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオネート)等のチオエーテル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等の燐化合物などの抗酸化剤、滑剤としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、モンタン酸やモンタン酸エステルに代表される長鎖脂肪酸およびそのエステルなどが挙げられる。
【0027】
結晶核剤としては、脂肪族エステル、脂肪族アミド、脂肪酸金属塩等が挙げられ、脂肪族エステルとしては、ステアリン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライド等の脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド等のヒドロキシ脂肪酸エステル;脂肪族アミドとしては12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド等の脂肪族ビスアミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド;脂肪酸金属塩としては、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等のヒドロキシ脂肪酸金属塩等が挙げられる。結晶化速度と耐熱性、感温性、さらには透明性の観点から、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミドが好ましく、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、エチレビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミドがより好ましく、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドがさらに好ましく、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドが特に好ましい。
【0028】
難燃剤としては、例えば、有機ハロゲン化合物、アンチモン化合物、リン化合物、その他の有機難燃剤、無機難燃剤などが挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、例えば、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂、臭素化ビスフェノールA、ポリペンタブロモベンジルアクリレート等が挙げられる。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられる。リン化合物としては、例えば、リン酸エステル、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等が挙げられる。その他の有機難燃剤としては、例えば、メラミン、シアヌール酸などの窒素化合物などが挙げられる。その他の無機難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ素化合物、ホウ素化合物などが挙げられる。
【0029】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)には、本発明の目的を損なわない範囲で、強化充填材を配合することが出来る。強化充填材としては、特に制限されないが、例えば、板状無機充填材、セラミックビーズ、アスベスト、ワラストナイト、タルク、クレー、マイカ、ゼオライト、カオリン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムや、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維などの無機繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維などの有機繊維などが挙げられる。これらの強化充填材は、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。上記の強化充填材の中では、無機充填材、特にガラス繊維が好適に使用される。
【0030】
強化充填材は、ポリブチレンテレフタレート(A)との界面密着性を向上させるため、収束剤または表面処理剤で表面処理して使用することが好ましい。収束剤または表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、アクリル系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物が挙げられる。強化充填材は、収束剤または表面処理剤により予め表面処理しておくことが出来、または、ポリブチレンテレフタレート(A)の組成物の調製の際に、収束剤または表面処理剤を添加して表面処理することも出来る。強化充填材の添加量は、ポリブチレンテレフタレート(A)100質量部に対し、通常、150質量部以下、好ましくは1〜50質量部の範囲である。
【0031】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)には、必要に応じて、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸エステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を配合することが出来る。これらの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用することも出来る。
【0032】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)に、更に、核剤(B)をポリブチレンテレフタレート(A)100質量部に対して、好ましくは3質量部以下、より好ましくは0.01〜0.5質量部含む、さらに好ましくは0.05〜0.3質量部含むと、より剥離性に優れる剥離フィルムを得ることができる。
【0033】
本発明に係るポリブチレンテレフタレート(A)に配合して使用される核剤(B)としては、公知の有機系結晶核剤や無機系結晶核剤を用いることができる。
無機系結晶核剤としては、タルク、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、第2リン酸アルミニウム、第3リン酸カルシウム及びフェニルホスホネートの金属塩等を挙げることができる。これらの無機系結晶核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていてもよい。
【0034】
有機系結晶核剤としては、フェニルホスホン酸(塩)又はその誘導体、例えば、フェニルホスホン酸亜鉛、フェニルホスホン酸ジクロライド、フェニルホスホン酸ジメチル、リン酸メラミン、ビス(p-メチルペンジリデン)ソルビトール,ビス(p-トルイリデン)ソルビトール等が好ましい。
【0035】
その他の有機系結晶核剤としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレート等の有機カルボン酸金属塩、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウム等の有機スルホン酸塩、ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)等のカルボン酸アミド、エチレン−アクリル酸又はメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩等のカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩又はカリウム塩(いわゆるアイオノマー)、ベンジリデンソルビトール及びその誘導体、ナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート、等のリン化合物金属塩、及び2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム等を挙げることができる。
【0036】
これら核剤の中では、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、ナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート、ステアリン酸マグネシウム、エチレン・ビスステアリン酸アミドなどが好ましい。
【0037】
<離型フィルム>
本発明の離型フィルムは、上記ポリブチレンテレフタレート(A)を含む離型フィルムであって、当該離型フィルムに含まれるオリゴマー量が、2500ppm以下、好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1500ppm以下である。離型フィルムに含まれるオリゴマー量の下限値は特に限定はされないが、通常、100ppmである。
【0038】
本発明に係るオリゴマーの量は、上記同様、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した量である。
本発明の離型フィルムとして、上記ポリブチレンテレフタレート(A)100質量部に対して、核剤(B)を0.01質量部以上含む組成物を用いた場合は、得られる離型フィルムは、よりエポキシ樹脂系接着剤層との剥離性に優れる離型フィルムとなる。
【0039】
本発明の離型フィルムは、上記ポリブチレンテレフタレート(A)を含む層を有している限り、他の層と積層されていてもよい。
本発明に係る離型フィルムは、上記ポリブチレンテレフタレート(A)を含むが、離型フィルムが、他の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を含む場合は、離型フィルムに含まれるポリブチレンテレフタレート(A)の量は、通常、50質量%以上、好ましくは80質量%以上であり、他の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を含まないポリブチレンテレフタレート(A)からなる離型フィルムであってもよい。
【0040】
本発明の離型フィルムとして積層フィルムを用いる場合は、少なくとも片面、すなわち、ポリブチレンテレフタレート(A)からなる層が、離型層すなわちエポキシ樹脂系接着剤などの接着剤との接合面となる必要がある。
【0041】
本発明の離型フィルムを使用する際に、加熱プレスの圧力を均一にかけることができ、プリント配線の凹凸に追従できる他の層と積層して使用することができる。このようなクッション性に優れる他の層としては、具体的には50℃から150℃、好ましくは70℃から120℃の範囲で軟化する樹脂を含むフィルムが好ましく、具体的には低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンメチルメタクリレート共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンプロピレン共重合体、エチレンブテン共重合体、プロピレンブテン共重合体などのポリオレフィン樹脂、またはこれらは単独で使用しても2種類以上が併用されても良い。
【0042】
本発明の離型フィルムとクッション層を共押出成形により多層化することもできる。その場合には、例えば3台の押出機からなる3層T−ダイフィルム成形機を用いて、本発明のポリブチレンテレフタレート(A)からなる離型層を外層とし、低密度ポリエチレン層を内層とする2種3層フィルムを成形することができる。また、上記低密度ポリエチレンの代わりに、酸変性したポリエチレン、例えばエチレンメチルメタクリレート共重合体を使用する、または離型層との層間接着強度を上げる目的で、エチレンメチルメタクリレート共重合体とポリブチレンテレフタレート(A)の組成物を内層に用いても良い。その場合の組成は、エチレンメチルメタクリレート共重合体が主成分でマトリックスになるのが好ましく、エチレンメチルメタクリレート共重合体が50から95質量%、ポリブチレンテレフタレート(A)が5から50質量%、好ましくは、エチレンメチルメタクリレート共重合体が60から85質量%、ポリブチレンテレフタレート(A)が15から40質量%が好ましい。またさらに層間接着強度を上げるために、離型層とクッション層の間に接着層を設けても良い。
【0043】
本発明の離型フィルムは、引張速度300mm/分での180度剥離によるエポキシ樹脂系接着剤層と離型フィルム間の剥離強度が、通常、2.5N/15mm以下、好ましくは0.1〜2.0N/15mmの範囲にあるので、エポキシ樹脂系接着剤層との剥離性に優れる。
【0044】
<離型フィルムの製造方法>
本発明の離型フィルムは、種々公知のフィルムの成形方法により製造し得る。例えば、上記ポリブチレンテレフタレート(A)からなる単層フィルムを製造する場合は、T−ダイフィルム成形、インフレーションフィルム成形などの成形方法により製造し得る。
【0045】
また、本発明の離型フィルムとして積層フィルムを製造する場合は、多層T−ダイあるいは多層環状ダイを用いて、共押出成形することにより製造し得る。
中でも、多層T−ダイを用いてなる共押出成形法が各層の膜厚を均一にでき、また幅広化ができる点で優れている。さらに、幅広の積層体を製造した後、多種多様なFPCの幅に合わせた幅にスリットすることが容易なため、FPC製造用の離型フィルムの製造方法として好ましい。
【0046】
本発明の離型フィルムは、上記記載の製造方法で得られたフィルムを、さらに加熱処理すると離型性が向上するので好ましい。
加熱条件としては大気中で加熱温度100〜200℃が好ましく、さらには150〜190℃が好ましい。加熱時間は加熱方法により適宜条件を決めればよい。
【0047】
本発明の離型フィルムを加熱処理する方法は、種々公知の方法、具体的には、T−ダイで成形して得たロール状の離型フィルムを加熱された熱風オーブンにロールトゥロールで通す方法、または、ロールトゥロールで通しているライン上に、IRヒーターなどのヒーターを設置して離型フィルムを加熱する方法、ロール状の離型フィルムをシート状にカットした後、熱風オーブンで加熱処理する方法、T−ダイで成形したロール状の離型フィルムをロールトゥロールで加熱したロールに接触させる方法などを例示できる。
【0048】
離型フィルムを加熱する熱源としては特に限定されないが、遠赤外線ヒーターや短波長赤外線ヒーター、中波長赤外線ヒーター、カーボンヒーターなどが好ましい。
中でも、T−ダイで成形したロール状の離型フィルムをロールトゥロールで加熱したロールに接触させる方法は、加熱したロールに直接離型フィルムが接触するため、離型フィルム表面の熱伝達が早くて済むため、加熱処理時間が比較的短時間にできるため生産性が高い。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。使用した樹脂組成物等は次の通りである。
本発明の実施例及び比較例で用いたポリブチレンテレフタレートを以下に示す。
【0050】
(1)ポリブチレンテレフタレート(単独重合体)
(A−1)Tm=224℃、IV=1.1、〔三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ノバデュラン 5010CS〕
(D−1)Tm=224℃、IV=1.2、〔三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ノバデュラン 5020〕
(D−2)Tm=224℃、IV=1.2、〔東レ(株)製、商品名:トレコン 1400S〕
(D−3)Tm=224℃、IV=1.0、〔東レ(株)製、商品名:トレコン 1200S〕
(D−4)Tm=224℃、IV=0.8、〔東レ(株)製、商品名:トレコン 1100S〕
(2)ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールとの共重合体
(A−2)Tm=222℃、IV=1.2、〔三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、商品名:ノバデュラン 5505S〕
【0051】
2.結晶核剤
(B−1)ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、Tm=260℃〔新日本理化(株)製、商品名: ゲルオールMD〕
(B−2)ナトリウム2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート〔(株)アデカ製 商品名:アデカスタブNA−11〕
(B−3)ステアリン酸マグネシウム、Tm=125℃、〔堺化学工業(株)製〕
(B−4)エチレン・ビスステアリン酸アミド、Tm=144℃〔花王(株)製、商品名:カオーワックスEB−P〕
離型フィルムのオリゴマー量は、以下の方法で測定した。
【0052】
〈標準品溶液調製〉
(1)標準品各々10mgを10mlのメスフラスコに秤量後、ジメチルホルムアミド(DMF)にて溶解定容。
(2)標準品1000μg/mlのDMF溶液をDMFで希釈し、0.2および20μg/mlの標準品溶液を調製。
【0053】
〈試料測定溶液調製〉
(1)試料0.2gを秤量後、HFIP/クロロホルム=1/1(容量比)溶液5mlを添加し試料を溶解。
(2)クロロホルム20mlを添加し希釈後、アセトニトリル70mlに滴下し溶解際沈殿処理を実施。
(3)ろ紙にてろ過を行い、ろ液をエバポレートおよび窒素パージにより乾固。
(4)DMFで溶解後、5mlに定容。
【0054】
〈装置および測定条件〉
装置:waters社製 alliance2695/2487
カラム:野村化学社製 Develosil ODS-KH-3(3μ 4.6×150mm)
移動相:0.5%酢酸水溶液/アセトニトリル グラジエント
検出:UV=254nm
〈定量〉
オリゴマー量は、ビスヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)標準品溶液20μg/mlのピーク面積による検量線法により定量を行なった。
【0055】
〔実施例
3〜
9、参考例1、2及び比較例1〜
5〕
〈結晶核剤マスターバッチの作製方法〉
上記記載のポリブチレンテレフタレート:100質量部と上記記載の各結晶核剤:5質量部の組成比でブレンド後、二軸押出機(JSW社製「TEX−30」)を使用し、250℃のシリンダー温度で溶融混練しペレット化し、結晶核剤の濃度が5質量%である結晶核剤マスターバッチを作製した。
【0056】
次いで、上記記載のポリブチレンテレフタレートと結晶核剤マスターバッチを表1に示す比率でブレンド後、スクリュ径40mmの押出機のT−ダイフィルム成形機にて、樹脂温度250℃、チルロール温度80℃、エアーチャンバー静圧440mmH
2Oの条件下、50μmのポリブチレンテレフタレートの単層フィルムを得た。
【0057】
〈オーブン熱処理方法〉
熱風循環式オーブンを用いて大気雰囲気下、180℃で5分間上記単層フィルムを熱処理し自然冷却後のフィルムを離型フィルムとした。
上記の離型フィルムを以下の方法により、離型性評価を行った。
表1に結果を示す。
【0058】
(1)エポキシ離型性評価
カバーレイフィルム(保護フィルム)〔商品名:カバーレイCISV1215(ニッカン工業(株)製 ポリイミドフィルム厚さ:12μm、エポキシ樹脂系接着剤層厚さ:15μm)〕と離型フィルムを同じ縦方向(MD)になるようにして重ね合わせた。そのとき離型フィルムの離型層とカバーレイフィルムのエポキシ樹脂系接着剤層とが面で接するようにした。更に、その外側にアルミ板とSUS板で挟みこみ、プレス成形を行った。プレスは4MPaの圧力で180℃、30分間の条件で貼り合わせた。プレス成形が終了した後、プレス圧を解放し自然冷却後、カバーレイフィルムと離型フィルムが重なり合った積層体を得た。これをMD方向に15mm幅に切り出し、引張り試験機(東洋精機社製)を用い、引張速度300mm/分でカバーレイフィルムのエポキシ樹脂系接着剤層と離型フィルム間の剥離強度を180度剥離で測定し、対エポキシ系樹脂接着剤との離型強度とした。
【0059】
(2)耐シワ性評価
図1に示すポリイミドフィルム2-1とエポキシ樹脂系接着剤層2-2からなるカバーレイフィルム2〔ニッカン工業(株)製、商品名:CISV1215)を用いた。このカバーレイフィルム2にはプリント配線基板3の端子部分に相当する部分が窓部4として打ち抜かれている。窓部4の大きさは4mm×20mmで1枚のカバーレイフィルム2に複数箇所に形成されている。一方、プリント配線基板3は厚さ25μmのポリイミドフィルム上に厚さ12μmの銅箔(図示せず)で配線パターンが形成されている240mm×300mmの大きさを用いた。このプリント配線基板3とカバーレイフィルム2を位置決めして重ね合わせ、その両面側を離型フィルム1で挟み込んだ状態で、加熱プレス機にセットした。温度180℃、圧力4MPa、加圧時間120秒の条件で加熱プレスした。この過程でカバーレイフィルムのエポキシ系接着剤が窓部4で多少流れ出してしまいエポキシ樹脂系接着剤の流れ出し部5ができてしまう。次にプレス板(図示せず)を開放し冷却した後、離型フィルム1をカバーレイフィルム2が接着したプリント配線基板3から離型させた。離型の際に、エポキシ樹脂系接着剤の流れ出し部5で離型が重いとプリント配線基板3が折れてしまいシワとなる。1箇所でもシワが発生した場合を×とし、シワが発生しなかった場合を○と判定した。
【0060】
【表1】