(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の実施の形態に係る収納棚では、制振部材による制振機能を効果的に発揮するため、複数の棚ユニットの支柱間に横架部材が架設され、横架部材と支柱との間に制振部材が架設される。横架部材と支柱とは、地震時に相対変位が拘束され難く、その相対変位が大きくなり易いため、それらの間に架設された制振部材により制振機能を効果的に発揮できる。
【0012】
図1〜
図3は収納棚20の構成を示す。なお、
図1、
図2では、説明を容易にするため、収納棚20の一部の構成を一点鎖線により示す。収納棚20は自動倉庫10に用いられる。自動倉庫10は、
図1に示すように、物品を収容するための収納棚20の他に、物品を搬送するための搬送装置60を含む。
【0013】
搬送装置60は、スタッカークレーンにより構成される。搬送装置60は、ガイドレール61と、走行台車63と、マスト65と、昇降台67と、フォーク装置69と、を備える。ガイドレール61は、床面11と横架部材51(後述する)とのそれぞれに棚横幅方向(
図2のY方向)に沿って敷設される。走行台車63は、ガイドレール61に沿って移動自在に設けられる。マスト65は、走行台車63と一体に移動可能に上下方向(
図1のZ方向)に沿って設けられる。昇降台67は、マスト65に沿って昇降自在に設けられる。フォーク装置69は、昇降台67に対して棚前後方向(
図1のX方向)にスライド可能に設けられる。
【0014】
収納棚20は、複数の棚ユニット21と、横架部材51と、制振部材53とを備える。複数の棚ユニット21は、棚前後方向Xに間隔を空けて、建屋等の床面11上に設置される。棚ユニット21は、ガイドレール61を間に挟んだ二つの棚ユニット21を一組として構成される。一組の棚ユニット21は、互いの前面21aを対向させて配置され、その前面21aには、棚ユニット21の収容部41(後述する)に物品Wを出し入れするための出入口44が設けられる。棚ユニット21は、建屋の床面11以外の構造から分離した独立棚として構成される。一組の棚ユニット21は、棚前後方向Xに複数組設置されてもよい。
【0015】
棚ユニット21は、複数の支柱23、24と、つなぎ材27、28と、ラチス31と、ブレース35と、収容部41とを備える。複数の支柱23、24は、棚前後方向Xに間隔を空けて設けられた前支柱23と後支柱24とを一組の支柱組25として構成される。支柱組25は、
図2に示すように、棚横幅方向Yに間隔を空けて複数組設けられる。つまり、複数の支柱23、24は、棚前後方向X及び棚横幅方向Yに間隔を空けて設けられる。一組の棚ユニット21は、それぞれの支柱組25の棚横幅方向Yの位置が略合致するように設けられる。
【0016】
つなぎ材27、28は、前後つなぎ材27と、横つなぎ材28とを含む。前後つなぎ材27は、
図1に示すように、支柱組25を構成する前支柱23と後支柱24との間に略水平に架設される。前後つなぎ材27は、支柱組25の下端部及び上端部、つまり、上下方向Zの複数位置に架設される。横つなぎ材28は、
図3に示すように、棚横幅方向Yの複数の後支柱24に連続して略水平に架設される。横つなぎ材28は、後支柱24の下端部、中間部及び上端部、つまり、上下方向Zの複数位置に架設される。また、横つなぎ材28は、
図1に示すように、棚横幅方向Yの複数の前支柱23の上端部に連続して略水平に架設される。
【0017】
図1に戻り、ラチス31は、棚前後方向Xに隣り合う前支柱23と後支柱24との間に水平面に斜めに架設される。ラチス31は、前支柱23と後支柱24との間で凹凸が交互に繰り返されるように上下方向Zに複数架設される。ラチス31は前支柱23と後支柱24とのそれぞれに両端部が溶接等により接続される。複数のラチス31は、前支柱23と後支柱24により形成される側面架構33の面内方向の強度を増大させる補強部材32として構成される。補強部材32は、ラチス31の他に、ブレースや、水平面に平行な前後つなぎ材等により構成されてもよい。
【0018】
ブレース35は、
図3に示すように、後支柱24と横つなぎ材28とにより形成される後面架構37に架設される。ブレース35は、後面架構37がなす架構面の対角線に沿って、互いに交差するように二つ一組で架設される。一組のブレース35により、後面架構37の面内方向の強度が増大する。なお、図示の例では、上下に隣り合う横つなぎ材28と、棚横幅方向Yに一つおきに間隔を空けて設けられた後支柱24とがなす後面架構37を一単位として、複数の後面架構37に一組のブレース35が架設される。
【0019】
収容部41は、図示の例において、上下方向に複数段(8段)設けられ、かつ、棚横幅方向Yに複数列(4列)並べて設けられるが、その段数や列数は特に限定しない。収容部41は、収容空間43と、物品受け45とを備える。収容空間43は、
図2に示すように、棚横幅方向Yに隣り合う支柱組25により囲まれて形成される。収容空間43の前方には、棚横幅方向Yに隣り合う前支柱23間に出入口44が形成される。
【0020】
物品受け45は、棚横幅方向Yに隣り合う支柱組25のそれぞれから二つ一組として突出して設けられる。物品Wは、
図3に示すように、収容空間43内に配置され、一対の物品受け45にパレットPを介して載置される。つまり、収容部41は、収容空間43内に配置された物品Wを物品受け45により支持するように構成される。
【0021】
図1に戻り、横架部材51は、一組の棚ユニット21の前支柱23の上端部23a間に略水平に架設される。なお、横架部材51は、前支柱23の上端部23aより下方の位置で架設されてもよい。図示の例において、前支柱23、後支柱24は角形鋼管により構成されるが、この他に、円形鋼管、H形鋼、山形鋼等の構造材により構成されてもよい。つなぎ材27、28、ラチス31、ブレース35、横架部材51も構造材により構成される。
【0022】
制振部材53は、横架部材51と前支柱23との間に、水平面に斜めに架設される。制振部材53は、地震等により棚ユニット21が振動し、横架部材51と前支柱23とに相対変位が生じたとき、その振動エネルギーを吸収する。制振部材53は、たとえば、粘弾性ダンパー、オイルダンパー、履歴ダンパー等の制振ダンパーにより構成される。
【0023】
制振部材53は、前支柱23の側面に設けられた側面ブラケット39と、その一端部53aとを貫通するボルトにより、その一端部53aが前支柱23に接続される。制振部材53は、横架部材51の下面に設けられた下面ブラケット52と、その他端部53bとを貫通するボルトにより、その他端部53bが横架部材51に接続される。つまり、制振部材53の一端部53aと前支柱23とは回転可能にピン接続され、制振部材53の他端部53bと横架部材51とは回転可能にピン接続される。
【0024】
制振部材53は、横架部材51と各棚ユニット21の前支柱23とにより形成される二つの隅角部55に二つ一組で架設される。一組の制振部材53は、棚横幅方向Yに間隔を空けて架設される。制振部材53は、搬送装置60の棚横幅方向Yの移動や、昇降台67等の上下方向Zの移動の障害とならない位置に架設される。なお、制振部材53は、二つの隅角部55の一方にのみ架設されてもよい。
【0025】
制振部材53の一端部53aは、前支柱23の前側面23c(
図1の左側前支柱23の右側面)に接続され、ラチス31の一端部31aは、前支柱23の後側面23d(
図1の左側前支柱23の左側面)に接続される。前支柱23との制振部材53の接続位置と、前支柱23とのラチス31の接続位置とは、上下方向Zの位置が略一致するように構成される。
【0026】
複数のラチス31は、支柱組25の下部側のラチス31よりも、上部側のラチス31の方が、前支柱23や後支柱24に対する鋭角の角度が大きくなるように架設される。つまり、複数のラチス31は、上下方向Zの位置によって、前支柱23、後支柱24に対する角度を変化させて架設される。
【0027】
収納棚20の作用効果を説明する。
図4は地震により収納棚20が変形している状態を示す。地震による水平振動が床面11から収納棚20に伝達されたとき、収納棚20が棚前後方向Xや棚横幅方向Yに水平振動する。このとき、側面架構33は、通常、ラチス31等の補強部材32により補強されており、側面架構33を構成する前支柱23と後支柱24との相対変位や、前支柱23及び後支柱24と前後つなぎ材27との相対変位が小さくなる。また、後面架構37は、
図3に示すように、通常、ブレース35により補強されており、後面架構37を構成する後支柱24や横つなぎ材28の相対変位が小さくなる。このため、これら側面架構33や後面架構37に制振部材53を架設しても、制振部材53による制振機能を効果的に発揮できない。
【0028】
一方、
図4に戻り、前支柱23と横架部材51とは、それらの相対変位を拘束するラチス等が架設されておらず、それらの相対変位が大きくなり易い。また、一組の棚ユニット21の側面架構33全体が変形したとき、その変形に追従して、横架部材51と前支柱23とのなす角度θが大きく増減するように横架部材51が変位し、前支柱23と横架部材51との相対変位が大きくなり易い。第1の実施の形態によれば、地震時に相対変位が大きくなり易い前支柱23と横架部材51との間に制振部材53が架設されているため、地震時の振動エネルギーを制振部材53により吸収する制振機能を効果的に発揮できる。このため、地震時の収納棚20の変位、加速度が抑えられ、物品落下の危険が減るうえ、物品落下に伴う復旧作業の手間が抑えられる。
【0029】
また、制振部材53による制振機能を効果的に発揮できるため、制振部材53の数が抑えられるうえ、高コストの免震構造を採用する必要がなく、地震対策を低コストで実現できる。
【0030】
また、従来の制振対策として、収納棚20のラチス31やブレース35の架設位置に制振部材53を架設する方法がある。この方法を既存の収納棚20に適用する場合、ラチス31やブレース35を取り外したうえで制振部材53を架設する必要があり、収納棚20の強度低下や作業数の増大を招く。一方、第1の実施の形態によれば、既存の収納棚20に適用する場合、ラチス31やブレース35を取り外さずに地震対策を実現できる利点がある。
【0031】
第1の実施の形態によれば、前支柱23との制振部材53の接続位置と、前支柱23とのラチス31等の補強部材32の接続位置とが、上下方向Zの位置が略一致するように構成されているため、次の利点がある。横架部材51と前支柱23との間に制振部材53を架設したため、地震時に制振部材53と前支柱23との間で荷重伝達され、これらの接続位置で前支柱23に過大な曲げ力が作用する。この過大な曲げ力に抵抗するため、前支柱23の断面、材料の変更により部材強度を増大させるとコスト増を招く。
【0032】
一方、制振部材53及び補強部材32で前支柱23との上下方向Zの接続位置が略一致していれば、前支柱23と制振部材53との接続箇所に作用する曲げ力に補強部材32により抵抗でき、前支柱23の曲げ変形が拘束される。また、この曲げ力が補強部材32から後支柱24に伝達され、前支柱23、後支柱24の全体により曲げ力に抵抗できる。このため、横架部材51と前支柱23との間に制振部材53を架設しても、前支柱23の部材強度を増大させずに、前支柱23に作用する過大な曲げ力に抵抗できる。
【0033】
第1の実施の形態によれば、一組の棚ユニット21の前支柱23の上端部23a間に横架部材51が架設されている。床面11から離れた位置ほど地震時の変位、加速度が大きいため、高位置にある横架部材51と前支柱23との相対変位がより大きくなり易く、制振部材53による制振機能を更に効果的に発揮できる。
【0034】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0035】
上述の実施の形態に係る収納棚20は、スタッカークレーンにより構成される搬送装置60を用いて物品Wを搬出入する自動倉庫10に用いられる例を説明したが、その用途はこれに限定されない。収納棚20は、たとえば、フォークリフトにより物品の搬出入を行うように用いられてもよい。