特許第5832509号(P5832509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5832509モータと主軸との間の動力伝達部の異常検出機能を有するモータ制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5832509
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】モータと主軸との間の動力伝達部の異常検出機能を有するモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20060101AFI20151126BHJP
【FI】
   H02P5/00 T
   H02P5/00 N
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-246405(P2013-246405)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2015-106936(P2015-106936A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2014年12月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 大輔
(72)【発明者】
【氏名】置田 肇
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−217515(JP,A)
【文献】 特開2009−108923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達部を介して回転動力が主軸に伝達されるモータの回転駆動を制御するモータ制御装置であって、
モータの回転角を取得するモータ回転角取得部と、
主軸の回転角を取得する主軸回転角取得部と、
主軸が1回転するごとに出力される1回転信号を取得する1回転信号取得部と、
取得したモータの回転角からモータの回転速度を算出するモータ回転速度算出部と、
取得した主軸の回転角から主軸の回転速度を算出する主軸回転速度算出部と
1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの間に取得されたモータの回転角の変化量が第1の範囲から外れた場合、動力伝達部に異常が発生したと仮判定する第1の仮判定部と、
モータの回転速度と主軸の回転速度との差が第2の範囲から外れた場合、動力伝達部に異常が発生したと仮判定する第2の仮判定部と、
前記第1の仮判定部または前記第2の仮判定部のうち少なくとも1つが動力伝達部に異常が発生したと仮判定した場合、動力伝達部に異常が発生したと判定する異常判定部と、
を備えることを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
前記第2の仮判定部は、モータの回転速度と主軸の回転速度との差から、モータと主軸との間の動力伝達部のスリップに起因するノイズを除去するフィルタを備え、前記フィルタによりノイズが除去されたモータの回転速度と主軸の回転速度との差が、第2の範囲から外れた場合に、動力伝達部に異常が発生したと仮判定し、
前記異常判定部は、第1の仮判定部および第2の仮判定部のうちいずれか1つが動力伝達部に異常が発生したと仮判定した場合、動力伝達部に異常が発生したと判定する請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記異常判定部は、第1の仮判定部および第2の仮判定部の両方が動力伝達部に異常が発生したと仮判定した場合、動力伝達部に異常が発生したと判定する請求項に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
前記第1の範囲および前記第2の範囲は、モータの回転速度と主軸の回転速度との間の減速比および所望の許容誤差に基づいてそれぞれ規定される請求項1〜のいずれか一項に記載のモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータと主軸との間の動力伝達部の異常検出機能を有するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械においては、モータの回転動力を主軸に伝達するベルトなどの動力伝達部に発生するスリップ(すべり)などの異常を検出することが従来より行われている。
【0003】
例えば、モータの負荷情報と、駆動ベルトの状態を検知するセンサを用いて、ベルトの異常を検出する装置がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また例えば、主軸の回転速度とモータの回転速度との比較を行い、この主軸の回転速度とモータの回転速度との差が、モータと主軸との間において予め規定されてある減速比を考慮した速度差から逸脱した場合に、主軸とモータとの間の動力伝達部に異常が発生したと判定する異常検出方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また例えば、主軸の回転速度とモータの回転速度とを監視してすべり率を計算し、所定の条件以上のすべりを検出する異常検出方法がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
また例えば、制御装置の指令回転数と主軸の実回転数とを比較し、その比が許容値を超える状態が許容時間継続したときに異常と判断し、主軸モータを停止させる方法がある(例えば、特許文献4参照。)。
【0007】
また例えば、主軸が1回転するごとに毎に信号が出力される1回転信号検出手段を有し、1回転信号が検出されてから次の1回転信号が検出される間におけるモータの回転角の変化量を算出し、各1回転信号間におけるモータ回転角の変化量が、所定の条件から外れた場合に、主軸とモータとの間の動力伝達部に異常が発生したと判定する異常検出方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−137310号公報
【特許文献2】特開昭61−103750号公報
【特許文献3】特開2003−94289号公報
【特許文献4】特開2005−246534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
主軸の回転速度とモータの回転速度との比較結果を用いて主軸とモータとの間のベルトやギアなどの動力伝達部の異常を検出する方法では、動力伝達部の瞬間的なスリップ(すべり)による影響を除去するために、主軸の回転速度とモータの回転速度との速度差に対してフィルタを適用し、フィルタ適用後のデータを用いて異常検出処理を行う必要がある。しかしながら、フィルタ時定数による検出遅れが発生してしまい、特にモータおよび主軸の高速回転時に、異常検出までの時間が長くなってしまう問題がある。
【0010】
一方、主軸の各1回転信号間におけるモータ回転角の変化量を用いて主軸とモータとの間の動力伝達部の異常を検出する方法では、上記のようなフィルタを適用する必要がないため、モータおよび主軸の高速回転時における異常検出遅れは小さい。しかしながら、1回転信号を検出した時にのみ異常検出処理が行われるため、モータおよび主軸の低速回転時においては異常検出が遅れるという問題がある。
【0011】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、モータと主軸との間の動力伝達部の異常をモータおよび主軸の回転速度全域にわたって安定して検出することができる異常検出機能を有するモータ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を実現するために、動力伝達部を介して回転動力が主軸に伝達されるモータの回転駆動を制御するモータ制御装置は、モータの回転角を取得するモータ回転角取得部と、主軸の回転角を取得する主軸回転角取得部と、主軸が1回転するごとに出力される1回転信号を取得する1回転信号取得部と、取得したモータの回転角からモータの回転速度を算出するモータ回転速度算出部と、取得した主軸の回転角から主軸の回転速度を算出する主軸回転速度算出部と、1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの間に取得されたモータの回転角の変化量が第1の範囲から外れた場合、または、モータの回転速度と主軸の回転速度との差が第2の範囲から外れた場合、動力伝達部に異常が発生したと判定する異常判定部と、を備える。
【0013】
ここで、モータ制御装置は、1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの間に取得されたモータの回転角の変化量が第1の範囲から外れた場合、動力伝達部に異常が発生したと仮判定する第1の仮判定部と、モータの回転速度と主軸の回転速度との差が第2の範囲から外れた場合、動力伝達部に異常が発生したと仮判定する第2の仮判定部と、を備え、異常判定部は、第1の仮判定部または第2の仮判定部のうち少なくとも1つが動力伝達部に異常が発生したと仮判定した場合、動力伝達部に異常が発生したと判定するようにしてもよい。
【0014】
また、第2の仮判定部は、モータの回転速度と主軸の回転速度との差から、モータと主軸との間の動力伝達部のスリップに起因するノイズを除去するフィルタを備え、このフィルタによりノイズが除去されたモータの回転速度と主軸の回転速度との差が、第2の範囲から外れた場合に、動力伝達部に異常が発生したと仮判定し、異常判定部は、第1の仮判定部および第2の仮判定部のうちいずれか1つが動力伝達部に異常が発生したと仮判定した場合、動力伝達部に異常が発生したと判定するようにしてもよい。
【0015】
また、異常判定部は、第1の仮判定部および第2の仮判定部の両方が動力伝達部に異常が発生したと仮判定した場合、動力伝達部に異常が発生したと判定するようにしてもよい。
【0016】
ここで、第1の範囲および第2の範囲は、モータの回転速度と主軸の回転速度との間の減速比および所望の許容誤差に基づいてそれぞれ規定されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、モータと主軸との間の動力伝達部の異常をモータおよび主軸の回転速度全域にわたって安定して検出することができる異常検出機能を有するモータ制御装置を実現することができる。
【0018】
本発明の第1の実施例によれば、モータの回転速度と主軸の回転速度との差のデータにフィルタを適用した値が規定の範囲を外れた場合、または主軸が1回転する間のモータの回転角の変化量が規定の範囲を外れた場合に、動力伝達部に異常が発生したと判定するので、モータと主軸との間の動力伝達部の異常を、モータおよび主軸の回転速度全域にわたって早期に検出することができる。
【0019】
本発明の第2の実施例によれば、モータの回転速度と主軸の回転速度との差が規定の範囲を外れ、なおかつ主軸が1回転する間のモータの回転角の変化量が規定の範囲を外れた場合に、動力伝達部に異常が発生したと判定するので、モータと主軸との間の動力伝達部の異常を、モータおよび主軸の回転速度全域にわたって誤検出なく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明によるモータ制御装置の原理ブロック図である。
図2図1に示すモータ制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
図3】本発明の第1の実施例によるモータ制御装置の原理ブロック図である。
図4図3に示す本発明の第1の実施例によるモータ制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施例によるモータ制御装置の原理ブロック図である。
図6図5に示す本発明の第2の実施例によるモータ制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明によるモータ制御装置の原理ブロック図である。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。ここでは、モータ2の回転動力が動力伝達部4を介して主軸3に伝達される工作機械において、モータ制御装置1によりモータ2を回転駆動させる例について説明する。動力伝達部4としては、ベルトやギアなどがある。
【0022】
主軸3を動力伝達部4を介して回転させるモータ2の駆動電力は、主軸用逆変換器10によって生成される。主軸用逆変換器10は、半導体スイッチング素子によりブリッジ回路が組まれた主回路部21を有する。主軸用逆変換器10は、モータ制御装置1内の数値制御部(図示せず)によって生成された駆動指令に基づき、主回路部21内の半導体スイッチング素子がスイッチング動作されることで、整流器(図示せず)から入力された直流電力を、モータ2を回転駆動するための所望の電圧および所望の周波数の三相交流電力に変換する。モータ2は、供給された電圧可変および周波数可変の三相交流電力に基づいて動作する。モータ2の回転動力は、動力伝達部4を介して主軸3へ伝達され、これにより主軸3は回転駆動される。一般に、モータ2には、回転子(図示せず)の回転角を検出するロータリエンコーダなどのモータ回転角検出器31が設けられている。また、主軸3には、主軸の回転角を検出するロータリエンコーダなどの主軸回転角検出器32が設けられている。また、主軸回転角検出器32は、主軸3の回転角を検出することに加え、主軸3が1回転するごとに主軸3が1回転したことを示す1回転信号を出力する。モータ制御装置1では、モータ回転角検出器31および主軸回転角検出器32からのモータ回転角および主軸回転角に係る情報ならびに1回転信号などを用いてモータ2の回転駆動を制御する。
【0023】
また、モータ2と主軸3との間の動力伝達部4の異常を検出するために、モータ制御装置1は、モータ回転角取得部11と、主軸回転角取得部12と、1回転信号取得部13と、モータ回転速度算出部14と、主軸回転速度算出部15と、第1の仮判定部16と、第2の仮判定部17と、異常判定部18と、を備える。
【0024】
モータ回転角取得部11は、モータ回転角検出器31から出力されたモータ2の回転角に関する情報を取得する。
【0025】
主軸回転角取得部12は、主軸回転角検出器32から出力された主軸3の回転角に関する情報を取得する。
【0026】
1回転信号取得部13は、主軸回転角検出器32から出力された主軸3の1回転信号を取得する。
【0027】
モータ回転速度算出部14は、モータ回転角取得部11から取得したモータ2の回転角に関する情報からモータ2の回転速度を算出する。例えば、モータ回転速度算出部14は、モータ2の回転角を微分することでモータ2の回転速度を得る。
【0028】
主軸回転速度算出部15は、主軸回転角取得部12から取得した主軸3の回転角に関する情報から主軸3の回転速度を算出する。例えば、主軸回転速度算出部15は、主軸3の回転角を微分することで主軸3の回転速度を得る。
【0029】
第1の仮判定部16は、1回転信号取得部13が1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの間に取得されたモータ2の回転角の変化量を算出し、この変化量が第1の範囲から外れたか否かを判断する。第1の範囲は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との間において当該工作機械において規定されてある減速比および当該加工に許容される誤差などに基づいて予め設定しておく。算出されたモータ2の回転角の変化量が第1の範囲から外れた場合、第1の仮判定部16は、動力伝達部4に異常が発生したと仮判定する。
【0030】
第2の仮判定部17は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差を算出し、この差が第2の範囲から外れたか否かを判断する。第2の範囲は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との間において当該工作機械において規定されてある減速比および当該加工に許容される誤差などに基づいて予め設定しておく。算出されたモータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差が第2の範囲から外れた場合、第2の仮判定部17は、動力伝達部4に異常が発生したと仮判定する。
【0031】
異常判定部18は、第1の仮判定部16または第2の仮判定部17のうち少なくとも1つが動力伝達部4に異常が発生したと仮判定した場合に、動力伝達部4に異常が発生したと最終的に判定する。すなわち、異常判定部18は、1回転信号取得部13が1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの間に取得されたモータ2の回転角の変化量が第1の範囲から外れた場合、または、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差が第2の範囲から外れた場合、動力伝達部4に異常が発生したと判定する。異常判定部18による判定結果はディスプレイ、ランプ、ブザーなどの報知手段(図示せず)で作業者に知らせてもよく、あるいは、ハードディスクやメモリなどの記憶手段に蓄積してもよい。またあるいは、異常発生時における工作機械の各種異常回避動作などを実行する際のデータとして用いてもよい。
【0032】
なお、モータ回転速度算出部14、主軸回転速度算出部15、第1の仮判定部16、第2の仮判定部17および異常判定部18は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えばモータ回転速度算出部14、主軸回転速度算出部15、第1の仮判定部16、第2の仮判定部17および異常判定部18をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ制御装置1内の演算処理装置はこのソフトウェアプログラムに従って動作することで上述のモータ回転速度算出部14、主軸回転速度算出部15、第1の仮判定部16、第2の仮判定部17および異常判定部18の機能が実現される。したがって、モータ回転角検出部や主軸回転角検出部が接続された既存のモータ制御装置に対しても、上述のモータ回転速度算出部14、主軸回転速度算出部15、第1の仮判定部16、第2の仮判定部17および異常判定部18に係るソフトウェアプログラムを当該モータ制御装置に追加的にインストールすることで本発明を適用可能である。
【0033】
またあるいは、上述のモータ回転速度算出部14、主軸回転速度算出部15、第1の仮判定部16、第2の仮判定部17および異常判定部18を、1つの筐体内に収め、これを単独の異常検出装置として実現してもよい。この場合、モータ回転角検出部や主軸回転角検出部が接続された既存のモータ制御装置に対して、後付けで異常検出装置を取り付けることも可能である。
【0034】
図2は、図1に示すモータ制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0035】
まず、ステップS101において、モータ回転角取得部11は、モータ回転角検出器31から出力されたモータ2の回転角に関する情報を取得する。
【0036】
ステップS102において、主軸回転角取得部12は、主軸回転角検出器32から出力された主軸3の回転角に関する情報を取得する。ステップS101における処理により得られるモータ2の回転角に関する情報とS102における処理により得られる主軸3の回転角に関する情報とは、モータ回転角検出部31および主軸回転角検出部32から同時期に出力されたものである。
【0037】
ステップS103において、1回転信号取得部13は、主軸回転角検出器32から出力された主軸3の1回転信号を取得する。
【0038】
次いでステップS104において、第1の仮判定部16は、1回転信号取得部13が1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの間に取得されたモータ2の回転角の変化量を算出し、この変化量が第1の範囲から外れたか否かを判断する。1回転信号取得部13が1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの時間は、主軸3が1回転する時間に相当する。
【0039】
第1の仮判定部16は、ステップS104においてモータ2の回転角の変化量が第1の範囲から外れたと判断した場合は、ステップS105において、動力伝達部4に異常が発生したと仮判定する。
【0040】
また、第1の仮判定部16は、ステップS104においてモータ2の回転角の変化量が第1の範囲から外れていないと判断した場合は、ステップS106において、動力伝達部4は正常であると仮判定する。
【0041】
ステップS107では、第2の仮判定部17は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差を算出する。なお、ステップS101におけるモータ回転角取得部11によるモータ2の回転角に関する情報の取得処理およびステップS102における主軸回転角取得部12による主軸3の回転角の取得処理の実行後、ステップS107における回転速度差の算出処理の実行前までの間に、モータ回転速度算出部14によるモータ2の回転速度を算出処理および主軸回転速度算出部15による主軸3の回転速度の算出処理を実行しておく。
【0042】
ステップS108では、第2の仮判定部17は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差が第2の範囲から外れたか否かを判断する。
【0043】
第2の仮判定部17は、ステップS108においてモータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差が第2の範囲から外れたと判断した場合は、ステップS109において、動力伝達部4に異常が発生したと仮判定する。
【0044】
また、第2の仮判定部17は、ステップS108においてモータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差が第2の範囲から外れていないと判断した場合は、ステップS110において、動力伝達部4は正常であると仮判定する。
【0045】
ステップS111において、異常判定部18は、第1の仮判定部16または第2の仮判定部17のうち少なくとも1つが動力伝達部4に異常が発生したと仮判定したか否かを判断する。
【0046】
異常判定部18は、ステップS111において第1の仮判定部16または第2の仮判定部17のうち少なくとも1つが動力伝達部4に異常が発生したと仮判定した場合は、ステップS112において、動力伝達部4に異常が発生したと最終的に判定する。
【0047】
また、異常判定部18は、ステップS111において第1の仮判定部16および第2の仮判定部17いずれもが動力伝達部4は正常であると仮判定した場合は、ステップS113において、動力伝達部4は正常であると最終的に判定する。その後、ステップS101へ戻り、上述の処理を繰り返し実行する。
【0048】
図3は、本発明の第1の実施例によるモータ制御装置の原理ブロック図である。本発明の第1の実施例では、第2の仮判定部17−1にフィルタ19が設けられる。フィルタ19は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差から、モータ2と主軸3との間の動力伝達部4のスリップに起因するノイズを除去するものである。ノイズは高周波成分を有するので、フィルタ19はローパスフィルタで構成される。第2の仮判定部17−1では、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差のデータにフィルタを適用し、フィルタ適用後のデータに基づいて、第2の範囲から外れたか否かを判断する。
【0049】
第2の仮判定部17−1では、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差のデータにフィルタを適用しているものの、そのフィルタ時定数はそれほど長いものではない。したがって、モータ2および主軸3の低速回転時の異常検出に関しては、遅れの影響は少ないという利点がある。
【0050】
一方、第1の仮判定部16では、1回転信号取得部13が1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの間に取得されたモータ2の回転角の変化量を算出し、この変化量が第1の範囲から外れたか否かを判断する。第1の仮判定部16では、第2の仮判定部17−1におけるようなフィルタを適用しないため、モータおよび主軸の高速回転時における異常検出遅れは小さい。また、主軸3の1回転信号が取得される間隔が周期になるので、モータ2および主軸3の高速回転時でも遅れなく異常検出が迅速に行えるという利点がある。
【0051】
つまり、モータ2および主軸3の低速回転時においては、第2の仮判定部17−1は第1の仮判定部16よりも異常検出の遅れが少ないので、第2の仮判定部17−1は動力伝達部4の異常発生を早く検出することができる。また、モータ2および主軸3の高速回転時においては、第1の仮判定部16は第2の仮判定部17−1よりも異常検出の遅れが少ないので、第1の仮判定部16は動力伝達部4の異常発生を早く検出することができる。そこで、本発明の第1の実施例では、第1の仮判定部16および第2の仮判定部17−1のそれぞれの特性を生かし、動力伝達部4の異常検出を、モータ2および主軸3の高速回転時では第1の仮判定部16により行い、モータ2および主軸3の低速回転時では第2の仮判定部17−1により行うよう、異常判定部18−1を構成する。すなわち、異常判定部18−1は、第1の仮判定部16および第2の仮判定部17−1のうちいずれか1つが動力伝達部4に異常が発生したと仮判定した場合に、動力伝達部4に異常が発生したと最終的に判定する。このように異常判定部18−1を構成すると、モータ2および主軸3の低速回転時において動力伝達部4に異常が発生したときは、第2の仮判定部17−1が第1の仮判定部16よりも先に当該異常発生を検出し、したがって異常判定部18−1は動力伝達部4に異常が発生したと判定し、また、モータ2および主軸3の高速回転時において動力伝達部4に異常が発生したときは、第1の仮判定部16が第2の仮判定部17−1よりも先に当該異常発生を検出し、したがって異常判定部18−1は動力伝達部4に異常が発生したと判定する。このように、本発明の第1の実施例によれば、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差のデータにフィルタを適用した値が第2の範囲を外れた場合、または主軸3が1回転する間のモータ2の回転角の変化量が第1の範囲を外れた場合に、動力伝達部4に異常が発生したと判定する。
【0052】
なお、第2の仮判定部17−1および異常判定部18−1は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えば第2の仮判定部17−1および異常判定部18−1をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ制御装置1内の演算処理装置はこのソフトウェアプログラムに従って動作することで上述の第2の仮判定部17−1および異常判定部18−1の機能が実現される。
【0053】
なお、これ以外の回路構成要素については図1に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0054】
図4は、図3に示す本発明の第1の実施例によるモータ制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0055】
まず、ステップS201において、モータ回転角取得部11は、モータ回転角検出器31から出力されたモータ2の回転角に関する情報を取得する。
【0056】
ステップS202において、主軸回転角取得部12は、主軸回転角検出器32から出力された主軸3の回転角に関する情報を取得する。ステップS201における処理により得られるモータ2の回転角に関する情報とS202における処理により得られる主軸3の回転角に関する情報とは、モータ回転角検出部31および主軸回転角検出部32から同時期に出力されたものである。
【0057】
ステップS203において、1回転信号取得部13は、主軸回転角検出器32から出力された主軸3の1回転信号を取得する。
【0058】
次いでステップS204において、第1の仮判定部16は、1回転信号取得部13が1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの間に取得されたモータ2の回転角の変化量を算出し、この変化量が第1の範囲から外れたか否かを判断する。
【0059】
第1の仮判定部16は、ステップS204においてモータ2の回転角の変化量が第1の範囲から外れたと判断した場合は、ステップS205において、動力伝達部4に異常が発生したと仮判定する。
【0060】
また、第1の仮判定部16は、ステップS204においてモータ2の回転角の変化量が第1の範囲から外れていないと判断した場合は、ステップS206において、動力伝達部4は正常であると仮判定する。
【0061】
ステップS207では、第2の仮判定部17−1は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差を算出する。なお、ステップS201におけるモータ回転角取得部11によるモータ2の回転角に関する情報の取得処理およびステップS202における主軸回転角取得部12による主軸3の回転角の取得処理の実行後、ステップS207における回転速度差の算出処理の実行前までの間に、モータ回転速度算出部14によるモータ2の回転速度を算出処理および主軸回転速度算出部15による主軸3の回転速度の算出処理を実行しておく。
【0062】
ステップS208では、第2の仮判定部17−1は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差のデータにフィルタを適用する。すなわち、第2の仮判定部17−1内のフィルタ19により、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差から、モータ2と主軸3との間の動力伝達部4のスリップに起因するノイズを除去する。
【0063】
ステップS209では、第2の仮判定部17−1は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差についてのフィルタ適用後のデータが、第2の範囲から外れたか否かを判断する。
【0064】
第2の仮判定部17−1は、ステップS209においてモータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差についてのフィルタ適用後のデータが第2の範囲から外れたと判断した場合は、ステップS210において、動力伝達部4に異常が発生したと仮判定する。
【0065】
また、第2の仮判定部17−1は、ステップS209においてモータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差についてのフィルタ適用後のデータが第2の範囲から外れていないと判断した場合は、ステップS211において、動力伝達部4は正常であると仮判定する。
【0066】
ステップS212において、異常判定部18−1は、第1の仮判定部16が動力伝達部4に異常が発生したと仮判定したか否かを判断する。
【0067】
異常判定部18−1は、ステップS212において第1の仮判定部16が動力伝達部4に異常が発生したと仮判定した場合は、ステップS214において、動力伝達部4に異常が発生したと最終的に判定する。
【0068】
異常判定部18−1は、ステップS212において第1の仮判定部16が動力伝達部4は正常であると仮判定した場合は、ステップS213において、第2の仮判定部17−1が動力伝達部4に異常が発生したと仮判定したか否かを判断する。
【0069】
異常判定部18−1は、ステップS213において第2の仮判定部17−1が動力伝達部4に異常が発生したと仮判定した場合は、ステップS214において、動力伝達部4に異常が発生したと最終的に判定する。
【0070】
異常判定部18−1は、ステップS213において第2の仮判定部17−1が動力伝達部4は正常であると仮判定した場合は、ステップS215において、動力伝達部4は正常であると最終的に判定する。その後、ステップS201へ戻り、上述の処理を繰り返し実行する。
【0071】
図5は、本発明の第2の実施例によるモータ制御装置の原理ブロック図である。本発明の第2の実施例では、異常判定部18−2は、第1の仮判定部16および第2の仮判定部17の両方が動力伝達部4に異常が発生したと仮判定した場合に、動力伝達部4に異常が発生したと判定する。この場合、第1の実施例とは異なり、第2の仮判定部17にフィルタを設ける必要はなく、その動作は図1および図2を参照して説明した通りである。
【0072】
第2の仮判定部17にはフィルタを設けないので、動力伝達部4の瞬間的なスリップ(すべり)を「異常の発生」と誤判定してしまう可能性がある。一方、第1の仮判定部16は、1回転信号取得部13が1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの間に取得されたモータ2の回転角の変化量を算出し、この変化量が第1の範囲から外れたか否かを判断するので、第1の範囲をある程度大きく取っておけば、動力伝達部4の瞬間的なスリップ(すべり)を「異常の発生」と誤判定してしまう可能性は低い。そこで、本発明の第2の実施例では、第1の仮判定部16および第2の仮判定部17のそれぞれの特性を生かし、異常判定部18−2を、第1の仮判定部16および第2の仮判定部17の両方が動力伝達部4に異常が発生と仮判定した場合にのみ、動力伝達部4に異常が発生したと最終的に判定するように構成する。この構成により、動力伝達部4の瞬間的なスリップ(すべり)を「異常の発生」と誤検出してしまうことが抑制される。
【0073】
なお、異常判定部18−2は、例えばソフトウェアプログラム形式で構築されてもよく、あるいは各種電子回路とソフトウェアプログラムとの組み合わせで構築されてもよい。例えば異常判定部18−2をソフトウェアプログラム形式で構築する場合は、モータ制御装置1内の演算処理装置はこのソフトウェアプログラムに従って動作することで上述の異常判定部18−2の機能が実現される。
【0074】
なお、これ以外の回路構成要素については図1に示す回路構成要素と同様であるので、同一の回路構成要素には同一符号を付して当該回路構成要素についての詳細な説明は省略する。
【0075】
図6は、図5に示す本発明の第2の実施例によるモータ制御装置の動作フローを示すフローチャートである。
【0076】
まず、ステップS301において、モータ回転角取得部11は、モータ回転角検出器31から出力されたモータ2の回転角に関する情報を取得する。
【0077】
ステップS302において、主軸回転角取得部12は、主軸回転角検出器32から出力された主軸3の回転角に関する情報を取得する。ステップS301における処理により得られるモータ2の回転角に関する情報とS302における処理により得られる主軸3の回転角に関する情報とは、モータ回転角検出部31および主軸回転角検出部32から同時期に出力されたものである。
【0078】
ステップS303において、1回転信号取得部13は、主軸回転角検出器32から出力された主軸3の1回転信号を取得する。
【0079】
次いでステップS304において、第1の仮判定部16は、1回転信号取得部13が1回転信号を取得してから次の1回転信号を取得するまでの間に取得されたモータ2の回転角の変化量を算出し、この変化量が第1の範囲から外れたか否かを判断する。
【0080】
第1の仮判定部16は、ステップS304においてモータ2の回転角の変化量が第1の範囲から外れたと判断した場合は、ステップS305において、動力伝達部4に異常が発生したと仮判定する。
【0081】
また、第1の仮判定部16は、ステップS304においてモータ2の回転角の変化量が第1の範囲から外れていないと判断した場合は、ステップS306において、動力伝達部4は正常であると仮判定する。
【0082】
ステップS307では、第2の仮判定部17は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差を算出する。なお、ステップS301におけるモータ回転角取得部11によるモータ2の回転角に関する情報の取得処理およびステップS302における主軸回転角取得部12による主軸3の回転角の取得処理の実行後、ステップS307における回転速度差の算出処理の実行前までの間に、モータ回転速度算出部14によるモータ2の回転速度を算出処理および主軸回転速度算出部15による主軸3の回転速度の算出処理を実行しておく。
【0083】
ステップS308では、第2の仮判定部17は、モータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差が第2の範囲から外れたか否かを判断する。
【0084】
第2の仮判定部17は、ステップS308においてモータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差が第2の範囲から外れたと判断した場合は、ステップS309において、動力伝達部4に異常が発生したと仮判定する。
【0085】
また、第2の仮判定部17は、ステップS308においてモータ2の回転速度と主軸3の回転速度との差が第2の範囲から外れていないと判断した場合は、ステップS310において、動力伝達部4は正常であると仮判定する。
【0086】
ステップS311において、異常判定部18−2は、第1の仮判定部16が動力伝達部4に異常が発生したと仮判定したか否かを判断する。
【0087】
異常判定部18−2は、ステップS311において第1の仮判定部16が動力伝達部4に異常が発生したと仮判定した場合は、ステップS312へ進む。
【0088】
異常判定部18−2は、ステップS311において第1の仮判定部16が動力伝達部4は正常であると仮判定した場合は、ステップS314において、動力伝達部4は正常であると最終的に判定する。その後、ステップS301へ戻り、上述の処理を繰り返し実行する。
【0089】
異常判定部18−2は、ステップS312において、第2の仮判定部17が動力伝達部4に異常が発生したと仮判定したか否かを判断する。
【0090】
異常判定部18−2は、ステップS312において第2の仮判定部17が動力伝達部4に異常が発生したと仮判定した場合は、ステップS313において、動力伝達部4に異常が発生したと最終的に判定する。
【0091】
異常判定部18−2は、ステップS312において第2の仮判定部17が動力伝達部4は正常であると仮判定した場合は、ステップS314において、動力伝達部4は正常であると最終的に判定する。その後、ステップS301へ戻り、上述の処理を繰り返し実行する。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、モータ回転角検出部および主軸回転角検出部が接続されたモータ制御装置によりモータの回転駆動が制御され、このモータの回転動力がベルトやギアなどの動力伝達部を介して主軸に伝達されることで主軸が回転する工作機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 モータ制御装置
2 モータ
3 主軸
4 動力伝達部
11 モータ回転角取得部
12 主軸回転角取得部
13 1回転信号取得部
14 モータ回転速度算出部
15 主軸回転速度算出部
16 第1の仮判定部
17、17−1 第2の仮判定部
18、18−1、18−2 異常判定部
19 フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6