【実施例】
【0033】
以下に実施例を示して、本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下に記載の実施例によって制限されるものではない。
触媒のXRD分析は下記条件で実施した。
(測定条件)検出器:半導体検出器、管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:40mA、発散スリット:0.3°、ステップ幅:0.02°/step、計測時間:3sec
触媒製造後の反応に供する前の触媒粒子を、粉砕せずにそのまま測定した。触媒を粉砕した場合、衝撃によりα型の2価の金属モリブデート結晶相がβ型へ転移し、本来の回折パターンが得られない。
2θ=26.6±0.2°のピークの半値幅は、回折パターンにおける2θでの12°付近及び36°付近のピークの存在しない点を結んだ線をベースラインとして、2θ=26.6±0.2°付近のピークトップから垂線を引きベースラインと交わる線分の長さを2θ=26.6±0.2°付近のピークのピーク強度Aとし、前記、線分を二等分した点において水平線を引き、回折パターンとの交点の長さを半値幅として2θで表した。同様に2θ=23.0±0.2°のピークトップから垂線を引き、前記ベースラインと交わる線分の長さを2θ=23.0±0.2°のピークのピーク強度Bとして、強度比B/Aを求めた。
【0034】
水性スラリー中のモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄の固相比率は以下の方法で測定した。
水性スラリー中の固相におけるモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄の定量
水性スラリー(A)gを10,000回転、15分の条件にて遠心分離器にかけ、上澄み液と沈殿物とに分離し、その上澄み液を1μmのフィルターでろ過した。得られた遠心分離後の沈降物及びろ過したろ過残渣を、乾燥機で100℃、18時間乾燥した。得られた乾燥物の質量は(B)gであり、ろ過により得られたろ液の質量は(C)gであった。
このろ液中に含まれるモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄についてICP発光分析装置で分析したところ、ろ液に含まれるモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄の量はそれぞれ(D)g、(E)g、(F)g、(G)gであった。
遠心分離の沈降物とろ過残渣は乾燥後、300℃で3時間焼成した。得られた固形物は36質量%塩酸5g、57質量%ヨウ化水素酸10g及び47質量%フッ化水素酸2.5gで混合した液と同じ組成の液に完全に溶解させ、ICP発光分析装置で分析したところ、モリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄の量はそれぞれ(H)g、(I)g、(J)g、(K)gであった。
以上の結果からスラリー中のモリブデン、ビスマス、ニッケル及び鉄の固相に存在する割合を以下のように算出した。
モリブデンの固相比率(モル%)=[H−D×(A−B−C)/C]/(H+D)×100
ビスマスの固相比率(モル%)=[I−E×(A−B−C)/C]/(I+E)×100
ニッケルの固相比率(モル%)=[J−F×(A−B−C)/C]/(J+F)×100
鉄の固相比率(モル%)=[K−G×(A−B−C)/C]/(K+G)×100
【0035】
シリカの一次粒子径は以下のとおりに測定した。
BET法、即ちBET吸着等温式(Brunauer-Emmett-Telleradsorption isotherm)によりシリカ一次粒子の平均直径を求めた。具体的には、まず、100〜200℃の温度でシリカゾルの分散媒である水を蒸発させ、紛体とした後に、液体窒素温度で窒素を飽和吸着させ、室温に戻した時の窒素の脱離量により、紛体の比表面積S(m
2/g)を算出した。
そして、シリカの一次粒子を全て同一直径D(nm)の球体と仮定し、シリカゾル中のシリカ粒子(アモルファスシリカ)の比重(ρ)を2.2とし、1g当たりのシリカ一次粒子の個数をnとして、直径D(nm)を下記式により求めた。
1/ρ=4/3×π×(D×10
-7/2)
3×n
S=4×π×(D×10
-9/2)
2×n
従って、D=6000/(ρ×S)となり、これをシリカの一次粒子径とした。
【0036】
アンモ酸化反応は以下の条件で実施した。
原料混合ガスの組成は、プロピレンのアンモ酸化の場合は、
プロピレン/アンモニア/空気=1/1.25/8.0〜10.0(分子状酸素換算で1.6〜2.0)、
イソブテン又は3級ブタノールのアンモ酸化の場合は、
イソブテン又は3級ブタノール/アンモニア/空気=1/1.2/9.0〜10.5(分子状酸素換算で1.8〜2.1)
で行った。
【0037】
また、反応装置としては、内径25mmのパイレックス(登録商標)ガラス製流動床反応管を用い、反応圧力Pは0.15Mpa、充填触媒量Wは40〜50g、全供給ガス量Fは250〜450Ncc/sec(標準状態(0℃、1atmに換算))、反応温度Tは430℃で行った。
接触時間は次式で定義した。
接触時間(sec・g/cc)=(W/F)×273/(273+T)×P/0.10
式中、Wは触媒の量(g)、Fは標準状態(0℃、1atm)での原料ガス流量(Ncc/sec)、Tは反応温度(℃)、Pは反応圧力(MPa)を示す。
【0038】
なお、実施例及び比較例で示す転化率、選択率及び収率は次式により算出した。
転化率(%)=(反応したプロピレン、イソブテン又は3級ブタノールのモル数)/(供給したプロピレン、イソブテン又は3級ブタノールのモル数)×100
CO
2選択率(%)=((生成したCO
2のモル数)/3)/(反応したプロピレン、イソブテン又は3級ブタノールのモル数)
CO選択率(%)=((生成したCOのモル数)/3)/(反応したプロピレン、イソブテン又は3級ブタノールのモル数)
アクリロニトリル(AN)又はメタクロニトリル収率(%)=(生成したアクリロニトリル又はメタクロニトリルのモル数)/(供給したプロピレン、イソブテン又は3級ブタノールのモル数)×100
【0039】
[実施例1]
(水性スラリーの調製及び元素の固相存在比率の定量)
触媒組成がMo
12Bi
0.2Ce
0.4Fe
2.0Ni
5.6Mg
2.2K
0.08Cs
0.03であり、触媒全体に対するシリカの割合が50質量%である触媒を製造するためのスラリーを以下の手順で調製した。
なお、上記触媒組成については、各元素の仕込みの組成を触媒組成とみなした。
ヘプタモリブデン酸アンモニウム[(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O]379.2gを40℃に加温した水763.8gに溶解し、SiO
2換算で30質量%のシリカを含み、15nmの一次粒子径を持つシリカゾル水溶液1500gと混合し撹拌した。撹拌継続10分後、硝酸ビスマス[Bi(NO
3)
3・5H
2O]17.4g、硝酸セリウム[Ce(NO
3)
3・6H
2O]31.1g、硝酸鉄[Fe(NO
3)
3・9H
2O]144.6g、硝酸ニッケル[Ni(NO
3)
3・6H
2O]291.5g、硝酸マグネシウム[Mg(NO
3)
3・6H
2O]100.9g、硝酸カリウム[KNO
3]1.45g及び硝酸セシウム[CsNO
3]1.05gを16.6質量%の硝酸321.9gに溶解した水溶液を添加した。この時、スラリーの金属硝酸塩から持ち込まれた硝酸成分以外の余剰硝酸濃度は1.5質量%であった。次に120rpmの回転数で5分間撹拌を継続後、撹拌容器を循環式冷却器により冷却し、スラリーを5℃に保ち1時間撹拌を継続した。
得られたスラリーについて直ちに前記方法によりモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄について固相に存在する割合を定量したところ、スラリー中の全モリブデンの内、固相に存在するモリブデンの割合は94モル%であり、スラリー中の全ビスマスの内、固相に存在するビスマスの割合は98モル%であり、スラリー中の全鉄の内、固相に存在する鉄の割合は92%であり、スラリー中の全ニッケルの内、固相に存在するニッケルの割合は7モル%であった。
【0040】
(触媒の製造及びXRD分析、反応の評価)
上記で調製したスラリーを、回転円盤式の噴霧乾燥器を用いて乾燥した。この時の乾燥機の導入口の温度は280℃であり、出口の温度は140℃となるように温度を保った。得られた乾燥体は、400℃、1時間の条件で前段焼成した後、600℃で2時間焼成を行い、触媒を得た。
得られた触媒のXRD分析を上記記載の方法により行った結果、2θ=26.6±0.2°付近のピークの半値幅は0.23°であり、ピーク強度の比B/Aは、0.15であった。
得られた触媒50gを用いて、接触時間5.0secにおいてプロピレンのアンモ酸化反応を実施したところ、反応開始から24時間後の転化率は99.3%であり、アクリロニトリルの収率は81.5%であった。なおこの時のCO
2選択率は6.0%、COの選択率は3.2%であった。
【0041】
[実施例2]
(水性スラリーの調製及び元素の固相存在比率の定量)
触媒組成がMo
12Bi
0.34Ce
1.01Fe
2.2Ni
4.1Mg
2.5K
0.06Rb
0.05であり、触媒全体に対するシリカの割合が50質量%である触媒を製造するためのスラリーを以下の手順で調製した。
ヘプタモリブデン酸アンモニウム[(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O]372.1gを40℃に加温した水749.4gに溶解し、SiO
2換算で30質量%のシリカを含み、15nmの一次粒子径を持つシリカゾル水溶液1500gと混合し撹拌した。撹拌継続10分後、硝酸ビスマス[Bi(NO
3)
3・5H
2O]29.0g、硝酸セリウム[Ce(NO
3)
3・6H
2O]77.0g、硝酸鉄[Fe(NO
3)
3・9H
2O]156.1g、硝酸ニッケル[Ni(NO
3)
3・6H
2O]209.4g、硝酸マグネシウム[Mg(NO
3)
3・6H
2O]112.5g、硝酸カリウム[KNO
3]1.07g及び硝酸ルビジウム[RbNO
3]1.30gを16.6質量%の硝酸319.6gに溶解した水溶液を添加した。この時、スラリーの金属硝酸塩から持ち込まれた硝酸成分以外の余剰硝酸濃度は1.5質量%であった。次に120rpmの回転数で5分間撹拌を継続後、撹拌容器を循環式冷却器により冷却し、スラリーを3℃に保ち2時間撹拌を継続した。
得られたスラリーについて直ちに前記方法によりモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄について固相に存在する割合を定量したところ、スラリー中の全モリブデンの内、固相に存在するモリブデンの割合は93モル%であり、スラリー中の全ビスマスの内、固相に存在するビスマスの割合は97モル%であり、スラリー中の全鉄の内、固相に存在する鉄の割合は96%であり、スラリー中の全ニッケルの内、固相に存在するニッケルの割合は9モル%であった。
【0042】
(触媒の製造及びXRD分析、反応の評価)
上記で調製したスラリーを用いて、実施例1と同様の方法で乾燥及び前段焼成を実施した後、610℃で2時間焼成を行い、触媒を得た。XRD分析を前記記載の方法により行った結果、2θ=26.6±0.2°付近のピークの半値幅は0.24°であり、ピーク強度の比B/Aは0.16であった。
得られた触媒50gを用いて、接触時間4.5secにおいてプロピレンのアンモ酸化反応を実施したところ、反応開始から24時間後の転化率は99.6%であり、アクリロニトリルの収率は83.2%であった。なおこの時のCO
2選択率は4.7%、COの選択率は2.5%であった。
【0043】
[実施例3]
(水性スラリーの調製及び元素の固相存在比率の定量)
触媒組成がMo
12Bi
0.45Ce
0.90Fe
1.8Ni
5.0Mg
2.0Rb
0.15であり、触媒全体に対するシリカの割合が50質量%である触媒を製造するためのスラリーを以下の手順で調製した。
ヘプタモリブデン酸アンモニウム[(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O]367.9gを40℃に加温した水740.9gに溶解し、SiO
2換算で30質量%のシリカを含み、15nmの一次粒子径を持つシリカゾル水溶液1500gと混合し撹拌した。撹拌継続10分後、硝酸ビスマス[Bi(NO
3)
3・5H
2O]37.9g、硝酸セリウム[Ce(NO
3)
3・6H
2O]67.9g、硝酸鉄[Fe(NO
3)
3・9H
2O]126.3g、硝酸ニッケル[Ni(NO
3)
3・6H
2O]252.5g、硝酸マグネシウム[Mg(NO
3)
3・6H
2O]89.0g及び硝酸ルビジウム[RbNO
3]3.84gを16.6質量%の硝酸317.5gに溶解した水溶液を添加した。この時、スラリーの金属硝酸塩から持ち込まれた硝酸成分以外の余剰硝酸濃度は1.5質量%であった。次に120rpmの回転数で5分間撹拌を継続後、撹拌容器を循環式冷却器により冷却しスラリーを5℃に保ち、1時間撹拌を継続した。
得られたスラリーについて、直ちに前記方法によりモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄について固相に存在する割合を定量したところ、スラリー中の全モリブデンの内、固相に存在するモリブデンの割合は92モル%であり、スラリー中の全ビスマスの内、固相に存在するビスマスの割合は99モル%であり、スラリー中の全鉄の内、固相に存在する鉄の割合は95%であり、スラリー中の全ニッケルの内、固相に存在するニッケルの割合は8モル%であった。
【0044】
(触媒の製造及びXRD分析、反応の評価)
上記で調製したスラリーを用いて、実施例1と同様の方法で乾燥、前段焼成を実施した後、600℃で2時間焼成を行い、触媒を得た。XRD分析を前記記載の方法により行った結果、2θ=26.6±0.2°付近のピークの半値幅は0.22°であり、ピーク強度の比B/Aは0.15であった。
得られた触媒50gを用いて、接触時間3.8secにおいてプロピレンのアンモ酸化反応を実施したところ、反応開始から24時間後の転化率は99.5%であり、アクリロニトリルの収率は82.4%であった。なおこの時のCO
2選択率は5.0%、COの選択率は2.9%であった。
【0045】
[比較例1]
(水性スラリーの調製及び元素の固相存在比率の定量)
ヘプタモリブデン酸アンモニウムを溶解する水の温度を60℃とし、シリカゾル水溶液を添加して撹拌する際、及び各金属を溶解した硝酸液を添加するまでは液温を60℃に保ち、すべての液を混合した後は液温を65℃に保持しながら4時間撹拌を継続したこと以外は、実施例1と同じ手順により水性スラリーを調製した。
得られたスラリーについて直ちに前記方法によりモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄について固相に存在する割合を定量したところ、スラリー中の全モリブデンの内、固相に存在するモリブデンの割合は72モル%であり、スラリー中の全ビスマスの内、固相に存在するビスマスの割合は94モル%であり、スラリー中の全鉄の内、固相に存在する鉄の割合は43%であり、スラリー中の全ニッケルの内、固相に存在するニッケルの割合は4モル%であった。
【0046】
(触媒の製造及びXRD分析、反応の評価)
上記で調製したスラリーを用いて、実施例1と同様の方法で乾燥、前段焼成を実施した後、600℃で2時間焼成を行い、触媒を得た。XRD分析を前記記載の方法により行った結果、2θ=26.6±0.2°付近のピークの半値幅は0.33°であり、ピーク強度の比B/Aは0.12であった。
得られた触媒50gを用いて、接触時間4.2secにおいてプロピレンのアンモ酸化反応を実施したところ、反応開始から24時間後の転化率は99.5%であり、アクリロニトリルの収率は78.3%であった。なおこの時のCO
2選択率は8.2%、COの選択率は4.5%であった。
【0047】
[比較例2]
(水性スラリーの調製及び元素の固相存在比率の定量)
スラリーの金属硝酸塩から持ち込まれた硝酸成分以外の余剰硝酸濃度を3.0質量%とし、すべての液を混合した後の撹拌時間を8時間撹拌としたこと以外は実施例1と同じ手順により水性スラリーを調製した。
得られたスラリーについて、直ちに前記方法によりモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄について固相に存在する割合を定量したところ、スラリー中の全モリブデンの内、固相に存在するモリブデンの割合は82モル%であり、スラリー中の全ビスマスの内、固相に存在するビスマスの割合は85モル%であり、スラリー中の全鉄の内、固相に存在する鉄の割合は78%であり、スラリー中の全ニッケルの内、固相に存在するニッケルの割合は5モル%であった。
【0048】
(触媒の製造及びXRD分析、反応の評価)
上記で調製したスラリーを用いて、実施例1と同様の方法で乾燥、前段焼成を実施した後、600℃で2時間焼成を行い、触媒を得た。XRD分析を前記記載の方法により行った結果、2θ=26.6±0.2°付近のピークの半値幅は0.33°であり、ピーク強度の比B/Aは0.11であった。
得られた触媒50gを用いて、接触時間4.4secにおいてプロピレンのアンモ酸化反応を実施したところ、反応開始から24時間後の転化率は99.6%であり、アクリロニトリルの収率は80.2%であった。なおこの時のCO
2選択率は7.3%、COの選択率は4.8%であった。
【0049】
[実施例4]
(水性スラリーの調製及び元素の固相存在比率の定量)
触媒組成がMo
12Bi
0.45Ce
0.90Fe
1.8Ni
5.0Mg
2.0Rb
0.15であり、触媒全体に対するシリカの割合が50質量%である触媒を製造するためのスラリーを以下の手順で調製した。
ヘプタモリブデン酸アンモニウム[(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O]367.9gを40℃に加温した水740.9gに溶解し、SiO
2換算で30質量%のシリカを含み、15nmの一次粒子径を持つシリカゾルと43nmの一次粒子径を持つシリカゾルをSiO
2換算比率で1:1になるように混合した水溶液1500gを混合し撹拌した。撹拌継続10分後、硝酸ビスマス[Bi(NO
3)
3・5H
2O]37.9g、硝酸セリウム[Ce(NO
3)
3・6H
2O]67.9g、硝酸鉄[Fe(NO
3)
3・9H
2O]126.3g、硝酸ニッケル[Ni(NO
3)
3・6H
2O]252.5g、硝酸マグネシウム[Mg(NO
3)
3・6H
2O]89.0g及び硝酸ルビジウム[RbNO
3]3.84gを16.6質量%の硝酸317.5gに溶解した水溶液を添加した。この時、スラリーの金属硝酸塩から持ち込まれた硝酸成分以外の余剰硝酸濃度は1.5質量%であった。次に120rpmの回転数で5分間撹拌を継続後、撹拌容器を循環式冷却器により冷却し、スラリーを5℃に保ち1時間撹拌を継続した。
得られたスラリーについて、直ちに前記方法によりモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄について固相に存在する割合を定量したところ、スラリー中の全モリブデンの内、固相に存在するモリブデンの割合は93モル%であり、スラリー中の全ビスマスの内、固相に存在するビスマスの割合は99モル%であり、スラリー中の全鉄の内、固相に存在する鉄の割合は97%であり、スラリー中の全ニッケルの内、固相に存在するニッケルの割合は7モル%であった。
【0050】
(触媒の製造及びXRD分析、反応の評価)
上記で調製したスラリーを用いて、実施例1と同様の方法で乾燥、前段焼成を実施した後、580℃で2時間焼成を行い、触媒を得た。XRD分析を前記記載の方法により行った結果、2θ=26.6±0.2°付近のピークの半値幅は0.22°であり、ピーク強度の比B/Aは、0.19であった。
得られた触媒50gを用いて、接触時間4.4secにおいてプロピレンのアンモ酸化反応を実施したところ、反応開始から24時間後の転化率は99.5%であり、アクリロニトリルの収率は84.5%であった。なおこの時のCO
2選択率は4.5%、COの選択率は2.1%であった。
【0051】
[比較例3]
(水性スラリーの調製及び元素の固相存在比率の定量)
ヘプタモリブデン酸アンモニウムを溶解する水の温度を60℃とし、シリカゾル水溶液を添加して撹拌する際、及び各金属を溶解した硝酸液を添加するまでは液温を60℃に保ち、すべての液を混合した後は液温を65℃に保持しながら4時間撹拌を継続したこと以外は、実施例4と同一の手順で水性スラリー調製をした。
得られたスラリーについて直ちに前記方法によりモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄について固相に存在する割合を定量したところ、スラリー中の全モリブデンの内、固相に存在するモリブデンの割合は85モル%であり、スラリー中の全ビスマスの内、固相に存在するビスマスの割合は82モル%であり、スラリー中の全鉄の内、固相に存在する鉄の割合は75%であり、スラリー中の全ニッケルの内、固相に存在するニッケルの割合は6モル%であった。
【0052】
(触媒の製造及びXRD分析、反応の評価)
上記で調製したスラリーを用いて、実施例1と同様の方法で乾燥、前段焼成を実施し、580℃で2時間焼成を行い、触媒を得た。XRD分析を前記記載の方法により行った結果、2θ=26.6±0.2°付近のピークの半値幅は0.28°であり、ピーク強度の比B/Aは0.14であった。
得られた触媒50gを用いて、接触時間4.2secにおいてプロピレンのアンモ酸化反応を実施したところ、反応開始から24時間後の転化率は99.5%であり、アクリロニトリルの収率は80.5%であった。なおこの時のCO
2選択率は5.5%、COの選択率は3.1%であった。
【0053】
[実施例5]
(水性スラリーの調製及び元素の固相存在比率の定量)
触媒組成がMo
12Bi
0.34Ce
1.01Fe
2.2Ni
4.1Mg
2.5K
0.3であり、触媒全体に対するシリカの割合が50質量%である触媒を製造するためのスラリーを以下の手順で調製した。
ヘプタモリブデン酸アンモニウム[(NH
4)
6Mo
7O
24・4H
2O]371.1gを40℃に加温した水747.5gに溶解し、SiO
2換算で30質量%のシリカを含み、15nmの一次粒子径を持つシリカゾル水溶液を1500gと混合し撹拌した。撹拌継続10分後、硝酸ビスマス[Bi(NO
3)
3・5H
2O]28.9g、硝酸セリウム[Ce(NO
3)
3・6H
2O]76.8g、硝酸鉄[Fe(NO
3)
3・9H
2O]155.7g、硝酸ニッケル[Ni(NO
3)
3・6H
2O]208.9g、硝酸マグネシウム[Mg(NO
3)
3・6H
2O]112.2g及び硝酸カリウム[KNO
3]5.31gを16.6質量%の硝酸319.5gに溶解した水溶液を添加した。この時、スラリーの金属硝酸塩から持ち込まれた硝酸成分以外の余剰硝酸濃度は1.5質量%であった。次に120rpmの回転数で5分間撹拌を継続後、撹拌容器を循環式冷却器により冷却してスラリーを5℃に保ち、1時間撹拌を継続した。
得られたスラリーについて直ちに前記方法によりモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄について固相に存在する割合を定量したところ、スラリー中の全モリブデンの内、固相に存在するモリブデンの割合は88モル%であり、スラリー中の全ビスマスの内、固相に存在するビスマスの割合は95モル%であり、スラリー中の全鉄の内、固相に存在する鉄の割合は88%であり、スラリー中の全ニッケルの内、固相に存在するニッケルの割合は8モル%であった。
【0054】
(触媒の製造及びXRD分析、反応の評価)
上記で調製したスラリーを用いて、実施例1と同様の方法で乾燥、前段焼成を実施した後、615℃で2時間焼成を行い、触媒を得た。XRD分析を前記記載の方法により行った結果、2θ=26.6±0.2°付近のピークの半値幅は0.24°であり、ピーク強度の比B/Aは0.17であった。
得られた触媒50gを用いて、接触時間4.5secにおいてプロピレンのアンモ酸化反応を実施したところ、反応開始から24時間後の転化率は99.6%であり、アクリロニトリルの収率は73.0%であった。なおこの時のCO
2選択率は6.2%、COの選択率は3.5%であった。
【0055】
[比較例4]
(水性スラリーの調製及び元素の固相存在比率の定量)
水性スラリーの調製において、ヘプタモリブデン酸アンモニウムを溶解する水の温度を60℃とし、シリカゾル水溶液を添加して撹拌する際、及び各金属を溶解した硝酸液を添加するまでは液温を60℃に保ち、すべての液を混合した後は液温を65℃に保持しながら4時間撹拌を継続したこと以外は実施例5と同一の手順によりスラリーを調製した。
得られたスラリーについて、直ちに前記方法によりモリブデン、ビスマス、ニッケル、鉄について固相に存在する割合を定量したところ、スラリー中の全モリブデンの内、固相に存在するモリブデンの割合は83モル%であり、スラリー中の全ビスマスの内、固相に存在するビスマスの割合は92モル%であり、スラリー中の全鉄の内、固相に存在する鉄の割合は49%であり、スラリー中の全ニッケルの内、固相に存在するニッケルの割合は4モル%であった。
【0056】
(触媒の製造及びXRD分析、反応の評価)
上記で調製したスラリーを用いて、実施例1と同様の方法で乾燥、前段焼成を実施した後、580℃で2時間焼成を行い、触媒を得た。XRD分析を前記記載の方法により行った結果、2θ=26.6±0.2°付近のピークの半値幅は0.31°であり、ピーク強度の比B/Aは0.12であった。
得られた触媒50gを用いて、接触時間4.8secにおいてプロピレンのアンモ酸化反応を実施したところ、反応開始から24時間後の転化率は99.5%であり、アクリロニトリルの収率は70.3%であった。なおこの時のCO
2選択率は6.8%、COの選択率は4.1%であった。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】