(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の赤外カメラを備え、当該複数の赤外カメラのそれぞれがパネルの部分領域の赤外画像を得ることによって、当該パネルに設けられた配線の欠陥の検出をおこなうための配線欠陥検出装置であって、
少なくとも2つの上記赤外カメラの視野が少なくとも一部において互いに重複しているときに当該少なくとも2つの赤外カメラのそれぞれから得られる赤外画像における、当該重複している領域に対応する部分画像に基づいて、当該少なくとも2つの赤外カメラに異常があるか否かの判定をおこなう判定手段と、
上記複数の赤外カメラを移動させる移動手段と、
上記少なくとも2つの赤外カメラが、上記検出をおこなう際と、上記判定をおこなう際とで、視野を変えるように上記移動手段を制御する制御手段とをさらに備えていることを特徴とする配線欠陥検出装置。
上記検出をおこなう際に、上記少なくとも2つの上記赤外カメラの視野が少なくとも一部において互いに重複していることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の配線欠陥検出装置。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶パネルの製造プロセスには、例えば、アレイ(TFT)工程、セル(液晶)工程、および、モジュール工程などがある。このうち、アレイ工程では、透明基板上に、ゲート電極、半導体膜、ソース・ドレイン電極、保護膜、および、透明電極が形成された後、アレイ欠陥検査が行なわれ、電極や配線等の短絡や断線等の欠陥の有無が検査される。
【0003】
通常、アレイ欠陥検査には、配線の端部にプローブを接触させ、配線両端における電気抵抗や、隣接する配線間の電気抵抗および/または電気容量を測定する方法が用いられている。しかしながら、この方法によるアレイ欠陥検査において、配線部の欠陥の有無を検出できても、その欠陥の位置を特定するのは容易ではなかった。欠陥の位置を特定する検査方法の一例として作業者が基板を顕微鏡で観察して特定する目視検査があるが、この検査方法は作業者の負担が大きく、また、目視では欠陥の判別が難しく、欠陥の位置を誤ることもあった。
【0004】
このため、基板を赤外カメラで撮影して画像処理を行い、欠陥位置を特定する赤外検査が提案されている。
【0005】
特許文献1は、赤外検査に関するものであり、
図13に示すように、薄膜トランジスタ液晶基板において、走査線811〜815と信号線821〜825との間に電圧Vを与えることで短絡欠陥803を発熱させる。一方で、走査線811〜815および信号線821〜825を電圧印加前後に破線806に沿って赤外顕微鏡で画像信号を検出し、検出した画像信号の差をとり、X、Y方向への投影を算出することにより、短絡欠陥803の画素番地を特定する技術が開示されている。
【0006】
また近年では、比較的大型のパネル(例えば60型の液晶パネル)を搭載した装置が多く流通するようになり、大型パネルの製造が盛んになっている。そして、その製造ラインでは、上述と同様に、配線部の欠陥を検査するために複数の赤外カメラを用いて1つの大型パネルの欠陥検査をおこなう方法がある。
【0007】
複数の赤外カメラを用いた方法として、物体表面温度の異常を、2つの赤外カメラを用いて、物体表面の右側と左側とを撮影することによって、監視する方法が特許文献2に開示されている。
【0008】
ところで、上述のように赤外カメラを用いた欠陥検査装置においては、赤外カメラ自体、より具体的には赤外カメラの受光領域に汚れがあると、正確な欠陥検出が実施できず、パネルの製品不良を招く虞がある。そのため、欠陥検査装置のメンテナンスとして、赤外カメラの汚れの有無を検出する機構が搭載されているものがある。
【0009】
特許文献3は、パネルの配線欠陥装置ではないが、赤外カメラの汚れの有無を検出する機構が搭載されている技術が開示されている。特許文献3では、車両に搭載されて車両周辺を撮像する撮像装置の異常の有無を検知する撮像装置の異常検知装置が開示されている。この撮像装置の異常検知装置は、複数の撮像装置の撮像により得られた各複数の撮像装置の画像の輝度値に基づき各複数の撮像装置毎の画像の輝度分散値を算出する輝度分散値算出手段と、上記輝度分散値算出手段により算出された複数の上記輝度分散値に応じて上記撮像装置の異常の有無を検知する異常検知手段とを備えている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献3の構成では、複数の撮像装置は、互いに光軸が平行で、地表から同じ高さになるように固定されていた状態であるため、複数の赤外センサ間で異なる対象物が視野内にある場合に、汚れの有無を正しく判定することができない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、配線欠陥の検出を行う、複数の赤外カメラを実装した配線欠陥検出において、当該複数の赤外カメラの異常を適切に検知することができ、よって、従来構成よりも検査信頼性の高い配線欠陥検出を実現することができる配線欠陥検出装置、および当該赤外カメラの異常を検知するための異常検知方法を提供することにある。
【0013】
そこで、本願発明者らは、複数の赤外カメラを同じ条件下のもとで異常の有無を検査することによって、上述の目的を実現することを見出した。
【0014】
すなわち、本発明に係る配線欠陥検出装置は、上記の課題を解決するために、
複数の赤外カメラを備え、当該複数の赤外カメラのそれぞれがパネルの部分領域の赤外画像を得ることによって、当該パネルに設けられた配線の欠陥の検出をおこなうための配線欠陥検出装置であって、
少なくとも2つの上記赤外カメラの視野が少なくとも一部において互いに重複しているときに当該少なくとも2つの赤外カメラのそれぞれから得られる赤外画像における、当該重複している領域に対応する部分画像に基づいて、当該少なくとも2つの赤外カメラに異常があるか否かの判定をおこなう判定手段をさらに備えていることを特徴としている。
【0015】
上記の構成によれば、少なくとも2つの赤外カメラのそれぞれについて、重複している視野領域の画像を用いて当該少なくとも2つの赤外カメラに異常があるか否かを判定する。すなわち、このように、同一領域を撮像することにより、複数の赤外カメラ間で異なる対象物が視野内にある従来構成の場合と比較して、赤外カメラの異常を、精度よく検知することができる。
【0016】
また、上記の構成によれば、赤外カメラの画素単位の比較が可能となるため、異常検知感度が向上する。
【0017】
また、本発明に係る配線欠陥検出装置は、上記の構成に加えて、
上記複数の赤外カメラを移動させる移動手段と、
上記少なくとも2つの赤外カメラが、上記検出をおこなう際と、上記判定をおこなう際とで、視野を変えるように上記移動手段を制御する制御手段とをさらに備えていることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、配線の欠陥を検出する場合と、赤外カメラに異常があるか否かを判定する場合とで、上記複数の赤外カメラの配置が異なるように上記移動手段を制御する制御手段を備えている。そのため、配線の欠陥を検出する際には、複数の赤外カメラが全て互いに異なる領域を撮像するように構成していても、赤外カメラに異常があるか否かを判定する場合に赤外カメラを移動手段により移動させて重複領域を撮像することができる。換言すれば、上記の構成によれば、複数の赤外カメラが全て互いに異なる視野を撮像して配線の欠陥を検出することができるため、配線欠陥検出を効率的に行うことができるとともに、赤外カメラの異常を精度よく検知することができる。
【0019】
また、本発明に係る配線欠陥検出装置は、上記の構成に加えて、
上記制御手段は、上記判定をおこなう際に、上記少なくとも2つの赤外カメラの視野の中心が一致するように上記移動手段を制御することが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、上記少なくとも2つの赤外カメラの視野の中心が一致するように上記移動手段を制御するので、少なくとも2つの赤外カメラの視野の大部分を重複領域として上記判定に利用することができることから、異常を検知する領域を広く確保することができる。
【0021】
また、本発明に係る配線欠陥検出装置は、上記の構成に加えて、
上記検出をおこなう際に、上記少なくとも2つの上記赤外カメラの視野が少なくとも一部において互いに重複していることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、配線の欠陥の検出をおこなう場合と、赤外カメラの異常の判定をおこなう場合とで、赤外カメラの位置を変える必要がない。そのため、欠陥検出と異常判定とを間隔をあげずに実行することができる。
【0023】
また、本発明に係る配線欠陥検出装置は、上記の構成に加えて、
上記少なくとも2つの赤外カメラのそれぞれの上記部分画像に、当該少なくとも2つの赤外カメラのうちの任意の赤外カメラが発する熱に由来した異常画像が含まれる場合には、上記部分画像から当該異常画像をトリミングしたトリミング画像に対応する視野領域のうち、当該少なくとも2つの赤外カメラのそれぞれに共通する領域に対応する画像同士を比較することによって、上記判定をおこなうことが好ましい。
【0024】
例えばパネルを赤外カメラで撮像する場合、赤外カメラの配置位置によっては、自らが映り込む場合がある。そして、赤外カメラが駆動により発熱している場合には、熱がパネルによって反射され、赤外画像にあたかもパネルが発熱しているかのような画像が形成される。これは、赤外カメラの異常の有無を判定する場合であっても同様で、撮像対象に赤外カメラの熱が反射して、赤外画像の一部にその熱に由来する異常画像が形成される。このような異常画像は、赤外カメラの異常の有無の判定において、汚れがある(異常がある)と誤って判定される原因になる。そこで、本発明の上記構成によれば、そのような異常画像をトリミングして除き、そのトリミング後の画像(トリミング画像)のうちの、各カメラに共通する視野に対応した部分を用いて赤外カメラの異常の有無を判定する。そのため、上述のような異常がある(汚れがある)と誤って判定される虞はなく、信頼性の高い検知を実現することができる。このような映り込みは、赤外カメラの視野の中心を通る軸が、撮像対象面に対して垂直に位置している場合に多い。
【0025】
また、或る赤外カメラに、上記パネルを介して、別の赤外カメラの熱が映り込む場合も同様である。このような映り込みは、当該或る赤外カメラの視野の中心を通る軸を通る軸が、撮像対象面に対して垂直ではない所定の角度を有して傾斜している場合に多い。
【0026】
また、本発明に係る、赤外カメラの異常検知方法は、上記の課題を解決するために、
上記の構成を具備した配線欠陥検出装置の上記赤外カメラの異常を検知するカメラ異常検知方法であって、
少なくとも2つの上記赤外カメラの視野が少なくとも一部において互いに重複しているときに当該少なくとも2つの赤外カメラのそれぞれから得られる赤外画像における、当該重複している領域に対応する部分画像に基づいて、当該少なくとも2つの赤外カメラに異常があるか否かの判定をおこなう判定工程を含むことを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、少なくとも2つの赤外カメラのそれぞれについて、重複している視野領域の画像を用いて当該少なくとも2つの赤外カメラに異常があるか否かを判定する。すなわち、このように、同一領域を撮像することにより、複数の赤外カメラ間で異なる対象物が視野内にある従来構成の場合と比較して、赤外カメラの異常を、精度よく検知することができる。
【0028】
また、上記の構成によれば、赤外カメラの画素単位の比較が可能となるため、異常検知感度が向上する。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、配線欠陥の検出を行う、複数の赤外カメラを実装した配線欠陥検出において、当該複数の赤外カメラの異常を適切に検知することができ、よって、従来構成よりも検査信頼性の高い配線欠陥検出を実現することができる配線欠陥検出装置、および当該赤外カメラの異常を検知するための異常検知方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔実施形態1〕
以下、図面を参照して、本発明に係る実施の一態様を詳細に説明する。本実施形態においては、複数の赤外センサを用いて液晶パネルの全面を撮影することで、走査線および信号線を赤外センサで走査する手間を省き、欠陥検査に要する時間を短縮することのできる欠陥検査装置に関して、当該複数の赤外センサの異常を適切に検知して、従来構成よりも検査信頼性の高い配線欠陥検出を実現することができる配線欠陥検出装置、および当該赤外センサの異常を検知するための異常検知方法について説明する。
【0032】
図1は、実施の一態様である欠陥検査装置100の主要な構成を示すブロック図である。欠陥検査装置100は、マザー基板1上に形成された複数の液晶パネル2を1枚ずつ順々に配線等の短絡欠陥を検査するものであり、赤外センサ3、センサ移動手段4、主制御部5、電圧印加部6、データ記憶部7、プローブ8、および、プローブ移動手段9を備える。ここで、主制御部5は、プローブ移動手段9、赤外センサ3、センサ移動手段4、および、電圧印加部6を制御する制御手段であり、後述する赤外カメラの異常判定をおこなう判定手段でもある。電圧印加部6は、プローブ8に電気的に接続されており、液晶パネル2の走査線および信号線に電圧を印加する。データ記憶部7は、主制御部5と接続され、画像データを記憶する。
【0033】
図2は、本実施形態に係る欠陥検査装置100を示した斜視図である。欠陥検査装置100は、
図1に示す主要な構成に加えて、基板アライメントステージ11、アライメントカメラ12、および、光学カメラ13を備える。欠陥検査装置100の詳細について、
図1および
図2に基づいて説明する。
【0034】
基板アライメントステージ11には、基板移動手段(図示せず)によって、マザー基板1が載置され、マザー基板1の位置が調整される。アライメントカメラ12は、基板アライメントステージ11の上方に設置され、主制御部5により制御され、マザー基板1の位置を確認する。光学カメラ13は、主制御部5により制御され、赤外センサ3で検知された短絡欠陥を可視画像として撮影するために用いる。光学カメラ13は、プローブ8を撮影し、位置合わせを行うのに用いることもできる。
【0035】
ここで、プローブ8は、液晶パネル2の走査線および信号線に電圧を印加するためのものであり、プローブ移動手段9は、マザー基板1に形成された複数の液晶パネル2を1枚ずつ順々に検査するために、検査する液晶パネル2毎の端子部にプローブ8が当接するようにプローブ8を移動させるものである。そして、プローブ移動手段9は、プローブ保持部9a、ガントリーガイドレール9b、上下ガイドレール9c、ガイド保持部9d、および、シフトガイドレール9eを備える。ガントリーガイドレール9b、上下ガイドレール9c、および、シフトガイドレール9eは、各ガイドレールの長手方向沿いに独立してプローブ8を移動させることができる。
図2に示すXYZ座標系は、後述のシフトガイドレール9eの長手方向をX軸方向、ガントリーガイドレール9bの長手方向をY軸方向とし、上下ガイドレール9cの長手方向をZ軸方向とすると、プローブ保持部9aは、プローブ8を保持し、ガントリーガイドレール9bのY軸方向にスライド可能に設置され、上下ガイドレール9cは、ガントリーガイドレール9bがZ軸方向にスライド可能に取り付けられている。ガイド保持部9dは、上下ガイドレール9cを保持し、シフトガイドレール9eのX軸方向にスライド可能に設置されている。
【0036】
また、赤外センサ3は、液晶パネル2の赤外画像を取得するためのものであり、マクロセンサ3a、および、ミクロセンサ3bを備える。マクロセンサ3aは、4つの赤外カメラ(複数の赤外カメラ)を備え、これら4つの赤外カメラの撮像領域を合わせることで視野を広げ、液晶パネル2の全面を一度で撮影することができる。マクロセンサ3aについては、後に詳述する。また、ミクロセンサ3bは、赤外カメラを1つ備え、液晶パネル2の局部を視野に入れることができる。
【0037】
また、センサ移動手段4は、赤外センサ3を液晶パネル2上へ移動させるものであり、センサ保持部4a、4b、4c、シフトガイドレール4d、ガイド保持部4e、および、ガントリーガイドレール4fを備える。センサ保持部4aはマクロセンサ3aを、センサ保持部4bはミクロセンサ3bを、センサ保持部4cは光学カメラ13をそれぞれ保持する。センサ保持部4a〜4cは、シフトガイドレール4d上を独立してスライド可能に設置されている。シフトガイドレール4dは、長手方向がY軸と平行になるように設置されており、ガイド保持部4eに保持されている。ガイド保持部4eは、ガントリーガイドレール4fにスライド可能に設置されている。ガントリーガイドレール4fは、その長手方向がX軸と平行になるように設置されている。
【0038】
プローブ移動手段9およびセンサ移動手段4は、別々のガイドレールを有し、基板アライメントステージ11の上方を互いに干渉されずに移動することができる。このため、液晶パネル2にプローブ8を接触させた状態で、さらに、液晶パネル2上にマクロセンサ3a、ミクロセンサ3b、および、光学カメラ13を移動させることができる。
【0039】
以下に、4つの赤外カメラから構成されるマクロセンサ3aについて詳述する。
【0040】
図3は、1枚の液晶パネル2全体をマクロセンサ3aの4つの赤外カメラの撮像視野で撮像する場合の、液晶パネル2と、4つの赤外カメラの撮像視野との位置関係を示した模式図である。
図3に示すように、各赤外カメラは撮像視野の一部の領域において他の3つのカメラの撮像視野の一部と重複するように、撮像視野の大きさおよび赤外カメラの位置が調整されている。そのため、液晶パネル2の表面を漏れなく撮像し、欠陥を漏れなく検出することができる。
【0041】
ところで、欠陥を漏れなく検出するには、上述した撮像視野の割付の調整に加えて、赤外カメラ自体が本来の撮像性能を発揮してこそ実現される。例えば、赤外カメラのレンズなどの受光経路に何かが付着していたり、傷があったり(以下、これらを総称して「汚れ」と称する)して、光が妨げられることがあっては、いくら撮像視野の割付が適切に調整されていても、欠陥を見逃す虞がある。そこで、本発明では、赤外カメラの受光経路に汚れがあるか否かを検知して、赤外カメラ自体が本来の撮像性能を発揮できるようにメンテナンスする機構を具備している。具体的には、本実施形態では、基板アライメントステージ11上に液晶パネル(マザー基板)が配置されていない状態(期間)に、マクロセンサ3aを構成する4つの赤外カメラが、基板アライメントステージ11を撮像して、当該4つの赤外カメラのそれぞれに、汚れがあるか否かを検知する。
【0042】
そして、本実施形態において特徴的な点としては、基板アライメントステージ11の所定の確認位置Rに、マクロセンサ3aを構成する4つの赤外カメラのそれぞれの撮像中心を一致させるように、当該4つの赤外カメラの配置を変えて、各赤外カメラが同じ領域を撮像する点にある。これにより、各赤外カメラが同じ撮影条件下で撮影することになるので、汚れの有無を正確に検知することができる。
図4は、この条件について説明する模式図である。
図4に示すように、本実施形態では、4つの赤外カメラ全ての撮像中心を、基板アライメントステージ11の或る1つの位置に合わせる。これにより、同じ対象物が4つの赤外カメラ全ての視野内に入ることになる。
【0043】
図5は、マザー基板がない状態で赤外カメラの異常チェックを行うフローを示した図である。
【0044】
S31(ステップ31をS31と記す。以下、同様。)において、基板アライメントステージ11(
図2)のあらかじめ決められた確認位置Rにマクロセンサ3aの1つの赤外カメラ331を移動し、赤外画像P1を撮像する。赤外画像P1は、データ記憶部7(
図1)に一旦格納される。
【0045】
S32では、S31に続いて、先ほどとは異なる赤外カメラ332を確認位置Rに移動し、赤外画像P2を撮像する。赤外画像P2は、データ記憶部7(
図1)に一旦格納される。
【0046】
S33では、S32に続いて、さらに別の赤外カメラ333を確認位置Rに移動し、赤外画像P3を撮像する。赤外画像P3は、データ記憶部7(
図1)に一旦格納される。
【0047】
S34では、S33に続いて、最後に残った赤外カメラ334を確認位置Rに移動し、赤外画像P4を撮像する。赤外画像P3は、データ記憶部7(
図1)に一旦格納される。
【0048】
S35において、上記赤外画像P1〜P4の比較を行う。具体的には、S35では、データ記憶部7(
図1)に格納していた赤外画像P1〜P4を読み出し、まず、比較対象外領域(異常画像)がある場合は、比較対象外領域中の画素情報を使用しないように設定(トリミング)して、比較対象領域(トリミング画像)のみを抽出する(領域抽出工程)。
【0049】
ここで、上記比較対象外領域について説明する。マクロセンサ3aを構成する4つの赤外カメラは、駆動によって自ら熱を発する。そのため、赤外カメラ同士の位置関係によっては、基板アライメントステージ11が反射面となって、或る赤外カメラに、駆動中の他の赤外カメラの熱が映り込む場合がある(
図6)。このような映り込みは、検知の精度を落とすことになる。そこで、この不都合な映り込み画像(比較対象外領域の画像)を、当該或る赤外カメラによって撮像された撮像画像から除くことで、基板アライメントステージ11そのものを撮像して、或る赤外カメラの撮像性能をまさに反映している画像を得ることができる。比較対象外領域の有無は、或る赤外カメラの撮像視野の位置、当該撮像視野の広さ、および、或る赤外カメラの入射光の光軸と基板アライメントステージ11表面とのなす角度を考慮するとともに、他の赤外カメラの撮像視野の位置と広さと他の赤外カメラの入射光の光軸と基板アライメントステージ11表面とのなす角度を考慮することによって、予測することができる。この一連の画像処理は、主制御部5(
図1)で行う。
【0050】
そして、S35では、次に、赤外画像P1〜P4のそれぞれについて、抽出した比較対象領域内の全画素の値の平均値M1〜M4を算出する。次に平均値M1〜M4の差分DM12(M1とM2の差分をDM12とする。)、DM13(M1とM3の差分をDM13とする。)、DM14(M1とM4の差分をDM14とする。)を算出する。
【0051】
S36では、S35に続いて、あらかじめ決められた差分閾値とS35において算出した値(DM12〜DM14)とを比較する。例えば、DM12のみが上記差分閾値以上であった場合には赤外カメラ332が異常、DM13のみが上記差分閾値以上であった場合には赤外カメラ333が異常、DM12〜DM14の全てが上記差分閾値以上であった場合には赤外カメラ331が異常であると判定できる。
【0052】
ここで、S35での比較値の算出方法およびS36での比較方法は本実施例記載の方法に限定される必要はない。例えば別の実施例としては、S35における赤外画像P1と赤外画像P2との比較においては、比較対象領域内の各画素について赤外画像P1の値と赤外画像P2の値の差分を算出することが考えられ得る。S36においては、あらかじめ決められた差分閾値以上の上記差分がある画素数の比較対象領域内の全画素数に占める割合が、あらかじめ決められた異常画素割合閾値よりも大きい場合に異常と判断することができる。
【0053】
以上が赤外カメラの異常の有無の検知方法(判定工程)である。なお、本発明は、或る赤外カメラの視野のなかの一部分に異常がある場合(例えば、汚れの付着など)にその検知をおこなうことができるだけでなく、視野全体に異常がある場合(例えば、受光面全体の異常)にも判定することができる。
【0054】
以上の方法を、液晶パネルの配線欠陥を検出する工程の前に行い、一部の領域に異常が検知された場合には、汚れの除去であったり、赤外カメラの一部あるいは全体を別のものに取り替えたりなどの対応をとることができる。
【0055】
続いて、異常の無い(あるいは異常が無くなった)赤外カメラによって構成されたマクロセンサ3aを用いた配線欠陥検出方法を説明する。本実施形態では、プローブを介して液晶パネル2の走査線および信号線に電圧を印加し、欠陥部に電流が流れることによる発熱を、上記マクロセンサ3a、ミクロセンサ3bで計測し、欠陥部の位置を特定する方法を用いる。以下、プローブの構成と欠陥検査方法について、
図7および
図8を用いて詳述する。
【0056】
図7(a)は、マザー基板1に形成される液晶パネル2の平面図である。液晶パネル2には、走査線と信号線が交差する各交点にTFTが形成された画素部17と、走査線と信号線をそれぞれ駆動する周辺回路部18が形成されている。液晶パネル2の縁部には、端子部19a〜19dが設けられており、端子部19a〜19dは画素部17や周辺回路部18の各配線と繋がっている。
【0057】
図7(b)は、液晶パネル2に設けられた端子部19a〜19dと導通させるためのプローブの一例を表した平面図である。プローブ8は、液晶パネル2の大きさとほぼ同じ大きさの枠状の形状をなしており、端子部19a〜19dに対応した複数のプローブ針21a〜21dを備えている。複数のプローブ針21a〜21dは、図示しないスイッチングリレーを介して、プローブ針21の一本ずつを個別に、電圧印加部6に接続できるようになっている。このため、プローブ8は、端子部19a〜19dにつながる複数の配線を選択的に接続させ、または複数の配線をまとめて接続させることができる。
【0058】
また、プローブ8は、液晶パネル2とほぼ同じ大きさの枠状の形状をなしているため、端子部19a〜19dとプローブ針21a〜21dの位置を合わせる際に、プローブ8の枠部の内側から光学カメラ13で確認する。
【0059】
図8は、赤外検査によって短絡欠陥を検知するフローを示した図である。マザー基板1に形成された複数の液晶パネル2について、S1(ステップ1をS1と記す。以下、同様。)からS9のステップにより、順次、欠陥検査が実施される。
【0060】
S1では、欠陥検査装置100の基板アライメントステージ11にマザー基板1が載置され、XY座標軸と平行になるよう基板の位置が調整される。S2では、プローブ移動手段9によりプローブ8が検査対象となる液晶パネル2の上部に移動され、プローブ針21a〜21dが液晶パネル2の端子部19a〜19dに接触される。
【0061】
S3では、各種欠陥のモードに対応して、配線が選択され、導通させるプローブ針21の切り替えが行なわれる。S4は、欠陥ブロック24内の配線に印加する電圧値を設定している。配線に印加する電圧値は、電圧印加部6によって調整され、通常、数十ボルト程度の電圧が印加される。
【0062】
図9は、一例として、画素部17に生じる欠陥の位置を模式的に示している。
図9(a)は、例えば、走査線と信号線のように、配線Xと配線Yが上下に交差する位置で短絡した欠陥部23を示している。このような欠陥部23は、導通させるプローブ針21を、
図7に示した21aと21d、若しくは、21bと21cに切り替えることで、欠陥部23に電流が流れ、発熱する。
【0063】
図9(b)は、例えば、走査線と補助容量線のように、隣接する配線Xの配線間で短絡した欠陥部23を示している。このような欠陥部23は、導通させるプローブ針21を、21bの奇数番と21dの偶数番に切り替えることで、欠陥部23に電流が流れ、発熱する。
【0064】
図9(c)は、例えば、信号線と補助容量線のように、隣接する配線Yの配線間で短絡した欠陥部23を示している。このような欠陥部23は、導通させるプローブ針21を、21aの奇数番と21cの偶数番に切り替えることで、欠陥部23に電流が流れ、発熱する。
【0065】
S5では、マクロセンサ3aによって、液晶パネル2全面の赤外検査が行われる。ここで、マクロセンサ3aは、欠陥部23から放出される赤外光を検出することで欠陥部23の位置を絞り込むことができる。このため、マクロセンサ3aを走査せずに液晶パネル2の全面を計測することができ、赤外検査の時間を短縮することができる。
【0066】
S6では、センサ移動手段4は、ミクロセンサ3bを、S5で検出された欠陥がミクロセンサ3bの視野に収まるように移動する。S7では、ミクロセンサ3bによって、液晶パネル2局所の赤外検査が行われる。電流が流れて発熱した欠陥部23を、ミクロセンサ3bで撮影し、欠陥部23から放出される赤外光を検出する。マクロセンサ3aにより、発熱部の位置が絞り込まれているため、ミクロセンサ3bを、直接、発熱部に合わせることができ、欠陥部23の修正に必要となる欠陥の種類などの情報について、さらに詳細な計測を短時間で行なうことができる。計測された熱画像は、欠陥部23の温度が周辺よりも高く表示されるので、欠陥部23と配線の位置関係から欠陥位置が特定され、データ記憶部7に記憶される。
【0067】
S8は、検査中の液晶パネル2について、各種欠陥モードの全検査が終了しているか判断され、未検査の欠陥モードがあれば、S3に戻り、次の欠陥モードに合せてプローブ8の接続が切り替えられ、欠陥検査が繰り返される。
【0068】
S9は、検査中のマザー基板1について、全ての液晶パネル2のアレイ欠陥検査が終了しているか判断され、未検査の液晶パネル2が残っていれば、S1に戻り、次の検査対象となる液晶パネル2にプローブが移動されて、欠陥検査が繰り返される。
【0069】
以上により、配線の欠陥の有無が検出される。
【0070】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態の欠陥検査装置100によれば、マクロセンサ3aの4つの赤外センサの各撮像領域が少なくとも一部の領域において重複している重複領域に対応した温度測定結果を比較して、異常(汚れ)があるか否かを判定している。このように、同一領域を撮像することにより、複数の赤外センサ間で異なる対象物が視野内にある従来構成の場合と比較して、赤外センサの異常を、精度よく検知することができる。また、赤外センサの画素単位の比較が可能となるため、異常検知感度が向上する。
【0071】
〔実施形態2〕
本発明に係る他の実施形態について、
図10および
図11に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本実施形態では、上記実施形態1との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施形態1で説明した部材と同一の機能を有する部材には同一の部材番号を付し、その説明を省略する。
【0072】
上述した実施形態1では、汚れの検知の際に、マクロセンサ3aの4つの赤外カメラは、基板アライメントステージ11(
図1)の表面を撮像している。これに対して、本実施形態では、汚れの検知の際に、基板アライメントステージ11(
図1)上に液晶パネル2を載置して、液晶パネル2をマクロセンサ3aの4つの赤外カメラによって撮像して、その撮像画像から、実施形態1と同じ方法で、汚れの有無を検知する。
【0073】
図10は、4つの赤外カメラ全ての撮像中心が、基板アライメントステージ11上に載置した液晶パネル2の或る1つの位置に合わした状態を示す図であり、上述の実施形態1の
図4に対応した図である。これにより、同じ対象物が4つの赤外カメラ全ての視野内に入ることになる。
【0074】
図11は、マザー基板が在る状態で赤外カメラの異常チェックを行うフローを示した図である。
【0075】
S51ではマザー基板のアライメントを行い、基板上の液晶パネル位置を算出する。
【0076】
S52では、S51に続いて、あらかじめ決められた赤外カメラの異常(汚れ)の検知時の液晶パネル位置にプローブ8(
図1)を移動する。この液晶パネル位置とは、パネル内にプローブ8が存在しないことを実現したプローブ8の退避位置のことである。
【0077】
S53では、S52に続いて、
図10に示すように、赤外カメラの異常チェック時の液晶パネルの中央位置Rに赤外カメラの視野中央が一致するように赤外カメラ331を移動し、赤外画像P1´を撮像する。
【0078】
S54では、S53に続いて、S53の赤外カメラ331と同様に、赤外カメラ332の視野中央が液晶パネルの中央位置Rに一致するように赤外カメラ332を移動し、赤外画像P2´を撮像する。
【0079】
S55では赤外カメラ333について、S56では赤外カメラ334について同様に実施する。
【0080】
S57は、実施形態1で説明したS35と同様の処理を、S58は、実施形態1で説明したS36と同様の処理を行うことで異常(汚れ)を検知することができる。
【0081】
このように、本実施形態によれば、液晶パネル2を用いて汚れの検知を行っている。実施形態1との対比において本実施形態の有利な点としては、比較対象外領域を特定する場合に、基板アライメントステージで反射の有無を特定するよりも、実際の液晶パネルを用いて行うほうが正確に特定することができる点にある。これにより、汚れのより厳密な検知をおこなうことができる。
【0082】
〔実施形態3〕
本発明に係る他の実施形態について、
図12に基づいて説明すれば以下の通りである。なお、本実施形態では、上記実施形態1との相違点について説明するため、説明の便宜上、実施形態1で説明した部材と同一の機能を有する部材には同一の部材番号を付し、その説明を省略する。
【0083】
上述の実施形態1では、配線欠陥を検出するときのマクロセンサ3aの4つの赤外カメラの配置と、汚れを検知するときの当該4つの赤外カメラの配置とが異なる場合について説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、配線欠陥を検出するときと、汚れを検知するときとで当該4つの赤外カメラの配置を変えない態様であってもよい。
【0084】
図12は、本実施形態のマクロセンサ3aの4つの赤外カメラの配置を模式的に示した図であり、
図12(a)は、実施形態1の
図3と同一である。本実施形態では、
図12(a)に示す撮像視野を動かすことなく、汚れを検知し、その後、配線欠陥を検出する。
【0085】
汚れを検知するときには、撮像視野同士が重複している領域(
図12(b)中の斜線を付した領域)を用いて、汚れの有無を検出する。検出方法は、実施形態1において説明した方法を用いることができる。
【0086】
本実施形態では、実施形態1に比べて重複領域が狭い、すなわち、異常の有無を検知する領域が狭いため、実施形態1よりも汚れ検知の精度は劣るが、マクロセンサ3aの4つの赤外カメラを移動させる必要がない分、パネルの製造効率を落とすことがない。
【0087】
なお、本実施形態の構成も、或る赤外カメラの視野のなかの一部分に異常がある場合(例えば、汚れの付着など)にその検知をおこなうことができるだけでなく、視野全体に異常がある場合(例えば、受光面全体の異常)にも判定することができる。
【0088】
なお、上述した各実施形態では、液晶パネルの配線欠陥を検出する態様について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、有機EL(Electroluminescence)パネルの配線、プリント基板回路、半導体基板回路などの配線を有する基板を対象とすることができる。
【0089】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。