特許第5833093号(P5833093)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5833093
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 29/08 20060101AFI20151126BHJP
   B23K 26/073 20060101ALI20151126BHJP
   B23K 26/04 20140101ALI20151126BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20151126BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20151126BHJP
   B23K 26/354 20140101ALI20151126BHJP
   B23K 26/046 20140101ALI20151126BHJP
【FI】
   C03B29/08
   B23K26/073
   B23K26/04
   B23K26/064 A
   B23K26/067
   B23K26/354
   B23K26/046
【請求項の数】2
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-269091(P2013-269091)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124115(P2015-124115A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(74)【代理人】
【識別番号】100173026
【弁理士】
【氏名又は名称】米津 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100125472
【弁理士】
【氏名又は名称】水方 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】南 功治
(72)【発明者】
【氏名】足立 雄介
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−210577(JP,A)
【文献】 特開2009−035433(JP,A)
【文献】 特開2002−241141(JP,A)
【文献】 特開2007−035087(JP,A)
【文献】 特開平09−225665(JP,A)
【文献】 特開2008−080346(JP,A)
【文献】 特開2010−099708(JP,A)
【文献】 特開2006−273695(JP,A)
【文献】 再公表特許第2010/123068(JP,A1)
【文献】 国際公開第2014/157245(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/155846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 29/00 − 29/16
C03B 33/00 − 33/037
C03C 23/00
B23K 26/00 − 26/70
G11B 7/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の加工対象物の表面に光を照射することによって、前記加工対象物の強度を改善する加工装置であって、
前記加工対象物に対して光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を導光して、前記加工対象物の端面から所定距離だけ内側の照射位置に照射する導光部と、
前記加工対象物を前記導光部から照射された光の照射方向に垂直な方向に相対的に移動させる照射位置移動部とを含み、
前記導光部は、前記光源から出射された光の強度分布を変換して、前記加工対象物の前記照射位置から端面側への温度勾配を、前記照射位置から内側への温度勾配よりも小さくする強度変換手段を備え
前記強度変換手段は、前記光源から出射された光を分岐する光分岐素子を有し、
前記光分岐素子で分岐した一方の光を他方の光よりも前記加工対象物の端面側へずらして照射することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
板状の加工対象物の表面に光を照射することによって、前記加工対象物の強度を改善する加工装置であって、
前記加工対象物に対して光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を導光して、前記加工対象物の端面から所定距離だけ内側の照射位置に照射する導光部と、
前記加工対象物を前記導光部から照射された光の照射方向に垂直な方向に相対的に移動させる照射位置移動部とを含み、
前記導光部は、前記光源から出射された光の強度分布を変換して、前記加工対象物の前記照射位置から端面側への温度勾配を、前記照射位置から内側への温度勾配よりも小さくする強度変換手段を備え、
前記強度変換手段は、前記光源から出射された光を分岐する光分岐素子を有し、
前記加工対象物の端面側に近い照射位置へ照射される一方の光のビーム径を、端面側から離れた照射位置へ照射される他方の光のビーム径よりも小さくして照射することを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工対象物の表面に光を照射して微小溶融させることにより、加工対象物の強度を改善する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶パネルなどの電子デバイス向けのガラス基板は、1枚のガラス基板を所定の大きさに切断して作製されている。切断されたガラス基板の端面近傍には、マイクロクラック等の欠陥が残留している場合があり、端面近傍の強度を改善することが求められる。
【0003】
通常、切断後のガラス基板は、端面を砥石で研磨して、端面の平滑化や面取りが行われているが、砥石を用いた研磨では、端面近傍に残留したマイクロクラックを全て除去することができない。一方、ガラス基板の切断面にレーザ光を照射して、端面を溶融させることにより欠陥を改善する処理装置も提案されているが、レーザ光の照射部に局所的な温度勾配が生じて、ガラス基板に熱応力が加わり破損する問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、レーザ光照射時の温度勾配を低減しながら、ガラス基板の切断面を溶融する処理装置が開示されている。特許文献1の処理装置200は、図14に示すように、ガラス基板71の切断面71Aに照射される第1レーザ光74aを発振する第1光源74Aと、ガラス基板71の板面のうち、第1レーザ光74aの照射範囲の周辺領域71Bに照射される第2レーザ光74bを発振する第2光源74Bと、第1レーザ光74a及び第2レーザ光74bを誘導する誘導手段75を備える。
【0005】
さらに、第2レーザ光74bによって昇温される周辺領域71Bに対応する第1レーザ光74aの照射範囲において、第1レーザ光74aの照射範囲のガラスが溶融されるように、第1レーザ光74aのエネルギー密度を調整する第1調整手段76Aを備える。また、第2レーザ光74bによってガラス基板71の周辺領域が破損されることなく昇温されるように、ガラス基板71に照射される第2レーザ光74bのエネルギー密度を調整する第2調整手段76Bを備える。
【0006】
特許文献1の切断面処理装置200によれば、エネルギー密度を調整した第1レーザ光74aと第2レーザ光74bを照射して加熱することにより、ガラス基板71に生じる温度分布の勾配を緩やかにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−273695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の処理装置200において、ガラス基板71の厚みが薄い場合には、第1レーザ光74aを切断面71Aに照射した際の温度上昇が著しく増大し、周辺領域71Bに対して温度分布を緩やかに制御することが困難となる問題があった。このため、薄板のガラス基板71では、レーザ光照射による熱応力を抑制することができず、ガラス基板71を破損させずに強度を改善することができなかった。
【0009】
本発明は上記課題に顧みてなされたものであり、光の照射位置と強度分布を制御することにより温度勾配を緩やかにして、溶融加工時の破損を防止しながら加工対象物の強度を改善することができる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の加工装置は、板状の加工対象物の表面に光を照射することによって、加工対象物の強度を改善する加工装置であって、加工対象物に対して光を出射する光源と、光源から出射された光を導光して、加工対象物の端面から所定距離だけ内側の照射位置に照射する導光部と、加工対象物を導光部から照射された光の照射方向に垂直な方向に相対的に移動させる照射位置移動部とを含み、導光部は、光源から出射された光の強度分布を変換して、加工対象物の照射位置から端面側への温度勾配を、照射位置から内側への温度勾配よりも小さくする強度変換手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の加工装置において、強度変換手段は、光源から出射された光を集光する集光レンズを傾斜させて、加工対象物の端面側に広がる涙滴形状の温度分布を形成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の加工装置において、強度変換手段は、光源から出射された光を集光する集光レンズをデフォーカスさせて、デフォーカスした光の一部を加工対象物の端面の外側へずらして照射することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の加工装置において、強度変換手段は、光源から出射された光を分岐する光分岐素子を有し、光分岐素子で分岐した一方の光を他方の光よりも加工対象物の端面側へずらして照射することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の加工装置において、強度変換手段は、光源から出射された光を分岐する光分岐素子を有し、加工対象物の端面側に近い照射位置へ照射される一方の光のビーム径を、端面側から離れた照射位置へ照射される他方の光のビーム径よりも小さくして照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光の照射位置と強度分布を制御することにより温度勾配を緩やかにして、溶融加工時の破損を防止しながら加工対象物の強度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1の加工装置100の構成を示す側面図である。
図2】加工装置100によって加工対象物3に光照射した状態を示す斜視図である。
図3】加工装置100によって光照射した場合の温度分布のグラフである。
図4】本発明の実施例2の加工装置110の構成を示す側面図である。
図5】加工装置110によって加工対象物3に光照射した状態を示す斜視図である。
図6】本発明の実施例3の加工装置120の構成を示す側面図である。
図7】加工装置120によって加工対象物3に光照射した状態を示す斜視図である。
図8】本発明の実施例4の加工装置130の構成を示す側面図である。
図9】加工装置130によって加工対象物3に光照射した状態を示す斜視図である。
図10】本発明の実施例4の変形例である加工装置140の構成を示す側面図である。
図11】加工装置140によって加工対象物3に光照射した状態を示す斜視図である。
図12】本発明の実施例5の加工装置150の構成を示す側面図である。
図13】加工装置150によって加工対象物3に光照射した状態を示す斜視図である。
図14】従来技術の処理装置200の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の加工装置について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1である加工装置100の構成を示す側面図である。なお、図1の紙面に垂直な方向をx−y平面、x−y平面に垂直な鉛直方向をz方向とし、後述の試料配置部32に平面視で長方形の加工対象物3が水平に載置されるものとして、以下に説明する。
【0019】
本発明の加工装置100は、加工対象物3の切断時にマイクロクラック等の欠陥が生じ易い端面5近傍の表面4に光を照射し、一部を微小溶融・凝固させて、後述する微小溶融部24を形成することにより、加工対象物3の強度を改善する加工装置である。
【0020】
加工装置100は、加工対象物3の端面5以外の複数の表面4のうち、少なくとも1つの表面4に光を照射するものである。加工対象物3が板状である場合、加工対象物3の端面5以外の複数の表面とは、加工対象物3の端面5を含む仮想平面に各々交差、例えば、直交する2つの主面である上側表面4aと下側表面4bである。
【0021】
実施例1の加工装置100は、図1に示すように、光源11と、導光部12と、照射位置移動部13を少なくとも備えている。さらに導光部12は、強度変換手段14(本実施例では、たとえば、透明基板に吸収材料を成膜し、透過率を変化させる部材など)と、集光レンズ15と、集光状態変化部16と、ミラー31を有している。さらに照射位置移動部13は、試料配置部32および搬送ステージ33を有している。さらに集光状態変化部16は、光学ベース34およびレンズ位置調整用ホルダ35を有している。
【0022】
光源11としては、軟化点の高い加工対象物3を加工する場合、数W以上の出力を有する高出力レーザが用いられる。また、ガラス基板等の透過性の加工対象物3では、ガラス基板に対して吸収率の非常に高い波長(10.6μm)で発振するCO2ガスレーザが光源11として好ましい。本実施例及び以下に示す各実施例では、加工対象物3がガラス基板であり、光源11にCO2ガスレーザを用いた構成について説明する。
【0023】
導光部12は、光源11から加工対象物3にレーザ光を導く光路9を形成し、導光部12の光路9には、レーザ光の強度分布を変換する強度変換手段14と、レーザ光を集光する集光レンズ15と、レーザ光の進行方向を屈折させるミラー31が設けられている。これらの光源11、強度変換手段14、集光レンズ15、ミラー31は、共通の光学ベース34の所定位置に配置固定されている。
【0024】
なお、強度変換手段14は、後述するように集光レンズ15の配置方法により構成される場合もある。また、光路9における集光レンズ15とミラー31の順序は入れ替えてもよく、レーザ光をミラー31で屈折させた後に、集光レンズ15で集光するように構成してもよい。
【0025】
図2は、実施例1の加工装置100によって、加工対象物3にレーザ光B1を照射した状態を説明するための斜視図である。本発明の加工装置100では、加工対象物3の端面5から所定距離Dだけ離れた上側表面4aをレーザ光B1の照射位置21として、且つ、照射するレーザ光B1の強度分布を強度変換手段14によって変換することにより、レーザ光B1の照射により生じる昇温部22の温度勾配を制御している。
【0026】
本発明の加工装置100によれば、レーザ光B1の照射による加工対象物3の昇温部22の温度勾配を制御することで、端面近傍部分6の熱応力を抑制して破損を防止しながら、加工対象物3の強度を改善することができる。
【0027】
加工装置100では、レーザ光B1の照射位置21を端面5から所定距離Dだけ離し、所定距離Dをレーザ光B1の集光径の半径以下に設定している。したがって、レーザ光B1で欠陥の起点となっている端面5を直接照射することなく、端面近傍部分6にレーザ光B1の照射による昇温部22を形成し微小溶融させている。
【0028】
ここで、レーザ光B1の照射位置21とは、集光レンズ15で集光されたレーザ光B1のエネルギー強度が最大(ピーク強度)となる位置である。また、レーザ光B1の集光径とは、図2に示す集光されたレーザ光B1のx方向の光径において、レーザ光B1のピーク強度の1/e(eは自然対数の定)となる光径である。また、レーザ光の集光径のうち加工対象物3のx方向へ実際に照射される幅を照射幅22aとしている。
【0029】
次に、レーザ光B1の強度分布を変換する強度変換手段14として、透過率調整フィルターを光源11と集光レンズ15の間に配置し、光源11から出射されたレーザ光B1を強度変換手段14に通過させることで、レーザ光B1の強度分布における加工対象物3の端面5側への強度変化を小さくし、加工対象物3の内側への強度変化を大きくしている。なお、透過率調整フィルターは、例えば、ステップ濃度フィルターを挙げることができる。
【0030】
図3は、レーザ光B1の照射幅22aでの加工対象物3の温度分布を示したグラフである。本発明の加工装置100では、レーザ光の強度分布を調整することにより、加工対象物3の上側表面4aに図3に示す温度分布を生じさせている。具体的には、加工対象物3上の照射位置21から端面5側に向かう温度勾配S1が、照射位置21から内側に向かう温度勾配S2よりも緩やかになるようにしている。
【0031】
加工対象物3の端面近傍部分6に集光したレーザ光をその状態で照射すると、レーザ光の照射位置21から周囲にかけて大きな温度差が発生して、端面近傍部分6ではマイクロクラック等の欠陥が熱応力によって増長され、ガラス基板のような脆弱素材では欠けや割れなどの破損が発生することがある。
【0032】
このため、本発明の加工装置100では、加工対象物3上のレーザ光の強度分布を調整することにより、レーザ光の照射位置21から端面5側への温度勾配S1を照射位置21から内側への温度勾配S2よりも緩やかにすることで、加工対象物3の欠けや割れなどの破損を防止している。
【0033】
なお、レーザ光の照射位置21から内側への温度勾配S2を照射位置21から端面5側への温度勾配S1と同じく緩やかな勾配にすると、レーザ光B1の照射による昇温部22の範囲が不必要に広くなって、レーザ光B1の照射による加工効率が低下して微小溶融部24の形成の妨げになる。
【0034】
また、昇温部22の範囲が加工対象物3の内側へ広がるほど、ガラス基板や液晶層等から構成される液晶パネルのような複合部材では、各々の複合部材に吸収される熱影響が無視できなくなる。このため、本発明の加工装置100のように、照射位置21から内側への温度勾配S2を緩やかにせず、昇温部22の広がりを制限することにより、熱影響によるダメージを防止することができる。
【0035】
本発明の加工装置100では、加工対象物3上の照射位置21から端面5側への温度勾配S1を照射位置21から加工対象物3の内側への温度勾配S2よりも緩やかにしているため、加工対象物3の端面近傍部分6に急激な温度差を生じさせることなく、熱応力の発生を抑制することができる。すなわち、本発明の加工装置100は、加工対象物3に熱応力による割れや欠損の破損を発生させることなく、マイクロクラック等の欠陥が残留しやすい端面近傍部分6を微小溶融させて強度を改善することができる。
【0036】
なお、図3に示した昇温部22の温度分布の状態は、レーザ光の集光径の形状によっても調整することができ、微小溶融状態を細かく制御することができる。さらに、レーザ光の強度分布を制御しながら全体の照射エネルギーを上げていくと、加工対象物3の端面5側での微小溶融を優先的に進行させることができるので、加工対象物3の欠陥の状態に合わせて効率良く強度を改善することができる。
【0037】
また、本実施例における加工装置100は、光源11及び導光部12のz方向の位置を調整する高さ調整ステージ19により、加工対象物3に対するレーザ光B1の集光位置を変えることができるため、レーザ光B1の集光状態を調整して昇温部22の温度分布を精度良く制御することも可能である。
【0038】
また、加工装置100は、搬送ステージ33の試料配置部32上に加工対象物3を載置して、図2に示すように、レーザ光が照射された加工対象物3を端面5と平行方向26へ移動させることにより、加工対象物3の昇温部22で形成された微小溶融部24を端面5と平行に連続させて帯状に形成することができる。この結果、加工対象物3のマイクロクラック等の欠陥が残留しやすい端面近傍部分6の全体にわたって、帯状の微小溶融部24を形成して強度を改善することができる。
【実施例2】
【0039】
図4は、本発明の実施例2の加工装置110の構成を示す側面図である。また、図5は、実施例2の加工装置110によって、加工対象物3にレーザ光B2を照射した状態を説明するための斜視図である。なお、実施例2の加工装置110のうち、実施例1の加工装置100の構成要素と同等である構成要素には、実施例1の加工装置100の構成要素と同じ参照符号を付し、詳細な説明は省略している。
【0040】
実施例2の加工装置110では、レーザ光B2の照射による加工対象物3の温度分布を制御するため、図4に示すように、集光レンズ15を傾斜させることにより強度変換手段14を構成し、集光されたレーザ光B2の強度分布を変換している。具体的には、レーザ光B2に対して集光レンズ15の光軸をレンズ位置調整用ホルダ35で所定方向に傾斜させている。
【0041】
加工装置110の強度変換手段14は、レーザ光B2を集光する集光レンズ15の傾斜方向によって、レーザ光B2の照射位置21から端面5側への強度変化を照射位置21から内側への強度変化よりも小さくするように変換することができる。この結果、図5に示すように、レーザ光B2の照射による昇温部22の温度分布が加工対象物3の端面5側に広がる涙滴形状になる。
【0042】
この結果、図3に示した実施例1の温度分布と同様に、加工対象物3上の照射位置21から端面5側への温度勾配S1が照射位置21から内側への温度勾配S2よりも緩やかになり、端面近傍部分6に急激な温度差を生じさせることなく、熱応力の発生を抑制することができる。
【0043】
すなわち、本発明の加工装置110は、加工対象物3に熱応力による割れや欠損の破損を発生させることなく、マイクロクラック等の欠陥が残留しやすい端面近傍部分6を微小溶融させて強度を改善することができる。
【0044】
実施例2の加工装置110では、さらにレンズ位置調整用ホルダ35により集光レンズ15の傾斜角度を調整できるので、レーザ光B2の照射による昇温部22の温度分布の状態を加工対象物3の欠陥の状態に応じて制御することができる。この結果、加工対象物3の欠陥の状態に合わせて微小溶融部24を形成することができ、効率良く強度を改善することができる。
【実施例3】
【0045】
図6は、本発明の実施例3の加工装置120の構成を示す側面図である。また、図7は、実施例3の加工装置120によって、加工対象物3にレーザ光B3を照射した状態を説明するための斜視図である。なお、実施例3の加工装置120のうち、実施例1の加工装置100の構成要素と同等である構成要素には、実施例1の加工装置100の構成要素と同じ参照符号を付し、詳細な説明は省略している。
【0046】
実施例3の加工装置120では、レーザ光B3の照射による加工対象物3の温度分布を制御するため、図6に示すように、レンズ位置調整用ホルダ35で集光レンズ15の位置を移動させてデフォーカス状態にすることにより強度変換手段14を構成し、レーザ光B3の強度分布を変換している。
【0047】
図7に示すように、デフォーカス状態にしたレーザ光B3のビーム径の1/4以上が端面5から外側に外れるように、レーザ光B3の加工対象物3上の照射位置21が設定されている。具体的には、デフォーカスされたレーザ光B3のビーム径が400μmであり、ビーム径の1/4が端面5から外側に外れており、レーザ光B3の端面5から照射位置21までの距離Dが100μmに設定されている。ここで、ビーム径の1/4が端面5から外側に外れている状態は、レーザ光の全体に比べてその36%以上の光が外れている位置なので端面付近の影響が出始める。
【0048】
上記構成によれば、加工対象物3上でのレーザ光B3の強度分布が、端面の内面反射や外側に外れるレーザ光の端面散乱、透過の影響を受けて端面5側の強度が実効的に強まり、レーザ光B3の照射位置21から端面5側への強度変化が照射位置21から内側への強度変化よりも小さくなるように変換される。なお、フォーカス位置は表面の上面、下面ともに、設定可能であり、実施例のようにフォーカス位置が表面の下面に来る場合は、端面散乱、透過の影響が強くなる。
【0049】
また、CO2ガスレーザから出射されたレーザ光B3の発振波長(10.6μm)は、ガラス基板に対して吸収率が非常に高いため、加工対象物3の端面5で行き止まった熱が加工対象物3のy方向に吸収されて広がっていく。
【0050】
この結果、実施例2と同様に、レーザ光B3が照射された加工対象物3の昇温部22の温度分布が端面5側に広がる涙滴形状になり、加工対象物3上の照射位置21から端面5側への温度勾配S1が照射位置21から内側への温度勾配S2よりも緩やかな温度分布となり、端面近傍部分6に急激な温度差を生じさせることなく、熱応力の発生を抑制することができる。
【0051】
すなわち、本発明の加工装置120は、加工対象物3に熱応力による割れや欠損の破損を発生させることなく、マイクロクラック等の欠陥が残留しやすい端面近傍部分6を微小溶融させて強度を改善することができる。
【0052】
なお、デフォーカスしたレーザ光B3のビーム径の1/4以上を端面5から外側に外すことで、レーザ光B3の端面5から照射位置21までの距離Dがビーム径の1/4以下となり、レーザ光B3のピーク強度中心付近のエネルギー密度差の小さい領域を照射位置21から端面5側での強度分布として利用できる。このため、加工対象物3の温度分布の傾斜を照射位置21から端面5側で緩やかに調整することが容易である。
【0053】
上記の理由から、レーザ光B3のビーム径を600μm(半径300μm)にして、端面5から照射位置21までの距離Dを100μmにすると、照射位置21から端面5側での強度分布の変化を小さく(強度が最大強度の50%の位置が端部付近になる)することがさらに容易となる。この場合、端面5からさらに200μmの範囲までの温度勾配が小さくなり、端面近傍部分6に200μm位の大きな欠陥が存在するような場合であっても、割れや破損を発生させずに微小溶融させて強度を改善することができる。
【0054】
なお、実施例3の構成は、端部をR(丸め)加工する従来技術とは異なり、レーザ光を端面に対して直接照射するものではないため、欠陥の起点となる端面から欠陥が増長してしまうことを防止できる。
【実施例4】
【0055】
図8は、本発明の実施例4の加工装置130の構成を示す側面図である。また、図9は、実施例4の加工装置130によって、加工対象物3にレーザ光B4及びレーザ光B5を照射した状態を説明するための斜視図である。なお、実施例4の加工装置130のうち、実施例1の加工装置100の構成要素と同等である構成要素には、実施例1の加工装置100の構成要素と同じ参照符号を付し、詳細な説明は省略している。
【0056】
実施例4では、光源11から出射されたレーザ光を導光部12に設けた光分岐素子37でレーザ光B4とレーザ光B5の2つに分岐して、一方のレーザ光B4を加工対象物3の上側表面4aに照射するとともに、他方のレーザ光B5を加工対象物3の下側表面4bに照射する構成となっている。このため、レーザ光B4を上側表面4aに導く光路9と、レーザ光B5を下側表面4bに導く光路9には、各々のレーザ光を集光する2つの集光レンズ15と、各々のレーザ光の進行方向を屈折させる複数のミラー31が配置されている。
【0057】
したがって、実施例4の加工装置130では、レーザ光の強度分布を変換する強度変換手段14が、光分岐素子37と、2つの集光レンズ15と、複数のミラー31から構成されている。
【0058】
また、レーザ光B4の光路9とレーザ光B5の光路9の各々を構成する光学部材は2つの光学ベース34上に設置され、図示しない高さ調整ステージによりz方向に位置調整することができ、レーザ光B4とレーザ光B5の加工対象物3に対する焦点距離を調整することができる。なお、実施例1と同様に、集光レンズ15とミラー31の配置関係は、図8の構成に限定されるものではない。
【0059】
実施例4の加工装置130では、レーザ光B4及びレーザ光B5のビーム径が各々300μmであり、図9に示すように、レーザ光B4の照射位置21aとレーザ光B5の照射位置21bがx方向にずれた位置に設定されている。具体的には、レーザ光B4の照射位置21aが端面5から100μm(距離D1)の位置であり、レーザ光B5の照射位置21bが端面5から150μm(距離D2)の位置であり、その位置ずれ量が50μmに設定されている。
【0060】
さらに、レーザ光B5のエネルギー強度をレーザ光B4のエネルギー強度よりも例えば20%程度小さく設定している。これにより、加工対象物3上にレーザ光B4とレーザ光B5が重複して照射された昇温部22では、レーザ光B4とレーザ光B5の照射位置のずれ量とエネルギー強度差から、図9のように昇温部22の温度分布が涙滴形状となる。
【0061】
このため、加工対象物3上の照射位置21から端面5側への温度勾配S1が照射位置21から内側への温度勾配S2よりも緩やかとなり、端面近傍部分6に急激な温度差を生じさせることなく、熱応力の発生を抑制することができる。
【0062】
すなわち、実施例4の加工装置130は、加工対象物3に熱応力による割れや欠損の破損を発生させることなく、マイクロクラック等の欠陥が残留しやすい端面近傍部分6を微小溶融させて強度を改善することができる。
【0063】
なお、実施例4の加工装置130では、2つのレーザ光B4とレーザ光B5を加工対象物3に対して垂直に照射しているが、図10の変形例に示す加工装置140のように、2つのレーザ光B6とレーザ光B7を互いに斜めから加工対象物3に照射して上側表面4aで重複させてもよい。ここでは、レーザ光B6の照射位置21cとレーザ光B7の照射位置21dは、図9に示したレーザ光B4の照射位置21aとレーザ光B5の照射位置21bと各々同じ位置に設定している。
【0064】
実施例4の変形例では、加工装置140の光源11から出射されたレーザ光をハーフミラー36(50%反射(55°入射))にて照射して、ハーフミラー36で反射されたレーザ光B6を集光レンズ15で集光した後、加工対象物3の上側表面4aに入射角度20°で照射している。また、ハーフミラー36を透過したレーザ光B7をミラー31(全反射(35°入射))で反射して、集光レンズ15で集光した後、加工対象物3の上側表面4aに入射角度20°で照射している。
【0065】
なお、レーザ光B6の光路9とレーザ光B7の光路9を構成する各々の光学部材は共通の光学ベース34上に設置され、高さ調整ステージ19によりz方向に位置調整することができ、レーザ光B6とレーザ光B7の加工対象物3に対する焦点距離を調整できるようになっている。
【0066】
実施例4の変形例の加工装置140は、レーザ光B7のエネルギー強度をレーザ光B6のエネルギー強度よりも例えば20%程度小さく設定している。これにより、加工対象物3にレーザ光B6とレーザ光B7が重複して照射された昇温部22では、レーザ光B6とレーザ光B7の照射位置のずれとエネルギー強度差から、図11のように昇温部22の温度分布が涙滴形状となる。
【0067】
このため、加工対象物3上の照射位置21から端面5側に向けての温度勾配S1が、加工対象物3上の照射位置21から加工対象物3のセンター側に向けての温度勾配S2よりも緩やかとなり、端面近傍部分6に急激な温度差を生じさせることなく、熱応力の発生を抑制することができる。
【0068】
すなわち、実施例4の変形例の加工装置140は、加工対象物3に熱応力による割れや欠損の破損を発生させることなく、マイクロクラック等の欠陥が残留しやすい端面近傍部分6を微小溶融させて強度を改善することができる。
【0069】
上記で説明した実施例4及び変形例では、レーザ光を2箇所の照射位置21に照射しているが、想定される欠陥のサイズや残留範囲に応じて、さらに、レーザ光を3箇所以上の照射位置21に照射して、昇温部22の範囲を図9図11のx方向(内側)に適宜広げることも可能である。
【実施例5】
【0070】
図12は、本発明の実施例5の加工装置150の構成を示す側面図である。また、図13は、実施例5の加工装置150によって、加工対象物3にレーザ光B8及びレーザ光B9を照射した状態を説明するための斜視図である。なお、実施例5の加工装置150のうち、実施例1の加工装置100の構成要素と同等である構成要素には、実施例1の加工装置100の構成要素と同じ参照符号を付し、詳細な説明は省略している。
【0071】
実施例5の加工装置150は、光源11から出射されたレーザ光を導光部12に設けた光分岐素子37でレーザ光B8とレーザ光B9の2つに分岐して、一方のレーザ光B8を加工対象物3の上側表面4aに照射するとともに、他方のレーザ光B9を加工対象物3の下側表面4bに照射する構成となっている。このため、レーザ光B8を上側表面4aに導く光路9と、レーザ光B9を下側表面4bに導く光路9には、各々のレーザ光を集光する2つの集光レンズ15と、各々のレーザ光の進行方向を屈折させる複数のミラー31が配置されている。
【0072】
したがって、実施例5の加工装置150では、レーザ光の強度分布を変換する強度変換手段14が、光分岐素子37と、2つの集光レンズ15と、複数のミラー31から構成されている。
【0073】
また、レーザ光B8の光路9とレーザ光B9の光路9を構成する光学部材の各々は2つの光学ベース34上に設置され、図示しない高さ調整ステージによりz方向に位置調整することができ、レーザ光B8とレーザ光B9の加工対象物3に対する焦点距離を調整することができる。なお、実施例1と同様に、集光レンズ15とミラー31の配置関係は、図8の構成に限定されるものではない。
【0074】
実施例5の加工装置150では、図12に示すように、レーザ光B8を集光する集光レンズ15の実効焦点距離を、レーザ光B9を集光する集光レンズ15の実効焦点距離よりも短く設定している。このように、レーザ光B8とレーザ光B9の実効焦点距離を異ならせることにより、加工対象物3の端面5側と内側でレーザ光の強度分布の差を生じさせている。
【0075】
具体的には、図13に示すように、レーザ光B8とレーザ光B9の実効焦点距離の違いにより、レーザ光B8の照射範囲がレーザ光B9の照射範囲よりも小さくなっている。例えば、レーザ光B8のビーム径が250μmであり、レーザ光B9のビーム径が300μmとなっている。
【0076】
また、レーザ光B8の照射位置21eが端面5から100μm(距離D5)の位置であり、レーザ光B9の照射位置21fが端面5から150μm(距離D6)の位置であり、その位置ずれ量が50μmに設定されている。
【0077】
これにより、レーザ光B8とレーザ光B9が重複して照射された加工対象物3の昇温部22では、レーザ光B8とレーザ光B9との照射範囲の違いから、図13のように昇温部22の温度分布が涙滴形状となる。
【0078】
このため、加工対象物3上の照射位置21から端面5側に向けての温度勾配S1が、加工対象物3上の照射位置21から加工対象物3のセンター側に向けての温度勾配S2よりも緩やかとなり、端面近傍部分6に急激な温度差を生じさせることなく、熱応力の発生を抑制することができる。
【0079】
すなわち、実施例5の加工装置150は、加工対象物3に熱応力による割れや欠損の破損を発生させることなく、マイクロクラック等の欠陥が残留しやすい端面近傍部分6を微小溶融させて強度を改善することができる。
【符号の説明】
【0080】
3 加工対象物
4 表面
4a 上側表面
4b 下側表面
5 端面
6 端面近傍部分
9 光路
11 光源
12 導光部
13 照射位置移動部
14 強度変換手段
15 集光レンズ
16 集光状態変化部
19 高さ調整ステージ
21、21a、21b、21c、21d、21e、21f、照射位置
22 昇温部
22a 照射幅
24 微小溶融部
31 ミラー
32 試料配置部
33 搬送ステージ
34 光学ベース
35 レンズ位置調整用ホルダ
36 ハーフミラー
37 光分岐素子
100、110、120、130、140、150 加工装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14