(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記第1の測定域において所定間隔毎に測定した第1・第2の測定値を求めるとともに、前記第2の測定域において所定間隔毎に測定した第3・第4の測定値を求め、
前記第3の測定値から前記第1の測定値を減算した差分値と、前記第4の測定値から前記第2の測定値を減算した差分値とを、前記複数の第1の差分判定値とする、
請求項1に記載の生体試料測定装置。
前記判定部は、前記複数の第1の差分判定値を第1の閾値と、前記第2の差分判定値を第2の閾値とそれぞれ比較し、前記生体試料測定センサの暴露エラーまたは試薬移動エラーの発生の有無を判定する、
請求項1または2に記載の生体試料測定装置。
前記判定部は、前記複数の第1の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第1の閾値の下限閾値よりも小さく、かつ前記複数の第1の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第1の閾値の上限閾値以下の場合であって、前記第2の差分判定値のうちの少なくとも1つが前記第2の閾値の下限閾値以上の場合には、前記生体試料測定センサの暴露エラー発生有りと判定する、
請求項4に記載の生体試料測定装置。
前記判定部は、前記複数の第1の差分判定値および前記第2の差分判定値の全てが、下記の条件(1)、(2)を満たさない場合には、前記生体試料測定センサの試薬移動エラーの発生有りと判定する。
請求項4に記載の生体試料測定装置。
(1)前記複数の第1の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第1の閾値の下限閾値よりも小さく、かつ前記複数の第1の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第1の閾値の上限閾値以下の場合であって、前記第2の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第2の閾値の下限閾値以上である時。
(2)前記複数の第1の差分判定値が、前記第1の閾値の下限閾値以上、かつ前記第1の閾値の上限閾値以下の場合であって、前記第2の差分判定値が前記第2の閾値の下限閾値以上、かつ前記第2の閾値の上限閾値以下である時。
生体試料測定センサが装着されるセンサ装着部と、前記センサ装着部を有する本体ケースと、前記センサ装着部に接続された測定部と、前記測定部に接続された制御部と、前記制御部に接続された判定部および表示部と、を備えた生体試料測定装置を用いた生体試料測定方法であって、
測定開始から第1の時間までの第1の測定域における所定間隔毎の測定と、前記第1の測定域後に設けられた第2の測定域における所定間隔毎の測定を行うステップと、
前記第1の測定域において測定された複数の電流値に基づくそれぞれの測定値と、前記第2の測定域において測定された複数の電流値に基づくそれぞれの測定値とを求めるステップと、前記第2の測定域におけるそれぞれの測定値と、前記第2の測定域において測定値を求める時間より所定時間以前の前記第1の測定域におけるそれぞれの測定値との差を演算し、複数の第1の差分判定値を求めるステップと、
前記複数の第1の差分判定値の所定間隔毎の差分を求めた第2の差分判定値を求め、前記第1・第2の差分判定値に基づいて、前記生体試料測定センサの暴露エラーまたは試薬移動エラーの発生の有無を判定するステップと、
を備えた生体試料測定方法。
前記複数の第1の差分判定値を第1の閾値と、前記第2の差分判定値を第2の閾値とそれぞれ比較し、前記生体試料測定センサの暴露エラーまたは試薬移動エラーの発生の有無を判定する、
請求項12または13に記載の生体試料測定方法。
前記複数の第1の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第1の閾値の下限閾値よりも小さく、かつ前記複数の第1の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第1の閾値の上限閾値以下の場合であって、前記第2の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第2の閾値の下限閾値以上の場合には、前記生体試料測定センサの暴露エラー発生有りと判定する、
請求項15に記載の生体試料測定方法。
前記複数の第1の差分判定値および前記第2の差分判定値の全てが、下記の条件(1)、(2)を満たさない場合には、前記生体試料測定センサの試薬移動エラーの発生有りと判定する。
請求項15に記載の生体試料測定方法。
(1)前記複数の第1の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第1の閾値の下限閾値よりも小さく、かつ前記複数の第1の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第1の閾値の上限閾値以下の場合であって、前記第2の差分判定値のうち少なくとも1つが前記第2の閾値の下限閾値以上である時。
(2)前記複数の第1の差分判定値が、前記第1の閾値の下限閾値以上、かつ前記第1の閾値の上限閾値以下の場合であって、前記第2の差分判定値が前記第2の閾値の下限閾値以上、かつ前記第2の閾値の上限閾値以下である時。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を、血糖値を測定する生体情報測定装置に適応した一実施形態について、添付図面を用いて説明する。
本実施形態では、生体試料測定装置において検出可能な異常波形エラーとして、暴露エラー、試薬移動エラーという2種類の異常波形エラーを例に挙げて説明する。
ここで、暴露エラーとは、生体試料測定センサ3がセンサボトル40内に適切な状態で保存されていなかったり、個別包装タイプの場合は開封されたまま放置されていたりした等の理由により、外気中に含まれる湿度によって生体試料測定センサ3の性能が劣化したことに起因して生じる異常波形エラーである。その特徴としては、生体試料測定センサ3の測定部に配置された試薬に水分が反応しているため、正常な波形よりも一様に大きな値となりやすい傾向がある。
【0011】
また、試薬移動エラーとは、生体試料測定センサ3に対する外部からの衝撃等によって、試薬34(
図4参照)が所定の位置からずれた位置へ移動してしまったことに起因して生じる異常波形エラーである。その特徴としては、上記暴露エラー発生時の異常波形のような一様の変化ではなく、ある特定時点における変化が大きくなる傾向がある。
(実施の形態1)
図1は、本実施形態の生体試料測定装置の構成を示す斜視図である。
【0012】
生体試料測定装置は、
図1に示すように、本体ケース1と、表示部2と、センサ挿入口4と、操作ボタン5,6と、を備えている。
本体ケース1は、その一端に、生体試料測定センサ3が挿入されるセンサ挿入口4を有している。また、本体ケース1の表面には、表示部2、電源を入れるための操作ボタン5、および測定データの履歴などを確認するための操作ボタン6等が設けられている。
【0013】
図2は、本生体試料測定装置の電気的なブロック図を示している。なお、本生体試料測定装置が備えている操作ボタン5,6は一般的なものであるので、図面の煩雑化を避けるためにここには図示していない。
センサ挿入口4には、
図2に示すように、接続端子9,10が設けられている。接続端子9,10には、接続端子9,10経由で、生体試料測定センサ3に電圧を印加する電圧印加部12と、電流−電圧変換部13とが接続されている。
【0014】
また、電圧印加部12は、
図2に示すように、制御部20の指示に基づいて、生体試料測定センサ3に所定の電圧を印加する。その時、生体試料測定センサ3から接続端子9,10経由で入力される電流は、電流−電圧変換部13において電圧に変換された後、切替スイッチ16,17によって増幅器14または増幅器15のいずれかが切替選択されて増幅される。増幅された信号は、A/D変換部(アナログ/デジタル変換部)18においてデジタル信号に変換され、デジタル変換されたデジタル信号が判定部19に取り込まれる。
【0015】
判定部19に取り込まれた所定時間間隔毎のデジタル信号は、メモリ部21に保存される。
この動作を第1の印加期間(T1;
図5(a)参照)および第2の印加期間(T2;
図5(a)参照)の間、継続して行い、メモリ部21に入力データ(上記デジタル信号)が格納される。
【0016】
演算部19aでは、メモリ部21に格納された入力データに基づいて、下記の式(1)を使用して、第1・第2の異常判定値(D1−1,D1−2)(複数の第1の差分判定値)を算出する。また、下記の式(2)を使用して、第3の異常判定値(D2)(第2の差分判定値)を算出する。
D1(t)=X(t)−X(t−α) 式(1)
(t:時間を表す変数、α:定数)
D2(t)=D1(t)−D1(t−β) 式(2)
(t:時間を表す変数、β:定数)
ここで、X(t)は、上記第2の印加期間(T2;
図5(a)参照)における上記デジタル信号を示しており、X(t−α)は、第2の印加期間より所定の時間α(定数)以前の第1の印加時間(T1;
図5(a)参照)における上記デジタル信号を示している。なお、
図5(b)では、α=3secとなっている。
【0017】
ここで、第1の印加期間におけるデジタル信号とは、
図5(b)では、t=0〜2secの部分の測定値を意味している。また、第2の印加期間におけるデジタル信号とは、
図5(b)では、時間を表す変数t=3〜5secの部分の測定値を意味している。
なお、
図5(b)に示すP1は、血糖値を測定するポイントを示している。本実施形態では、上述の異常波形エラーを検出する方法のように、所定期間の間データを取り続けて判断しているのではなく、
図5(a)に示す第2の印加時間T2の終了時点(この例では、t=5secのポイントP1)における測定データを血糖値測定に使用している。
【0018】
また、第1の異常判定値(D1−1)は、時間t1における測定値(デジタル値)X(t1)と時間(t1−α)における測定値(デジタル値)X(t1−α)との差分である異常判定値D1(t1)を示している。第2の異常判定値(D1−2)は、時間t2における測定値X(t2)と時間(t2−α)における測定値X(t2−α)との差分である異常判定値D1(t2)を示している。上記式(1)に具体的に当てはめた場合(この例の場合、α=3sec)、時間t1における第1の異常判定値D1(t1)は、
D1−1=D1(t1)=X(t1)−X(t1−3)
時間t2における第2の異常判定値D1(t2)は、
D1−2=D1(t2)=X(t2)−X(t2−3)
として、それぞれ表される。
【0019】
また、上式(2)は、上述した式(1)により演算して求められた第1の異常判定値D1(t1)と第2の異常判定値D1(t2)とを用いて求められる。
ここで、一定の時間間隔βは、上記t1とt2の時間差を示している。本実施形態では、β=0.1secの例が示されている。
これを上記式(2)に当てはめると、第3の異常判定値D2は、時間t3における異常判定値D2(t3)を示し、
D2=D2(t3)=D1(t3)−D1(t3−0.1)
で表される。
【0020】
本実施形態の生体試料測定装置では、以上のように、式(1)、式(2)から求められた第1の異常判定値D1(t1)、第2の異常判定値D1(t2)および第3の異常判定値D2(t3)を用いて、異常波形エラーの判別を行う。
判定部19は、演算部19aで算出された第1・第2・第3の異常判定値(D1(t1),D1(t2),d2(t3))と、予め設定されておりメモリ部21に格納されている異常波形を判別する判定用の第1の下限閾値L1、第1の上限閾値H1、第2の下限閾値L2および第2の上限閾値H2に基づいて、異常波形エラーの判別を行う。
【0021】
なお、本実施形態では、これら判定用の第1の下限閾値L1、第1の上限閾値H1、第2の下限閾値L2および第2の上限閾値H2について、予め設定されてメモリ部21に格納されている例を挙げて説明した。しかし、例えば、これらの各閾値については、所定の条件に基づいて、可変/切替えが行われてもよい。これらの閾値の可変/切替え制御については、後段にて詳述する。
【0022】
ここで、第1の下限閾値L1、第1の上限閾値H1、第2の下限閾値L2および第2の上限閾値H2は、特定の血糖値やヘマトクリット値等の想定される変動要因について、条件別に正常値が測定され、その平均値と標準偏差とに基づいて諸条件による正常値の変動を統計的に見積もって設定される。
制御部20は、判定部19において判別された異常波形エラーの判別結果を、本体ケース1の表面に設けられた表示部2に表示させる。
【0023】
表示部2は、セグメント表示またはドットマトリックス表示が可能であって、本生体試料測定装置において検出・判別可能なエラーとしての暴露エラー、および試薬移動エラーの検出結果等についてセグメント表示する(
図11および
図12参照。)。具体的には、表示部2は、対応するエラーコードなどをセグメント表示する。また、表示部2は、ドットマトリックス表示の場合は、対応するエラーメッセージ、およびその対処方法などを表示して、ユーザに通知する。この時、オプションとして、音出力部(ブザー、小型スピーカ等)を設け、音によって聴覚的にエラー検出結果等をユーザに通知してもよい。
【0024】
ここで、暴露エラーの場合には、その性質上、ユーザが携帯している生体試料測定センサ3が全て不良となっているおそれがある。このため、複数回続けて暴露エラーが連続して検出された場合には、新たに、近くの薬局から購入するための支援表示も行う機能も有している(
図12(d)参照)。
具体的には、
図2において、位置検知部8はGPS機能を有しているため、現在地を認識して、その情報を表示部2に表示することができる。通信部22は、無線により外部の薬局データベースにアクセスをし、現在地の近くに薬局があるかどうか、または該当する生体試料測定センサ3の在庫があるかどうかを検索するときなどに使用される。また、通信部22を使用せずに、本体ケース1に薬局データメモリ部(メモリスロット)を設けてもよい。この場合には、SDメモリなどに内蔵された薬局データを入力し、薬局の検索をすることができる。
【0025】
図3は、本生体試料測定装置の使用方法を示す図を示している。
通常、ユーザは、生体試料測定センサ3を収納するセンサボトル40を携帯しており、センサボトル40から生体試料測定センサ3を1枚ずつ取り出して、血糖値等の測定を行う。一般的に、生体試料測定センサは、湿度によってその性能が劣化してしまう傾向がある。よって、センサボトル40には、生体試料測定センサの劣化を防止するために、乾燥剤などの保存材(図示せず)が内蔵されている。
【0026】
なお、上段における説明では、生体試料測定センサ3をセンサボトル40により保管する例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、センサボトルに保管する以外に、生体試料測定センサ3を個別に包装した個別包装タイプのものを用いてもよい。この場合には、個別包装された状態の生体試料測定センサを携帯し、測定時にその包装材を開封して、中に収納されている生体試料測定センサ3を取り出して、血糖値等の測定を行うことができる。
【0027】
また、同様に、湿度による性能劣化を防止するために、個別包装材の中に生体試料測定センサと乾燥剤とを同封させてもよい。
本実施形態では、生体試料測定センサ3が、センサボトル40内に適切な状態で保存されていない(例えば、センサボトル40の上部にある蓋41が適切に閉められないまま携帯されていた。あるいは、センサボトル40から生体試料測定センサ3が取り出したまま放置されていた、あるいは、個別包装タイプの場合は、開封されたまま放置されていた等)場合などは、暴露エラーとして判定することができる。
【0028】
図4は、生体試料測定センサ3の構成を示す分解斜視図である。
生体試料測定センサ3は、長方形状の基板31上に、所定間隔をおいて対向配置された電極31a,31b,31cを有している。電極31a,31b,31cが基板31の一端側(
図4の右側)に設けられていることで、電極31a,31b,31cが
図1に示すセンサ挿入口4内に設けられている接続端子9,10に接触する。これにより、生体試料測定センサ3を、本体ケース1内の電気回路に電気的に接続させることができる。
【0029】
また、基板31の他端側(
図4の左側)には、対向する電極31a,31b,31cにまたがって試薬34が配置されている。
なお、ここでは、電極31a,31b,31cの3電極を示しているが、2電極(作用極31aと対極31b)があれば測定可能である。残りの1電極は、血液の導入を検知する検知極31cとして使用される。
【0030】
同様に、本体ケース1側の接続端子9,10も2個のみ記載しているが、実際には、検知極31c等のために、別途追加の接続端子(図示せず)が設けられている。
さらに、基板31上には、試薬34の部分を覆うように、スペーサ32を介してカバー33が配置されている。
スペーサ32は、
図4に示すように、試薬15を横切るようにスリット32aが形成されている。これにより、スリット32a内の空間は、電極31a,31b,31c、および試薬34が面した状態となっている。
【0031】
これにより、スリット32aを有するスペーサ32の上側にはカバー33、下側には基板31が配置されていることで、スリット32aの部分が、測定の対象物である血液などのキャピラリ(供給路)としての空間を形成することができる。そして、キャピラリに面した位置に、試薬34、電極31a,31b,31cを配置することで、血液の導入を電極31cにおいて検知し、血液と試薬34との反応によって得られる電気的な信号を電極31a,31bにより検出・測定することで、血糖値等を測定することができる。
【0032】
また、スペーサ32上には、カバー33が配置されている。カバー33のスリット32aに対応する部分には、空気孔33aが形成されている。
空気孔33aは、上記キャピラリと連通しており、毛細管現象によって血液がキャピラリへ導入することを支援する役割を有している。
生体試料測定センサ3は、以上の構成において、
図3(b)に示すように、使用前の状態では、乾燥容器であるセンサボトル40(
図3参照)内に保管されている。そして、生体試料測定センサ3は、血糖値を測定するたびに一枚ずつセンサボトル40内から取り出される。次に、生体試料測定センサ3は、
図1に示すように、その一端側がセンサ挿入口4に挿入され、接続端子9,10経由で、本体ケース1内の電気回路と電気的に接続される(この状態では、使用者の血液はまだスリット32a部分に供給されていない)。
【0033】
この状態となると、制御部20は、電圧印加部12、接続端子9,10を介して、所定の電圧を生体試料測定センサ3の電極31a,31b間に印加する。
<暴露エラーの判別方法>
次に、
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)を用いて、暴露エラーの判別方法について説明する。
図6(a)は、暴露エラー発生時の波形の典型例を示している。
図6(a)のN1は、通常時の測定値の変化(通常波形)を示しており、A1、A2は共に、暴露エラー発生時の測定値の変化(暴露波形1,2)を示している。
【0034】
ここで、暴露エラー発生時の波形は、通常時より大きな値(
図6(a)のY軸に示す反応電流が大きい値)を示す傾向がある。
図6(a)に示す波形が、上述した測定値X(t)、X(t−α)に該当する。本実施形態では、測定範囲等は、下記のようになっている。
第1の測定域は、第1の印加時間(T1)(
図5(a)参照)における測定範囲を示している。本実施形態では、時間t=0.6〜2secの範囲である。
【0035】
また、第1の測定域の測定値X(t−α)として、第1の測定値m1および第2の測定値m2が該当する。
同様に、第2の測定域は、第2の印加時間(T2)(
図5(a)参照)における測定範囲を示している。本実施形態では、第2の測定域は、時間t=3.6〜5secの範囲である。また、第2の測定域の測定値X(t)として、第3の測定値m3および第4の測定値m4が該当する。なお、本実施形態では、上記定数αは3secである。
【0036】
そして、
図6(a)に示す測定値に基づいて、上述した式(1)を用いて、第1・第2の異常判定値D1(t1)、D1(t2)を演算する。
つまり、第1の異常判定値D1(t1)は、第2の測定域(t=3.6〜5secの範囲)の第3の測定値m3から第1の測定域(t=0.6〜2secの範囲)の第1の測定値m1の差分を演算して求められる。同様に、第2の異常判定値D1(t2)は、第2の測定域の第4の測定値m4から第1の測定域の第2の測定値m2の差分を演算して求められる。
【0037】
すなわち、第1の異常判定値D1(t1)および第2の異常判定値D1(t2)は、下記の式として求められる。
D1(t1)=m3−m1
D1(t2)=m4−m2
ここで、第1〜第4の測定値m1〜m4は、定数α=3secであるので、それぞれ以下のようにして求められる。
【0038】
m1=X(t1−3)
m2=X(t2−3)
m3=X(t1)
m4=X(t2)
さらに、第1・第3の測定値m1,m3は、それぞれの測定域の1番目の測定値であるため、t1は測定開始から3.6sec時点の測定値である。第2・第4の測定値m2,m4は、それぞれの測定域の2番目の測定値であるので、t2=3.7sec(この例では、測定間隔=0.1secである)時点の測定値である。よって、置き換えると、
D1(t1)=D1(3.6)=X(3.6)−X(0.6)
D1(t2)=D1(3.7)=X(3.7)−X(0.7)
この演算を、t1を3.6〜5secまで、0.1sec毎に繰返し求めた第1・第2の異常判定値D1(t1)の演算値の変化を示したものが、
図6(b)に示すグラフである。
【0039】
図6(b)に示すように、暴露エラー発生時における異常判定値D1(t)の変化を示す波形A1a,A2a(暴露波形1,2)は、通常波形のD1(t1)の変化を示す波形N1aの場合よりも、マイナス側に大きく偏っている。
ここで、H1,L1は、エラー判定用の閾値であって、H1は第1・第2の異常判定値D1の上限閾値を示し、L1は、第1・第2の異常判定値D1の下限閾値を示している。
【0040】
なお、上記D1の上限閾値および下限閾値は、全域で一定ではなく、測定に関わる反応の時間的変化を考慮して、複数のレンジを持っている。
次に、第3の異常判定値D2(t3)について説明する。
第3の異常判定値D2(t3)は、上述した式(1)を用いて演算された第1の異常判定値D1(t1)と、上述した式(2)を用いて演算された第2の異常判定値D1(t2)とを用いて求められる。
【0041】
すなわち、第3の異常判定値D2(t3)は、下記のようにして求められる。
D2(t3)=D1(t3)−D1(t3−β)
次に、測定間隔である定数β=0.1sec、t3=3.6〜5secを適用すると、一番目のD2(t3)のデータは、
D2(t3)=D2(3.6)=D1(3.6)−D1(3.5)
となる。
【0042】
ここで、3.5sec時点のD1の演算値は、
図6(b)では図示していないが、データとしては、t0=3.5として演算され、メモリに格納される。
つまり、3.5sec時点のD1の演算値は、
D1(t0)=D1(3.5)=X(3.5)−X(0.5)
の計算式によって求められる。
【0043】
このようにt3=3.6〜5secまで上記の演算を行い、0.1sec毎に繰返し求めた第3の異常判定値D2(t3)の演算値の変化を示したものが、
図6(c)に示すグラフである。
図6(c)に示すように、暴露エラー発生時のD2(t3)の変化を示す波形A1b,A2b(暴露波形1,2)は、通常波形のD2(t3)の変化を示す波形N1bの場合よりも、プラス側に大きく偏っている。
【0044】
ここで、H2,L2は、エラー判定用の閾値、H2は、第3の異常判定値D2の上限閾値をそれぞれ示している。また、L2は、第3の異常判定値D2の下限閾値を示している。
なお、上記D2の上限閾値および下限閾値は、全域において一定ではなく、測定に関わる反応の時間的変化を考慮して、複数のレンジを持っている。
【0045】
本実施形態の生体試料測定装置では、以上のように、第1・第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)については、
図6(b)に基づいて、第3の異常判定値D2(t3)については、
図6(c)に基づいて、下記の条件に該当する場合を暴露エラーとして判定する。
具体的には、第1または第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)が第1の下限閾値L1よりも小さく、かつ第1・第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)が、第1の上限閾値H1以下の場合であって第3の異常判定値D2(t3)が第2の下限閾値L2以上の場合には、生体試料測定センサ3の暴露エラー発生と判定する。
【0046】
ただし、ここで、第2の下限閾値L2の絶対値は、第1の下限閾値L1および第1の上限閾値H1の絶対値よりも小さい値である。
<試薬移動エラーの判別方法>
次に、
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)を用いて、試薬移動エラーの判別方法について説明する。
【0047】
まず、
図7(a)は、生体試料測定センサ3において試薬34が所定の位置から移動してしまった場合に検出される異常波形の典型例と通常時の波形とを示している。
図7(a)のN2は、通常時の測定値の変化を示すグラフ(実線)であって、B1〜B3は、試薬移動が発生した場合の測定の変化を示すグラフ(点線)である。
B1は、第1の印加時間T1(
図5(a)参照)の間に、外部からの衝撃等によって試薬移動が発生した場合に検出される異常波形を示している。B2は、第2の印加時間T2(
図5(a)参照)の間に、試薬移動が発生した場合に検出される異常波形を示している。B3は、第1の印加時間T1の直前に試薬移動が発生した場合に検出される異常波形を示している。
【0048】
これらの試薬移動発生時に検出される波形は、上述した暴露エラー発生時のような一様の変化ではなく、ある特定時点における検出値が大きくなるという特徴を有している。
試薬移動エラーの判別については、上述した暴露エラー発生時と同様に、第1〜第3の異常判定値D1(t1)、D1(t2)、D2(t3)の演算方法を用いて行われるため、ここでは説明を省略する。
【0049】
上述の演算式を用いて求められ、試薬移動時における上記の異常判定値の変化を示すグラフは、D1(t1)、D1(t2)については、
図7(b)に示されており、同様にD2(t3)については、
図7(c)に示されている。
図7(b)に示すように、N2aは通常時のグラフ、B1a,B2a,B3aは、それぞれB1,B2,B3に対応した試薬移動エラー発生時のグラフである。
【0050】
また、H1は、D1における上限閾値、L1は、D1における下限閾値を意味しており、上述の暴露エラーの判別方法で説明した内容と同様である。
図7(c)は、第3の異常判定値D2(t3)の変化を示すグラフであり、N2bは通常時のグラフ、B1b,B2b,B3bは、それぞれ、B1a,B2a,B3aに対応したグラフを示している。
【0051】
また、同様に、H2はD2における上限閾値、L2はD2における下限閾値を意味している。
上記のように、第1・第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)については、
図7(b)に基づいて、第3の異常判定値D2(t3)については、
図7(c)に基づいて、下記の条件に該当する場合を試薬移動エラー発生有りとして判定する。
【0052】
具体的には、上述した式(1)を用いて演算して求められた第1の異常判定値D1(t1)、第2の異常判定値D1(t2)、および上述した式(2)を用いて演算して求められた第3の異常判定値D2(t3)が、下記の条件(1),(2)以外の状態となった場合には、生体試料測定センサ3の試薬移動エラーの発生有りと判定する。
(1)第1または第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)が第1の下限閾値L1よりも小さく、かつ第1および第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)が、第1の上限閾値H1以下の場合であって、第3の異常判定値D2(t3)が、第2の下限閾値L2以上である時。
(2)第1および第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)が、第1の下限閾値L1以上、かつ第1の上限閾値H1以下の場合であって、第3の異常判定値D2(t3)が、第2の下限閾値L2以上、かつ第2の上限閾値H2以下である時。
【0053】
ただし、ここでは、第2の上限閾値H2および第2の下限閾値L2の絶対値は、第1の上限閾値H1および第1の下限閾値L1の絶対値よりも小さい。
本実施形態の生体試料測定装置では、以上のようにして、生体試料測定センサ3の試薬移動エラーの発生の有無を判定する。
次に、
図8〜
図10を用いて、本実施形態の生体試料測定装置の動作について説明する。
【0054】
まず、生体試料測定センサ3が、本体ケース1のセンサ挿入口4に挿入される(
図8のS1)。
次に、生体試料測定センサがセンサ挿入口4に挿入されたことを検知する(
図8のS1)と、本体ケース1のメイン電源がONされ、挿入された生体試料測定センサ3が適切なものであるか否かを判定する(
図8のS2)。ここでの判定は、生体試料測定センサ3の挿入方向が正しいか、使用済みのセンサでないか、機種の違うセンサかどうか等を判別している。
【0055】
ここで、挿入された生体試料測定センサ3が不適切であることが検出されると、その旨を表示し、センサ挿入口4から生体試料測定センサ3を取り出す(
図8のS3)。
次に、生体試料測定センサ3が適切であると判定された場合には、別の穿刺機器を用いて被測定者の皮膚に穿刺を行い、血液を滲出させる。その滲出した血液は、生体試料測定センサ3の一端に点着され、そこからキャピラリ内に導入されてして血糖値等の測定が行われる(
図8のS4)。
【0056】
血液の点着が確認されると場合は、血糖値の測定を開始する(
図8のS5)。なお、生体試料測定センサ3に対して点着された血液が正常にキャピラリ内へ導入されているか否かは、
図4の検知極31cに電圧を印加し、その出力を検出することで実施することができる。
血糖値の測定が開始されると、一定時間の測定を行う。その待ち時間を画面上に表示すると共に、カウントダウンを開始する(
図8のS6)。カウントダウン中は、測定信号波形監視のため、所定間隔毎に測定を行う。そして、その測定値は、メモリ部21(
図2参照)に格納される(
図8のS7)。その処理は、カウントダウン終了(
図8のS8)まで継続される。
【0057】
カウントダウンが終了すると、測定が終了する(
図8のS9)。それに伴って、測定信号の波形監視も終了する。つまり、一定間隔毎の測定を終了する(
図8のS10)。
測定終了後、メモリ部21に格納された測定値および前述の式(1)、式(2)を用いて求められた第1〜第3の異常判定値と、第1の上限閾値H1、第1の下限閾値L1、第2の上限閾値H2および第2の下限閾値L2に基づいて、異常波形エラー(
図8のS11)か、その他のエラー(
図8のS12)かを判別する。その他のエラーの場合は、エラー内容を表示し(
図9のS27)、センサ挿入口4から生体試料測定センサ3が取り出されて終了する(
図9のS17)。
【0058】
ここで、各種エラーの発生が検出されなかった場合には、機種データを確認して(
図9のS13)、検量線を選択し(
図9のS14)、選択した検量線から求める生体試料の測定値を演算する(
図9のS15)。そして、測定値などの測定結果を表示部2に表示させる(
図9のS16)。その後、センサ挿入口4から生体試料測定センサ3が取り出されて、測定が完了する(
図9のS17)。
【0059】
一方、異常波形エラーが発生したと判定された場合には、より詳しくエラーの種別を判別するために、上述した暴露エラーの判定方法を用いて、発生したエラーの種別を判別する(
図9のS18)。
ここで、暴露エラー発生と判定した場合には、表示部2にその内容を表示する(
図9のS19)。
【0060】
なお、暴露エラー発生時における表示内容としては、
図12(a)および
図12(b)に、その一例を示している。
すなわち、
図12(a)は、簡易的なエラー発生を知らせる表示のセグメント表示例を示している。具体的には、暴露エラーの発生を示すエラーコード「E7」を表示している。
図12(b)は、ドットマトリックスを利用した場合の表示の一例であって、エラー内容だけでなく、ユーザへの「アドバイス」や「薬局検索」等の支援表示も行っている。
【0061】
このような支援表示は、暴露エラー発生を検出した場合には、そのユーザの手持ちの残りの生体試料測定センサ3も同様に不良となっている可能性がある。よって、緊急に新たな生体試料測定センサ3の調達の必要性が出てきた時に、「薬局検索」を選択する(
図9のS20)ことで、本体ケース1に内蔵されている位置検知部8(GPS機能)を活用して、現在地を認識するとともに、通信部22によって外部の薬局のデータベースにアクセスして一番近くの薬局を探し出し(
図9のS21)、表示部2にその薬局名や住所を表示することができる(
図9のS22)。このとき、地図データを入手できれば、表示部2に薬局までの地図を表示することもできる(
図9のS23)。その時の表示例を、
図12(d)に示している。
【0062】
その後、センサ挿入口4から生体試料測定センサ3が取り出されて、測定が終了する。再度、測定をする場合は、
図8のS1に戻り、別の生体試料測定センサ3をセンサ挿入口4へ装着することで再開できる。なお、薬局までの地図データ等は、
図2の薬局データメモリ部23に記憶されている。また、本生体試料測定装置には、
図2に示すように、各部への電源供給を行う電源部7が設けられている。
【0063】
ここで、アドバイス表示が選択された場合(
図9のS25)には、生体試料測定センサ3の保管方法や注意事項が表示部2に表示される(
図9のS26)。
また、暴露エラー発生有りと判定された時以外は、試薬移動エラー発生有りと判定を行い、表示部2にその内容が表示される(
図9のS24)。
図13(a)、
図13、(b)、
図13(c)は、試薬移動エラー発生有りと判定した場合の表示部2に表示される内容の一例を示している。
【0064】
図13(a)は、表示部2にセグメント表示を行う場合であって、試薬移動エラーに対応したエラーコード「E9」を表示している。
図13(b)は、表示部2にドットマトリックス表示を行う場合であって、試薬移動エラーが発生したことを直接的に表示している。そして、
図13(c)では、その場合の注意事項などのアドバイスを表示している。
次に、
図10を用いて、暴露エラー発生、試薬移動エラー発生時におけるエラー検出の詳細なフローについて説明する。
【0065】
図10に示すフローは、
図8に示すフローにおいて異常波形エラーと判断された(
図8のS11)場合において、
図9に示す暴露エラー発生の判定(
図9の18)とその表示(
図9のS19)および試薬移動エラーの発生の表示(
図9のS24)のステップにおいて実施される内容を詳細に示したものである。
まず、第1の印加時間T1における第1の測定域の第1・第2の測定値m1,m2、および第2の印加時間T2における第2の測定域の第3・第4の測定値m3,m4に基づいて、第1・第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)を演算する。また、第1・第2の異常判定値に基づいて、第3の異常判定値D2(t3)を演算する(
図10のS181)。
【0066】
次に、上述した第1・第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)とD1における判定用の上限閾値H1とを比較する(
図10のS182)。
同様に、第1・第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)とD1における判定用の下限閾値L1とを比較する(
図10のS183)。また、上述した第3の異常判定値D2(t3)について、D2における判定用の上限閾値H2と比較する(
図10のS184)。
【0067】
なお、これらは、
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)に示すように、時間変数t1,t2,t3の関数であって、所定の時間範囲(上述の例では、t1,t2,t3:3.6〜5sec)のデータであるため、第1・第2・第3の異常判定値D1(t1),D1(t2),D2(t3)のそれぞれは、データ群(複数のデータの集まり)を構成している。そして、これらのデータ群のデータ全てについて、上記D1における上限閾値H1、下限閾値L1および上記D2における上限閾値H2、下限閾値L2と、それぞれ比較していく。
【0068】
以上の比較から、まず、検出された異常波形が暴露エラーに起因する異常波形であるか否かの判定を下記の手順で行う。
まず、第1・第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)が、D1における下限閾値L1を下回り(実際には、L1を下回った回数が1回以上であり)、かつ上記第1・第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)が、D1における上限閾値H1を超えない(実際には、H1を超えた回数が0回である)ものであるかどうかを判定する(
図10のS185)。
【0069】
上記の条件に該当する場合は、
図10のS186に移行する。ここで、第3の異常判定値D2(t3)が、D2における上限閾値H2を超え(H2を上回った回数が1回以上あり)、かつ第3の異常判定値D2(t3)が、D2における下限閾値L2を下回らない(L2を下回った回数が0回である)か否かを判定する。この条件に該当する場合は、暴露エラー発生有りと判断し、それに対応した表示を行う(
図9のS19)。
【0070】
一方、上記の条件に該当しない場合は、試薬移動エラー発生有りとして判断し、それに対応した表示を行う(
図9のS24)。
図11は、上記の判定条件をマトリックスとして表したものである。
図11の縦軸が、第1・第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)を示しており、横軸が第3の異常判定値D2(t3)を示している。
【0071】
表の縦軸D1(t)は、第1・第2の異常判定値D1(t1),D1(t2)を総称した表記であり、その条件は、上から順に下記に示す内容である。
(1)<L1 : D1における下限閾値L1を下回る回数が1回以上発生、かつ
>H1 D1における上限閾値H1を超える回数が1回以上発生。
(2)<L1 : D1における下限閾値L1を下回る回数が1回以上発生、かつ
≦H1 D1における上限閾値H1を超える回数が0回(発生せず)。
(3)≧L1 : D1における下限閾値L1を下回る回数が0回(発生せず)、かつ
>H1 D1における上限閾値H1を超える回数が1回以上発生。
(4)≧L1 : D1における下限閾値L1を下回る回数が0回(発生せず)、かつ
≦H1 D1における上限閾値H1を超える回数が0回(発生せず)。
【0072】
同様に、表の横軸D2(t)は、第3の異常判定値D2(t3)を意味しており、その条件は、左から順に下記に示す内容である。
(5)<L2 : D2における下限閾値L2を下回る回数が1回以上発生、かつ
>H2 D2おける上限閾値H2を超える回数が1回以上発生。
(6)<L2 : D2における下限閾値L2を下回る回数が1回以上発生、かつ
≦H2 D2における上限閾値H2を超える回数が0回(発生せず)。
(7)≧L2 : D2における下限閾値L2を下回る回数が0回(発生せず)、かつ
>H2 D2における上限閾値H2を超える回数が1回以上発生。
(8)≧L2 : D2における下限閾値L2を下回る回数が0回(発生せず)、かつ
≦H2 D2における上限閾値H2を超える回数が0回(発生せず)。
【0073】
以上のように、本実施形態の生体試料測定装置では、縦軸の条件(1)〜(4)、横軸の条件(5)〜(8)の組み合わせにより、暴露エラーの発生と試薬移動エラーの発生とを判別している。
図11に示す条件からも分かる様に、上記縦軸の条件(4)に該当し、かつ横軸条件(8)に該当する場合は、生体試料測定センサ3が正常であることを意味している。よって、その時には、生体試料測定装置による測定値を、表示部2に表示させる。
【0074】
また、上記縦軸条件(2)に該当し、かつ横軸条件(7),(8)に該当する場合には、暴露エラー(E7)の発生有りを意味している。そして、上記以外の場合には、試薬移動エラー(E7)の発生有りを意味している。
なお、本実施形態で説明した例では、暴露エラーに対応するエラーコードは「E7」で示されており、試薬移動エラーに対応するエラーコードは「E9」で示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0075】
また、生体試料測定装置によって検出可能な上記異常波形エラー以外のその他のエラーとしては、生体試料測定センサ3の挿入方向を間違った場合の表裏反転挿入エラー、使用済みの生体試料測定センサを再装着した場合の使用済みセンサエラー、温度データが測定補償範囲を超えた場合の温度不適エラーなどがある。
本実施形態の生体試料測定装置では、以上のように、第1・第2および第3の異常判定値D1(t1),D1(t2),D2(t3)に基づいて、例えば、長期間湿気の高い所に放置された生体試料測定センサ3を用いた測定結果を暴露エラー発生有りとして判定したり、測定中に外部から加えられた衝撃等による測定不良を試薬移動エラー発生有りとして判定したりすることができる。この結果、正確に測定できた測定結果だけを表示部2に表示させることができるため、異常波形に基づく誤った測定結果を、ユーザが正常な測定結果と誤認識することはない。
【0076】
さらに、本実施形態の生体試料測定装置では、異常波形に基づく測定結果から、エラーの種別(暴露エラー、試薬移動エラー)まで判別することができる。この結果、エラーの種別やその後の対応策、アドバイス等をユーザに報知することで、ユーザはその後の適切な措置を採ることができる。
<閾値の可変/切替え制御>
本実施形態の生体試料測定装置では、上述したように、判定用の第1の下限閾値L1、第1の上限閾値H1、第2の下限閾値L2および第2の上限閾値H2を用いてエラー判別を行う。
【0077】
ここでは、これらの閾値を、所定の条件に基づいて可変/切替えしながら、エラー判定を行う処理について以下で説明する。
ここで、上記閾値を可変/切替えする必要性について検討する。
具体的には、グルコース等の検査対象物の濃度や測定時の環境温度、Hct値(赤血球比率)等によって、生体試料測定装置において測定時に得られる応答値(入力信号レベル)が大きく変化する傾向がある。
【0078】
例えば、グルコースの濃度が高い場合、応答値(応答電流値)が大きくなりやすく、逆に、濃度が低い場合、応答値が小さくなりやすい。
同様に、測定時の環境温度が高い場合、応答値が大きくなりやすく、逆に、環境温度が低い場合、応答値が小さくなりやすい。
さらに、Hct値が高い場合、応答値が小さくなりやすく、逆に、Hct値が低い場合、応答値が大きくなりやすい。
【0079】
そこで、本実施形態の生体試料測定装置では、上述したエラー判別を実施する前のタイミングで、判定部19が、検査対象物の濃度、測定時の環境温度、Hct値の各情報の高低に応じて、各閾値の大きさを可変/切替え可能とする。
なお、各閾値の可変/切替え処理は、検査対象物の濃度、環境温度、Hct値のそれぞれを単独の条件として閾値の可変/切替えを実施してもよいし、これらを組み合わせて実施してもよい。
【0080】
具体的には、
図15(a)〜
図15(c)に示すように、測定時に試料と試薬との反応が進行しにくい場合(低グルコース濃度、低環境温度、高Hct値等)、標準的な反応の場合(中グルコース濃度、環境温度が常温、中Hct値)、反応が進行し易い場合(高グルコース濃度、高環境温度、低Hct値)を比較すると、入力信号が10倍以上の検出レベルの差が発生する場合がある。この結果、この差の大小に応じて、
図15(a)に示す波形と、
図15(c)に示す波形とでは、第1の差分判定値等も大きく変化してしまうため、精度よくエラー判定を実施することが難しくなってしまうおそれがある。
【0081】
本実施形態の生体試料測定装置では、以上のことを踏まえて、予め複数の閾値を設定し、上記検査対象物の濃度、測定時の環境温度、Hct値(単独または組み合わせ)情報に基づいて、これら複数の閾値の値を可変/切替え可能とする方式を採用している。
すなわち、
図15(a)〜
図15(c)に示す3つの例では、第1の差分判定値であるD1について、各2段階の上限閾値H1a,H1b,H1c、各2段階の下限閾値L1a,L1b,L1cを設定している。よって、検査対象物の濃度等の所定の条件に応じて、計6種類の閾値(H1a,H1b,H1c、L1a,L1b,L1c)を用いて、エラー判定を行う。
【0082】
なお、2段階の上限閾値、下限閾値を有するのは、上述した
図6(b)および
図7(b)に示している場合と同様である。
つまり、
図6(b)や
図7(b)の判定する場合を、第1の上限閾値と第1の下限閾値をそれぞれ3個用意しておき、グルコースなどの検査対象物の濃度、環境温度、Hct値等に応じて、3つの閾値を切替えて、より正確なエラー判定を行うことができる。
【0083】
なお、ここでは、第1の差分判定値:D1について説明したが、第2の差分判定値:D2においても、上述した
図6(c)および
図7(c)と同様である。
すなわち、第2の差分判定値であるD2については、各2段階の上限閾値H2a,H2b,H2c、各2段階の下限閾値L2a,L2b,L2cの計6種類の閾値を設定することにより、検査対象物の濃度等の所定の条件に応じて、エラー判定を行うことができる。
【0084】
これにより、検査対象物の濃度、環境温度、Hct値等により、得られる応答電流は異なるため、種々の条件(例えば、グルコース濃度、環境温度、Hct値等)の高低に応じて、エラー判定用の閾値を複数設定することで、検査対象物の濃度、測定時の環境温度、Hct値の高低に影響を受けることなく、より高精度なエラー判定を実施することができる。
【0085】
また、各閾値を可変/切替え可能とする別の制御として、上記検査対象物の濃度、測定時の環境温度、Hct値の情報と予め設定された基準値(例えば、温度=25℃、Hct値=45%等)との比率に応じて、各閾値(エラー判別用の上限閾値、下限閾値等)を可変/切替え可能とする方式を採用してもよい。
この場合でも、上記と同様に、検査対象物の濃度、測定時の環境温度、Hct値の高低に影響を受けることなく、高精度にエラー判定を実施することができる。
【0086】
なお、上記説明では、暴露エラー、試薬移動エラーを判定する例を挙げて説明したが、この閾値の可変/切替え制御は、この2つのエラー判別のみに限定されるものではない。
つまり、本実施形態の生体試料測定装置によれば、異常波形が生じる他の種類の波形エラー全体の判別において、精度を向上させることが可能である。
(実施の形態2)
本発明の他の実施形態に係る生体試料測定装置について、
図14(a)および
図14(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
【0087】
すなわち、
図14(a)および
図14(b)は、本実施形態の生体試料測定装置の構成を示す斜視図である。
本実施形態の生体試料測定装置は、交換可能なパネル53を備えている。
図14(a)は、パネル53を本体ケース51に装着した状態を示しており、
図14(b)は、パネル53を本体ケース51から取り外した状態を示している。
【0088】
図14(a)、
図14(b)に示すように、本体ケース51の一端には生体試料測定センサ3(図省略)のセンサ挿入口54が設けられている。
また、本体ケース51の表面には、表示部52および操作用のダイヤル55が設けられている。また、ダイヤル55は、プッシュ動作も可能であるため、ダイヤル55を回動させて表示部52に表示された画面メニューの項目を選択後、ダイヤル55をプッシュすることにより、その選択したメニューの項目の選択を決定することができる。
【0089】
なお、
図14(a)および
図14(b)には、シャトルダイヤル(回動式)を示しているが、ジョグダイヤル(回転式)を採用してもよい。また、当然、プッシュ動作は、本体ケース51の電源をON/OFFする場合にも使用される。
本実施形態の生体試料測定装置は、パネル53にSDメモリなどの外部メモリ(図示せず)を有している。SDメモリには、地域別薬局データ(例えば、薬局名、住所、連絡先など)が格納されている。よって、パネル53が本体ケース51に装着された場合には、本体ケース51に設けられたコネクタ56,57(コネクタは1つでもよい)を経由して、パネル53に搭載されたSDメモリと本体ケース51内の電気回路部とが電気的に接続される。この結果、暴露エラーが発生した場合には、SDメモリに格納された薬局データを、表示部52に表示させることができる。
【0090】
また、上記実施形態1において説明した本体ケース1内に搭載された位置検知部(GPS機能)や通信部(通信機能)を、パネル53にも搭載してもよい。
これにより、本体ケース51を共通のシンプルな構成とすることができ、パネル53を交換することにより、多種多様なオプション機能を追加・変更することができる。この結果、ユーザの必要度に応じて、よりユーザ支援を強化することが可能となる。
【0091】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態1では、測定時間における前半部と後半部とで2段階で、上限閾値および下限閾値が設定されている例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
例えば、
図16(a)〜
図16(c)のグラフに示すように、測定時間を示す横軸を3つに分割し、それぞれの時間帯において、異なる上限閾値、下限閾値を3段階で設定してもよい。
図16(a)は、測定時に試料と試薬との反応が進行しにくい場合(低グルコース濃度、低環境温度、高Hct値等)の第1の差分判定値:D1を示している。この場合は、D1の上限閾値をH1―1a,H1―2a,H1―3aの3段階、下限閾値をL1―1a,L1―2a,L1―3aの3段階を設けている。
【0093】
同様に、
図16(b)は、標準的な反応の場合(中グルコース濃度、環境温度が常温、中Hct値)の第1の差分判定値:D1を示している。この場合は、D1の上限閾値をH1―1b,H1―2b,H1―3bの3段階、下限閾値をL1―1b,L1―2b,L1―3bの3段階を設けている。
図16(c)では、反応が進行し易い場合(高グルコース濃度、高環境温度、低Hct値)の第1の差分判定値:D1を示している。この場合は、D1の上限閾値をH1―1c,H1―2c,H1―3cの3段階、下限閾値をL1―1c,L1―2c,L1―3cの3段階を設けている。
【0094】
すなわち、
図16(a)〜
図16(c)に示すように、測定時に試料と試薬との反応が進行しにくい場合、標準的な反応の場合、反応が進行し易い場合を比較すると、特に、反応が進行し易い場合には、測定時間の前半と後半とでは測定値に大きな差が生じる。よって、これらの差を吸収して適切なエラー判定を実施するために、3段階以上の複数段階で各閾値が設定されていることがより好ましい。
【0095】
このように、統計から得られるエラー判定閾値は、測定時間に応じて異なることが分かっているため、測定時間に応じて適切な閾値を複数段階に分けて設定することで、エラー判定の精度をさらに向上させることができる。
なお、ここでは、第1の差分判定値:D1について説明したが、第2の差分判定値:D2においても同様である。
【0096】
つまり、測定時に試料と試薬との反応が進行しにくい場合の第2の差分判定値:D2においては、D2の上限閾値をH2―1a,H2―2a,H2―3aの3段階、下限閾値を21―1a,L2―2a,L2―3aの3段階を設けてもよい。同様に、標準的な反応の場合の第2の差分判定値:D2においては、D2の上限閾値をH2―1b,H2―2b,H2―3bの3段階、下限閾値をL2―1b,L2―2b,L2―3bの3段階を設けてもよい。さらに、反応が進行し易い場合の第2の差分判定値:D2においては、D2の上限閾値をH2―1c,H2―2c,H2―3cの3段階、下限閾値をL2―1c,L2―2c,L2―3cの3段階を設けてもよい。
【0097】
これにより、第1の差分判定値:D1と同様に、エラー判定の精度をさらに向上させることができる。
なお、上記説明では、暴露エラー、試薬移動エラーの判別を行う例を挙げて説明したが、この閾値の可変/切替え制御は、この2つのエラー判別のみに限定されるものではない。
【0098】
つまり、本発明の生体試料測定装置によれば、異常波形が生じる他の種類の波形エラー全体の判別において、精度を向上させることが可能である。
(B)
上記実施形態1では、第1の印加時間と第2の印加時間との間に、電圧を印加しない休止時間を設けた例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0099】
例えば、
図17(a)に示すように、第1の印加時間と第2の印加時間との間に休止時間を設けない電圧印加パターンにより、エラー判定等を行ってもよい。
この場合でも、
図17(b)に示すように、上述した実施形態1と同様に、測定信号(入力信号)の波形を検出して、エラー判定を行うことができる。
なお、電圧を印加する回数が2回以上であれば、様々な印加波形の組み合わせ(電圧、印加回数)によっても、同様のエラー判定が可能である。この場合には、目的とするエラー判定(例えば、暴露エラー、測定中の衝撃等に起因する試薬移動エラー等)に応じて、最適な電圧印加パターンおよびエラー判定方式を使用することが望ましい。
【0100】
(C)
上記実施形態1および他の実施形態(B)では、第1の印加時間に印加される電圧を、第2の印加時間に印加される電圧よりも大きくなるように設定した例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、
図18(a)に示すように、上記他の実施形態(B)と同様に、第1の印加時間と第2の印加時間との間に休止時間を設けない場合において、第1の印加時間に印加される電圧を、第2の印加時間に印加される電圧よりも小さくなるように設定してもよい。
【0101】
この場合には、
図18(b)に示すように、それぞれの印加時間における測定信号(入力信号)の波形を検出して、エラー判定を行うことができる。