特許第5833265号(P5833265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5833265
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】積層装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20151126BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20151126BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   !H01M10/0585
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-75595(P2015-75595)
(22)【出願日】2015年4月2日
【審査請求日】2015年4月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐介
(72)【発明者】
【氏名】大山 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 憲彦
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/019751(WO,A1)
【文献】 特開2014−127273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04−10/0587
B65H 31/00−31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質の塗布された矩形シート状の正極箔と、負極活物質の塗布された矩形シート状の負極箔とを、絶縁性素材よりなる矩形シート状のセパレータを介して交互に積層してなる積層体を製造するための積層装置であって、
所定の吸着手段により順次、前記正極箔、負極箔又はセパレータを吸着して所定の積層位置へと搬送し、当該積層位置にて前記正極箔、負極箔又はセパレータを載置し積層していく搬送手段と、
前記積層位置に積層される積層体の四隅の各コーナー部にそれぞれ対応して設けられると共に、該コーナー部を構成する直交する2辺のうちの一方の辺に対向する位置にて上下方向を軸心として回転可能かつ上下方向に変位可能に設けられた4つの軸部と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記正極箔のコーナー部近傍を上から押さえるための正極押さえ部材と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記正極箔の上側に積層されるよう、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータのコーナー部近傍を上から押さえるための正極上セパレータ押さえ部材と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記負極箔のコーナー部近傍を上から押さえるための負極押さえ部材と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記負極箔の上側に積層されるよう、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータのコーナー部近傍を上から押さえるための負極上セパレータ押さえ部材と、
前記軸部を回転させることにより、水平方向における前記各押さえ部材の位置を所定の一方向へ順次、旋回移動させる回転駆動手段と、
前記軸部を上下動させることにより、前記各押さえ部材の高さ位置を上下方向へ変位させる上下駆動手段とを備え、
前記搬送手段により新たに前記積層位置へ前記正極箔、負極箔又はセパレータを搬送し載置する際には、当該新たに載置した前記正極箔、負極箔又はセパレータを当該搬送手段により押さえた状態で、
その下に既に載置された前記正極箔、負極箔又はセパレータの四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する前記2辺のうちの一方の辺を押さえている前記4つの正極押さえ部材、前記4つの正極上セパレータ押さえ部材、前記4つの負極押さえ部材、又は、前記4つの負極上セパレータ押さえ部材をそれぞれ、所定量上昇させると共に、該押さえ部材の先端部が少なくとも前記各コーナー部を構成する前記2辺のうちの他方の辺の上を通り過ぎるように旋回移動させた後、
前記新たに載置した前記正極箔、負極箔又はセパレータの四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する前記2辺のうちの一方の辺を、これに対応する前記4つの正極押さえ部材、前記4つの正極上セパレータ押さえ部材、前記4つの負極押さえ部材、又は、前記4つの負極上セパレータ押さえ部材により押さえるよう構成され
前記各押さえ部材は、平板状をなし、少なくともその旋回方向側の側縁部において、該旋回方向へ向け下方傾斜した上傾斜面と、該旋回方向へ向け上方傾斜した下傾斜面とを備え、該旋回方向側の側縁部が該旋回方向へ向け先細りしていることを特徴とする積層装置。
【請求項2】
前記正極押さえ部材、前記正極上セパレータ押さえ部材、前記負極押さえ部材、及び、前記負極上セパレータ押さえ部材が、前記正極箔、負極箔及びセパレータを積層する順序に従い、前記軸部の周方向に対し所定順序で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の積層装置。
【請求項3】
正極活物質の塗布された矩形シート状の正極箔と、負極活物質の塗布された矩形シート状の負極箔とを、絶縁性素材よりなる矩形シート状のセパレータを介して交互に積層してなる積層体を製造するための積層装置であって、
所定の吸着手段により順次、前記セパレータを吸着しつつ該セパレータを介して前記正極箔又は負極箔を吸着して所定の積層位置へと搬送し、当該積層位置にて前記正極箔又は負極箔の上に前記セパレータが重ねられるように、前記正極箔及びセパレータ、又は、前記負極箔及びセパレータを2枚一組で一度に載置し積層していく搬送手段と、
前記積層位置に積層される積層体の四隅の各コーナー部にそれぞれ対応して設けられると共に、該コーナー部を構成する直交する2辺のうちの一方の辺に対向する位置にて上下方向を軸心として回転可能かつ上下方向に変位可能に設けられた4つの軸部と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記搬送手段により前記正極箔と共に前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータのコーナー部近傍を上から押さえるための第1押さえ部材と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記搬送手段により前記負極箔と共に前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータのコーナー部近傍を上から押さえるための第2押さえ部材と、
前記軸部を回転させることにより、水平方向における前記各押さえ部材の位置を所定の一方向へ順次、旋回移動させる回転駆動手段と、
前記軸部を上下動させることにより、前記各押さえ部材の高さ位置を上下方向へ変位させる上下駆動手段とを備え、
前記搬送手段により新たに前記積層位置へ前記正極箔及びセパレータ、又は、前記負極箔及びセパレータを搬送し載置する際には、当該新たに載置した前記正極箔及びセパレータ、又は、前記負極箔及びセパレータを当該搬送手段により押さえた状態で、
その下に既に載置された前記セパレータの四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する前記2辺のうちの一方の辺を押さえている前記第1押さえ部材又は前記第2押さえ部材をそれぞれ、所定量上昇させると共に、該押さえ部材の先端部が少なくとも前記各コーナー部を構成する前記2辺のうちの他方の辺の上を通り過ぎるように旋回移動させた後、
前記新たに載置した前記正極箔及びセパレータ、又は、前記負極箔及びセパレータの四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する前記2辺のうちの一方の辺を、これに対応する前記第1押さえ部材又は前記第2押さえ部材により押さえるよう構成され
前記各押さえ部材は、平板状をなし、少なくともその旋回方向側の側縁部において、該旋回方向へ向け下方傾斜した上傾斜面と、該旋回方向へ向け上方傾斜した下傾斜面とを備え、該旋回方向側の側縁部が該旋回方向へ向け先細りしていることを特徴とする積層装置。
【請求項4】
前記押さえ部材の上下方向における前記上傾斜面の形成幅が、前記下傾斜面の形成幅よりも大きくなっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の積層装置。
【請求項5】
前記押さえ部材の旋回方向側の先端部に面取り部を形成したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の積層装置。
【請求項6】
前記押さえ部材に対応して、前記吸着手段の周縁部に切欠き部を形成したことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の積層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば積層電池の製造過程等において用いられる積層装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層電池等を構成する積層体は、正極活物質の塗布された矩形シート状の正極箔と、負極活物質の塗布された矩形シート状の負極箔とが、絶縁性素材よりなる矩形シート状のセパレータを介して交互に積層されて形成されている。
【0003】
かかる積層体を製造するに際しては、一般に正極箔、負極箔、セパレータなどのシート体を所定の搬送装置を用いて順次、所定の積層位置へ搬送し載置していく方法などが採用される。
【0004】
また、シート体を積層(載置)するに際しては、当該シート体が位置ずれを起こさないよう、その縁部が押さえ爪等で押さえつけられる。
【0005】
しかしながら、同一の押さえ爪により、正極箔と負極箔とを区別なく押さえる構成では、押さえ爪が一方の電極箔(例えば正極箔)を押さえた際に付着した活物質(例えば正極活物質)が、他方の電極箔(例えば負極箔)を押さえる際に当該他方の電極箔に付着するおそれがある。
【0006】
また、シート体の四隅のうち、押さえていない箇所がある場合には、その箇所がめくれ、皺が寄ったり、折れ曲がった状態で、次のシート体が積層されてしまうおそれがある。
【0007】
上述したような各種不具合が発生した場合には、短絡の原因となるなど、製品品質の低下を招くおそれがある。
【0008】
これに鑑み、近年では、シート体の四隅に対応して、正極専用の押さえ爪と、負極専用の押さえ爪をそれぞれ4組設け、シート体の四隅を押えつつ積層する技術も見受けられる(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−78464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、押さえ爪が往復動する構成では、積層時にシート体の一部が一旦折れ曲がってしまうと、かかる箇所を伸ばすことができず、依然として製品品質の低下を招くおそれがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製品品質の低下抑制等を図ることのできる積層装置を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0013】
手段1.正極活物質の塗布された矩形シート状の正極箔と、負極活物質の塗布された矩形シート状の負極箔とを、絶縁性素材よりなる矩形シート状のセパレータを介して交互に積層してなる積層体を製造するための積層装置であって、
所定の吸着手段により順次、前記正極箔、負極箔又はセパレータを吸着して所定の積層位置へと搬送し、当該積層位置にて前記正極箔、負極箔又はセパレータを載置し積層していく搬送手段と、
前記積層位置に積層される積層体の四隅の各コーナー部にそれぞれ対応して設けられると共に、該コーナー部を構成する直交する2辺のうちの一方の辺に対向する位置にて上下方向を軸心として回転可能かつ上下方向に変位可能に設けられた4つの軸部と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記正極箔のコーナー部近傍を上から押さえるための正極押さえ部材と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記正極箔の上側に積層されるよう、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータのコーナー部近傍を上から押さえるための正極上セパレータ押さえ部材と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記負極箔のコーナー部近傍を上から押さえるための負極押さえ部材と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記負極箔の上側に積層されるよう、前記搬送手段により前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータのコーナー部近傍を上から押さえるための負極上セパレータ押さえ部材と、
前記軸部を回転させることにより、水平方向における前記各押さえ部材の位置を所定の一方向へ順次、旋回移動させる回転駆動手段と、
前記軸部を上下動させることにより、前記各押さえ部材の高さ位置を上下方向へ変位させる上下駆動手段とを備え、
前記搬送手段により新たに前記積層位置へ前記正極箔、負極箔又はセパレータを搬送し載置する際には、当該新たに載置した前記正極箔、負極箔又はセパレータを当該搬送手段により押さえた状態で、
その下に既に載置された前記正極箔、負極箔又はセパレータの四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する前記2辺のうちの一方の辺を押さえている前記4つの正極押さえ部材、前記4つの正極上セパレータ押さえ部材、前記4つの負極押さえ部材、又は、前記4つの負極上セパレータ押さえ部材をそれぞれ、所定量上昇させると共に、該押さえ部材の先端部が少なくとも前記各コーナー部を構成する前記2辺のうちの他方の辺の上を通り過ぎるように旋回移動させた後、
前記新たに載置した前記正極箔、負極箔又はセパレータの四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する前記2辺のうちの一方の辺を、これに対応する前記4つの正極押さえ部材、前記4つの正極上セパレータ押さえ部材、前記4つの負極押さえ部材、又は、前記4つの負極上セパレータ押さえ部材により押さえるよう構成され
前記各押さえ部材は、平板状をなし、少なくともその旋回方向側の側縁部において、該旋回方向へ向け下方傾斜した上傾斜面と、該旋回方向へ向け上方傾斜した下傾斜面とを備え、該旋回方向側の側縁部が該旋回方向へ向け先細りしていることを特徴とする積層装置。
【0014】
上記手段1によれば、正極箔、負極箔、セパレータなどのシート体を積層位置へ搬送し押さえつける搬送手段を備えると共に、正極箔を押さえる正極押さえ部材と、正極箔の上側のセパレータを押さえる正極上セパレータ押さえ部材と、負極箔を押さえる負極押さえ部材と、負極箔の上側のセパレータを押さえる負極上セパレータ押さえ部材とを別々に備えた構成となっている。
【0015】
かかる構成により、本手段によれば、所定の押さえ爪が一方の電極箔(例えば正極箔)を押さえた際に付着した活物質(例えば正極活物質)が、他方の電極箔(例えば負極箔)に付着するおそれがない。
【0016】
また、本手段では、正極箔、負極箔、セパレータなどのシート体の四隅すべてを押さえる構成となっているため、シート体の四隅のうちいずれかがめくれ、折れ曲がった状態で、次のシート体が積層されてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
【0017】
但し、仮にシート体を搬送手段により押さえることなく、押さえ部材の切換えを行おうとした場合には、例えばシート体の四隅においてそれぞれ、第1の押さえ部材(例えば正極押さえ部材)により所定のシート体(例えば正極箔)を押さえた状態で、さらにその上に別のシート体(例えばセパレータ)を重ね、当該シート体を第2の押さえ部材(例えば正極上セパレータ押さえ部材)により押さえた状態とし、その後、第1の押さえ部材を退避させるといったように、2種類の押さえ部材(第1の押さえ部材及び第2の押さえ部材)により同時に押さえた状態となるため、シート体に皺が発生するおそれがある。
【0018】
これに対し、本手段では、搬送手段によりシート体を押さえた状態で、四隅の押さえ部材(正極押さえ部材、正極上セパレータ押さえ部材、負極押さえ部材、負極上セパレータ押さえ部材)の切換えを行う構成となっている。すなわち、シート体の四隅すべてを同時に解放し、当該シート体を一旦平らにした後、当該シート体を押さえる構成となっているため、皺などが発生しにくい。
【0019】
加えて、搬送手段によりシート体をより広い範囲で均一に押えつけることが可能となるため、上記作用効果をさらに高めると共に、シート体の位置ずれ等も発生しにくくなる。
【0020】
さらに、本手段では、新たなシート体を載置する際(押さえ部材の切換えを行う際)、その下に既に載置されたシート体の四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する2辺のうちの一方の辺を押さえている押さえ部材を、該押さえ部材の先端部が少なくとも前記各コーナー部を構成する前記2辺のうちの他方の辺の上を通り過ぎるように旋回移動させる構成となっている。すなわち、押さえ部材がシート体のコーナー部の上を通り過ぎるように旋回移動する構成となっている。
【0021】
これにより、仮に新たに載置されたシート体のコーナー部に下側への折れ曲がりが発生した場合や、その下に既に載置されたシート体のコーナー部に上側への折れ曲がりが発生している場合には、上記押さえ部材の旋回動作により、かかる折れ曲がりを真っ直ぐに延ばすことができる。
【0022】
結果として、製品品質の低下抑制を図ることができる。
また、仮に押さえ部材の旋回方向側の側縁部が、旋回方向へ向け下方傾斜した上傾斜面のみを有する(旋回方向へ向け上方傾斜した下傾斜面がない)先細り形状となっている構成では、その上に新たに載置されたシート体のコーナー部に下側への折れ曲がりが発生した場合、該折れ曲がったシート体の先端部の下側に押さえ部材が入り込んでしまい、かかる折れ曲がりを真っ直ぐに延ばすことができないおそれがある。
逆に、押さえ部材の旋回方向側の側縁部が、旋回方向へ向け上方傾斜した下傾斜面のみを有する(旋回方向へ向け下方傾斜した上傾斜面がない)先細り形状となっている構成では、その下に既に載置されたシート体のコーナー部に上側への折れ曲がりが発生した場合、該折れ曲がったシート体の先端部の上側に押さえ部材が回り込んでしまい、かかる折れ曲がりを真っ直ぐに延ばすことができないおそれがある。
これに対し、本手段では、押さえ部材の旋回方向側の側縁部が、旋回方向へ向け下方傾斜した上傾斜面と、旋回方向へ向け上方傾斜した下傾斜面とを備えた先細り形状となっているため、シート体のコーナー部に上側又は下側へのどちらの折れ曲がりが発生した場合でも、上傾斜面又は下傾斜面により、折れ曲がったシート体の先端部を適正に誘導し、より確実に折れ曲がり部分を真っ直ぐに延ばすことができる。
また、押さえ部材の切換え等を行う際に、シート体がめくれるのを抑制する観点から見れば、押さえ部材の上昇量を比較的小さくすることが好ましい。しかしながら、1つの回動軸に対し複数の押さえ部材を一体形成し、これが旋回動作を行う構成においては、押さえ部材の切換え等を行う際、退避位置へ退避する第1の押さえ部材と、押さえ位置へ近づいてくる第2の押さえ部材とが同じ高さで動作するため、第1の押さえ部材により浮き上がったシート体の縁に、押さえ位置へ近づいてくる第2の押さえ部材が引っかかり、シート体がめくれてしまい、折れ曲がりや皺の原因となるおそれがある。
この点、本手段では、上記下傾斜面を備えることにより、上述した不具合の発生を抑制し、より円滑に押さえ部材の切換え等を行うことができる。
【0023】
手段2.前記正極押さえ部材、前記正極上セパレータ押さえ部材、前記負極押さえ部材、及び、前記負極上セパレータ押さえ部材が、前記正極箔、負極箔及びセパレータを積層する順序に従い、前記軸部の周方向に対し所定順序で配置されていることを特徴とする手段1に記載の積層装置。
【0024】
上記手段2によれば、例えば負極箔、セパレータ、正極箔、セパレータの順序でシート体を積層していく場合には、軸部の周方向に対し「負極押さえ部材」、「負極上セパレータ押さえ部材」、「正極押さえ部材」、「正極上セパレータ押さえ部材」の順に配置されることとなる。
【0025】
これにより、シート体が積層される毎に、軸部を所定の一方向へ順次回転させていくだけで、該シート体をそれぞれ専用の押さえ部材で押さえていくことができる。結果として、上記手段1に係る構成をより簡素な構成で実現することができ、上記手段1の作用効果もより確実なものとなる。ひいては、動作制御の簡素化を図ると共に、押さえ部材の切換え動作の高速化を図り、生産効率の向上を図ることができる。
【0026】
手段3.正極活物質の塗布された矩形シート状の正極箔と、負極活物質の塗布された矩形シート状の負極箔とを、絶縁性素材よりなる矩形シート状のセパレータを介して交互に積層してなる積層体を製造するための積層装置であって、
所定の吸着手段により順次、前記セパレータを吸着しつつ該セパレータを介して前記正極箔又は負極箔を吸着して所定の積層位置へと搬送し、当該積層位置にて前記正極箔又は負極箔の上に前記セパレータが重ねられるように、前記正極箔及びセパレータ、又は、前記負極箔及びセパレータを2枚一組で一度に載置し積層していく搬送手段と、
前記積層位置に積層される積層体の四隅の各コーナー部にそれぞれ対応して設けられると共に、該コーナー部を構成する直交する2辺のうちの一方の辺に対向する位置にて上下方向を軸心として回転可能かつ上下方向に変位可能に設けられた4つの軸部と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記搬送手段により前記正極箔と共に前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータのコーナー部近傍を上から押さえるための第1押さえ部材と、
前記各軸部から水平方向に延出すると共に、前記搬送手段により前記負極箔と共に前記積層位置へと搬送され載置された前記セパレータのコーナー部近傍を上から押さえるための第2押さえ部材と、
前記軸部を回転させることにより、水平方向における前記各押さえ部材の位置を所定の一方向へ順次、旋回移動させる回転駆動手段と、
前記軸部を上下動させることにより、前記各押さえ部材の高さ位置を上下方向へ変位させる上下駆動手段とを備え、
前記搬送手段により新たに前記積層位置へ前記正極箔及びセパレータ、又は、前記負極箔及びセパレータを搬送し載置する際には、当該新たに載置した前記正極箔及びセパレータ、又は、前記負極箔及びセパレータを当該搬送手段により押さえた状態で、
その下に既に載置された前記セパレータの四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する前記2辺のうちの一方の辺を押さえている前記第1押さえ部材又は前記第2押さえ部材をそれぞれ、所定量上昇させると共に、該押さえ部材の先端部が少なくとも前記各コーナー部を構成する前記2辺のうちの他方の辺の上を通り過ぎるように旋回移動させた後、
前記新たに載置した前記正極箔及びセパレータ、又は、前記負極箔及びセパレータの四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する前記2辺のうちの一方の辺を、これに対応する前記第1押さえ部材又は前記第2押さえ部材により押さえるよう構成され
前記各押さえ部材は、平板状をなし、少なくともその旋回方向側の側縁部において、該旋回方向へ向け下方傾斜した上傾斜面と、該旋回方向へ向け上方傾斜した下傾斜面とを備え、該旋回方向側の側縁部が該旋回方向へ向け先細りしていることを特徴とする積層装置。
【0027】
上記手段3によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏される。加えて、手段3によれば、正極箔又は負極箔の上にセパレータが重ねられるようにして、これらが2枚一組で一度に積み上げられることにより、生産効率の向上を図ることができる。
【0034】
手段.前記押さえ部材の上下方向における前記上傾斜面の形成幅が、前記下傾斜面の形成幅よりも大きくなっていることを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の積層装置。
【0035】
仮に押さえ部材の上に新たに載置されたシート体のコーナー部に下側への折れ曲がりが発生した場合、該折れ曲がったシート体の先端部は、その下に既に載置されたシート体に当接した状態となる。そのため、押さえ部材が浮き上がることを考慮すれば、押さえ部材の下傾斜面がそれほど大きくなくとも十分にその機能を果たすことが可能となる。一方、押さえ部材の下に既に載置されたシート体のコーナー部に上側への折れ曲がりが発生する場合、その折れ曲がり量はその都度異なり、折れ曲がりが比較的小さい場合もある。そのため、押さえ部材の上傾斜面が比較的小さい場合には、十分にその機能を果たさないおそれがある。
【0036】
この点、本手段によれば、シート体のコーナー部に上側又は下側へのどちらの折れ曲がりが発生した場合にもバランスよく対応することができる。
【0037】
手段.前記押さえ部材の旋回方向側の先端部に面取り部を形成したことを特徴とする手段1乃至4のいずれかに記載の積層装置。
【0038】
上記手段によれば、押さえ部材がシート体の折れ曲がりを延ばす際に、該シート体を傷つけてしまうおそれを低減することができる。
【0039】
手段.前記押さえ部材に対応して、前記吸着手段の周縁部に切欠き部を形成したことを特徴とする手段1乃至のいずれかに記載の積層装置。
【0040】
上記手段によれば、押さえ部材への干渉を避けつつ、シート体をより広範囲で吸着することが可能となる。ひいては、折れ曲がり等が発生し得るシート体の吸着手段からのはみ出し部分の面積を極力少なくすることができる。
【0041】
換言すれば、押さえ部材の延出長をより長くし、押さえ部材の旋回範囲をより大きくすることができるため、より広範囲でシート体の折れ曲がりを真っ直ぐに延ばすことができる。
【0042】
上記作用効果を高めるためには、略円弧状の切欠き部であることがより好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】積層体の構成を説明するための斜視図である。
図2】積層装置の概略構成を説明するための平面図である。
図3】積層台及び保持機構を示す平面図であって、保持部材の一動作態様(第1停止位置に負極押さえ爪が停止している状態)を示す図である。
図4】積層台及び保持機構を示す平面図であって、保持部材の一動作態様(第1停止位置に負極上セパレータ押さえ爪が停止している状態)を示す図である。
図5】積層台及び保持機構を示す平面図であって、保持部材の一動作態様(第1停止位置に正極押さえ爪が停止している状態)を示す図である。
図6】積層台及び保持機構を示す平面図であって、保持部材の一動作態様(第1停止位置に正極上セパレータ押さえ爪が停止している状態)を示す図である。
図7】積層台及び保持機構を示す平面図であって、保持部材の一動作態様(第1停止位置に間欠部が停止している状態)を示す図である。
図8】積層台及び保持機構を示す部分拡大平面図である。
図9】(a)は、吸着部によりシート体が吸着搬送された状態を示す模式図であり、(b)は、シート体を載置した状態を示す模式図であり、(c)は、シート体を押さえ爪で押さえた状態を示す模式図である。
図10】シート体に下側の折れ曲がりが発生した状態の積層体を示す側面模式図である。
図11】シート体に上側の折れ曲がりが発生した状態の積層体を示す側面模式図である。
図12】第2実施形態に係る積層台及び保持機構を示す平面図であって、保持部材の一動作態様(第1停止位置に負極・セパレータ押さえ爪が停止している状態)を示す図である。
図13】第2実施形態に係る積層台及び保持機構を示す平面図であって、保持部材の一動作態様(第1停止位置に正極・セパレータ押さえ爪が停止している状態)を示す図である。
図14】第2実施形態に係る積層台及び保持機構を示す平面図であって、保持部材の一動作態様(第1停止位置に押さえ爪が停止していない状態)を示す図である。
図15】別の実施形態に係る押さえ爪の構成を説明するための部分拡大断面図である。
図16】別の実施形態に係る押さえ爪の構成を説明するための部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
〔第1実施形態〕
以下、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1に示すように、リチウムイオン二次電池等の積層電池を構成する積層体4は、負極箔1、セパレータ2、正極箔3、セパレータ2がこの順序で、下から順に繰り返し積み上げられることで形成されている。
【0045】
負極箔1及び正極箔3は、矩形状の金属箔よりなる極箔本体1A,3Aの表裏両面に活物質1B,3Bが塗布形成されることにより構成されており、活物質1B,3Bが塗布形成されてなる塗工部と、極箔本体1A,3Aが露出してなる未塗工部とを有している。
【0046】
具体的に、負極箔1の極箔本体1Aは、例えば銅により構成され、正極箔3の極箔本体3Aは、例えばアルミニウムにより構成されている。また、負極箔1の表裏両面には、負極活物質として、例えばケイ素等を含有する粒子が塗布され、正極箔3の裏表両面には、正極活物質として、例えばコバルト酸リチウム等を含有する粒子が塗布されている。
【0047】
以下、特に正・負を区別する必要のないときには、負極箔1、正極箔3を総称して「電極箔1,3」と称することもある。同様に、電極箔1,3と、セパレータ2とを区別する必要のないときには、電極箔1,3、セパレータ2を総称して「シート体」と称することもある。
【0048】
セパレータ2は、絶縁性を有する矩形シート状の多孔質樹脂フィルムにより構成されており、負極箔1及び正極箔3の平面矩形状の塗工部(活物質1B,3B)よりも一回り大きい矩形状をなしている。
【0049】
適正な積層状態において、負極箔1及び正極箔3の塗工部は、セパレータ2によって完全に覆われ、はみ出しておらず、負極箔1及び正極箔3の未塗工部のみが、それぞれ異なる位置においてセパレータ2からはみ出すようにして突出している。当該各未塗工部は、負極タブ、正極タブに相当するものであり、積層電池の内部で電極端子の負極及び正極に対しそれぞれ電気的に接続される領域となる。
【0050】
図2は、積層装置(積層電池の製造装置)10の主要部分を示す概略構成図(平面図)である。同図に示すように、積層装置10は、セパレータ供給ステージ11、電極箔供給ステージ12、及び、積層ステージ13を備えている。
【0051】
セパレータ供給ステージ11上には、積層の都度、図示しないセパレータ供給手段によって、所定のパレット50に蓄積されている上記セパレータ2が1枚ずつ供給される。
【0052】
また、電極箔供給ステージ12上には、積層の都度、図示しない電極箔供給手段によって、所定のパレット60,61に蓄積されている負極箔1又は正極箔3が、交互に1枚ずつ供給される。
【0053】
積層装置10は、セパレータ供給ステージ11又は電極箔供給ステージ12から、積層ステージ13へ、セパレータ2又は電極箔1,3を搬送する搬送手段としての搬送装置14を備えている。
【0054】
搬送装置14は、上記各ステージ11〜13の上方を通るように設けられたガイドレール15と、当該ガイドレール15に垂下状態で支持された搬送アーム16と、当該搬送アーム16の下端に設けられた吸着手段としての吸着部17とを備えている。
【0055】
搬送アーム16は、図示しないモータ等の駆動手段によりガイドレール15に沿って移動可能に設けられていると共に、シリンダ等の駆動手段の作動により上下方向(図2では紙面奥行方向)に伸縮可能となっている。
【0056】
搬送アーム16がガイドレール15に沿って移動することにより、吸着部17もまた、ガイドレール15に沿って移動し、搬送アーム16が伸縮することにより、吸着部17が上下動するようになっている。
【0057】
吸着部17は、搬送アーム16の下端に固定されたベース部18と、当該ベース部18の下側に設けられた多孔質体からなる吸着板19とを有している(図9参照)。
【0058】
ベース部18の内部には、吸着板19に連通する吸引経路(図示略)が形成されている。また、ベース部18の外部には、前記吸引経路に連通するバキュームホース20が接続されている。バキュームホース20の他端側には、図示しないバキュームポンプが接続されている。そして、バキュームポンプが図示しない制御装置によってオンオフ制御されることにより、吸着部17(吸着板19)における吸着及び吸着解除を切替可能となっている。
【0059】
バキュームポンプがオン状態となると、バキュームホース20及び前記吸引経路を介して吸着板19から吸引が行われ、吸着板19の下面(吸着面)にセパレータ2又は電極箔1,3が吸着される〔図9(a)参照〕。
【0060】
尚、本実施形態では、後述する保持部材31(押さえ爪42)と干渉しないように、吸着部17の四隅にそれぞれ切欠き部21が形成されている(図3等参照)。これにより、シート体をより広範囲で吸着することが可能となり、折れ曲がり等が発生し得るシート体の吸着板19からのはみ出し部分の面積を極力少なくすることができる。
【0061】
一方、積層ステージ13上には、電極箔1,3及びセパレータ2を積層していく積層位置において、これらを載置し積層していくための積層台29が設けられている(図2,3等参照)。
【0062】
積層台29は、電極箔1,3及びセパレータ2よりも一回り大きな平面視略矩形状をなし、電極箔1,3及びセパレータ2は、自身の各辺が、積層台29の各辺に対し略平行するように載置される。
【0063】
尚、上述したように、電極箔1,3及びセパレータ2は、それぞれ大きさが異なり、適正な積層状態においても、電極箔1,3の未塗工部がセパレータ2からはみ出し、完全にはその周囲が一致しないように構成されているが、便宜上、図1を除く、その他の図面においては、電極箔1,3及びセパレータ2を同一矩形状で図示している。
【0064】
また、積層台29の周囲には、当該積層台29に積層された積層体4(電極箔1,3及びセパレータ2)を保持するための保持機構30が設けられている。
【0065】
保持機構30は、積層台29(積層体4)の四隅のコーナー部に対応して設けられた4つの保持部材31A,31B,31C,31Dを備えている。本実施形態に係る4つの保持部材31A,31B,31C,31Dは同期して動くように構成されている。以下、特に区別する必要のないときには、保持部材31A,31B,31C,31Dを総称して「保持部材31」と称することもある。
【0066】
次に保持部材31の構成について図3図7を参照して詳しく説明する。保持部材31は、上下方向(図3図7の紙面奥行方向)を軸心として回転可能かつ上下方向に変位可能に設けられた軸部40と、該軸部40の上端に設けられた平面視正五角形状の基部41と、該基部41の5辺のうちの4辺から軸部40の径方向外周側に向け延出した平板状の4つの押さえ爪42A,42B,42C,42Dとを備えている。以下、特に区別する必要のないときには、押さえ爪42A,42B,42C,42Dを総称して「押さえ爪42」と称することもある。
【0067】
保持部材31の軸部40は、積層台29(積層体4)の四隅の各コーナー部を構成する直交する2辺α,βのうちの一方の辺α〔本実施形態では、積層台29(積層体4)の4辺のうち、吸着部17の移動方向と平行する図2の左右方向に沿った2つの辺を辺αとする〕に対向する位置に設けられている。つまり、積層台29(積層体4)の4辺のうち、搬送装置14のガイドレール15を挟んで相対向する2つの辺αに沿って、2つの保持部材31(軸部40)がそれぞれ1組ずつ配置されている。
【0068】
軸部40は、回転駆動手段としてのサーボモータ(図示略)と接続されている。これにより、押さえ爪42を水平方向に旋回移動させることができる。
【0069】
但し、本実施形態では、保持部材31がそれぞれ所定の一方向へのみ回転するように構成されている。より詳しくは、上記1組の保持部材31のうち、積層台29(積層体4)の側面(辺α)に向かって左側に位置する保持部材31A,31Cは平面視で反時計回り方向に回転する一方、右側に位置する保持部材31B,31Dは平面視で時計回り方向に回転する。
【0070】
また、本実施形態では、保持部材31が上記一方向に72°(360°/5)ずつ間欠的に回転するように構成されている。これにより、押さえ爪42A,42B,42C,42Dがこの順序で第1停止位置X1から第5停止位置X5に対し順に移動していくこととなる。
【0071】
つまり上記1組の保持部材31のうち、回転方向の異なる左側の保持部材31A(31C)と、右側の保持部材31B(31D)とでは、押さえ爪42A,42B,42C,42D及び停止位置X1,X2,X3,X4,X5の並び順が逆方向となっている(図8参照)。
【0072】
より詳しくは、基部41の5辺のうち、押さえ爪42が設けられていない辺(以下、間欠部Kという)から、反回転方向に1つ目の辺に押さえ爪42Aが設けられている。また、間欠部Kから、反回転方向に2つ目の辺に押さえ爪42Bが設けられ、反回転方向に3つ目の辺に押さえ爪42Cが設けられ、反回転方向に4つ目の辺に押さえ爪42Dが設けられている。
【0073】
そして、押さえ爪42が第1停止位置X1に停止した場合に、該押さえ爪42の延出方向と、軸部40が対向する積層台29(積層体4)の辺αとが平面視で直交した状態となる。
【0074】
また、各保持部材31において、1つの押さえ爪42が第1停止位置X1に停止している場合には、他の3つの押さえ爪42が平面視で積層体4と重ならない位置に停止するように構成されている。つまり、押さえ爪42が第2停止位置X2〜第5停止位置X5にある場合には、該押さえ爪42は平面視で積層体4と重ならない状態となる。
【0075】
従って、積層台29(積層体4)上に載置されたシート体を押さえる場合には、該シート体のコーナー部近傍において該コーナー部を構成する直交する2辺α,βのうちの一方の辺αを、第1停止位置X1に停止した1つの押さえ爪42により押さえることとなる。
【0076】
軸部40は、上下駆動手段としてのエアシリンダ(図示略)と接続されている。これにより、上下方向における押さえ爪42の位置が、積層体4から上方へ離間した離間位置〔図10,11参照〕と、積層体4に当接可能な当接位置〔図9(a)〜(c)参照〕とに変位可能となる。尚、図9,10,11においては、積層台29に積層されたシート体の相互の間隔をあけ、積層体4を簡素化して図示している。
【0077】
本実施形態では、積層体4の最上面(積層開始時には積層台29上)に載置されたシート体の種類に応じて、積層体4を押さえる押さえ爪42A,42B,42C,42Dの種類が切換わる構成となっている。
【0078】
より詳しくは、積層体4の最上面に載置されたシート体が負極箔1である場合には、4つの押さえ爪42A〜42Dのうち、押さえ爪42Aが使用される。以下、「押さえ爪42A」を「負極押さえ爪42A」という。「負極押さえ爪42A」が本実施形態における「負極押さえ部材」に相当する。
【0079】
積層体4の最上面に載置されたシート体が、負極箔1の上側に積層されるセパレータ2である場合には、4つの押さえ爪42A〜42Dのうち、押さえ爪42Bが使用される。以下、「押さえ爪42B」を「負極上セパレータ押さえ爪42B」という。「負極上セパレータ押さえ爪42B」が本実施形態における「負極上セパレータ押さえ部材」に相当する。
【0080】
積層体4の最上面に載置されたシート体が正極箔3である場合には、4つの押さえ爪42A〜42Dのうち、押さえ爪42Cが使用される。以下、「押さえ爪42C」を「正極押さえ爪42C」という。「正極押さえ爪42C」が本実施形態における「正極押さえ部材」に相当する。
【0081】
積層体4の最上面に載置されたシート体が、正極箔3の上側に積層されるセパレータ2である場合には、4つの押さえ爪42A〜42Dのうち、押さえ爪42Dが使用される。以下、「押さえ爪42D」を「正極上セパレータ押さえ爪42D」という。「正極上セパレータ押さえ爪42D」が本実施形態における「正極上セパレータ押さえ部材」に相当する。
【0082】
次に、上記の積層装置10を用いた積層体4の積層手順について説明する。本実施形態では、負極箔1を積層する負極箔積層工程、その上にセパレータ2を積層する第1セパレータ積層工程、その上に正極箔3を積層する正極箔積層工程、その上にセパレータ2を積層する第2セパレータ積層工程をこの順序で、所定回数繰り返すことで、積層体4が製造される。
【0083】
負極箔積層工程が開始されると、先ず搬送装置14の吸着部17が電極箔供給ステージ12上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、電極箔供給ステージ12上に供給された負極箔1を吸着する。
【0084】
続いて、負極箔1を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される〔図9(a)参照〕。但し、図9では、既に積層台29上に複数のシート体が積層され、積層体4が存在する場合が図示されている。
【0085】
ここで、吸着部17は、負極箔1を吸着した状態のまま下降して、当該負極箔1を積層台29上へ載置する。そして、吸着部17は、負極箔1を下方(積層台29)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0086】
負極箔積層工程の開始当初、第1停止位置X1(押さえ位置)には間欠部Kが停止した状態となっている(図7参照)。つまり、第2停止位置X2に正極上セパレータ押さえ爪42Dが停止し、第3停止位置X3に正極押さえ爪42Cが停止し、第4停止位置X4に負極上セパレータ押さえ爪42Bが停止し、第5停止位置X5に負極押さえ爪42Aが停止している。
【0087】
積層台29上に負極箔1が載置されると、保持部材31が上昇し、押さえ爪42の高さ位置が、載置された負極箔1の高さ位置よりも高い位置となる。
【0088】
続いて、保持部材31を回転させ、負極押さえ爪42Aを第1停止位置X1(押さえ位置)へと旋回移動させる(図3参照)。同時に第2停止位置X2に間欠部Kが移動し、第3停止位置X3に正極上セパレータ押さえ爪42Dが移動し、第4停止位置X4に正極押さえ爪42Cが移動し、第5停止位置X5に負極上セパレータ押さえ爪42Bが移動する。
【0089】
負極押さえ爪42Aが第1停止位置X1(押さえ位置)へ移動すると、ここで保持部材31が下降する。これにより、負極押さえ爪42Aが、負極箔1上方に離間した離間位置から、負極箔1に当接可能な当接位置へと変位する。そして、負極箔1の四隅の各コーナー部近傍が負極押さえ爪42Aにより押さえられた状態となる〔図9(c)参照〕。
【0090】
負極押さえ爪42Aにより負極箔1の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、負極箔1の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、第1セパレータ積層工程へと移行する。
【0091】
尚、以下の各積層工程でも同様であるが、吸着部17による吸引停止(シート体の吸着解除)のタイミングは、上記タイミングによらず、吸着部17がシート体を下方へ押さえ付け、シート体が位置ズレ等を起こさない状態となった後であれば、いつでもよい。
【0092】
第1セパレータ積層工程が開始されると、吸着部17がセパレータ供給ステージ11上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、セパレータ供給ステージ11上に供給されたセパレータ2を吸着する。
【0093】
続いて、セパレータ2を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される〔図9(a)参照〕。
【0094】
ここで、吸着部17は、セパレータ2を吸着した状態のまま下降して、当該セパレータ2を上記負極箔1上へ載置する。そして、吸着部17は、セパレータ2を下方(負極箔1)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0095】
この際、負極箔1の各コーナー部近傍が負極押さえ爪42Aにより押さえられた状態が維持されており、吸着部17の周縁部より外方へはみ出したセパレータ2のはみ出し部分は、負極箔1を押さえている負極押さえ爪42Aの上に載った状態となる〔図9(b)参照〕。
【0096】
負極箔1上にセパレータ2が載置されると、各保持部材31は所定量上昇すると共に、回転する。これにより、負極押さえ爪42Aは、負極箔1から若干浮き上がった状態で、第1停止位置X1から第2停止位置X2へと旋回移動する。
【0097】
この際、負極押さえ爪42Aの先端部43は、少なくとも積層体4(負極箔1)の各コーナー部を構成する2辺α,βのうち、第1停止位置X1にて負極押さえ爪42Aが押さえていた一方の辺αとは異なる他方の辺βの上を通り過ぎるように旋回移動する。
【0098】
換言すれば、積層体4の1つの辺αに沿って設けられた上記1組の保持部材31においては、それぞれ押さえ爪42の先端部43が、該1つの辺αに対し直交する積層体4の2つの辺βのうち、軸部40からの距離が短い方の辺βの上を通り過ぎるように旋回移動する。つまり、上記1組の保持部材31のうち、左側に位置する保持部材31A,31Cにおいては、該1つの辺αに対し直交する2つの辺βのうち、左側の辺βの上を押さえ爪42の先端部43が通り過ぎるように旋回し、右側に位置する保持部材31B,31Dにおいては、該1つの辺αに対し直交する2つの辺βのうち、右側の辺βの上を押さえ爪42の先端部43が通り過ぎるように旋回する。
【0099】
これにより、仮に負極箔1のコーナー部に上側への折れ曲がりM1が発生している場合(図8,11参照)や、負極箔1の上に載置されたセパレータ2のコーナー部に下側への折れ曲がりM2が発生した場合(図10参照)には、負極押さえ爪42Aの旋回動作により、かかる折れ曲がりM1,M2が真っ直ぐに延ばされる。結果として、かかる負極箔1及びセパレータ2は、波打つことなく平坦な状態となり、適正に重なり合った状態となる。
【0100】
負極押さえ爪42Aと入れ替わるように、第1停止位置X1(押さえ位置)には、負極上セパレータ押さえ爪42Bが第5停止位置X5から旋回移動してくる(図4参照)。同時に第3停止位置X3に間欠部Kが移動し、第4停止位置X4に正極上セパレータ押さえ爪42Dが移動し、第5停止位置X5に正極押さえ爪42Cが移動する。
【0101】
負極上セパレータ押さえ爪42Bが第1停止位置X1(押さえ位置)へ移動すると、ここで保持部材31が下降する。これにより、負極上セパレータ押さえ爪42Bが、セパレータ2上方に離間した離間位置から、セパレータ2に当接可能な当接位置へと変位する。そして、セパレータ2の四隅の各コーナー部近傍が負極上セパレータ押さえ爪42Bにより押さえられた状態となる〔図9(c)参照〕。
【0102】
負極上セパレータ押さえ爪42Bによりセパレータ2の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、セパレータ2の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、正極箔積層工程へと移行する。
【0103】
正極箔積層工程が開始されると、吸着部17が電極箔供給ステージ12上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、電極箔供給ステージ12上に供給された正極箔3を吸着する。
【0104】
続いて、正極箔3を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される〔図9(a)参照〕。
【0105】
ここで、吸着部17は、正極箔3を吸着した状態のまま下降して、当該正極箔3を上記セパレータ2上へ載置する。そして、吸着部17は、正極箔3を下方(セパレータ2)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0106】
この際、セパレータ2の各コーナー部が負極上セパレータ押さえ爪42Bにより押さえられた状態が維持されており、吸着部17の周縁部より外方へはみ出した正極箔3のはみ出し部分は、セパレータ2を押さえている負極上セパレータ押さえ爪42Bの上に載った状態となる〔図9(b)参照〕。
【0107】
セパレータ2上に正極箔3が載置されると、各保持部材31は所定量上昇すると共に、回転する。これにより、負極上セパレータ押さえ爪42Bは、セパレータ2から若干浮き上がった状態で、第1停止位置X1から第2停止位置X2へと旋回移動する。
【0108】
この際、負極上セパレータ押さえ爪42Bの先端部43は、少なくとも積層体4(セパレータ2)の各コーナー部を構成する2辺α,βのうち、第1停止位置X1にて負極上セパレータ押さえ爪42Bが押さえていた一方の辺αとは異なる他方の辺βの上を通り過ぎるように旋回移動する。
【0109】
これにより、仮にセパレータ2のコーナー部に上側への折れ曲がりM1が発生している場合(図8,11参照)や、セパレータ2の上に載置された正極箔3のコーナー部に下側への折れ曲がりM2が発生した場合(図10参照)には、負極上セパレータ押さえ爪42Bの旋回動作により、かかる折れ曲がりM1,M2が真っ直ぐに延ばされる。結果として、かかるセパレータ2及び正極箔3は、波打つことなく平坦な状態となり、適正に重なり合った状態となる。
【0110】
負極上セパレータ押さえ爪42Bと入れ替わるように、第1停止位置X1(押さえ位置)には、正極押さえ爪42Cが第5停止位置X5から旋回移動してくる(図5参照)。同時に第3停止位置X3に負極押さえ爪42Aが移動し、第4停止位置X4に間欠部Kが移動し、第5停止位置X5に正極上セパレータ押さえ爪42Dが移動する。
【0111】
正極押さえ爪42Cが第1停止位置X1(押さえ位置)へ移動すると、ここで保持部材31が下降する。これにより、正極押さえ爪42Cが、正極箔3上方に離間した離間位置から、正極箔3に当接可能な当接位置へと変位する。そして、正極箔3の四隅の各コーナー部近傍が正極押さえ爪42Cにより押さえられた状態となる〔図9(c)参照〕。
【0112】
正極押さえ爪42Cにより正極箔3の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、正極箔3の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、第2パレータ積層工程へと移行する。
【0113】
第2セパレータ積層工程が開始されると、吸着部17がセパレータ供給ステージ11上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、セパレータ供給ステージ11上に供給されたセパレータ2を吸着する。
【0114】
続いて、セパレータ2を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される〔図9(a)参照〕。
【0115】
ここで、吸着部17は、セパレータ2を吸着した状態のまま下降して、当該セパレータ2を上記正極箔3上へ載置する。そして、吸着部17は、セパレータ2を下方(正極箔3)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0116】
この際、正極箔3の各コーナー部近傍が正極押さえ爪42Cにより押さえられた状態が維持されており、吸着部17の周縁部より外方へはみ出したセパレータ2のはみ出し部分は、正極箔3を押さえている正極押さえ爪42Cの上に載った状態となる〔図9(b)参照〕。
【0117】
正極箔3上にセパレータ2が載置されると、各保持部材31は所定量上昇すると共に、回転する。これにより、正極押さえ爪42Cは、正極箔3から若干浮き上がった状態で、第1停止位置X1から第2停止位置X2へと旋回移動する。
【0118】
この際、正極押さえ爪42Cの先端部43は、少なくとも積層体4(正極箔3)の各コーナー部を構成する2辺α,βのうち、第1停止位置X1にて正極押さえ爪42Cが押さえていた一方の辺αとは異なる他方の辺βの上を通り過ぎるように旋回移動する。
【0119】
これにより、仮に正極箔3のコーナー部に上側への折れ曲がりM1が発生している場合(図8,11参照)や、正極箔3の上に載置されたセパレータ2のコーナー部に下側への折れ曲がりM2が発生した場合(図10参照)には、正極押さえ爪42Cの旋回動作により、かかる折れ曲がりM1,M2が真っ直ぐに延ばされる。結果として、かかる正極箔3及びセパレータ2は、波打つことなく平坦な状態となり、適正に重なり合った状態となる。
【0120】
正極押さえ爪42Cと入れ替わるように、第1停止位置X1(押さえ位置)には、正極上セパレータ押さえ爪42Dが第5停止位置X5から旋回移動してくる(図6参照)。同時に第3停止位置X3に負極上セパレータ押さえ爪42Bが移動し、第4停止位置X4に負極押さえ爪42Aが移動し、第5停止位置X5に間欠部Kが移動する。
【0121】
正極上セパレータ押さえ爪42Dが第1停止位置X1(押さえ位置)へ移動すると、ここで保持部材31が下降する。これにより、正極上セパレータ押さえ爪42Dが、セパレータ2上方に離間した離間位置から、セパレータ2に当接可能な当接位置へと変位する。そして、セパレータ2の四隅の各コーナー部近傍が正極上セパレータ押さえ爪42Dにより押さえられた状態となる〔図9(c)参照〕。
【0122】
正極上セパレータ押さえ爪42Dによりセパレータ2の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、セパレータ2の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、2順目の負極箔積層工程へと移行する。
【0123】
2順目の負極箔積層工程が開始されると、吸着部17が電極箔供給ステージ12上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、電極箔供給ステージ12上に供給された負極箔1を吸着する。
【0124】
続いて、負極箔1を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される〔図9(a)参照〕。
【0125】
ここで、吸着部17は、負極箔1を吸着した状態のまま下降して、当該負極箔1をセパレータ2上へ載置する。そして、吸着部17は、負極箔1を下方(セパレータ2)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0126】
この際、セパレータ2の各コーナー部が正極上セパレータ押さえ爪42Dにより押さえられた状態が維持されており、吸着部17の周縁部より外方へはみ出した負極箔1のはみ出し部分は、セパレータ2を押さえている正極上セパレータ押さえ爪42Dの上に載った状態となる〔図9(b)参照〕。
【0127】
セパレータ2上に負極箔1が載置されると、各保持部材31は所定量上昇すると共に、回転する。これにより、正極上セパレータ押さえ爪42Dは、セパレータ2から若干浮き上がった状態で、第1停止位置X1から第2停止位置X2へと旋回移動する。
【0128】
この際、正極上セパレータ押さえ爪42Dの先端部43は、少なくとも積層体4(セパレータ2)の各コーナー部を構成する2辺α,βのうち、第1停止位置X1にて正極上セパレータ押さえ爪42Dが押さえていた一方の辺αとは異なる他方の辺βの上を通り過ぎるように旋回移動する。
【0129】
これにより、仮にセパレータ2のコーナー部に上側への折れ曲がりM1が発生している場合(図8,11参照)や、セパレータ2の上に載置された負極箔1のコーナー部に下側への折れ曲がりM2が発生した場合(図10参照)には、正極上セパレータ押さえ爪42Dの旋回動作により、かかる折れ曲がりM1,M2が真っ直ぐに延ばされる。結果として、かかるセパレータ2及び負極箔1は、波打つことなく平坦な状態となり、適正に重なり合った状態となる。
【0130】
正極上セパレータ押さえ爪42Dと入れ替わるように、第1停止位置X1(押さえ位置)には、間欠部Kが第5停止位置X5から旋回移動してくる(図7参照)。同時に第3停止位置X3に正極押さえ爪42Cが移動し、第4停止位置X4に負極上セパレータ押さえ爪42Bが移動し、第5停止位置X5に負極押さえ爪42Aが移動する。
【0131】
尚、2順目以降の負極箔積層工程においては、正極上セパレータ押さえ爪42Dは、第1停止位置X1から第2停止位置X2へと旋回移動した後(図7参照)、続けて第3停止位置X3へと旋回移動する。つまり、間欠部Kと入れ替わるように、第1停止位置X1(押さえ位置)には、負極押さえ爪42Aが第5停止位置X5から旋回移動してくる(図3参照)。同時に第2停止位置X2に間欠部Kが移動し、第4停止位置X4に正極押さえ爪42Cが移動し、第3停止位置X3に負極上セパレータ押さえ爪42Bが移動する。
【0132】
以降、上述したように、上記各種積層工程を所定回数繰り返すことで、下から順に負極箔1、セパレータ2、正極箔3、セパレータ2が繰り返し積み上げられた積層体4を得ることができる。
【0133】
尚、所定の第2セパレータ積層工程が終了し、積層体4が完成した場合には、第1停止位置X1(押さえ位置)に間欠部Kが旋回移動してきた状態で、各保持部材31の動作を停止させる。かかる状態で、図示しない取出装置により、完成した積層体4を積層台29から取り出すこととなる。
【0134】
以上詳述したように、本実施形態によれば、シート体を積層台29へ搬送し押さえつける搬送装置14(吸着部17)を備えると共に、負極箔1を押さえる負極押さえ爪42Aと、負極箔1の上側のセパレータ2を押さえる負極上セパレータ押さえ爪42Bと、正極箔3を押さえる正極押さえ爪42Cと、正極箔1の上側のセパレータ2を押さえる正極上セパレータ押さえ爪42Dとを別々に備えた構成となっている。
【0135】
かかる構成により、所定の押さえ爪42が一方の電極箔(例えば正極箔3)を押さえた際に付着した活物質(例えば正極活物質)が、他方の電極箔(例えば負極箔1)に付着するおそれがない。
【0136】
また、本実施形態では、シート体の四隅すべてを押さえる構成となっているため、シート体の四隅のうちいずれかがめくれ、折れ曲がった状態で、次のシート体が積層されてしまうといった不具合の発生を抑制することができる。
【0137】
さらに、本実施形態では、吸着部17によりシート体を押さえた状態で、シート体の四隅すべてを同時に解放し、当該シート体を一旦平らにした後、当該シート体を押さえる構成となっているため、皺や折れ曲がりなどの発生を抑制することができる。
【0138】
加えて、吸着部17によりシート体をより広い範囲で均一に押えつけることが可能となるため、上記作用効果をさらに高めると共に、シート体の位置ずれ等も発生しにくくなる。
【0139】
また、本実施形態では、新たなシート体を載置する際(押さえ爪42の切換えを行う際)、その下に既に載置されたシート体の四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する2辺α,βのうちの一方の辺αを第1停止位置X1にて押さえていた押さえ爪42の先端部43が、少なくとも前記2辺α,βのうちの他方の辺βの上を通り過ぎるように旋回移動する構成となっている。
【0140】
これにより、仮に新たに載置されたシート体のコーナー部に下側への折れ曲がりM2が発生した場合や、その下に既に載置されたシート体のコーナー部に上側への折れ曲がりM1が発生している場合には、押さえ爪42の旋回動作により、かかる折れ曲がりM1,M2を真っ直ぐに延ばすことができる。
【0141】
また、本実施形態では、シート体の積層順序に従い、軸部40の周方向に対し、「負極押さえ爪42A」、「負極上セパレータ押さえ爪42B」、「正極押さえ爪42C」、「正極上セパレータ押さえ爪42D」がこの順序で配置されている。これにより、シート体が積層される毎に、軸部40を所定の一方向へ順次回転させていくだけで、該シート体をそれぞれ専用の押さえ爪42で押さえていくことができる。結果として、動作制御の簡素化を図ると共に、押さえ爪42の切換え動作の高速化を図り、生産効率の向上を図ることができる。
【0142】
結果として、製品品質の低下抑制を図ることができる。
【0143】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、第1実施形態と同一構成部分については、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0144】
上記第1実施形態では、電極箔(負極箔1又は正極箔3)又はセパレータ2が1枚ずつ積層ステージ13に搬送され積層される構成を採用しているが、第2実施形態では、セパレータ2が多孔質素材により構成されていることを利用して、セパレータ2を介して負極箔1又は正極箔3を吸着し、電極箔(負極箔1又は正極箔3)及びセパレータ2が2枚1組で積層ステージ13へ搬送され、1度に積層台29(積層体4)へ載置される構成となっている。
【0145】
これに対応して、本実施形態に係る保持機構90は、積層台29(積層体4)の四隅のコーナー部に対応して設けられた4つの保持部材91A,91B,91C,91Dを備えている。本実施形態に係る4つの保持部材91A,91B,91C,91Dは同期して動くように構成されている。以下、特に区別する必要のないときには、保持部材91A,91B,91C,91Dを総称して「保持部材91」と称することもある。
【0146】
次に保持部材91の構成について図12図14を参照して詳しく説明する。保持部材91は、上下方向(図12図14の紙面奥行方向)を軸心として回転可能かつ上下方向に変位可能に設けられた軸部100と、該軸部100の上端に設けられた平面視正方形状の基部101と、該基部101の4辺のうちの相対向する所定の2辺から軸部100の径方向外周側に向け延出した平板状の2つの押さえ爪102A,102Bとを備えている。以下、特に区別する必要のないときには、押さえ爪102A,102Bを総称して「押さえ爪102」と称することもある。
【0147】
保持部材91の軸部100は、積層台29(積層体4)の四隅の各コーナー部を構成する直交する2辺α,βのうちの一方の辺α〔本実施形態では、積層台29(積層体4)の4辺のうち、吸着部17の移動方向と平行する図2の左右方向に沿った2つの辺を辺αとする〕に対向する位置に設けられている。つまり、積層台29(積層体4)の4辺のうち、搬送装置14のガイドレール15を挟んで相対向する2つの辺αに沿って、2つの保持部材91(軸部100)がそれぞれ1組ずつ配置されている。
【0148】
軸部100は、回転駆動手段としてのサーボモータ(図示略)と接続されている。これにより、押さえ爪102を水平方向に旋回移動させることができる。
【0149】
但し、本実施形態では、保持部材91がそれぞれ所定の一方向へのみ回転するように構成されている。より詳しくは、上記1組の保持部材91のうち、積層台29(積層体4)の側面(辺α)に向かって左側に位置する保持部材91A,91Cは平面視で反時計回り方向に回転する一方、右側に位置する保持部材91B,91Dは平面視で時計回り方向に回転する。
【0150】
また、本実施形態では、保持部材91が上記一方向に90°(360°/4)ずつ間欠的に回転するように構成されている。これにより、押さえ爪102A,102Bがこの順序で第1停止位置Y1から第4停止位置Y4に対し順に移動していくこととなる。
【0151】
つまり上記1組の保持部材91のうち、回転方向の異なる左側の保持部材91A(91C)と、右側の保持部材91B(91D)とでは、停止位置Y1,Y2,Y3,Y4の並び順が逆方向となっている(図12等参照)。
【0152】
そして、押さえ爪102が第1停止位置Y1に停止した場合に、該押さえ爪102の延出方向と、軸部100が対向する積層台29(積層体4)の辺αとが平面視で直交した状態となる。
【0153】
また、各保持部材91において、一方の押さえ爪102が第1停止位置Y1に停止している場合には、他の押さえ爪102が平面視で積層体4と重ならない位置に停止するように構成されている。
【0154】
従って、積層台29(積層体4)上に載置されたシート体を押さえる場合には、該シート体のコーナー部近傍において該コーナー部を構成する直交する2辺α,βのうちの一方の辺αを、第1停止位置Y1に停止した1つの押さえ爪102により押さえることとなる。
【0155】
軸部100は、上下駆動手段としてのエアシリンダ(図示略)と接続されている。これにより、上下方向における押さえ爪102の位置が、積層体4から上方へ離間した離間位置と、積層体4に当接可能な当接位置とに変位可能となる。
【0156】
本実施形態では、積層体4の最上面(積層開始時には積層台29上)に載置された1組のシート体の種類に応じて、積層体4を押さえる押さえ爪102A,102Bの種類が切換わる構成となっている。
【0157】
より詳しくは、積層体4の最上面に載置された2枚1組のシート体が、負極箔1とその上のセパレータ2との組(以下、「負極箔・セパレータ組1,2」という)である場合には、2つの押さえ爪102A,102Bのうち、押さえ爪102Aが使用される。以下、「押さえ爪102A」を「負極・セパレータ押さえ爪102A」という。「負極・セパレータ押さえ爪102A」が本実施形態における「第2押さえ部材」に相当する。
【0158】
積層体4の最上面に載置された2枚1組のシート体が、正極箔3とその上のセパレータ2との組(以下、「正極箔・セパレータ組3,2」という)である場合には、2つの押さえ爪102A,102Bのうち、押さえ爪102Bが使用される。以下、「押さえ爪102B」を「正極・セパレータ押さえ爪102B」という。「正極・セパレータ押さえ爪102B」が本実施形態における「第1押さえ部材」に相当する。
【0159】
次に、本実施形態に係る積層体4の積層手順について説明する。本実施形態では、負極箔・セパレータ組1,2を積層する負極箔・セパレータ積層工程、その上に正極箔・セパレータ組3,2を積層する正極箔・セパレータ積層工程をこの順序で、所定回数繰り返すことで、積層体4が製造される。
【0160】
負極箔・セパレータ積層工程が開始されると、先ず搬送装置14の吸着部17がセパレータ供給ステージ11上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、セパレータ供給ステージ11上に供給されたセパレータ2を吸着する。
【0161】
続いて、吸着部17は電極箔供給ステージ12上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、電極箔供給ステージ12上に供給された負極箔1を、セパレータ2を介して吸着する。
【0162】
その後、この負極箔・セパレータ組1,2を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される。
【0163】
ここで、吸着部17は、負極箔・セパレータ組1,2を吸着した状態のまま下降して、当該負極箔・セパレータ組1,2を2枚1組の状態のまま積層台29上へ載置する。そして、吸着部17は、負極箔・セパレータ組1,2を下方(積層台29)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0164】
負極箔・セパレータ積層工程の開始当初、第1停止位置Y1(押さえ位置)には押さえ爪102が停止しておらず、負極・セパレータ押さえ爪102Aが第4停止位置Y4に停止し、正極・セパレータ押さえ爪102Bが第2停止位置Y2に停止した状態となっている(図14参照)。
【0165】
積層台29上に負極箔・セパレータ組1,2が載置されると、保持部材91が上昇し、押さえ爪102の高さ位置が、載置された負極箔・セパレータ組1,2の高さ位置よりも高い位置となる。
【0166】
続いて、保持部材91を回転させ、負極・セパレータ押さえ爪102Aを第1停止位置Y1(押さえ位置)へと旋回移動させる(図12参照)。同時に第3停止位置Y3に正極・セパレータ押さえ爪102Bが移動する。
【0167】
負極・セパレータ押さえ爪102Aが第1停止位置Y1(押さえ位置)へ移動すると、ここで保持部材91が下降する。これにより、負極・セパレータ押さえ爪102Aが、負極箔・セパレータ組1,2の上方に離間した離間位置から、負極箔・セパレータ組1,2に当接可能な当接位置へと変位する。そして、負極箔・セパレータ組1,2の四隅の各コーナー部近傍が負極・セパレータ押さえ爪102Aにより押さえられた状態となる。
【0168】
負極・セパレータ押さえ爪102Aにより負極箔・セパレータ組1,2の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、負極箔・セパレータ組1,2の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、正極箔・セパレータ積層工程へと移行する。
【0169】
正極箔・セパレータ積層工程が開始されると、吸着部17がセパレータ供給ステージ11上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、セパレータ供給ステージ11上に供給されたセパレータ2を吸着する。
【0170】
続いて、吸着部17は電極箔供給ステージ12上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、電極箔供給ステージ12上に供給された正極箔3を、セパレータ2を介して吸着する。
【0171】
その後、正極箔・セパレータ組3,2を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される。
【0172】
ここで、吸着部17は、正極箔・セパレータ組3,2を吸着した状態のまま下降して、当該正極箔・セパレータ組3,2を2枚1組の状態のまま積層体4上へ載置する。そして、吸着部17は、正極箔・セパレータ組3,2を下方(積層体4)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0173】
この際、負極箔・セパレータ組1,2の各コーナー部近傍が負極・セパレータ押さえ爪102Aにより押さえられた状態が維持されており、吸着部17の周縁部より外方へはみ出した正極箔・セパレータ組3,2のはみ出し部分は、負極箔・セパレータ組1,2を押さえている負極・セパレータ押さえ爪102Aの上に載った状態となる。
【0174】
負極箔・セパレータ組1,2上に正極箔・セパレータ組3,2が載置されると、各保持部材91は所定量上昇すると共に、回転する。これにより、負極・セパレータ押さえ爪102Aは、負極箔・セパレータ組1,2から若干浮き上がった状態で、第1停止位置Y1から第2停止位置Y2へと旋回移動する。
【0175】
この際、負極・セパレータ押さえ爪102Aの先端部は、少なくとも積層体4の各コーナー部を構成する2辺α,βのうち、第1停止位置Y1にて負極・セパレータ押さえ爪102Aが押さえていた一方の辺αとは異なる他方の辺βの上を通り過ぎるように旋回移動する。
【0176】
これにより、仮に負極箔・セパレータ組1,2のコーナー部に上側への折れ曲がりM1が発生している場合(図11参照)や、負極箔・セパレータ組1,2の上に載置された正極箔・セパレータ組3,2のコーナー部に下側への折れ曲がりM2が発生した場合(図10参照)には、負極・セパレータ押さえ爪102Aの旋回動作により、かかる折れ曲がりM1,M2が真っ直ぐに延ばされる。結果として、かかる負極箔・セパレータ組1,2は、波打つことなく平坦な状態となり、適正に重なり合った状態となる。
【0177】
負極・セパレータ押さえ爪102Aは、第1停止位置Y1から第2停止位置Y2へと旋回移動した後、続けて第3停止位置Y3へと旋回移動する。つまり、負極・セパレータ押さえ爪102Aと入れ替わるように、正極・セパレータ押さえ爪102Bは、第3停止位置Y3から第4停止位置Y4へと旋回移動した後、続けて第1停止位置Y1へと旋回移動する。
【0178】
正極・セパレータ押さえ爪102Bが第1停止位置Y1(押さえ位置)へ移動すると、ここで保持部材91が下降する。これにより、正極・セパレータ押さえ爪102Bが、正極箔・セパレータ組3,2の上方に離間した離間位置から、正極箔・セパレータ組3,2に当接可能な当接位置へと変位する。そして、正極箔・セパレータ組3,2の四隅の各コーナー部近傍が正極・セパレータ押さえ爪102Bにより押さえられた状態となる。
【0179】
正極・セパレータ押さえ爪102Bにより正極箔・セパレータ組3,2の四隅が押さえられた状態となると、吸着部17による吸引を停止し、正極箔・セパレータ組3,2の吸着を解除する。そして、吸着部17が上昇し、2順目の負極箔・セパレータ積層工程へと移行する。
【0180】
2順目の負極箔・セパレータ積層工程が開始されると、吸着部17がセパレータ供給ステージ11上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、セパレータ供給ステージ11上に供給されたセパレータ2を吸着する。
【0181】
続いて、吸着部17は電極箔供給ステージ12上へと案内される。ここで、吸着部17は、下降して、電極箔供給ステージ12上に供給された負極箔1を、セパレータ2を介して吸着する。
【0182】
その後、この負極箔・セパレータ組1,2を吸着した吸着部17が、積層ステージ13の積層台29上へと案内される。
【0183】
ここで、吸着部17は、負極箔・セパレータ組1,2を吸着した状態のまま下降して、当該負極箔・セパレータ組1,2を2枚1組の状態のまま正極箔・セパレータ組3,2上へ載置する。そして、吸着部17は、負極箔・セパレータ組1,2を下方(正極箔・セパレータ組3,2)へ押さえ付けた状態で停止する。
【0184】
この際、正極箔・セパレータ組3,2の各コーナー部近傍が正極・セパレータ押さえ爪102Bにより押さえられた状態が維持されており、吸着部17の周縁部より外方へはみ出した負極箔・セパレータ組1,2のはみ出し部分は、正極箔・セパレータ組3,2を押さえている正極・セパレータ押さえ爪102Bの上に載った状態となる。
【0185】
正極箔・セパレータ組3,2上に負極箔・セパレータ組1,2が載置されると、各保持部材91は所定量上昇すると共に、回転する。これにより、正極・セパレータ押さえ爪102Bは、正極箔・セパレータ組3,2から若干浮き上がった状態で、第1停止位置Y1から第2停止位置Y2へと旋回移動する。
【0186】
この際、正極・セパレータ押さえ爪102Bの先端部は、少なくとも積層体4の各コーナー部を構成する2辺α,βのうち、第1停止位置Y1にて正極・セパレータ押さえ爪102Bが押さえていた一方の辺αとは異なる他方の辺βの上を通り過ぎるように旋回移動する。
【0187】
これにより、仮に正極箔・セパレータ組3,2のコーナー部に上側への折れ曲がりM1が発生している場合(図11参照)や、正極箔・セパレータ組3,2の上に載置された負極箔・セパレータ組1,2のコーナー部に下側への折れ曲がりM2が発生した場合(図10参照)には、正極・セパレータ押さえ爪102Bの旋回動作により、かかる折れ曲がりM1,M2が真っ直ぐに延ばされる。結果として、かかる正極箔・セパレータ組3,2は、波打つことなく平坦な状態となり、適正に重なり合った状態となる。
【0188】
正極・セパレータ押さえ爪102Bは、第1停止位置Y1から第2停止位置Y2へと旋回移動した後、続けて第3停止位置Y3へと旋回移動する。つまり、正極・セパレータ押さえ爪102Bと入れ替わるように、負極・セパレータ押さえ爪102Aは、第3停止位置Y3から第4停止位置Y4へと旋回移動した後、続けて第1停止位置Y1へと旋回移動する。
【0189】
以降、上述したように、上記各種積層工程を所定回数繰り返すことで、下から順に負極箔1、セパレータ2、正極箔3、セパレータ2が繰り返し積み上げられた積層体4を得ることができる。
【0190】
尚、所定の正極箔・セパレータ積層工程が終了し、積層体4が完成した場合には、正極・セパレータ押さえ爪102Bが第2停止位置Y2へと旋回移動し、負極・セパレータ押さえ爪102Aが第4停止位置Y4へ旋回移動した状態で、各保持部材91の動作を停止させる。かかる状態で、図示しない取出装置により、完成した積層体4を積層台29から取り出すこととなる。
【0191】
以上詳述したように、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。加えて、本実施形態によれば、正極箔3又は負極箔1の上にセパレータ2が重ねられるようにして、これらが2枚一組で一度に積み上げられることにより、生産効率の向上を図ることができる。
【0192】
尚、上述した実施形態の記載内容に限定されることなく、例えば次のように実施してもよい。
【0193】
(a)上記各実施形態では、積層装置10により積層電池に係る積層体4が製造される構成となっているが、これに限らず、例えば積層装置10によって、リチウムイオンキャパシタや電解コンデンサ等に係る積層体を製造する構成としてもよい。
【0194】
(b)上記各実施形態に係る積層体4は、負極箔1、セパレータ2、正極箔3、セパレータ2がこの順序で、下から順に繰り返し積み上げられるようにして積層形成されているが、勿論、積層順序はこれに限定されるものではない。例えば、正極箔3、セパレータ2、負極箔1、セパレータ2の順序で、下から順に繰り返し積み上げられるようにしてもよい。
【0195】
また、第1実施形態においては、最下層にセパレータ2が位置する構成としてもよい。つまり、セパレータ2、負極箔1、セパレータ2、正極箔3の順序で、下から順に繰り返し積み上げられるようにしてもよいし、セパレータ2、正極箔3、セパレータ2、負極箔1の順序で、下から順に繰り返し積み上げられるようにしてもよい。
【0196】
勿論、第1実施形態において、シート体の積層順序を異ならせた場合には、軸部40の周方向に対する「負極押さえ爪42A」、「負極上セパレータ押さえ爪42B」、「正極押さえ爪42C」及び「正極上セパレータ押さえ爪42D」の配置順序も、該シート体の積層順序に従い異なるものとなる。
【0197】
(c)シート体としての電極箔1,3及びセパレータ2の材質や形状等は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば上記各実施形態では、セパレータ2が多孔質樹脂フィルムにより構成されているが、絶縁性の不織布により構成してもよい。
【0198】
(d)搬送手段や吸着手段の構成は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、多孔質体からなる吸着板(多孔質吸着板)19を採用しているが、これに限らず、多孔式吸着板を採用してもよい。
【0199】
また、上記各実施形態では、押さえ爪42,102と干渉しないように、吸着部17の四隅にそれぞれ略円弧状の切欠き部21が形成された構成となっているが、これに代えて、直線状に切り欠いた切欠き部を採用してもよい。また、切欠き部を省略し、平面視略長方形状の吸着部を採用してもよい。
【0200】
また、上記各実施形態では、各供給ステージ11,12に供給された各シート体を、1つの搬送装置14を用いて積層ステージ13へ搬送する構成となっているが、例えば第1実施形態においては、これに代えて、各シート体にそれぞれ対応した複数の搬送装置を用意し、各搬送装置を用いて、積層ステージ13に対し各シート体を交互に搬送し積層する構成としてもよい。かかる場合には、これら複数の搬送装置により、本実施形態における搬送手段が構成されることとなる。
【0201】
また、上記各実施形態では、負極箔1及び正極箔3共通の電極箔供給ステージ12が設けられているが、これに限らず、それぞれ別の電極箔供給ステージ12が設けられる構成としてもよい。すなわち、負極箔供給ステージ及び正極箔供給ステージがそれぞれ別に設けられていてもよい。
【0202】
(e)上記各実施形態では、保持部材31,91の回転駆動手段としてサーボモータが採用され、上下駆動手段としてエアシリンダが採用されているが、各種駆動手段はこれに限定されるものではない。例えばカム機構など他の駆動手段を採用してもよい。また、回転駆動手段と上下駆動手段を1つの駆動機構により具現化した構成としてもよい。
【0203】
(f)上記各実施形態では、積層台29(積層体4)の4辺のうち、吸着部17の移動方向と平行する2つの辺αに沿って、2つの保持部材31,91がそれぞれ1組ずつ配置された構成となっている。
【0204】
これに限らず、積層台29(積層体4)の4辺のうち、吸着部17の移動方向と直交する2つの辺βに沿って、2つの保持部材31,91がそれぞれ1組ずつ配置された構成としてもよい。
【0205】
また、積層台29(積層体4)の4辺(2つの辺αと、2つの辺β)に対し、それぞれ1つずつ保持部材31,91が配置された構成としてもよい。例えば積層台29(積層体4)の各辺α,βに向かって、該辺α,βの右端部近傍位置に1つずつ保持部材31,91を設けた構成としてもよい。かかる場合、各保持部材31,91の回転方向は、全て時計回り方向となる。勿論、各辺α,βに向かって、該辺α,βの左端部近傍位置に1つずつ保持部材31,91を設けた構成としてもよい。
【0206】
また、4つの保持部材31,91のうち、1つの保持部材31,91だけが1つ辺βに設けられ、残り3つの保持部材31,91が辺α(一方の辺αに2つと、他方の辺αに1つ)に設けられた構成としてもよいし、2つの保持部材31,91が1つの辺βに設けられ、2つの辺αに対しそれぞれ1つずつ保持部材31,91が設けられた構成としてもよい。
【0207】
要するに、積層台29(積層体4)の四隅のコーナー部に対応して、それぞれ1つずつ保持部材31,91が設けられていれば、いかなる構成を採用してもよい。
【0208】
(g)上記第1実施形態では、完成した積層体4を積層台29から取り出す際に、取り出しやすいように、保持部材31に間欠部Kを設けた関係上、軸部40の周方向に対する4つの押さえ爪42A,42B,42C,42Dの形成ピッチが等間隔(90°間隔)となっていないが、これに代えて、軸部40の周方向に対する4つの押さえ爪42A,42B,42C,42Dの形成ピッチが等間隔(90°間隔)となるように構成してもよい。
【0209】
(h)上記各実施形態では、積層体4の積層作業の開始当初、第1停止位置X1,Y1(押さえ位置)に押さえ爪42,102が停止しておらず、積層台29上に直接シート体が載置される構成となっている。
【0210】
これに代えて、積層体4の積層作業の開始当初、所定の押さえ爪42,102(正極上セパレータ押さえ爪42D、正極・セパレータ押さえ爪102B)が第1停止位置X1,Y1に事前に停止している構成としてもよい。
【0211】
かかる構成により、積層台29上に最初に載置されるシート体の下側への折れ曲がりM2に対応することができる。但し、積層体4の最上面や最下面は、積層体4の完成後においても折れ曲がりM1,M2を検出しやすく、修復することが容易な部分であるため、積層過程において、その都度、押さえ爪42,102により修復する必要性は低い。
【0212】
(i)上記各実施形態では、特に言及していないが、押さえ爪42,102の形状は上記各実施形態に限定されるものではない。
【0213】
例えば上記各実施形態では、押さえ爪42,102は、上下方向かつ旋回方向に沿った断面視で略長方形状に形成されている。
【0214】
これに代えて、例えば図15に示すように、押さえ爪42,102の旋回方向側(図15左側)の側縁部120において、該旋回方向へ向け下方傾斜した上傾斜面121と、該旋回方向へ向け上方傾斜した下傾斜面122とを備え、該旋回方向側の側縁部120が該旋回方向へ向け先細りした構成としてもよい。これにより、シート体のコーナー部に上側又は下側へのどちらの折れ曲がりM1,M2(図10,11参照)が発生した場合でも、上傾斜面121又は下傾斜面122により、折れ曲がったシート体の先端部を適正に誘導し、より確実に折れ曲がり部分を真っ直ぐに延ばすことができる。
【0215】
(j)図15に示す例では、押さえ爪42,102の上下方向における上傾斜面120の形成幅H1と、下傾斜面122の形成幅H2とが同一となっているが、図16に示すように、押さえ爪42,102の上下方向における上傾斜面120の形成幅H1が、下傾斜面122の形成幅H2よりも大きくなった構成としてもよい。
【0216】
仮に押さえ爪42,102の上に新たに載置されたシート体のコーナー部に下側への折れ曲がりM2が発生した場合、該折れ曲がったシート体の先端部は、その下に既に載置されたシート体に当接した状態となる(図10参照)。そのため、押さえ爪42,102が浮き上がることを考慮すれば、押さえ爪42,102の下傾斜面122がそれほど大きくなくとも十分にその機能を果たすことが可能となる。一方、押さえ爪42,102の下に既に載置されたシート体のコーナー部に上側への折れ曲がりM1が発生する場合、その折れ曲がり量はその都度異なり、折れ曲がりM1が比較的小さい場合もある。そのため、押さえ爪42,102の上傾斜面121が比較的小さい場合には、十分にその機能を果たさないおそれがある。
【0217】
この点、前記構成によれば、シート体のコーナー部に上側又は下側へのどちらの折れ曲がりM1,M2が発生した場合にもバランスよく対応することができる。
【0218】
(k)上述した(i),(j)に記載したように、押さえ爪42,102の旋回方向側の側縁部120が該旋回方向へ向け先細りした構成の下では、その旋回方向側の先端部に面取り部125を形成した構成としてもよい。かかる構成により、押さえ爪42,102がシート体の折れ曲がりM1,M2を延ばす際に、該シート体を傷つけてしまうおそれを低減することができる。勿論、面取り部125の形状も図15,16に示すような略円弧状に限定されるものではなく、他の形状を採用してもよい。
【符号の説明】
【0219】
1…負極箔、2…セパレータ、3…正極箔、4…積層体、10…積層装置、13…積層ステージ、14…搬送装置、17…吸着部、19…吸着板、29…積層台、30…保持機構、31A,31B,31C,31D…保持部材、40…軸部、42A,42B,42C,42D…押さえ爪、K…間欠部、M1,M2…折れ曲がり、X1,X2,X3,X4,X5…停止位置、α,β…辺。
【要約】
【課題】製品品質の低下抑制等を図ることのできる積層装置を提供する。
【解決手段】積層装置は、積層台29へシート体を吸着搬送する搬送装置(吸着部17)と、積層台29に積層されたシート体を保持する保持機構30とを備えている。保持機構30は、積層台29の四隅に対応して設けられた4つの保持部材31を備え、各保持部材31は、回転可能かつ上下方向に変位可能な軸部40と、該軸部40から外周側に向け延出し各シート体に対応して設けられた4つの押さえ爪42とを備えている。そして、新たなシート体を載置する際には、その下に既に載置されたシート体の四隅の各コーナー部近傍にて、該コーナー部を構成する2辺α,βのうちの一方の辺αを第1停止位置X1にて押さえていた押さえ爪42の先端部43が、少なくとも前記2辺α,βのうちの他方の辺βの上を通り過ぎるように旋回移動する。
【選択図】 図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16