(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
二次イオン質量分析法(SecondaryIon Mass Spectrometry)は、高感度な深さ方向分析ができる分析手法として、主に半導体材料中の不純物濃度の評価等に用いられている。ダイナミックSIMSは常に一次イオンによるスパッタリングが行われるため、一般に深さ方向の分解能が優れている。しかし、試料の表面側に高濃度の測定元素を含む層がある場合や、試料の表面形状が凹凸である場合に、深さ方向の分解能が低下しやすい。試料の表面側に高濃度の測定元素を含む層があると、測定によって測定元素が基板に押し込まれる現象、いわゆるノックオン効果が起きるためである。また、測定は、表面の凹凸にしたがって一次イオンにより表面をスパッタリングしながら行うので、試料の高さが高い領域と低い領域の不純物を同時に検出してしまうからである。
【0003】
その対策として、試料の裏面側からSIMS測定を行う方法がある。その方法は、Substrate Side Depth Profile (SSDP)−SIMS法またはバックサイド−SIMS法と呼ばれる。以下、SSDP−SIMS法と呼ぶ。
【0004】
SSDP−SIMS法に用いる試料において、深さ方向の分解能を高めるためには、二つのことが主に行われている。第1に、試料の裏面から分析層の近くまで、分析対象でない領域を取り除き試料を薄片化している。薄片化する裏面は、分析対象の層と平行にしなければならない。一般的にSIMSでは、測定領域である数十μm角から数百μm角の領域を一次イオンでスキャンしながら測定するため、分析対象の層と平行に裏面が研磨されなければ、深さ方向の情報を切り分けることができないからである。第2に、薄片化試料の裏面をできるかぎり凹凸の少ない平面にしている。これは、表面側からの測定と同じように、分析する表面に凹凸があると、深さ方向の分解能の低下を防ぐことができないからである。
【0005】
上記のようにSSDP−SIMS法に用いる試料は、試料の裏面を分析層近くまで分析対象の層と平行になるように薄片化し、かつ薄片化した裏面の面に凹凸がないように加工する必要があるが、一般的に、その加工は困難である。特許文献1には、試料の表面から縦孔を空け、その縦孔が露出するところまで裏面を研磨して、所望の厚さに試料を薄片化する方法が開示されている。縦孔は試料を研磨する目安として用い、試料の膜厚は他の測定機器により測定している。具体的には、深さの異なる縦孔を設け、深い縦孔は荒削り用として用いて、最終的に浅い縦孔まで薄片化する方法が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示す方法は、縦孔の露出により研磨量を決めているので、研磨後の試料の膜厚について、概算の膜厚はわかるが正確な残り膜厚がわからない。正確な残り膜厚を知るためには、別の方法で膜厚を測定しなければならない。そのため、複数の縦孔を用いて研磨しても、裏面を試料表面と平行に研磨できているか容易に判断できない。また、深さの異なる縦孔を複数個設けなければならないため、工程が煩雑となる。
【0008】
また、従来の試料の研磨方法では、裏面を試料表面と平行に研磨することが困難である。そのため、裏面から行うSIMS測定は、深さ分解能を向上させることが困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情を考慮してなされたものである。本発明の課題は、試料を裏面から研磨して薄片化試料を作製する方法において、試料裏面を試料表面と平行に薄片化を行う試料の作製方法および深さ分解能の高い元素プロファイルを分析する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、試料の一方の面に、同じテーパ状の側壁で、同じ任意の深さの第1縦孔を、2つ以上形成する第1工程と、試料の他方の面側から研磨を実施して、少なくとも2つの第1縦孔を貫通させて、少なくとも2つの第2縦孔を形成する第2工程と、少なくとも2つの第2縦孔において、試料の他方の面側から第2縦孔の断面形状を光学的手段を用いて観察し、第2縦孔の断面の面積を求める第3工程と、少なくとも2つの第2縦孔において、少なくとも2つの第2縦孔の断面の面積が等しくなるように、試料の他方の面側から研磨する第4工程を含むことを特徴とする試料作製方法である。
【0011】
試料の他方の面側から研磨を実施して、第1縦孔を貫通させ縦孔を、第2縦孔と定義する。本発明では、第1縦孔の側壁がテーパ状に形成されているので、貫通した第2縦孔の断面形状と断面の面積は、研磨された膜厚、つまり残り膜厚によって変化する。具体的には、試料の表側から見て側壁が順テーパの場合、研磨量が少なく残膜が厚い貫通した縦孔の断面の面積は、研磨量が多く残膜が薄い貫通した縦孔の断面の面積より、大きい。そのため、少なくとも2以上の第2縦孔の断面形状と断面の面積を比較すれば、それらの第2縦孔の残り膜厚について、大小関係を知ることができる。それらの第2縦孔の断面形状から求めた断面の面積が同等になるように研磨を調整することにより、試料裏面を試料表面と平行に薄片化することができる。
【0012】
好ましくは、第1縦孔に導電性物質を埋め込む工程を、第1工程の後に行い、第2の工程において、第1縦孔の貫通を電気的手段で判断することを特徴とする試料作製方法である。
【0013】
例えば、貫通した縦孔の断面の面積が小さい場合、光学的手段より電気的手段の方が、第1縦孔の貫通を容易に判断することができる。
【0014】
さらに、好ましくは、導電性物質が導電性ペーストであることを特徴とする試料作製方法である。
【0015】
導電性ペーストは流動性を有するので、導電性物質を容易に縦孔に充填することが可能である。
【0016】
上記に示した試料作製方法で作製した試料を用い、試料の一方の面から、第2縦孔の周辺領域を、二次イオン質量分析法で元素の濃度分布を分析する工程を含む、試料分析方法である。
【0017】
試料の裏面は、試料表面と平行に所望の膜厚で薄片化されているので、二次イオン質量分析法において、深さ分解能の高い分析を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、試料の裏面を試料表面と平行に薄片化することができる。その裏面が薄片化された試料を用いることにより、深さ分解能の高いSSDP−SIMS分析を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の試料作製方法の一態様を、
図1から
図3を用いて説明する。
【0022】
図1(A)は、試料500の表面に、側壁がテーパ状の第1縦孔100を開口した状態の図である。また、
図1(A)−1は、試料500の表面から見た上面図である。
図1(A)−2は、試料500の裏面から見た上面図である。また、
図1(A)−3は、試料500の第1縦孔100aの断面図である。
図1(A)−4は、試料500の第1縦孔100bと第1縦孔100cの断面図である。
【0023】
(第1縦孔100について)
まず、試料500の表面に、孔の深さ、側壁のテーパ形状(テーパ角等)が同一である第1縦孔100を、2つ以上形成する。たとえば、
図1(A)−1に示すように、第1縦孔100a、第1縦孔100b、第1縦孔100cを設ける。2つ以上の第1縦孔100で貫通を確認することにより、研磨が試料表面と平行にできているかを確認することができるからである。
【0024】
第1縦孔100の試料表面から見た形状(開口形状)は、四角形が好ましい。例えば、開口形状は、一辺が15μm、もう一辺が10μmの長方形を用いることができる。
【0025】
第1縦孔100の深さは、研磨後の試料500の膜厚に応じて、任意の深さにすればよいが、一般的に、1μm以上10μm未満が好ましい。第1縦孔100を形成することが容易だからである。
【0026】
第1縦孔100の側壁はテーパ状に形成する。第1縦孔100の側壁面と第1縦孔100の底面とのなす角をテーパ角と定義する。テーパ角は、90°で無ければよく、90°以上であってもよいが、30°以上80°未満が好ましい。後述する、光学的手段を用いて、断面形状の観察を行いやすくするためである。
【0027】
(第1縦孔100の形成について)
上記に示す第1縦孔100の形成は、集束イオンビーム(Focused ion beam 以下、FIBと呼ぶ)で行うことができる。また、第1縦孔100の形成は、フォトリソグラフィー工程によりレジストパターンを形成したのち、ドライエッチング、またはウエットエッチングを用いて形成することもできる。
【0028】
(試料500について)
試料500は、たとえばシリコンウェハーのようなバルク試料でも、ガラス基板等に堆積膜を成膜した試料でもよい。試料500の表面は平滑であることが好ましい。裏面を平坦に研磨するためである。
【0029】
(裏面研磨について)
次に、第1縦孔100を形成していない裏面を、第1縦孔100が貫通するまで研磨する。第1縦孔を貫通させ縦孔を、第2縦孔と呼ぶ。
図1(B)−1は、試料500の表面から見た上面図である。
図1(B)−2は、試料500の裏面から見た上面図である。また、
図1(B)−3は、試料500の第2縦孔200aの断面図である。
図1(B)−4は、試料500の第2縦孔200bと第2縦孔200cの断面図である。なお、
図1(B)は、研磨の一例であり、試料表面と平行に研磨できていないことを強調して、図示している。
【0030】
研磨は、一般的な機械研磨装置を用いればよい。機械研磨装置による研磨の一例を、以下示す。まず、試料500の表面と支持基板600(支持基板600は図示しない)を貼り合わせる。貼り合わせる接着剤はエポキシ樹脂等が好ましい。研磨した試料を高真空のチャンバー等にいれて分析するため、ベーク後、揮発成分の放出が少ない接着剤が好ましい。次に、接着剤を熱により硬化させ、試料500と支持基板600を固着させる。試料500と研磨装置は、支持基板600を介して、たとえばホットメルト接着剤のようなワックスで仮止めすればよい。研磨は通常の用法を用いればよく、研磨面が第1縦孔100の底から数μmの距離までは、ダイヤモンドフィルム等の研磨紙で研磨すればよい。研磨面が、第1縦孔100の底から数μmの距離になった後は、ダイヤモンドまたは酸化アルミニウム等の研磨剤や懸濁液をしみ込ませた研磨布により、第1縦孔100が貫通するまで研磨すればよい。第1縦孔100が貫通しているかの確認は、光学顕微鏡等で判断することができる。
【0031】
(裏面からの第2縦孔の断面観察について)
次に、裏面の研磨が試料表面と平行にできているか確認するため、第2縦孔200aから第2縦孔200cの断面形状を、光学的手段を用いて観察する。それらの孔の断面形状から、それぞれの孔の断面の面積を求める。この観察は裏面側から行う。光学的手段としては、光学顕微鏡、電子顕微鏡等を用いることができるが、光学顕微鏡を用いることが好ましい。
【0032】
図2−(1)は、試料500の表面から見た上面図である。
図2−(2)は、試料500の裏面から見た上面図である。
図2−(3)は、試料500の第2縦孔200aの断面図、
図2−(3)−1は、第2縦孔200aの裏面からの上面図を拡大したものである。
図2−(4)は、試料500の第2縦孔200bと第2縦孔200cの断面図、
図2−(4)−1、−2は、第2縦孔200bと第2縦孔200cの、裏面からの上面図を拡大したものである。なお、
図2は、研磨の一例であり、試料表面と平行に研磨できていないことを強調して、図示している。
【0033】
研磨によって、他の領域より研磨された領域、例えば
図2−(4)−1の第2縦孔200bと、他の領域より研磨されていない領域、例えば
図2−(4)−2の第2縦孔200cが生じる場合がある。この例において、裏面から観察する第2縦孔の断面の面積は、他の領域より研磨されていない領域の第2縦孔200cの断面の面積が、他の領域より研磨されている第2縦孔200bの断面の面積より、小さく観察される。すなわち、二つの第2縦孔の断面の面積を比較して、断面の面積の小さい第2縦孔の位置が、断面の面積の大きい第2縦孔の位置より、研磨されていない位置であることがわかる。
【0034】
上述のように、研磨されていない領域が第2縦孔の断面の面積でわかるので、第2縦孔の断面の面積が等しくなるように、再度研磨を行う。
【0035】
図3−(1)は、試料500の表面から見た上面図である。
図3−(2)は、試料500の裏面から見た上面図である。
図3−(3)は、試料500の第2縦孔200aの断面図、
図3−(3)−1は、第2縦孔200aの裏面からの上面図を拡大したものである。
図3−(4)は、試料500の第2縦孔200bと第2縦孔200cの断面図、
図3−(4)−1、−2は、第2縦孔200bと第2縦孔200cの、裏面からの上面図を拡大したものである。
【0036】
図2で示した第2縦孔200cの周辺の高さは、再研磨により第2縦孔200b周辺の高さと同等になる(
図3−(4)−2)。そのことは、裏面から観察する第2縦孔の断面の面積が、第2縦孔200bと第2縦孔200cで同等になることから判断することができる。
【0037】
以上が本実施の一態様である試料の作製方法である。縦孔の側壁がテーパ状に形成されているので、研磨した量によって、貫通した縦孔の断面形状と断面の面積に違いが生じる。少なくとも2以上の第2縦孔の断面形状と断面の面積を比較して、残り膜厚の大小関係を知ることができる。それらの第2縦孔の断面形状と断面の面積に差がなくなるように研磨を調整することにより、試料裏面を試料表面と平行に薄片化することができる。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態では、縦孔に導電性物質を埋め込む工程を含む、試料の作製方法を
図4と
図5を用いて説明する。
【0039】
(第3縦孔101とその形成について)
試料500の表面に側壁がテーパ状の第3縦孔101を、試料500の表面に形成する。なお、試料500の表面とは研磨しない面とする。第3縦孔101は、実施の形態1における第1縦孔100と同様の孔である。そのため、第3縦孔101の試料表面から見た形状、表面からの深さ、側壁のテーパ角は、実施の形態1の第1縦孔100を参酌することができる。また、第3縦孔101の形成についても、実施の形態1の第1縦孔100を参酌することができる。
【0040】
(試料500について)
試料500は、たとえばシリコンウェハーのようなバルク試料でも、ガラス基板等に堆積膜を成膜した試料でもよい。試料500の表面は平滑であることが好ましい。裏面を平坦に研磨するためである。
【0041】
(導電性物質の埋め込みについて)
次に、第3縦孔101に導電性物質700を埋め込む。
図4(A)は、試料500の表面に、側壁がテーパ状の第3縦孔101を開口し、導電性物質700を埋め込んだ状態の図である。また、
図4(A)−1は、試料500の表面から見た上面図である。
図4(A)−2は、試料500の裏面から見た上面図である。また、
図4(A)−3は、試料500の第3縦孔101aの断面図である。
図4(A)−4は、試料500の第3縦孔101bと第3縦孔101cの断面図である。
【0042】
第3縦孔101に導電性物質700を埋め込むことにより、光学的手段に比べ、第3縦孔101の貫通を容易に判断することができる場合がある。試料表面と試料裏面が、導電性物質700を介して、導通しているか、否かを調べることにより、第3縦孔101の貫通を判断することができるからである。試料表面と試料裏面との導通は、テスター等を用いて確認することができる。
【0043】
導電性物質700は、金属単体または、導電性を有する金属等を含む物質であれば良い。第3縦孔101に埋め込む方法は、金属であれば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法など適宜用いることができる。
【0044】
また、導電性物質700として、樹脂中に銀粒子やカーボンブラックをフィラーとして分散した導電性ペーストを用いることができる。導電性ペーストは流動性を有し、導電性物質700を容易に第3縦孔101に充填することができるので、好ましい。
【0045】
(裏面研磨について)
次に、裏面の研磨を行う。裏面の研磨方法については、実施の形態1を参酌することができる。
【0046】
裏面を研磨した後の状態を
図4(B)に示す。第3縦孔101を貫通させ縦孔を、第4縦孔201と呼ぶ。
図4(B)−1は、試料500の表面から見た上面図である。
図4(B)−2は、試料500の裏面から見た上面図である。また、
図4(B)−3は、試料500の第4縦孔201aの断面図である。
図4(B)−4は、試料500の第4縦孔201bと第4縦孔201cの断面図である。なお、
図4(B)は、研磨の一例であり、試料表面と平行に研磨できていないことを強調して、図示している。
【0047】
(裏面からの第4縦孔の断面観察について)
次に、裏面の研磨が試料表面と平行にできているか確認するため、第4縦孔201aから第4縦孔201cの断面形状を、光学的手段を用いて観察する。それらの第4縦孔の断面形状から、それぞれの第4縦孔の断面の面積を求める。この観察は裏面側から行う。光学的手段としては、光学顕微鏡、電子顕微鏡等を用いることができる。なお、光学的顕微鏡で第4縦孔の断面形状の観察が困難な場合、電子顕微鏡の一つである査形電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:以下SEMと略す)を用いることができる。例えば、試料裏面が絶縁性である場合、研磨され裏面に現れた導電性物質700の断面形状は、SEMの二次電子像で観察しやすい。導電性物質と絶縁性物質は、二次電子の放出量に大きな差があるからである。
【0048】
研磨によって、他の領域より研磨された領域、例えば
図4−(B)−4の第4縦孔201bと、他の領域より研磨されていない領域、例えば
図4−(B)−4の第4縦孔201cが生じる場合がある。この例において、裏面から観察する第4縦孔201の断面の面積は、他の領域より研磨されていない領域の第4縦孔201cの断面の面積が、他の領域より研磨されている第4縦孔201bの断面の面積より、小さく観察される。すなわち、二つの第4縦孔201の断面の面積を比較して、断面の面積の小さい第4縦孔201の位置が、断面の面積の大きい第4縦孔201の位置より、研磨されていない位置であることがわかる。
【0049】
上述のように、二つの第4縦孔201の断面観察から、二つの第4縦孔201の残り膜厚について、大小関係を知ることができる。したがって、残膜が厚い第4縦孔201の周辺を、他の領域と同じ高さになるように、再度研磨を行えばよい。
【0050】
裏面を再研磨した後の状態を
図5に示す。
図5−(1)は、試料500の表面から見た上面図である。
図5−(2)は、試料500の裏面から見た上面図である。
図5−(3)は、試料500の第4縦孔201aの断面図である。
図5−(4)は、試料500の第4縦孔201bと第4縦孔201cの断面図である。
【0051】
図4−(B)−2で示した第4縦孔201cの周辺の高さは、再研磨により第4縦孔201b周辺の高さと同等になる(
図5−(4))。そのことは、裏面から観察する第4縦孔の断面の面積が、第4縦孔201bと第4縦孔201cで同等になることから判断することができる。
【0052】
以上が本実施の一態様である試料の作製方法である。第3縦孔101に導電性物質を埋め込んでいるので、第3縦孔101の貫通を電気的に判断することができる。たとえば、テスターを用いて、導通を確認すればよい。裏面から光学顕微鏡で判断することが難しい場合に有効である。また、SEM等の電子顕微鏡を用いた観察で、第4縦孔201の断面形状を、容易に観察することができる。特に、試料裏面が絶縁性である場合に有効である。
【0053】
また、縦孔の側壁がテーパ状に形成されているので、研磨した量によって貫通した縦孔の断面形状と断面の面積に違いが生じる。少なくとも2以上の第4縦孔201の断面形状と断面の面積を比較して、残り膜厚の大小関係を知ることができる。それらの第4縦孔201の断面形状と断面の面積に差がなくなるように研磨を調整することにより、試料裏面を試料表面と平行に薄片化することができる。
【0054】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1または2で作製した試料を用いた、SIMS分析について説明する。
【0055】
分析対象の層を裏面からスパッタしながらの目的の元素を分析するため、本分析はダイナミックSIMSがふさわしい。
【0056】
(分析装置、測定条件等について)
検出器は、磁場型と四重極型を用いることができる。例えば、ガラス基板のような絶縁性の基板上にある薄膜を測定する場合は、四重極型が好ましい。四重極型は、チャージアップの影響を受けにくいからである。
【0057】
一次イオンは、酸素、セシウム等、目的の元素と分析対象層のマトリックスから適宜選択すればよい。
【0058】
一次イオンの加速電圧は、目的の元素と分析対象層のマトリックスから適宜選択すればよい。深さ分解能を高めるためには、スパッタレートを下げるため、一次イオンの加速電圧を低くすることが好ましい。
【0059】
実施の形態1または2で作製した試料500aの裏面から見た上面図を
図6に示す。第5縦孔202は、実施の形態1または2で形成した、第2縦孔200または第4縦孔201である。第5縦孔202a、第5縦孔202b、第5縦孔202cに囲まれた領域を、測定領域800に用いることができる。
【0060】
測定領域800は、試料表面に対して平行に研磨されている。SSDP−SIMS法では、裏面から一次イオンによりスパッタするため、分析対象層の表面側に高濃度の測定元素を含む層があっても、いわゆるノックオン現象が起きない。そのため、分析対象の元素について妥当なプロファイルを示すことができる。また、裏面は試料の表面に対し平行に薄片化されているので、深さ方向の分解能が優れたSIMS分析を行うことができる。