(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(A)成分である末端シリル基ポリマーにおける主鎖または側鎖の骨格がポリオキシアルキレンであることを特徴とする請求項1に記載の耐ブリスター用粘着シート。
(C)成分として、(A)成分である末端シリル基ポリマーの架橋を促進するための触媒を含むとともに、当該触媒が、アルミ系触媒、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒および三フッ化ホウ素系触媒からなる群から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐ブリスター用粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態は、粘着剤層を少なくとも1層有する耐ブリスター用粘着シートであって、粘着剤層が、(A)成分としての末端シリル基ポリマーと、(B)成分としての粘着付与樹脂とを含む粘着剤組成物からなり、(A)成分である末端シリル基ポリマーが、主鎖または側鎖にウレタン結合および尿素結合、あるいはいずれか一方を有するとともに、主鎖の両末端に一般式(1)で表わされる加水分解性シリル基を有する末端シリル基ポリマーであり、(B)成分である粘着付与樹脂が、スチレン系モノマー、α−メチルスチレン系モノマーおよび脂肪族系モノマーの少なくとも一種を重合してなる粘着付与樹脂と、テルペンフェノール系粘着付与樹脂と、ロジンフェノール系粘着付与樹脂と、からなる群から選択される少なくとも一種の粘着付与樹脂であり、(B)成分である粘着付与樹脂の配合量を、(A)成分である末端シリル基ポリマー100重量部に対して、10〜140重量部の範囲内の値とし、かつ、粘着剤組成物における架橋後のゲル分率を30〜100%の範囲内の値とすることを特徴とする耐ブリスター用粘着シートである。
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0024】
1.粘着剤層
本発明の耐ブリスター用粘着シートは、(A)成分としての所定の末端シリル基ポリマーと、(B)成分としての所定の粘着付与樹脂とを含む所定の粘着剤組成物からなることを特徴とする。
以下、かかる粘着剤組成物について、成分ごとに説明する。
【0025】
(1)(A)成分:末端シリル基ポリマー
(1)−1 種類
(A)成分としての末端シリル基ポリマーは、主鎖または側鎖にウレタン結合および尿素結合、あるいはいずれか一方を有するとともに、主鎖の両末端に下記一般式(1)で表わされる加水分解性シリル基を有することを特徴とする。
【0027】
(一般式(1)中、X
1およびX
2は独立しており、ヒドロキシ基またはアルコキシ基であり、R
1は炭素数1〜20のアルキル基である。)
【0028】
この理由は、このような(A)成分であれば、一般式(1)で表わされる2官能の加水分解性末端シリル基を有することから、(A)成分同士の加水分解脱水縮合により効果的に三次元網目構造を形成することができるためである。
したがって、所定の粘着付与樹脂との組み合わせにより、優れた粘着力を発揮することができ、粘着剤組成物とプラスチック製の被着体とを強固に密着させて、プラスチック製の被着体に由来したガスの発生を効果的に封じ込めることができる。
また、このような(A)成分であれば、一般式(1)で表わされる2官能の加水分解性末端シリル基を有することから、架橋後の粘着剤組成物におけるゲル分率を所定の範囲に調節することで、優れた凝集力を発揮することができるためである。
したがって、粘着剤組成物自体の硬さによって、プラスチック製の被着体に由来したガスの発生による変形すなわち、ブリスターの発生を抑制することが出来る。
よって、(A)成分として所定の末端シリル基ポリマーを用いることで、粘着力と凝集力とのバランスに優れ、ひいては耐ブリスター性に優れた粘着剤組成物を得ることができる。
なお、一般式(1)中、R
1で表わされるアルキル基の炭素数は、加水分解脱水縮合反応性の観点から、1〜12であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。
また、一般式(1)中、X
1またはX
2がアルコキシ基である場合、当該アルコキシ基における炭素数は、加水分解脱水縮合反応性の観点から、1〜12であることが好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。
【0029】
(i)基本的構成
次いで、
図1を用いて、(A)成分としての所定の末端シリル基ポリマーの基本構成を説明する。
すなわち、
図1(a)には、所定の末端シリル基ポリマー30の合成例が示してある。
まず、分子の主鎖12または側鎖(図示せず)の末端にイソシアネート基14(14a、14b)を有するポリマー骨格10を用意する。
次いで、分子の片末端にイソシアネート基14(14a、14b)と反応可能な活性水素基22を有するとともに、分子の別の末端に一般式(1)で表わされる加水分解性シリル基24を有するシリル化剤20を用意する。
次いで、ポリマー骨格10およびシリル化剤20を混合した後、例えば、窒素雰囲気下、80℃で1時間反応させることで、所定の末端シリル基ポリマー30を得ることができる。
また、
図1(b)に示すように、かかる所定の末端シリル基ポリマー30は、一般式(1)で表わされる加水分解性シリル基の加水分解(30´)を経由した架橋反応により硬化して3次元網目構造(30´´)をとる、所謂、湿気硬化型のポリマーである。
【0030】
なお、
図1(a)においては、主鎖の両末端のみに所定のシリル基を有する両末端シリル基ポリマーを例に挙げて説明したが、本発明の末端シリル基ポリマーには、側鎖の末端に加水分解性シリル基を有する末端シリル基ポリマーも含まれる。
また、末端シリル基ポリマーを合成する際には、
図1(a)の場合とは逆に、シリル化剤20がイソシアネート基14を有し、ポリマー骨格10が活性水素基22を有していてもよい。
また、所定の末端シリル基ポリマーの主鎖または側鎖に導入されているウレタン結合あるいは尿素結合における活性水素は、以下に例を示すように有機基で置換されていてもよい。
したがって、アロファネート結合もウレタン結合の範疇に含まれ、ビュレット結合も尿素結合の範疇に含まれることになる。
【0031】
(ii)末端部分
また、
図1(a)に示す所定の末端シリル基ポリマー30の末端部分32(32a、32b)の具体的な構造を下記一般式(2)〜(8)(末端部分−A〜G)に示す。
【0033】
(一般式(2)中、R
2およびR
3は炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、R
1、X
1およびX
2は一般式(1)の場合と同様であり、下記一般式(3)〜(8)においても同様である。)
【0040】
(一般式(8)中、Aはアルキレン基であり、Bは炭素数1〜20の有機基を示す。)
【0041】
(iii)骨格部分
また、
図1(a)に示す所定の末端シリル基ポリマーの主鎖12または側鎖(図示せず)の骨格としては、特に制限されるものではないが、ポリオキシアルキレンであることが好ましい。
この理由は、ポリオキシアルキレンであれば、得られる粘着剤組成物に対し、適度な柔軟性を付与することができ、被着体に対する密着性を向上させることができるためである。
また、かかるポリオキシアルキレンの具体例としては、ポリオキシプロピレンやポリオキシエチレン等が挙げられる。
【0042】
(iv)加水分解性シリル基の配置
また、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマーが、
図1(a)に示すように、側鎖に一般式(1)で表わされる加水分解性シリル基を有さず、主鎖の両末端のみに一般式(1)で表わされる加水分解性シリル基を有する両末端シリル基ポリマーであることが好ましい。
この理由は、かかる両末端シリル基ポリマーであれば、(A)成分同士の架橋密度が好適な範囲に調節され、架橋後の粘着剤組成物における粘着力と凝集力とのバランスの調節を容易にすることができるためである。
【0043】
また、(A´)成分として、さらに主鎖の片末端のみに一般式(1)で表わされる加水分解性シリル基を有する片末端シリル基ポリマーを含むとともに、その配合量を、両末端シリル基ポリマー100重量部に対して、0.1〜15重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、両末端シリル基ポリマーに対して、所定の範囲で片末端シリル基ポリマーを混合することで、(A)成分同士の架橋密度がより好適な範囲に調節され、架橋後の粘着剤組成物における粘着力と凝集力とのバランスの調節をさらに容易にすることができるためである。
すなわち、片末端シリル基ポリマーの配合量が0.1重量部未満の値となると、その添加効果を十分に得られない場合があるためである。一方、片末端シリル基ポリマーの配合量が15重量部を超えた値となると、(A)成分同士の架橋密度が過度に低下して、所定のゲル分率を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、片末端シリル基ポリマーの配合量を、両末端シリル基ポリマー100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、1〜5重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
但し、両末端シリル基ポリマーのみを用いた場合であっても優れた耐ブリスター性に優れた粘着剤組成物を得られることが確認されているため、特に必要のない場合には、片末端シリル基ポリマーを混合することなく、両末端シリル基ポリマーのみを用いることも、製造工程の簡略化等の観点からは好ましい。
【0044】
(1)−2 重量平均分子量
また、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマーの重量平均分子量を1000〜20万の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる重量平均分子量が1000未満の値となると、分子構造が密になり十分な粘着力が得られず、また粘度が低くなりすぎ、溶液塗布によるシート化時に加工性が悪くなる場合があるためである。一方、かかる重量平均分子量が20万を超えた値となると、粘度増大等による加工適性の低下が顕著になったり、架橋密度が過度に低下して、十分な耐ブリスター性を得ることが困難になったりする場合があるためである。
したがって、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマーの重量平均分子量を1000〜15万の範囲内の値とすることがより好ましく、1万〜10万の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、上述した(A´)成分を配合する場合には、(A´)成分の重量平均分子量についても、(A)成分と同様にすることができる。
【0045】
(1)−3 配合量
また、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマーの配合量を、架橋前の粘着剤組成物の全体量100重量%に対して、20〜90重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合量が20重量%未満の値となると、粘着剤組成物全体に対する(A)成分の絶対量が過度に少なくなって、十分な凝集力を得ることが困難になる場合があるためである。一方、かかる配合量が90重量%を超えた値となると、粘着剤組成物全体に対する(A)成分の絶対量が過度に多くなって、十分な粘着力を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマーの配合量を、架橋前の粘着剤組成物の全体量100重量%に対して、25〜85重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜80重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0046】
(2)(B)成分:粘着付与樹脂
(2)−1 種類
(B)成分としての粘着付与樹脂を、スチレン系モノマー、α−メチルスチレン系モノマーおよび脂肪族系モノマーの少なくとも一種を重合してなる粘着付与樹脂と、テルペンフェノール系粘着付与樹脂と、ロジンフェノール系粘着付与樹脂と、からなる群から選択される少なくとも一種とすることを特徴とする。
この理由は、これらの粘着付与樹脂であれば、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマーとの組み合わせにより、粘着剤組成物に対し、優れた粘着力を付与することができるためである。
【0047】
ここで、本発明において、テルペンフェノール系粘着付与樹脂とは、テルペン樹脂とフェノールの共重合樹脂を意味する。
また、ロジンフェノール系粘着付与樹脂とは、ロジン樹脂とフェノールの共重合樹脂を意味する。
したがって、本発明においては、アビエチン酸、パラストリン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸等の樹脂酸を主成分とするガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン系粘着付与樹脂、および、これらと各種アルコールとのエステルであるロジンエステル系粘着付与樹脂は、ロジンフェノール系粘着付与樹脂に含まれない。
【0048】
(2)−2 配合量
また、(B)成分である所定の粘着付与樹脂の配合量を、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマー100重量部に対して、10〜140重量部の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、(B)成分の配合量をかかる範囲内の値とすることにより、粘着力と凝集力とのバランスに優れた粘着剤組成物を得ることができるためである。
すなわち、かかる配合量が10重量部未満の値となると、粘着剤組成物における粘着力が過度に低下して、プラスチック製の被着体に由来したガスの発生を効果的に封じ込めることが困難になる場合があるためである。一方、かかる配合量が140重量部を超えた値となると、粘着剤組成物における凝集力が過度に低下して、プラスチック製の被着体に由来したガスの発生による変形、すなわちブリスターの発生を抑制することが困難になる場合があるためである。
したがって、(B)成分である所定の粘着付与樹脂の配合量を、(A)成分である末端シリル基ポリマー100重量部に対して、20〜130重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜120重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0049】
次いで、
図2を用いて、所定の粘着付与樹脂の配合量と、耐ブリスター性との関係について説明する。
すなわち、
図2には、横軸に、所定の末端シリル基ポリマー100重量部に対するテルペンフェノール系粘着付与樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、YSポリスターTH−130)の配合量(重量部)を採り、縦軸に、得られた粘着剤組成物を粘着剤層として有する耐ブリスター用粘着シートにおける耐ブリスター性の値(相対評価)を採った特性曲線AおよびBが示してある。
また、特性曲線Aは、耐ブリスター用粘着シートの被着体をポリカーボネート樹脂板とした場合の特性曲線であり、特性曲線Bは、耐ブリスター用粘着シートの被着体をポリメタクリル酸メチル樹脂板とした場合の特性曲線である。
また、耐ブリスター性の値は、以下の基準に沿って判定した評価点(相対値)である。
評価点4:基材全体にブリスターが確認されない
評価点3:基材の外周部に僅かなブリスターが確認される
評価点2:基材の全面に僅かなブリスターが確認される
評価点1:基材の全面にブリスターが顕著に確認される
なお、粘着剤組成物の具体的な組成や、耐ブリスター性の評価方法は、実施例1に準じる。
【0050】
まず、被着体をポリカーボネート樹脂板とした特性曲線Aを見ると、所定の粘着付与樹脂の配合量が10重量部未満の値の場合、耐ブリスター性が不十分である一方で、10〜100重量部の範囲では、優れた耐ブリスター性が得られることが理解される。
一方、所定の粘着付与樹脂の配合量が100重量部を超えた値になると、耐ブリスター性が低下し始め、160重量部のときには全くブリスター発生を抑制できないレベルにまで低下してしまうことが理解される。
次いで、被着体をポリメタクリル酸メチル樹脂板とした特性曲線Bを見ると、所定の粘着付与樹脂の配合量が10重量部未満の値の場合、十分な耐ブリスター性を得ることができない一方で、10重量部〜120重量部の範囲では、被着体がポリカーボネート樹脂板の場合より低いレベルではあるものの、比較的優れた耐ブリスター性が得られることが理解される。
一方、所定の粘着付与樹脂の配合量が120重量部を超えた値になると、耐ブリスター性が低下し始め、160重量部のときには全くブリスターの発生を抑制できないレベルにまで低下してしまうことが理解される。
したがって、特性曲線AおよびBからは、被着体をポリカーボネート樹脂板とした場合であっても、ポリメタクリル酸メチル樹脂板とした場合であっても、安定的に耐ブリスター性を得るためには、所定の粘着付与樹脂の配合量を、所定の末端シリル基ポリマー100重量部に対して、10〜140重量部の範囲内の値とすべきことが理解される。
【0051】
(3)(C)成分:触媒
(3)−1 種類
また、本発明の耐ブリスター用粘着シートにおける粘着剤層としての粘着剤組成物を構成するにあたり、(C)成分として、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマーの架橋を促進するための触媒を含むとともに、当該触媒が、アルミ系触媒、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒および三フッ化ホウ素系触媒からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
この理由は、これらの触媒であれば、(A)成分同士の架橋密度の制御が容易になり、架橋後の粘着剤組成物における粘着力と凝集力とのバランスをより一段と容易にすることができるためである。
【0052】
また、アルミ系触媒としては、アルミニウムのアルコキシド、アルミニウムキレート、塩化アルミニウム(III)が好ましく、チタン系触媒としては、チタンのアルコキシド、チタンキレート、塩化チタン(IV)が好ましく、ジルコニウム系触媒としては、ジルコニウムのアルコキシド、ジルコニウムキレート、塩化ジルコニウム(IV)が好ましく、三フッ化ホウ素系触媒としては、三フッ化ホウ素のアミン錯体やアルコール錯体が特に好ましく使用される。
【0053】
(3)−2 配合量
また、(C)成分である触媒の配合量を、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマー100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる配合量が0.001重量部未満の値となると、触媒作用が不十分となり、粘着剤組成物の凝集力が過度に低下する場合があるためである。一方、かかる配合量が10重量部を超えた値となると、触媒作用が過剰となり、粘着剤組成物が、基材に塗布する前に硬化してしまう場合があるためである。
したがって、(C)成分である触媒の配合量を、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマー100重量部に対して、0.01〜8重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜5重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0054】
また、(D)成分として、アミノ基含有アルコキシシランを、(C)成分1モルに対して、1モル以上含有することが好ましい。
この理由は、アミノ基含有アルコキシシランをかかる範囲で配合することにより、所定の末端シリル基ポリマーの架橋助剤としての効果を発揮し、粘着剤組成物の凝集力を、より好適な範囲に調節することができるためである。
したがって、(D)成分であるアミノ基含有アルコキシシランの配合量を、(C)成分1モルに対して1〜30モルの範囲内の値とすることがより好ましく、2〜10モルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、アミノ基含有アルコキシシランとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0055】
(4)添加剤
また、本発明の耐ブリスター用粘着シートにおける粘着剤層としての粘着剤組成物には、上述した以外の成分として、例えば、シランカップリング剤、老化防止剤、ビニルシラン化合物や酸化カルシウム等の脱水剤、充填剤、可塑剤、無水シリカ、アマイドワックス等の揺変剤、イソパラフィン等の希釈剤、水酸化アルミニウム、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤等の難燃剤、シリコーンアルコキシオリゴマー、アクリルオリゴマー等の機能性オリゴマー、顔料、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、乾性油等を添加混合してもよい。
また、これらの添加剤を加える場合には、添加剤の種類にもよるが、その配合量を、(A)成分である所定の末端シリル基ポリマー100重量部に対して、0.01〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0056】
(5)ゲル分率
また、本発明耐ブリスター用粘着シートにおける粘着剤層としての粘着剤組成物は、架橋後のゲル分率を30〜100%の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、架橋後のゲル分率をかかる範囲内の値とすることにより、優れた凝集力を発揮することができ、ひいてはプラスチック製の被着体に由来したガスの発生による変形、すなわちブリスターの発生を抑制することが出来るためである。
すなわち、架橋後のゲル分率が30%未満の値となると、凝集力が過度に小さくなって、プラスチック製の被着体に由来したガスの発生による変形、すなわちブリスターの発生を抑制することが困難になる場合があるためである。
一方、架橋後のゲル分率が過度に高くなると、十分な粘着力が得られない。
したがって、粘着剤組成物における架橋後のゲル分率を32〜90%の範囲内の値とすることがより好ましく、35〜80%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、「架橋後のゲル分率」とは、粘着剤組成物を基材に対して塗布した後、23℃、50%RH環境下にて14日間シーズニングした後、当該シーズニング後の粘着剤を測定試料として浸漬法によって測定されるゲル分率を意味する。
また、ゲル分率の具体的な測定方法については、実施例に記載する。
【0057】
次いで、
図3を用いて、粘着剤組成物における架橋後のゲル分率と、耐ブリスター性との関係を説明する。
すなわち、
図3には、横軸に、粘着剤組成物における架橋後のゲル分率(%)を採り、縦軸に、粘着剤組成物を粘着剤層として有する耐ブリスター用粘着シートにおける耐ブリスター性の値(相対評価)を採った特性曲線AおよびBが示してある。
また、特性曲線Aは、耐ブリスター用粘着シートの被着体をポリカーボネート樹脂板とした場合の特性曲線であり、特性曲線Bは、耐ブリスター用粘着シートの被着体をポリメタクリル酸メチル樹脂板とした場合の特性曲線である。
また、耐ブリスター性の値は、上述した
図2における特性曲線の場合と同様の基準に沿って判定した相対値である。
なお、粘着剤組成物の具体的な組成や、耐ブリスター性の評価方法は、実施例1に準じる。
【0058】
まず、被着体をポリカーボネート樹脂板とした特性曲線Aを見ると、ゲル分率の値が増加するのに伴って耐ブリスター性が向上しており、ゲル分率の値が30%以上の範囲であれば、所定以上の耐ブリスター性を安定的に得られることが理解される。
次いで、被着体をポリメタクリル酸メチル樹脂板とした特性曲線Bの場合にも、ゲル分率の値が増加するのに伴って耐ブリスター性が向上しており、ゲル分率の値が30%以上の範囲であれば、被着体がポリカーボネート樹脂板の場合より低いレベルではあるものの、所定以上の耐ブリスター性を安定的に得られることが理解される。
したがって、特性曲線AおよびBからは、被着体をポリカーボネート樹脂板とした場合であっても、ポリメタクリル酸メチル樹脂板とした場合であっても、安定的に耐ブリスター性を得るためには、粘着剤組成物における架橋後のゲル分率を30〜100%の範囲内の値とすべきことが理解される。
【0059】
(6)厚さ
また、粘着剤層の厚さを、1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましく、5〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、粘着剤層の厚さが薄すぎると、十分な粘着特性等が得られない場合があり、逆に、厚すぎると、残留溶剤が問題となる場合があるためである。
【0060】
2.基材
また、本発明の耐ブリスター用粘着シートは、粘着剤層を基材の片面もしくは両面に有することが好ましい。
かかる、基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリノルボルネン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、塩化ビニル、ポリウレタンアクリレートなどの樹脂からなる樹脂フィルムが好ましく挙げられる。
【0061】
また、
図4(a)に示すように、基材2が、金属蒸着層6を有することが好ましい。
この理由は、基材が金属蒸着層を有する場合、かかる金属蒸着層がガスバリア性を有することから、ブリスターが発生し易くなるが、本発明の耐ブリスター用粘着シートであれば、ブリスターの発生を効果的に抑制することができるためである。
また、金属蒸着層を構成する金属としては、例えば、アルミニウム、銀、銅、スズ等が挙げられる。
なお、ガスバリア性を有するものの代表として金属蒸着層を挙げたが、ガスバリア性を有するものであればこれに限らず、例えば、珪素化合物の薄層に対してプラズマイオン注入を施して得られるガスバリアフィルム等を基材に積層させたものであっても、本発明であれば、同様の耐ブリスター効果を得ることができる。
また、金属蒸着層等のガスバリア性を有する層の厚さとしては、特に制限されるものではないが、通常0.01〜10μmの範囲内の値とすることが好ましく、0.02〜5μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
なお、基材が金属蒸着層を有する耐ブリスター用粘着シートの具体的な用途としては、例えば、家電製品等に付される銘板ラベルを好ましく挙げることができる。
【0062】
また、基材2の厚さとしては、特に制限されるものではないが、通常1〜1,000μmの範囲内の値とすることが好ましく、10〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
【0063】
また、本発明の耐ブリスター用粘着シートは、粘着剤層の両面に対して剥離フィルムが貼合されている態様であることも好ましい。
かかる態様は、粘着剤層の製造と、かかる粘着剤層の使用とが、別の場所で行われる等の理由により、粘着剤層のみを輸送しなければならない場合等に必要とされる。
また、かかる剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムや、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムに対し、シリコーン樹脂等の剥離剤を塗布して、剥離層を設けたものが挙げられる。
また、かかる剥離フィルムの厚さは、通常、20〜150μmの範囲内の値とすることができる。
なお、2つの剥離フィルムにおける剥離力に所定の差を設けることにより、剥離力の低い側の剥離フィルムを剥がした際に、粘着剤層が部分的に追従してくることを防止することができる。
【0064】
3.製造方法
本発明の耐ブリスター用粘着シートは、下記工程(1)〜(3)を経て構成することができる。
(1)(A)〜(B)成分を含む所定の粘着剤組成物を準備する工程
(2)粘着剤組成物を、基材に対して塗布して、塗布層を形成する工程
(3)粘着剤組成物を架橋させて、塗布層を粘着剤層とする工程
以下、粘着シートを構成する工程につき、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
【0065】
(1)工程(1)(粘着剤組成物の準備工程)
工程(1)は、(A)〜(B)成分を含む所定の粘着剤組成物を準備する工程である。
より具体的には、例えば、(A)成分を所望により希釈溶剤で希釈し、撹拌下、(B)成分を添加して、均一な混合液とすることが好ましい。
続いて、得られた混合液に対し、(C)成分やその他の添加剤を添加した後、均一になるまで撹拌しつつ、所望の粘度になるように、必要に応じて希釈溶剤をさらに加えることにより、粘着剤組成物の溶液を得ることが好ましい。
なお、各成分の詳細および配合量等は、既に記載した通りであるため、省略する。
【0066】
(2)工程(2)(粘着剤組成物の塗布工程)
工程(2)は、
図4(a)に示すように、粘着剤組成物を、基材2に対して塗布して塗布層4を形成する工程である。
また、基材2上に粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いて、溶剤を加えた粘着剤組成物を塗布して塗布層4(塗膜)を形成した後、乾燥させることが好ましい。
このとき、塗布層4の厚さを、乾燥時基準において、1〜100μmの範囲内の値とすることが好ましく、5〜50μmの範囲内の値とすることがより好ましい。
この理由は、塗布層4の厚さが薄すぎると、十分な粘着特性等が得られない場合があり、逆に、厚すぎると、残留溶剤が問題となる場合があるためである。
また、乾燥条件としては、通常、50〜150℃で、10秒〜10分の範囲内とすることが好ましい。
なお、基材の詳細については、既に記載した通りであるため、省略する。
【0067】
(3)工程(3)(塗布層の架橋工程)
工程(3)は、粘着剤組成物の塗布層4を架橋させて、塗布層4を粘着剤層40とする工程である。
すなわち、
図4(b)〜(c)に示すように、基材2上で乾燥させた状態の塗布層4の表面に対し、剥離フィルム8を積層させた状態で架橋させて、粘着剤層40とすることが好ましい。
あるいは、基材2上に塗布した粘着剤組成物の塗布層4を、先に架橋させ、粘着剤層40としたのち、剥離フィルム8に対して積層させてもよい。
若しくは、剥離フィルム8を最後まで積層させなくてもよい。
【0068】
なお、粘着剤組成物の塗布層4における架橋は、上述した乾燥工程と、シーズニング工程とを通して行われる。
かかるシーズニング工程の条件としては、粘着剤組成物の塗布層4や基材2にダメージを与えることなく、かつ、粘着剤組成物の塗布層4を均一に架橋する観点から、温度を20〜50℃とすることが好ましく、23〜30℃とすることがより好ましい。
また、湿度としては、30〜75%RHとすることが好ましく、45〜65%RHとすることがより好ましい。
なお、最終的に得られた粘着シート100を被着体200に貼合する方法としては、
図4(c)〜(d)に示すように、まず、粘着剤層40に積層してある剥離フィルム8を剥離し、次いで、表れた粘着剤層40の表面を、被着体200に対して密着させることによって貼合することが好ましい。
【0069】
(4)被着体
また、本発明の耐ブリスター用粘着シートが対象とする被着体の種類は、特に限定されるものではないが、他の粘着シートと比較して、その耐ブリスター性が顕著に表れるという観点からは、特にブリスターが発生し易いことが知られているポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂等の樹脂等を被着体とすることが好ましい。
【実施例】
【0070】
[実施例1]
1.粘着剤組成物の調製
(1)シリル化剤の準備
反応容器に、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン100重量部、アクリル酸メチル83.5重量部を仕込み、窒素雰囲気下にて80℃で10時間撹拌し、シリル化剤となるシラン化合物を得た。
【0071】
(2)ウレタンプレポリマーの準備
別の反応容器に、ポリオキシプロピレンジオール(旭硝子(株)製、PML S4015、重量平均分子量15,000)100重量部、イソホロンジイソシアネート2.46重量部(NCO/OH比=1.7)、ジブチルスズジラウレート0.005重量部を仕込み、窒素雰囲気下にて85℃で7時間反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。
【0072】
(3)末端シリル基ポリマーの合成
次いで、得られたウレタンプレポリマー100重量部に対し、得られたシリル化剤としてのシラン化合物4.21重量部を添加し、窒素雰囲気下にて80℃で1時間反応させ、末端シリル基ポリマーを得た。
このとき、IRにてイソシアネート基の吸収(2265cm
-1)の消失具合により反応の進行を確認した。
なお、得られた末端シリル基ポリマーは、主鎖であるポリオキシプロピレンの両末端に、下記式(9)で表わされる末端部分を有する、重量平均分子量40,000の両末端シリル基ポリマーであった。
また、シリル化剤の原材料をN−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランとしたことにより、得られた末端シリル基ポリマーには、2官能の末端シリル基が導入された。
【0073】
【化12】
【0074】
(4)混合
次いで、得られた末端シリル基ポリマー100重量部に対し、溶媒としての酢酸エチル100重量部、粘着付与樹脂としてのテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、YSポリスターTH−130)100重量部を添加し、均一になるまで撹拌して混合物を得た。
次いで、得られた混合物に含まれる末端シリル基ポリマー100重量部に対し、触媒としての三フッ化ホウ素モノエチルアミン錯体0.1重量部と、架橋助剤としての3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.6重量部を添加し、均一になるまで撹拌して架橋前の粘着剤組成物を得た。
なお、以下において、上述した粘着付与樹脂を「YSポリスターTH−130」と略記する場合がある。
【0075】
2.粘着剤組成物の塗布
次いで、得られた架橋前の粘着剤組成物を、厚さ50μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製、ルミラーT60)に対しナイフコーター法にて塗布した後、100℃で1分間乾燥させ、厚さが23μmの塗布層を形成した。
【0076】
また、同様に、得られた架橋前の粘着剤組成物を、片面にアルミ蒸着処理を施した厚さ50μmの蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム加工(株)製、メタルミー#50)の蒸着面にナイフコーター法にて塗布した後、100℃で1分間乾燥させ、厚さが23μmの塗布層を形成した。
【0077】
3.粘着剤組成物のシーズニング
次いで、得られた架橋前の粘着剤組成物の塗布層と、基材(ポリエステルフィルムおよび蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム)からなる積層体を、23℃、50%RHの環境下に14日間放置(シーズニング)し、架橋前の粘着剤組成物を十分に架橋させ、塗布層を粘着剤層とし、実施例1の耐ブリスター用粘着シート2種類を得た。
【0078】
4.評価
(1)ゲル分率の評価
得られた粘着シートにおける粘着剤、すなわち、シーズニング工程を経た架橋後の粘着剤組成物のゲル分率を測定した。
すなわち、粘着剤を23℃、50%RHの環境下で、酢酸エチルに3日間浸漬させ、浸漬前後の重量を下記式(1)に代入し、ゲル分率を算出した。得られた結果を表1に示す。
ゲル分率(%)=(浸漬後の重量/浸漬前の重量)×100 (1)
【0079】
(2)粘着力の評価
(2)−1 ポリカーボネート樹脂板
得られた耐ブリスター用粘着シート(基材がポリエステルフィルムのもの)における粘着力を測定した。
すなわち、得られた耐ブリスター用粘着シートから25mm×250mmの試験片を切り出し、2kgのゴムローラを用いて、切り出した耐ブリスター用粘着シートをポリカーボネート樹脂板(三菱化学(株)製、ユーピロンシート NF−200UV)に対して貼合し、貼合直後から24時間、23℃、59%RHの標準環境下に放置した。
次いで、引っ張り試験機(オリエンテック(株)製、テンシロン)を用いて、放置後の耐ブリスター用粘着シートを、ポリカーボネート樹脂板から、剥離速度300mm/分、剥離角度180°にて剥離し、このとき測定された剥離荷重を粘着力(N/25mm)とした。得られた結果を表1に示す。
【0080】
(2)−2 ポリメタクリル酸メチル樹脂板
また、ポリカーボネート樹脂板の代わりに、ポリメタクリル酸メチル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、アクリライトL001)を用いて、ポリカーボネート樹脂板の場合と同様に粘着力の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0081】
(3)耐ブリスター性の評価
(3)−1 ポリカーボネート樹脂板
得られた耐ブリスター用粘着シート(基材が蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムのもの)における耐ブリスター性を評価した。
すなわち、アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とした耐ブリスター用粘着シートから40mm×50mmの試験片を切り出し、2kgのゴムローラを用いて、切り出した耐ブリスター用粘着シートをポリカーボネート樹脂板(三菱化学(株)製、ユーピロンシート NF−200UV)に対して貼合した。
次いで、貼合から30分経過した後、耐ブリスター用粘着シートが貼合された状態のポリカーボネート樹脂板を、90℃環境下に5時間静置し、そのときの耐ブリスター用粘着シートにおける基材側の外観を確認し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
また、このときの耐ブリスター用粘着シートにおける基材側の外観を撮影した写真を、
図5に示す。
A:基材全体にブリスターが確認されない
B:基材の外周部に僅かなブリスターが確認される
C:基材の全面に僅かなブリスターが確認される
D:基材の全面にブリスターが顕著に確認される
【0082】
(3)−2 ポリメタクリル酸メチル樹脂板
また、ポリカーボネート樹脂板の代わりに、ポリメタクリル酸メチル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、アクリライトL001)を用いて、ポリカーボネート樹脂板の場合と同様に耐ブリスター性の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0083】
[実施例2]
実施例2では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂としてのテルペンフェノール樹脂を、別のテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、YSポリスターT130)に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
また、ポリカーボネート樹脂板を被着体とした場合の耐ブリスター性を示す写真を、
図6に示す。
なお、以下において、上述した粘着付与樹脂を「YSポリスターT130」と略記する場合がある。
【0084】
[実施例3]
実施例3では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂としてのテルペンフェノール樹脂を、別のテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、YSポリスターT160)に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
また、ポリメタクリル酸メチル樹脂板を被着体とした場合の耐ブリスター性を示す写真を、
図7に示す。
なお、以下において、上述した粘着付与樹脂を「YSポリスターT160」と略記する場合がある。
【0085】
[実施例4]
実施例4では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂としてのテルペンフェノール樹脂を、別のテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル(株)製、YSポリスターG150)に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、以下において、上述した粘着付与樹脂を「YSポリスターG150」と略記する場合がある。
【0086】
[実施例5]
実施例5では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂を、スチレン、α−メチルスチレン、脂肪族系モノマー共重合樹脂(三井化学(株)製、FTR7100)に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、以下において、上述した粘着付与樹脂を「FTR7100」と略記する場合がある。
【0087】
[実施例6]
実施例6では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂を、α−メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル(株)製、クリスタレックス3100)に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、以下において、上述した粘着付与樹脂を「クリスタレックス3100」と略記する場合がある。
【0088】
[実施例7]
実施例7では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂を、ロジンフェノール系樹脂(荒川化学工業(株)製、タマノル803L)に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、以下において、上述した粘着付与樹脂を「タマノル803L」と略記する場合がある。
【0089】
[実施例8]
実施例8では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂を、ロジンフェノール系樹脂(荒川化学工業(株)製、タマノル901)に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、以下において、上述した粘着付与樹脂を「タマノル901」と略記する場合がある。
【0090】
[実施例9]
実施例9では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂の配合量を20重量部に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0091】
[実施例10]
実施例10では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂の配合量を80重量部に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0092】
[実施例11]
実施例11では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂の配合量を120重量部に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0093】
[実施例12]
実施例12では、粘着剤組成物を調製する際に、末端シリル基ポリマーとして、両末端シリル基ポリマー100重量部の代わりに、両末端シリル基ポリマー90重量部および片末端シリル基ポリマー10重量部の混合物ポリマーを用いたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、片末端シリル基ポリマーは、ポリマー分子の片末端のみ加水分解性シリル基を有するほかは、両末端シリル基ポリマーと同じ構成であった。
【0094】
[比較例1]
比較例1では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂を加えなかったほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
【0095】
[比較例2]
比較例2では、シリル化剤を準備する際に、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン100重量部を添加する代わりに、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン107.8重量部を添加したほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
また、ポリカーボネート樹脂板を被着体とした場合の耐ブリスター性を示す写真を
図8に、ポリメタクリル酸メチル樹脂板を被着体とした場合の耐ブリスター性を示す写真を
図9に、それぞれ示す。
また、得られた末端シリル基ポリマーは、主鎖であるポリオキシプロピレンの両末端に、下記式(10)で表わされる末端部分を有する両末端シリル基ポリマーであった。
また、シリル化剤の原材料をN−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランとしたことにより、得られた末端シリル基ポリマーには、3官能の末端シリル基が導入された。
なお、比較例2では、末端シリル基ポリマーの末端シリル基を3官能としたため、粘着剤層におけるガス透過性が低下してしまい、その結果、十分な耐ブリスター性が得られなかったものと推定される。
【0096】
【化13】
【0097】
[比較例3]
比較例3では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂を、ロジン系樹脂(荒川化学工業(株)製、KE−604)に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
また、ポリカーボネート樹脂板を被着体とした場合の耐ブリスター性を示す写真を
図10に、ポリメタクリル酸メチル樹脂板を被着体とした場合の耐ブリスター性を示す写真を
図11に、それぞれ示す。
【0098】
[比較例4]
比較例4では、粘着剤組成物を調製する際に、末端シリル基ポリマーとして、両末端シリル基ポリマー100重量部の代わりに、両末端シリル基ポリマー70重量部および片末端シリル基ポリマー30重量部の混合物ポリマーを用いたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
また、ポリカーボネート樹脂板を被着体とした場合の耐ブリスター性を示す写真を、
図12に示す。
なお、片末端シリル基ポリマーは、ポリマー分子の片末端にのみ加水分解性シリル基を有するほかは、両末端シリル基ポリマーと同じ構成であった。
【0099】
[比較例5]
比較例5では、粘着剤組成物を調製する際に、末端シリル基ポリマーとして、両末端シリル基ポリマー100重量部の代わりに、両末端シリル基ポリマー50重量部および片末端シリル基ポリマー50重量部の混合ポリマーを用いたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、片末端シリル基ポリマーは、ポリマー分子の片末端のみに加水分解性シリル基を有するほかは、両末端シリル基ポリマーと同じ構成であった。
【0100】
[比較例6]
比較例6では、粘着剤組成物の調製を、下記のように行ったほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
すなわち、反応容器に、アクリル酸n−ブチル100重量部、アクリル酸11.1重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.33重量部を仕込み、窒素雰囲気下、酢酸エチル中にて60℃で24時間反応させ、重量平均分子量が60万のアクリル酸エステル共重合体溶液(固形分濃度35%)を得た。
次いで、得られたアクリル酸エステル共重合体溶液100重量部に対して、トリレンジイソシアネート系架橋剤(東洋インキ(株)製、BHS8515)2.0重量部を添加・混合し、架橋前の粘着剤組成物を得た。
【0101】
[比較例7]
比較例7では、粘着剤組成物を調製する際に、粘着付与樹脂の配合量を160重量部に変えたほかは、実施例1と同様に耐ブリスター用粘着シートを製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、比較例7では、粘着付与樹脂の配合量が過剰であったため、粘着力が過度に増加するとともにガス透過性が低下してしまい、その結果、十分な耐ブリスター性が得られなかったものと推定される。
【0102】
【表1】
*「Z」は、ジッピング(一定の範囲で粘着力の測定チャートに見られる振動現象)が生じたことを示す。
*「AT」は、界面破壊が生じたことを示す。