【課題を解決するための手段】
【0015】
これら要求をできるだけ多く満たす衝撃パッドを提供するために、特に溶融金属の流れ特性の改善に関して、広範囲にわたる実験と調査とが行われた。その際調査されたのは以下である。
‐衝撃パッドの底部に衝突した後の溶融物の流れ特性
‐衝撃パッド内での溶融物の流れの経過
‐衝撃パッドから出る際の溶融物の流れ特性
‐衝撃パッドから出た後の、対応する冶金用容器の溶融槽内の溶融物の流れ特性
【0016】
確認されたのは、既知の衝撃パッドの幾何学形状を、特に、衝撃パッドから出る際と、それに続いて、属する冶金用容器の溶融槽に流入する際との溶融物の流れ特性に関して改善する必要があるということである。
【0017】
溶融物の一部が、比較的大きな断面積の体積流で、衝撃パッドの側部から排出されれば有利である。その際の流れ方向は、ほぼ水平あるいは水平に対して70度よりも小さい角度、特に45度よりも小さい角度である。さらに、側部から出る体積流が上に向かって(衝撃パッドの上部自由端部セクションに向かって)広がるように、衝撃パッドを構成することが有利であることが明らかになった。
【0018】
結果的に、このことが、衝撃パッドの壁が特定の断面プロファイルを有する少なくとも1つの開口部(たとえばスリット)を備える衝撃パッド幾何学形状をもたらした。衝撃パッドの底部から上に向かって壁の自由端部セクションまで見ると、開口部の幅(衝撃パッドの周方向において)が大きくなっている。すなわち、スリット状の開口部においては、スリットを側部で画定する側面の間隔が大きくなる。
【0019】
この方法によって、比較的遅い流速の比較的幅広の体積流が、衝撃パッドの上部セクションで衝撃パッドの側部から排出される。同様に、衝撃パッド底部近くの側部から出る体積流はより幅が狭く、より早い流速を備える。この流れプロファイルによって、冶金用容器内の溶融金属への流入時の乱流が低減される。
【0020】
これによって、特に開口部の側面の領域(境界部)における衝撃パッドの耐火材の浸食がより少なくなる。それにともなって、タンディッシュ内の溶融金属に入る汚染物質(不純物)がより少なくなる。
【0021】
体積流のさらなる一部は、周知のように、上に向かって衝撃パッドから出る。
【0022】
開口部の特定の幾何学形状と、それによって引き起こされる、衝撃パッド壁の開口部を通る側部からの溶融物の特定の流れとは、以下の表が示すように、タンディッシュ内の死容積の望ましい削減をももたらし、かつより高い割合の栓流をもたらす。
【0023】
【表1】
【0024】
衝撃パッドの壁領域に、比較的大きな断面を有する開口部を形成すると、より少ない耐火材を用いるだけでよくなる。これにより、製造コストが削減される。
【0025】
本発明は、その最も一般的な実施形態において、機能位置で以下の特徴を有するセラミック製耐火衝撃パッドに関する。
‐下部底面と上部衝撃面とを有する底部
‐底部から上に向かって自由端部セクションまで延在する、複数のセクションから成る壁であって、内面を有する壁と衝撃面とは、底部に向かい合う上部端部で開口している空間を画定する
‐壁の少なくとも1つのセクションが、少なくとも1つの開口部を備え、当該開口部は、壁の内面から外面まで貫いて延在し、向かい合う側面によって画定される
‐開口部は、以下の断面プロファイルを有する
‐壁の周方向で見て、開口部はその最大幅を、自由端部セクションに隣接して備える
‐壁の周方向で見て、開口部はその最小幅を、底部に隣接して有する
‐開口部の最大幅は、衝撃パッドの壁の周全体の5%より大きい
‐その断面の70%より多くが上半分で壁の自由端部セクションに隣接して延在するプロファイルを有する開口部が、長手方向に、つまり壁の上部自由端部セクションから垂直に下に向かって底部の方向に延在する
【0026】
側面図には通常は開口部の幾何学形状が示され、そこでは、開口部の側面間の間隔が下部より上部で明らかに大きい。考えられ得る断面プロファイルは、以下の図の記述において表わされかつ説明されている。
【0027】
開口部は上に向かって貫通してよく、その結果壁の自由端部は中断される。しかし開口部は、不連続の開口部として壁に延在してもよく、全面で壁セクションによって取り囲まれていてよい。最適化された流れと流れ分配とのために、壁の内面から垂直に張り出している平面に対して鏡面対称に形成されている断面プロファイルが好ましい。別の表現をすると、壁が円筒状の周面を備える円形の平面図(底部)を有する衝撃パッドでは、対称平面が半径方向に延在する。
【0028】
開口部がアーチ状の側面を、特に最大幅のセクションと最小幅のセクションとの間に備えれば、流れの経過が最適化される。その際側面図では、漏斗あるいはノズルに似た開口部のプロファイルがもたらされる。
【0029】
さらなる実施形態は、開口部が、最大幅と最小幅との間の領域において、開口部の中心長手軸に対して凸形あるいは凹形にアーチ状になった側面を備えることを意図されている。これは、開口部の幅が、最大幅のセクションと最小幅のセクションとの間で減少し続けることを意味する。
【0030】
一実施形態に従えば、開口部は底部に対して所定の距離で終端する。したがって、衝撃パッドの内部には、鋳造プロセス時に定期的に溶融金属が存在する底部溜りが形成されることが結論付けられる。
【0031】
開口部は、壁の高さの少なくとも20%にわたって延在することになる。このような実施形態であれば、衝撃パッドの高さの80%までには、側部の壁開口部がないことになるであろう。そうすれば溶融物は、壁の上部端部セクションの領域においてのみ、少なくとも1つの開口部を介して衝撃パッドの側部から流出することになるであろう。
【0032】
開口部が、壁の高さの大部分にわたって、たとえば40%より多く、あるいは50%より多く、あるいは60%より多く、あるいは70%より多くにわたって延在すれば、この流れのプロファイルは最適化される。側部開口部のない衝撃パッド壁の領域は、底部から計算して壁の高さの少なくとも20%に相当してよい。これは、上部端部から計算して、壁の高さの80%にわたる開口部の最大拡張に相当する。
【0033】
溶融物を衝撃パッドの内部から開口部へ意図的に誘導するために、本発明の一実施形態は、底部の衝撃面と開口部との間の壁の内面を、水平に対して90度より小さい傾きで形成するように意図している。一種の「上り傾斜」が生じ、溶融物は、衝撃面に当たった後、当該上り傾斜に沿って横方向だけでなく横方向かつ上方に向かって導かれて、対応する開口部へ意図的に排出される。この実施形態も、以下の図の記述においてより詳細に表わされている。
【0034】
最後に挙げられた実施形態は、開口部が衝撃パッドの底部から距離をおいて終端することを前提としている。
【0035】
しかし、開口部は自由端部から底部まで連続的に延在してもよい。これは原則的に、特許文献2に記載の実施形態に対応する。周知の衝撃パッドとの決定的な違いは、衝撃パッドの壁のスリット(開口部)が、本発明に従えば明らかに大きいことであり、かつ特に、開口部の断面が、壁の上部縁部(自由角部)の方向に明らかに大きくなることを特徴としていることである。
【0036】
開口部の最大幅は、本発明に従えば、衝撃パッドの壁の周全体の5%より大きくなる。正方形の底面とそれに対応して4つの同じ壁セクションとを有する衝撃パッドにとっては、開口部の最大幅は、対応する壁セクションの幅の20%より大きくなることを意味する。この値は、本発明に従えば、長方形の平面図を有する衝撃パッドにも当てはまり、それも、開口部の幅の値はそれぞれ、開口部が配置される壁セクションに関連するという条件付きで当てはまる。
【0037】
円形の底部とそれに対応して円筒形の壁面とを有する衝撃パッドでは、次のことが当てはまる。すなわち、開口部の最大幅は衝撃パッドの壁の周全体の5%より大きくなる。壁を4つの同じセクションに分割すると、各セクションに関して、開口部の最大幅の値は、ここでもまた20%よりも大きくなる。
【0038】
これは同様に、楕円形の平面図を有する衝撃パッドの実施形態にも当てはまる。
【0039】
別の幾何学形状には、開口部の最大幅が壁の周全体の5%より大きくなるという条件の他に、以下の追加条件が当てはまる。すなわち、開口部の最大幅は、壁の周全体の4分の1の20%より大きくなくてはならない。最大幅は合理的には、衝撃パッド壁の周全体の25%に限定されている。
【0040】
開口部の最小幅(衝撃パッド底部に隣接している、開口部/スリットの端部にある)は、たとえば、壁の周全体の4%未満、2.5%未満、1.5%未満、1.0%未満、かつ、たとえばV字型のスリットの場合には、ほとんどゼロになってもよい。最大値は合理的には、最大5%である。
【0041】
具体的な値を例示すれば、以下である。
‐最大幅には、100mmより大、150mmより大、200mmより大、250mmより大、300mmより大
‐最小幅には、100mm未満、75mm未満、50mm未満、25mm未満、10mm未満。
【0042】
本発明の実施形態に従えば、開口部の対応する側面は、壁の内面と壁の対応する外面との間に、間隔がより大きくなりつつ設けられている。それによって一種の「ディフューザ」が生じ、衝撃パッドの壁の内面と外面との間の開口部の断面積が大きくなる(扇型に拡大する)結果となる。この方法によって、バルーン状の体積流が、冶金用容器の金属槽に供給され、冶金用容器内での乱流を低減させることになる。
【0043】
この実施形態では、側面は外部周囲に向かってアーチ状であってよく、それによって効果は促進される。
【0044】
本発明のさらなる特徴は、従属請求項の特徴およびその他の出願書類からもたらされる。その際、挙げられた特徴は、個々にあるいは任意に組み合わせて、本発明の実現にとって重要であり得る。明確に排除されない限りは、個々の実施形態の特徴は、技術的に原則的に可能な限り、互いに組み合わせられ得る。
【0045】
それぞれ概略的な描写で、以下が図に示される。