(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライナーを分配シュートに取り付けるためには、たとえば、ブロック状のライナー本体に鋳込みボルトが設けられたライナー部材を用いることができる。この場合、鋳込みボルトとナットを用いて、ライナー本体の底面側に第1の取付プレートを固定する。さらに、第1の取付プレートの一端の裏面側に、第2の取付プレートを溶接する。そして、ボルトおよびナット等を用いて、第2の取付プレートをシュート本体に固定する。
【0005】
上記のようなライナー部材の取付構造により、第1の取付プレートとシュート本体との間には、第2の取付プレートの厚みに相当する隙間が設けられる。鋳込みボルトの先端は、隙間の範囲内に収められる。隙間が設けられることにより、鋳込みボルトの先端がシュート本体に干渉することなく、ライナー部材をシュート本体に取り付けることができる。
【0006】
シュート本体と第1の取付プレートとの間に第2の取付プレートの厚みに相当する隙間が設けられる場合、ライナー本体は、シュート本体から離間して取り付けられる。よって、ライナー本体の表面により構成される内周面(すなわち原料を流下させるための空間)が小さくなってしまう。その結果、分配シュートから流れ出る原料の厚みは薄くなり、所定量の原料を分配するのに要する時間が長くなってしまう。このことは、高炉における生産性の向上を阻害する要因となり得る。
【0007】
本発明は、ライナー本体とシュート本体との間の隙間を低減することにより、原料を流下させるための空間を十分に確保することができるライナー構造およびライナー部材の取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係るライナー構造は、高炉内において原料を流れ方向に流下させる分配シュートのシュート本体上にライナー部材を取り付けるためのライナー構造であって、シュート本体上に設けられるブロック状のライナー本体と、ライナー本体に鋳込まれてライナー本体の底面から先端部が突出する棒状部材と、を含むライナー部材と、ライナー本体の底面とシュート本体との間に配置されるベースプレートと、を備え、ベースプレートは、ライナー本体の底面に対面すると共に棒状部材の先端部に対して接合される接合部と、底面から流れ方向または流れ方向に交差する方向に突出してシュート本体に固定される突出部と、を含
み、ライナー本体の底面とシュート本体との間隔は、ベースプレートの厚みに相当する間隔である。
本発明の他の側面に係るライナー構造は、高炉内において原料を流れ方向に流下させる分配シュートのシュート本体上に複数のライナー部材を取り付けるためのライナー構造であって、シュート本体上に設けられるブロック状のライナー本体と、ライナー本体に鋳込まれてライナー本体の底面から先端部が突出する棒状部材と、を含むライナー部材と、ライナー本体の底面とシュート本体との間に配置されるベースプレートと、を備え、ベースプレートは、ライナー本体の底面に対面すると共に棒状部材の先端部に対して接合される接合部と、底面から流れ方向または流れ方向に交差する方向に突出してシュート本体に固定される突出部と、を含み、流れ方向に交差する方向に並設されて隣り合うライナー部材の側面が互いに当接しており、流れ方向に垂直な断面において、複数のライナー部材の上面が連続して多角形状をなす。
【0009】
このライナー構造によれば、ブロック状のライナー本体が鋳造される際、ライナー本体には、棒状部材が鋳込まれる。棒状部材の先端部は、ライナー本体の底面から突出する。ライナー本体の底面とシュート本体との間には、ベースプレートが配置される。このベースプレートの接合部は、棒状部材の先端部に対して接合される。これによって、ベースプレートがライナー部材に固定される。さらに、ベースプレートの突出部が、シュート本体に固定される。このように、1枚のベースプレートによって、ライナー部材が固定され、さらに、ライナー部材がシュート本体に固定される。ライナー本体の底面とシュート本体との間隔は、1枚のベースプレートの厚みに相当する間隔であればよい。よって、第1および第2の取付プレートを設ける場合に比して、ライナー本体とシュート本体との間の隙間を低減することができる。隙間の低減により、ライナー本体の表面側に形成される、原料を流下させるための空間を十分に確保することができる。その結果として、分配シュートから流れ出る原料の厚みを確保でき、所定量の原料を分配するのに要する時間を短縮できる。このライナー構造は、高炉における生産性の向上に寄与し得る。
【0010】
ライナー本体の底面から突出する先端部には雄ねじ部が設けられており、ベースプレートの接合部には、板厚方向に貫通する貫通孔が設けられており、貫通孔には、棒状部材の先端部と先端部に螺着されるナットとが配置され、ナットの外周部に貫通孔の周縁部が接合されることにより、接合部が先端部に対して接合される態様であってもよい。この場合、ベースプレートに設けられた貫通孔に、棒状部材の先端部と、これに螺着されるナットとが配置される。よって、先端部およびナットの全部または大部分を、ベースプレートの厚みの範囲内に収めることができる。そして、貫通孔の周縁部が、ナットの外周部に接合される。よって、ライナー本体とシュート本体との間の隙間を低減することができる。また、ナットを介してベースプレートを接合しているため、棒状部材を介してライナー本体に溶接熱が入ること(溶接入熱)を防止することができる。
【0011】
ベースプレートの接合部には、板厚方向に貫通する貫通孔が設けられており、貫通孔には、棒状部材の先端部が配置されており、先端部に貫通孔の周縁部が接合されることにより、接合部が先端部に対して接合される態様であってもよい。この場合、ベースプレートに設けられた貫通孔に、棒状部材の先端部が配置される。よって、先端部の全部または大部分をベースプレートの厚みの範囲内に収めることができる。そして、貫通孔の周縁部が先端部に接合される。よって、簡易な構造により、ライナー本体とシュート本体との間の隙間を低減することができる。
【0012】
ライナー本体の底面から突出する先端部には雄ねじ部が設けられており、ベースプレートの接合部には、先端部が挿入される挿入孔と、挿入孔のシュート本体側に連通し挿入孔よりも拡径されたナット収容部と、が設けられており、挿入孔に挿入されナット収容部に配置された先端部に、ナットが螺着され、そのナットが挿入孔の周縁部に当接することにより、接合部が先端部に対して締結される態様であってもよい。この場合、ベースプレートには、棒状部材の先端部に螺着されたナットが収容されるナット収容部が設けられる。よって、先端部およびナットの全部または大部分を、ベースプレートの厚みの範囲内に収めることができる。そして、ナットが挿入孔の周縁部に当接することにより、接合部が先端部に対して締結される。よって、簡易な構造により、ライナー本体とシュート本体との間の隙間を低減することができる。
【0013】
本発明の一側面に係るライナー部材の取付方法は、高炉内において原料を流れ方向に流下させる分配シュートのシュート本体上にライナー部材を取り付けるライナー部材の取付方法であって、ライナー部材は、シュート本体上に設けられるブロック状のライナー本体と、ライナー本体に鋳込まれてライナー本体の底面から先端部が突出する棒状部材と、を含み、ライナー本体の底面とシュート本体との間に配置されるベースプレートを用い、ベースプレートの一部分を、ライナー本体の底面に対面させると共に棒状部材の先端部に対して接合し、ベースプレートの他の部分を、底面から流れ方向または流れ方向に交差する方向に突出させてシュート本体に固定
し、ライナー本体の底面とシュート本体との間隔をベースプレートの厚みに相当する間隔とする。このライナー部材の取付方法によれば、上述したライナー構造と同様の作用・効果が奏される。
本発明の他の側面に係るライナー部材の取付方法は、高炉内において原料を流れ方向に流下させる分配シュートのシュート本体上に複数のライナー部材を取り付けるライナー部材の取付方法であって、ライナー部材は、シュート本体上に設けられるブロック状のライナー本体と、ライナー本体に鋳込まれてライナー本体の底面から先端部が突出する棒状部材と、を含み、ライナー本体の底面とシュート本体との間に配置されるベースプレートを用い、ベースプレートの一部分を、ライナー本体の底面に対面させると共に棒状部材の先端部に対して接合し、流れ方向に交差する方向で隣り合うライナー部材の側面を互いに当接させ、流れ方向に垂直な断面において、複数のライナー部材の上面が連続して多角形状をなすように、複数のライナー部材を並設する工程と、ベースプレートの他の部分を、底面から流れ方向または流れ方向に交差する方向に突出させてシュート本体に固定する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ライナー本体とシュート本体との間の隙間を低減することにより、原料を流下させるための空間を十分に確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1〜
図3を参照して、第1実施形態について説明する。
図1に示されるように、分配シュート1は、高炉内に設置される樋状の装置である。分配シュート1は、炉頂装入装置の一部として高炉内に設置されて、炉頂に供給された原料を高炉本体内に導入する。分配シュート1は、上端に設けられた一対の吊り部2と、吊り部2に連結されて分配シュート1の長手方向に延びるシュート本体4とを備える。吊り部2は、図示しないギア機構に連結されている。分配シュート1は、傾斜した状態で保持されており、ギア機構によって、旋回自在かつ傾動自在になっている。分配シュート1は、鉄鉱石またはコークス等の原料X(
図7(a)および(b)参照)を所定の方向に流下させ、落下端部4cから落下させる。吊り部2およびシュート本体4は、たとえばステンレス製である。
【0018】
図2に示されるように、吊り部2の長手方向に垂直な断面は、U字状である。シュート本体4の長手方向に垂直な断面は、U字状である。吊り部2は、シュート本体4よりも厚い。シュート本体4は長手方向において、吊り部2よりも長い。吊り部2およびシュート本体4は、長手方向に延びる流下空間Sを形成している。吊り部2およびシュート本体4は、原料Xを収容した状態で、原料Xを流れ方向D1に流下させる。流れ方向D1は、分配シュート1の長手方向(軸線方向)に等しい。なお、図示は省略されているが、吊り部2およびシュート本体4の下方には、U字状の防熱板が配置されており、防熱板と吊り部2およびシュート本体4との間には、断熱材が配置されている。
【0019】
図1および
図2に示されるように、本実施形態のライナー構造5は、吊り部2およびシュート本体4のそれぞれに設けられている。ライナー構造5は、吊り部2上およびシュート本体4上に取り付けられた複数のライナー部材6を備える。各ライナー部材6は、ライナー本体7と、ライナー本体7の底部に固定された鋳込みボルト(棒状部材)8とを備える(
図3(a)および(b)も参照)。耐摩耗性を有する鋼製のライナー本体7は、ブロック状をなしており、吊り部2上およびシュート本体4上に敷き詰められている。
【0020】
なお、この実施形態の説明において、「ライナー本体7」はライニング機能を有するブロック状の単体を意味する。「ライナー部材6」はライナー本体7と、ライナー本体7に一体化された鋳込みボルト8とを意味する。「ライナー構造5」は、たとえば複数のライナー部材6と、これらを取り付けるための各種の取付部材とを意味する。
【0021】
複数のライナー本体7は、流れ方向D1に並設されると共に、流れ方向D1に交差する横方向D2に並設されている。言い換えれば、各々のライナー本体7は、流れ方向D1に分割されると共に、横方向D2に分割された分割ライナーである。ここで、横方向D2とは、流れ方向D1に直交する方向であり、U字状の吊り部2またはシュート本体4の内面に沿う方向である。すなわち、横方向D2は、シュート本体4の下部を構成する湾曲部4a(
図2参照)に沿って湾曲して延び、さらに、シュート本体4の上部を構成する平板部4bに沿って直線状に延びる。吊り部2に設けられたライナー構造5と、シュート本体4に設けられたライナー構造5とは、基本的に同様である。
【0022】
以下、シュート本体4に設けられたライナー構造5について説明する。複数のライナー本体7は、一方の平板部4b、湾曲部4aおよび他方の平板部4bにわたって設けられている。ライナー本体7が設けられた横方向D2の全体領域を基準として、各ライナー本体7は、横方向D2にたとえば4〜12分割されている(
図2に示す例では9分割)。各ライナー本体7の流れ方向D1(長手方向)の長さは、たとえば200〜600mmである。なお、ライナー本体7の長さはこの範囲に限られない。たとえば、ライナー本体7の長さは、1m〜2m等とすることができる。
【0023】
図3(a)および(b)に示されるように、全体として板状をなすライナー本体7は、たとえば高クロム(Hi−Cr)鋳鉄からなる鋳物である。ライナー本体7の上面7aは、平坦である。この上面7aは、流下空間Sに面するライナー本体7の表面であり、ライナー本体7に原料Xが載る面である。なお、ライナー本体7の上面7a付近には、タングステンカーバイド等からなる複数の柱状体が鋳包まれてもよい。ライナー本体7の底面7bは、シュート本体4の湾曲部4aに沿って(すなわち横方向D2に沿って)湾曲しており(
図2参照)、流れ方向D1に沿って真っ直ぐに延びている(
図1参照)。
【0024】
ライナー本体7の流れ方向D1の両端面である一対の第1側面7cは、流れ方向D1に延びる底面7bに対して垂直に形成されている。一対の第1側面7cは、流れ方向D1に隣り合う他のライナー部材6の第1側面7cに当接する当接面である。ライナー本体7の横方向D2の両端面である一対の第2側面7dは、横方向D2に延びる底面7bに対して垂直に形成されている。言い換えれば、第2側面7dは、湾曲部4aの径方向に沿って延びている。底面7bは横方向D2に湾曲しているが、第2側面7dは、第2側面7dが形成された位置における、湾曲する底面7bの接線に対して垂直に延びている。一対の第2側面7dは、横方向D2に隣り合う他のライナー部材6の第2側面7dに当接する当接面である。ライナー部材6の第2側面7dの高さは、そのライナー部材6に隣接する他のライナー部材6の第2側面7dの高さに略等しい。
【0025】
底面7bには、横方向D2の中央において、ライナー本体7に鋳込まれた2本の鋳込みボルト8が並設されている。2本の鋳込みボルト8は、流れ方向D1に並設されており、流れ方向D1に間隔を有している。鋳込みボルト8は、それぞれ、底面7bに垂直に設けられており、底面7bから下方に向けて突出している。鋳込みボルト8の基端部8aは、ライナー本体7に埋設されており、先端部8bは、底面7bから突出している。この先端部8bには、雄ねじ部が設けられている。
【0026】
なお、シュート本体4の湾曲部4aに設けられるライナー部材6について上述したが、シュート本体4の平板部4bに設けられるライナー部材6では、底面7bが平坦に形成されてもよい。この場合、ライナー本体7は直方体状をなす。また、湾曲部4aに設けられる複数のライナー部材6は、湾曲部4aの湾曲形状が同じである場合は同一の形状および大きさとすることができるが、設けられる位置によって湾曲部4aの湾曲形状が異なる場合、適宜、底面7bの形状を変更することができる。
【0027】
図4〜
図6に示されるように、ライナー構造5は、ライナー本体7の底面7bとシュート本体4との間に配置されたベースプレート10を備える。ライナー構造5では、1枚のU字状のベースプレート10に、複数枚のライナー部材6が固定されている。1枚のベースプレート10に固定されるライナー部材6の個数は、2個または3個としてもよく、4個以上としてもよい。なお、1枚のベースプレート10に1個のライナー部材6を固定してもよい。
【0028】
ベースプレート10は、シュート本体4の横方向D2に延在している。ライナー部材6が設けられる横方向D2の全体領域に対して、1枚のベースプレート10が設けられてもよく、2枚のベースプレート10が設けられてもよく、3枚以上のベースプレート10が設けられてもよい。言い換えれば、ライナー部材6が設けられる横方向D2の全体領域を基準として、ベースプレート10は、横方向D2に分割されていなくてもよいし、横方向D2に2分割または3以上に分割されていてもよい。ライナー部材6が設けられる横方向D2の全体領域を基準として、ベースプレート10の分割数は、ライナー部材6の分割数よりも少ないことが好ましい。
【0029】
ベースプレート10は、ライナー本体7の底面7bに対面し、鋳込みボルト8の先端部8bに対して接合された接合部10aと、底面7bから流れ方向D1の上流側に突出する突出部10bとを含む。より詳細には、ベースプレート10のうち流れ方向D1の下流側が接合部10aになっており、ベースプレート10のうち流れ方向D1の上流側が突出部10bになっている。ベースプレート10は、単一の板状部材である。突出部10bは、流れ方向D1における接合部10aの上流側の端面に連設されている。接合部10aと突出部10bとは、等しい厚みを有しており、流れ方向D1において滑らかに連続している。すなわち、ベースプレート10には、段差は形成されていない。接合部10aは、ライナー本体7の底面7bの一部分に対面している。ライナー本体7の他の部分、すなわち流れ方向D1の下流側の端部7baは、接合部10aに対面していない。この端部7baは、接合部10aよりも流れ方向D1の下流側に突出している。
【0030】
図5(a)に示されるように、ベースプレート10の接合部10aには、接合部10aを板厚方向に貫通する2本の円柱状の貫通孔10abが設けられている。各貫通孔10abには、鋳込みボルト8の先端部8bが配置されている。先端部8bの先端部8bにはナット11が螺着されている。貫通孔10abの直径は、ナット11の外径よりも僅かに大きく、先端部8bおよびナット11は、貫通孔10ab内に配置されている。
【0031】
先端部8bは、接合部10aの下面(シュート本体4側の面)に略等しい位置で終端している。ナット11は、接合部10aの下面(シュート本体4側の面)よりもライナー本体7側に収まっている。なお、先端部8bおよびナット11が接合部10aの下面から僅かに突出していてもよい。また、ナット11が接合部10aの下面から突出しておらず、先端部8bのみが接合部10aの下面から僅かに突出していてもよい。
【0032】
図5(b)に示されるように、ナット11は、一対の円弧状の外周部11aと、外周部11a間に設けられた平坦部11bとを含む。対向する平坦部11bが設けられることにより、ナット11は、工具によって貫通孔10ab内で回転可能になっている。ナット11の外周部11aには、貫通孔10abの周縁部が溶接によって接合されている。
図5(a)および(b)に示されるように、ナット11の外周部11aと接合部10aとの間に、溶接部Wが形成されている。溶接部Wは、接合部10aの下面(シュート本体4側の面)に形成されている。このようにして、ベースプレート10の接合部10aが、鋳込みボルト8の先端部8bに対して接合されている。
【0033】
ベースプレート10の突出部10bには、ベースプレート10を板厚方向に貫通する孔部10cが形成されている。この孔部10cには皿ボルト12が挿入され、この皿ボルト12およびナット13によって、ベースプレート10の突出部10bがシュート本体4に固定されている。なお、ベースプレート10とシュート本体4との間には、皿ボルト12およびナット13からなる締結部の当たりが出せるように、スペーサ16,17が設けられている。
【0034】
このように、ライナー構造5の流れ方向D1の上流側の端部がベースプレート10を介してシュート本体4に固定されている。一方、ライナー構造5の流れ方向D1の下流側の端部(すなわちライナー本体7の下流側の端部7ba)は、流れ方向D1に隣り合うライナー構造5の突出部10b上に載置されている。突出部10bに設けられる皿ボルト12の頭部は、突出部10bの表面よりも内側に収まっている。これにより、平坦な突出部10b上にライナー構造5の流れ方向D1の下流側の端部を支障なく載置できる。皿ボルト12の頭部は隣接するライナー構造5のライナー本体7によって覆われているため、皿ボルト12が保護されており、皿ボルト12の摩耗が防止されている。
【0035】
流れ方向D1に隣り合うライナー部材6,6は、互いに当接していてもよいし、僅かな隙間を有してもよい。ライナー部材6が、少なくとも皿ボルト12の頭部を覆っていればよい。
【0036】
図6に示されるように、1枚のベースプレート10には、その延在方向に所定の間隔をおいて、複数の孔部10cが形成されている。孔部10cのピッチは、シュート本体4に設けられている孔部4eのピッチと同一である。ベースプレート10に形成された孔部10cの個数は、ライナー部材6の個数よりも少ない(
図6に示す例では5個)。
【0037】
続いて、ライナー構造5の構築方法すなわちライナー部材6の取付方法について説明する。なお、ライナー構造5を交換(更新)する場合も、同様の方法である。まず、防熱板および断熱材を除去して、シュート本体4を露出させる。次に、複数のライナー部材6、それぞれ複数の皿ボルト12、ナット13およびスペーサ16,17等を用意する。また、1枚または複数枚のベースプレート10を用意する。
図6に示される例では、9枚のライナー部材6と、1枚のベースプレート10を用意している。皿ボルト12、ナット13およびスペーサ16は、孔部10cの個数に対応させて、たとえば5個ずつ用意する。
【0038】
複数のライナー部材6を流れ方向D1および横方向D2に配置する。このとき、流れ方向D1の下流端に位置するライナー部材6から配置していく。ライナー部材6の流れ方向D1の下流端とシュート本体4との間には、スペーサ18(
図4参照)が設けられる。
【0039】
複数のライナー部材6を横方向D2に並設する並設工程では、
図6に示されるように、1枚のベースプレート10の接合部10aをライナー本体7の底面7bに対面させ、鋳込みボルト8の先端部8bに対して接合する。具体的には、ナット11を介し、溶接によって、先端部8bに対して接合部10aを接合する。複数のライナー部材6を取付ける際、たとえば、シュート本体4の寄りに配置されるライナー部材6、すなわち低い位置に配置されるライナー部材6からベースプレート10に接合していく。底部寄りのライナー部材6を接合したら、そのライナー部材6に隣り合うライナー部材6を配置する。この際、ライナー部材6の第2側面7dを互いに当接させる。この取付手順を繰り返すことにより、複数のライナー部材6の上面7aが連続して多角形状をなすように、複数のライナー部材6を並設する。
【0040】
複数のライナー部材6をベースプレート10に取り付ける際、ベースプレート10の突出部10bをライナー本体7の底面7bから流れ方向D1の上流側に突出させる。孔部10cおよび孔部4eに皿ボルト12を挿入し、シュート本体4の裏面側から順次ナット13を取り付け、シュート本体4に対してベースプレート10を締結していく。このようにして、ベースプレート10の突出部10bをシュート本体4に固定していく。
【0041】
上記手順を経て構築されたライナー構造5では、
図2に示されるように、複数のライナー部材6が横方向D2に並設されており、隣り合うライナー本体7の第2側面7d同士が当接している。複数のライナー本体7の上面7aは連続している。流れ方向D1に垂直な断面において、複数の上面7aは多角形状をなしている。言い換えれば、ライナー構造5は、多角形状のライナー表面15を含む。
【0042】
また、ライナー構造5では、ベースプレート10とシュート本体4との間には、スペーサ16,17の厚みに相当する程度の僅かな間隙19が形成されている(
図5(a)参照)。流れ方向D1の下流側に位置するベースプレート10の突出部10b上に、流れ方向D1に隣り合うライナー本体7の端部7baが載置されている(
図4参照)。このライナー本体7によって、皿ボルト12の頭部が覆われている。
【0043】
上記したライナー構造5およびライナー部材6の取付方法によれば、シュート本体4上にライナー本体7が設けられることで、原料Xはライナー本体7上を流下する。これにより、衝撃または熱からのシュート本体4の保護が図られる。ライナー本体7の上面7aは平坦であるため、ライナー本体7の近傍を流下する原料Xの流下速度が低下することを抑制できる。
図7(a)に示されるように、分配シュート1によって原料Xを分配しているとき、分配シュート1は、所定の傾動角度にて軸線Lを中心に旋回する。流れ方向D1に垂直な断面において、通常、原料Xは横方向D2に偏っている。この場合でも、シュート本体4の落下端部4cから落下する原料Xは、シュート本体4に対する位置の分布に影響を受けにくくなっている。すなわち、原料Xは、ライナー部材6に対する遠近またはライナー構造5の底部からの高さに関わらず、略均等な速度で落下する。これによって、原料Xの分配精度が高められている。
【0044】
また、ブロック状のライナー本体7が鋳造される際、ライナー本体7には、鋳込みボルト8が鋳込まれる。鋳込みボルト8の先端部8bは、ライナー本体7の底面7bから突出する。ライナー本体7の底面7bとシュート本体4との間には、ベースプレート10が配置される。このベースプレート10の一部分である接合部10aは、鋳込みボルト8の先端部8bに対して接合されている。これによって、ベースプレート10がライナー部材6に固定されている。さらに、ベースプレート10の他の部分である突出部10bが、シュート本体4に固定される。このように、1枚のベースプレート10によって、ライナー部材6が固定され、さらに、ライナー部材6がシュート本体4に固定される。ライナー本体7の底面7bとシュート本体4との間隔は、1枚のベースプレート10の厚みに相当する間隔であればよい。よって、ライナー本体7とシュート本体4との間の隙間を低減することができる。隙間の低減により、ライナー本体7の上面7a側に形成される、原料Xを流下させるための空間を十分に確保することができる。その結果として、分配シュート1から流れ出る原料Xの厚みを確保でき、所定量の原料Xを分配するのに要する時間を短縮できる。このライナー構造5は、高炉における生産性の向上に寄与し得る。
【0045】
図10に示されるように、従来のライナー構造100では、鋳込みボルト101とナット102を用いて、ライナー本体103の底面側に第1の取付プレート104を固定し、さらに、第1の取付プレート104の一端の裏面側に、第2の取付プレート105を溶接している。そして、ボルト106およびナット107等を用いて、第2の取付プレート105をシュート本体4に固定している。この場合、鋳込みボルト101の先端は、第2の取付プレート105の厚みに相当する隙間108に突出し、この隙間108の範囲内に収められる。しかしながら、このような隙間108が設けられることにより、ライナー構造100全体としての厚みが増大してしまう。ライナー本体103の表面103aにより構成される内周面(すなわち原料を流下させるための空間)が小さくなってしまう。その結果、分配シュート1から流れ出る原料Xの厚みは薄くなり、所定量の原料Xを分配するのに要する時間が長くなってしまっていた。
【0046】
上記実施形態のライナー構造5およびライナー部材6の取付方法によれば、接合部10aと突出部10bとが滑らかに連続した1枚のベースプレート10によって、ライナー部材6がシュート本体4に取り付けられる。ベースプレート10とシュート本体4との間には、僅かな間隙19が形成されるに過ぎない。よって、ライナー構造5全体としての厚みが低減されている。
【0047】
また、ライナー構造5では、ベースプレート10に設けられた貫通孔10abに、鋳込みボルト8の先端部8bと、これに螺着されるナット11とが配置される。よって、先端部8bおよびナット11の全部(または大部分)が、ベースプレート10の厚みの範囲内に収められている。そして、貫通孔10abの周縁部が、ナット11の外周部11aに接合されている。よって、ライナー本体7とシュート本体4との間の隙間を低減することができる。また、ナット11を介してベースプレート10を接合しているため、鋳込みボルト8を介してライナー本体7に溶接熱が入ること(溶接入熱)が防止されている。
【0048】
図8を参照して、第2実施形態のライナー構造について説明する。第2実施形態のライナー構造5Aが第1実施形態のライナー構造5と違う点は、雄ねじ部が設けられた鋳込みボルト8を含むライナー部材6に代えて、ライナー本体7に鋳込まれた丸棒部材21を含むライナー部材6Aを用いた点である。丸棒部材21には、雄ねじ部は設けられていない。ベースプレート10Aの接合部10aには、板厚方向に貫通する貫通孔22が設けられている。貫通孔22の直径は、丸棒部材21の直径よりも僅かに大きい。貫通孔22には、丸棒部材21の先端部21bが配置されており、先端部21bに貫通孔22の周縁部が溶接によって接合されている。
図8(a)および(b)に示されるように、先端部21bの外周部と接合部10aとの間に、溶接部Wが形成されている。溶接部Wは、接合部10aの下面(シュート本体4側の面)に形成されている。このようにして、接合部10aが丸棒部材21の先端部21bに対して接合されている。この場合、先端部21bの全部または大部分が、ベースプレート10Aの厚みの範囲内に収められている。そして、貫通孔22の周縁部が先端部21bに接合される。よって、簡易な構造により、ライナー本体7とシュート本体4との間の隙間を低減することができる。
【0049】
図9を参照して、第3実施形態のライナー構造について説明する。第3実施形態のライナー構造5Bが第1実施形態のライナー構造5と違う点は、貫通孔10abが形成されたベースプレート10に代えて、鋳込みボルト(棒状部材)8Bの先端部8bが挿入される挿入孔23と、挿入孔23のシュート本体4側に連通するナット収容部24と、が設けられたベースプレート10Bを用いた点である。挿入孔23の直径は、鋳込みボルト8Bの直径よりも僅かに大きく、円柱状の空間であるナット収容部24は、挿入孔23よりも更に拡径されている。鋳込みボルト8Bの先端部8bは、挿入孔23に挿入されて、ナット収容部24内に突出している。この先端部8bにナット25が螺着され、そのナット25が、挿入孔23の周縁部(挿入孔23とナット収容部24との間の段部)に当接している。このようにして、接合部10aがライナー部材6Bの鋳込みボルト8の先端部8bに対して締結されている。この場合、先端部8bおよびナット25の全部または大部分が、ベースプレート10Bの厚みの範囲内に収められている。そして、ナット25が挿入孔23の周縁部に当接することにより、接合部10aが先端部8bに対して締結されている。よって、簡易な構造により、ライナー本体7とシュート本体4との間の隙間を低減することができる。しかも、この場合、鋳込みボルト8やナット25に対する溶接等は不要になっている。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。ライナー本体7に鋳込まれた棒状部材に対するベースプレートの接合態様は、種々の変形態様を採用することができる。たとえば、鋳込みボルト8,8Bや丸棒部材21が貫通孔10ab、貫通孔22、挿入孔23等に挿入される場合に限られない。棒状部材がベースプレートに接合されていればよく、たとえば、ベースプレートの側方の端部に棒状部材が溶接等によって接合されてもよい。
【0051】
ベースプレート10,10A,10Bは、ライナー本体7の底面7bから、流れ方向D1の上流側に突出する場合に限られず、ライナー本体7の底面7bから、流れ方向D1の下流側に突出してもよい。また、ベースプレート10,10A,10Bは、ライナー本体7の底面7bから、シュート本体4の横方向D2に突出してもよい。
【0052】
また、シュート本体4に取り付けられたライナー部材6,6A,6Bのうち、すべてのライナー部材6,6A,6Bにおいて上面7aが連続している必要はない。たとえば、一部分の上面7aが連続しており、他の部分の上面7aは非連続であってもよい。1つの分配シュート1において、上記したようなフラットライニングタイプのライナー構造5,5Cと、ライナー部材の上面に凹凸が設けられたセルフライニングタイプのライナー構造とを組み合わせてもよい。
【課題】ライナー本体とシュート本体との間の隙間を低減することにより、原料を流下させるための空間を確保することができるライナー構造およびライナー部材の取付方法を提供する。
【解決手段】ライナー構造5は、シュート本体4上に設けられるブロック状のライナー本体7と、ライナー本体7に鋳込まれてライナー本体7の底面7bから先端部8bが突出する棒状部材8と、を含むライナー部材6と、ライナー本体7の底面7bとシュート本体4との間に配置されるベースプレート10と、を備える。ベースプレート10は、ライナー本体7の底面7bに対面すると共に棒状部材8の先端部8bに対して接合される接合部10aと、底面7bから流れ方向D1または流れ方向に交差する方向D2に突出してシュート本体4に固定される突出部10bと、を含む。