(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5833808
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
F17C 13/02 20060101AFI20151126BHJP
F17C 5/06 20060101ALI20151126BHJP
F17C 13/12 20060101ALI20151126BHJP
H01M 8/00 20060101ALI20151126BHJP
H01M 8/04 20060101ALI20151126BHJP
H01M 8/10 20060101ALI20151126BHJP
【FI】
F17C13/02 301Z
F17C5/06
F17C13/12 301Z
H01M8/00 Z
H01M8/04 H
H01M8/04 Z
H01M8/10
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-246918(P2009-246918)
(22)【出願日】2009年10月27日
(65)【公開番号】特開2011-94652(P2011-94652A)
(43)【公開日】2011年5月12日
【審査請求日】2012年8月7日
【審判番号】不服2014-17633(P2014-17633/J1)
【審判請求日】2014年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】大川内 栄治
(72)【発明者】
【氏名】石戸谷 尽生
【合議体】
【審判長】
渡邊 豊英
【審判官】
栗林 敏彦
【審判官】
蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−295996(JP,A)
【文献】
特開2003−166699(JP,A)
【文献】
特開2003−336795(JP,A)
【文献】
特開2006−214512(JP,A)
【文献】
特開2007−112333(JP,A)
【文献】
特開2007−329105(JP,A)
【文献】
特開2008−232418(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/087944(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/06,13/02,13/12
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池に供給する燃料ガスを収容する収容部と、
外部の補給装置から前記収容部に燃料ガスを補給するための補給路と、
前記収容部又は前記補給路からの燃料ガスのガス漏れを検出する検出手段と、
前記外部の補給装置と通信する通信部と、を備えた移動体であって、
前記検出手段は、前記補給装置から燃料ガスの補給が開始される際にガス漏れ検出を行い、当該検出手段がガス漏れを検出した場合、前記通信部は、前記補給装置からの燃料ガスの補給を停止させるための制御信号を前記補給装置に送信し、
前記燃料電池の駆動を制御するFC制御装置と、前記通信部の通信を制御する通信制御装置とを別体に備え、走行時は、前記FC制御装置のみに電源が入り、燃料ガスの補給時には、前記通信制御装置のみに電源が入るように構成されていることを特徴とする移動体。
【請求項2】
前記FC制御装置は、前記移動体の駆動を制御し、該FC制御装置は、前記検出手段がガス漏れを検出した場合、以降の移動体の起動を抑止する請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記検出手段は、前記補給路及び前記収容部の外部であって移動体内部の空間に存在する燃料ガスを化学的に検知することでガス漏れを検出する請求項1又は請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
前記検出手段は、前記補給装置から補給した燃料ガスの流量と、前記補給路を流れる又は前記収容部に流入する燃料ガスの流量との差分に基づいてガス漏れを検出する請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体、とりわけ燃料電池を搭載した移動体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような移動体として、近年、反応ガス(燃料ガス及び酸化ガス)の供給を受けて発電する燃料電池を搭載した車両(以下、「燃料電池自動車」ともいう)の開発が進められている。燃料電池自動車は、燃料ガスを高圧で充填したタンクを備え、このタンクから燃料電池に燃料ガスを供給するようになっている。
【0003】
燃料電池自動車においては、走行に伴いタンクに残存する燃料ガスの充填量が少なくなってきた場合は、燃料電池自動車を停止させ、例えばガソリンスタンド等に設置される燃料ガスの補給装置から燃料ガスを補給する必要があり、その際、燃料ガスのガス漏れが問題になる。
【0004】
そのため、例えば、特許文献1では、燃料タンクに燃料ガスを補給するためのガス充填装置において、ガス充填の際に自動車に接続される充填カップリング等の近傍にガスセンサを設け、ガスセンサによりガスが検出された場合には、タンクへのガス充填を禁止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−232418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたガス充填装置を用いたガス漏れ検出では、燃料ガスの補給時に、ガス充填装置内又は燃料電池自動車との接続部分のガス漏れは検出できるものの、車両のフロア下等の車両内でガス漏れが発生した場合には、そのガス漏れを検出することができない。そのため、車両においてガス漏れが発生しているにもかかわらず、補給装置からの燃料ガスの補給を継続してしまうおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、燃料ガスの補給時に移動体内部でガス漏れが発生した場合であっても、ガス漏れを的確に検出し、燃料ガスの補給を停止させることのできる移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。すなわち、燃料電池と、前記燃料電池に供給する燃料ガスを収容する収容部と、外部の補給装置から前記収容部に燃料ガスを補給するための補給路と、前記収容部又は前記補給路からの燃料ガスのガス漏れを検出する検出手段と、前記外部の補給装置と通信する通信部と、を備えた移動体であって、前記検出手段は、前記補給装置から燃料ガスの補給が開始される際にガス漏れ検出を行い、当該検出手段がガス漏れを検出した場合、前記通信部は、前記補給装置からの燃料ガスの補給を停止させるための制御信号を前記補給装置に送信
し、前記燃料電池の駆動を制御するFC制御装置と、前記通信部の通信を制御する通信制御装置とを別体に備え、燃料ガスの補給時には、前記通信制御装置のみに電源が入るように構成されている。
【0009】
上記構成によれば、補給装置から燃料ガスの補給が開始される際に検出手段によりガス漏れ検出を行うので、燃料ガスの補給時において、移動体内部の収容部及び補給路からのガス漏れを検出できる。そして、ガス漏れが検出された場合には、通信部は、補給装置からの燃料ガスの補給を停止させるための制御信号を送信するので、補給装置からの燃料ガスの補給を停止させることができ、移動体内部でガス漏れが生じているのにもかかわらず、補給装置からの燃料ガスの補給を継続してしまうといった事態を防止できる。
また、FC制御装置は燃料補給時には電源が停止されているので、燃料補給時の電力を抑制することができる。
【0012】
また、上記構成において、前記FC制御装置は、前記移動体の駆動を制御し、該FC制御装置は、前記検出手段がガス漏れを検出した場合、以降の移動体の起動を抑止するようにしてもよい。
【0013】
上記構成によれば、移動体内部の収容部及び補給路からのガス漏れが検出された場合、FC制御装置は以降の移動体の起動を抑止するので、移動体内部に可燃性の燃料ガスが残っているにかかわらず移動体を起動してしまうといった事態を防止でき、安全性を高めることができる。
【0018】
また、上記構成において、前記検出手段は、前記補給路及び前記収容部の外部であって移動体内部の空間に存在する燃料ガスを化学的に検知することでガス漏れを検出するようにしてもよい。
【0019】
上記構成によれば、化学的な手段で燃料ガスを検知するので、補給路及び収容部の外部かつ移動体内部の空間に存在する燃料ガスの存在をより確実に検出することができる。
【0020】
また、上記構成において、前記検出手段は、前記補給装置から補給した燃料ガスの流量と、前記補給路を流れる又は前記収容部に流入する燃料ガスの流量との差分に基づいてガス漏れを検出するようにしてもよい。
【0021】
上記構成によれば、補給装置から補給した燃料ガスの流量と、実際に補給路又は収容部に流入する燃料ガスの流量と把握すれば、ガス漏れが検出できるので、より簡易な方法でガス漏れを検出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、燃料ガスの補給時に移動体内部でガス漏れが発生した場合であっても、ガス漏れを的確に検出し、燃料ガスの補給を停止させることのできる移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池自動車の全体構成を示す模式図。
【
図2】
参考例における燃料電池自動車の制御的な構成を示すブロック図。
【
図3】上記燃料電池自動車のガス漏れ検出処理を説明するためのフローチャート。
【
図4】
本発明の実施形態に係る燃料電池自動車の制御的な構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る移動体について説明する。各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。尚、本実施形態においては、燃料電池自動車を例に説明する。勿論、移動体としては、燃料電池自動車に限られず、例えば、ロボット、船舶、航空機等でもかまわない。また、本発明は、燃料電池だけを駆動源とする移動体に限られず、例えば、燃料電池と2次電池を備えたプラグインハイブリッド車等でも適用可能である。
【0025】
(全体構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池自動車の全体構成を示す模式図である。
図1に示した燃料電池自動車1(以下、単に「車両1」ともいう)は、FC本体2、燃料ガス供給路3、タンク4、充填口5、燃料ガス補給路6、水素ディテクタ7、通信機8、バッテリ9及びECU10等を備えている。
【0026】
FC本体2は、例えば固体高分子電解質型の燃料電池であり、多数の単セルを積層したスタック構造を有する。各単セルは、膜・電極接合体(以下、「MEA」ともいう)およびMEAを両側から挟みこむように配置された一対のセパレータを有している。各MEAは、詳細には、高分子電解質膜と、この高分子電解質膜を両面から挟みこむように配置された一対の触媒層とで構成される。一対の触媒層は、アノード及びカソードとして機能し、触媒層と電解質膜との界面において電極反応が行われる。
【0027】
FC本体2の各単セルのアノードには、タンク4に高圧で充填されている燃料ガスが燃料ガス供給路3を介して供給される。燃料ガス供給路3には、主止弁や調圧弁(レギュレータやインジェクタ等)が設けられ、これらの弁の開閉をECU10からの制御信号に応じて制御することで、FC本体2への燃料ガスの供給量やタイミングを制御する。一方、FC本体2の各単セルのカソードには、酸化ガス供給路(図示せず)を介して酸化ガスが供給される。酸化ガス供給路には、大気中の空気を取り込んで加湿器に圧送するコンプレッサや調圧弁が配置されており(いずれも図示せず)、これらをECU10からの制御信号に応じて制御することで、FC本体2への酸化ガスの供給量やタイミングを制御する。ここで、燃料ガスとは、例えば、水素を含む水素ガスや圧縮天然ガスである。また、酸化ガスとは、酸素や空気を代表とする酸化剤を含有するガスである。供給された燃料ガス及び酸化ガスの電気化学反応によりFC本体2から電力が発生する。この電力は、コンバータ、インバータ等を介して、車両1の車輪に連結されたトランクションモータに供給され(いずれも図示せず)、車両1の主動力源を構成する。
【0028】
タンク4は、車両1に複数(例えば、2〜4個)設けられており、それぞれFC本体2に供給する燃料ガスを貯留(収容)している。タンク4は、例えば二層構造を有し、内部に貯留空間が形成されるように中空状に構成されたライナと、そのライナの外面を覆う補強層としてのFRP層とを有している。貯留空間には、例えば、35MPa〜70MPaの水素ガス等からなる流体が貯留される。タンク4は、本発明における収容部として機能する。
【0029】
タンク4は、ガソリンスタンド等に設置される燃料ガス(ここでは水素ガス)の補給装置(図示せず;以下、「水素ステーション」ともいう)から、燃料ガスが補給可能になっている。具体的には、水素ステーションに設けられた充填用ホースのノズルを充填口5に接続することで、加圧された燃料ガスを水素ステーションから燃料ガス補給路6を介してタンク4に補給することができる。
【0030】
充填口5は、フューエルカバーで走行時は閉止されている。車両1は、後述するように、充填口5のフューエルカバーがあけられると、図示しない制御回路を介して、バッテリ9からECU10に電力が供給され、ECU10に電源が入るように構成されている。燃料ガス補給路6は、燃料ガスの補給中及び補給後の燃料ガスの逆流を防止するための逆止弁、管路内を流れる燃料ガスの温度や圧力を測定するための温度センサや圧力センサ等を備えている(いずれも図示せず)。充填口5及び燃料ガス補給路6は、本発明における補給路を構成する。また、後述するように、燃料ガス補給路6の温度センサ、圧力センサ及びECU10は、本発明における検出手段として機能する。
【0031】
水素ディテクタ7は、水素ガスを検出するガスセンサである。水素ディテクタとしては、例えば、触媒表面での水素ガスの接触燃焼による白金線コイルの温度上昇を測定することで水素ガスを検出する、接触燃焼式の水素センサを用いることができる。水素ディテクタ7は、タンク4、充填口5、燃料ガス補給路6の外側近傍に設けられ、例えば、車両1のフロア下、タンク4や燃料ガス補給路6の外周等、ガス漏れがあった場合に水素ガスが流入又は滞留しやすい箇所に複数設けることが好ましい。後述するように、水素ディテクタ7及びECU10は、本発明における検出手段として機能する。
【0032】
通信機8は、送信器及び受信器を備え、無線通信(たとえば、赤外線)により水素ステーションとデータを送受信する。水素ステーションからは、例えば、補給した燃料ガスの流量等のデータが車両1に送信される。一方、車両1からは、例えば、タンク4や燃料ガス補給路6内部の燃料ガスの温度や圧力に関するデータや、燃料ガスの補給の開始、停止等を制御するための制御データが送信される。これにより、詳細は後述するように、燃料補給時にガス漏れが検出された場合には、車両1の側から水素ステーションに制御信号を送信し、燃料ガスの補給を停止させることができる。通信機8は、本発明における通信部として機能する。
【0033】
バッテリ9は、車両1内の各種装置に電力を供給する。バッテリ9は、例えば、12Vの鉛蓄電池が用いられ、FC本体2の余剰電力や、車両1の減速時等トランクションモータから供給される回生電力等により充電される。なお、バッテリ9としては、前述の鉛蓄電池に代えてリチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの二次電池を利用することもでき、また容量なども特に限定されるものではない。また、バッテリ9を外部電源(例えば、家庭用コンセント)から充電可能に構成してもよい。
【0034】
ECU10は、
図2に示すように、バッテリ9から電力の供給を受けて車両1内の各種機器(FC本体2、FC用補機部品20、水素ディテクタ7、温度センサ60、圧力センサ62、タンク4、通信機8等)の動作を制御する。本実施形態においては、ECU10は、車両1の起動時(ユーザによる起動スイッチのON操作等があった時)のみならず、車両1への燃料補給時(充填口5のフューエルカバーがあけられた時)にも、電源がONされる。これにより、ECU10は、走行時のFC本体2等の発電制御のみならず、燃料補給時の燃料ガスのガス漏れ検出制御及び通信機8を介した水素ステーション100との通信制御も行う。
【0035】
すなわち、ECU10は、車両1の走行時には、車両1に設けられた加速操作部材(例えば、アクセル)の操作量を検出し、加速要求値(例えば、トラクションモータ等の電力消費装置からの要求発電量)等の制御情報を受けて、FC本体2や、FC用補機部品20(例えばコンプレッサや水素ポンプのモータ等FC本体2を作動させるために必要な装置)を制御して、FC本体2から所望の電力が出力されるようにする。また、ECU10は、詳細は後述するように、車両1への燃料補給時には、水素ディテクタ7等からの検出信号に基づいて燃料ガスのガス漏れの有無を判断し、通信機8を介して、水素ステーション100からの燃料ガスの補給を制御する。
【0036】
ECU10は、物理的には、例えば、CPUと、このCPUで処理される制御プログラムや制御データを記憶するROMと、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAMと、入出力インターフェースとを有する。これらの要素は、互いにバスを介して接続されている。入出力インターフェースには、ディスプレイやスイッチ等のユーザーインターフェースや電圧センサ、電流センサおよび圧力センサ等の各種センサが接続さ
れている。ECU10は、
参考例における統合型制御装置として機能する。
【0037】
(燃料補給時のガス漏れ検出)
本実施形態においては、ECU10は、車両1への燃料補給時には、水素ディテクタ7等からの検出信号に基づいて燃料ガスのガス漏れの有無を判断し、ガス漏れがある場合は、通信機8を介して水素ステーション100からの燃料ガスの補給を禁止する。以下、
図3を用いて詳細に説明する。ここで、
図3は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池自動車の燃料電池自動車のガス漏れ検出処理を説明するためのフローチャートである。
【0038】
燃料ガス補給の開始前は、車両1の駆動は停止されており、ECU10の電源もOFFになっている。燃料ガスを補給するためにユーザにより車両1のフューエルカバーが開けられると(ステップS1)、車両1は、バッテリ9からECU10に電力を供給し、ECU10の電源をONにする(ステップS2)。そして、ECU10は、通信機8、燃料ガス補給路6の温度センサ60、圧力センサ62及び水素ディテクタ7の電源をONにする(ステップS3)。これにより、ガス漏れ検出の準備が整う。
【0039】
まず、燃料補給を開始する前段階においてガス漏れ検出が行われる。すなわち、ユーザが水素ステーション100の充填用ホースのノズルを充填口5に接続し水素ガスの補給の準備を行っている間に、ECU10は、起動した水素ディテクタ7と、温度センサ60及び圧力センサ62圧力センサとのそれぞれを用いて2方式のガス漏れ検出を行う(ステップS4)。具体的には、ECU10は、第1のガス漏れ検出として、接触燃焼式の水素センサである水素ディテクタ7を用いて、タンク4や、充填口5及び燃料ガス補給路6の外側近傍の水素濃度を検知し、当該濃度が所定値以上であるか否かでガス漏れが発生しているか否かを検出する。また、ECU10は、第2のガス漏れ検出として、温度センサ60及び圧力センサ62により、燃料ガス補給路6及び/又はタンク4の温度及び圧力を測定して水素ガスの流量を算出し、算出した流量と前回測定時(例えば、車両1の前回の起動停止時)の流量と比較して、ガス漏れが発生しているか否かを検出する。
【0040】
いずれの方式でもガス漏れが検出されなかった場合には(ステップS4:No)、ECU10は、通信機8を介して、ステップS4で検出した車両1内部の水素ガスの温度及び圧力を水素ステーション100に送信する。そして、水素ステーション100は、受信した水素ガスの温度、圧力及び別途入力されたユーザの所望量に基づいて、水素ステーション100から供給する水素ガスの補給流量を決定し(ステップS5)、充填用ホースのノズルが充填口5に確実に接続されていることを検知したうえで、タンク4への水素ガスの補給を開始する(ステップS6)。
【0041】
一方、いずれかの方式でガス漏れが検出された場合には(ステップS4:Yes)、ECU10は、通信機8を介して、水素ガスの補給を禁止するための制御信号を水素ステーション100に送信する(ステップS9)。このとき、ガス漏れに関するデータ(ガス漏れ量、ガス漏れ箇所等)を含んでいてもよい。この場合、水素ステーション100は、タンク4への水素ガスの補給を開始せず、ユーザに車両1内部でガス漏れが発生している旨(ガス漏れ量、ガス漏れ箇所等を含んでいてもよい)を通知する。その後、ECU10は、車両の起動禁止フラグを立て(ステップS11)ステップS12に進む。
【0042】
ステップS6に戻って説明を続ける。水素ガスの補給開始後、ECU10は、温度センサ60、圧力センサ62により、燃料ガス補給路6及び/又はタンク4の温度及び圧力を随時測定して水素ステーション100に送信する。水素ステーション100は、受信した水素ガスの温度及び圧力に基づいて、水素ステーションから供給する水素ガスの流量を調整する。こうして水素ガスの補給がされる間、ECU10は、2方式のガス漏れ検出を行う(ステップS7)。具体的には、ECU10は、第1のガス漏れ検出として、水素ディテクタ7を用いて、タンク4や、充填口5及び燃料ガス補給路6の外側近傍の水素濃度を検知し、当該濃度が所定値以上であるか否かでガス漏れが発生しているか否かを検出する。また、ECU10は、第2のガス漏れ検出として、水素ステーションに送信するために測定した温度及び圧力から燃料ガス補給路6を流れる又はタンク4に流入した水素ガスの流量を算出し、この算出した流量と実際の水素ガスの補給量(水素ステーション100から通信機8を介して受信する)との差分が所定の値以上であるか否かでガス漏れが発生しているか否かを検出する。
【0043】
いずれかの方式でガス漏れが検出された場合には(ステップS7:Yes)、ECU10は、通信機8を介して、これ以上の水素ガスの補給を禁止するための制御信号を水素ステーション100に送信する(ステップS9)。このとき、ガス漏れに関するデータ(ガス漏れ量、ガス漏れ箇所等)を含んでいてもよい。この場合、水素ステーション100は、タンク4への水素ガスの補給を中止し、ユーザに車両1内部でガス漏れが発生している旨(ガス漏れ量、ガス漏れ箇所等を含んでいてもよい)を通知する。その後、ECU10は、車両の起動禁止フラグを立て(ステップS11)ステップS12に進む。
【0044】
水素ガスがステップS5で決定された充填量だけタンク4に補給されるまで、いずれの方式でもガス漏れが検出されなかった場合には(ステップS7:No)、水素ステーション100からの水素ガスの補給が停止され、水素ガスの補給が終了する(ステップS8)。
【0045】
この段階でECU10は、ステップS7と同様に再度2方式のガス漏れ検出を行う(ステップS10)。ECU10は、いずれかの方式でガス漏れが検出された場合には(ステップS10:Yes)、車両の起動禁止フラグを立て(ステップS11)ステップS12に進み、いずれの方式でもガス漏れが検出されなかった場合には(ステップS10:No)、そのままステップS12に進む。
【0046】
ECU10は、ステップS12において、充填用ホースのノズルが充填口5から取り外されかつフューエルカバーが閉じられたことを検知すると、通信機8、温度センサ60、圧力センサ62及び水素ディテクタ7の電源をOFFにし(ステップS13)、続いてECU10自身の電源もOFFにする(ステップS14)。
【0047】
本実施形態においては、燃料補給時にガス漏れが検出され(ステップS4、S7、S10:Yes)、車両の起動禁止フラグが立った場合は(ステップS11)、以降の車両1の起動が禁止されるようになっている。すなわち、車両の起動禁止フラグが立っている場合は、ユーザが車両1を起動しようとしても(例えば、車両1の起動スイッチをONにしても)、警告音によりガス漏れが発生している旨がユーザに通知され、車両1は起動されない。この起動禁止フラグは、例えば専門の業者が車両1のガス漏れを解消して車両1の安全性が確保されるまでは解除されない。これにより、車両1内部に可燃性の水素ガスが残っているにかかわらず車両1を起動してしまうといった事態を防止でき、安全性を高めることができる。
【0048】
以上説明したとおり、本実施形態においては、水素ステーションからの水素ガスの補給時に常に車両1内部での水素ガスのガス漏れが検出できるので、車両1内部でガス漏れが生じているのにもかかわらず、水素ステーションからの水素ガスの補給を継続してしまうといった事態を防止できる。また、ガス漏れの検出に際しては、水素ディテクタ7によるガス漏れ検出と、水素ステーションから補給した水素ガスの流量と燃料ガス補給路6またはタンク4に流入した流量との差分に基づくガス漏れ検出を併用するので、より確実に水素ガスのガス漏れを検出することができる。
【0049】
以上本発明の各実施形態を示したが、本発明はこれら実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な態様での実施が可能であることはいうまでもない。
【0050】
例えば、参考例におけるECU10は統合型制御装置として機能するが、本実施形態では、例えば、
図4に示すように、走行時のFC本体2等の発電制御をするFC_ECU10A(FC制御装置)と、充填通信用_ECU10B(通信制御装置)との2つの制御装置を別体に設け、走行時は、FC_ECU10Aのみの電源をONにし、燃料ガス補給時は、充填通信用_ECU10Bのみの電源をONにす
る。これにより、それぞれの制御における電力消費量を抑制できる。
【0051】
また、上記実施の形態においては、水素ディテクタ7による第1のガス漏れ検出と、温度センサ60及び圧力センサ62を用いた第2のガス漏れ検出を併用するようにしているが、これに限られない。たとえば、
図4に示すように、充填通信用_ECU10Bには、水素ディテクタ7を接続させず、温度センサ60及び圧力センサ62のみを接続し、燃料補給時には、第2のガス漏れ検出のみを行うようにしてもよい。この場合、燃料補給時に充填通信用_ECU10Bで取得した温度や圧力データを、車両1の起動時にFC_ECU10Aに送信して、FC本体2の制御に用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1……燃料電池自動車(車両)、2……FC本体、20……FC用補機部品、3……燃料ガス供給路、4……タンク、5……充填口、6……燃料ガス補給路、60……温度センサ、62……圧力センサ、7……水素ディテクタ、8……通信機、9……バッテリ、10……ECU、10A……FC_ECU、10B……充填通信用_ECU、100……水素ステーション