特許第5833963号(P5833963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5833963
(24)【登録日】2015年11月6日
(45)【発行日】2015年12月16日
(54)【発明の名称】明暗検査装置、明暗検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/93 20060101AFI20151126BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20151126BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20151126BHJP
【FI】
   G01N21/93
   G01N21/956 Z
   G01B11/06 Z
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-72800(P2012-72800)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-205134(P2013-205134A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和隆
(72)【発明者】
【氏名】末木 博
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−308556(JP,A)
【文献】 特開2005−147691(JP,A)
【文献】 特開2009−222611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
G01B 11/00−11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を支持する支持手段と、
前記支持手段に支持された前記検査対象に向けて光を照射する光照射手段と、
前記検査対象からの反射光を、非線形の入出力特性を有する複数の受光素子によって検出する光検出手段と、
前記各受光素子の出力値を補正する補正情報を求める補正情報取得モード、および前記光照射手段から前記検査対象へ光を照射した際の前記各受光素子の出力値を前記補正情報で補正した補正値から前記検査対象の明暗を検査する明暗検査モードを実行する制御手段と、
前記各受光素子の受光量と出力値との関係である前記入出力特性を示す素子特性情報を記憶する記憶手段と
を備え、
前記制御手段は、前記補正情報取得モードにおいて、前記支持手段に支持される反射部材を移動させながら当該反射部材に向けて前記光照射手段から同一の露光量で光を複数回照射することで、前記各受光素子について得た複数の出力値に基づいて前記光照射手段が照射する光の光量分布を求め、前記光量分布および前記記憶手段に記憶された前記素子特性情報に基づいて前記各受光素子の前記補正情報を求めることを特徴とする明暗検査装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記補正情報取得モードにおいて、前記受光素子の出力値に対応する受光量を前記素子特性情報に基づいて前記受光素子毎に算出して、前記光量分布を求める請求項1に記載の明暗検査装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、前記受光素子の出力値の二次以上の多項式で前記受光素子の受光量を表した前記入出力特性の各項の係数を前記素子特性情報として記憶する請求項1または2に記載の明暗検査装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記補正情報取得モードにおいて、前記入出力特性の各項の係数を前記光量分布が示す受光量で除算して求まる各補正係数を、前記補正情報として前記受光素子毎に求める請求項3に記載の明暗検査装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記明暗検査モードにおいて、前記各補正係数を各項の係数とする多項式に前記受光素子の出力値を代入して得られる値を前記受光素子の出力値の前記補正値として求める請求項4に記載の明暗検査装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記各受光素子について得た前記複数の出力値から前記受光素子の出力値を階級とするヒストグラムを前記受光素子毎に作成し、前記受光素子の前記複数の出力値から前記ヒストグラムの端部に対応する前記受光素子の出力値を外した結果に基づいて前記光量分布を求める請求項1ないし5のいずれか一項に記載の明暗検査装置。
【請求項7】
前記反射部材は、前記光照射手段からの光を鏡面で反射する請求項1ないしのいずれか一項に記載の明暗検査装置。
【請求項8】
検査対象に向けて光を照射して、前記検査対象からの反射光を非線形の入出力特性を有する複数の受光素子によって検出し、前記受光素子の検出結果に基づいて前記検査対象の明暗を検査する明暗検査方法において、
前記受光素子の出力値を補正する補正情報を求める補正情報取得工程と、
光照射手段から前記検査対象へ光を照射した際の前記受光素子の出力値を前記補正情報で補正した補正値から前記検査対象の明暗を検査する明暗検査工程と
を備え、
前記補正情報取得工程では、支持手段に支持される反射部材を移動させながら当該反射部材に向けて前記光照射手段から同一の露光量で光を複数回照射することで、前記受光素子について得た複数の出力値に基づいて前記光照射手段が照射する光の光量分布を求めるとともに、前記受光素子の受光量と出力値との関係である前記入出力特性を示す素子特性情報を記憶手段から読み出し、前記光量分布および前記素子特性情報に基づいて前記受光素子の前記補正情報を求めることを特徴とする明暗検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に形成された膜の膜厚ムラ等によって生じる明暗を検査する明暗検査技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板に形成されたレジスト膜の膜厚ムラを検査する膜厚ムラ検査装置が記載されている。具体的には、この膜厚ムラ検査装置は、基板に形成されたレジスト膜に光を照射する光源と、レジスト膜および基板の各表面で反射された光を受光する受光部とを備える。そして、反射光の強度(換言すれば膜表面の明暗)が膜厚に依存することを利用して、受光部の検出結果からレジスト膜の膜厚ムラが測定される。この際、Y軸方向へ延びる直線状の光をレジスト膜に照射しつつ受光部のラインセンサにより反射光を検出した状態で、基板SがX軸方向に移動される。これによって、Y軸方向に延びる照射光をX軸方向に走査して、レジスト膜の全体における膜厚ムラを検査することができる。
【0003】
ちなみに、特許文献1で用いられているCCD(Charge Coupled Device)のような受光素子は、受光量(入力)に応じた大きさの電気信号(出力)を検出結果として出力する。この際、ラインセンサのように複数の受光素子を配列したセンサを用いた場合、受光素子毎に入出力特性が異なり、膜厚ムラの測定精度に影響が出る場合があった。そこで、特許文献1では、膜厚ムラの検査に先立って、各受光素子の入出力特性が求められる。具体的には、基板に代えて配置したミラーに光を照射して、この際の各受光素子の出力値を測定した結果から各受光素子の入出力特性が求められる。そして、膜厚ムラの検査時においては、各受光素子の出力値が測定された受光素子の入出力特性に基づいて補正される。
【0004】
ところで、受光素子の入出力特性は、一般に非線形である。したがって、受光素子の入出力特性を求めるためには、受光素子の受光量(入力)を多数回に渡って変更して、各受光量での受光素子の出力値を測定することが必要となる。具体的には、特許文献1の膜厚ムラ検査装置は、ミラーに光を照射する時間(露光時間)を1〜10[ms]の間で10段階で変化させることで、実質的に受光素子の受光量を10段階で変更し、各受光量における受光素子の出力値を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−308556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、受光量を多数回に渡って変更しつつ各受光量での受光素子の出力値を測定するには、相当程度の時間を要する。特に特許文献1では、受光素子の受光量の変更を露光時間の変更により実行しているため、受光量を増大させるためには露光時間を長くする必要がある。そのため、各受光量での受光素子の出力値を全て求めるのに要する時間は長大となっていた。その結果、膜厚ムラ検査を始める前の処理に時間がかかって、膜厚ムラ検査を速やかに開始できないといった問題があった。また、このような検査前の処理に時間がかかるといった問題は、膜厚ムラを検査する場合に限らず、対象物に照射した光の反射光を検出して対象物の明暗を検査する技術全般において発生するおそれがあった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、明暗検査を始める前の処理に要する時間を短縮して、明暗検査を速やかに開始することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明にかかる明暗検査装置は、上記目的を達成するために、検査対象を支持する支持手段と、支持手段に支持された検査対象に向けて光を照射する光照射手段と、検査対象からの反射光を、非線形の入出力特性を有する複数の受光素子によって検出する光検出手段と、各受光素子の出力値を補正する補正情報を求める補正情報取得モード、および光照射手段から検査対象へ光を照射した際の各受光素子の出力値を補正情報で補正した補正値から検査対象の明暗を検査する明暗検査モードを実行する制御手段と、各受光素子の受光量と出力値との関係である入出力特性を示す素子特性情報を記憶する記憶手段とを備え、制御手段は、補正情報取得モードにおいて、支持手段に支持される反射部材を移動させながら当該反射部材に向けて光照射手段から同一の露光量で光を複数回照射することで、各受光素子について得た複数の出力値に基づいて光照射手段が照射する光の光量分布を求め、光量分布および記憶手段に記憶された素子特性情報に基づいて各受光素子の補正情報を求めることを特徴としている。
【0009】
この発明にかかる明暗検査方法は、上記目的を達成するために、検査対象に向けて光を照射して、検査対象からの反射光を非線形の入出力特性を有する複数の受光素子によって検出し、受光素子の検出結果に基づいて検査対象の明暗を検査する明暗検査方法において、受光素子の出力値を補正する補正情報を求める補正情報取得工程と、光照射手段から検査対象へ光を照射した際の受光素子の出力値を補正情報で補正した補正値から検査対象の明暗を検査する明暗検査工程とを備え、補正情報取得工程では、支持手段に支持される反射部材を移動させながら当該反射部材に向けて光照射手段から同一の露光量で光を複数回照射することで、各受光素子について得た複数の出力値に基づいて光照射手段が照射する光の光量分布を求めるとともに、受光素子の受光量と出力値との関係である入出力特性を示す素子特性情報を記憶手段から読み出し、光量分布および素子特性情報に基づいて受光素子の補正情報を求めることを特徴としている。
【0010】
このように構成された発明(明暗検査装置、明暗検査方法)では、光照射手段から検査対象へ光が照射されるとともに、反射光を受光する受光素子の出力値に基づいて明暗が検査される(明暗検査モード、明暗検査工程)。この際、受光素子の入出力特性を示す素子特性情報から補正情報が求められ、明暗の検査は、この補正情報で受光素子の出力値を補正した補正値に基づいて実行される。こうして各受光素子の出力を素子特性情報で補正した補正値に基づいて明暗の検査を行うことで、各受光素子の入出力特性の差異を補償しつつ明暗の検査を適切に行うことができる。
【0011】
しかも、この発明では、各受光素子の入出力特性を示す素子特性情報が記憶手段に予め記憶されている。したがって、受光素子の入出力特性を求める必要がなく、換言すれば、特許文献1のように受光素子の受光量を多段階で変化させて受光素子の出力値を取得するといった処理を明暗検査の前に実行する必要がない。ただし、このように予め記憶された素子特性情報に基づいて、受光素子の出力値を補正する構成を採用するにあたっては、光照射手段の光量分布が明暗検査の精度に影響するおそれがあった。
【0012】
つまり、明暗検査は、明暗が受光素子の出力値の差異として現れることを利用して行われる。この際、検査対象に対して照射される光量が一様でなくて分布を有すると、受光素子の出力値の差異が、光量分布によるものか明暗によるものかを判別できない。したがって、理想的には、光照射手段の照射する光の光量は一様であることが求められる。しかしながら、光照射手段の照射する光の光量は実際には一様とはならずに、分布を有することが多い。
【0013】
これに対して、特許文献1では、光照射手段からミラーに光を照射して、その反射光を受光する受光素子の出力値から受光素子の入出力特性が求められる。このような構成では、光照射手段の光量分布と各受光素子の入出力特性の差異とが特に区別されずに、受光素子の入出力特性として渾然一体に求められる。そのため、受光素子の入出力特性は光照射手段の光量分布を実質的に加味したものとなっている。このような入出力特性に基づいて受光素子の出力値を補正した場合、光照射手段の光量変動と各受光素子の入出力特性の差異の両方が結果的に補償されるため、光照射手段の光量分布が明暗検査の精度に与える影響は小さい。一方、この発明において、受光素子の入出力特性を示す素子特性情報は、特許文献1のように光照射手段の光量分布を加味したものとはなっていない。したがって、かかる入出力特性に基づいて受光素子の出力値を補正した場合、光照射手段の光量分布が明暗検査の精度に影響を与えるおそれがある。
【0014】
そこで、この発明では、光照射手段の光量分布が求められる。具体的には、支持部材に支持される反射部材に向けて光照射手段から光が照射され、この際の受光素子の出力値に基づいて光照射手段が照射する光の光量分布が求められる。そして、光量分布と記憶手段に記憶された素子特性情報に基づいて受光素子の補正情報が求められる(補正情報取得モード、補正情報取得工程)。こうして、素子特性情報のみならず光量分布にも基づく補正情報で受光素子の出力値を補正し、この補正値に基づいて明暗を検査することで、光照射手段の光量分布が明暗検査の精度に与える影響の抑制が図られている。しかも、光照射手段の光量分布は、受光素子の入出力特性のように非線形な特性を有するものではない。そのため、光照射手段の光量分布を求めるために、受光素子の受光量を多段階で変化させつつ受光素子の出力値を求めるといった処理を行なう必要はない。つまり、光照射手段の光量分布は、受光素子の入出力特性と比べて迅速に求めることができる。
【0015】
このように、この発明では、受光素子の入出力特性を示す素子特性情報を記憶手段に記憶しておくことで、受光素子の入出力特性を求めるための処理を排除可能としている。この際、光照射手段の光量分布が明暗検査に与える影響を抑制するために、光照射手段の光量分布を求める必要があるものの、光照射手段の光量分布は受光素子の入出力特性と比べて迅速に求めることができる。したがって、この発明では、受光素子の入出力特性を求めていた特許文献1と比較して、明暗検査を始める前の処理に要する時間を短縮することができ、明暗検査を速やかに開始することが可能となっている。
【0016】
ところで、この発明では、光照射手段が照射する光の光量分布は、光照射手段から照射されて反射部材で反射された光を受光した各受光素子の出力値から求められる。したがって、各受光素子で入出力特性に差異があると、光量分布を正確に求められないおそれがある。そこで、制御手段は、補正情報取得モードにおいて、受光素子の出力値に対応する受光量を素子特性情報に基づいて受光素子毎に算出して、光量分布を求めるように明暗検査装置を構成しても良い。このような構成では、受光素子の出力値に対応する受光量が素子特性情報に基づいて受光素子毎に算出される。したがって、各受光素子の入出力特性の差異によらず、受光素子が実際に受光した受光量を求めることができる。そして、このようにして求められた受光量に基づいて光量分布を求めることで、光量分布を正確に求めることができる。
【0017】
また、記憶手段は、受光素子の出力値の二次以上の多項式で受光素子の受光量を表した入出力特性の各項の係数を素子特性情報として記憶するように明暗検査装置を構成しても良い。このような構成では、受光素子の入出力特性が有する非線形性を素子特性情報にきっちりと表すことができる。そして、このような素子特性情報に基づいて、各受光素子の出力値を補正する補正情報を求めることで、各受光素子の入出力特性の差異を補正情報にしっかり反映させることができる。
【0018】
この際、制御手段は、補正情報取得モードにおいて、入出力特性の各項の係数を光量分布が示す受光量で除算して求まる各補正係数を、補正情報として受光素子毎に求めるように明暗検査装置を構成しても良い。このような構成では、各受光素子の入出力特性の差異のみならず、光照射手段が照射する光の光量分布もしっかりと補正情報に反映させることができる。
【0019】
そして、制御手段は、明暗検査モードにおいて、各補正係数を各項の係数とする多項式に受光素子の出力値を代入して得られる値を受光素子の出力値の補正値として求めるように明暗検査装置を構成しても良い。このように受光素子の出力値を補正することで、各受光素子の入出力特性の差異および光照射手段が照射する光の光量分布の影響を受光素子の出力値から排除して、明暗検査を高精度に実施することができる。
【0020】
ところで、光照射手段が照射する光の光量分布は、光照射手段から照射されて反射部材で反射された光を受光した各受光素子の出力値から求められる。この際、反射部材にパーティクルが付着していると、光量分布を正確に求めることができないおそれがある。そこで、制御手段は、補正情報取得モードにおいて、支持手段により反射部材を移動させながら光照射手段から同一の露光量で光を複数回照射することで、各受光素子について得た複数の出力値に基づいて光量分布を求める。このような構成では、パーティクルの影響を抑えて、光照射手段が照射する光の光量分布を求めることが可能となる。
【0021】
この際、制御手段は、各受光素子について得た複数の出力値から受光素子の出力値を階級とするヒストグラムを受光素子毎に作成し、受光素子の複数の出力値からヒストグラムの端部に対応する受光素子の出力値を外した結果に基づいて光量分布を求めるように明暗検査装置を構成しても良い。つまり、各受光素子について得た複数の出力値から受光素子の出力値を階級としてヒストグラムを作成した場合、パーティクルの影響を受けた受光素子の出力値はヒストグラムの端部に現れる傾向にある。そこで、受光素子の複数の出力値からヒストグラムの端部に対応する受光素子の出力値を外した結果に基づいて光量分布を求めることで、パーティクルの影響を確実に抑えて、光照射手段が照射する光の光量分布を求めることができる。
【0022】
また、反射部材は、光照射手段からの光を鏡面で反射するように明暗検査装置を構成しても良い。このような構成では、反射部材からの反射光量を十分に確保することができ、光照射手段が照射する光の光量分布を正確に求めるにあたって有利となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、明暗検査を始める前の処理に要する時間を短縮して、明暗検査を速やかに開始することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】発明にかかる明暗検査装置としての膜厚ムラ検査装置の一例を模式的に示した正面図である。
図2】受光素子の素子特性係数を取得するフローを示すフローチャートである。
図3】露光時間を段階的に変化させて受光素子の画素値を取得した結果をグラフで示した図である。
図4図3に示した12段階目のデータを拡大してグラフで示した図である。
図5】生データ曲線を2次関数でフィッティングした結果をグラフで例示した図である。
図6】受光素子の受光量と画素値との入出力関係をプロットした結果をグラフで示した図である。
図7】受光素子の補正係数を取得するフローを示すフローチャートである。
図8図7のフローチャートで取得される各データをグラフで示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、基板に形成された膜の明暗が膜厚に依存することを利用して、膜の明暗から膜厚ムラを検査する膜厚ムラ検査装置の説明を通じて、本発明にかかる明暗検査装置の実施形態の一例について述べる。図1は、本発明にかかる明暗検査装置としての膜厚ムラ検査装置の一例を模式的に示した正面図である。同図では、Z軸方向を鉛直方向とするXYZ直交座標系が示されている。この膜厚ムラ検査装置1は、液晶表示装置等の表示装置に用いられるガラス基板S(以下「基板S」と略称)の表面に形成された、パターン形成用のレジスト膜F(以下「膜F」と略称)の膜厚を検査する装置である。なお、基板S表面のレジスト膜Fは、基板Sの表面にレジスト液を塗布することで形成されたものである。図1に示すように、膜厚ムラ検査装置1は、ステージ2に支持された基板Sの表面(膜Fが形成された主面)に光照射部3から光を照射して、その反射光を光検出部4で検出する概略構成を具備する。また、膜厚ムラ検査装置1では、光検出部4に入射する光の波長帯を切り換える波長帯切換機構5が設けられている。
【0026】
ステージ2は矩形状を具備しており、黒色に艶消しされた表面で基板Sを支持する。また、膜厚ムラ検査装置1は、ステージ2をX軸方向へ移動させる移動機構21を備える。この移動機構21は、ステージ2に螺合されたボールネジ(図示省略)をモータ211で回転させることで、ステージ2をガイド212に沿ってX軸方向へ移動させる。こうして、ステージ2に伴って基板SをX軸方向へ移動させることが可能となっている。なお、図1では、ステージ2の可動範囲を示すために、可動範囲の同図左端におけるステージ2および基板Sが実線で表される一方、可動範囲の同図右端におけるステージ2および基板Sが二点鎖線で表されている。
【0027】
光照射部3は、可視領域の全波長帯の光を含む白色光を射出するハロゲンランプ31と、Y軸方向に延びる円柱形状を有する石英ロッド32と、Y軸方向に延びるシリンドリカルレンズ33とを備える。ハロゲンランプ31は、石英ロッド32のY軸方向の一端に取り付けられており、石英ロッド32内に向けて光を射出する。そして、石英ロッド32は、ハロゲンランプ31から入射してきた光を、その側面からシリンドリカルレンズ33へ向けて射出する。これによって、ハロゲンランプ31から射出された光は、石英ロッド32およびシリンドリカルレンズ33の作用によって、Y軸方向に延びる線状光(光束断面がY軸方向に長い線状となる光)に変換されて基板S表面へ照射される。
【0028】
こうして、図1の一点鎖線に示すように、光照射部3から射出された光は、基板Sおよび膜Fの表面で反射されて光検出部4へと向かう。より詳しくは、膜Fは光に対して透過性を有しているため、光照射部3から射出された光には、膜Fの表面で反射される光の他、膜Fを透過して基板S表面で反射される光がある。したがって、光検出部4へ向かう光は、基板S表面での反射光と膜F表面での反射光との干渉光(以下「反射光」と略称)となる。
【0029】
また、ステージ2に支持された基板Sと光照射部3の間には、波長帯切換機構5が配置されている。したがって、基板Sおよび膜Fからの反射光は、波長帯切換機構5を経由して光検出部4へ入射する。この波長帯切換機構5は、複数の光学フィルタ51(例えば、半値幅10[nm]の干渉フィルタ)を同心円状に並べて円形のフィルタホイール52で支持する概略構成を備える。なお、これら複数の光学フィルタ51は、互いに異なる波長帯の光を選択的に透過するものである。
【0030】
また、波長帯切換機構5は、フィルタホイール52の中心に取り付けられた回転モータ53を備え、この回転モータ53でフィルタホイール52を回転させることで、基板Sから光検出部4へ向かう光路上に複数の光学フィルタ51の1つを配置することができる。これによって、膜Fの膜厚や屈折率等に応じた適切な光学フィルタを光路上に配置することができる。そして、光検出部4には、光路上に配置された光学フィルタ51が透過する波長帯の光のみが入射することとなる。
【0031】
光検出部4は、複数の受光素子E(n)をY軸方向に直線状に配列したラインセンサ41と、Y軸方向に延びるレンズ42とを備え、光路上に配置された光学フィルタ51から透過した光をレンズ42によってラインセンサ41へ導く。ここで、括弧内の「n」は、受光素子をラベリングするための正の整数である。また、個別の受光素子を特に区別しない場合は、受光素子の符号を単に「E」で表すか、もしくは「E(n)」で全受光素子を代表して示すこととする。複数の受光素子EそれぞれはCCDで構成されており、受光した光を電気信号に変換する光電変換を行って、受光量(入力)に応じた大きさの画素値(出力値)を出力する。また、各受光素子Eは、非線形の入出力特性(光電変換特性)を有する。
【0032】
以上が、膜厚ムラ検査装置1が備える機械的構成の概略である。続いては、膜厚ムラ検査装置1が備える電気的構成の概略について説明する。この膜厚ムラ検査装置1は、移動機構21、光照射部3、光検出部4および波長帯切換機構5を制御する制御部100と、膜厚ムラの検査に要する信号処理を担う検査部200とを備える。そして、制御部100および検査部200が協働して膜厚ムラ検査を行う。
【0033】
膜厚ムラ検査では、光照射部3から射出されて基板S表面に60度の入射角で入射した線状光が、基板S表面でY軸方向に直線状に延びる線状照射領域Rに照射される。そして、光検出部4のラインセンサ41が線状照射領域Rからの反射光を検出して、1ライン分の画像データDrを検査部200に出力する。この際、制御部100はモータ211を動作させて、ステージ2とともに基板SをX軸方向へ等速で移動させる。これによって、線状照射領域Rが基板S表面をX軸方向に走査する。こうして、線状照射領域RをX軸方向に走査しつつ、線状照射領域Rからの反射光を1ライン分の画像データDrに順次変換することで、膜F全体の画像データDrを取得することができる。
【0034】
検査部200は、光検出部4から出力される画像データDrを受信する出力受付部210の他、出力受付部210が受信した画像データDrに対して所定の信号処理を施す出力補正部220および強調処理部230と、信号処理後の画像データDrに基づいて膜厚ムラの検出を行うムラ検出部240とを備える。さらに、検査部200は、信号処理に必要となる補正係数を記憶する補正係数記憶部250、補正係数の取得処理を実行する補正係数取得部260、および補正係数の取得処理に必要となる素子特性係数を記憶する素子特性係数記憶部270とを備える。
【0035】
出力受付部210は、受信した画像データDrをバッファして出力補正部220に転送する。出力補正部220は、受信した画像データDrを補正係数記憶部250に記憶される補正係数で補正して、補正画像データDcを生成する。なお、この補正係数は主として、各受光素子Eの入出力特性の差異と光照射部3の光量分布とを補償するものであるが、その詳細については後述する。強調処理部230は、膜厚変動に起因する画素値の差を強調する画像処理を補正画像データDcの二次元画像に対して行って、強調画像データDeを生成する。なお、画素値の差を強調する画像処理は、例えば、補正画像データDcに対してメディアンフィルタにより平滑化処理を行って平滑化された二次元画像を求め、補正画像データDcの二次元画像から平滑化された二次元画像を画素毎に除算することで実行できる。そして、ムラ検出部240は、強調画像データDeに基づいて、膜Fの膜厚ムラを検査する。
【0036】
上述したとおり、膜厚ムラ検査では、補正係数記憶部250に記憶される補正係数で、光検出部4が出力する画像データDrが補正されていた。この補正係数は主として、各受光素子Eの入出力特性の差異と光照射部3の光量分布とを補償するものである。換言すれば、この補正係数は、受光素子Eの入出力特性を示す素子特性係数と、光照射部3の光量分布とを加味した係数である。特にこの実施形態では、素子特性係数は予め求められて素子特性係数記憶部270に記憶されている。そして、補正係数取得部260が、光量分布を実測した結果とこの素子特性係数とに基づいて補正係数を取得する。続いては、素子特性係数を取得するフローを説明するのに続いて、光量分布を実測した結果と素子特性係数とに基づいて補正係数を取得するフローについて説明する。
【0037】
図2は、受光素子の素子特性係数を取得するフローを示すフローチャートである。このフローチャートは、膜厚ムラ検査装置1から光検出部4を取り外した状態で実行され、例えば膜厚ムラ検査装置1の工場出荷前や、膜厚ムラ検査装置1を納品した際の初期較正時等に実行することができる。
【0038】
上述したとおり、受光素子Eは非線形の入出力特性を有する。ここで、受光素子E(n)の受光量をy(n)とし、受光素子E(n)の画素値(出力値)をx(n)としたとき、受光素子E(n)の入出力特性は次の2次式
y(n)=A(n)x+B(n)x+C(n) …式1
で表される。ここで、A(n)は2次の項の係数であり、B(n)は1次の項の係数であり、C(n)は0次の項(定数項)の係数である。そして、図2のフローチャートでは、これらの係数A(n)、B(n)、C(n)が受光素子E(n)の素子特性係数として求められる。
【0039】
ステップS101では、光検出部4と同程度もしくはより長い、例えば300[mm]の長さを有するロッドで構成された光源の直前に、レンズ42の取り外された光検出部4が配置される。具体的には、ラインセンサ41における受光素子E(n)の配列がロッドと平行になるように、光検出部4はロッドに対向配置される。そして、ロッドの側方から射出される光は、ラインセンサ41に直接入射する。この際、レンズ42が取り外されているために、ラインセンサ41にはピントの外れたぼんやりした光が入射する。これによって、ロッドに固有の光量分布がラインセンサ41への照射光に与える影響を緩和することができる。
【0040】
ステップS102では、露光時間を等間隔(例えば1[ms])で段階的に変化させて、各露光時間での受光素子E(n)の画素値が取得される。図3は、露光時間を段階的に変化させて受光素子の画素値を取得した結果をグラフで示した図である。同図のグラフでは、横軸に受光素子E(n)が示されるとともに、縦軸に受光素子E(n)の画素値が8ビット(256)で示されている。そして、21段階の異なる露光時間それぞれについて、各受光素子E(n)が出力した画素値が示されている。なお、同図に示す太線は、実測された画素値x(n)の生データを示す。一方、同図に示す細線は、図2のフローチャートにより求められる素子特性係数と実測された画素値x(n)を式1に適用して求まる補正データ(画素値y(n)に相等)を示しており、参考までに示したものである。また、図4は、図3に示した12段階目のデータを拡大してグラフで示した図である。図3においても、太線および細線の意味は図4のそれと同様である。
【0041】
図3に示すようにステップS102では、各受光素子E(n)の画素値x(n)をプロットした生データ曲線L(m)が各露光時間について取得されて、合計21本の生データ曲線L(m)が得られる(m=1、2、3、…、21)。ここで、括弧内の「m」は、露光時間が異なるデータを識別するために付された正の整数である。このようにして、受光量y(n)(つまり露光時間)を変化させた際における受光素子E(n)の画素値x(n)が、全ての受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…について取得することができる。
【0042】
続くステップS103では、受光量y(n)の変化に対する画素値x(n)の変化がプロットされる。このプロットは、受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…それぞれについて実行される。この際、受光素子E(n)の画素値x(n)は、図3図4に示す生データ曲線L(m)から直接読み取った値が採用される。具体的には、生データ曲線L(m)から、m段階目の露光の際に受光素子E(n)の出力した画素値x(n)が画素値x(n,m)として読み取られる(図4では、m=12の場合の読取動作を示した)。この要領で、1、2、…、m、…21段階目の露光の際に受光素子E(n)が出力した画素値x(n,1)、x(n,2)、…x(n,m)、…x(n,21)を求めることができる。また、他の受光素子Eについても同様の処理を行って、全ての受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…について、各露光の際に出力した画素値を求めることができる。
【0043】
一方、受光素子E(n)の受光量y(n)については、図3の結果から推測される。具体的には次のとおりである。図3および図4から判るように、生データ曲線L(m)は大まかに、中央で極大値を有するとともに端に向かうに連れて減少する二次曲線形状を有する。これは、光源であるロッドの長さが有限であるために、ロッドの端ではロッドの中央に比べて光量が落ちるためである。そこで、以下に詳述するように、このようなロッドから受光素子E(n)に入射する光量y(n)が、最も露光時間の長いときの生データ曲線L(21)を2次関数でフィッティングした結果に基づいて推測される。
【0044】
図5は、生データ曲線を2次関数でフィッティングした結果をグラフで例示した図である。図5に示すように、生データ曲線L(21)を2次関数でフィッティングして、フィッティング曲線Lf(21)が求められる。そして、このフィッティング曲線Lf(21)から、21段階目の露光の際に受光素子E(n)の受光した光量y(n)が光量y(n,21)として読み取られる。ここで、光量y(n,m)は、m段階目の露光の際に受光素子E(n)の受光した光量y(n)を示すものとする。また、1〜20段階目の露光の際に受光素子E(n)が受光した光量は、各段階目の露光時間と21段階目の露光時間の比を光量y(n,21)に乗じて求められる。つまり、m段回目の露光時間をT(m)とすると、1〜20段階目の露光の際に受光素子E(n)が受光した光量y(n,m)は、次式
y(n,m)=y(n,21)・T(m)/T(21) …式2
で求められる。また、他の受光素子Eについても同様の処理を行って、全ての受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…について、各露光の際に受光した光量が求められる。
【0045】
こうして、露光量を21段階で変化させた際の受光素子E(n)の受光量y(n,m)と画素値x(n,m)との関係(入出力関係Lp(n))を求めることができる。また、かかる入出力関係Lp(n)は、全ての受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…について求めることができる。そして、このようにして求められた入出力関係Lp(n)がプロットされる(図6)。ここで、図6は、受光素子の受光量と画素値との入出力関係をプロットした結果をグラフで示した図であり、横軸に画素値を示すとともに縦軸に受光量を示している。ステップS103では、図6に示したような入出力関係Lp(n)が全ての受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…についてプロットされる。つまり、受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…の個数だけの入出力関係Lp(1)、Lp(2)、…、Lp(n)、…がプロットされる。
【0046】
そして、ステップS104では、プロットされた入出力関係Lp(n)が式1で示した2次曲線でフィッティングされて、受光素子E(n)の素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)が求められる。かかる処理は、プロットされた入出力関係Lp(1)、Lp(2)、…、Lp(n)、…それぞれに対して実行されて、全ての受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…について素子特性係数が求められて、素子特性係数記憶部270に記憶される。
【0047】
以上が、受光素子の素子特性係数を取得するフローである。続いては、光量分布を実測した結果と素子特性係数とに基づいて補正係数を取得するフローについて説明する。図7は、受光素子の補正係数を取得するフローを示すフローチャートである。このフローチャートは、膜厚ムラ検査装置1に光検出部4を取り付けた状態で実行され、例えば膜厚ムラ検査を実行する前に実行することができる。また、図8は、図7のフローチャートで取得される各データをグラフで示した図である。図8のグラフでは、横軸に受光素子E(n)が示されるとともに、縦軸に受光素子E(n)の画素値が8ビット(256)で示されている。
【0048】
受光素子の補正係数の取得では、ステップS201〜S204において光照射部3が照射する光の光量分布が求められた後に、ステップS205において補正係数が求められる。この光量分布の測定では、基板Sに代わって基板Sと同じ厚みのミラーM(図1)がステージ2に載置され、光照射部3から射出されてミラーMで反射された光を光検出部4が検出する。そして、この光検出部4の検出結果から光照射部3の光量分布が求められる。なお、図1では、基板SおよびミラーMの表示を共通させたため、ミラーMの表面に膜Fが形成されているかのように図示されているが、ミラーMの表面は鏡面に仕上げられており膜Fを有しない。
【0049】
ステップS201では、制御部100がモータ211を動作させて、ステージ2とともにミラーMをX軸方向へ等速で移動させつつ、光照射部3から同一の露光時間(例えば1[ms])で光を複数回照射する(つまり、複数回の露光を行なう)。そして、光検出部4の各受光素子E(n)は、各露光におけるミラーMからの反射光を検出して画素値x(n)を検査部200に出力する。一方、検査部200では、出力受付部210で受信した画素値x(n)が補正係数取得部260に転送される。これによって、各受光素子E(n)がミラーMからの反射光を受光して出力した画素値x(n)を、露光の回数分取得することができる。
【0050】
ステップS202では、受光素子E(n)の画素値x(n)を階級とするヒストグラムが、受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…それぞれについて作成される。そして、ステップS203では、最頻値を含む所定範囲にある画素値x(n)(例えば、最頻値近辺の5つの画素値x(n))を抽出して、これらの平均値を求める処理が、受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…それぞれについて実行される。これによって、ヒストグラムの端部に位置する画素値x(n)が外される。ちなみに、図8において太線で示されるデータ平均値は、この結果をプロットしたものである。
【0051】
続くステップS204では、こうして平均化された画素値x(n)を式1に代入して受光素子E(n)が受光した実際の光量y(n)を求める処理が、受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…それぞれについて実行される。こうして、光照射部3が照射する光の光量分布が求められる。ちなみに、図8において細線で示される光量分布は、この結果をプロットしたものである。ステップS205では、素子特性係数記憶部270に記憶される素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)を光量y(n)で除算した値A(n)/y(n)、B(n) /y(n)、C(n) /y(n)を受光素子E(n)の補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)として求める処理が、受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…それぞれについて実行される。そして、各受光素子E(n)の補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)が補正係数記憶部250に記憶される。
【0052】
以上が、受光素子の補正係数を取得するフローである。ちなみに、膜厚ムラ検査において、画像データDrから補正画像データDcを生成する際には、この補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)が用いられる。具体的には、画像データDrを構成する受光素子E(n)の画素値x(n)を次式
y(n)=Ac(n)x+Bc(n)x+Cc(n) …式3
に代入して画素値x(n)の補正値y(n)を求める処理が、受光素子E(1)、E(2)、…、E(n)、…それぞれについて実行されて、補正値y(1)、y(2)、…、y(n)、…で構成される補正画像データDcが生成される。
【0053】
以上に説明したように、この実施形態では、光照射部3から基板Sに形成された膜Fへ光が照射されるとともに、反射光を受光する受光素子E(n)の画素値x(n)に基づいて膜厚ムラが検査される(膜厚ムラ検査モード、膜厚ムラ検査工程)。この際、受光素子E(n)の入出力特性を示す素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)から補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)が求められ、膜厚ムラの検査は、この補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)で受光素子E(n)の画素値x(n)を補正した補正値y(n)に基づいて実行される。こうして各受光素子E(n)の画素値x(n)を素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)で補正した補正値y(n)に基づいて膜厚ムラの検査を行うことで、各受光素子E(n)の入出力特性の差異を補償しつつ膜厚ムラの検査を適切に行うことができる。
【0054】
しかも、この実施形態では、各受光素子E(n)の入出力特性を示す素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)が素子特性係数記憶部270に予め記憶されている。したがって、受光素子E(n)の入出力特性を求める必要がなく、換言すれば、特許文献1のように受光素子E(n)の受光量を多段階で変化させて受光素子E(n)の出力値を取得するといった処理を膜厚ムラの検査の前に実行する必要がない。ただし、既に上述したとおり、予め記憶された素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)に基づいて、受光素子E(n)の画素値x(n)を補正する構成を採用するにあたっては、光照射部3の光量分布が膜厚ムラ検査の精度に影響するおそれがあった。
【0055】
そこで、この実施形態では、光照射部3の光量分布が求められる。具体的には、ステージ2に支持されるミラーMに向けて光照射部3から光が照射され、この際の受光素子E(n)の画素値x(n)に基づいて光照射部3が照射する光の光量分布が求められる。そして、光量分布と素子特性係数記憶部270に記憶された素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)に基づいて受光素子E(n)の補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)が求められる(補正情報取得モード、補正情報取得工程)。こうして、素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)のみならず光量分布にも基づく補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)で受光素子E(n)の画素値x(n)を補正し、この補正値y(n)に基づいて膜厚ムラを検査することで、光照射部3の光量分布が膜厚ムラ検査の精度に与える影響の抑制が図られている。しかも、光照射部3の光量分布は、受光素子E(n)の入出力特性のように非線形な特性を有するものではない。そのため、光照射部3の光量分布を求めるために、受光素子E(n)の受光量を多段階で変化させつつ受光素子E(n)の画素値x(n)を求めるといった処理を行なう必要はない。つまり、光照射部3の光量分布は、受光素子E(n)の入出力特性と比べて迅速に求めることができる。
【0056】
このように、この実施形態では、受光素子E(n)の入出力特性を示す素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)を素子特性係数記憶部270に記憶しておくことで、受光素子E(n)の入出力特性を求めるための処理を排除可能としている。この際、光照射部3の光量分布が膜厚ムラ検査に与える影響を抑制するために、光照射部3の光量分布を求める必要があるものの、光照射部3の光量分布は受光素子E(n)の入出力特性と比べて迅速に求めることができる。したがって、この実施形態では、受光素子E(n)の入出力特性を求めていた特許文献1と比較して、膜厚ムラ検査を始める前の処理に要する時間を短縮することができ、膜厚ムラ検査を速やかに開始することが可能となっている。
【0057】
ところで、この実施形態では、光照射部3が照射する光の光量分布は、光照射部3から照射されてミラーMで反射された光を受光した各受光素子E(n)の画素値x(n)から求められる。したがって、各受光素子E(n)で入出力特性に差異があると、光量分布を正確に求められないおそれがある。これに対して、この実施形態では、受光素子E(n)の出力値に対応する受光量が素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)に基づいて受光素子E(n)毎に算出されて、光量分布が求められている。したがって、各受光素子E(n)の入出力特性の差異によらず、受光素子E(n)が実際に受光した受光量を求めることができる。そして、このようにして求められた受光量に基づいて光量分布を求めることで、光量分布を正確に求めることができる。
【0058】
また、この実施形態では、受光素子E(n)の画素値の二次以上の多項式で受光素子E(n)の受光量を表した入出力特性の各項の係数A(n)、B(n)、C(n)が、素子特性係数として記憶されている。このような構成では、受光素子E(n)の入出力特性が有する非線形性を素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)にきっちりと表すことができる。そして、このような素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)に基づいて、各受光素子E(n)の画素値x(n)を補正する補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)を求めることで、各受光素子E(n)の入出力特性の差異を補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)にしっかり反映させることができる。
【0059】
特に、この実施形態では、入出力特性の各項の係数を光量分布が示す受光量y(n)で除算して求まる各補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)を受光素子E(n)毎に求めている。このような構成では、各受光素子E(n)の入出力特性の差異のみならず、光照射部3が照射する光の光量分布もしっかりと補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)に反映させることができる。
【0060】
そして、この実施形態では、各補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)を各項の係数とする多項式(式3)に受光素子E(n)の画素値x(n)を代入して得られる値y(n)を受光素子E(n)の画素値x(n)の補正値として求めている。このように受光素子E(n)の画素値x(n)を補正することで、各受光素子E(n)の入出力特性の差異および光照射部3が照射する光の光量分布の影響を受光素子E(n)の画素値x(n)から排除して、膜厚ムラ検査を高精度に実施することができる。
【0061】
ところで、光照射部3が照射する光の光量分布は、光照射部3から照射されてミラーMで反射された光を受光した各受光素子E(n)の出力値から求められる。この際、ミラーMにパーティクルが付着していると、光量分布を正確に求めることができないおそれがある。これに対して、この実施形態では、ステージ2によりミラーMを移動させながら光照射部3から同一の露光量で光を複数回照射することで、各受光素子E(n)について得た複数の画素値x(n)に基づいて光量分布が求められている。このような構成では、パーティクルの影響を抑えて、光照射部3が照射する光の光量分布を求めることが可能となる。
【0062】
特に、この実施形態では、各受光素子E(n)について得た複数の画素値x(n)から受光素子E(n)の画素値E(n)を階級とするヒストグラムが受光素子E(n)毎に作成される。そして、受光素子E(n)の複数の画素値x(n)からヒストグラムの端部に対応する受光素子E(n)の画素値x(n)を外した結果に基づいて光量分布が求められる。つまり、各受光素子E(n)について得た複数の画素値x(n)から受光素子E(n)の画素値x(n)を階級としてヒストグラムを作成した場合、パーティクルの影響を受けた受光素子E(n)の画素値x(n)はヒストグラムの端部に現れる傾向にある。そこで、受光素子E(n)の複数の画素値x(n)からヒストグラムの端部に対応する受光素子E(n)の出力値を外した結果に基づいて光量分布を求めることで、パーティクルの影響を確実に抑えて、光照射部3が照射する光の光量分布を求めることができる。
【0063】
また、この実施形態では、本発明の「反射部材」として、ミラーMが用いられている。このような構成では、反射部材からの反射光量を十分に確保することができ、光照射部3が照射する光の光量分布を正確に求めるにあたって有利となる。
【0064】
このように、この実施形態では、膜Fが本発明の「検査対象」に相当し、膜厚ムラ検査装置1が本発明の「明暗検査装置」に相当し、ステージ2が本発明の「支持手段」に相当し、光照射部3が本発明の「光照射手段」に相当し、光検出部4が本発明の「光検出手段」に相当し、受光素子E(n)が本発明の「受光素子」に相当し、制御部100および検査部200が協働して本発明の「制御手段」として機能し、素子特性係数記憶部270が本発明の「記憶手段」に相当する。また、素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)が本発明の「素子特性情報」に相当し、補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)が本発明の「補正情報」に相当する。また、基板Sが本発明の「基板」に相当し、膜Fが本発明の「膜」に相当する。また、膜厚検査モード・工程が本発明の「明暗検査モード・工程」に相当し、補正情報取得モード・工程が本発明の「補正情報取得モード・工程」に相当する。
【0065】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、互いに異なる波長帯の光を選択的に透過する複数の光学フィルタ51が設けられており、この光学フィルタ51を切り換えることで、光検出部4に入射する光の波長帯を変更することができる。そこで、この異なる波長帯それぞれについて、図2のフローチャートを実施して素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)を求めても良い。具体的には、光源であるロッドとラインセンサ41との間に挿入する光学フィルタ51を取り換えつつ、図2のフローチャートを繰り返すことで、異なる波長帯それぞれについて素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)を取得することができる。
【0066】
このようにして異なる波長帯それぞれについて素子特性係数A(n)、B(n)、C(n)を取得した上で、異なる波長帯それぞれについて補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)を求めても良い。具体的には、光検出部4への光路中に位置する光学フィルタ51を切り換えつつ、図7のフローチャートを繰り返すことで、異なる波長帯それぞれについて補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)を取得することができる。また、膜厚ムラ検査を行う際には、当該膜厚ムラ検査で用いた光学フィルタ51に対応する補正係数補正係数Ac(n)、Bc(n)、Cc(n)で、受光素子E(n)の画素値x(n)を補正することで、膜厚ムラを適切に検査することができる。
【0067】
また、膜厚検査の対象となる膜の種類や、当該膜が形成される基板の種類についても種々の変形が可能である。さらには、光照射部3や光検出部4の具体的構成についても種々の変形が可能である。また、受光素子E(n)も上述のようなCCDに限られず、その他の種々のものを用いることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、基板Sに形成された膜Fの明暗が膜厚に依存することを利用して、膜Fに照射された光の反射光を複数の受光素子E(n)で検出した結果から膜厚ムラが検査されていた。つまり、上記実施形態は、膜Fの明暗を検出することで膜Fの膜厚ムラを検査するものであり、本発明にかかる明暗検査技術を膜厚ムラ検査装置1に適用するものであった。しかしながら、本発明にかかる明暗検査技術の適用対象はこれに限られない。つまり、明暗変動を伴うものを検査対象とするものであれば、検査対象の画像データのコントラストから求められる明暗に基づいて検査対象を検査することができ、このような技術全般に本発明の明暗検査技術を適用することができる。
【0069】
具体的には、液晶や半導体などの露光マスクにおける精密繰り返しパターン中の透過率変動、いわゆるピッチムラ、ガラス基板内のごく薄い傷、ガラス表面のごくわずかな表面状態の荒れ、カラーフィルターの透過率ムラ、CTP(Computer to Plate)刷版の表面状態などは、明暗変動を検出することで検査することができる。そこで、これらを検査する際に、本発明の明暗検査技術を好適に適用することができる。
【0070】
また、明暗変動がわずかである場合には、明暗変動を安定して検出することは一般には困難である。しかしながら、本発明のように受光素子の出力値を補正した場合には、各受光素子の入出力特性の差異および光照射手段が照射する光の光量分布の影響を受光素子の出力値から排除しつつ明暗検査を行うことができ、高精度に検査を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、検査対象に照射した光の反射光から検査対象の明暗を検査する技術全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…膜厚ムラ検査装置
2…ステージ
3…光照射部
4…光検出部
41…ラインセンサ
E,E(n)…受光素子
F…膜
M…ミラー
S…基板
100…制御部
200…検査部
210…出力受付部
220…出力補正部
230…強調処理部
240…ムラ検出部
250…補正係数記憶部
260…補正係数取得部
270…素子特性係数記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8