(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834411
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】流動層装置
(51)【国際特許分類】
B01J 2/00 20060101AFI20151203BHJP
B01J 2/16 20060101ALI20151203BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20151203BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20151203BHJP
F27B 15/00 20060101ALI20151203BHJP
F23C 10/00 20060101ALI20151203BHJP
F23G 5/30 20060101ALI20151203BHJP
B01J 8/24 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
B01J2/00 B
B01J2/16
H01M4/36 C
A61J3/06 D
F27B15/00
F23C10/00
F23G5/30 J
B01J8/24 311
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-8095(P2011-8095)
(22)【出願日】2011年1月18日
(65)【公開番号】特開2012-148228(P2012-148228A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】柳 拓男
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/004590(WO,A1)
【文献】
特開平10−140203(JP,A)
【文献】
特開2004−299977(JP,A)
【文献】
特表2009−538081(JP,A)
【文献】
特開2007−307448(JP,A)
【文献】
特開平8−247426(JP,A)
【文献】
特開昭52−106374(JP,A)
【文献】
特開2002−172320(JP,A)
【文献】
特開2001−170473(JP,A)
【文献】
特開平8−294623(JP,A)
【文献】
特開2009−189935(JP,A)
【文献】
特表2009−501629(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0191491(US,A1)
【文献】
米国特許第6197369(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00
A61J 3/06
B01J 2/16
B01J 8/24
F23C 10/00
F23G 5/30
F27B 15/00
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を浮遊流動させながら被覆処理するための処理容器、処理容器内に粉粒体とは異なる特性を有する処理材を含む処理液を噴霧するために処理容器に設けられた処理液噴霧装置、粉粒体を浮遊流動させるために処理容器に設けられた流動用ガス供給口、および処理容器から排出された処理液中の有機溶媒を燃焼させて処理材を焼結するために処理容器の後流路に設けられた燃焼装置を備えてなる流動層装置。
【請求項2】
前記燃焼装置が、着火源および有機溶媒が燃焼して生じる炎を閉じ込めるための火炎制御装置を備えてなる請求項1に記載の流動層装置。
【請求項3】
前記流動用ガス供給口が不活性ガス供給口であり、前記燃焼装置が前記着火源である燃焼触媒層、有機溶媒蒸気を燃焼させるために必要な空気又は酸素を供給する支燃ガス供給装置、および燃焼温度を測定するための熱電対を備えてなる請求項2に記載の流動層装置。
【請求項4】
前記流動用ガス供給口が不活性ガス供給口であり、前記燃焼装置が着火源である放電装置、有機溶媒蒸気を燃焼させるために必要な空気又は酸素を供給する支燃ガス供給装置、燃焼温度を測定するための熱電対、および有機溶媒が燃焼して生じる炎を一定領域に閉じ込めるための火炎制御装置を備えてなる請求項1又は2に記載の流動層装置。
【請求項5】
前記流動用ガス供給口が空気又は酸素供給口であり、前記燃焼装置が着火源である燃焼触媒層、燃焼温度が過度に上昇しないように制御するための不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置、燃焼温度を測定するための熱電対、および有機溶媒が燃焼して生じる炎を一定領域に閉じ込めるための火炎制御装置を備えてなる請求項1又は2に記載の流動層装置。
【請求項6】
前記処理容器が、固体電池用活物質粒子にリチウムイオン伝導体を被覆するためのものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の流動層装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層装置に関し、さらに詳しくは処理材で粉粒体を被覆するための被覆処理および処理材の焼結を連続的に行うことができる流動層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新素材の分野では、2つの特性を兼ね備えた粉粒体を得ることが必要となり、装置内で1つ以上の特性を有する粉粒体に他の特性を有する処理材を含む処理液を噴霧することによって粉粒体に処理材を被覆し、装置から取り出した被覆処理された粉粒体を別の焼結炉に入れて処理材を焼結するプロセスが採用されている。そのような被覆処理を行うための装置の1例として、装置内に熱風を流通させ、駆動源により回転盤を回転させて粉粒体を浮遊流動させながら処理液を噴霧して、粉粒体の表面を被覆処理する転動型の流動層装置が知られている。
【0003】
しかし、このような粉粒体を流動処理する装置は、湿潤状態の粉粒体が装置の底部に堆積して長時間の被覆処理が行えないという問題を有しており、その解決のため様々な検討がされている。
例えば、特許文献1には、流動層容器内で粉粒体を気体により浮遊流動させながら被覆処理を行う流動層装置において、流動層容器に、粉粒体の処理を行う処理室と、該処理室の上方に位置し、固気分離用のフィルター部が配され、該フィルター部を昇降移動させるフィルター昇降機構が設けられている流動層装置が記載されている。そして、具体例として処理材を含むスプレー液を噴霧して流動気体による浮遊流動下に粉粒体を被覆処理し、排気ダクトを通って液の蒸気および気体を外部にそのまま排気した例が示されているが、スプレー液中の有機溶媒を回収した例は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−307448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来技術によって粉粒体に処理材を被覆処理しても、得られた粉粒体がそのままでは最終製品には適用できない場合は、被覆処理された粉粒体を別の焼結炉に入れて処理材を高温で焼結することが必要である。そのような場合、粉粒体を堆積させて焼結が行われるため、得られる粉粒体の品質の均一性が不十分な場合がある。このため、焼結後の粉粒体の品質の均一性を確保する必要性から、粉粒体が堆積していない状態で焼結することが望まれている。また、上記の従来技術においては、粉粒体の被覆処理に用いた有機溶媒は資源として利用されることなく大気中に放出されており、省資源、焼結に要するエネルギーの消費および環境上の観点から問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、粉粒体の被覆処理に用いた有機溶媒を大気中に放出しないで、且つ粉粒体が堆積していない状態で粉粒体に被覆された処理材を焼結し得る流動層装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、粉粒体を浮遊流動させながら被覆処理するための処理容器、処理容器内
に粉粒体とは異なる特性を
有する処理材を含む処理液を噴霧するために処理容器に設けられた処理液噴霧装置、粉粒体を浮遊流動させるために処理容器に設けられた流動用ガス供給口、および処理容器から排出された処理液中の有機溶媒を燃焼させて処理材を焼結するために処理容器の後流路に設けられた燃焼装置を備えてなる流動層装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粉粒体の被覆処理に用いた有機溶媒を大気中に放出しないで、且つ粉粒体が堆積していない状態で粉粒体に被覆された処理材を焼結し得る流動層装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図2は、従来の流動層装置により被覆処理された粉粒体の処理材を焼結炉に入れて焼結している状態を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施態様の流動層装置の概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施態様の流動層装置の概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3の実施態様の流動層装置の概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2および第3の実施態様の燃焼装置における温度制御フローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の第4の実施態様の流動層装置の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4の実施態様の燃焼装置における温度制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に、本発明において、以下の実施態様を挙げることができる。
1)前記燃焼装置が、有機溶媒蒸気に着火させるための着火源および有機溶媒が燃焼して生じる炎を閉じ込めるための火炎制御装置を備えてなる前記流動層装置。
2)前記流動用ガス供給口が不活性ガス供給口であり、前記燃焼装置が前記着火源である燃焼触媒層、有機溶媒蒸気を燃焼させるために必要な空気又は酸素を供給する支燃ガス供給装置、および燃焼温度を測定するための熱電対を備えてなる前記流動層装置。
3)前記流動用ガス供給口が不活性ガス供給口であり、前記燃焼装置が前記着火源である放電装置、有機溶媒蒸気を燃焼させるために必要な空気又は酸素を供給する支燃ガス供給装置、燃焼温度を測定するための熱電対、および有機溶媒が燃焼して生じる炎を一定領域に閉じ込めるための火炎制御装置を備えてなる前記流動層装置。
【0011】
4)前記流動用ガス供給口が空気又は酸素供給口であり、前記燃焼装置が、前記着火源である燃焼触媒層、燃焼温度が過度に上昇しないように制御するための不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置、燃焼温度を測定するための熱電対、および有機溶媒が燃焼して生じる炎を一定領域に閉じ込めるための火炎制御装置を備えてなる前記流動層装置。
5)前記処理容器が、固体電池用活物質粒子にリチウムイオン伝導体を被覆するためのものである前記流動層装置。
【0012】
以下、図面を参照して本発明を詳説する。
従来の流動層装置10は、
図1に示すように、粉粒体2を浮遊流動させながら被覆処理するための処理容器3、該処理容器内の底部に設けられて粉粒体2を回転させるために水平回転する回転盤4と該処理容器の下部に設けられて回転盤を回転駆動するモーターなどの回転盤駆動手段5、処理容器内に処理液を噴霧するために処理容器に設けられた処理液噴霧装置6、粉粒体2を浮遊流動させるために処理容器の下方に設けられた流動用ガス導入口7、処理された粉粒体の系外への排出を防止するためのフィルター30および気体排出口40を備えてなるものである。
【0013】
そして、従来の流動層装置10においては、浮遊流動状態にある粉粒体2はフィルター30によって気体と分離され、処理液に通常含まれる有機溶媒、例えばアルコールが系外に排出され、省資源および環境上の問題が生じる。しかも、フィルターによる目詰まりの問題があるため、粒径が4μm以下の粉粒体は処理し得ない。
また、このようにして被覆処理された粉粒体はそのままでは最終製品に適用できない場合があり、
図2に示すように、焼結炉に入れて粉粒体に被覆された処理材を焼結される。その際、粉粒体を堆積して高温での焼結が行われるため、堆積物の内部と表面とでは温度にむらが生じ、得られる粉粒体に品質の均一性が確保されない場合がある。
【0014】
本発明の第1の実施態様の流動層装置1は、
図3に示すように、粉粒体2を浮遊流動させながら被覆処理するための処理容器3、該処理容器内の底部に設けられて粉粒体2を回転させるために回転する回転盤4と該処理容器の下部に設けられて回転盤を回転駆動する回転盤駆動手段5、処理容器3内に処理液を噴霧するために処理容器に設けられた処理液噴霧装置6、粉粒体を浮遊流動させるために処理容器の下方に設けられた流動用ガス供給口7、それぞれ処理容器の後流路20に設けられた、処理容器から排出された処理液中の有機溶媒蒸気を燃焼させて処理材を焼結させるための燃焼装置8、焼結粉粒体を回収するための焼結粉粒体回収容器40、および気体排出口50を備えている。
前記第1の実施態様においては回転盤4と回転盤駆動手段5とを備えているが、流動用ガスのみによって粉粒体を浮遊流動させることも可能である。
【0015】
本発明の前記実施態様の流動層装置1によれば、処理容器の後流路に有機溶媒蒸気を燃焼させて処理材を焼結させるための燃焼装置8を備えていることにより、被覆処理された粉粒体は燃焼装置8を気体とともに通過中に堆積していない状態で焼結され、また粉粒体の被覆処理に用いた有機溶媒は焼結用燃料として利用される。そして、フィルターを用いる必要がないため、粒径が4μm以下、例えば2μm程度の粉粒体であっても処理され得る。
【0016】
本発明における粉粒体としては、特に制限はなく1つ以上の特性を有する粉粒体に他の特性を有する処理材を含む処理液を噴霧して粉粒体に処理材を被覆する必要のある任意の技術分野の粉粒体が挙げられ、例えばAl
2O
3、Al(OH)
3、TiO
2、ZrO
2、SiO
2、CeO
2、固体電池用活物質粒子などの粉粒体が挙げられる。特に、本発明は、湿式コーティングの適用が困難である固体電池用活物質粒子にリチウムイオン伝導体を被覆する場合に特に好適に適用し得る。
【0017】
本発明における処理液としては、特に制限はなく、粉粒体とは異なる所定の特性を有する処理材、例えばリチウムイオン伝導体(焼結体)がLi
4SiO
4である場合、その原料である(C
2H
5O)
4SiおよびCH
3COOLi・2H
2Oなどのリチウムイオン伝導体前駆体又はその加水分解物を含む有機溶媒、例えばアルコール溶液が挙げられる。前記処理液は、例えば貯蔵槽60から供給され得る。
また、本発明における流動用ガスとしては、特に制限はなく、不活性ガス、例えば窒素や空気、酸素などが挙げられる。
また、本発明における処理液の噴霧装置としては、一般的な液送ポンプと噴霧ノズルを組み合わせて使用し得る。
また、本発明の処理液噴霧装置に用いる気体(ガス)としては、処理液を噴霧させるために通常は噴出用ガス、例えば窒素などの不活性ガス又は空気が用いられる。
【0018】
前記処理容器としては、処理温度が100℃未満である通常の処理条件では特に制限はなく、例えば剛性を有する樹脂製、例えばアクリル樹脂製あるいはステンレス製の略円筒状の装置を使用できる。本発明における前記回転盤と回転盤駆動手段とを備えた処理容器として、例えば一般的な転動流動層コーティング装置、例えば株式会社パウレック製のマルチプレックス(MPシリーズ)や回転盤部に解砕機構を備えた装置(MP−SFPシリーズ)やフロイント産業株式会社のフローコーター、コートマイザーなどを使用することができる。
【0019】
本発明において、前記燃焼装置として、有機溶媒に着火させるための着火源および有機溶媒が燃焼して生じる炎を閉じ込めるための火炎制御装置の組み合わせが挙げられる。
また、本発明において、前記処理容器への粉粒体の導入は、バッチ式に処理前に処理容器内に一度に加えられてもよくあるいは、粉粒体導入口(図示せず)を介して連続的又は逐次的に処理容器内に加えてもよい。前記の粉粒体をバッチ式に処理前に処理容器内に一度に加える場合、処理容器としては開閉可能な構造を有している必要があり、開閉部はシーリング部材、例えばオーリングによって処理容器の上部と下部とが粒体導入後は密閉され得る。
【0020】
また、本発明の第2の実施態様の流動層装置1は、
図4に示すように、前記流動用ガス供給口7が不活性ガス供給口であり、燃焼装置8として、処理容器の後流路20に設けられた、有機溶媒を燃焼させるための着火源としての燃焼触媒層21、有機溶媒蒸気を燃焼させるために必要な空気又は酸素を供給する支燃ガス供給装置22、燃焼温度を測定するための熱電対23、および有機溶媒が燃焼して生じる炎を一定領域に閉じ込めるための火炎制御装置24が備えられている。また、前記の流動層装置1においては、
図4に示すように、処理液を噴霧するために処理容器に設けられた処理液噴霧装置6には噴霧ガスとして不活性ガス、例えば窒素(N
2)が供給され得る。
【0021】
前記の燃焼触媒層としては、例えば、触媒成分としてPt、Ag、AuやMoO
3をベースとする複合モリブデン酸やSb複合酸化物、W、Coの酸化物などの粉末又は顆粒の固定床であり得て、特に急激な燃焼が起こらず温度制御が容易である前記燃焼触媒成分を担持させたハニカムを設置することが好適である。
また、燃焼触媒層には、少なくとも1ヶ所に熱電対23が設置され、燃焼温度を測定する。
また、前記支燃ガス供給装置には、通常高い精度で支燃ガスを供給するためにマスフローコントローラが備えられ得る。
また、前記火炎制御装置としては、熱を奪うために高熱伝導性のステンレス等の金属で作製され、一般的にフレームアレスタ又は逆火防止装置と呼ばれるフィルター付の弁が挙げられる。前記フレームアレスタは通常着火源の前後に備えられ、炎は燃焼域内に閉じ込められる。フレームアレスタによって、運転状態が非定常状態となって大きな炎が形成されても、燃焼による炎が出口あるいは処理容器側に噴き出ることを防止し得る。
前記の後流路20の火炎制御装置の後の位置に、必要であればクーラーなどを設けて排出される粉粒体および気体を室温まで冷却してもよい。
【0022】
また、本発明の第3の実施態様の流動層装置1は、
図5に示すように、前記流動用ガス供給口7が不活性ガス供給口であり、燃焼装置8として、処理容器の後流路20に設けられた、有機溶媒を燃焼させるための着火源としての放電装置31、有機溶媒蒸気を燃焼させるために必要な空気又は酸素を供給する支燃ガス供給装置32、燃焼温度を測定するための熱電対33、および有機溶媒が燃焼して生じる炎を一定領域に閉じ込めるための火炎制御装置34が備えられている。また、前記の流動層装置1においては、
図5に示すように、処理液を噴霧するために処理容器に設けられた処理液噴霧装置6において噴霧ガスとして不活性ガス、例えば窒素(N
2)が供給され得る。
前記の放電装置31としては、パルス放電や連続放電などが用いられ得る。
そして、前記支燃ガス供給装置には、通常高い精度で支燃ガスを供給するためにマスフローコントローラが備えられ得る。
【0023】
本発明の第2、第3の実施態様の装置により有機溶媒蒸気を燃焼させる際に、
図6に示すように、燃焼温度を測定し、測定温度と設定温度とを比較し、フローチャートに従って、測定温度が設定温度より低い場合は空気又は酸素の支燃ガス流量を増やし、測定温度が設定温度より高い場合は空気又は酸素の支燃ガス流量を減らして、支燃ガス供給装置からの支燃ガスの供給を調整することによって、燃焼温度を設定温度に保つことができる。この設定温度は、処理材の種類によって異なり、例えば固体電池用活物質粒子にリチウムイオン伝導体を被覆する場合は焼結に必要な燃焼温度は300〜500℃の範囲内であり得る。
【0024】
また、本発明の第4実施態様の流動層装置1は、
図7に示すように、前記流動用ガス供給口7が空気又は酸素供給口であり、前記燃焼装置として、前記着火源としての燃焼触媒層41、燃焼温度が過度に上昇しないように制御するための不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置42、燃焼温度を測定するための熱電対43、および有機溶媒が燃焼して生じる炎を一定領域に閉じ込めるための火炎制御装置44が備えられている。また、前記の流動層装置1においては、
図7に示すように、処理液を噴霧するために処理容器に設けられた処理液噴霧装置6において噴霧ガスとして空気又は酸素(O
2)が供給され得る。
そして、前記不活性ガス供給装置には、通常高い精度で不活性ガスを供給するためにマスフローコントローラが備えられ得る。
【0025】
本発明の第4の実施態様の装置により有機溶媒蒸気を燃焼させる際に、
図8に示すように、燃焼温度を測定し、測定温度と設定温度とを比較し、フローチャートに従って、測定温度が設定温度より高い場合は不活性ガス流量を増やし、測定温度が設定温度より低い場合は不活性ガス流量を減らして、不活性ガス供給装置からの不活性ガスの供給量を調整することによって、燃焼温度を設定温度に保つことができる。
本発明の第4実施態様の流動層装置によれば、不活性ガスの使用量を大幅に低減し得るので特に好適である。
【0026】
本発明によって、粉粒体の表面全体又は表面の一部に焼結処理材が被覆又は堆積した被覆処理粉粒体を、省資源、エネルギー消費および環境等の従来の問題を生じることなく連続的に得ることができる。
特に、熱電対で温度測定し、支燃ガス流量又は不活性ガス流量、特に支燃ガス流量にフィードバックすることにより、安定した燃焼温度を維持することが可能となり、品質の安定した焼結粉粒体を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の流動層装置によって、粉粒体の被覆処理に用いた有機溶媒は大気中に放出しないで、且つ粉粒体が堆積していない状態で焼結した被覆処理粉粒体を連続的に得ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 本発明の実施態様の流動層装置
2 粉粒体
3 処理容器
4 回転盤
5 回転盤駆動手段
6 処理液噴霧装置
7 流動用ガス導入口
8 燃焼装置
10 従来の流動層装置
20 後流路
21、41 燃焼触媒層
22、32 支燃ガス供給装置
23、33、43 熱電対
24、34、44 火炎制御装置
30 フィルター
31 放電装置
40 焼結粉粒体回収容器
41 不活性ガス供給装置
50 気体排出口
60 処理液貯蔵槽