特許第5834416号(P5834416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834416
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   B41J2/01 129
   B41J2/01 401
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-19528(P2011-19528)
(22)【出願日】2011年2月1日
(65)【公開番号】特開2012-158104(P2012-158104A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2014年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉
(74)【代理人】
【識別番号】100107261
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 修
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 和利
(72)【発明者】
【氏名】林 義光
【審査官】 牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−185852(JP,A)
【文献】 特開2009−208348(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/090541(WO,A1)
【文献】 特開2006−142613(JP,A)
【文献】 特開2006−159499(JP,A)
【文献】 特開2006−159684(JP,A)
【文献】 特開2005−199563(JP,A)
【文献】 特開2008−311002(JP,A)
【文献】 特開2004−155093(JP,A)
【文献】 特開2006−181801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質感モードとして第1モードと、前記第1モードよりも光沢度が低い第2モードと、を有し、
記録媒体に液滴を付着させる液滴付着手段と、
前記記録媒体に付着した前記液滴に電磁波を照射する照射器と、
前記電磁波の照射周期について、周波数が所定周波数となるように前記照射器を制御する照射制御手段と、
質感モードとして前記第1モードが選択された場合であって、前記記録媒体上における前記液滴の平均厚みが12.5μm以下のときに、前記照射周期において前記照射器から前記電磁波を照射させる期間である照射期間の長さを、前記照射周期において前記照射器から前記電磁波を照射させない期間である停止期間の長さで除算した期間比率を0.2以上かつ2以下と設定する期間設定手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記照射制御手段が設定する前記所定周波数は、200Hzである、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記照射制御手段は、前記期間比率が小さいほど前記照射器に照射させる前記電磁波の強度を大きくする、
請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記期間設定手段は、前記第2モードが選択された場合であって、前記記録媒体上における前記液滴の平均厚みが17.5μm以下のときに、前記期間比率を3以上に設定する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記期間設定手段は、前記第1モードが選択された場合であって、前記記録媒体上における前記液滴の平均厚みが12.5μmよりも大きく17.5μm以下のときに、前記期間比率を0.2以上かつ1以下と設定する、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に付着した液滴に電磁波を照射する照射器を備える電磁波照射装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性のインクに対して少なくとも1回だけフラッシュを照射するようにフラッシュ光源を制御する記録装置が提案されている(特許文献1、参照)。インクに対して少なくとも1回だけフラッシュが照射されることが保証されるため、確実にインクを硬化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−142613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、確実にインクを硬化させることができても、インクの高い表面光沢度を実現することができないという問題があった。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、液滴の高い表面光沢度を実現する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の電磁波照射装置において、照射器は記録媒体に付着した液滴に電磁波を照射する。照射制御手段は、照射器に電磁波を照射させる周期である照射周期の周波数が所定周波数となるように、電磁波を周期的に照射させる。期間設定手段は、照射周期において照射器に電磁波を照射させる期間である照射期間の長さを、照射周期において照射器に電磁波を照射させない期間である停止期間の長さで除算した期間比率を0.2以上かつ2以下と設定する。これにより、液滴の高い表面光沢度を実現できる。
【0006】
ここで、電磁波が照射される期間において液滴の表面が偏って硬化することとなる。電磁波は液滴が深さ方向に進行するにつれて減衰するため、表面に偏って硬化に必要な電磁波のエネルギーが付与されるからである。従って、電磁波が照射される期間において液滴の表面の硬化を促進できる。その一方で、液滴の表面は酸素にさらされるため、液滴の表面の硬化が酸素阻害により抑制される。特に、電磁波が照射されない期間においては、酸素によって硬化が酸素阻害により抑制されにくい液滴の内部が偏って硬化することとなる。すなわち、電磁波を照射させる照射期間と、電磁波を照射させない停止期間とを設けることにより、液滴の表面と内部とにおける硬化をバランスよく進行させることができる。液滴の表面と内部とにおける硬化をバランスよく進行させることにより、表面と内部とにおいて液滴の硬化にともなう収縮を均一にすることができる。従って、液滴が歪むことにより表面に凹凸が形成され、表面光沢度が低下することが防止でき、高い表面光沢度を実現できる。照射期間の長さを停止期間の長さで除算した期間比率を0.2以上かつ2以下と設定することにより、液滴の表面の硬化を促進させる期間の長さと、液滴の内部の硬化を促進させる期間の長さとの比が適度となり、液滴の高い表面光沢度が実現できる。
【0007】
さらに、期間設定手段は、期間比率を0.2以上かつ1以下と設定してもよい。これにより、液滴の表面が偏って硬化する期間の長さと、液滴の内部が偏って硬化する期間の長さとの比をより好適とすることができ、より高い表面光沢度が実現できる。
【0008】
また、照射制御手段は、期間比率が小さいほど照射器に照射させる電磁波の強度を大きくするのが望ましい。すなわち、期間比率が小さいほど照射期間が短く、液滴の硬化のための電磁波のエネルギーが不足することとなるが、期間比率が小さいほど電磁波の強度を大きくすることにより、確実に液滴を硬化させることができる。
【0009】
また、期間設定手段は、期間比率を2と設定してもよい。これにより、期間比率を0.2以上かつ1以下と設定する場合よりも、液滴の表面と内部とにおける硬化の進行を不均等とすることができる。従って、液滴の表面光沢度を、電磁波を連続照射するより場合よりも高く、かつ、期間比率を0.2以上かつ1以下と設定する場合よりも低くできる。すなわち、中程度の液滴の表面光沢度が実現できる。
【0010】
なお、期間比率を0.2以上かつ2以下と設定することにより、液滴の高い表面光沢度を実現するためには、記録媒体上における液滴の厚みが5μm以上かつ10μm以下であるのが望ましい。また、期間比率を0.2以上かつ2以下と設定することにより、液滴の高い表面光沢度を実現するためには、周期期間の周波数は200Hzであることが望ましい。
【0011】
なお、期間比率が0.2未満となると、紫外線を照射させない停止期間が酸素の拡散速度に対して長くなり過ぎ、液滴の内部においても酸素阻害が生じるものと推測される。従って、液滴全体が未硬化となり得る。一方、期間比率が3以上となると、紫外線を照射させない停止期間が、紫外線を照射させる照射期間に対して短くなり過ぎ、酸素阻害により表面の偏った硬化を抑制できなくなるものと推測される。従って、期間比率を3以上と設定することにより、液滴の深さ方向に偏った収縮を生じさせることができる。すなわち、期間比率を3以上と設定することにより、液滴の表面に歪みを生じさせ液滴の表面光沢度を低くできる。
【0012】
以上説明したように、液滴の表面光沢度は期間比率に依存する。従って、期間設定手段は、印刷物の表面光沢度を高くすべき指示が受け付けられた場合に期間比率を0.2以上かつ2以下に設定し、当該指示が受け付けられない場合に期間比率を3以上に設定してもよい。これにより、印刷物の表面光沢度を所望の光沢度にすることができる。
なお、本発明の効果は電磁波照射装置単独でも実現できるし、電磁波照射装置を他の装置に組み込んだ場合でも実現できる。例えば、記録媒体に液滴を付着させる液滴付着手段を備える画像形成装置に、本発明の電磁波照射装置を組み込んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(1A)は画像形成装置のブロック図、(1B)は印刷ヘッドの底面図である。
図2】(2A)は駆動信号を示すグラフ、(2B)は照射条件テーブルを示す表である。
図3】(3A)は表面粗さと期間比率との関係を示す表であり、(3B)〜(3G)は印刷物を示す模式図である。
図4】ラジカル濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら以下の順に説明する。なお、各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
(1)画像形成装置の構成:
(2)印刷結果:
(3)変形例:
【0015】
(1)画像形成装置の構成:
図1Aは本発明の一実施形態にかかる電磁波照射装置を含む画像形成装置1のブロック図である。画像形成装置1は、紫外線硬化型インクにより記録媒体上に印刷画像を形成するライン型インクジェットプリンターである。画像形成装置1は、コントローラー10と印刷ユニット20と照射ユニット30と搬送ユニット40とUI(User Interface)部50とを備える。コントローラー10は、図示しないASICとCPUとROMとRAMとを備える。ASICと、ROMに記録されたプログラムを実行するCPUとは、後述する印刷制御処理のための各種演算処理を実行する。本実施形態において記録媒体は透明な樹脂フィルムであることとする。
【0016】
印刷ユニット20は、インクタンク21と印刷ヘッド22とピエゾドライバー23とを備える。インクタンク21は、印刷ヘッド22に供給するためのインクを貯留する。本実施形態のインクタンク21は、W(ホワイト)とC(シアン)とM(マゼンタ)とY(イエロー)とK(ブラック)とCL(クリアー(透明))との各種類のインクをそれぞれ貯留する。インクは紫外線硬化型インクであり、電磁波としての紫外線のエネルギーを受け重合が進行する紫外線重合樹脂と重合開始剤と色材(CLを除く)等を含む。例えば特開2009−57548号公報に記載された紫外線硬化型インクをインクタンク21が貯留する。
【0017】
図1Bは、印刷ヘッド22を記録媒体側から見て示す底面図である。印刷ヘッド22は、インクの種類ごとに設けられ、記録媒体(破線)の搬送方向の上流側からW→C→M→Y→K→CLの順に配列されている。印刷ヘッド22は、それぞれが記録媒体に対面するノズル面を有し、当該ノズル面において複数配列するノズル22aを備える。印刷ヘッド22においてノズル22aは線状に配列され、ノズル22aの配列方向は記録媒体の幅方向(搬送方向の直交方向)とされる。また、ノズル22aは記録媒体の幅よりも広い範囲に配列される。各ノズル22aは図示しないインク室と連通しており、インク室にはインクタンク21から供給されたインクが満たされる。インク室にはノズル22aごとに図示しないピエゾ素子が備えられており、ピエゾドライバー23はコントローラー10からの制御信号に基づいてピエゾ素子に駆動電圧パルスを印加する。ピエゾ素子は、駆動電圧パルスが印加されると機械的に変形し、インク室に満たされたインクを加減圧する。これにより、ノズル22aからインク滴が記録媒体に向かって吐出される。ノズル22aは記録媒体の幅よりも広い範囲に配列されるため、記録媒体の幅方向の全域にインク滴を付着させることができる。本実施形態において、記録媒体上に形成されるインク滴の平均厚みが7.5μmとなるように、1ショットあたり重量c(例えばc=10ng)でインク滴を吐出させることとする。なお、印刷ヘッド22は液滴付着手段に相当する。
【0018】
照射ユニット30は、駆動信号生成回路31とLED光源32とを備える。なお、照射ユニット30は電磁波照射装置に相当し、LED光源32は照射器に相当する。図1Bに示すように、照射ユニット30はインクの種類ごとに設けられており、LED光源32は印刷ヘッド22から所定距離d(例えばd=50mm)だけ記録媒体の搬送方向下流側へ離れた位置に設けられている。LED光源32は、LED発光素子を記録媒体の幅方向の複数配列することにより形成され、記録媒体の幅方向の全域に電磁波としての紫外光を照射する。LED光源32から記録媒体上に紫外光が照射される照射範囲Aは、搬送方向に所定幅w(例えばw=80mm)を有する。記録媒体を搬送方向へ搬送することにより、印刷ヘッド22から吐出されたインク滴を、当該印刷ヘッド22から所定距離dだけ下流側に備えられたLED光源32の照射範囲A内に位置させることができる。これより、LED光源32が照射した紫外光のエネルギーによって、記録媒体上に付着したインク滴における重合が開始し、進行する。また、各印刷ヘッド22から吐出されたインク滴は、各印刷ヘッド22の下流側に備えられたLED光源32によって硬化させられる。
【0019】
駆動信号生成回路31は、コントローラー10からの制御信号に基づいてLED光源32に供給する駆動信号を生成する。駆動信号生成回路31はLED光源32ごとに備えられており、LED光源32ごとに異なる駆動信号を生成する。従って、各印刷ヘッド22に対応するインクの種類ごとに異なる紫外光の照射条件によりインク滴を硬化させることができる。コントローラー10は、図示しないROMに照射条件テーブル10aを記録しており、当該照射条件テーブル10aを参照することにより、駆動信号生成回路31に出力させる駆動信号を特定する。
【0020】
図2Aは駆動信号を示すタイミングチャートである。図2Aの縦軸は駆動信号の電流値およびLED光源32の照度を示し、横軸は時刻を示す。本実施形態の駆動信号は、0または所定値i(i>0)の電流値Iを有する矩形パルス電流であり、電流値Iが所定値iとなる照射期間t1においてLED光源32が紫外光を照射し、電流値が0となる停止期間t2においてLED光源32が紫外光を照射しない。照射期間t1の長さと停止期間t2の長さとの和は照射周期Pに相当する。本実施形態において、照射周期Pの周波数Fは200Hzと設定される。なお、照射周期Pは、照射期間t1においてLED光源32に紫外光を照射させる周期に相当する。
【0021】
図2Bに示す照射条件テーブル10aにおいては、インクの種類(W,C,M,Y,K,CL)ごとに備えられたLED光源32のそれぞれに対して出力する駆動信号についての期間比率Rと電流値Iとが規定されている。なお、期間比率Rは、照射周期Pを構成する照射期間t1の長さを停止期間t2の長さで除算した値である。期間比率Rと所定値iとは、印刷物の質感モードとCLの使用可否との組み合わせごとに規定されている。なお、印刷物とは個々のインク滴を指すのではなく、複数のインク滴が記録媒体上にて重なった印刷結果全体を指す。本実施形態において、質感モードとして光沢モードと半光沢モードとマットモードとが用意される。Wについてはいずれの質感モードにおいてCLの使用可否に拘わらず期間比率Rが無限大と規定されている。なお、期間比率Rが無限大である場合とは、停止期間t2の長さが0であることを意味する。すなわち、駆動信号の電流値Iが常に所定値iとなり、紫外光が連続照射されることとなる。CLが使用可の場合にのみCLについての期間比率Rが規定されており、CLが使用否の場合にはLED光源32に紫外光の照射をさせない。CLについて、光沢モードについて期間比率Rが1/3と規定され、半光沢モードについて期間比率Rが2と規定され、マットモードについて期間比率Rが無限大と規定されている。また、C,M,Y,Kについては、CLが使用否の場合において質感モードに拘わらず期間比率Rが無限大と規定されている。CLが使用否の場合におけるC,M,Y,Kについての期間比率Rは、光沢モードで1/3と規定され、半光沢モードで2と規定され、マットモードで無限大と規定されている。
【0022】
照射条件テーブル10aにおいて、期間比率Rが無限大となる場合に照射期間t1の電流値Iは0.5Aと規定され、期間比率Rが2となる場合に照射期間t1の電流値Iの所定値iは0.8Aと規定され、期間比率Rが1/3となる場合に照射期間t1の電流値Iの所定値iは2.5Aと規定されている。すなわち、期間比率Rが小さくなるほど、照射期間t1の電流値Iが大きくなるように設定される。これにより、照射期間t1が短くなっても、インク滴を硬化させる紫外光のエネルギーが不足することが防止でき、インク滴の未硬化が防止できる。なお、電流値Iの所定値iを0.5,0.8,2.5Aとすることにより、照射期間t1におけるピーク照度がそれぞれ約0.7,0.8,2.8W/cm2となる。駆動信号は理想的に矩形パルス電流であるが、図2Aにおいて破線で示すようにLED光源32が実際に照射する紫外光の照度波形は、なまった形状となり、照射期間t1においてはピーク照度をピークとした照度の経時変化が生じる。
【0023】
コントローラー10は、印刷物の質感モードとCLの使用可否との組み合わせを取得すると、照射条件テーブル10aにて当該組み合わせに対応づけられた期間比率Rと電流値Iの所定値iとを各種類のインクについて特定する。そして、各種類のインクに対応する駆動信号生成回路31に対して、各種類のインクについて特定した期間比率Rに準じた駆動信号を生成させる制御信号を出力する。すなわち、本実施形態では、照射周期Pの周波数Fが200Hzであるため、照射周期Pは1/200秒となる。この照射周期Pを、期間比率Rに基づいて分配することにより、照射期間t1の長さと停止期間t2の長さが特定できる。例えば、期間比率Rが1/3の場合、照射期間t1の長さは(1/200)×(1/4)秒となり、停止期間t2の長さは(1/200)×(3/4)秒となる。各種類のインクに対応する駆動信号生成回路31は、照射期間t1の長さと停止期間t2の長さとを指定する制御信号を取得し、当該制御信号に基づいて駆動信号を生成してLED光源32に出力する。なお、印刷物の質感モードとCLの使用可否との組み合わせは、単一の印刷ジョブの印刷において変化することなく、単一の印刷ジョブの印刷期間内において期間比率Rは変化しない。また、図示しないが駆動信号生成回路31は、電流値Iが所定値iの直流電流を供給する可変直流電源回路と、期間比率Rに対応したデューティー比、かつ、周波数Fのパルス波を生成する発振回路と、前記直流電流を前記パルス波に基づいてスイッチングするスイッチング回路等を含む。コントローラー10は、照射制御手段および期間設定手段に相当する。なお、固体発光素子であるLED光源32を用いることにより、紫外光の周期的な照射を電流パルスによって容易に制御できる。
【0024】
搬送ユニット40は、図示しない搬送モーターと搬送ローラーとモータードライバー等を備え、コントローラー10からの制御信号に基づいて搬送方向に記録媒体を搬送する。これにより、記録媒体上における搬送方向および幅方向の各位置にインク滴を着弾させることができ、二次元の印刷画像を形成することができる。また、記録媒体の各位置を各種類のインクに対応する印刷ヘッド22の直下に順に移動させることができ、W→C→M→Y→K→CLの順に下からインク滴を重ねて付着させていくことができる。すなわち、記録媒体に対して白色の色材を含むWのインク滴が最初に付着され、その後、記録媒体に対してC,M,Y,Kのインク滴が順次に付着され、最後に透明なCLのインク滴が記録媒体に対して付着される。
【0025】
また、各種類のインクのインク滴が付着される間には、直前に付着されたインク滴のインクの種類に対応したLED光源32の照射範囲Aに当該インク滴が移動し、当該インク滴が紫外光により硬化させられる。そして、照射範囲Aを移動する間にインク滴が硬化し、その後、さらに記録媒体が搬送されることにより、次の種類のインク滴が重ねて付着される。すなわち、各種類のインクのインク滴は、インクの種類に対応するLED光源32によって個別に紫外線が照射される。むろん、後に付着されるインク滴のインクの種類に対応するLED光源32によっても、先に付着されたインク滴に紫外線が照射されることとなる。しかし、先に付着されたインク滴の硬化がすでにある程度完了しているため、後に付着されるインク滴のインクの種類に対応するLED光源32が、先に付着されたインク滴の表面光沢度に与える影響は無視できる。
【0026】
なお、Wのインク滴を最下層(最も記録媒体側)に形成しておくことにより、記録媒体が白色でない場合でも、記録媒体が白色であると同様にフラットな分光反射特性を有する下地を形成できる。当該下地の上にそれぞれ分光吸光特性の異なるC,M,Y,Kの各色材を含むインク滴を重ねて行くことにより、多様な色を再現できる。さらに、CLのインク滴を重ねれば、CLのインク滴により印刷物の表面の質感を調整できる。本実施形態において、記録媒体の搬送速度はv1〜v2(例えばv1=200,v2=1000mm/秒)であり、記録媒体に付着してからインク滴がLED光源32の照射範囲A内に移動するまでの期間の長さは、d/v2〜d/v1秒となる。さらに、照射範囲A内にてインク滴に紫外光が照射される期間の長さは、w/v2〜w/v1秒となる。
【0027】
UI部50は、画像を表示させる表示部と操作を受け付ける操作部とを備える。UI部50は、印刷物の質感モードの選択指示と、CLの使用可否の指定とを受け付けるための印刷条件設定画像を、コントローラー10からの制御信号に基づいて表示部に表示させる。そして、UI部50は操作部により質感モードの選択指示と、CLの使用可否の指定とを印刷ジョブごとに受け付け、これらの組み合わせを示す操作信号をコントローラー10に出力する。従って、コントローラー10は、印刷ジョブごとに印刷物の質感モードとCLの使用可否との組み合わせを取得し、当該組み合わせに対応する照射周期Pの周波数Fを特定できる。
次に、以上説明した画像形成装置1によって記録媒体上に印刷される印刷物の印刷結果について説明する。
【0028】
(2)印刷結果:
図3Aは表面粗さRqと期間比率Rとの関係を示す表であり、図3B〜3Gは印刷物を示す模式図である。表面粗さRqは、以下の手順により計測される。まず、重量cのインク滴を記録媒体に付着させる。そして、期間比率Rの紫外光によりインク滴を硬化させることにより、計測用サンプルを形成する。なお、本実施形態では最も表面側に重ねられ、表面光沢に対する寄与度の大きいCLにより計測用サンプルを形成することとする。そして、計測用サンプルの各位置xにおける表面の高さh(x)を長さlの区間(x=0〜l)にわたって、例えば焦点深度法等の光学的手法により計測する。なお、高さh(x)がインク滴そのものの曲面形状に影響されないように、長さlは、記録媒体に平行な方向におけるインク滴の大きさよりも十分に小さくすることが望ましい。また、高さh(x)は、計測用サンプルの表面に接触するプローブの変位を計測することにより得られてもよい。次に、高さh(x)を下記の(1)式に代入することにより、表面粗さRqを得る。
【数1】
(1)式が示すように表面粗さRqは、高さh(x)の平均値に対する偏差f(x)の二乗平均平方根(Root Mean Square)に相当する。ここで、表面粗さRqが小さいほど計測用サンプルの表面が鏡面に近くなるため、表面粗さRqが小さいほど表面光沢度が高くなる。本実施形態では、表面粗さRqに基づいて計測用サンプルの表面光沢度を、光沢,半光沢,マットのいずれかに判別する。まず、表面粗さRqが第1閾値(5μm)未満となる計測用サンプルの表面光沢度は、光沢に判別される。一方、表面粗さRqが第2閾値(15μm)以上となる計測用サンプルの表面光沢度は、マットに判別される。さらに、表面粗さRqが第1閾値以上かつ第2閾値未満となる計測用サンプルの表面光沢度は、半光沢に判別される。
【0029】
図3Aに示すように、期間比率Rを0.2以上かつ1以下とした場合の計測用サンプルの表面光沢度が光沢と判別された。期間比率Rを2とした場合の計測用サンプルの表面光沢度が半光沢と判別された。期間比率Rを3以上とした場合の計測用サンプルの表面光沢度がマットと判別された。期間比率Rを1/6以下とした場合は、インク滴は硬化しなかった。
【0030】
図4Aは、期間比率Rが1/3である場合におけるインク滴中のラジカル濃度を示すグラフである。ここでは、以下の条件でインク滴の表面と最深部とにおけるラジカル濃度をモデル化することとする。まず、紫外線が照射される照射期間t1図2A)においては、最深部のラジカル濃度は、表面のラジカル濃度の増分の50%だけ、単位時間あたりに増加することとする。紫外線はインク滴が深さ方向に進行するにつれて減衰するため、表面に偏ってラジカルの発生に必要な紫外線のエネルギーが付与されるからである。また、表面の近くで生じたラジカルの連鎖は表面の近くで停止する可能性が高く、インク滴の最深部ではラジカル濃度が増加しにくいからである。一方、紫外線が照射されない停止期間t2図2A)において、表面のラジカル濃度は、紫外線が照射される照射期間t1におけるラジカル濃度の増分の20%だけ、単位時間あたりに減少することとする。また、インク滴の最深部まで酸素が拡散せず、照射期間t1と停止期間t2のいずれにおいても、最深部のラジカル濃度は酸素阻害の影響を受けないこととする。
【0031】
図4Aに示すように、照射期間t1においては表面のラジカル濃度の増分が最深部に対して大きくなるため、表面のラジカル濃度が最深部よりも大きくなっていく。一方、停止期間t2においては表面のみ酸素阻害の影響を受けてラジカル濃度が減少するため、照射期間t1に生じたラジカル濃度の差は停止期間t2において抑制される。従って、照射期間t1と停止期間t2とを繰り返して到来させることにより、表面と最深部とにおけるラジカル濃度の差を抑制しつつ、ラジカル濃度を増大させていくことができる。すなわち、表面と最深部とにおけるインク滴の硬化をバランスよく進めていくことができ、表面と最深部とにおいてインク滴の硬化にともなう収縮を均一にすることができる。従って、インク滴が歪むことにより表面に凹凸が形成され、表面光沢度が低下することが防止でき、高い表面光沢度を実現できる。表面と最深部とにおけるラジカル濃度の差が小さければ小さいほど、高い表面光沢度を実現することができる。
【0032】
また、図3Aに示すように、インク滴の表面光沢度は、照射期間t1の長さと停止期間t2の長さとの比を表す期間比率Rに依存することが確認された。これは、期間比率Rが変化すると、照射期間t1におけるインク滴の表面に偏った硬化の進行度と、停止期間t2におけるインク滴の深部に偏った硬化の進行度との相対的なバランスが変化するからであると推測される。なお、期間比率Rが0.2未満となると、紫外線を照射させない停止期間t2が酸素の拡散速度に対して長くなり過ぎ、インク滴の内部においても酸素阻害が生じ、インク滴全体が未硬化となったと推測される。
【0033】
図4Bは、期間比率Rが2である場合におけるインク滴中のラジカル濃度を示すグラフである。期間比率Rが2である場合、照射期間t1におけるインク滴の表面に偏った硬化の進行度が、停止期間t2におけるインク滴の深部に偏った硬化の進行度に対して過多となり、期間比率Rが1/3である場合よりも表面と最深部とにおけるラジカル濃度の差が大きくなる。これにより、インク滴の表面と最深部との間で歪みが生じ、インク滴の表面光沢度が半光沢となる。
【0034】
図4Cは、期間比率Rが無限大(連続照射)である場合におけるインク滴中のラジカル濃度を示すグラフである。連続照射の場合、照射期間t1におけるインク滴の表面に偏った硬化の進行度が、停止期間t2におけるインク滴の深部に偏った硬化の進行度に対して過多となり、期間比率Rが2である場合よりも表面と最深部とにおけるラジカル濃度の差が大きくなる。これにより、期間比率Rが2である場合よりもインク滴の表面と最深部との間で大きな歪みが生じ、インク滴の表面光沢度がマットとなる。なお、本実施形態では、期間比率Rが小さくなるほど、駆動信号の電流値Iの所定値iを大きくしているため、期間比率Rを1/3とした場合でも、期間比率Rを2,無限大とした場合と同等のラジカル濃度が実現でき、未硬化が防止できる。
【0035】
図3B〜3Gは、印刷物(記録媒体(ハッチング)の直交断面)を、質感モードとCLの使用可否との組み合わせごとに示す模式図である。図3B,3D,3FはCLが使用可の場合の印刷物を示し、図3C,3E,3GはCLが使用否の場合の印刷物を示す。また、図3B,3Cは質感モードが光沢モードの場合の印刷物を示し、図3D,3Eは質感モードが半光沢モードの場合の印刷物を示し、図3F,3Gは質感モードがマットモードの場合の印刷物を示す。
【0036】
図2Bの照射条件テーブル10aにおいて、質感モードとCLの使用可否に拘わらず、Wについての期間比率Rは無限大とされ、Wのインク滴の表面光沢度は低くされる。これにより、表面における乱反射を促進して白色感を高めることができる。また、図3B〜3Gに示すようにWのインク滴上に他の種類のインク滴が重なって接合することを考慮して、Wのインク滴の表面光沢度を低くしている。インク滴の表面光沢度が低いほど、すなわち表面粗さRqが大きいほど、厚み方向に重なるインク滴同士の接合面積が増大し、高い接合強度を得ることができる。さらに、Wのインク滴は最も表面から遠い記録媒体側に形成され、表面の質感に対する寄与度が低いため、質感モードに拘わらずWのインク滴の表面光沢度は低くしても問題は生じない。
【0037】
一方、図3B,3D,3Fに示すようにCLが使用可である場合、CLのインク滴は最表面に形成されるため、印刷物の質感に寄与度は最も大きい。従って、図2Bの照射条件テーブル10aにおいて、質感モードが光沢モードである場合、CLについての期間比率Rは1/3とされる。また、質感モードが半光沢モードである場合、CLについての期間比率Rは2とされ、質感モードがマットモードである場合、CLについての期間比率Rは無限大とされる。これにより、CLが使用可である場合に、ユーザーが希望した表面光沢度の印刷物を得ることができる。なお、CLが使用可である場合には、上層のインク滴との接合強度の向上を目的として、W,C,M,Y,Kについての期間比率Rは無限大とされる。CLが使用可である場合、W,C,M,Y,Kのインク滴が表面の質感に与える影響度は小さいため、接合強度を重視しても問題はない。
【0038】
これに対して、CLが使用否である場合、図3C,3E,3Gに示すようにC,M,Y,Kのインク滴が表面の質感に与える影響度は大きくなる。従って、図2Bの照射条件テーブル10aにおいて、CLが使用否である場合、C,M,Y,Kについての期間比率Rとして質感モードに応じた値が規定されている。すなわち、質感モードが光沢モードである場合、C,M,Y,Kについての期間比率Rは1/3とされる。また、質感モードが半光沢モードである場合、C,M,Y,Kについての照射周期Pの期間比率Rは2とされ、質感モードがマットモードである場合、C,M,Y,Kについての期間比率Rは無限大とされる。
【0039】
以上説明したように、期間比率Rを0.2以上かつ2以下の値に設定することにより、紫外光を連続照射する場合よりもインク滴の高い表面光沢度を得ることができる。また、選択指示された質感モードに応じて期間比率Rを切り替えることにより、所望の表面光沢度を有する印刷物を得ることができる。また、インクの種類に応じて期間比率Rを設定することにより、インクの機能、および、インク滴の付着順序に適したインク滴の表面光沢度(表面粗さ)を実現できる。
【0040】
(3)変形例:
図3Aにおいては、インク滴の平均厚みの7.5μmの他に、12.5,17.5μmである場合の期間比率Rとインク滴の表面光沢度との関係が示されている。インク滴の平均厚みが厚いほど、インク滴の表面光沢度が光沢,半光沢となる期間比率Rの上限値が小さくなることが確認できる。そのため、画像形成装置1が1ショットあたりのインク滴の重量を切り替えることができる場合等に、インク滴の平均厚みが増加するほど、インク滴の表面光沢度を光沢,半光沢とするための期間比率Rの上限値を下方修正するようにしてもよい。さらに、図3Aに示す範囲のどの平均厚みとなっても表面光沢度が光沢となるように、期間比率Rを1/5以上かつ1/3以下としてもよい。同様に、図3Aに示す範囲のどの平均厚みとなっても光沢が実現できるように、期間比率Rを3以上としてもよい。
【0041】
前記実施形態においては、インクの種類に応じて期間比率Rを設定したが、すべての種類のインクについて一様な期間比率Rを設定してもよい。この場合でも、期間比率Rを0.2以上かつ2以下の値に設定することにより、紫外線を連続照射する場合よりも高い表面光沢度を実現できる。むろん、0.2以上かつ2以下の範囲に属する期間比率Rを設定すればよく、前記実施形態の照射条件テーブル10aに規定された期間比率R以外の期間比率Rを設定してもよい。また、前記実施形態においては、期間比率Rを照射条件テーブル10aに規定したが、結果的に期間比率Rが0.2以上かつ2以下となっていればよく、期間比率Rが一意に導出可能な他の指標(例えば期間比率Rの逆数や、照射期間t1の長さと停止期間t2の長さそのもの)等が照射条件テーブル10aに規定されてもよい。
【0042】
また、記録媒体の搬送方向に直交する主走査方向にキャリッジ(印刷ヘッド)が移動しながらインク滴が吐出されるシリアルプリンターに本発明を適用してもよい。また、この場合、照射器はキャリッジに備えられてもよいし、キャリッジとは別に備えられてもよい。むろん、複数の種類のインクを使用する画像形成装置に限らず、単一色のインクを使用する画像形成装置においても、期間比率Rを設定することにより、高い表面光沢度のモノクロ印刷画像を得ることができる。さらに、前記実施形態では、紫外線を照射する場合の期間比率Rを設定したが、可視光やマイクロ波等の他の電磁波を照射する場合の期間比率Rを設定してもよい。これにより、他の電磁波により硬化するインク滴によって、高い表面光沢度の印刷物を得ることができる。むろん、電磁波の発生源はLEDに限られず、希ガス光源等であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…画像形成装置、10…コントローラー、10a…照射条件テーブル、20…印刷ユニット、21…インクタンク、22…印刷ヘッド、22a…ノズル、23…ピエゾドライバー、30…照射ユニット、31…駆動信号生成回路、32…光源、40…搬送ユニット、50…UI部、A…照射範囲、B1…光沢帯域、B2…半光沢帯域、B3…マット帯域、P…照射周期、R…期間比率,t1…照射期間、t2…停止期間。
図1
図2
図3
図4