特許第5834418号(P5834418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5834418光フィルター、光フィルターモジュール、分析機器及び光機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834418
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】光フィルター、光フィルターモジュール、分析機器及び光機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20151203BHJP
   G01J 3/26 20060101ALI20151203BHJP
   G01J 3/51 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   G02B26/00
   G01J3/26
   G01J3/51
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-22449(P2011-22449)
(22)【出願日】2011年2月4日
(65)【公開番号】特開2012-163664(P2012-163664A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2014年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉
(74)【代理人】
【識別番号】100107261
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 修
(72)【発明者】
【氏名】松下 友紀
【審査官】 堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−221913(JP,A)
【文献】 特開平07−286809(JP,A)
【文献】 特開2010−152047(JP,A)
【文献】 特開平11−038935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00 − 26/08
G01J 3/00 − 3/457
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板と対向する第2基板と、
前記第1基板に設けられた第1反射膜と、
前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、
前記第1基板に設けられ、前記第1基板の厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜の周囲に形成された第1電極と、
前記第1基板に設けられ、前記平面視において、前記第1電極の周囲に形成された第2電極と、
前記第1電極に接続され前記第1反射膜から離れる方向に引き出される引き出し配線と、
前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第3電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第2電極と対向する第4電極と、
を含み、
前記第電極はスリット部を複数有し、前記第電極は前記第2反射膜を中心とした中心対称に設けられ、
前記平面視において前記引き出し配線が前記スリット部を通るように配置されることを特徴とする光フィルター。
【請求項2】
請求項1記載の光フィルターにあって、
第1基板に設けられ、前記平面視において、前記第2電極の周囲に形成された第5電極と、
前記第2基板に設けられ、前記第5電極と対向する第6電極と、を含み
前記第6電極は前記第2反射膜を中心とした中心対称に設けられ、前記第6電極のスリット部の数は前記第3電極のスリット部の数と同じ、または多いことを特徴とする光フィルター。
【請求項3】
請求項1記載の光フィルターにあって、
前記第1電極と前記第2電極は電気的に独立しており、前記第3電極と前記第4電極は、接続部を介して、電気的に接続されていることを特徴とする光フィルター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の光フィルターと、
前記光フィルターを透過した光を受光する受光素子と、
を含む光フィルターモジュール。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の光フィルターを含む分析機器。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項記載の光フィルターを含む光機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光フィルター、光フィルターモジュール、分析機器及び光機器に関する。
【背景技術】
【0002】
透過波長を可変にする干渉フィルターが提案されている(特許文献1)。特許文献1の図3に示すように、互いに平行に保持された一対の基板と、この一対の基板上に互いに対向すると共に一定間隔のギャップを有するように形成された一対の多層膜(反射膜)と、ギャップを制御するための一対の静電駆動電極とを備える。このような波長可変干渉フィルターは、静電駆動電極に印加される電圧によって静電引力を発生させ、ギャップを制御し、透過光の中心波長を変化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−142752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした波長可変干渉フィルターは、ノイズ等による駆動電圧の変動によって、ギャップ量を精度良く得ることが困難である。
電極の感度を低減させて、ギャップ量を精度良く得る方法が挙げられるが、そうした場合に、内側の電極部の引き出し部が外側の電極部で重なり、その部分で静電力が発生するため不均一な力が働き、ギャップ量の精度を低減させてしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、ギャップ量を精度良く得る光フィルター及び光フィルターモジュール並びに分析機器及び光機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
本発明の一態様の光フィルターは、第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、前記第1基板に設けられ、前記第1基板の厚み方向から見た平面視において、前記第1反射膜の周囲に形成された第1電極と、前記第1基板に設けられ、前記平面視において、前記第1電極の周囲に形成された第2電極と、前記第1電極に接続され前記第1反射膜から離れる方向に引き出される引き出し配線と、前記第2基板に設けられ、前記第1電極と対向する第3電極と、前記第2基板に設けられ、前記第2電極と対向する第4電極と、を含み、前記第4電極はスリット部を複数有し、前記第4電極は前記第2反射膜を中心とした中心対称に設けられ、前記平面視において前記引き出し配線が前記スリット部を通るように配置されることを特徴とする。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる光フィルターは、
第1基板と、前記第1基板と対向する第2基板と、前記第1基板に設けられた第1反射膜と、前記第2基板に設けられ、前記第1反射膜と対向する第2反射膜と、前記第1基板に設けられ、平面視において、前記第1反射膜の周囲に形成された第1固定電極と、前記第1基板に設けられ、平面視において、前記第1固定電極の周囲に形成された第2固定電極と、前記第1固定電極に接続され前記第1反射膜から離れる方向に引き出される引き出し配線と、前記第2基板に設けられ、前記第1固定電極と対向する第1可変電極と、前記第2基板に設けられ、前記第2固定電極と対向する第2可変電極と、を含み、前記第2可変電極はスリット部を複数有し、前記第2可変電極は反射膜を中心とした、中心対称構造であり、前記第2基板の厚み方向から見た平面視において前記引き出し配線が前記スリット部を通るように配置されることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、第2基板に設けられ、第1固定電極と対向する第1可変電極と、第2基板に設けられ、第2固定電極と対向する第2可変電極と、を有し、第2可変電極はスリット部を複数有し、反射膜を中心とした中心対称構造である。このため、第2可変電極に作用する膜応力、駆動時の静電力が反射膜を中心に対称になるため、反射膜の撓みや、反り等を防止することが可能となり、よりギャップ量を精度良く得ることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる光フィルターは、前記第2可変電極の外周側に第3可変電極を設け、前記第3可変電極は反射膜を中心とした中心対称であり、前記第3可変電極のスリット部の数は前記第2可変電極のスリット部の数と同じ、または多いことが望ましい。
【0010】
この構成によれば、第3可変電極と第3固定電極とが設けられ、かつ第3可変電極は反射膜を中心とした中心対称な構造である。このため、電極数を増加させて、ギャップ量の精度を良く得ることも可能であり、また各可変電極が反射膜を中心とした中心対称構造であるため、反射膜の撓みや、反り等を防止することが可能となり、よりギャップ量を精度良く得ることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる光フィルターは、前記第1固定電極と前記第2固定電極は電気的に独立しており、前記第1可変電極と前記第2可変電極は、接続部を介して、電気的に接続されていることが望ましい。
【0012】
この構成によれば、前記第1可変電極の外周側に第2可変電極を設け、前記第2可変電極にはスリット部が含まれていることより、前記第1固定電極の引き出し配線において、前記第2可変電極と対向しないことが可能である。このため、不要な静電力が発生しないため、ギャップ量を精度良く得ることができる。
【0013】
[適用例4]本適用例にかかる光フィルターモジュールは、上記の光フィルターと前記光フィルターを透過した光を受光する受光素子と、を含むことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ギャップ量を精度良く得ることができる光フィルターを具備しており、特性の良好な光フィルターモジュールを得ることができる。
【0015】
[適用例5]本適用例にかかる分析機器は、上記の光フィルターを含むことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ギャップ量を精度良く得ることができる光フィルターを具備しており、特性の良好な分析機器を得ることができる。
【0017】
[適用例6]本適用例にかかる光機器は、上記に記載の光フィルターを含むことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、ギャップ量を精度良く得ることができる光フィルターを具備しており、特性の良好な光機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例である光フィルターの電圧非印加状態を示す断面図である。
図2図1に示す光フィルターの電圧印加状態を示す断面図である。
図3】(A)は下部電極の平面図であり、(B)は上部電極の平面図である。
図4】下部電極と上部電極との重なり状態を第2基板側から見た平面図である。
図5】光フィルターの印加電圧制御系ブロック図である。
図6】電圧テーブルデータの一例を示す特性図である。
図7】光フィルターの第1,第2反射膜間ギャップと透過ピーク波長との関係を示す特性図である。
図8図7に示す電位差、ギャップ及び可変波長に関する実施例のデータを示す特性図である。
図9図7に示す印加電圧と透過ピーク波長との関係を示す特性図である。
図10】本発明の更に他の実施形態である分析機器のブロック図である。
図11図10に示す装置での分光測定動作を示すフローチャートである。
図12】本発明の更に他の実施形態である光機器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0021】
1.光フィルター
1.1.光フィルターのフィルター部
1.1.1. フィルター部の概要
図1は本実施形態の光フィルター10の電圧非印加状態の断面図であり、図2は電圧印加状態の断面図である。図1及び図2に示す光フィルター10は、第1基板20と、第1基板20と対向する第2基板30とを含む。本実施形態では、第1基板20を固定基板とし、第2基板30を可動基板またはダイヤフラムとするが、いずれか一方又は双方が可動であれば良い。
【0022】
本実施形態では、第1基板20と例えば一体で、第2基板30を可動に支持する支持部22が形成されている。支持部22は、第2基板30に設けても良く、あるいは第1,第2基板20,30とは別体で形成しても良い。
【0023】
第1,第2基板20,30は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。これらの中でも、各基板20,30の構成材料としては、例えばナトリウム(Na)やカリウム(K)などのアルカリ金属を含有したガラスが好ましく、このようなガラスにより各基板20,30を形成することで、後述する反射膜40,50や、各電極60,70の密着性や、基板同士の接合強度を向上させることが可能となる。そして、これらの2つの基板20,30は、例えばプラズマ重合膜を用いた表面活性化接合などにより接合されることで、一体化されている。第1,第2基板20,30の各々は、一辺が例えば10mmの正方形に形成され、ダイヤフラムとして機能する部分の最大直径は例えば5mmである。
【0024】
第1基板20は、厚みが例えば500μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。第1基板20は、第2基板30と対向する対向面のうちの中央の第1対向面20A1に、例えば円形の第1反射膜40が形成されている。同様に、第2基板30は、厚みが例えば200μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成される。第2基板30は、第1基板20と対向する対向面30Aの中央位置に、第1反射膜40と対向する例えば円形の第2反射膜50が形成されている。
【0025】
なお、第1,第2反射膜40,50は、例えば直径が約3mmの円形状に形成されている。この第1,第2反射膜40,50は、AgC単層により形成される反射膜であり、スパッタリングなどの手法により第1,第2基板20,30に形成することができる。AgC単層反射膜の膜厚寸法は、例えば0.03μmに形成されている。本実施形態では、第1,第2反射膜40,50として、可視光全域を分光できるAgC単層の反射膜を用いる例を示すが、これに限定されず、分光可能な波長域が狭いが、AgC単層反射膜よりも、分光された光の透過率が大きく、透過率の半値幅も狭く分解能が良好な、例えばTiO2とSiO2との積層膜を積層した誘電体多層膜を用いてもよい。
【0026】
さらに、第1,第2基板20,30の各対向面20A1,20A2,30Aとは逆側の面にて、第1,第2反射膜40,50に対応する位置に図示しない反射防止膜(AR)を形成することができる。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成され、第1,第2基板20,30の界面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0027】
これら第1,第2反射膜40,50は、図1に示す電圧非印加状態にて第1ギャップG1を介して対向配置されている。なお、本実施形態では、第1反射膜40を固定鏡とし、第2反射膜50を可動鏡とするが、上述した第1,第2基板20,30の態様に応じて、第1,第2反射膜40,50のいずれか一方又は双方を可動とすることができる。
【0028】
平面視で第1反射膜40の周囲の位置であって、第1基板20の第1対向面20A1の周囲の第2対向面20A2には、例えば下部電極60が形成されている。同様に、第2基板30の対向面30Aには、下部電極60と対向して上部電極70が設けられている。下部電極60と上部電極70は、第2ギャップG2を介して、対向配置されている。なお、下部、上部電極60,70の表面は、絶縁膜にて被覆することができる。
【0029】
下部電極60は、電気的に独立した少なくともK(Kは2以上の整数)個のセグメント電極に分割され、本実施形態ではK=2の例として第1,第2固定電極62,64を有する。
つまり、K個のセグメント電極はそれぞれ、異なる電圧に設定可能である一方で、上部電極70は、同電位となる共通電極である。上部電極70も第1可変電極,第2可変電極72,74に分割されている。第1可変電極,第2可変電極72,74は、同電位となる共通電極としなくてもよく、第1可変電極72と第2可変電極74とが電気的に独立している(独立して制御できる)構造であってもよい。例えば、第1可変電極72と第2可変電極74とは、図3(B)で示すような構造とすることができる。また、下部電極60および上部電極70の構造は、第1固定電極62と第1可変電極72との間の電位差と、第2固定電極64と第2可変電極74との間の電位差とが、独立に制御可能であればよい。なお、K≧3の場合には、第1固定電極62、第2固定電極64に関して以下にて説明する関係は、相隣り合う任意の2つのセグメント電極について適用することができる。
【0030】
このような構造の光フィルター10は、第1,第2基板20,30が共に、反射膜(第1,第2反射膜40,50)が形成される領域と、電極(下部、上部電極60,70)が形成される領域とは、平面視で異なる領域となり、特許文献1のように反射膜と電極とが積層されることはない。よって、第1,第2基板20,30の少なくとも一方(本実施形態では第2基板30)が可動基板とされても、反射膜と電極が積層されないために可動基板は撓み易さを確保できる。しかも、特許文献1とは異なり、下部、上部電極60,70上には反射膜が形成されないので、透過型または反射型波長可変干渉フィルターとして光フィルター10を利用しても、下部、上部電極60,70を、透明電極とする制約も生じない。なお、透明電極であっても透過特性には影響を与えるため、下部、上部電極60,70上に反射膜が形成されてない事によって、透過型波長可変干渉フィルターである光フィルター10は所望の透過特性が得られる。
【0031】
また、この光フィルター10では、平面視で第2反射膜50の周囲に配置された上部電極70に共通電圧(例えば接地電圧)を印加し、平面視で第1反射膜40の周囲に配置された下部電極60を構成するK個のセグメント電極の個々に独立した電圧を印加して、図2に示すように対向電極間に矢印で示す静電引力を作用させることで、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1を初期ギャップの大きさよりも小さいギャップとなるように可変する。
【0032】
つまり、電圧印加状態の光フィルター10を示す図2の通り、第1固定電極62及びそれと対向する上部電極70とで構成される第1ギャップ可変駆動部(静電アクチュエーター)80と、第2固定電極64及びそれと対向する上部電極70とで構成される第2ギャップ可変駆動部(静電アクチュエーター)90とが、それぞれ独立して駆動される。
【0033】
このように、平面視で第1,第2反射膜40,50の周囲にのみ配置された独立する複数(K個)のギャップ可変駆動部80,90を有することで、K個のセグメント電極に印加する電圧の大きさと、K個のセグメント電極の中から電圧を印加するために選択されたセグメント電極数との、2つのパラメーターを変化させることで、第1,第2反射膜40,50間のギャップの大きさを制御する。
【0034】
特許文献1のように、パラメーターが電圧の種類だけでは、大きなギャップ可動範囲と、ノイズ等による電圧変動に対する低感度とを、両立することが困難であった。本実施形態のように、電極数というパラメーターを加えることで、電圧だけで制御する場合と同じ印加電圧範囲を個々のセグメント電極に適用することで、大きなギャップ可動範囲の中で、より微調整された静電引力を発生させて、精細なギャップ調整を行うことが可能となる。
【0035】
ここで、印加電圧の最大値をVmaxとし、ギャップをN段階で可変するものとする。下部電極60が複数に分割されていない場合には、最大電圧VmaxをN分割して印加電圧を割り当てる必要がある。このとき、異なる印加電圧間の電圧変化量の最小値をΔV1minとする。一方、本実施形態では、K個のセグメント電極の各々への印加電圧は、最大電圧Vmaxを平均的には(N/K)分割して割り当てればよい。このとき、K個のセグメント電極の各々について、同一セグメント電極に印加される異なる印加電圧間の電圧変化量の最小値をΔVkminとする。その場合、ΔV1min<ΔVkminが成立することが明らかである。
【0036】
このように、電圧最小変化量ΔVkminを大きく確保できれば、電源変動や環境等に依存したノイズによってK個の第1,第2固定電極62,64への印加電圧が多少変動してもギャップ変動は小さくなる。つまり、ノイズに対する感度が小さい、換言すれば電圧感度が小さくなる。それにより、高精度なギャップ制御が可能となり、特許文献1のようにギャップを帰還制御することは必ずしも要しない。また、ギャップを帰還制御したとしても、ノイズに対する感度が小さいために早期に安定させることができる。
【0037】
本実施形態では、可動基板である第2基板30の撓み性を確保するために、図1に示すように、上部電極70が形成される領域を例えば厚み寸法が50μm程度の薄肉部34としている。この薄肉部34は、第2反射膜50が配置される領域の厚肉部32、および支持部22と接触する領域の厚肉部36よりも肉薄に形成されている。換言すれば、第2基板30は、第2反射膜50及び上部電極70が形成される対向面30Aは平坦面であり、第2反射膜50が配置される第1領域に厚肉部32が形成され、上部電極70が形成される第2領域に薄肉部34が形成される。こうして、薄肉部34にて撓み性を確保しながら、厚肉部32を撓み難くすることで、第2反射膜50は平面度を保ってギャップを可変することが可能となる。
【0038】
なお、本実施形態では、独立した複数(K個)のギャップ可変駆動部はそれぞれ、一対の電極からなる静電アクチュエーターで構成したが、それらの少なくとも一つを圧電素子等の他のアクチュエーターに置き換えても良い。ただし、非接触で吸引力を与える静電アクチュエーターは、複数あるギャップ可変駆動部同士の干渉が少なく、ギャップを高精度に制御する上で適している。これとは異なり、例えば2つの圧電素子を第1,第2基板20,30間に配置した場合、駆動していない圧電素子が、他の駆動している圧電素子によるギャップ変位を妨げる存在となる等が生じ、複数のギャップ可変駆動部を独立して駆動する方式にとっては弊害を生じる。その点から、複数のギャップ可変駆動部は静電アクチュエーターで構成することが好ましい。
【0039】
1.1.2. 下部電極(固定電極)
図3(A)は下部電極の平面図であり、図3(B)は上部電極の平面図である。
下部電極60を構成するK個のセグメント電極は、図3(A)の通り、第1反射膜40の中心に対して同心リング状に配置することができる。つまり、第1固定電極62は第1リング状電極部62Aを有し、第2固定電極64は第1リング状電極部62Aの外側に第2リング状電極部64Aを有し、各リング状電極部62A,64Aが第1反射膜に対して同心リング状に形成される。なお、「リング状」または「リング形状」とは、無端リングに限らず不連続リング形状も含み、円形リングに限らず矩形リングまたは多角形リング等を含む用語である。
【0040】
こうすると、図2に示すように、第1反射膜40の中心線Lに対して、第1固定電極62,第2固定電極64の各々が線対称配置となる。これにより、電圧印加時に下部、上部電極60,70間に作用する静電引力F1,F2は、第1反射膜40の中心線Lに対して線対称に作用するので、第1,第2反射膜40,50の平行度が高まる。
【0041】
なお、図3(A)に示すように、第2固定電極64のリング幅W2は、第1固定電極62のリング幅W1よりも広くすることができる(W2>W1)。静電引力は電極面積に比例し、第2固定電極64により生じさせる静電引力F2の方が、第1固定電極62により生じさせる静電引力F1よりも大きく求められるからである。さらに詳しく言えば、外側の第2固定電極64は、ヒンジ部として機能する支持部22に対して第1固定電極62よりも近くに設けられる。このため、第2固定電極64は支持部22での抵抗力に抗する大きな静電引力F2を発生する必要がある。外側の第2固定電極64は、内側の第1固定電極62に比べて直径が大きく、幅W1=幅W2であっても第2固定電極64の面積は大きい。よって、幅W1=幅W2としてもよいが、リング幅W2をより広げることにより、更に面積を増大させて大きな静電引力F2の発生を可能とした。
【0042】
ここで、第1固定電極62の第1リング状電極部62Aには第1引き出し配線62Bが、第2固定電極64の第2リング状電極部64Aには第2引き出し配線64Bがそれぞれ接続される。これら第1,第2引き出し配線62B,64Bは例えば第1反射膜40の中心から放射方向に向けて延在形成される。また、第2固定電極64の第2リング状電極部64Aを不連続とするスリット部64Cが設けられている。内側の第1固定電極62から延びる第1引き出し配線62Bは、外側の第2固定電極64に形成されたスリット部64Cを介して、第2固定電極64の外方に引き出される。
【0043】
このように、第1,第2固定電極62,64をそれぞれリング状電極部62A,64Aとした場合に、外側の第2固定電極64に形成されたスリット部64Cより、内側の第1固定電極62の第1引き出し配線62Bの取り出し経路を容易に確保できる。
【0044】
1.1.3. 上部電極(可変電極)
第2基板30に配置された上部電極70は、第2基板30のうち、第1基板20に形成された下部電極60(第1,第2固定電極62,64)と対向する領域を含む域に形成することができる。上部電極70を同一電圧に設定される共通電極とする場合は、例えば、ベタ電極にしてもよい。
【0045】
これに代えて、本実施形態のように第1基板20に対して変位する第2基板30に配置された上部電極70は、下部電極60と同様に、K個のセグメント電極とすることができる。このK個のセグメント電極もまた、第2反射膜50の中心に対して同心リング状に配置することができる。こうすると、可動である第2基板30に形成される電極面積は、必要最小限に縮小されるので、第2基板30の剛性が低くなり、撓み易さを確保できる。
【0046】
上部電極70を構成するK個のセグメント電極は、図1図2及び図3(B)に示すように、第1可変電極72及び第2可変電極74を有することができる。第1可変電極72は第1リング状可変電極部72Aを有し、第2可変電極74は第1リング状可変電極部72Aの外側に第2リング状可変電極部74Aを有し、各リング状可変電極部72A,74Aが第2反射膜に対して同心リング状に形成される。「同心リング状」の意味は、下部電極60に対するものと同一である。第1可変電極72は第1固定電極62と対向し、第2可変電極74は第2固定電極64と対向している。よって、本実施形態では第2可変電極74のリング幅(第2固定電極64のリング幅W2と同じ)は、第1可変電極72のリング幅(第1固定電極62のリング幅W1と同じ)よりも広い。
【0047】
ここで、第1引き出し配線62Bに対向する場所には、第2可変電極74の第2リング状可変電極部74Aにスリット部78を入れる。同様に、第2引き出し配線64Bに対向する場所には第2可変電極74の第2リング状可変電極部74Aにスリット部78を入れる。ここで、第2可変電極74に入れるスリット部78の形状は第2反射膜50を中心に中心対称構造とする。このようにすることにより、電圧非印加時には、第2基板に発生する電極の膜応力は反射膜を中心とした中心対称となり、反射膜の撓み防止や、高い平行度を得ることが可能となる。また電圧印加時では、引き出し配線では静電力は発生しなく、反射膜を中心に中心対称の場所にのみ静電力が発生するため、反射膜の撓み防止や、高い平行度を得ることが可能となる。
【0048】
また、第1、第2リング状可変電極部72A,74Aに接続される第3,第4引き出し配線76A,76Bも第2反射膜50を中心とした対称構造とする。
【0049】
また、第1可変電極72、第2可変電極74同士は電気的に接続されて、同一電位に設定してもよい。この場合、例えば第3,第4引き出し配線76A,76Bが例えば第2反射膜50の中心から放射方向に向けて延在形成される。第3,第4引き出し配線76A,76Bの各々は、内側の第1可変電極72と外側の第2可変電極74の双方と電気的に接続される。なお、第1,第2可変電極72,74は、共通電極としているため、1本の引き出し配線により接続されても良いが、引き出し配線を複数とすることで配線抵抗を少なくして、共通電極の充放電速度を速めることができる。なお、第1,第2可変電極72,74が、電気的に独立している構造の場合は、それぞれの電極に引き出し配線が形成される。
【0050】
1.1.4. 下部、上部電極の重合領域
図4は、本実施形態の下部、上部電極60,70を第2基板30側から見た平面視での重なり状態を示している。図4において、下側に位置する下部電極60は、第1,第2固定電極62,64が第1,第2可変電極72,74と対向しているため、第2基板30側から見た平面視では現れない。下側に位置する下部電極60は、第1,第2引き出し配線62B,64Bのみが、第2基板30側から見た平面視で現れている。
【0051】
本実施形態では、図3に示すように、上部電極70のうちの外側の第2可変電極74は、スリット部78を有するので、このスリット部78の領域では第2可変電極74に印加した電圧に基づく静電引力F2(図2参照)は作用することはない。スリット部78は中心対称に位置するため、静電力が作用する領域も中心対称となる。このことから、静電力によって、アクチュエーターの駆動の制御を精度良く行える。
【0052】
1.2. 光フィルターの電圧制御系
1.2.1. 印加電圧制御系ブロックの概要
図5は、光フィルター10の印加電圧制御系ブロック図である。図5に示すように、光フィルター10は、下部電極60と上部電極70との間の電位差を制御する電位差制御部110を有する。本実施形態では、共通電極である上部電極70(第1,第2可変電極72,74)は一定の共通電圧例えば接地電圧(0V)に固定されているため、電位差制御部110は、下部電極60を構成するK個のセグメント電極である第1,第2固定電極62,64への印加電圧を変化させて、第1,第2固定電極62,64の各々と上部電極70との間の内周側電位差ΔVseg1及び外周側電位差ΔVseg2をそれぞれ制御する。なお、上部電極70は接地電圧以外の共通電圧を印加してもよく、その場合、電位差制御部110が上部電極70に共通電圧の印加/非印加を制御しても良い。
【0053】
図5では、電位差制御部110は、第1固定電極62に接続された第1電極駆動部、例えば第1デジタル−アナログコンバーター(DAC1)112と、第2固定電極64に接続された第2電極駆動部、例えば第2デジタル−アナログコンバーター(DAC2)114と、それらを制御例えばデジタル制御するデジタル制御部116とを含んでいる。第1,第2デジタル−アナログコンバーター112,114には電源120からの電圧が供給される。第1,第2デジタル−アナログコンバーター112,114は、電源120からの電圧の供給を受けると共に、デジタル制御部116からのデジタル値に応じたアナログ電圧を出力する。電源120は、光フィルター10が装着される分析機器または光機器に装備されているものを利用できるが、光フィルター10専用の電源を用いても良い。
【0054】
1.2.2. 光フィルターの駆動方法
図6は、図5に示すデジタル制御部116での制御の元データである電圧テーブルデータの一例を示す特性図である。この電圧テーブルデータは、デジタル制御部116自体に設けても良いし、あるいは光フィルター10が装着される分析機器または光機器に装備しても良い。
【0055】
図6は、K個の第1,第2固定電極62,64の各々に順次電圧を印加することで、計N段階で第1,第2反射膜40,50の間のギャップを可変するための電圧テーブルデータとして、N=9の例を示している。なお、図6では、第1,第2固定電極62,64の双方と上部電極70との間の各電位差が共に0Vであるときは、N段階のギャップ可変範囲に含めていない。図6は、第1,第2固定電極62,64の少なくとも一方に、上部電極70に印加される共通電圧の電圧値(0V)以外の電圧値が印加される場合のみを示している。ただし、第1,第2固定電極62,64の双方と上部電極70との間の各電位差が共に0Vであるときを、透過ピーク波長が最大であると定義しても良い。
【0056】
1.2.3. 電位差、ギャップ及び可変波長の実施例
図7は、図6に示す電位差、ギャップ及び可変波長の実施例のデータを示す特性図である。図7のデータ番号1〜9は図6のデータ番号1〜9と同一である。図8は、図7に示す印加電圧とギャップとの関係を示す特性図である。図9は、図7に示す印加電圧と透過ピーク波長との関係を示す特性図である。
【0057】
図7では、透過ピーク波長の最大波長λ0=700nmから最小波長λ8=380nmの9段階で透過ピーク波長を可変するために、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1は最大ギャップg0=300nmから最小ギャップg8=140nmの9段階に可変されている(図8も参照)。これに対応して、透過ピーク波長は最大波長λ0から最小波長λ8までの9段階に可変されている(図9も参照)。しかも、図7では、最大ギャップg0から最小ギャップg8までの9段階のギャッブg0〜g8を等間隔(=20nm)に設定することにより、最大波長λ0から最小波長λ8までの9段階の波長λ0〜λ8も等間隔(=40nm)となっている。このように、第1,第2反射膜間の第1ギャップG1の大きさを一定量ずつ順次狭まるように変化させることで、透過ピーク波長も一定値ずつ短くなる。
【0058】
電位差制御部110が、外周側電位差ΔVseg2をVO1=16.9V、VO2=21.4V、VO3=25V、VO4=27.6V、VO5=29.8Vに順次設定し、VO5=29.8Vに維持したまま、内周側電位差ΔVseg1をVI1=16.4V、VI2=22.2V、VI3=26.3V、VI4=29.3Vに順次設定する。
【0059】
なお、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1の大きさは、外周側電位差ΔVseg2に基づく静電引力F2よりも内周側電位差ΔVseg1に基づく静電引力F1の影響の方が大きい。よって、先ず内周側電位差ΔVseg1を変化させた後に、内周側電位差ΔVseg1を一定値に維持したまま外周側電位差ΔVseg2を変化させても、内周側電位差ΔVseg1による静電引力F1が支配的となって第1,第2反射膜40,50間のギャップは外周側電位差ΔVseg2の通りに変化しない。そこで、本実施形態では先ず外周側電位差ΔVseg2を変化させた後に、外周側電位差ΔVseg2を一定値に維持したまま内周側電位差ΔVseg1を変化させている。
【0060】
電位差制御部110は、外周側電位差ΔVseg2が外周側最大電位差VO5に到達した後に、外周側電位差ΔVseg2を外周側最大電位差VO5に維持して内周側電位差ΔVseg1を変化させている。こうすると、外周側最大電位差VO5にて設定された第1ギャップG1からさらに、内周側電位差ΔVseg1の印加による1ステップ分のギャップ変化が可能となる。しかも、内周側電位差ΔVseg1を印加させた後には、既に外周側最大電位差VO5に達しているので、外周側電位差ΔVseg2をさらに変化させる必要はない。よって、外周側電位差ΔVseg2を変化させる時には、内周側電位差ΔVseg1による支配的な静電引力F2の悪影響は生じない。
【0061】
電位差制御部110が内周側電位差ΔVseg1を内周側最大電位差VI4に設定したとき、第1,第2反射膜40,50間の第1ギャップG1は最小ギャップg8に設定される。外周側最大電位差VO5及び内周側最大電位差VI4の各々は、電位差制御部110に供給される最大電圧Vmaxを超えない範囲で実質的に等しくすることができる。本実施形態では、図5に示す電源120から例えば最大電圧Vmax=30Vが電位差制御部110に供給される。このとき、外周側最大電位差VO5は、最大電圧Vmax(30V)を越えない29.8Vに設定され、内周側最大電位差VI4もまた、最大電圧Vmax(30V)を越えない29.3Vに設定されている。
【0062】
図7では、外周側最大電位差VO5及び内周側最大電位差VI4との間には0.5Vの微小な相違があるが、実質的に同一と言える。この微小な相違は、内周側電位差ΔVseg1及び外周側電位差ΔVseg2の各々について最大電圧Vmax(30V)を越えない範囲のフルスケール(図8及び図9参照)で、等間隔の透過ピーク波長を得るように設計された結果である。外周側最大電位差VO5及び内周側最大電位差VI4を厳密に一致させるには、第1,第2固定電極62,64の面積比などを調整することで可能ではあるが、厳密に一致させる必要性は乏しい。なお、本実施形態の駆動法では、外周側最大電位差VO5及び内周側最大電位差VI4を実質的に等しくすることで、図3(B)にて説明したように、外側の第2可変電極74のほぼ全周に均等な静電引力を生じさせることができるという利点がある。
【0063】
2.光フィルターの変形例
前述の光フィルターでは、第1固定電極、第2固定電極とそれに対向する第1可変電極、第2可変電極にて静電アクチュエーターを構成したが、第2固定電極および第2可変電極の外周側にそれぞれに対向する第3固定電極および第3可変電極を設けて実施することも可能である。
この場合、第3可変電極は反射膜を中心とした中心対称であり、第3可変電極のスリット部の数は第2可変電極のスリット部の数と同じ、または第2可変電極のスリット部の数より多く形成する。
【0064】
このようにすることにより、電圧非印加時には、第2基板に発生する電極の膜応力は反射膜を中心とした中心対称となり、反射膜の撓み防止や、高い平行度を得ることが可能となる。また電圧印加時では、引き出し配線では静電力は発生しなく、反射膜を中心に中心対称の場所にのみ静電力が発生するため、反射膜の撓み防止や、高い平行度を得ることが可能となる。
また、さらに第3固定電極および第3可変電極の外周側に第4固定電極および第4可変電極を設けても同様である。
【0065】
3.分析機器
図10は、本発明に係る一実施形態の分析機器の一例である測色器の概略構成を示すブロック図である。
【0066】
図10において、測色器200は、光源装置202と、分光測定装置203と、測色制御装置204と、を備えている。この測色器200は、光源装置202から検査対象Aに向かって例えば白色光を射出し、検査対象Aで反射された光である検査対象光を分光測定装置203に入射させる。そして、分光測定装置203にて検査対象光を分光し、分光した各波長の光の光量を測定する分光特性測定を実施する。言い換えると、検査対象Aで反射された光である検査対象光を光フィルター(エタロン)10に入射させ、光フィルター10から透過した透過光の光量を測定する分光特性測定を実施する。そして、測色制御装置204は、得られた分光特性に基づいて、検査対象Aの測色処理、すなわち、どの波長の色がどの程度含まれているかを分析する。
【0067】
光源装置202は、光源210、複数のレンズ212(図10には1つのみ記載)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ212には、コリメーターレンズが含まれており、光源装置202は、光源210から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。
【0068】
分光測定装置203は、図10に示すように、光フィルター10と、受光素子を含む受光部220と、駆動回路230と、制御回路部240と、を備えている。また、分光測定装置203は、光フィルター10に対向する位置に、検査対象Aで反射された反射光(測定対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。
【0069】
受光部220は、複数の光電交換素子(受光素子)により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、受光部220は、制御回路部240に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御回路部240に出力する。なお、光フィルター10と受光部(受光素子)220とでユニット化して、光フィルターモジュールを構成することができる。
【0070】
駆動回路230は、光フィルター10の下部電極60、上部電極70、および制御回路部240に接続される。この駆動回路230は、制御回路部240から入力される駆動制御信号に基づいて、下部電極60および上部電極70間に駆動電圧を印加し、第2基板30を所定の変位位置まで移動させる。駆動電圧としては、下部電極60と上部電極70との間に所望の電位差が生じるように印加されればよく、例えば、下部電極60に所定の電圧を印加し、上部電極70をアース電位としてもよい。駆動電圧としては、直流電圧を用いるのが好ましい。
【0071】
制御回路部240は、分光測定装置203の全体動作を制御する。この制御回路部240は、図10に示すように、例えばCPU250、記憶部260などにより構成されている。そして、CPU250は、記憶部260に記憶された各種プログラム、各種データに基づいて、分光測定処理を実施する。記憶部260は、例えばメモリーやハードディスクなどの記録媒体を備えて構成され、各種プログラム、各種データなどを適宜読み出し可能に記憶する。
【0072】
ここで、記憶部260には、プログラムとして、電圧調整部261、ギャップ測定部262、光量認識部263、および測定部264が記憶されている。なお、ギャップ測定部262は上述の通り省略しても良い。
【0073】
また、記憶部260には、第1ギャップG1の間隔を調整するために静電アクチュエーター80,90に印加する電圧値、およびその電圧値を印加する時間を関連付けた図6に示す電圧テーブルデータ265が記憶されている。
【0074】
測色制御装置204は、分光測定装置203および光源装置202に接続されており、光源装置202の制御、分光測定装置203により取得される分光特性に基づく測色処理を実施する。この測色制御装置204としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
【0075】
そして、測色制御装置204は、図10に示すように、光源制御部272、分光特性取得部270、および測色処理部271などを備えて構成されている。
【0076】
光源制御部272は、光源装置202に接続されている。そして、光源制御部272は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置202に所定の制御信号を出力し、光源装置202から所定の明るさの白色光を射出させる。
【0077】
分光特性取得部270は、分光測定装置203に接続され、分光測定装置203から入力される分光特性を取得する。
【0078】
測色処理部271は、分光特性に基づいて、検査対象Aの色度を測定する測色処理を実施する。例えば、測色処理部271は、分光測定装置203から得られた分光特性をグラフ化し、図示しないプリンターやディスプレイなどの出力装置に出力するなどの処理を実施する。
【0079】
図11は、分光測定装置203の分光測定動作を示すフローチャートである。まず、制御回路部240のCPU250は、電圧調整部261、光量認識部263、および測定部264を起動させる。また、CPU250は、初期状態として、測定回変数nを初期化(n=0に設定)する(ステップS1)。なお、測定回変数nは、0以上の整数の値をとる。
【0080】
この後、測定部264は、初期状態、すなわち、静電アクチュエーター80,90に電圧が印加されていない状態で、光フィルター10を透過した光の光量を測定する(ステップS2)。なお、この初期状態における第1ギャップG1の大きさは、例えば分光測定装置の製造時において予め測定し、記憶部260に記憶しておいてもよい。そして、ここで得られた初期状態の透過光の光量、および第1ギャップG1の大きさを測色制御装置204に出力する。
【0081】
次に、電圧調整部261は、記憶部260に記憶されている電圧テーブルデータ265を読み込む(ステップS3)。また、電圧調整部261は、測定回変数nに「1」を加算する(ステップS4)。
【0082】
この後、電圧調整部261は、電圧テーブルデータ265から、測定回変数nに対応する第1,第2固定電極62,64の電圧データ及び電圧印加期間データを取得する(ステップS5)。そして、電圧調整部261は、駆動回路230に駆動制御信号を出力し、電圧テーブルデータ265のデータに従って静電アクチュエーター80,90を駆動する処理を実施する(ステップS6)。
【0083】
また、測定部264は、印加時間経過タイミングで、分光測定処理を実施する(ステップS7)。すなわち、測定部264は、光量認識部263により透過光の光量を測定させる。また、測定部264は、測定された透過光の光量と、透過光の波長とを関連付けた分光測定結果を測色制御装置204に出力する制御をする。なお、光量の測定は、複数回または全ての回数の光量のデータを記憶部260に記憶させておき、複数回毎の光量のデータまたは全ての光量のデータの取得後に、まとめて、それぞれの光量を測定してもよい。
【0084】
この後、CPU250は、測定回変数nが最大値Nに達したか否かを判断し(ステップS8)、測定回変数nがNであると判断すると、一連の分光測定動作を終了する。一方、ステップS8において、測定回変数nがN未満である場合、ステップS4に戻り、測定回変数nに「1」を加算する処理を実施し、ステップS5〜ステップS8の処理を繰り返す。
【0085】
4.光機器
図12は、本発明に係る一実施形態の光機器の一例である波長多重通信システムの送信機の概略構成を示すブロック図である。波長多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)通信では、波長の異なる信号は干渉し合わないという特性を利用して、波長が異なる複数の光信号を一本の光ファイバー内で多重的に使用すれば、光ファイバー回線を増設せずにデータの伝送量を向上させることができるようになる。
【0086】
図12において、波長多重送信機300は、光源301からの光が入射される光フィルター10を有し、光フィルター10からは複数の波長λ0,λ1,λ2,…の光が透過される。波長毎に送信器311,312,313が設けられる。送信器311,312,313からの複数チャンネル分の光パルス信号は、波長多重装置321にて1つに合わせられて一本の光ファイバー伝送路331に送出される。
【0087】
本発明は光符号分割多重(OCDM: Optical Code Division Multiplexing)送信機にも同様に適用できる。OCDMは、符号化された光パルス信号のパターンマッチングによってチャンネルを識別するが、光パルス信号を構成する光パルスは、異なる波長の光成分を含んでいるからである。
【0088】
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【符号の説明】
【0089】
10…光フィルター、20…第1基板、20A1…第1対向面、20A2…第2対向面、30…第2基板、30A…対向面、40…第1反射膜、50…第2反射膜、60…下部電極、62…第1固定電極、62A…第1リング状電極、62B…第1引き出し配線、64…第2固定電極、64A…第2リング状電極、64B…第2引き出し配線、64C…下部電極のスリット部、70…上部電極、72…第1可変電極、72A…第1リング状可変電極、74…第2可変電極、74A…第2リング状可変電極、76A…第3引き出し配線、76B…第4引出し配線、78…上部電極のスリット部、80…第1ギャップ可変駆動部(静電アクチュエーター)、90…第2ギャップ可変駆動部(静電アクチュエーター)、101〜104…第1〜第4外部接続電極、110…電位差制御部、112…第1デジタル−アナログコンバーター(第1電極駆動部)、114…第2デジタル−アナログコンバーター(第2電極駆動部)、116…デジタル制御部、120…電源、200…分析機器(測色器)、300…光機器(波長多重送信機)、G1…第1ギャップ、G2…第2ギャップ、L…中心線、ΔVseg1…内周側電位差、ΔVseg2…外周側電位差、W1,W2…リング幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12