特許第5834430号(P5834430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834430
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/22 20060101AFI20151203BHJP
   H04N 13/04 20060101ALI20151203BHJP
   G03B 35/18 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   G02B27/22
   H04N13/04
   G03B35/18
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-55184(P2011-55184)
(22)【出願日】2011年3月14日
(65)【公開番号】特開2012-189932(P2012-189932A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2014年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉
(74)【代理人】
【識別番号】100107261
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 修
(72)【発明者】
【氏名】米野 邦夫
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−300623(JP,A)
【文献】 特開2010−224292(JP,A)
【文献】 特開2010−262229(JP,A)
【文献】 特開2011−133642(JP,A)
【文献】 特開2011−242729(JP,A)
【文献】 特開2012−118445(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/116639(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/111426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/22
H04N 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射光を射出する投射装置と、
前記投射装置からの投射光を略平行化した光に変換する平行化素子と、
前記平行化素子を介して前記投射装置から射出された投射光が入射され、前記投射光による像が生成される光反射性を有する被投射面と、
前記平行化素子と前記被投射面との間に設けられ、素子面の一方側に位置する像を前記素子面の他方側の空間における前記素子面に対する面対称位置に結像させる結像素子と、
を備え、
前記結像素子が、前記平行化素子から前記素子面に対して略垂直に入射した光を直進させるとともに、前記被投射面からの拡散光のうち、前記素子面に対して斜めに入射した光を前記素子面に対する面対称の位置に結像させ、前記被投射面上の像の実像を生成することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記結像素子が、光を透過させる複数の矩形状の透過部を有し、前記透過部の4つの壁面のうち、少なくとも互いに直交する2つの壁面が反射面とされた再帰性透過材からなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記結像素子の前記透過部の4つの壁面のうち、反射面とされている壁面の配置が前記結像素子の領域によって異なり、
前記結像素子は、前記被投射面に投射され、表示対象物を異なる方向から見た複数の画像の各々を、表示対象物を見た方向に対応した方位角方向に向けて反射させるように、前記反射面が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記被投射面が平面であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記結像素子の前記素子面に対して前記被投射面が傾いて配置されていることを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記被投射面の少なくとも一部に、前記結像素子の前記素子面に向けて突出する凸部、もしくは前記結像素子の前記素子面から見て窪んだ凹部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記凸部もしくは前記凹部が、前記結像素子の前記素子面に対して傾斜した複数の平面を有することを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記凸部もしくは前記凹部が、少なくとも方位角方向に湾曲していることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項9】
前記投射装置から、表示対象物を異なる方向から見た複数の画像が、前記被投射面の前記凸部もしくは前記凹部において方位角方向に並べて投射されることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれか一項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被投影物の像を結像させる結像素子を備え、この結像素子によって空中に実像として立体像を生成することができるディスプレイ装置が、下記の特許文献1、特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のディスプレイ装置に用いられる結像素子は、直交する2つの鏡面を有する2面コーナーリフレクターからなる単位光学素子を複数備えている。この結像素子は、素子面の一方側の空間に配置される被投影物の実像を、素子面の他方側の空間における当該素子面に対する面対称位置に鏡像として結像する作用を有している。そのため、素子面の一方側の空間に立体物を配置すれば、素子面の他方側の空間における当該素子面に対する面対称位置に立体像が生成される。
【0004】
特許文献2に記載のディスプレイ装置は、特許文献1と同様の2面コーナーリフレクターを有する結像素子が駆動手段によってディスプレイの上方で素子面と垂直方向に移動する構成となっている。このディスプレイ装置では、結像素子の上下動と同期させてディスプレイに表示する映像を変化させることにより、結像素子の上方空間に立体空中映像が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第07/116639号
【特許文献2】特開2009−229905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のディスプレイ装置において、静止した立体像を生成するためには、結像素子の下方に静止した立体物を置けば良い。しかしながら、電子的に生成した動的な立体物の像を得るためには、例えば発光ダイオード(LED)アレイを回転させるなど、電子的な動的立体物を作るための複雑な構造物が必要であった。
【0007】
また、特許文献2のディスプレイ装置においては、人間の眼で立体像を観察するためには、フリッカーが生じない程度の周波数(例えば50Hz程度以上)で結像素子を移動させなければならない。そのため、結像素子をむやみに大きくすることができず、結像素子の大きさに制約が生じ、ひいては立体空中映像の大きさに制約が生じる。また、結像素子を素子面と垂直方向に高速で移動させるためには大掛かりな駆動装置が必要であった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、簡易な構成で空間像を生成することができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の表示装置は、投射光を射出する投射装置と、前記投射装置からの投射光を略平行化した光に変換する平行化素子と、前記平行化素子を介して前記投射装置から射出された投射光が入射され、前記投射光による像が生成される光反射性を有する被投射面と、前記平行化素子と前記被投射面との間に設けられ、素子面の一方側に位置する像を前記素子面の他方側の空間における前記素子面に対する面対称位置に結像させる結像素子と、を備え、前記結像素子が、前記平行化素子から前記素子面に対して略垂直に入射した光を直進させるとともに、前記被投射面からの拡散光のうち、前記素子面に対して斜めに入射した光を前記素子面に対する面対称の位置に結像させ、前記被投射面上の像の実像を生成することを特徴とする。
【0010】
本発明の表示装置によれば、投射装置から射出された投射光は平行化素子により略平行化された状態で結像素子に入射する。結像素子は素子面に対して略垂直に入射した光を直進させる機能を有しているので、平行化素子を経た投射光は結像素子をそのまま透過した後、被投射面上に結像されて像が生成される。このとき、被投射面が光反射性を有しているので、投射光は被投射面で反射すると同時に散乱され、角度分布が広がった状態で結像素子に再度入射する。結像素子は素子面に対して斜めに入射した光を素子面に対する面対称の位置に結像させる機能を有しているので、結像素子を挟んで被投射面が配置された側と反対側の空間において被投射面上の像と面対称の位置に実像が生成される。このように、駆動手段等も必要なく、簡易な構成で空間に像を生成できる表示装置を実現することができる。
【0011】
本発明の表示装置においては、前記被投射面が平面であっても良い。
この構成によれば、被投射面として一般的なスクリーン等を用いることで平面的な像を空間に形成することができる。
【0012】
本発明の表示装置においては、前記被投射面が平面である場合に、前記結像素子の前記素子面に対して前記被投射面が傾いて配置されていることが望ましい。
結像素子の素子面に対して斜めに入射した光は素子面に対する面対称の位置に結像されるため、結像素子の素子面に対して被投射面が傾いて配置されていれば、被投射面が配置された側と反対側の空間において実像形成面も結像素子の素子面に対して面対称の方向に傾く。したがって、使用者が実像形成面の傾いた方向から実像の方向を斜めに覗き込むようにすれば、使用者に対して実像が略正対した状態となり、像が見やすくなる。
【0013】
本発明の表示装置においては、前記被投射面の少なくとも一部に、前記結像素子の前記素子面に向けて突出する凸部、もしくは前記結像素子の前記素子面から見て窪んだ凹部を有していても良い。
結像素子の素子面に対して斜めに入射した光は素子面に対する面対称の位置に結像されるため、被投射面が凸部を有していれば実像形成面も素子面に向けて突出する凸部を有し、被投射面が凹部を有していれば実像形成面も素子面から見て窪んだ凹部を有するものとなる。したがって、凸部もしくは凹部を有する実像形成面上に実像が形成されることになり、擬似的な立体画像を形成することができる。
【0014】
本発明の表示装置においては、前記凸部もしくは前記凹部が、前記結像素子の前記素子面に対して傾斜した複数の平面を有していても良い。
この構成によれば、例えば凸部もしくは凹部が有する平面の数に応じて複数の異なる画像を表示することができる。
【0015】
本発明の表示装置においては、前記凸部もしくは前記凹部が、少なくとも方位角方向に湾曲していても良い。
この構成によれば、例えば凸部もしくは凹部が有する曲面に応じて複数の異なる画像を表示することができる。
【0016】
本発明の表示装置においては、前記被投射面が前記凸部もしくは前記凹部を有する場合、前記投射装置から、表示対象物を異なる方向から見た複数の画像が、前記被投射面の前記凸部もしくは前記凹部において方位角方向に並べて投射される構成としても良い。
この構成によれば、被投射面が配置された側と反対側の空間に、複数の画像が方位角方向に並んで表示されるため、使用者は見る場所によって異なる画像を見ることができる。したがって、運動視差による擬似的な立体画像を得ることができる。
【0017】
本発明の表示装置においては、前記結像素子が、光を透過させる複数の矩形状の透過部を有し、前記透過部の4つの壁面のうち、少なくとも互いに直交する2つの壁面が反射面とされた再帰性透過材からなることが望ましい。
本発明の「再帰性透過材」は、透過部の4つの壁面のうち、少なくとも互いに直交する2つの壁面が反射面とされており、いわゆる2面コーナーリフレクターと呼ばれるものである。すなわち、素子面と垂直な方向から見たときには、一般の再帰性反射材と同様、反射面に入射した光は入射方向と同じ方向に反射する。一方、素子面と平行、かつ光入射面に垂直な方向から見たときには、通常の反射鏡と同様、反射面に入射した光は入射角と同じ反射角で反射する。この種の再帰性透過材を結像素子に用いることで、簡易な構成の表示装置を実現することができる。
【0018】
本発明の表示装置においては、前記投射装置から前記複数の画像が投射される場合、前記結像素子の前記透過部の4つの壁面のうち、反射面とされている壁面の配置が前記結像素子の領域によって異なり、前記結像素子は、前記被投射面に投射された前記複数の画像の各々を、表示対象物を見た方向に対応した方位角方向に向けて反射させるように、前記反射面が配置されていることが望ましい。
この構成によれば、使用者が所定の方位角方向から画像を見ようとしたときに、その方向から見える画像だけが見え、他の方向から見える画像が透けて見えることがない。これにより、運動視差による立体画像がより自然に見えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の表示装置を示す斜視図である。
図2】本実施形態の表示装置を示す側面図である。
図3】本実施形態の表示装置に用いるフレネルレンズを示す図であり、(A)平面図、(B)断面図である。
図4】本実施形態の表示装置に用いる再帰性透過材を示す図であり、(A)平面図、(B)拡大斜視図である。
図5】再帰性透過材の作用を説明するための図である。
図6】スクリーンと実像生成面との位置関係を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態の表示装置を示す斜視図である。
図8】本実施形態の表示装置に用いる再帰性透過材を示す平面図である。
図9】スクリーンと実像生成面との位置関係を示す図である。
図10】表示対象物の一例を示す図である。
図11】本実施形態の表示装置におけるスクリーン上の投射画像の一例を示す図である。
図12】本発明の第3実施形態の表示装置に用いる再帰性透過材を示す平面図である。
図13】スクリーンと実像生成面との位置関係を示す図である。
図14】本実施形態の表示装置におけるスクリーン上の投射画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1図6を用いて説明する。
本実施形態の表示装置は、空間に平面像を生成することができる表示装置の一例である。
図1は、本実施形態の表示装置を示す斜視図である。図2は、本実施形態の表示装置を示す側面図である。図3は、本実施形態の表示装置に用いるフレネルレンズを示す図であり、(A)平面図、(B)(A)のB−B’線に沿う断面図である。図4は、本実施形態の表示装置に用いる再帰性透過材を示す図であり、(A)は平面図、(B)は角部の拡大斜視図である。図5は、再帰性透過材の作用を説明するための図である。図6は、スクリーンと実像生成面との位置関係を示す図である。
なお、以下の全ての図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0021】
本実施形態の表示装置1は、図1図2に示すように、プロジェクター2(投射装置)と、フレネルレンズ3(平行化素子)と、再帰性透過材4(結像素子)と、スクリーン5(被投射面)と、を有している。プロジェクター2には、図示しないパーソナルコンピューターなどの映像信号生成手段が接続されており、プロジェクター2は映像信号生成手段から入力された映像信号に基づいてスクリーン5上に映像を投射する。プロジェクター2は投射レンズを下方に向けた姿勢で鉛直方向上方に設置され、スクリーン5は被投射面を上方に向けた姿勢で鉛直方向下方に設置されている。プロジェクター2とスクリーン5との間の投射光の光路上には、プロジェクター2側から順にフレネルレンズ3、再帰性透過材4が配置されている。
【0022】
フレネルレンズ3は、図3(A)、(B)に示すように、同心円状に配置された複数の微小プリズム6を有している。フレネルレンズ3は、図2に示すように、プロジェクター2から所定の拡散角を持って射出された投射光L0が入射された際に、その入射光を略平行化した光L1に変換して射出する機能を有する。本実施形態では、投射光L0を略平行化した光L1に変換するための平行化素子としてフレネルレンズ3を用いるが、フレネルレンズ3に代えて、凸レンズを用いても良い。
【0023】
再帰性透過材4は、図4(A)、(B)に示すように、矩形状の板材7に、光を透過させるための複数の四角柱状の開口部8が設けられたものである。素子面Sに垂直な方向から見た開口部8の平面形状は正方形である。なお、本明細書における「素子面」とは、再帰性透過材4を構成する板材7の主面(光を入射もしくは射出させる面)と定義する。板材7は2つの主面を有しているため、いずれか一方の面を素子面と定義すればよい。開口部8の4つの内壁面のうち、互いに直交する2つの内壁面には例えば金属反射膜が形成されており、これら2つの内壁面が反射面9となっている。これら2つの反射面9は、いわゆる2面コーナーリフレクターを構成している。
【0024】
本実施形態の再帰性透過材4においては、図4(A)に示すように、平面視して正方形状の開口部8の各辺が板材7の各辺と平行に形成されており、全ての開口部8において、4つの内壁面のうちの同じ側に位置する2つの内壁面が反射面9となっている。
【0025】
再帰性透過材4は、図2に示すように、素子面Sがプロジェクター2からの投射光L0の光軸Lに対して垂直になるように設置されている。一方、スクリーン5は、被投射面がプロジェクター2からの投射光L0の光軸Lに対して傾いて設置されている。したがって、再帰性透過材4とスクリーン5とは、再帰性透過材4の素子面Sとスクリーン5の被投射面とが鋭角をなすように、傾いて設置されている。
【0026】
スクリーン5としては、フロント型プロジェクターと組み合わせて用いられる一般の反射型スクリーンを採用することができる。明るい空間像を得るためには、反射率が高く、明るい画像を得られる反射型スクリーンを用いることが望ましい。本実施形態のスクリーン5は平面状のものである。
【0027】
ここで、図5(A)〜(C)を用いて、再帰性透過材4の作用を説明する。
図5(A)〜(C)では、再帰性透過材4の素子面SをX軸とY軸とで構成されるXY平面に一致させ、素子面Sと直交する軸をZ軸とした。また、光が射出される点を点P、光が再帰性透過材4の反射面9に入射する点を点T、光が結像する点を点Q、で表した。
【0028】
上述したように、再帰性透過材4の2つの反射面9は互いに直交しているため、一方の反射面9に入射した光は90度の角度で隣接した他方の反射面9で反射する。したがって、素子面Sと直交する方向(Z軸方向)から見たときには、図5(B)に示すように、一般の再帰性反射材と同様、反射面9に入射した光は入射方向と同じ方向に反射する。すなわち、点Pおよび点QをXY平面上に射影したとき、点Pの射影点と点Qの射影点とは一致する。一方、素子面Sと平行、かつ光入射面に直交する方向(点P、点T、点Qで作る三角形PTQの法線方向)から見たときには、図5(C)に示すように、通常の反射鏡と同様、反射面9に入射した光は入射角aと同じ反射角aで反射する。
【0029】
このようにして、図5(A)に示すように、点Pから射出された光は点Tを経て点Qに向かう。スクリーン5が鏡面反射あるいは略鏡面反射する反射面でない限り、点Pから射出された光はある程度の角度範囲内に発散し、再帰性透過材4の点T以外の箇所にも入射する。ところが、点T以外の箇所に入射した光も同様に反射するため、発散した全ての光が点Qに集束する。すなわち、素子面Sの一方側に位置する像は、素子面Sの他方側の空間における素子面Sに対する面対称位置に結像する。よって、点Pの周辺に立体物が存在した場合、点Qの周辺に、再帰性透過材4の素子面Sに対して面対称な実像が立体像として生成される。
【0030】
また、再帰性透過材4は、素子面Sと垂直な方向に貫通する開口部8を有しているため、再帰性透過材4の素子面Sに対して垂直に入射した光は反射面9に入射することなく、そのまま直進する。
【0031】
上記構成の表示装置1において、プロジェクター2から射出された投射光L0はフレネルレンズ3により略平行化された状態で鉛直方向上方から再帰性透過材4に入射する。再帰性透過材4は素子面Sに対して略垂直に入射した光を直進させる機能を有しているので、フレネルレンズ3によって平行化された光L1は再帰性透過材4をそのまま透過した後、スクリーン5上に結像されて像が生成される。なお、再帰性透過材4の開口部8以外の領域では投射光が遮光されるため、スクリーン5上の像は開口率が小さくなる程、暗くなる。したがって、隣接する開口部8間の間隔を極力小さくして開口率を高くすれば、スクリーン5上の画像をある程度明るくすることができ、画質が大きく損なわれることはない。
【0032】
このとき、スクリーン5が反射型スクリーンであるため、投射光はスクリーン5で反射すると同時にそのスクリーン5の散乱特性に応じて散乱し、角度分布が広がった状態で再帰性透過材4に鉛直方向下方から再度入射する。上述したように、再帰性透過材4は素子面Sに対して斜めに入射した光を素子面Sに対する面対称の位置に結像させる機能を有している。そのため、再帰性透過材4を挟んでスクリーン5が配置された側と反対側の空間において被投射面上の像と面対称の位置に実像が生成される。
【0033】
すなわち、本実施形態の場合、図6に示すように、再帰性透過材4の素子面Sの下方にスクリーン5が傾いて設置されているため、再帰性透過材4の素子面Sの上方空間にスクリーン5の傾きと面対称の方向に傾いた実像形成面Jができ、実像形成面Jの位置にスクリーン5上の像を面対称にした実像が形成される。この場合、スクリーン5が平面であるため、生成される実像はスクリーン5上の像と傾きだけが異なり、同じ平面像となる。
【0034】
したがって、図2に示すように、観察者Kが実像形成面Jの傾いた方向から実像の方向を斜めに覗き込むようにすれば、観察者Kに対して実像が略正対した状態となり、実像が見やすくなる。生成された実像は再帰性透過材4による反射光が結像したものであるため、観察者Kからは再帰性透過材4を見ることができる観察範囲KR内において実像が空間に浮かんだように見える。
【0035】
図2に示した例では、観察範囲KRが実像形成面Jの一部だけであり、実像が実像形成面Jの全体に形成されたとしても、観察者Kは実像形成面Jの全体を観察することはできない。このとき、実像の全体を観察できるようにするためには、スクリーン5の大きさに対して再帰性透過材4の大きさをより大きくすればよい。もしくは、スクリーン5の全体に像を投射するのではなく、スクリーン5上での画像の投射範囲を狭め、スクリーン5の一部に像を投射すれば良い。さらに、表示対象物となる像の背景を黒色とし、像をスクリーン5の中央付近に配置すれば、観察者Kからは背景やスクリーンの形状が見えなくなり、像と周辺の物体との位置関係が把握しにくくなる。そのため、観察者Kにとって像がより空間に浮かび上がったような感覚を提示することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の表示装置1によれば、駆動手段等も必要なく、簡易な構成で空間に像を生成できる表示装置を実現することができる。
【0037】
具体的には、再帰性透過材4の下方にスクリーン5を設置し、そのスクリーン5に対してフレネルレンズ3を介してプロジェクター2から画像を投射するだけで空間像を生成できるので、下側に複雑な装置等を配置する必要がない。そのため、例えば再帰性透過材4を机に組み込んだ場合でも、机の下に邪魔な装置等が存在しないので、机を囲むように椅子を置いて観察者Kの脚が机の下に入るようにして着座することができる。よって、複数の観察者Kが近寄って実像を観察することが可能になる。また、プロジェクター2とフレネルレンズ3は天井に設置するなどの構成を採用できるため、表示装置1を使用しない場合には再帰性透過材4を組み込んだ机を簡単に移動することができる。このように、使い勝手の良い表示装置を提供することができる。
【0038】
なお、本実施形態では再帰性透過材が矩形の開口部を有する構成を例に挙げたが、開口部に代えて、光を透過する透過部として構成しても良い。すなわち、透明な材料からなる板材に、格子状あるいは格子の一部を除いたような形状に反射板が配置された構成としても良い。
【0039】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図7図11を用いて説明する。
本実施形態の表示装置は、空間に擬似的な立体像を生成することができる表示装置の一例である。
図7は、本実施形態の表示装置を示す斜視図である。図8は、本実施形態の表示装置に用いる再帰性透過材を示す平面図である。図9は、スクリーンと実像生成面との位置関係を示す図である。なお、図7において、第1実施形態の図1と共通する構成要素には同一の符号を付し、説明は省略する。
【0040】
本実施形態の表示装置11は、図7に示すように、プロジェクター2、フレネルレンズ3、再帰性透過材12、スクリーン13が鉛直方向上方からこの順に配置されている。この基本構成は第1実施形態と同様である。ただし、スクリーン13と再帰性透過材12の構成が第1実施形態と異なっている。以下、この点について説明する。
【0041】
第1実施形態のスクリーン5の形状が平面状であったのに対し、本実施形態のスクリーン13は、図7に示すように、鉛直方向下方に向けて突出する四角錐状の形状を有している。言い換えると、本実施形態のスクリーン13は、再帰性透過材12の素子面Sから見て四角錐状に窪んだ凹部で構成されており、再帰性透過材12の素子面Sに対して傾いた4つの被投射面を有している。
【0042】
本実施形態の場合、図9に示すように、再帰性透過材12の素子面Sの下方に、下方に向けて四角錐状に窪んだスクリーン13が設置されている。この形状が反映されて、再帰性透過材4の素子面Sの上方に、スクリーン形状と面対称に、上方に向けて四角錐状に突出した実像形成面Jができ、実像形成面Jの4つの面にスクリーン13上の像を面対称にした実像が形成される。
【0043】
図11にスクリーン13上の投射画像の一例を示す。スクリーン13の4つの被投射面にそれぞれ投射された4つの画像G1〜G4は、例えば図10に示す花瓶のような表示対象物Tを、水平面内で異なる4つの方位角方向、例えば正面方向を基準として方位角0度、90度、180度、270度の各方向V1〜V4から撮影した4枚の画像に対応している。このようなスクリーン13上の4つの画像G1〜G4が、再帰性透過材12の上方空間において素子面Sに対して面対称に4つの実像として結像される。その結果、スクリーン13を真上から見たときのスクリーン13上に投射された画像が図11である場合に、実像形成面Jを真上から見たときの実像(空間像)も同様に図11となる。よって、観察者Kが実像を真上ではなく周囲から見ると、見る角度によって上記の4つの画像G1〜G4のうちのいずれかの画像が見える。
【0044】
本実施形態の場合、再帰性透過材12は、図8に示す構成とすることが望ましい。
第1実施形態の再帰性透過材4では、図4(A)に示すように、開口部8の各辺が板材7の各辺と平行に形成され、全ての開口部8において2つの反射面9が同じ方向を向いていた。これに対して、本実施形態の再帰性透過材12は、図8に示すように、開口部8の各辺が板材7の各辺に対して45度の角度をなすように形成されている。そして、再帰性透過材12の対角線によって4分割された領域毎に、開口部8の4つの内壁面のうち、再帰性透過材12の中央側に位置する2つの内壁面が反射面9となっている。言い換えると、再帰性透過材12の対角線によって4分割された領域毎に、2つの反射面9は再帰性透過材12の各辺側(外側)を向いている。
【0045】
再帰性透過材12を上記の構成とした場合、スクリーン13の4つの被投射面に投射された各画像G1〜G4からの光は、再帰性透過材12によってその画像が位置する側にのみ反射する。すなわち、再帰性透過材12によって、図11に示す画像G1からの光は図11の下側のみ、画像G2からの光は図11の右側のみ、画像G3からの光は図11の上側のみ、画像G4からの光は図11の左側のみに反射する。この作用により、観察者Kが位置している方向の実像だけが観察される。一方、観察者Kが位置している方向以外の画像からの光は観察者Kが位置している方向には反射されない。そのため、観察者Kには正面側の実像だけが見え、裏側の実像が透けて見えるようなことはない。
【0046】
本実施形態においても、簡易な構成で空間に像を生成可能な表示装置を実現できる、といった第1実施形態の同様の効果を得ることができる。
特に本実施形態の場合、スクリーン13を立体形状としたことで実像形成面Jも立体形状となり、そこに形成される空間像の立体感を得ることができる。さらに、本実施形態の表示装置11では、異なる4つの空間像を形成できるため、観察者Kが表示装置1の周囲を移動しながら空間像を見たとき、90度ずつ異なる視点から見た空間像を観察できる。よって、運動視差を加味した擬似的な立体画像を得ることができる。
【0047】
なお、本実施形態ではスクリーン13の形状が四角錐状の例を挙げたが、三角錐も含め、四角錐以外の多角錐であっても良い。また、平面状のスクリーンを1回折り曲げた形の2つの被投射面を有するスクリーンを用いても良い。これらの構成において、再帰性透過材の開口部のいずれの内壁面を反射面とするかはスクリーンの形状に対応させて適宜決定すれば良い。
【0048】
なお、本実施形態では再帰性透過材が矩形の開口部を有する構成を例に挙げたが、開口部に代えて、光を透過する透過部として構成しても良い。すなわち、透明な材料からなる板材に、格子状あるいは格子の一部を除いたような形状に反射板が配置された構成としても良い。
【0049】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図12図14を用いて説明する。
本実施形態の表示装置は、第2実施形態と同様、空間に擬似的な立体像を生成することができる表示装置である。ただし、再帰性透過材の構成およびスクリーンの形状とそれに投射する画像が第2実施形態と異なっている。
【0050】
本実施形態の場合、図13に示すように、再帰性透過材15の素子面Sの下方に、下方に向けて円錐状に窪んだスクリーン16が設置されている。すなわち、素子面Sに垂直な方向から見て、スクリーン16の平面形状が円形(湾曲した形状)である。この形状が反映されて、再帰性透過材15の素子面Sの上方に、スクリーン形状と面対称に、上方に向けて円錐状に突出した実像形成面Jができ、円錐状の実像形成面Jにスクリーン16上の像を面対称にした実像が形成される。
【0051】
図14にスクリーン16上の投射画像の一例を示す。スクリーン16上に投射された8つの画像G1〜G8は、第2実施形態と同様の表示対象物Tを、水平面内で異なる8つの方位角方向、例えば正面方向を基準として方位角0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度の45度間隔の各方向から撮影した8枚の画像に対応している。このようなスクリーン16上の8つの画像G1〜G8が、再帰性透過材15の上方空間において素子面Sに対して面対称に8つの実像として結像される。その結果、スクリーン16を真上から見たときのスクリーン16上に投射された画像G1〜G8が図14である場合に、実像形成面Jを真上から見たときの実像(空間像)も同様に図14となる。よって、観察者Kが実像を周囲から見ると、見る角度によって上記の8つの画像G1〜G8のうちのいずれかの画像が見える。
【0052】
本実施形態の場合、再帰性透過材15は、図12に示す構成とすることが望ましい。本実施形態の再帰性透過材15は、図12に示すように、円形の板材17に、矩形状の複数の開口部8が同心円状に形成されている。開口部8は、対角線が板材17の径方向となるように配置されている。そして、各開口部8の4つの内壁面のうち、再帰性透過材15の中心側に位置する2つの内壁面が反射面9となっている。言い換えると、全ての開口部8において、2つの反射面9は再帰性透過材15の円周側(外側)を向いている。
【0053】
このような再帰性透過材15を使用することで、本実施形態においても、第2実施形態と同様、スクリーン16に投射された各画像G1〜G8からの光は、再帰性透過材15によってその画像が位置する側にのみ反射する。この作用により、観察者Kが位置している方向の実像だけが観察される。一方、観察者Kが位置している方向以外の画像からの光は観察者Kが位置している方向には反射されない。そのため、観察者Kには正面の実像だけが見え、裏側の実像が透けて見えるようなことはない。
【0054】
観察範囲はスクリーン16の反射特性によって設定が可能である。例えば観察範囲を狭くしたい場合にはスクリーン16からの反射光の角度分布を狭くし、観察範囲を広くしたい場合にはスクリーン16からの反射光の角度分布を広くすれば良い。観察範囲は表示するコンテンツによって適宜設定すれば良い。
【0055】
本実施形態においても、簡易な構成で空間に像を生成可能な表示装置を実現できる、といった第1、第2実施形態の同様の効果を得ることができる。また、実像形成面を立体形状としたことで空間像の立体感が得られるという効果は第2実施形態と同様である。
【0056】
なお、本実施形態では、スクリーン16に投射する画像の例として、図14に示したように、表示対象物Tを45度間隔で8分割した離散的な画像G1〜G8の例を示したが、この画像に代えて連続的な画像とすれば、観察者の見る位置に対してより連続的な空間像を表示することができる。さらに、スクリーン16の反射特性をより狭くして左右の眼で異なる空間像が見える設定とすることで、両眼視差による立体画像の表示が可能になる。このように、見る位置に応じた空間像を観察できるため、自然な立体画像を得ることができる。
【0057】
また、スクリーン16に投射する複数の画像については、例えば表示対象物Tを回転させながら撮影する、観察点を等距離、等間隔の角度で移動させながら撮影する等の手法で連続的な画像を取得し、これを画像変換することにより生成することが可能である。また、スクリーン16の形状に対応したミラーを撮影レンズの光軸の同軸上に配置し、光軸を垂直方向に設置して撮影することで得ることも可能である。
【0058】
本実施形態では、スクリーン16の形状を円錐状とした例を挙げたが、楕円錐状、もしくはその他の錐形状であっても良い。また、スクリーンの被投射面に垂直な平面で切断したときの断面形状が曲線であっても良い。すなわち、スクリーンが例えば半球状等の形状であっても良い。これらの構成における再帰性透過材の開口部の配置、反射面の配置はスクリーンの形状に対応させて適宜決定すれば良い。
【0059】
また、第2、第3実施形態を通じて、スクリーンが下方に突出した形状である例を挙げたが、スクリーンが再帰性透過材に向けて上方に突出した形状としても良い。その場合には、実像形成面が再帰性透過材に向けて下方に突出した形状となる。また、スクリーンの全体を凸状もしくは凹状に形成することに代えて、スクリーンの一部のみに凸部もしくは凹部を形成しても良い。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態では、結像素子の一例として、矩形状の複数の開口部を有する再帰性透過材を挙げたが、この種の再帰性透過材に限ることなく、図5(A)〜(C)に示した光学特性を有するものであれば、他の結像素子を用いても良い。例えば再帰性透過材を、アフォーカルレンズ系を組み込んだものや、他の微小光学系を組み込んだもので構成しても良い。また、スクリーンを伸縮可能な素材で構成し、頂点部分を垂直方向に移動可能な構成とすることで空間像も高さ方向に伸縮する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0061】
1,11…表示装置、2…プロジェクター(投射装置)、3…フレネルレンズ(平行化素子)、4,12,15…再帰性透過材(結像素子)、5,13,16…スクリーン(被投射面)、8…開口部、9…反射面、S…素子面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14