特許第5834466号(P5834466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834466
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】表示体及び情報印刷物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20151203BHJP
   B42D 25/328 20140101ALI20151203BHJP
   B42D 25/30 20140101ALI20151203BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20151203BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   G02B5/18
   B42D15/10 328
   B42D15/10 300
   G02B5/32
   B41M3/14
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-97290(P2011-97290)
(22)【出願日】2011年4月25日
(65)【公開番号】特開2012-230183(P2012-230183A)
(43)【公開日】2012年11月22日
【審査請求日】2014年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井 一成
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−026459(JP,A)
【文献】 特表2007−506989(JP,A)
【文献】 特開2010−019976(JP,A)
【文献】 特開2008−107472(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/050641(WO,A1)
【文献】 特開2000−352609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
B41M 3/14
B42D 25/30
B42D 25/328
G02B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に設けられた凹凸構造形成層と、前記凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する反射層とを備え、
前記凹凸構造形成層が複数の画素に分割され、
これら複数の画素のうち、少なくとも一部の画素(第1画素)と他の画素(第2画素)にはそれぞれ第1凹凸構造と第2凹凸構造が形成され、
前記第1、2凹凸構造は、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部、又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部と前記基材面と略平行な平坦部が配置され、
前記第2凹凸構造の1つの凹凸構造の平面図の形は、前記第1凹凸構造の1つの凹凸構造の平面図の形を一方向のみに縮小又は拡大したときに同一となり、前記第1、2凹凸構造において、その凹凸構造の配列方向は互いに平行であるが、ピッチは周期性がなくランダムであり、凹凸構造の異なる第1画素と第2画素の配列によって可視画像を構成することを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記第1、2凹凸構造の平面図の形が四角形であることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記四角形の一辺と垂直な一方向のみに縮小又は拡大した場合に前記第1、2凹凸構造が同一になることを特徴とする請求項2に記載の表示体。
【請求項4】
前記第1、2凹凸構造の平面図の長辺及び短辺の長さがそれぞれ1μm以上且つ50μm未満であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項5】
前記画素の一辺の長さが145μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
前記第1、2凹凸構造の複数の凸部又は凹部の高さ又は深さが一定であり、0.1μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
前記面の一部又は逆側の一部に印刷層が設けられており、前記印刷層は前記凹凸構造により観察される表示色と略同一の色として知覚される色を表示するインキ又はトナーにより成形されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の表示体。
【請求項8】
印刷物基材を備え、前記印刷物基材の表面の少なくとも一部の領域に請求項1〜7に記載の表示体が設けられることを特徴とする情報印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止などで用いられる観察条件によって見え方が変化する表示体に係り、特に照明光の角度、観察方向などによって像の明るさや意図が変化するような、表示体及び情報印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商品券や小切手等の有価証券類やクレジットカードやキャッシュカード、IDカード等のカード類、パスポートや免許証等の証明書類の偽造防止を目的として、通常の印刷物とは異なる視覚効果をもつ表示体を転写箔やステッカー等の形態にして、前記証券類やカードなどの証明書類の表面に貼付、圧着するなどして設けることが行われている。また、有価証券類や証明書類以外の物品においても偽造品の流通が社会問題化しており、そのような物品についても同様の偽造防止技術を適用する機会が多くなってきている。
【0003】
偽造防止技術としては、マイクロ文字、特殊発光インキ、すかし、回折格子、ホログラムなどがある。この偽造防止技術は、大きく二つに分けることができる。一つは、簡易な機器や測定装置などを使用して真偽を判別する偽造対策である。もう一つは、肉眼で容易に真偽判定が可能な偽造対策である。
【0004】
最近では、電子線描画装置(EB装置)で様々な微細構造を作製し目視で類似技術と差別化できるセキュリティデバイスの開発が行われている。もっとも一般的なセキュリティデバイスとして、表面レリーフタイプのレインボウホログラムがある(例えば特許文献1参照)。
【0005】
レインボウホログラムは、普通の印刷物に比べて構造が複雑で、高い微細加工技術を持つ特定の業者でないと作製が困難であり、複製を行うときに大規模な複製装置を必要とするので、小規模な複製が行いにくいという特徴がある(例えば、非特許文献1参照)。このため、偽造品の作製が困難である。
【0006】
また、照明光を当てた時に、単波長に近い光で再生されるため虹の七色に対応した明るく鮮やかな色で観察でき、観察条件が変化したときに色や画像パターンが変化するという特徴的な見え方をする。このため、他の部材との違いが目視で容易に判別できる。
【0007】
これらのことから、レインボウホログラムは、目視によるセキュリティ用途として優れており、偽造防止用の画像表示体として広く用いられてきている。
【0008】
しかし、レインボウホログラムは、観察条件の変化が僅かであっても再生像の色が大きく変化するので、画像の色の違いを識別するのが難しい。このため、異なる画像が記録されているレインボウホログラムであっても、観察者に類似した印象を与えやすく、ホログラム同士では記録されている画像の違いが判別し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願平2−72320号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「ホログラフィの原理」、オプトロニクス社、P.ハリハラン 著
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、レインボウホログラムの偽造防止用の画像表示体は、画像の色変化が大きいため、記録されている画像の違いが判別し難くいという欠点があった。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ホログラムと同様に観察条件によって色やパターンが変化するが、レインボウホログラムよりも色変化がゆるやかであり、通常の観察条件では、ほぼ同じ色に見え、且つ、レインボウホログラムと比べて画像の違いを判別し易いと共に、回折光量を制御することにより輝度変化を有する表示体及び情報印刷物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の表示体は、基材の一方の面に設けられた凹凸構造形成層と、前記凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する反射層とを備え、前記凹凸構造形成層が複数の画素に分割され、これら複数の画素のうち、少なくとも一部の画素(第1画素)と他の画素(第2画素)にはそれぞれ第1凹凸構造と第2凹凸構造が形成され、前記第1、2凹凸構造は、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部、又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部と前記基材面と略平行な平坦部が配置され、前記第2凹凸構造の1つの凹凸構造の平面図の形は、前記第1凹凸構造の1つの凹凸構造の平面図の形を一方向のみに縮小又は拡大したときに同一となり、第1、2凹凸構造はともに周期性がなくランダムに配置され、凹凸構造の異なる第1画素と第2画素の配列によって可視画像を構成することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の表示体は、前記第1、2凹凸構造の平面図の形が四角形であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の表示体は、前記四角形の一辺と垂直な一方向のみに縮小又は拡大した場合に前記第1、2凹凸構造が同一になることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の表示体は、第1、2凹凸構造の平面図の長辺及び短辺の長さがそれぞれ1μm以上且つ50μm未満であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の表示体は、前記画素の一辺の長さが145μm以下であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の表示体は、前記第1、2凹凸構造の複数の凸部又は凹部の高さ又は深さが一定であり、0.1μm以上0.5μm以下であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の表示体は、前記面の一部又は逆側の一部に印刷層が設けられており、前記印刷層は前記凹凸構造により観察される表示色と略同一の色として知覚される色を表示するインキ又はトナーにより成形されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の情報印刷物は、印刷物基材を備え、前記印刷物基材の表面の少なくとも一部の領域に設けられた本発明の表示体が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の表示体によれば、この表示体から通常の照明条件下で観察される回折光は、構造がランダムに配置されているため広い範囲の波長分布になる。よって、レインボウホログラムと比較して、おだやかな色で着色された画像が観察することが可能な表示体を提供することができる。また、第1凹凸構造と第2凹凸構造では、回折光量が射出方向毎で異なるため通常の照明条件下で観察される輝度が違い、グラデーションを表現することが可能である。また、観察方向を変えると第1、2の輝度が上記観察位置とは、逆転して観察されるので、観察位置を変えることにより表示画像を変化させることが可能である。
【0022】
本発明の表示体によれば、第1、2凹凸構造の平面図の形は四角形である。四角形であるので回折光の射出する方向が限定される。よって、第1、2凹凸構造を観察したときの輝度変化を明確することが可能となる。
【0023】
本発明の表示体によれば、四角形の辺と垂直な一方向のみに縮小又は拡大するので第1、2凹凸構造の平面図は正方形又は長方形に限定される。よって、第1、2凹凸構造を観察したときの輝度変化を明確することが可能となる。
【0024】
本発明の表示体によれば、長辺の長さを50μm未満にすることで、第1、第2凹凸構造から射出される回折光を正反射光から分離することができる。また、短辺を1μm以上にすることでコントラストの高い表示画像を得ることができる。
【0025】
本発明の表示体によれば、画素の一辺の長さは145μm以下とすると良い。一辺の長さが145μm以下の画素を整然配列することで、表示体を肉眼で観察した際に、画素の形状が認識されるのを防ぐことができる。
【0026】
本発明の表示体によれば、凸部又は凹部の高さ又は深さは0.1μm以上0.5μm以下で最もコントラストの高い色を表現することができ、視認性の向上が可能である。
【0027】
本発明の表示体によれば、表示体に印刷層を設けている。印刷層はインキやトナーにより形成されており、インキやトナー固有の色を成し、通常の照明条件下及び通常の照明条件下以外の条件下によってその色が大きく変化することはない。一方第1、2凹凸構造は通常の照明条件下において固有の色を表示でき、照明条件が変化した際には色変化が起こる。機能が異なるこれら2つのそうが表示体内に形成されていることで通常の印刷層だけでは実現不可能な特有の視覚効果を付加することができる。
【0028】
本発明の情報印刷物によれば、本発明による表示体を印刷物基材である、例えば印刷物やカード、その他の物品に貼りあわせる、又は、組み合わせることによって、従来の物品に高い偽造防止効果を有する情報印刷物を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施の形態に係る表示体の概略構成を説明するために示した図である。
図2図1のI−Iを断面して示した図である。
図3図1のA領域を拡大して示した図である。
図4図1の表示体を通常の照明条件下で観察した状態を示した図である。
図5図4の観察位置を90度ずらして観察した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態に係る表示体及び情報印刷物について図面を参照して詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示体の概要構成を示すものであり、図2は、図1のI−I断面を示すものである。即ち、表示体10は、光透過層2(基材5と凹凸構造形成層6)と、印刷層4と、光反射層3との積層体を含んでいる。この例においては、光透過層2が凹凸構造形成層である。この図2に示す例では、印刷層4側を前面側(観察者側)とし、反射層側を背面側としている。
【0032】
なお、図2中では、光透過層2の上に印刷層4を示しているが、光透過層2と反射層3との間に成形していても良い。また、反射層3は、部分的に設けられていても良い。
【0033】
前記光透過層2の凹凸構造形成層6の凹凸構造領域11には、上面が前記基材5面と略平行である複数の凸部、又は底面が前記基材5面と略平行である複数の凹部が備えられている。また、光透過層2の基材5の領域9には、印刷層4によって文字や絵柄、記号などの表示画像が形成されており、凹構造のない領域17は、印刷層4や凹凸構造が存在しない領域である。
【0034】
前記印刷層4は、文字や絵柄、記号などの画像を表示するものであり、該印刷層4の印刷方式に応じて、オフセットインキ、活版インキ、グラビアインキなど様々なインキが用いられている。印刷用に用いられるインキは、樹脂タイプのインキ、油性インキ、水性インキなど組成による分類や、酸化重合型インキ、浸透乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキ、紫外線硬化型インキなど乾燥方式による分類ができ、基材5の種類や印刷方式に応じて適宜選択される。また、帯電性をもったプラスチック粒子に黒鉛、顔料などの色粒子を付着させたトナーを、静電気を利用してポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムや紙などの基材5に転写させ、加熱し定着させることで印刷層4を形成する技術も一般的である。
【0035】
図2では、一例として、光透過性の基材5と凹凸構造形成層6との積層体で構成された光透過層2を描いている。光透過性の基材5は、それ自体が単独で取り扱うことが可能なフィルム又はシートであり、例えば、PETやポリカーボネート(PC)などを用いることができる。凹凸構造形成層6の材料としては、熱可塑性樹脂、又は光硬化性樹脂などの光透過性を有する樹脂を使用することができる。また、凹凸構造形成層6は、光透過性の基材5の上に形成された層である。図2に示す光透過層2の凹構造は、例えば光透過性の基材5の上に熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布し、この塗膜にスタンパを押し当てながら樹脂を硬化させることにより得られる。
【0036】
光反射層3の材料としては、特に限定されないが、可視光に対し高い反射率を示すアルミニウムなどの金属材料を用いることが好ましい。また、金属膜層は、光学特性から20〜50nm程度が好ましい。光反射層3を積層する方法として、金属蒸着を用いることで形成することができる。
【0037】
この光反射層3を部分的に設ける方法としては、気相堆積法により該光反射層3を設けた後、薬品などにより特定の部分のみを溶解したり、光反射層3と光透過性樹脂層との密着力よりも強い接着力をもつ接着材料によって特定部分の光反射層3を剥離する方法などがある。また、気相堆積法を行う前に光透過性樹脂層の前面に障壁を設けて光反射層3が形成されるのを防いだりする方法も用いられる。
【0038】
次に、表示体10の凹構造と光学的性質について説明する。
【0039】
図3は、図1の領域A、B、C、D、Eを拡大して示すものであり、図中では、説明の便宜上、4画素として表現しているが、実際には、多くの画素から構成されている。前記凹凸構造領域11は、マトリックス状に配列された画素に5種類の異なる凹構造12〜16が領域A、B、C、D、E毎に成形されている。図中の黒塗り部は、凹部を示している。
【0040】
図3の凹構造12〜16は、凹構造12〜16の順番で長辺と短辺の長さ比が小さくなっており、1画素内で周期性がなくランダムに凹構造12〜16が配置されている。また、凹構造部が重畳する状態で成形されていても良い。凹構造12の辺の長さは短辺が2μmで長辺が49μmである。凹構造13の辺の長さは、短辺が2μmで長辺が40μmである。凹構造14の辺の長さは、短辺が2μmで長辺が20μmである。凹構造15の辺の長さは、短辺が2μmで長辺が5μmである。凹構造16の辺の長さすべて同じで2μmである。凹構造12〜16の深さは、一定で0.2μmである。印刷層4は、マゼンタのインキを用いている。
【0041】
このような周期性がなくランダムに配置されている凹構造12〜16では、主に辺の長さによって回折光の光強度分布が決定される。X軸方向の辺の長さがωx、Y軸方向の辺の長さがωyの凹構造12〜16から距離Lだけ離れた光強度分布I(x,y)は、凹構造12〜16に対して垂直入射した平面波を考えると、数1によって算出することができる。ここで、X軸とは、図1に示すように表示体10と平行な面内での横軸を示している。
【数1】
【0042】
ωxは凹構造12〜16のX軸方向の辺の長さ、ωyは凹構造12〜16のY軸方向の辺の長さ、λは波長、Lは凹構造12〜16から観察位置までの距離、X,Yは凹構造12〜16から距離Lだけ離れた観察位置に表示される0次回折光からのX軸方向、Y軸方向の距離とする。
【0043】
表示体10の凹構造12〜16の一辺の長さは、1μm以上50μm未満が好ましい。ここで、図4及び図5に示すように白色照明光源18が表示体10の垂直上方に備えられているとし、表示体10の表面に対して垂直に(入射角α=0°)方向から白色照明光が入射しているとする。また、可視光領域を400nm〜800nmとし、表示体10から500mm離れた位置を観察位置とした場合の光強度分布は式(1)より算出することができる。凹構造12〜16の一辺の長さが50μmで波長が400nmである場合には、0次回折光の幅が8mmである。よって、正反射光と回折光を分離できる大きさが一辺50μm未満である。凹構造12〜16の大きさが1μm以下になると回折光の射出幅が広くなるため輝度が低下し視認しにくい。
【0044】
上記では、一つの凹構造12〜16からの回折光について考えたが、実際には、凹構造12〜16がランダムに複数配置されている。よって、観察者19が観察する光は、ある程度の範囲の波長の光が合わさったものとなり、その結果、複数の波長の光による色が観察される。
【0045】
凹構造12〜16により表現される色は、凹構造12〜16の深さ、又は高さに応じて特定の波長の回折効率が低くなるため、結果として観察者19に届く光は、入射した白色照明光源18のうちの特定の波長成分が弱くなった光を知覚することになる。よって、凹構造12〜16の深さを異なる高さ、又は深さが異なる凹凸構造領域11を成形することで、それぞれの凹凸構造領域11を観察した際に異なる色を表示することが可能である。例として深さが0.3μmでイエロー、0.2μmでマゼンタの色が確認される。
【0046】
また、凹凸構造12〜16の凸部の高さ、又は凹部の深さは、0.1μm以上0.5μm以下が好ましい。凸部の高さ、又は凹部の深さが0.1μmより浅い場合は、製造時の外的要因(機械や環境のコンディションの変動や材料組成のわずかな変化等)により安定して同じ品質のものを作製するのが難しくなり、0.5μmより深い場合は、細かく深い構造を精密に転写成形するのが難しくなる。
【0047】
そして、前記画素の大きさは、145μm以内であることが好ましい。観察者19が自分の眼から500mm離してある位置の表示体10の状態を観察すると、一般的に、視力が1.0の人間の眼の分解能は1分であるため、眼の分解能の限界により、145μm以下の構造は分解できない。よって、画素の長辺の長さを145μm以下とすると画素同士を分解することはできない。ゆえに、画素の長辺の長さを145μm以下とすることによって、より高品位な画像を表示する表示体10を作製することが可能となる。
【0048】
次に、表示体10を通常の照明条件下でX軸方向の右側から観察した場合とY軸方向の下側から観察した場合について説明する。
【0049】
まず、表示体10を通常の照明条件下でX軸方向の右側から観察した場合について説明する。X軸方向の右側から観察すると図4に示すように、Tの上部分(領域A、B、C、D、E)が領域A、B、C、D、Eの順に輝度が高くなるためグラデーションのように知覚される。Tの下部分(領域E’)は、領域Eと同等の輝度で知覚される。色は、領域A、B、C、D、E、E’のすべて同じでマゼンタに視認される。
【0050】
次に、表示体10を通常の照明条件下でY軸方向の下側から観察した場合について説明する。Y軸方向の下側から観察すると、図5に示すようにTの上部分(領域A、B、C、D、E)が領域E、D、C、B、Aの順に輝度が高くなるためグラデーションのように知覚される。Tの下部分(領域E’)は、領域Eと同等の輝度で知覚される。つまり、X軸方向及びY軸方向から観察した場合には、領域A、B、C、D、Eの輝度の順番が逆転する効果を表現することが可能である。通常の照明条件下以外で領域A、B、C、D、E、E’を観察した場合には、散乱光や正反射光が視認され色を視認することはできない。
【0051】
また、印刷層4は、どの照明条件下でもマゼンタで認識されるため、凹構造12〜16と印刷層4を組み合わせることで表示体10を傾けて観察すると表示画像が変化するなどの表現が可能となる。
【0052】
表示体10の色は、凹構造12〜16の深さを領域A、B、C、D、Eごとに制御することによって、色のコントロールが可能である。色をコントロールすることによってオレンジ、ブルー、シアンなどの色の表現が可能でデザイン性を向上させることが可能である。
【0053】
照明光源18からの光が表示体10に入射し、表示体10の凹構造12〜16によって入射光が回折し、観察者19が目視によってその光を知覚できるような条件を「通常の照明条件下」と定義する。例えば、一般的な室内で蛍光灯などの照明光のもとで表示体10に照明光からの光が略垂直に入射し、観察者19が目視によって表示体10を観察する条件や、室外で太陽光などの照明光のもとで表示体10に照明光からの光が略垂直に表示体10の表面に入射し、観察者19が表示体10を観察するような条件が「通常の照明条件下」に相当する。ここで、「通常照明光」は、室内における蛍光灯や室外における太陽光などの照明光を示す。
【0054】
本発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより、種々の発明が抽出され得る。
【0055】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、この表示体から通常の照明条件下で観察される回折光は、構造がランダムに配置されているため広い範囲の波長分布になることで、レインボウホログラムと比較して、おだやかな色で着色された画像が観察することが可能となる。また、第1凹凸構造と第2凹凸構造では回折光量が射出方向毎で異なるため通常の照明条件下で観察される輝度が違い、グラデーションを表現することが可能となるうえ、観察方向を変えると第1、2の輝度が上記観察位置とは逆転して観察されるので、観察位置を変えることにより表示画像を変化させることが可能となることで、偽造防止を効果的に図ることができる。
【符号の説明】
【0057】
2…光透過層
3…光反射層
4…印刷層
5…基材
6…凹凸構造形成層
9…領域
10…表示体
11…凹凸構造領域
12…凹構造(領域A)
13…凹構造(領域B)
14…凹構造(領域C)
15…凹構造(領域D)
16…凹構造(領域E)
17…凹凸構造がない領域
18…照明光源
19…観察者
図1
図2
図3
図4
図5