特許第5834478号(P5834478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834478
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   B25J15/08 W
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-105007(P2011-105007)
(22)【出願日】2011年5月10日
(65)【公開番号】特開2012-236237(P2012-236237A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2014年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095728
【弁理士】
【氏名又は名称】上柳 雅誉
(74)【代理人】
【識別番号】100107261
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 修
(72)【発明者】
【氏名】後藤 純伸
(72)【発明者】
【氏名】村上 憲二郎
(72)【発明者】
【氏名】吉村 和人
【審査官】 佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−096484(JP,A)
【文献】 特開平05−318363(JP,A)
【文献】 特開2003−175481(JP,A)
【文献】 特開昭63−318280(JP,A)
【文献】 特開2000−254884(JP,A)
【文献】 特開2005−257343(JP,A)
【文献】 特開平04−146094(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の指と、
第2の指と、
前記第1の指および前記第2の指が設けられた基台と、
アームと、
前記基台と前記アームとの間に設けられた第1力検出器と、
前記第2の指に設けられた第2力検出器と、
を備え、
前記第1力検出器および前記第2力検出器によって力が検出されていない場合、前記第1の指および前記第2の指を対象物に向けて移動させ、
前記第2力検出器によって力が検出された場合、前記第1の指および前記第2の指を駆動する力を、前記対象物を把持可能な力に切り換え、
前記第1力検出器によって力が検出され、前記第2力検出器によって力が検出されていない場合、前記第1の指および前記第2の指の移動を止めることを特徴とするロボット。
【請求項2】
請求項に記載のロボットであって、
前記第1力検出器によって力が検出されなくなるように、前記アームによって前記基台を移動させることを特徴とするロボット。
【請求項3】
請求項に記載のロボットであって、
前記基台が移動された場合、前記第1の指および前記第2の指を対象物に向けて移動させることを特徴とするロボット。
【請求項4】
請求項1ないしの何れか一項に記載のロボットであって、
前記第2の指は、前記把持力よりも小さな力で変形することを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の指を用いて対象物を把持するロボットハンド、あるいはロボットに
関する。
【背景技術】
【0002】
製造現場の溶接や塗装の工程では、ロボットが広く活用されている。また、複数本の指
を用いて対象物を把持する能力を有するロボットハンドが開発されて、各種の部品の搬送
や組立などの工程でもロボットが活用されるようになっている。
【0003】
ここで、ロボットハンドは、把持しようとする対象物を損傷することがないように、適
切な力で対象物を把持することが必要となる。また、製造現場の生産性を高める観点から
は、できるだけ迅速に指を動かして対象物を把持可能なことが望まれる。
【0004】
そこで、こうした要請を同時に満足させることを目的として、次のような技術が提案さ
れている(特許文献1)。先ず、位置制御を行うことによって、ロボットハンドの指を対
象物の直前の目標位置まで近付ける。続いて、把持力が所定値を超えないようにしながら
の位置制御(外力拘束付き位置制御)を行うことにより、ロボットハンドの指を対象物に
接触させる。その後、力制御を行うことによって、適切な力で対象物を把持する技術が提
案されている。この提案の技術では、位置制御を行うことによってロボットハンドの指を
対象物に迅速に近付けた後、力制御を行うことによって適切な力で対象物を把持すること
ができる。また、外力拘束付き位置制御を行うことで、ロボットハンドの指が対象物に近
付いてから、対象物に接触し、その後、適切な力で対象物を把持した状態となるまでの一
連の変化をスムーズに移行させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−066685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に記載の技術では、対象物と接触する全ての指に接触セン
サーを設ける必要がある。また、ロボットハンドの指が対象物に接触する前の段階で、制
御方法を位置制御から外力拘束付き位置制御に切り換え、その後、更に力制御に切り換え
なければならない。このため、ロボットハンド(あるいはロボット)の構造や制御が複雑
になってしまうという問題がある。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題の少なくとも一部を解決するためになさ
れたものであり、構造や制御が簡単でありながら、迅速に且つ適切な力で対象物を把持す
ることが可能なロボットハンドあるいはロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明のロボットハンドは次の構成
を採用した。すなわち、
複数本の指と、前記複数本の指が設けられた基台とを備え、前記複数本の指を用いて対
象物を把持するロボットハンドであって、
前記基台が前記複数本の指から受ける反力が合成された合成反力を検出する合成反力検
出手段と、
前記複数本の指を前記対象物に向かって接近あるいは離間させる指駆動手段と
を備え、
前記複数本の指の中には前記対象物への接触を検知する接触検知指が含まれており、
前記指駆動手段は、
前記合成反力が検出されず、且つ、前記接触検知指での前記接触が検知されない条件
では、前記複数本の指を前記対象物に向けて移動させ、
前記接触検知指での前記接触が検知されると、前記複数本の指を駆動する力を、前記
対象物の把持力に相当する力に切り換え、
前記接触検知指での前記接触が検知されずに前記合成反力が検出された場合には、前
記複数本の指の駆動を中止し、前記合成反力が検出されなくなる方向に前記基台の位置を
変更して、前記複数本の指を前記対象物に向けて移動させる手段であることを特徴とする
【0009】
このような構成を有する本発明のロボットハンドにおいては、複数本の指の中には、対
象物に接触して接触を検知する接触検知指が設けられている。接触検知指は、通常の場合
は、接触検知指以外の指よりも先に対象物に接触する。また、複数本の指の何れかが対象
物に接触すると、その反力が基台に伝わって、合成反力として検出される。そして、合成
反力が検出されない条件では、複数本の指を対象物に向けて移動する。このとき、たとえ
ば対象物を基準に設定した目標位置に近づくように、指を駆動することができる。接触検
知指が対象物に接触したら、複数本の指を駆動する力を、対象物の把持力に相当する力に
切り換える。ここで、「対象物の把持力に相当する力」とは、その力で指を駆動したとき
に、把持力の大きさの力で指が対象物に押しつけられることとなる力をいう。また、接触
検知指が対象物に接触していないのに合成反力が検出された場合には、複数本の指の駆動
を中止して、合成反力が検出されなくなる方向に基台の位置を変更して、複数本の指を対
象物に向けて移動させる。
【0010】
こうすれば、接触検知指が対象物に接触するまでの間は、複数本の指を対象物に向けて
移動させればよいので、迅速に指を駆動することができる。また、接触検知指が対象物に
接触したら、複数本の指を駆動する力の大きさを切り換えることで、適切な把持力で対象
物を把持することができる。更に、複数本の指は、対象物に向かって接近あるいは離間さ
せればよいので、簡単な機構で指を駆動することが可能であり、ロボットハンドの構造を
単純なものとすることができる。また、接触検知指が対象物に接触したら指の駆動方法を
切り換えるだけなので、ロボットハンドの制御も単純にすることができる。加えて、ロボ
ットハンドの基台と対象物との相対的な位置関係がずれていたために、接触検知指以外の
指が接触検知指よりも早く対象物に接触した場合には、接触検知指は対象物に接触してい
ないのに合成反力が検出されるので、ロボットハンドの基台と対象物との位置がずれてい
ることを検出して、基台の位置を修正することもできる。その結果、構造や制御が簡単で
ありながら、対象物との位置ずれが生じた場合にも、これを修正して適切に把持すること
が可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のロボットハンドにおいては、次のような接触検知指としても良
い。すなわち、接触検知指が対象物に接触すると、対象物の把持力よりも小さな反力を対
象物から受けて変形するような接触検知指としても良い。
【0012】
こうすれば、接触検知指が、接触検知指以外の指よりも強く対象物に押しつけられて、
対象物に損傷を与えることを回避することが可能となる。
【0013】
また、上述した本発明のロボットハンドは、単純な構造および制御でありながら、迅速
に且つ適切な把持力で対象物を把持することができるので、ロボットに搭載するロボット
ハンドとして特に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施例のロボットハンドの大まかな構造を示した説明図である。
図2】本実施例のロボットハンドが対象物を把持する様子を示した説明図である。
図3】本実施例のロボットハンドが対象物を把持する様子を示すタイムチャートである。
図4】本実施例のロボットハンドがハンド位置を修正した後に対象物を把持する様子を示した説明図である。
図5】本実施例のロボットハンドがハンド位置を修正した後に対象物を把持する様子を示すタイムチャートである。
図6】本実施例のロボットハンドが対象物を把持する際に行う対象物把持処理のフローチャートである。
図7】他の態様の接触検知指を搭載した変形例のロボットハンドを例示した説明図である。
図8】変形例の他の態様のロボットハンドを例示した説明図である。
図9】本実施例のロボットハンドを搭載したロボットを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.本実施例のロボットハンドの構造:
B.対象物の把持動作:
C.変形例:
D.適用例:
【0016】
A.本実施例のロボットハンドの構造 :
図1は、本実施例のロボットハンド100の大まかな構造を示す説明図である。図1
a)に示されるように、本実施例のロボットハンド100は、四本の指10a,bが設け
られた基台12と、基台12に取り付けられたロードセル14と、ロードセル14を介し
て基台12を支えるアーム16などから構成されている。四本の指10a,bは、二本ず
つ向かい合わせに設けられており、この中の一本は、把持しようとする対象物と接触する
部分に接点スイッチ10sが組み込まれた接触検知指10bとなっている。尚、四本の指
10a,bの中で接点スイッチ10sが組み込まれていない指を、接触検知指10bに対
して通常指10aと呼ぶことがある。また、通常指10aと接触検知指10bとを区別し
ない場合は、これらをまとめて指10と呼ぶことがあるものとする。
【0017】
図1(b)には、図1(a)のロボットハンド100を上方から見た状態で、四本の指
10の駆動機構が示されている。図1(b)に示されるように、ロボットハンド100の
基台12には、二つの移動部材20が内蔵されており、四本の指10の中で同じ向きに設
けられた二本の指10は、同じ移動部材20から立設されている。また、それぞれの移動
部材20にはラックギア22が設けられており、これらのラックギア22には、基台12
の中央に内蔵されたピニオンギア24が嵌合している。このため、図示しない駆動モータ
ーによってピニオンギア24を回転させると、ラックピニオン機構によって、それぞれの
移動部材20が同じ距離だけ逆方向に移動し、その結果、四本の指10の向かい合う指1
0が、把持しようとする対象物に対して、同時に且つ同じ距離だけ近付いたり遠ざかった
りする。尚、本実施例では、ラックピニオン機構を構成するラックギア22およびピニオ
ンギア24や、ラックピニオン機構の動きを制御する図示しない制御回路が、本発明にお
ける「指駆動手段」に対応する。
【0018】
B.対象物の把持動作 :
図2は、本実施例のロボットハンド100が対象物Wを把持する動作を示した説明図で
ある。上述したように、本実施例のロボットハンド100は、四本の指10の中で向かい
合う指10同士が、同時に且つ同じ距離だけ近付いたり遠ざかったりするので、基台12
に対しては常に同じ位置(基台12の中心の真下)で対象物Wを把持することとなる。そ
こで、対象物Wを把持するに先立って、対象物Wが基台12の中心の真下に来るように、
ロボットハンド100の位置合わせを行う。図2(a)には、対象物Wに対してロボット
ハンド100を位置合わせした状態が示されている。
【0019】
この状態から、ピニオンギア24を回転させることによって、四本の指10を対象物W
に近付ける。指10を対象物Wに近付ける際には、できるだけ迅速に(短時間で)近付け
るために位置制御を行う。すなわち、把持しようとする対象物Wの大きさに応じて、指1
0を移動させる目標位置を設定し、その目標位置にできるだけ短時間で指10が到達する
ように、ピニオンギア24の駆動モーターが発生するトルクを制御する。尚、本実施例の
ロボットハンド100では、把持しようとする対象物Wの大きさが分かっていない場合に
は、向かい合う指10同士が一番接近する位置(把持可能な最小の対象物Wを把持する位
置)を目標位置として位置制御を行っても良い。この理由については後述する。
【0020】
四本の指10を対象物Wに近付けていくと、やがて、図2(b)に示したように接触検
知指10bが対象物Wに接触して接点スイッチ10sがONになり、接触検知指10bで
接触が検知される。そして、接触検知指10bで接触が検知された後は、指10を目標位
置に移動させる制御方法(位置制御)から、一定の力で指10を移動させる制御方法(力
制御)に切り換える。尚、この時に指10を移動させる力は、その力で指10が対象物W
に押しつけられても、対象物Wに損傷を与えることがなく、適切な力で対象物Wを把持す
ることができる大きさの力に設定されている。
【0021】
その結果、接触検知指10bが対象物Wに接触した後は、四本の指10がゆっくりと(
接触検知指10bが対象物Wに接触するまでよりは遅い速度で)対象物Wに近付いていく
。このとき、接触検知指10bに設けられた接点スイッチ10sは、対象物Wからの反力
を受けて、指10が対象物Wに近付いた分だけ引っ込んでいく。そして最終的には、図2
(c)に示したように四本の指10が対象物Wに接触して、適切な力で対象物Wを把持す
ることが可能となる。
【0022】
図3は、本実施例のロボットハンド100が対象物Wを把持する際の接点スイッチ10
sの状態と、ロードセル14の出力と、ピニオンギア24の駆動モーターが発生するトル
クが、時間の経過とともに変化する様子を示したタイムチャートである。上述したように
、把持動作を開始した直後は位置制御が行われるので、指10ができるだけ短時間で目標
位置に到達するように、ピニオンギア24の駆動モーターは最大定格トルクに近い大きな
トルクを発生する。その後、図2(b)に示したように接触検知指10bが対象物Wに接
触して、接点スイッチ10sがONになると、位置制御から力制御に切り換わる。この力
制御では、指10が適切な力で対象物Wを把持できるように定められた、所定トルクを発
生するように、駆動モーターが制御される。
【0023】
また、接触検知指10bが対象物Wに接触すると、接触検知指10bが受ける反力が基
台12に伝わって、その反力がロードセル14によって検出される。しかし、図2(c)
に示したように四本の指10が対象物Wに接触した状態になると、それぞれの指10から
基台12に伝わる反力が打ち消しあって、ロードセル14では反力が検出されなくなる。
従って、ロードセル14で検出されていた反力が検出されなくなった段階で、対象物Wの
把持が完了したものと判断することができる。また、対象物Wの把持が完了した後も、対
象物Wを保持し続ける必要があるので、ピニオンギア24の駆動モーターは一定のトルク
を発生し続ける。尚、ロードセル14で検出される反力は、四本の指10から基台12が
受ける反力を合成した反力であるから、ロードセル14が検出する反力が、本発明におけ
る「合成反力」に対応し、ロードセル14が本発明における「合成反力検出手段」に対応
する。
【0024】
このように本実施例のロボットハンド100は、位置制御によって迅速に指10を対象
物Wに接近させ、接触検知指10bが対象物Wに接触したら、指10が対象物Wを適切な
力で把持するように力制御に切り換える。このため、対象物Wを迅速に且つ適切な力で把
持することが可能となる。また、接触検知指10bが他の指10(すなわち、通常指10
a)よりも先に対象物Wへの接触を検知するようにしておき、接触が検知されたら位置制
御から力制御に切り換えるだけなので、ロボットハンド100の制御が複雑になってしま
うこともない。加えて、四本の指10の何れか一本の接触検知指10bに接点スイッチ1
0sを設けておけばよいので、ロボットハンド100の構造が複雑になってしまうことも
ない。
【0025】
更に、本実施例では、次のような点からもロボットハンド100の制御を簡単にするこ
とができる。すなわち、対象物Wを把持する前に接触検知指10bが対象物Wに接触して
、制御方法が力制御に切り換えられるので、四本の指10が対象物Wを把持する時点では
力制御に切り換わっている。従って、対象物Wの大きさが、把持可能な最も小さな大きさ
であるものと仮定して位置制御を行っても、対象物Wを損傷することなく把持することが
できる。このため、対象物Wの大きさが分からない場合でも、何ら制御が複雑になること
がない。
【0026】
尚、以上の説明では、対象物Wを把持するに先立って、対象物Wに対してロボットハン
ド100が適切な位置に来るように、ロボットハンド100あるいは対象物Wが位置決め
されているものとして説明した。しかし、何らかの理由で、ロボットハンド100と対象
物Wとの相対位置がずれてしまうことも起こり得る。本実施例のロボットハンド100は
、このような場合でも、以下のように適切に対象物Wを把持することが可能である。
【0027】
図4は、ロボットハンド100と対象物Wとの相対位置がずれている場合に、ロボット
ハンド100が対象物Wを把持する様子を示す説明図である。図4(a)に示すように、
対象物Wに対してロボットハンド100の相対位置がずれた状態で四本の指10を対象物
Wに近付けると、図4(b)に示したように、接触検知指10bより先に通常指10aが
対象物Wに接触する。その結果、通常指10aが対象物Wから受ける反力がロボットハン
ド100の基台12に伝わって、ロードセル14によって検出される。しかし、この段階
では接触検知指10bは対象物Wに接触していないので、接点スイッチ10sはOFFの
ままとなっている。図3を用いて前述したように、ロボットハンド100が対象物Wに対
して正しく位置決めされている場合は、ロードセル14で反力を検出すると、接点スイッ
チ10sもONとなっている。従って、ロードセル14で反力が検出されているにも拘わ
らず、接点スイッチ10sがONになっていない場合は、ロボットハンド100が対象物
Wに対して正しく位置決めされていないと判断できる。
【0028】
そこで、このような場合は、指10の駆動を中止して、ロボットハンド100の位置を
修正する。ロボットハンド100の位置を修正するに際しては、ロードセル14の反力が
検出されなくなる方向に向かって、所定の一定量だけ基台12を移動させればよい。そし
て、指10を対象物Wに近付けていき、再び、接触検知指10bよりも先に通常指10a
が対象物Wに接触した場合(すなわち、接点スイッチ10sがONにならないのにロード
セル14で反力が検出された場合)には、もう一度、ロボットハンド100の位置を修正
する。こうしたことを繰り返していけば、最終的には、ロボットハンド100を対象物W
に対して正しく位置合わせすることができる。
【0029】
あるいは、接触検知指10bよりも先に通常指10aが対象物Wに接触した時点で、通
常指10a(あるいは接触検知指10b)がどれだけ移動していたかを検出して、得られ
た移動量に基づいて、ロボットハンド100の対象物Wに対する位置を修正するようにし
てもよい。すなわち、対象物Wに対するロボットハンド100の位置が大きくずれていて
、通常指10aの直ぐ近くに対象物Wが存在していた場合には、指10を少し移動させた
だけで通常指10aが対象物Wに接触する筈である。逆に、ロボットハンド100の位置
ずれが小さければ、通常指10aが対象物Wに接触するまでに指10を移動させる距離も
大きくなる筈である。このことから、通常指10aが対象物Wに接触するまでの指10の
移動量に基づいて、ロボットハンド100が対象物Wに対して位置ずれしていた程度を見
積もることができ、見積もった位置ずれの程度に応じて、ロボットハンド100の対象物
Wを修正する修正量を見積もることができる。その結果、ロボットハンド100の対象物
Wに対する位置を迅速に修正することが可能となる。
【0030】
更には、次のようにしても良い。先ず、ロードセル14の反力が検出されなくなる方向
に向かって基台12を移動させ、接触検知指10bが対象物Wに接触するまでの間に、基
台12がどれだけ移動したかを検出して、その検出結果に基づいてロボットハンド100
の対象物Wに対する位置を修正するようにしてもよい。こうすれば、ロボットハンド10
0と対象物Wとの位置関係を正確に把握することができるので、ロボットハンド100を
正しい位置に、且つ迅速に修正することが可能となる。
【0031】
図4(c)には、以上のようにして、ロボットハンド100の対象物Wに対する位置を
修正している様子が示されている。そして、ロボットハンド100の位置を修正した後は
図2を用いて前述した方法と全く同様にして対象物Wを把持することができる。すなわ
ち、図4(d)に示したように、接触検知指10bが対象物Wに接触するまでは、位置制
御を行いながら四本の指10を駆動し、接触検知指10bが対象物Wに接触したら力制御
に切り換える。すると、四本の指10がゆっくりと対象物Wに近付いていき、最終的には
図4(e)に示したように対象物Wが適切な力で把持された状態となる。
【0032】
図5は、本実施例のロボットハンド100が対象物Wに対する位置を修正して、対象物
Wを把持する際のタイムチャートである。図3を用いて前述したタイムチャートと同様に
、把持動作を開始した直後は位置制御が行われるので、指10ができるだけ短時間で目標
位置に到達するように、ピニオンギア24の駆動モーターは最大定格トルクに近い大きな
トルクを発生する。また、ここでは、接触検知指10bよりも先に通常指10aが対象物
Wに接触するものとしているので、接触検知指10bの接点スイッチ10sがOFFのま
ま、ロードセル14で反力が検出される。尚、ロードセル14の出力が負の値となってい
るのは、接触検知指10bと反対側に設けられた通常指10aが対象物Wに接触している
ため、図3に示した場合とは逆方向の反力をロードセル14が受けているためである。
【0033】
接点スイッチ10sがOFFの状態のまま、ロードセル14で反力が検出されると、指
10の移動を停止する。図5に示したタイムチャートでは、移動中の指10を速やかに停
止させるために、ピニオンギア24の駆動モーターで逆方向のトルクを発生させている。
そして、指10が停止したら、ロボットハンド100の対象物Wに対する位置を修正した
後、再び、四本の指10を対象物Wに向かって移動させる。その後は、図3を用いて前述
したタイムチャートと同様である。すなわち、四本の指10を対象物Wに近付けると、先
ず始めに接触検知指10bが対象物Wに接触して、接点スイッチ10sがONになるので
、指10の駆動方法を位置制御から力制御に切り換える。その結果、それ以降は、四本の
指10が対象物Wにゆっくりと近付いていく。また、接触検知指10bが対象物Wに接触
したことに伴って、ロードセル14でも反力が検出される。そして、四本の指10が全て
対象物Wに接触すると、ロードセル14の反力が検出されなくなって、対象物Wの把持が
完了した状態となる。
【0034】
図6は、本実施例のロボットハンド100の把持動作を制御するために実行される対象
物把持処理のフローチャートである。図2ないし図5を用いて前述した把持動作は、ロボ
ットハンド100の全体の動作を制御する図示しない制御回路が、図6に示した対象物把
持処理を実行することによって実現されている。
【0035】
対象物把持処理では、先ず始めに、四本の指10を対象物Wに向けて移動させる際の目
標位置を設定する(ステップS100)。前述したように、把持しようとする対象物Wの
大きさが分かっている場合は、その対象物Wを把持したときの指10の位置を目標位置に
設定する。また、対象物Wの大きさが分かっていない場合は、ロボットハンド100で把
持可能な最も小さな対象物Wを把持するときの指10の位置を目標位置に設定する。尚、
制御を簡単にするために、目標位置は、把持可能な最小の対象物Wを把持する時の指10
の位置に固定しておくことも可能である。
【0036】
続いて、設定した目標位置に短時間で指10を移動可能なように位置制御を行って、指
10の駆動を開始する(ステップS102)。尚、前述したように、本実施例ではピニオ
ンギア24を回転させることによって指10を移動させているから、ピニオンギア24を
回転させる駆動モーターの発生トルクを制御することになる。
【0037】
そして、接触検知指10bが対象物Wに接触したか否か(接点スイッチ10sがONに
なったか否か)を判断し(ステップS104)、接触検知指10bが対象物Wに接触して
いない場合は(ステップS104:no)、ロードセル14で反力が検出されたか否かを
判断する(ステップS106)。接触検知指10bあるいは通常指10aの何れかが対象
物Wに接触したら、ロードセル14で反力が検出されるはずである。従って、ロードセル
14で反力が検出されていない場合は(ステップS106:no)、未だ何れの指10も
対象物Wには接触していないものと判断できるので、位置制御を行いながら指10の駆動
を継続し、ステップS104の処理まで戻って、再び、接触検知指10bが対象物Wに接
触したか否かを判断する。
【0038】
このような判断を繰り返しているうちに、やがて接触検知指10bあるいは通常指10
aの何れかが対象物Wに接触する。前述したようにロボットハンド100が対象物Wに対
して正しく位置決めされていれば、接触検知指10bが通常指10aより先に対象物Wに
接触する。
【0039】
その結果、ステップS104で「yes」と判断して、続いて、目標把持力を設定する
(ステップS112)。ここで目標把持力とは、指10を対象物Wに押しつけても対象物
Wに損傷を与えることが無く、且つ、対象物Wをしっかりと把持することができるように
予め設定された把持力である。尚、本実施例ではピニオンギア24を回転させることによ
って指10を移動させているから、目標把持力を設定することは、ピニオンギア24の駆
動モーターが発生する目標トルクを設定することと同じことである。そして、設定した目
標トルクを発生するようにピニオンギア24の駆動モーターを制御することによって、力
制御しながら指10の駆動を開始した後(ステップS114)、ロードセル14の反力が
検出されなくなったか否かを判断する(ステップS116)。ロードセル14の反力が検
出されている場合は(ステップS116:no)、未だ把持が完了していない(四本の指
10が対象物Wに接触していない)と判断できるので、そのまま力制御を継続する。そし
て、力制御を継続しているうちに、やがて四本の全ての指10が対象物Wに接触して、ロ
ードセル14の反力が検出されなくなったら(ステップS116:yes)、図6に示す
対象物把持処理を終了する。尚、対象物把持処理を終了した後も、把持した対象物Wを保
持するために、指10は目標把持力で対象物Wに押しつけられた状態となっている。
【0040】
以上では、ロボットハンド100が対象物Wに対して正しく位置決めされており、接触
検知指10bが通常指10aよりも先に対象物Wに接触した場合(ステップS104で「
yes」と判断された場合)について説明した。これに対して、接触検知指10bよりも
先に通常指10aが対象物Wに接触した場合には、ステップS106で「yes」と判断
されるので、指10の駆動を停止する(ステップS108)。このとき、移動中の指10
を速やかに停止させるために、ピニオンギア24の駆動モーターに逆方向のトルクを発生
させても良い(図5を参照)。
【0041】
続いて、ロボットハンド100の対象物Wに対する位置を修正する(ステップS110
)。位置の修正に際しては、ロボットハンド100を移動させても良いし、対象物Wを移
動させても構わない。また、ロボットハンド100(あるいは対象物W)を移動させる方
向は、ロードセル14で検出した反力が検出されなくなる方向に移動する。更に、移動量
に関しては、予め設定しておいた固定量としても良いし、あるいは、前述した方法(ロー
ドセル14が反力を検出するまでの指10の移動量を利用する方法や、接触検知指10b
が対象物Wに接触するまで基台12を移動させたときの基台12に移動量を利用する方法
)で見積もった移動量としてもよい。
【0042】
以上のようにして、ロボットハンド100の対象物Wに対する位置を修正したら(ステ
ップS110)、再び、位置制御による指10の駆動を開始する(ステップS102)。
そして、上述したように、接触検知指10bが対象物Wに接触するか(ステップS104
:yes)、あるいはロードセル14が反力を検出するまで(ステップS106:yes
)、位置制御による指10の駆動を継続する。その結果、ロードセル14が反力を検出し
た場合は(ステップS106:yes)、再び指10の駆動を停止して、ロボットハンド
100の位置を修正した後(ステップS108、S110)、再度、位置制御による指1
0の駆動を開始する(ステップS102)。これに対して、接触検知指10bが対象物W
に接触した場合は(ステップS104:yes)、前述したように目標把持力を設定した
後(ステップS112)、設定した目標把持力となるように力制御しながら指10を駆動
する(ステップS114)。そして、ロードセル14の反力が検出されなくなったら(ス
テップS116:yes)、対象物Wの把持が完了したものと判断して、図6の対象物把
持処理を終了する。
【0043】
本実施例のロボットハンド100は、以上のような処理を行うことによって、対象物W
を迅速に且つ適切な力で把持することが可能となる。また、ロボットハンド100の対象
物Wに対する位置がずれていた場合でも、ロボットハンド100の位置を修正して、適切
に対象物Wを把持することが可能となる。
【0044】
C.変形例 :
上述した実施例には、幾つかの変形例が存在する。以下では、これら変形例について簡
単に説明する。尚、変形例についての説明では、上述した実施例と同様の構成については
説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0045】
上述した実施例の接触検知指10bは、対象物Wに接触する部分に接点スイッチ10s
が設けられているものとして説明した。しかし、接触検知指10bは、通常指10aより
も先に対象物Wに接触し、更に、少なくとも通常指10aが対象物Wに接触するまでの間
は、対象物Wに損傷を与えるような過大な力を及ぼさないような指10であれば、他の態
様とすることも可能である。
【0046】
図7は、他の態様の接触検知指を搭載した種々の変形例のロボットハンドを例示した説
明図である。図7(a)に例示した変形例のロボットハンド110では、接触検知指30
bが関節32の部分で屈曲するように構成されており、関節32に内蔵されたバネに付勢
されて、初期状態では内側に屈曲した状態となっている。そして、接触検知指30bが対
象物Wに接触し、対象物Wからの反力で接触検知指30bが関節32の部分で少しだけ外
側に回転すると、関節32の内部に設けられた図示しない接点スイッチがONになる。そ
の後は、接触検知指30bが対象物Wに近付くにつれて関節32の部分で更に外側に回転
して、接触検知指30bが変形するようにしてもよい。
【0047】
また、図7(b)に例示した変形例のロボットハンド120では、接触検知指34b全
体が、基台12への取付部分(実際には移動部材20への取付部分)でスライドするよう
に構成されており、初期状態ではバネによって付勢されて内側にスライドした状態となっ
ている。そして、接触検知指34bが対象物Wに接触し、対象物Wからの反力で接触検知
指34bが外側に少しだけスライドすると、基台12に設けられた図示しない接点スイッ
チがONになる。その後は、接触検知指34bが対象物Wに近付くにつれて、接触検知指
34bが外側にスライドするようにしてもよい。
【0048】
あるいは、図7(c)に例示した変形例のロボットハンド130では、接触検知指36
bが比較的容易に変形する弾性部材で構成されており、対象物Wに接触する部分には圧力
センサー10tが設けられている。そして、接触検知指36bが対象物Wに接触すると、
圧力センサー10tの出力によって接触が検出される。その後は、接触検知指36bが対
象物Wに近付くにつれて、接触検知指36bの全体が変形するようにしてもよい。
【0049】
また、上述した実施例あるいは変形例では、複数本の指10が向かい合わせに設けられ
ているものとして説明した。しかし、複数本の指10は、必ずしも向かい合わせに設けら
れている必要はなく、たとえば図8に例示したように、複数本の指10が中心を向くよう
に設けられているようにしてもよい。
【0050】
D.適用例 :
上述したように、本実施例あるいは変形例のロボットハンド100,110,120,
130は、対象物Wを迅速に且つ適切な力で把持することが可能であり、しかも構造や制
御が複雑になることもない。このため、図9に示したように、本実施例あるいは変形例の
ロボットハンド100,110,120,130を搭載すれば、対象物Wを迅速に且つ適
切な力で把持することが可能であり、しかも構造や制御が簡単なロボット500を実現す
ることが可能となる。
【0051】
以上、本実施例のロボットハンドおよびロボットについて説明したが、本発明は上記の
実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施す
ることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…指、 10a…通常指、 10b…接触検知指、
10s…接点スイッチ、 10t…圧力センサー、 12…基台、
14…ロードセル、 16…アーム、 20…移動部材、
22…ラックギア、 24…ピニオンギア、 30b…接触検知指、
32…関節、 34b…接触検知指、 36b…接触検知指、
100,110,120,130…ロボットハンド、 500…ロボット、
W…対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9