特許第5834509号(P5834509)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834509
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】オイルポンプの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 14/08 20060101AFI20151203BHJP
   F04C 14/00 20060101ALI20151203BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   F04C14/08
   F04C14/00 C
   F04C15/00 L
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-127898(P2011-127898)
(22)【出願日】2011年6月8日
(65)【公開番号】特開2012-255353(P2012-255353A)
(43)【公開日】2012年12月27日
【審査請求日】2014年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220505
【氏名又は名称】日本電産トーソク株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088100
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 千明
(72)【発明者】
【氏名】白井 康弘
(72)【発明者】
【氏名】日比 裕一
(72)【発明者】
【氏名】小林 喜幸
(72)【発明者】
【氏名】平野 弘之
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−086117(JP,A)
【文献】 特開平11−093859(JP,A)
【文献】 特開2002−095111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 14/08
F04C 14/00
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータで回転駆動される回転軸の回転により流量を制御するオイルポンプの制御装置であって、
前記オイルポンプで制御するオイルの油温を検出する温度検出手段と、
前記オイルポンプの回転速度を算出する回転速度算出手段と、
前記温度検出手段で検出した前記油温に基づいて前記回転軸の速度制御値の補正を行う回転速度補正手段とを備え、
検出した前記油温が所定値以下である場合に電流値算出手段で演算した前記モータに供給する電流値に上限値を与える電流値制限手段をさらに備えたことを特徴とするオイルポンプの制御装置。
【請求項2】
前記電流値制限手段は、検出した前記油温が所定値以下であり、かつ実電流値が電流制限値を超えていた場合に前記モータへ出力するDUTY信号の出力DUTYを下げ、前記電流制限値を超えないように定電流制御を行うことを特徴とした請求項1記載のオイルポンプの制御装置。
【請求項3】
モータで回転駆動される回転軸の回転により流量を制御するオイルポンプの制御装置であって、
前記オイルポンプで制御するオイルの油温を検出する温度検出手段と、
前記オイルポンプの回転速度を算出する回転速度算出手段と、
前記温度検出手段で検出した前記油温に基づいて前記回転軸の速度制御値の補正を行う回転速度補正手段とを備え、
前記オイルポンプが作動しない場合の再起動を行う再起動制御手段をさらに備えたことを特徴とするオイルポンプの制御装置。
【請求項4】
前記再起動制御手段は、検出した前記油温が所定値以下であり、かつ前記モータが起動しない場合に一定時間後に再度起動をかける動作を繰り返し行い、この繰り返し動作を一定時間行っても起動できない場合は故障と診断し、起動不良フェールとすることを特徴とした請求項3記載のオイルポンプの制御装置。
【請求項5】
前記起動不良フェールと判断する時間を、当該オイルポンプが搭載された車両にダメージを与えない範囲の時間に設定したことを特徴とする請求項4記載のオイルポンプの制御装置。
【請求項6】
前記一定時間は、前記モータをコントロールするモータコントローラの回路素子の作動の許容温度により定めることを特徴とする請求項4又は5記載のオイルポンプの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルの通流を制御する電動式のオイルポンプの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシレスDCモータを駆動源として、歯車ポンプ(トロコイド式)の回転速度の制御を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような歯車ポンプにおいては、作動流体の温度の変化による粘性抵抗の変化が回転速度制御に影響するため、粘性抵抗が大のときは、回転数を上げる等の補正を必要としている。
【0004】
このため、励磁コイルに誘起される速度起電力を検出する速度起電力検出手段による検出結果に基づいてロータの回転位置を検出する第1ロータ位置検出手段と、回転軸に設けられる磁石からの磁界を検出する磁界検出部を有し当該磁界検出部による検出結果に基づいて前記ロータの回転位置を検出する第2ロータ位置検出手段とを備えており、これらを使い分けることによって、高温側では前記第1ロータ位置検出手段の回転速度検出を、また低温側では前記第2ロータ位置検出手段の回転速度検出を選択し、温度変化に対する回転制御の精度補償が行えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−086117公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来にあっては、作動流体の油温が低温の場合、ポンプ内のロータに加わる油粘性抵抗が大となり、回転速度の低下を補償するためにモータ電流を高油温の場合に比較して増加させる必要があるが、バッテリーの容量が限られているため、消費電力の増加が許されず、抑制したいという課題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、少なくとも上記課題の一方を解決できるオイルポンプの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明のオイルポンプの制御装置にあっては、モータで回転駆動される回転軸の回転により流量を制御するオイルポンプの制御装置であって、前記オイルポンプで制御するオイルの油温を検出する温度検出手段と、前記オイルポンプの回転速度を算出する回転速度算出手段と、前記温度検出手段で検出した前記油温に基づいて前記回転軸の速度制御値の補正を行う回転速度補正手段とを備え、検出した前記油温が所定値以下である場合に電流値算出手段で演算した前記モータに供給する電流値に上限値を与える電流値制限手段をさらに備えた。
【0009】
すなわち、通常のポンプ制御ではオイルの粘性による漏れ補償機能により、オイルポンプの製造ばらつきによらない流量特性の確保を可能にする。
【0010】
このとき、電流値算出手段で演算したモータに供給する電流値が大きい場合に、上限値を与えることによって、電流値を制限することができる。これにより、バッテリーの消費電力が抑えられる。
【0011】
また、請求項2のオイルポンプの制御装置において、前記電流値制限手段は、低油温時に実電流値が電流制限値を超えていた場合に前記モータへ出力するDUTY信号の出力DUTYを下げ、前記電流制限値を超えないように定電流制御を行う。
【0012】
すなわち、モータへの実電流値が電流制限値を超えていた場合に前記モータへの出力DUTYを下げることによって、前記電流制限値を超えないような定電流制御を行うことができる。
【0013】
このため、前記オイルポンプが搭載された車両において、低温時の車両のバッテリー消費量を安定させる事が出来るので、バッテリー容量の不必要な増大が不要となる。
【0014】
また、低温時などの流量を必要としない領域では、バッテリー容量の許す限りの範囲内で、フレキシブルにオイルの通流を確保することができる。
【0015】
そして、請求項3のオイルポンプの制御装置にあっては、モータで回転駆動される回転軸の回転により流量を制御するオイルポンプの制御装置であって、前記オイルポンプで制御するオイルの油温を検出する温度検出手段と、前記オイルポンプの回転速度を算出する回転速度算出手段と、前記温度検出手段で検出した前記油温に基づいて前記回転軸の速度制御値の補正を行う回転速度補正手段とを備え、前記オイルポンプが作動しない場合の再起動を行う再起動制御手段をさらに備えた。
【0016】
すなわち、前記オイルポンプが作動しないフェール時には、インターバルをおいて再起動することで、消費電力が抑えられる。
【0017】
また、請求項4のオイルポンプの制御装置においては、前記再起動制御手段は、極低温時に前記モータが起動しない場合に一定時間後に再度起動をかける動作を繰り返し行い、この繰り返し動作を一定時間行っても起動できない場合は故障と診断し、起動不良フェールとする。
【0018】
すなわち、極低温時に起動させる場合、所定時間の経過によりオイルの油温が上昇し、モータ起動可能となった際に、再起動制御を用いた起動が可能となる。
【0019】
また、不必要にモータ出力を大きくすることなく、システムを構成できるため、モータの小型化とコスト低減が図れる。
【0020】
さらに、請求項5のオイルポンプの制御装置では、前記起動フェールと判断する時間を、当該オイルポンプが搭載された車両にダメージを与えない範囲、例えば無潤滑状態での走行に耐えられる時間内に設定した。
【0021】
これにより、車両の電気系統や関連機構等の安全性の向上が図られる。
【0022】
加えて、請求項6のオイルポンプの制御装置にあっては、前記一定時間は、前記モータをコントロールするモータコントローラの回路素子の作動の許容温度により定める。
【0023】
これにより、モータコントローラの回路素子、とりわけFETのような発熱素子の過度の温度上昇を抑制し、モータコントローラの信頼性が高められる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明の請求項1のオイルポンプの制御装置にあっては、電流値算出手段で演算したモータに供給する電流値が大きい場合、上限値を与えることによって、電流値を制限することができる。
【0025】
これにより、バッテリーの消費電力を抑えることができるので、バッテリー容量の不要な増大を回避することができ、低温時でのバッテリ上がりを未然に防止できる。
【0026】
また、請求項2のオイルポンプの制御装置において、低温時の車両のバッテリー消費量を安定させる事が出来るので、バッテリーの容量を不必要に増大させることを回避することが出来る。
【0027】
また、低温時などの流量を必要としない領域では、バッテリー容量の許す限りの流量をフレキシブルに流すことが出来る。
【0028】
そして、請求項3のオイルポンプの制御装置にあっては、ポンプが起動しないフェール時には再起動にインターバルを置くことで、消費電力の増大を抑制することができる。
【0029】
また、インターバルを置いて再起動するため、極低温時の起動を可能な限り行うことができる。
【0030】
また、請求項4のオイルポンプの制御装置においては、極低温時に起動させる場合、所定時間の経過により車両走行による発熱で油温が上昇し、モータ起動可能になった際に再起動制御を用いて起動することが可能となるので、走行不能となるトラブルを未然に防止できる。
【0031】
また、不必要にモータ出力を大きくすることなく、システムを構成できるため、モータの小型化とコストダウンを図ることができる。
【0032】
さらに、請求項5のオイルポンプの制御装置では、車両の電気系統や関連機構等の安全性を向上することができる。
【0033】
加えて、請求項6のオイルポンプの制御装置にあっては、モータコントローラの回路素子、とりわけFETのような発熱素子の過度の温度上昇を抑制し、モータコントローラの信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施の形態を示す断面図である。
図2】同実施の形態を示す分解斜視図である。
図3】同実施の形態を説明する為のブロック図である。
図4】(a)油温に対する必要流量を示す図であり、(b)油温に対する指令回転数を示す図である。
図5】(a)油温に対する指令回転数を示す図であり、(b)指令に対する目標回転数御及び制御方式を示す図である。
図6】同実施の形態における低温時の電流制御に係る動作を示すフローチャートである。
図7】極低温時における再起動制御を示すタイミングチャートである。
図8】同実施の形態における極低温時の再起動制御に係る動作を示すフローチャートである。
図9】トルクに対する回転数及び電流値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0036】
図1は、本実施の形態にかかるオイルポンプの制御装置で制御される電動式歯車ポンプ1を示す図であり、該電動式歯車ポンプ1は、モータ2と、該モータ2で駆動されるオイルポンプ3を備えている。これにより、モータ冷却用のオイルを供給したり、自動車のATやCVT等の自動変速機4に取り付けられアイドルストップ時に低下する油圧を所定圧に維持するように構成されている。
【0037】
すなわち、前記自動変速機4には、油圧回路が形成されており、当該自動変速機4のケーシング11内部には、前記油圧回路を構成する為の油圧経路12が形成されている。このケーシング11の外面13には、前記電動式歯車ポンプ1を取り付ける為の取付穴14が開口しており、該取付穴14に前記電動式歯車ポンプ1の先端部を挿入した状態で取り付けられるように構成されている。
【0038】
前記油圧経路12には、当該自動変速機4の制御に用いるオイル21が循環しており、前記取付穴14の奥面22には、図外のオイル貯留部に連通する連通路23と、加圧したオイル21を出力する出力路24とが開設されている。
【0039】
図2は、前記電動式歯車ポンプ1を示す分解斜視図であり、該電動式歯車ポンプ1は、トロコイド式の前記オイルポンプを構成するポンプ構成部31と、該ポンプ構成部31を駆動するモータ構成部32と、該モータ構成部32を制御する為のモータ駆動制御部33とを備えている。前記ポンプ構成部31と前記モータ構成部32と前記モータ駆動制御部33とは、前記モータ構成部32を構成する回転軸34の延出方向に配列されており、前記モータ構成部32より延出した前記回転軸34が、図1に示したように、組立状態において前記ポンプ構成部31に接続されるように構成されている。
【0040】
この電動歯車式ポンプ1は、外周部を構成する円筒状のケース41を備えており、前記ポンプ構成部31と前記モータ構成部32とは、前記ケース41内に内嵌されている。この内嵌状態において、前記ポンプ構成部31の外周面と前記モータ構成部32の外周面とは、前記ケース41の内側面42に面接するように構成されており、この面接状態において、前記ポンプ構成部31及び前記モータ構成部32が位置決めされるように構成されている。
【0041】
前記ケース41の基端には、外方へ延出するケースフランジ部51が一体形成されており、当該電動式歯車ポンプ1は、図1及び図2に示したように、前記ケースフランジ部51より先端側が前記ケーシング11に設けられた前記取付穴14に挿入される挿入領域を構成するとともに、前記ケースフランジ部51より基端側が前記ケーシング11より突出した突出領域を形成するように構成されている。
【0042】
この電動式歯車ポンプ1を前記取付穴14に取り付けた状態では、前記ケースフランジ部51が、前記ケーシング11の前記外面13に面接するように構成されており、前記ケースフランジ部51によって当該電動式歯車ポンプ1を前記ケーシング11に固定できるように構成されている。
【0043】
前記挿入領域を構成する前記ケースフランジ部51より前記ケース41の先端側には、前記ポンプ構成部31及び前記モータ構成部32が配置されるように構成されており、図1に示した取付状態において、前記ケース41より突出した前記ポンプ構成部31の先端面が前記取付穴14の前記奥面22に対向するように構成されている。
【0044】
前記ポンプ構成部31は、図1及び図2に示したように、先端側を構成するポンプベース71と、該ポンプベース71の基端側に配置されたポンプハウジング72とを備えており、該ポンプハウジング72と前記ポンプベース71との間には、Oリング73が配設されている。前記ポンプベース71の先端面には、図1に示したように、前記ケース41の前記円形穴62に挿入されて外部に突出する円形の突出部74が一体形成されており、当該ポンプベース71は、前記突出部74の外周部がケース41先端の前記折曲部61に支持された状態で先端側への抜けが阻止されるように構成されている。
【0045】
前記ポンプベース71の基端面には、ピン91の一端部が挿入されており、該ピン91の他端部は、前記ポンプベース71に対向して配設された前記ポンプハウジング72の先端面に挿入されている。これにより、前記ポンプベース71に対して前記ポンプハウジング72が位置決めされるように構成されており、この状態において、前記ポンプハウジング72が前記ケース41に圧入固定され、当該ポンプベース71の外周面が前記ケース41の内側面42に密着した状態で固定されている。
【0046】
前記ポンプハウジング72の中央部は、図1に示したように、没入しており、当該ポンプハウジング72と前記ポンプベース71との間には、ロータ収容部101が形成されている。該ロータ収容部101内には、ポンプロータアウタ102が回動自在に収容されており、該ポンプロータアウタ102内には、ポンプロータインナ103が回動自在に収容されている。
【0047】
このロータ収容部101には、前記ポンプベース71に設けられた吸入ポート111と吐出ポート112とが連通しており、両ポート111,112は、前記ポンプベース71の前記突出部74の端面に開口するように構成されている。
【0048】
前記吸入ポート111は、当該電動式歯車ポンプ1を前記取付穴14に取り付けた状態において、前記取付穴14の奥面22に設けられた前記連通路23に接続されるように構成されており、前記吐出ポート112は、Oリング121を介して前記出力路24に接続されるように構成されている。
【0049】
これにより、前記ポンプロータインナ103の回転に伴って前記ポンプロータアウタ102が回転することで、前記連通路23から前記吸入ポート111を介して吸入したオイルを加圧して、前記吐出ポート112から前記出力路24へ出力するトロコイドポンプが形成されるように構成されている。
【0050】
このトロコイドポンプの基端側には、図1に示したように、前記モータ構成部32で構成された直流式のモータが配設されている。このモータは、外周部を形成するモータケース201を備えており、該モータケース201の外周面が前記ケース41の内側面42に密着した状態で固定されている。
【0051】
このモータケース201の内側には、モータ巻線211が巻回されたコイル212が内嵌されており、該コイル212には、コイルで励磁されるステータ213が保持されている。このステータ213の内側には、モータロータコア214が回転自在に収容されており、該モータロータコア214の外周面には、マグネット215が設けられている。このモータロータコア214には、前記回転軸34が挿通しており、当該回転軸34は、前記モータロータコア214を貫通した状態で固定されている。
【0052】
この回転軸34の他端部は、先端側へ向けて延出しており、当該回転軸34は、オイルシール221を介して前記ポンプハウジング72の中心穴222を挿通し、前記ロータ収容部101内に突出するように構成されている。該ロータ収容部101に突出した前記回転軸34の周面には、平坦面223が形成されており、断面D字状のロータ接続部224が形成されている。このロータ接続部224は、前記ロータ収容部101に収容された前記ポンプロータインナ103のD字穴225を挿通した後、先端側軸受けを介して前記ポンプベース71の座ぐり穴227に回転自在に収容された状態で支持されている。
【0053】
このモータ構成部32で構成されたモータの基端側には、前記モータ駆動制御部33が配設されており、該モータ駆動制御部33は、前記モータ構成部32の基端部に接続されたインシュレータ301を備えている(図2参照)。
【0054】
該インシュレータ301は、合成樹脂によって形成されており、前記モータ構成部32の前記モータケース201の基端部に挿入され内嵌した状態で接続されるモータ接続部311が一体形成されている。該モータ接続部311には、基端側軸受け314を介して、前記回転軸34の一端部が回転自在に支持されている。
【0055】
前記モータ接続部311には、前記モータ巻線211への通電を中継するバスバー321,・・・がインサート成型されており、前記モータ構成部32側に突出したバスバー321,・・・には、前記モータ巻線211が電気的に接続されている。
【0056】
また、前記モータ接続部311の側縁部には、上方へ突出するとともに、ハーネス接続穴324が側方へ向けて開口したコネクタ部322が一体形成されており、該コネクタ部322の奥面には、前記ハーネスと電気的に接続される接続端子323,323がインサート成型されている。
【0057】
前記モータ接続部311の端面には、支柱部333,・・・が複数立設されており、各支柱部333,・・・によって制御基板334が支持されている。該制御基板334には、電子回路が形成されており、外部機器から延出された前記ハーネスを前記コネクタ部322に接続した状態において、該コネクタ部322から入力される信号に基づいて前記バスバー321,・・・への出力信号を制御してモータ駆動制御するコントローラが構成されている。
【0058】
前記モータ駆動制御部33は、前記ケース41の基端部に取り付けられる容器状の制御器カバー331を備えてなり、前記モータ接続部311に支持された前記制御基板334は、前記制御器カバー331によって覆われるように構成されている。
【0059】
この制御器カバー331は、アルミニュームによって構成されており、当該制御器カバー331の外側面には、内部で発生した熱を外部に放出する冷却フィン341,・・・が複数設けられている。
【0060】
前記インシュレータ301の前記コネクタ部322の基端部には、係合凹部351が凹設されており、該係合凹部351より端部側には、前記コネクタ部322基端の一般部よりやや低い段差部352が形成されている。このコネクタ部322の基端部と重合する前記制御器カバー331一端側の延出片353には、前記段差部352上に延在するように構成されており、当該延出片353の先端には、前記係合凹部351と係合する係合凸部354が折曲形成されている。
【0061】
これにより、前記制御器カバー331の前記係合凸部354が前記コネクタ部322の前記係合凹部351に係合した状態で噛み合わせられる噛み合わせ構造が前記係合凸部354及び前記係合凹部351によって構成されており、組立時には、前記係合凹部351と前記係合凸部354との接合部分にシール剤が塗布され前記係合凸部354と前記係合凹部351とが噛み合わせられるように構成されている。
【0062】
また、前記制御器カバー331の他端側には、取付状態において、前記モータケース201に外嵌した部位より側方へ向けて延出するカバーフランジ部371が前記ケースフランジ部51に対応した部位に一体形成されており、このカバーフランジ部371と前記ケースフランジ部51との面接部分及び前記モータケース201に外嵌した外嵌部分には、組立時においてシール剤が塗布されるように構成されている。
【0063】
前記カバーフランジ部371と該カバーフランジ部371に面接する前記ケースフランジ部51には、ボルト挿通穴381が開設されており、該ボルト挿通穴381には、カラー382が内嵌されている。
【0064】
これにより、図1に示したように、取付時において、前記ケースフランジ部51を前記ケーシング11の前記外面13に面接した状態で、前記ボルト挿通穴381内の前記カラー382に挿通したボルト391を、前記ケーシング11に形成されたねじ穴392に螺入することで、当該電動式歯車ポンプ1を前記ケーシング11に固定できるように構成されている。
【0065】
図3は、前記電動式歯車ポンプ1を制御するオイルポンプの制御装置1001を示すブロック図である。
【0066】
このオイルポンプの制御装置1001は、前記モータ2側を構成するコントローラ1011と、該コントローラ1011に接続された上位コントローラ1012とによって構成されている。
【0067】
該上位コントローラ1012には、流量特性変更手段1021が設けられており、該流量特性制御手段1021は、前記オイルポンプ3で制御するオイル21の油温を検出する油温センサ1022が接続されている。これにより、前記流量特性変更手段1021は、前記油温センサ1022からの信号に基づいて前記油温を算出できるうように構成されている。
【0068】
この流量特性変更手段1021は、低温時に作動する電流制御指令ブロック1031と、高温時に作動する回転数指令ブロック1032とに接続されており、前記油温に基づいて前記電流制御指令ブロック1031から指令コマンドを送出するか、前記回転数指令ブロック1032から指令コマンドを送出するかを選択できるように構成されている。
【0069】
前記回転数指令ブロック1032は、前記油温に応じた回転数で前記モータ2を回転する為の回転数指令を出力するように構成されている。
【0070】
すなわち、前記オイルポンプ3からの流量は、図4の(a)に示すように、前記油温がθ1〜θ2の間で変化しても、一定であることが望ましい。しかし、油温が上昇するとオイル21の粘性が低下し、前記オイルポンプ3での漏れ流量が増加する。このため、油温に対する流量を一定に保つためには、図4の(b)に示すように、油温がθ1からθ2に変化するに従って指令回転数を増加する必要があり、前記回転数指令ブロック1032では、流量を一定に保つために、油温に基づいた適切な指令回転数を出力するように構成されている。
【0071】
図5の(a)は、前記油温に対する指令内容を示す図であり、前記流量特性変更手段1021は、油温がθ1以上の際に前記回転数指令ブロック1032による制御を開始し、油温の上昇に従って指令する回転数が上昇する様子が示されている。また、図5の(b)は、前記電流制御指令ブロック1031による指令領域と、前記回転数指令ブロック1032による指令領域とが示されており、該回転数指令ブロック1032では、出力するDUTY駆動信号のDUTY比がD2からD3と大きくなるに連れて回転数がN3からN2へ大きくなる様子が示されている。
【0072】
前記コントローラ1011には、図3に示したように、回転速度算出手段1041が設けられており、該回転速度算出手段1041は、前記モータ2の回転軸34の回転速度を、例えばモータ電流の変化やセンサからの信号に基づいて算出するように構成されている。この回転速度算出手段1041で算出した回転速度は、回転速度制御量制限手段1042に出力されるように構成されており、該回転速度制御量制限手段1042には、前記上位コントローラ1012で前記回転数指令ブロック1032が選択された際に、該回転数指令ブロック1032から回転数指令が入力されるように構成されている。
【0073】
これにより、前記回転速度制御量制限手段1042は、前記モータ2の回転速度と前記回転数指令ブロック1032からの回転数指令とを比較して、回転速度の制御量を制限するとともに、これを回転速度補正手段1051に出力するように構成されており、該回転速度補正手段1051では、前記回転速度制御量制限手段1042からの信号に基づいてモータ2の回転数を指令値に近付ける為のDUTY駆動信号を前記モータ2に出力するように構成されている。
【0074】
また、前記コントローラ1011には、電流値算出手段1061が設けられており、該電流値算出手段1061は、前記モータ2に供給される電流値を算出して電流値制限手段1062に出力するように構成されている。該電流値制限手段1062には、前記上位コントローラ1012で前記電流制御指令ブロック1031が選択された際に、該電流制御指令ブロック1031から電流制御指令が入力されるように構成されている。
【0075】
これにより、前記電流値制限手段1062は、前記モータ2に供給された実電流値が予め定められた電流制限値を超えた際に、電流値を一定とするような信号を電流値補正手段1063に出力するように構成されている。
【0076】
該電流値補正手段1063では、前記電流値制限手段1062からの信号に基づいてモータ2の電流値が一定となるようにDUTY駆動信号のDUTY値を制御して前記モータ2へ出力するように構成されている。
【0077】
図6は、前記オイルポンプの制御装置1001の動作を示すフローチャートであり、前記油温が低温の場合の動作が示されている。
【0078】
すなわち、前記電動式歯車ポンプ1を作動させる際には、前記コントローラ1011から前記モータ2に駆動信号を出力してモータ起動を行い(S1)、前記モータ2の回転状態から当該モータ2が起動したか否かを判断する(S2)。
【0079】
このとき、オイル21の粘度が高まる低温時には、前記モータ2が起動しないことがあり、この場合再起動制御を開始する。
【0080】
この再起動制御では、当該再起動制御を開始してからメモリ等に予め記憶されたフェール時間t2が経過したか否かを判断する(S3)。初期段階では、前記フェール時間t2を経過していないので、一定時間t1待機して停止した後(S4)、前記ステップS1へ戻ることで前記モータ2の起動を試みる(S1)。このとき、モータ2が起動していない場合には、前記ステップS1からステップS4を繰り返す。
【0081】
ここで、前記一定時間t1は、前記モータ2を駆動するモータコントローラ駆動回路の回路素子、具体的には駆動用FETの作動許容温度により定められており、前記駆動用FETの正常動作を可能とする連続通電時間、例えば15秒に設定されている。
【0082】
また、前記フェール時間t2は、当該オイルポンプ3が搭載された車両にダメージを与えない範囲の時間に設定されている。
【0083】
例えば、このオイルポンプ3を自動車のATやCVT等の自動変速機4で使用する際には、当該オイルポンプ3によるオイル21の供給が停止した状態で前記自動変速機4の作動を続けても、当該自動変速機4が故障しない連続作動時間、例えば5分に設定されている。また、このオイルポンプ3を冷却オイル供給用に使用する際には、連続作動を続けても焼き付け等の不具合を生じない連続時間に設定する。
【0084】
そして、この再起動制御が前記フェール時間t2行われた際には(S3)、メモリに起動不良フェールと記録して(S5)、当該処理を終了する。
【0085】
これにより、図7に示すように、前記モータ2は、前記一定時間t1毎の起動が前記フェール時間t2試みられた後、起動不能時には、起動不良フェールとして処理される。このため、故障時は、確実に故障判断を行うことができる。
【0086】
一方、図6に示したように、前記モータ2が起動した際には(S2)、電流制御を開始する。
【0087】
この電流制御では、図8にも示すように、前記電流値算出手段1061にて前記モータ2に供給された実電流値を計算し(S6)、この計算電流値が予めメモリに設定された電流制限値より大きいか否かを判断する(S7)。このとき、前記計算電流値が前記電流制限値より大きい場合には、電流制限処理を行う一方(S8)、前記計算電流値が前記電流制限値以下の場合には、回転数制御処理を行う(S9)。
【0088】
具体的に説明すると、前記電流制御処理S8では、前記計算電流値と前記電流制限値との差を演算し(SB1)、この差に基づいて電流値PID制御により前記モータ2へのDUTY駆動信号のDUTY値を下げ前記計算電流値が前記電流制限値を超え範囲内で定電流制御して(SB2)、前記ステップS6へ戻る。
【0089】
図9は、出力DUTYを下げた際の効果を示す図であり、出力DUTYをDo2からDo1に下げることによって、前記モータ2に供給される電流が下がる様子が示されている。このため、前述した電流値PID制御に従って前記出力DUTYを下げることで、前記実電流値が前記電流制限値未満となるように維持するとともに、前記モータ2に供給される実電流値が一定となるように制御できる。
【0090】
このとき、前記モータ2の回転数は、前記電流値に見合ったモータ2のN−T特性で定まる回転数に自動的に下げることができる。
【0091】
また、図8に示したように、前記回転数制御処理では(S9)、現在のモータ2の現在回転数と目標回転数との差を演算し(SB3)、この差に基づいて回転数PID制御により前記モータ2へのDUTY駆動信号のDUTY値を上下して(SB4)、前記ステップS6へ戻る。
【0092】
これにより、前記実電流値が前記電流制限値以下の場合には、前記モータ2の回転数が目標回転数となるように制御することができる。
【0093】
以上の構成にかかる本実施の形態において、通常のポンプ制御ではオイル21の粘性による漏れ補償機能により、オイルポンプ3の製造ばらつきによらない流量特性の確保を可能とすることができる。
【0094】
このとき、電流値算出手段1062で演算したモータ2に供給する電流値が大きい場合に、前記電流制限値によって上限値を与えることで、前記電流値を制限することができる。
【0095】
これにより、前記モータ2に電力を供給するバッテリーの消費電力を抑えることができるので、バッテリー容量の不要な増大を回避することができ、低温時でのバッテリ上がりを未然に防止できる。
【0096】
また、前記モータ2への実電流値が電流制限値を超えていた場合には、前記モータ2への出力DUTYを下げることによって、前記電流制限値を超えないような定電流制御を行うことができる。
【0097】
このため、このオイルポンプ3が搭載された車両において、低温時の車両のバッテリー消費量を安定させる事が出来るので、バッテリー容量の不必要な増大が不要となる。
【0098】
また、低温時などの流量を必要としない領域では、バッテリー容量の許す限りの範囲内で、フレキシブルにオイル21の通流を確保することができる。
【0099】
そして、前記オイルポンプ3が起動しないフェール時には、当該オイルポンプ3の再起動に一定時間t1のインターバルを置くことで、消費電力の増大を抑制することができる。
【0100】
さらに、インターバルを置いて再起動するため、極低温時の起動を可能な限り行うことができる。
【0101】
また、極低温時にモータ2を起動する場合、所定時間の経過により油温が上昇し、モータ起動可能になった際に再起動制御を用いて起動することが可能となる。
【0102】
加えて、不必要にモータ出力を大きくすることなく、システムを構成できるため、モータ2の小型化とコストダウンを図ることができる。
【0103】
また、起動不良フェールと判断するフェール時間t2を、当該オイルポンプ3が搭載された車両にダメージを与えない範囲の時間に設定した。
【0104】
これにより、車両の電気系統や関連機構等の安全性を向上することができる。
【0105】
加えて、前記一定時間t1は、前記モータ2を駆動するモータコントローラ駆動回路の回路素子、具体的には駆動用FETの作動許容温度により定められており、前記駆動用FETの正常動作を可能とする連続通電時間に設定されている。
【0106】
このため、前記モータ2のコントローラ1011の回路素子、とりわけFETのような発熱素子の過度の温度上昇を抑制し、前記コントローラ1011の信頼性を向上することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 電動式歯車ポンプ
2 モータ
3 オイルポンプ
31 ポンプ構成部
32 モータ構成部
34 回転軸
1011 コントローラ
1022 油温センサ
1041 回転速度算出手段
1051 回転速度補正手段
1061 電流値算出手段
1062 電流値制限手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9