特許第5834585号(P5834585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834585
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】非接触通信媒体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20151203BHJP
【FI】
   G06K19/077 144
   G06K19/077 272
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-161923(P2011-161923)
(22)【出願日】2011年7月25日
(65)【公開番号】特開2013-25676(P2013-25676A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石岡 千彰
(72)【発明者】
【氏名】阿部 晋也
【審査官】 梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/035094(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICと電気的に接続されたアンテナとを備えた非接触通信媒体であって、 第一の熱可塑性樹脂層と、該第一の熱可塑性樹脂層と相溶性又は接着性を有する第二の熱可塑性樹脂層との間にアンテナを構成するアンテナ層とを挟んで積層され、 前記第一の熱可塑性樹脂層とアンテナ層の間又は、前記第二の熱可塑性樹脂層とアンテナ層の間にアンテナ層を固定する熱硬化性の接着層が設けられ、該接着層は、前記第一の熱可塑性樹脂層と前記第二の熱可塑性樹脂層とを接触させるための開口が設けられ、前記接着層全体が網状であることを特徴とする非接触通信媒体。
【請求項2】
ICと電気的に接続されたアンテナとを備えた非接触通信媒体であって、 第一の熱可塑性樹脂層と、該第一の熱可塑性樹脂層と相溶性又は接着性を有する第二の熱可塑性樹脂層との間にアンテナを構成するアンテナ層とを挟んで積層され、
前記第一の熱可塑性樹脂層とアンテナ層の間又は、前記第二の熱可塑性樹脂層とアンテナ層の間にアンテナ層を固定する接着層が設けられ、
該接着層は、記第一の熱可塑性樹脂層と前記第二の熱可塑性樹脂層とを接触させるための開口が設けられ、かつ、前記接着層全体が網状であり、前記第一の熱可塑性樹脂層及び前記第二の熱可塑性樹脂層のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する材料からなることを特徴とする非接触通信媒体。
【請求項3】
接着層の単位面積あたりの開口率が、50〜80%であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の非接触通信媒体。
【請求項4】
前記第一の熱可塑性樹脂層及び前記第二の熱可塑性樹脂層がポリカーボネートであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非接触通信媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナとICを備えたインレイ、これを組み込んだICカード、RFIDタグ、IC付冊子等の非接触通信媒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリカーボネート等のレーザ照射によって印字することが可能な基材を用いてIDカードや、パスポート等のID冊子に組み込むインレイなどの非接触通信媒体が使用されるようになってきている。このようなカードやインレイは発色層を含む樹脂層を溶融接着して積層してなるものである(特許文献1)。特に、同一材料の積層ではラミネートにより層間が相溶するので、完全に一体化することができる。
【0003】
一方、非接触通信を行うためのアンテナとICを備えた非接触ICカードの一般的な製造工程では、コア基材上にアンテナパターンを形成し、さらに中間層、外装基材等を積層し、ICチップをアンテナに接続して非接触ICカードとする(特許文献2)。
【0004】
上述のように、同一材料の積層ではラミネートにより層間が相溶するのでカード基材を一体化させることができるが、層間にアンテナパターンを形成する場合、基材の融着時に基材の融着とともに基材上に形成されたアンテナパターンも移動し、アンテナパターンの歪みや断線という問題が生じていた。
【0005】
また、融着時のアンテナパターンの変形を抑制するために、貼り合わせる基材の一方を相溶性の低い別の樹脂材料を用いた場合、接着性が悪化し、剥離を生じるおそれがあった。基材の剥離はICのすり替え等による偽造を容易にすることから、特にIDカードやパスポート等のセキュリティ性が要求される非接触通信媒体で問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006―103221号公報
【特許文献2】特開2009―169563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような問題を鑑みて、本発明では、アンテナパターンの変形等がなく、かつ基材の層間剥離の生じない非接触通信媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために為された請求項1に係る発明は、ICと電気的に接続されたアンテナとを備えた非接触通信媒体であって、第一の熱可塑性樹脂層と、該第一の熱可塑性樹脂層と相溶性又は接着性を有する第二の熱可塑性樹脂層との間にアンテナを構成するアンテナ層とを挟んで積層され、前記第一の熱可塑性樹脂層とアンテナ層の間又は、前記第二の熱可塑性樹脂層とアンテナ層の間にアンテナ層を固定する熱硬化性の接着層が設けられ、該接着層は、前記第一の熱可塑性樹脂層と前記第二の熱可塑性樹脂層とを接触させるための開口が設けられ、前記接着層全体が網状であることを特徴とする非接触通信媒体である。
また請求項2に係る発明は、ICと電気的に接続されたアンテナとを備えた非接触通信媒体であって、第一の熱可塑性樹脂層と、該第一の熱可塑性樹脂層と相溶性又は接着性を有する第二の熱可塑性樹脂層との間にアンテナを構成するアンテナ層とを挟んで積層され、前記第一の熱可塑性樹脂層とアンテナ層の間又は、前記第二の熱可塑性樹脂層とアンテナ層の間にアンテナ層を固定する接着層が設けられ、該接着層は、記第一の熱可塑性樹脂層と前記第二の熱可塑性樹脂層とを接触させるための開口が設けられ、かつ、前記接着層全体が網状であり、前記第一の熱可塑性樹脂層及び前記第二の熱可塑性樹脂層のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する材料からなることを特徴とする非接触通信媒体である。
また請求項3に係る発明は、前記接着層の平面形状が網状であることを特徴とする請求
項1又は2に記載の非接触通信媒体である。
また請求項4に係る発明は、接着層の単位面積あたりの開口率が、50〜80%である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非接触通信媒体である。
また請求項5に係る発明は、前記第一の熱可塑性樹脂層及び前記第二の熱可塑性樹脂層
がポリカーボネートであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の非接触
通信媒体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンテナパターンを熱可塑性樹脂で挟み込んで熱融着し積層した非接触通信媒体において、接着層によりアンテナパターンを固定し、接着層が熱融着時に溶融しないようにしたので、アンテナパターンの変形を抑制することができた。また接着層に両面の熱可塑性樹脂が互いに接触するように開口が設けられているので、剥離の少ない非接触媒体とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の一例である非接触媒体(インレット)の積層構造を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態の一例である非接触媒体(インレット)の断面構造を示す断面模式図である。
図3】本発明の実施形態の一例である非接触媒体(インレット)の断面構造を示す断面模式図である。
図4】本発明に係る接着層構造の一例を示す模式図である。
図5】本発明に係る接着層構造の一例を示す模式図である。
図6】本発明に係る積層体の一例を示す模式図である。
図7】本発明の実施形態の一例である非接触媒体(インレット)の積層構造を示す断面模式図である。
図8】本発明の実施形態の一例である非接触媒体(インレット)の積層構造を示す断面模式図である。
図9】本発明の実施形態の一例である非接触媒体(インレット)の積層構造を示す断面模式図である。
図10】本発明の実施形態の一例である非接触媒体(ICカード)の積層構造を示す断面模式図である。
図11】本発明の実施形態の一例である非接触媒体(ICカード)の積層構造を示す断面模式図である。
図12】本発明の実施形態である非接触媒体(IC付き冊子)の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び図2では本発明の実施形態の非接触媒体として、ICカード、IC付冊子等に組み込むことのできるインレット10の例を示している。図1は、インレットを構成する層ごとに分離して図示した斜視図であり、図2は、図1のS面での切断面を表す模式図である。
【0012】
インレット10は、非接触通信するためのアンテナを構成するアンテナパターン13が第一の熱可塑性樹脂層11と、第二の熱可塑性樹脂層12の間に挟まれている。アンテナパターンはIC14と電気的に接続されている。さらにアンテナパターンは開口を有する接着層15と接触するように配置され、当該接着層により固定されている。後述するように、アンテナパターンは第一の熱可塑性樹脂層上に形成され、その上にラミネート等で第二の熱可塑性樹脂層を熱圧着することで積層される。図1及び図2ではアンテナパターンと第二の熱可塑性樹脂層の間に接着層を配置しているが、第一の熱可塑性樹脂側に接着層を設けても良いし、図3のように第二の熱可塑性樹脂層側にも接着層15’を設け、接着層15と接着層15’でアンテナパターンを挟むようにしても良い。
【0013】
第一の熱可塑性樹脂層11及び第二の熱可塑性樹脂層12は、熱圧着により互いに固着な熱可塑性樹脂であれば特に制限はない。例えば、ポリカーボネート(PC)、植物由来ポリカーボネート(バイオPC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシロキサン1,4−ジメチルフタレート(PCT)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、透明アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合合成樹脂(MABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアセタール、塩化ビニル材料、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体材料、テレフタル酸とシクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールとの共重合体材料、または前述の共重合体とポリカーボネート及び/又はポリアリレートとのポリマーアロイからなる非晶質ポリエステル材料、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合合成樹脂(ABS)材料等を用いることができる。特に第一の熱可塑性樹脂及び第二の熱可塑性樹脂に同一の材料を用いることが、相溶性が高いために好ましい。なお、このことは一方の熱可塑性樹脂に異なる添加物を加えることを妨げるものではない。
【0014】
接着層15は、第一の熱可塑性樹層脂11と第二の熱可塑性樹脂層12とが接触するように、開口が設けられている。本発明によれば、第一の熱可塑性樹脂及び第二の熱可塑性樹脂層は相溶性又は接着性を有し、ラミネート等によって固着されるので、層間剥離しない。特に、第一の熱可塑性樹脂層及び第二の熱可塑性樹脂層が同一の樹脂又は相溶性を示す樹脂の場合、図2において点線で示されている境界面は、熱圧着により一体化して消失する。この場合、第一の熱可塑性樹脂層と第二の熱可塑性樹脂層は、アンテナパターン13及び接着層の下層か上層かによってのみ認識されるので、層間剥離による偽造が困難になる。
【0015】
接着層15は、第一の熱可塑性樹脂層11と第二の熱可塑性樹脂層12との熱圧着時にアンテナパターンを固定する役割を果たす。このため接着層を構成する材料(接着層材料)は、熱圧着時に溶融しない材料を選択する必要がある。すなわち、少なくとも加熱する側、好ましくは接着層の両面の熱可塑性樹脂層のガラス転移温度以上のガラス転移温度及び融点を持つ。
【0016】
このような材料としては、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、熱硬化性ポリイミド、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等の加熱によって重合硬化する熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性の接着層は、形成時にプリベークして硬化させても良いし、第一の熱可塑性樹層脂11と第二の熱可塑性樹脂層12の熱圧着時に硬化させても良い。後者の場合、熱圧着時の加熱温度で重合が進む接着層材料を選択する。
【0017】
また、ホットメルト等の熱可塑性樹脂を用いることもできるが、この場合には、少なくとも加熱する側、好ましくは接着層の両面の熱可塑性樹脂層のガラス転移点よりも高いガラス転移温度を有する材料を選択する。より好ましくは熱可塑性樹脂層と接着層材料のガラス転移温度の差が10℃以上あることが好ましい。例えばポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は約160℃であるので、接着層材料のガラス転移温度は170℃以上であることが好ましい。
【0018】
接着層の形態としては、接着層全面で均一に複数の開口を設けることが好ましい。また、接着層の開口率(%/cm)は、30〜80%、より好ましくは50〜80%であることが好ましい。特に、図4のように接着材料の縦横に張り巡らせた網状構造、あるいは図5のようにシート状の接着材料に複数の開口を設けた構造のものを好適に用いることができる。このようにすることで接着層の両面に配置されている第一の熱可塑性樹脂層11と第二の熱可塑性樹脂層12とが接着層の開口部分を通じて直接接触するため、開口部分では第一の熱可塑性樹脂層と第二の熱可塑性樹脂層とが溶融接着し、接着層での剥離を抑制することができる。特に網状の接着層では第一の熱可塑性樹脂層と第二の熱可塑性樹脂層の接触面積を最大化することができる。さらに、ストライプ状やアンテナパターンの下のみに接着層を形成した場合と比較して、縦横いずれの方向に対しても変形を抑制する方向に応力が働くので、アンテナパターンの固定強度を保ち、変形を防ぐことができる。
【0019】
IC14は、チップの形態で用いても良いし、アンテナ接続用バンプや保護部材、外部端子等を設けたICモジュールの形態で用いても良い。インレット10上でアンテナパターン13にICを接続する場合、ICの厚みを緩和するために、第二の熱可塑性樹脂層のIC相当部分に開口を設けるようにしても良い。
【0020】
アンテナパターン13は、アルミニウム等の金属箔をアンテナパターンにエッチングして形成するエッチングアンテナや、銅線等の金属ワイヤを絶縁膜で被覆したエナメル線を基材上に引廻して固定した巻き線アンテナ、導電性インクを用いた印刷アンテナ等を用いることができる。
【0021】
エッチングアンテナの場合、第一の熱可塑性樹脂層11上に接着材料を塗布又は接着して接着層15を形成し、接着層上に金属箔を貼着する。そして、この金属箔をエッチングすることで、アンテナパターンを形成することができる。金属箔の厚みとしては20〜50μm、接着層膜厚は2〜5μmが好適である。また、別の方法としては、図6に示すように転写用の積層体60を用いた方法を取ることができる。支持層62及び剥離層61層を備えた支持体上に金属箔13’を貼着し、エッチングした後に金属箔上に接着層15を塗布又は接着する。この積層体からアンテナのパターンにエッチングされた金属箔と接着層を、接着層側が第一の熱可塑性樹脂層に接触するようにして転写する。また積層体を用いたさらに別の方法としては、支持体層上でエッチングを行わずに金属箔上に接着層を形成し、第一の熱可塑性樹脂層上に転写した後にエッチングを行っても良い。いずれの方法においても、金属箔を接着層上に貼着する際に加熱しながら転写することで、接着層へのアンテナパターンの固定と同時に接着層を熱硬化させるようにしても良い。
【0022】
また、図3で示したように、アンテナパターンを形成した後、さらに上から接着層15を塗布又は接着し、形成しても良い。アンテナパターンが接着層でサンドイッチされた構成となるため、さらにアンテナパターンの変形や歪みを低減させることができる。なお、第二の熱可塑性樹脂層12側の接着層は第二の熱可塑性樹脂層のアンテナパターンと対向する側に形成してから積層してアンテナパターンと接触させても良い。
【0023】
エッチングアンテナの場合、図7に示すように、ジャンパー線71を用いてアンテナパターン13とIC(図示していない)を接続する構成が一般的である。この場合、第一の熱可塑性樹脂層11のもう一方の面にも同様の工程で接着層15を形成し、ジャンパー線もエッチングアンテナと同様の工程で形成することができる。両面に接着層が形成されているので、図のように両面に第二の熱可塑性樹脂層12を熱圧着する場合でもアンテナパターン及びジャンパー線の変形や、層間剥離の少ないインレットを形成することができる。
【0024】
印刷アンテナの場合も、銀微粒子等を含む導電性インクをスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等を用いてアンテナパターンを形成すること以外は、エッチングアンテナと同様の製法、構成でインレットを作成することができるので、説明を省略する。
【0025】
巻き線アンテナの場合、超音波等を用いて第一の熱可塑性樹脂層11に埋め込むことでアンテナパターン13を形成することができる。図8のように、エナメル線13’を一部が露出するように第一の熱可塑性樹脂層にエナメル線を埋め込み固定し、その上から接着材料を塗布又は接着して接着層15を形成する。エナメル線の一部を第一の熱可塑性樹脂層上に露出させるのは、エナメル線を接着層に接触させることで、エナメル線からなるアンテナパターンを接着層に固定するためである。また、図9に示すように、第一の熱可塑性樹脂層上に接着層を形成した上でエナメル線を固定し、その上からさらに接着層を形成するようにしても良い。アンテナパターンが接着層でサンドイッチされた構成となるため、さらにアンテナパターンの変形や歪みを低減させることができる。なお、第二の熱可塑性樹脂層12側の接着層は第二の熱可塑性樹脂層のアンテナパターンと対向する側に形成してから積層してアンテナパターンと接触させても良い。
【0026】
さらに、第一の熱可塑性樹脂層11又は第二の熱可塑性樹脂層12にレーザ印字が可能な、発色ポリカーボネート等の発色性材料を用いても良い。特に第二の熱可塑性樹脂層に発色ポリカーボネートを用いて、第二の熱可塑性樹脂層を透明ポリカーボネートで構成すれば、一体化されたインレットの内部に情報を印字することができるため、偽造が困難であり、セキュリティ性が高い非接触媒体とすることができる。
【0027】
図10及び図11では本発明の実施形態の非接触媒体として、ICカードの例を示している。当該実施形態ではアンテナパターンとしてエッチングアンテナを用いた例を示している。当然ながら、ICカードのアンテナパターンはこれに限られるものではない。
【0028】
図10は、1又は複数の外層基材101を第二の熱可塑性樹脂層12の外側にさらに積層し、ICカードの厚みとしたものである。なお、図示していないが、インレット上でアンテナパターンにはICチップが接続されている。外層基材についても第二の熱可塑性樹脂層と相溶性又は接着性を有する材料を用いれば、接着層を用いずに熱圧着で積層することができる。しかし、このことは接着層を用いた構成を除外するものではない。外層基材には、第一の熱可塑性樹脂層及び第二の熱可塑性樹脂層と同様の材料を用いることができる。また、レーザ印字が可能な、発色ポリカーボネート等の発色性材料を用いてID等の印字を行っても良い。最外層上には、プライマー層、絵柄層を形成しても良い。
【0029】
図11では、積層された外層基材101にインレットのアンテナパターン13のIC接続領域に到達する開口を設け、ICモジュール102を、当該開口部に配置してアンテナパターンに電気的に接続している。開口部は、さらに最外層に一又は複数の層を設けてICモジュールを隠蔽するようにしても良い。また、ICモジュールが外部端子を備えることで、接触・非接触両用のICカードとすることができる。
【0030】
図12は、本発明に係るインレット10を冊子体と組み合わせたIC付き冊子の実施形態である。図12に示すIC付き冊子120では、第一及び第二の基材で挟んだインレット10を、冊子の表紙及び裏表紙を構成する表紙部材31の一方と、当該一方の表紙部材31に貼り付けられる内貼り用紙32との間に挟みこんだ状態で接着されている。表紙と裏表紙との間には、複数の本文用紙33が綴じ込まれており、パスポート、通帳、手帳、書籍等の各種用途に使用可能である。またインレット10を冊子体の表紙部材31の一方の面に取り付けるようにしてもよい。
【0031】
また、別の構成としては、インレット10を冊子の本文用紙のいずれかのページに取り付けるようにしてもよい。例えば、本文用紙33の所定のページを他のページよりも面積を大きくし、その所定のページが他のページと同じ面積となるように折り畳み、その折り畳んだことにより形成される空間内にインレット10を収納するようにしてもよい。この場合、折り畳んだ部分は、のり付けしたり縫い合わせたりすることにより封止する。また例えばパスポートの場合は、個人情報を記載したデータページにインレットを備えるようにしても良い。
【実施例】
【0032】
<実施例1>
ポリカーボネート基材(Bayer社製、厚み100μm)上に網状のエポキシ系熱硬化性樹脂接着剤を網状に塗布し3μmの接着層を形成した。この接着層上にアルミニウム箔を転写し接着した。その後、アルミニウム箔をエッチングによりアンテナパターンとした。なお、アルミ箔を貼り合わせた状態で接着層の形成領域中の開口率をポリカーボネート基材側から測定したところ、50%であった。
ジャンパー線についても同様の工程でアンテナパターンを形成したポリカーボネート基材の反対面に形成し、ジャンパー線とアンテナパターンを導通させてアンテナパターンを完成させた。
【0033】
アンテナパターンにICチップを電気的に接続して実装した後、アンテナパターンを形成したポリカーボネート基材の両面にポリカーボネート基材(Bayer社製、厚み50μm)を配置し、ラミネーション温度約180度、ラミネーション圧力5MPaで加熱圧着し、インレットとした。完成したインレットの各ポリカーボネート基材間は溶融接着され完全に一体化していた。また、アンテナパターンに目立った変形は見られなかった。
【0034】
<比較例1>
接着層を用いずにポリカーボネート基材上に直接アンテナパターンを形成したこと以外は、実施例1と同様の工程でインレットを製造した。完成したインレットの各ポリカーボネート基材間は溶融接着され、完全に一体化していたが、アンテナパターンは変形し、最大で5mmの位置ズレがあった。
【符号の説明】
【0035】
10・・・インレット
11・・・第一の熱可塑性樹脂層
12・・・第二の熱可塑性樹脂層
13・・・アンテナパターン
14・・・IC
15・・・接着層
15’・・・接着層
100・・ICカード
120・・IC付き冊子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12