特許第5834608号(P5834608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834608
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】車両のエンジン自動停止制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20151203BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20151203BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20151203BHJP
   B60T 8/176 20060101ALN20151203BHJP
【FI】
   F02D29/02 341
   F02D17/00 Q
   F02D45/00 310M
   !B60T8/176 Z
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-172660(P2011-172660)
(22)【出願日】2011年8月8日
(65)【公開番号】特開2013-36379(P2013-36379A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】服部 元之
(72)【発明者】
【氏名】森 浩一
【審査官】 藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4374805(JP,B2)
【文献】 特開2010−285961(JP,A)
【文献】 特開2000−008905(JP,A)
【文献】 特開2004−270532(JP,A)
【文献】 特開2001−032734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00 〜 29/02
F02D 17/00
F02D 41/00 〜 45/00
B60T 8/00 〜 8/1769
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中に運転者がブレーキペダルを所定の閾値以上操作したときは、エンジンを停止するコーストストップ制御手段と、
車輪のロックを回避するアンチロックブレーキシステムの作動より前に前記コーストストップ制御手段によるエンジン停止を行なわないように前記所定の閾値を設定する閾値設定手段と、
を備えたことを特徴とする車両のエンジン自動停止制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のエンジン自動停止制御装置において、
路面摩擦係数を検出する路面摩擦係数検出手段を備え、
前記閾値設定手段は、検出された路面摩擦係数が小さいほど前記所定の閾値を大きくすることを特徴とする車両のエンジン自動停止制御装置。
【請求項3】
請求項に記載の車両のエンジン自動停止制御装置において、
前記路面摩擦係数検出手段は、外気温を検出し、外気温が所定温度以下のときは路面摩擦係数を小さな値として検出することを特徴とする車両のエンジン自動停止制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中にエンジンを自動停止するエンジン自動停止制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジン自動停止制御装置として、特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報には、車両停止中にブレーキペダル操作量がアイドリングストップ閾値以上踏み込まれたときは、エンジンを停止する。また、車両走行中であっても、ブレーキペダル操作量がアイドリングストップ閾値よりも小さなコーストストップ閾値以上踏み込まれたときはエンジンを停止し、燃費の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4374805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、不用意にエンジン停止を行うと、アンチロックブレーキシステムの制御への影響が懸念される。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、アンチロックブレーキシステムの制御への影響を抑制可能な車両のエンジン自動停止制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両のエンジン自動停止制御装置では、走行中に運転者がブレーキペダルを所定の閾値以上操作したときにエンジンを停止するにあたり、アンチロックブレーキシステムの作動より前にエンジン停止を行なわないように所定の閾値を設定することとした。
【発明の効果】
【0007】
よって、アンチロックブレーキシステムの作動より前にエンジン停止を行なわないことで、上記影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の車両のエンジン自動停止制御装置の構成を表すシステム図である。
図2】実施例1のエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。
図3】実施例1のコーストストップ許可下限値設定処理を表すフローチャートである。
図4】実施例1の勾配補正量マップである。
図5】実施例1の車両重量マップである。
図6】実施例1の路面μマップである。
図7】実施例1の車速マップである。
図8】実施例1のアイドリングストップ許可下限値とコーストストップ許可下限値との関係を表す図である。
図9】実施例1の上り勾配走行時におけるコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図10】実施例1の下り勾配走行時におけるコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図11】実施例1の上り勾配走行時において車両重量が増加した場合のコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図12】実施例1の下り勾配走行時に車両重量が増加した場合のコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図13】実施例1の低μ路走行時におけるコーストストップ許可下限値の設定処理を表すタイムチャートである。
図14】実施例1の上り勾配走行時において車速に応じて補正した場合のコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図15】実施例1の下り勾配走行時において車速に応じて補正した場合のコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。
図16】実施例2の勾配補正量マップである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1は実施例1の車両のエンジン自動停止制御装置の構成を表すシステム図である。エンジン1から出力された回転駆動力は、トルクコンバータ2を介してベルト式無段変速機3に入力され、所望の変速比によって変速された後、駆動輪4に伝達される。
内燃機関であるエンジン1には、エンジン始動を行う始動装置1aを有する。具体的にはスタータモータが備えられ、エンジン始動指令に基づいてエンジンクランキングを行うと共に、燃料を噴射し、エンジン1が自立回転可能となると、スタータモータを停止する。
【0010】
エンジン1の出力側には、低車速時においてトルク増幅を行うと共に、所定車速(例えば14km/h程度)以上では、相対回転を禁止するロックアップクラッチを有するトルクコンバータ2が設けられている。トルクコンバータ2の出力側にはベルト式無段変速機3が接続されている。
ベルト式無段変速機3は、発進クラッチと、プライマリプーリ及びセカンダリプーリと、これらプーリに掛け渡されたベルトから構成され、プーリ溝幅を油圧制御によって変更することで所望の変速比を達成する。また、ベルト式無段変速機3内には、エンジン1によって駆動されるオイルポンプが設けられ、エンジン作動時には、このオイルポンプを油圧源としてトルクコンバータ2のコンバータ圧やロックアップクラッチ圧を供給し、また、ベルト式無段変速機3のプーリ圧やクラッチ締結圧を供給する。
【0011】
更に、ベルト式無段変速機3には電動オイルポンプ3aが設けられており、エンジン自動停止によってオイルポンプによる油圧供給ができない場合には、電動オイルポンプ3aが作動し、必要な油圧を各アクチュエータに供給可能に構成されている。よって、エンジン停止時であっても、所望の変速比を達成し、また、クラッチ締結圧を維持することができる。
【0012】
エンジン1は、エンジンコントロールユニット10によって作動状態が制御される。エンジンコントロールユニット10には、運転者のブレーキペダル操作によりオン信号を出力するブレーキスイッチ11からのブレーキ信号と、運転者のアクセルペダル操作量を検出するアクセルペダル開度センサ12からのアクセル信号と、ブレーキペダル操作量に基づいて生じるマスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサ13からのブレーキ操作量信号(マスタシリンダ圧)と、各輪に備えられた車輪速センサ14からの車輪速(車輪速から車速を検出する場合には車速信号と同義)と、外気温を検出する外気温センサ15からの外気温信号と、後述するCVTコントロールユニット20からのCVT状態信号と、エンジン水温や、クランク角、エンジン回転数等の信号とを入力する。エンジンコントロールユニット10は、上記各種信号に基づいてエンジン1の始動もしくは自動停止を実施する。尚、マスタシリンダ圧センサ13に代えてブレーキペダルストローク量やブレーキペダル踏力を検出するセンサ、もしくはホイルシリンダ圧を検出するセンサ等を用い、これによりブレーキペダル操作量を検出することで運転者の制動操作意図を検出してもよく、特に限定しない。
【0013】
また、エンジンコントロールユニット10内には、車両が走行中の路面勾配を検知する路面勾配検出部10aと、車両重量を検出する車両重量検出部10bと、外気温に基づいて路面μを推定する路面μ検出部10c(路面摩擦係数検出手段)とを有する。路面勾配検出部10aでは、例えば駆動輪に伝達されるトルクと、車輪速等から検出される実際の車両加速度と、加速度センサにより検出される車両に作用している加速度との差等から路面勾配を推定する。また、車両重量検出部10bは、サスペンションストローク等を検出し、車両停止時において車両の沈み込み具合から車両重量を検出する。また、路面μ検出部10cは、外気温を検出し、外気温が例えば4℃以下のときは、凍結路面の可能性が高く、路面摩擦係数が小さくなると判断する。尚、例えば車輪のロックを回避するアンチロックブレーキシステム(以下、ABSと記載する。)を実施するABSコントローラ等が路面摩擦係数の推定演算処理を行っている場合には、外気温に限らずこれら他のコントローラにおいて推定した路面μ情報を利用してもよい。実施例1の車両にはABSコントローラが備えられ、車輪ロック傾向を検出したときは、ホイルシリンダ圧を減圧,保持,増圧し、車輪ロックを回避しつつコーナリングフォースを確保するように構成されている。尚、ホイルシリンダ圧の制御や駆動力制御等によって車両のヨーレイトを安定方向に作用させる車両挙動安定制御システム等を備えていてもよく、特に限定しない。
【0014】
CVTコントロールユニット20は、エンジンコントロールユニット10との間でエンジン作動状態とCVT状態の信号を送受信し、これら信号に基づいてベルト式無段変速機3の変速比等を制御する。具体的には、走行レンジが選択されているときは、発進クラッチの締結を行うと共に、アクセルペダル開度と車速とに基づいて変速比マップから変速比を決定し、各プーリ油圧を制御する。また、車速が所定車速未満のときは、ロックアップクラッチを解放し、所定車速以上のときはロックアップクラッチを締結し、エンジン1とベルト式無段変速機3とを直結状態とする。更に、走行レンジ選択中におけるエンジン自動停止時には、電動オイルポンプ3aを作動させ、必要な油圧を確保する。
【0015】
(エンジン自動停止制御処理)
次に、エンジン自動停止制御処理について説明する。実施例1の車両のエンジン自動停止制御装置は、車両停止時に、所定の条件が成立したときは、エンジンアイドリングを停止する所謂アイドリングストップ制御を行う。尚、アイドリングストップ制御については周知の構成を適宜実施すればよいため、詳細な説明は省略する。加えて、車両走行中であっても、減速中であり、このまま車両停止してアイドリングストップ制御に移行する可能性が高いと判断したときは、エンジン1を停止するコーストストップ制御を行う。
【0016】
通常のコーストストップ制御を行わないアイドリングストップ車両にあっては、運転者がアクセルペダルを操作することなく惰性走行している所謂コースト走行状態(ブレーキペダル操作をしている状態を含む)のときには、燃料噴射を停止し、駆動輪4から伝達されるコーストトルクによってロックアップクラッチを介してエンジン回転数を維持している。しかし、所定車速まで減速すると、ロックアップクラッチは解放されるため、燃料噴射しなければエンジン1は停止してしまう。そこで、ロックアップクラッチが解放されるタイミングで燃料噴射を再開し、エンジン自立回転を維持している。その後、車両が完全停止し、ブレーキペダルが十分に踏み込まれているといった各種条件が成立しているか否かを判定した後、エンジンアイドリングを停止する。
【0017】
ここで、燃料噴射を停止していた走行状態から、一旦燃料噴射を再開し、再度エンジン停止を行う過程において、燃料噴射再開時の燃料を更に抑制することができれば、燃費を改善することが可能となる。そこで、所定の条件が成立したコースト走行時には、燃料噴射の再開を行うことなく、エンジンを停止したまま(燃料噴射等を行わない)とするコーストストップ制御を実施し、車両停止後は通常のアイドリングストップ制御にそのまま移行することとした。
【0018】
コーストストップ制御を行う際の1つの条件として、運転者のブレーキペダル操作量が所定範囲内(すなわち上限値と下限値の間)であることとした。ブレーキペダル操作量を条件の一つとしたのは、コーストストップ制御の開始もしくは終了は、運転者の制動意図に基づいて行うべきものだからである。すなわち、ブレーキペダルを強く踏んでいるときは、急減速しているときであり、所定車速から車両停止に至るまでの時間が短いと考えられる。このとき、車両停止時においてベルト式無段変速機3の変速比を最Low側まで変速する必要がある。しかし、そのためにはベルト式無段変速機3の変速原理による制限があり、駆動輪4が回転している必要がある。よって、駆動輪4が回転している間に素早く変速するには、オイルポンプの吐出量を確保する必要があり、エンジン停止は好ましくない。また、急減速時には車輪ロックを回避するためのABS制御等が実施されることも考えられる。このとき、ABS制御ロジックでは、車輪に作用するブレーキ液圧を増減するにあたり、エンジン側からのトルク入力も加味した上で種々のゲイン等が設定されており、不用意にエンジン停止を行うと、これら制御への影響も懸念される。よって、これらを考慮したコーストストップ許可上限値が設定される。
【0019】
一方、ブレーキペダルを緩やかに踏み込んでいる緩減速時には、そのまま車両停止する場合と、再度ブレーキペダルを解放し、再発進する場合とが考えられる。例えば、渋滞を走行しているときに、ブレーキペダルを緩やかに操作して走行状態を継続することなどが考えられる。この場合、不用意にエンジン停止をすると、エンジン停止と再始動とが繰り返され、運転者に違和感を与えるおそれがある。また、エンジン停止後、ブレーキペダルが緩やかに踏まれた状態でエンジン再始動すると、エンジントルクが駆動輪に出力されることで飛び出し感を与えるおそれもある。よって、これらを考慮したコーストストップ許可下限値が設定される。
【0020】
〔エンジン自動停止再始動制御処理〕
図2は実施例1のエンジン自動停止再始動制御処理を表すフローチャートである。尚、本フローチャートに表れない他の条件等を追加設定してもよい。
ステップS101では、車速、マスタシリンダ圧、基準となるアイドリングストップ許可上限・下限値及びコーストストップ許可上限・下限値の読み込みを行う。車速は車輪速センサ14により検出された各車輪速の平均値でもよいし、従動輪車輪速の平均値でもよく、特に限定しない。アイドリングストップ許可上限値及びコーストストップ許可上限値については、システム内に予め設定された値であり、実施例1の場合は、固定値とする。アイドリングストップ許可下限値はコーストストップ許可下限値よりも大きな値に設定されている。これは、アイドリングストップが行われる状態は車両停止状態であり、この状態でエンジン始動をすると、クリープトルクが出力されるが、ブレーキによる制動力が低い状態では、このクリープトルクによって不用意に車両が移動するおそれがあるからである。また、コーストストップが行われる状態は車両減速中(すなわち走行中)であり、この状態では極力エンジン停止を行うことで燃費を改善することが狙いであり、仮に車両停止前にエンジンが再始動したとしても、走行中であればクリープトルクによる飛び出し感を運転者が感じにくいことによる。
【0021】
ステップS102では、車速が車両停止状態を表す所定値VSP1以下か否かを判断し、VSP1以下のときはステップS103へ進み、それ以外のときはステップS104へ進む。ここで所定値VSP1はゼロでもよいし、1〜2km/h程度の極低車速領域であってもよく、ほぼ車両停止と判断できる値であればよい。
【0022】
ステップS103では、アイドリングストップ制御を許可するブレーキペダル操作量の範囲の上限または下限である、アイドリングストップ許可上限値・下限値の設定をする。実施例1の場合、アイドリングストップ許可上限値は固定値であるため、ステップS101で読み込まれた値をそのまま使用する。一方、アイドリングストップ許可下限値は補正処理を実行する。図4は実施例1の勾配補正量設定マップである。検出された路面勾配に応じて勾配補正量ΔP1を読み込み、これを下限値に加算することで、補正後のアイドリングストップ許可下限値を設定する。尚、このマップはコーストストップ許可下限値の補正処理と共用しており、アイドリングストップ許可下限値とコーストストップ許可下限値とは補正によって平行にオフセットするものであり、詳細については後述する。また、後述する車両重量に基づいて更に補正してもよい。
【0023】
ステップS104では、コーストストップ制御を許可するブレーキペダル操作量の範囲の上限または下限である、コーストストップ許可上限値・下限値の設定をする。実施例1の場合、コーストストップ許可上限値は固定値であるため、ステップS101で読み込まれた値をそのまま使用する。一方、コーストストップ許可下限値は補正処理を実行する。尚、コーストストップ許可下限値設定処理については後述する。
【0024】
ステップS105では、マスタシリンダ圧が上記上限値及び下限値の範囲内か否かを判断し、範囲内と判断したときはステップS106に進んでエンジン自動停止を行う。一方、範囲外と判断したときはステップS107に進み、エンジン停止か否かを判断する。エンジン停止状態であればステップS108に進んでエンジン再始動を行い、エンジン作動状態であればそのままエンジン作動状態を継続する。
【0025】
(コーストストップ許可下限値の設定処理)
次に、上述したコーストストップ許可下限値の設定処理について説明する。図3は実施例1のコーストストップ許可下限値設定処理を表すフローチャートである。
ステップS201では、路面勾配検出部10aにより路面勾配を検出する。
ステップS202では、車両重量検出部10bにより車両重量を検出する。
ステップS203では、路面μ検出部10cにより路面μを検出する。
【0026】
ステップS204では、図4の勾配補正量マップに基づいて勾配補正量ΔP1を算出する(閾値設定手段に相当)。図4は実施例1の勾配補正量マップである。具体的には、検出された勾配の絶対値が大きいほど、勾配補正量ΔP1も大きくする。例えば、上り勾配において、低いマスタシリンダ圧でもコーストストップを許可するようにしてしまうと、運転者が車両停止付近で走行継続を意図し、ブレーキペダルを緩めた場合、エンジン再始動タイミングが遅れてしまい、上り勾配であることから車両がロールバックするおそれがあるからである。
【0027】
一方、下り勾配において、低いマスタシリンダ圧でもコーストストップを許可するようにしてしまうと、運転者が車両停止付近で走行継続を意図し、ブレーキペダルを緩めた場合、エンジン再始動タイミングが遅れてしまい、ブレーキ制動力も低い状態であることから車両移動が生じやすく、なおかつ、下り勾配であることから、エンジン再始動時におけるクリープトルクによって飛び出し感を与えるおそれがあるからである。
【0028】
また、上り勾配のときは、下り勾配のときよりΔP1を大きく設定している。これは、運転者が意図しない方向への移動、すなわちロールバックを回避することが重要であるからである。すなわち、下り勾配では積極的にコーストストップを行うことで、燃費を改善し、上り勾配ではロールバックを回避した上でコーストストップを行うためである。
【0029】
ステップS205では、図5の車両重量マップに基づいて車両重量補正量ΔP2を算出する。具体的には、検出された車両重量が重いほど、車両重量補正量ΔP2も大きくする。例えば、平坦路において、低いマスタシリンダ圧でもコーストストップを許可するようにしてしまうと、運転者が車両停止付近で走行継続を意図し、ブレーキペダルを緩めた場合、エンジン再始動タイミングが遅れてしまい、車両重量が大きいことから車両のイナーシャが大きく、車両発進時の応答性を確保できないおそれがあるからである。また、上り勾配においては、車両重量が重いと、それだけロールバックするおそれが高くなり、下り勾配においては、車両重量が重いと、それだけ意図しない発進を招くおそれが高くなるからである。
【0030】
ステップS206では、図6の路面μマップに基づいて路面μ補正量ΔP3を算出する。具体的には、検出された路面μが低いほど、路面μ補正量ΔP3を大きくする。特に、路面が凍結するおそれが高い領域(例えば、外気温が4℃よりも低い状態)では、路面μが一気に低下するおそれがあることから、一気に路面μ補正量ΔP3を大きくする。これにより、路面μの低下によってABS制御等が行われる可能性が高いときは、運転者がブレーキペダルを強く踏み込んだとしてもコーストストップ許可下限値が高いため、実質的にコーストストップを禁止するものである。
【0031】
ステップS207では、図7の車速マップに基づいて車速補正量ΔP4を算出する。具体的には、検出された車速が低いほど、車速補正量ΔP4を大きくする。すなわち、車速がある程度高い状態では、極力コーストストップを許可することによって燃費を改善し、車両が停止状態近くになっているときには、運転者の再発進意図を素早く検知することで上り勾配にあってはロールバックを回避し、下り坂にあっては飛び出し感を抑制するものである。
【0032】
ステップS208では、上記勾配補正量ΔP1,車両重量補正量ΔP2,路面μ補正量ΔP3及び車速補正量ΔP4に基づいて最終的なコーストストップ許可下限値を算出する。具体的には、これら補正量を加算してもよいし、適当なゲインを設定して掛け合わせてもよい。図8は実施例1のアイドリングストップ許可下限値とコーストストップ許可下限値との関係を表す図である。アイドリングストップ許可下限値は、勾配が大きくなるほど大きく設定され、また、車両重量に応じて設定した場合には、車両重量が重くなるほど大きく設定される。一方、コーストストップ許可下限値は、アイドリングストップ許可下限値よりも小さな値であり、勾配が大きくなるほど大きく設定され、また、車両重量が大きくなるほど大きく設定され、車速が低いほど大きく設定される。
【0033】
〔上り勾配における作用〕
次に、上記制御処理に基づく作用について説明する。図9は実施例1の上り勾配走行時におけるコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。図9中、点線は勾配に応じた補正を行う前の状態を表し、実線は勾配に応じた補正を行った後の状態を表す。このタイムチャートの最初の時刻における走行状態である前提条件は、上り勾配路面を走行中に、運転者がアクセルペダルから足を放し、コースト走行状態を行っているものとする。
【0034】
(勾配補正なしの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t11において、マスタシリンダ圧が補正前コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t44において、マスタシリンダ圧が十分に低下し、補正前コーストストップ許可下限値を下回ると、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎているため、車両を停止させる力が不十分となり、ロールバックが生じる。また、エンジン再始動タイミングが遅いため、駆動輪にトルクが伝わるタイミングも遅れてしまう。
【0035】
(勾配補正ありの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t2において、マスタシリンダ圧が補正後コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t4において、マスタシリンダ圧が僅かに低下すると、補正後コーストストップ許可下限値を下回り、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎていないため、車両を停止させる力を確保することができ、ロールバックを回避できる。また、エンジン再始動タイミングが早いため、駆動輪にトルクが伝わるタイミングも早めることができ、運転者の意図に沿った走行状態を達成できる。
【0036】
〔下り勾配における作用〕
図10は実施例1の下り勾配走行時におけるコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。図10中、点線は勾配に応じた補正を行う前の状態を表し、実線は勾配に応じた補正を行った後の状態を表す。このタイムチャートの最初の時刻における走行状態である前提条件は、下り勾配路面を走行中に、運転者がアクセルペダルから足を放し、コースト走行状態を行っているものとする。
【0037】
(勾配補正なしの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t11において、マスタシリンダ圧が補正前コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t44において、マスタシリンダ圧が十分に低下し、補正前コーストストップ許可下限値を下回ると、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎているため、車両を停止させる力が不十分となり、エンジン再始動に伴う飛び出し感が生じる。
【0038】
(勾配補正ありの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t2において、マスタシリンダ圧が補正後コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t4において、マスタシリンダ圧が僅かに低下すると、補正後コーストストップ許可下限値を下回り、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎていないため、車両を停止させる力を確保することができ、エンジン再始動に伴う飛び出し感を回避できる。
【0039】
〔上り勾配における車両重量増加時の作用〕
図11は実施例1の上り勾配走行時において車両重量が増加した場合のコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。図11中、点線は勾配及び車両重量に応じた補正を行う前の状態を表し、実線は勾配及び車両重量に応じた補正を行った後の状態を表す。このタイムチャートの最初の時刻における走行状態である前提条件は、乗員や車載荷物が多数で上り勾配路面を走行中に、運転者がアクセルペダルから足を放し、コースト走行状態を行っているものとする。
【0040】
(勾配補正なしの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t11において、マスタシリンダ圧が補正前コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t44において、マスタシリンダ圧が十分に低下し、補正前コーストストップ許可下限値を下回ると、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎているため、車両を停止させる力が不十分となり、特に車両重量が増加していることから、より後方に移動する力が強くなり、ロールバックが生じる。また、エンジン再始動タイミングが遅いため、駆動輪にトルクが伝わるタイミングも遅れてしまう。
【0041】
(勾配補正ありの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t2において、マスタシリンダ圧が補正後コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t4において、マスタシリンダ圧が僅かに低下すると、補正後コーストストップ許可下限値を下回り、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎていない(すなわち車両重量に応じてコーストストップ許可下限値が高めに設定されている)ため、車両を停止させる力を確保することができ、車両重量が重い場合であってもロールバックを回避できる。また、エンジン再始動タイミングが早いため、駆動輪にトルクが伝わるタイミングも早めることができ、運転者に意図に沿った走行状態を達成できる。
【0042】
〔下り勾配における作用〕
図12は実施例1の下り勾配走行時に車両重量が増加した場合のコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。図12中、点線は勾配及び車両重量に応じた補正を行う前の状態を表し、実線は勾配及び車両重量に応じた補正を行った後の状態を表す。このタイムチャートの最初の時刻における走行状態である前提条件は、乗員や車載荷物が多数で下り勾配路面を走行中に、運転者がアクセルペダルから足を放し、コースト走行状態を行っているものとする。
【0043】
(勾配補正なしの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t11において、マスタシリンダ圧が補正前コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t44において、マスタシリンダ圧が十分に低下し、補正前コーストストップ許可下限値を下回ると、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎているため、車両を停止させる力が不十分となり、特に車両重量が増加していることから、より前方に移動する力が強くなり、エンジン再始動に伴う飛び出し感が生じる。
【0044】
(勾配補正ありの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t2において、マスタシリンダ圧が補正後コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t4において、マスタシリンダ圧が僅かに低下すると、補正後コーストストップ許可下限値を下回り、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎていない(すなわち車両重量に応じてコーストストップ許可下限値が高めに設定されている)ため、車両を停止させる力を確保することができ、車両重量が重い場合であってもエンジン再始動に伴う飛び出し感を回避できる。
【0045】
〔低μ路における作用〕
図13は実施例1の低μ路走行時におけるコーストストップ許可下限値の設定処理を表すタイムチャートである。図13中、点線は路面μに応じた補正を行う前の状態を表し、実線は路面μに応じた補正を行った後の状態を表す。このタイムチャートの最初の時刻における走行状態である前提条件は、低μ路を走行中に、運転者がアクセルペダルから足を放し、コースト走行状態を行っているものとする。
【0046】
(路面μ補正なしの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t2において、マスタシリンダ圧が補正前コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。このとき、低μ路面であることから、ABS制御が開始すると、ABS制御側においてロック傾向にある車輪のホイルシリンダ圧を減圧・保持・増圧し、最適な制動力及びコーナリングフォースが得られるように制御する。このとき、ABS制御側ではエンジン側からトルクが作用している前提で各種制御ゲイン等を設定しているため、このエンジントルクが無い状態では、適切なABS制御を実行できず(例えば車輪速を減圧・保持によって復帰させるタイミングがずれる等)、結果として、車速が十分に低下できないことから、停止状態に移行するまでの距離が長くなり、安全上好ましくない。
【0047】
エンジンを停止した後の時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t31においてマスタシリンダ圧が補正前コーストストップ許可下限値を下回ると、エンジン再始動を行う。このとき、低μ路のためエンジン再始動に伴うトルク変動によって駆動輪と路面との間にスリップが生じ、十分なトラクションを伝達できないことから車速が上昇しない停滞状態となる。また、スリップ量が多い場合には、エンジントルクを抑制するトラクションコントロールシステム等が作動するおそれもあり、やはり停滞状態となる。そして、時刻t5において完全にブレーキペダルが解放された後、時刻t6において、やっと車速が発生し始めることになり、エンジン再始動による発進時の応答性低下も懸念される。
【0048】
(路面μ補正ありの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
基本的に低μ路時にはコーストストップ許可下限値が高い値に補正されているため、この場合には、マスタシリンダ圧が補正後コーストストップ許可下限値を超えることがなく、コーストストップは行われない。このとき、低μ路面であることから、ABS制御が開始すると、ABS制御側においてロック傾向にある車輪のホイルシリンダ圧を減圧・保持・増圧し、最適な制動力及びコーナリングフォースが得られるように制御する。ABS制御側ではエンジン側からトルクが作用している前提で各種制御ゲイン等を設定しているため、停止状態に移行するまでの距離が長くなることがなく、また、車両挙動も安定させることができ、安全上好ましい。
【0049】
また、エンジンアイドリング状態が継続しているため、時刻t3において運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始めると、時刻t4においてブレーキ力よりもエンジン側から伝達されるトルクがスムーズに上回り始めることで発進し始める。すなわち、路面μ補正なしの場合に比べて良好な応答性により発進することができる。
【0050】
〔上り勾配における車速補正時の作用〕
図14は実施例1の上り勾配走行時において車速に応じて補正した場合のコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。図14中、点線は車速に応じた補正を行う前の状態を表し、実線は車速に応じた補正を行った後の状態を表す。このタイムチャートの最初の時刻における走行状態である前提条件は、上り勾配路面を走行中に、運転者がアクセルペダルから足を放し、コースト走行状態を行っているものとする。
【0051】
(勾配補正なしの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t22において、マスタシリンダ圧が補正前コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t44において、マスタシリンダ圧が十分に低下し、補正前コーストストップ許可下限値を下回ると、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎているため、車両を停止させる力が不十分となり、ロールバックが生じる。また、エンジン再始動タイミングが遅いため、駆動輪にトルクが伝わるタイミングも遅れてしまう。
【0052】
(勾配補正ありの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t2において、マスタシリンダ圧が補正後コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。このとき、車速が高いときは車速補正量が小さく設定されているため、比較的低いマスタシリンダ圧でもコーストストップ許可下限値を超えるため、早めにコーストストップを開始することができ、燃費を改善できる。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t4において、マスタシリンダ圧が僅かに低下すると、補正後コーストストップ許可下限値を下回り、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎていない(すなわち車速に応じてコーストストップ許可下限値が高めに設定されている)ため、車両を停止させる力を確保することができ、ロールバックを回避できる。また、エンジン再始動タイミングが早いため、駆動輪にトルクが伝わるタイミングも早めることができ、運転者に意図に沿った走行状態を達成できる。
【0053】
〔下り勾配における車速補正時の作用〕
図15は実施例1の下り勾配走行時において車速に応じて補正した場合のコーストストップ許可下限値の設定処理の作用を表すタイムチャートである。図15中、点線は車速に応じた補正を行う前の状態を表し、実線は車速に応じた補正を行った後の状態を表す。このタイムチャートの最初の時刻における走行状態である前提条件は、下り勾配路面を走行中に、運転者がアクセルペダルから足を放し、コースト走行状態を行っているものとする。
【0054】
(勾配補正なしの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t11において、マスタシリンダ圧が補正前コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t44において、マスタシリンダ圧が十分に低下し、補正前コーストストップ許可下限値を下回ると、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎているため、車両を停止させる力が不十分となり、より前方に移動する力が強くなり、エンジン再始動に伴う飛び出し感が生じる。
【0055】
(勾配補正ありの場合)
時刻t1において、運転者がブレーキペダルを踏み込み始めると、減速を開始する。
時刻t2において、マスタシリンダ圧が補正後コーストストップ許可下限値を超えると、コーストストップを開始するためエンジン回転数は停止に向けて低下し始める。このとき、車速が高いときは車速補正量が小さく設定されているため、比較的低いマスタシリンダ圧でもコーストストップ許可下限値を超えるため、早めにコーストストップを開始することができ、燃費を改善できる。
時刻t3において、運転者がブレーキペダルの踏み込みを緩め始める。そして、時刻t4において、マスタシリンダ圧が僅かに低下すると、補正後コーストストップ許可下限値を下回り、コーストストップを終了してエンジン再始動を行う。このとき、マスタシリンダ圧が低下しすぎていない(すなわち車速に応じてコーストストップ許可下限値が高めに設定されている)ため、車両を停止させる力を確保することができ、エンジン再始動に伴う飛び出し感を回避できる。
【0056】
以上説明したように、実施例1にあっては下記の作用効果を得ることができる。
(1)走行中に運転者がブレーキペダルをコーストストップ許可下限値(所定の閾値)以上操作したときは、エンジンを停止するステップS106(コーストストップ制御手段)と、路面ミュー(路面摩擦係数)を検出する路面摩擦係数検出部10c(路面摩擦係数検出手段)と、検出された路面摩擦係数が小さいほどコーストストップ許可下限値を大きくするステップS206(閾値設定手段)と、を備えた。
よって、低μ路面ではコーストストップ制御が行われにくくなり、エンジン再始動に伴うトルク変動を回避することで、運転性の向上を図ることができる。
【0057】
(2)車輪のロックを回避するABS(アンチロックブレーキシステム)を有し、ステップS206(閾値設定手段)は、ABSの作動より前にコーストストップ制御によるエンジン停止を行なわないようにコーストストップ許可下限値を大きくすることとした。言い換えると、低μ路であってABSが作動する可能性がある場合にはコーストストップ制御を禁止することとした。
よって、ABS制御時に駆動輪にエンジン側からトルクが作用している状態を維持でき、停止状態に移行するまでの距離が長くなることがなく、また、車両挙動も安定させることができる。
【0058】
(3)路面摩擦係数検出部10c(路面摩擦係数検出手段)は、外気温を検出し、外気温画所定温度以下のときは路面摩擦係数を小さな値として検出することとした。
すなわち、外気温が例えば4℃以下のときは、凍結路面の可能性が高いため、路面摩擦係数が小さいと判断でき、簡易な構成で路面摩擦係数を検出することができる。
【実施例2】
【0059】
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点についてのみ説明する。図16は実施例2の勾配補正量マップである。実施例1では、上り勾配のときは、下り勾配のときより勾配補正量ΔP1を大きくした。これに対し、実施例2では、上り勾配のときは、下り勾配のときより勾配補正量ΔP1を小さくしたものである。すなわち、下り勾配では、車両には常に車両前方に車両重量に基づく推進力が作用するため、緩やかなブレーキペダル操作でコーストストップを行うと、運転者がブレーキペダルを更に緩めて再度加速しようとした場合、エンジン際始動に伴って駆動輪に不要なトルクが出力され、また、制動力も小さいことから飛び出し感を生じるおそれがある。そこで、実施例2では、下り勾配時にはコーストストップに入りにくくすることで、エンジン再始動時における飛び出し感を抑制するものである。
【0060】
以上、本願発明を実施例1,2に基づいて説明してきたが、上記実施例に限らず、他の構成であっても本願発明に含まれる。例えば、実施例1,2では、ベルト式無段変速機を採用した例を示したが、他の有段式自動変速機や手動変速機等を備えた構成であってもよい。また、トルクコンバータを備えた例を示したが、トルクコンバータを備えていない車両であっても適用できる。
【0061】
また、各種補正量をマップから求めた例を示したが、演算等によって求めても良いし、補正量を算出するにあたり、ある補正量のマップ勾配を他の補正量に基づいて補正する構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0062】
1 エンジン
1a 始動装置
2 トルクコンバータ
3 ベルト式無段変速機
3a 電動オイルポンプ
4 駆動輪
10 エンジンコントロールユニット
10a 路面勾配検出部
10b 車両重量検出部
10c 路面μ検出部
11 ブレーキスイッチ
12 アクセルペダル開度センサ
13 マスタシリンダ圧センサ
14 車輪速センサ
15 外気温センサ
20 コントロールユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16