特許第5834610号(P5834610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5834610セラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834610
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】セラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/10 20060101AFI20151203BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20151203BHJP
   C22C 21/02 20060101ALI20151203BHJP
   C22C 32/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   C22C1/10 G
   C22C21/00 E
   C22C21/02
   C22C32/00 R
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-173574(P2011-173574)
(22)【出願日】2011年8月9日
(65)【公開番号】特開2013-36088(P2013-36088A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 建興
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010-042418(JP,A)
【文献】 特開2010-043297(JP,A)
【文献】 特開2008-285739(JP,A)
【文献】 特表2009-507137(JP,A)
【文献】 特開2002-146451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素を含まない亜共晶アルミニウム合金の溶湯にセラミックス粒子を添加し、該セラミックス粒子を溶湯中に均一に分散させた後、ケイ素を添加することによりセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料を製造するセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法。
【請求項2】
前記亜共晶アルミニウム合金は、アルミニウム−ニッケル、アルミニウム−銅、アルミニウム−マグネシウムのいずれかの二元亜共晶アルミニウム合金、又は、ニッケル、マグネシウム、銅のいずれかを含む三元以上の亜共晶アルミニウム合金であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法。
【請求項3】
前記亜共晶アルミニウム合金に、ニッケル、マグネシウム、カルシウムと銅の少なくとも一つの元素を添加し、前記亜共晶アルミニウム合金中のニッケル、マグネシウム、カルシウム又は銅の濃度を高めて、前記セラミックス粒子と前記亜共晶アルミニウム合金の濡れ性を改善することを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記セラミックス粒子を、酸化アルミニウム、スピネル、炭化ケイ素、炭化ホウ素のいずれかの粒子とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記セラミックス粒子を分散させたアルミニウム−ケイ素系アルミニウム合金の溶湯に、更に、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、鉄、チタン、バナジウム、ジルコニウム、アンチモン、ストロンチウム、リン、又は、これらの成分を有するアルミニウム合金を添加して、アルミニウム−ケイ素系合金の組成を調整することによりセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料を製造することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記アルミニウム−ケイ素系合金は、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、鉄、チタン、バナジウム、ジルコニウム、アンチモン、ストロンチウム、リンのいずれかの元素を含むアルミニウム−ケイ素系合金であり、ケイ素の添加量を調節することにより、アルミニウム−ケイ素系合金を亜共晶、共晶、または過共晶にすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジン用ピストンにおいては、従来技術ではJIS規格のAC8Aのようなアルミニウム(A1)−ケイ素(Si)系合金が使われてきた。このAC8A合金の組成は、JIS規格では、ケイ素(Si)は11〜13mass(質量)%、マグネシウム(Mg)は0.7〜1.3mass%、ニッケル(Ni)は0.8〜1.5mass%、銅(Cu)は0.8〜1.3mass%と定められている。
【0003】
そして、内燃機関の燃焼室の温度の上昇に従い、ピストン材料の強度と耐熱性の向上が求められた結果、このAC8A合金の組成を基に、銅とニッケルを多めに添加して、銅の添加量を3〜5mass%に、ニッケルの添加量を1〜3mass%にした材料(便宜上、ここではAC8A系合金と呼ぶ)が広く使われるようになってきている。
【0004】
しかしながら、最近の燃費改善の要求や排ガスの規制により、エンジンの最大圧力Pmaxが増大するのに従い、更に高強度の性質を持つアルミニウム合金が求められてきている。しかしながら、アルミニウム合金の耐熱性と強度はその限界に達している。
【0005】
その一方で、セラミックス粒子強化アルミニウム合金複合材料は、耐熱性、耐摩耗性に優れているため、その製造方法とその応用が広く検討されている。このセラミックス粒子強化アルミニウム合金複合材料の製造方法としては、溶湯アルミニウム合金を攪拌しながら、セラミックス粒子を添加する方法があり、この方法が幾つかの製造方法の中で最も安価で、工業的生産に向いている。
【0006】
しかしながら、溶湯アルミニウム合金とセラミックス粒子の濡れ性が良くないため、攪拌混合法で溶湯アルミニウム合金にセラミックス粒子を直接混ぜると、セラミックス粒子の凝集が生じ、セラミックス粒子が均等に分散しないため、作製された複合材料の機械的特性が劣化してしまうという問題がある。
【0007】
この対策として、セラミックス粒子とアルミニウム合金との間の濡れ性を改善させるため、セラミックス粒子の表面に銅(Cu)、ニッケル(Ni)をコーティングする方法があるが、セラミックス粒子表面へのコーティングは容易ではないため、コスト的に非常に高くなるという問題がある。また、アルミニウム合金にマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)を添加する方法がある。この方法の場合には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)の添加量がアルミニウム合金の組成の範囲であれば、問題がないが、添加量が合金の組成以上になると、アルミニウム合金の靭性が悪くなる可能性があるという問題がある。
【0008】
このように、アルミニウム合金の強度と耐熱性を向上させるためには、セラミックス粒子複合は一つの有効な手段であるので、特に、ナノオーダーからサブミクロンのセラミックス粒子のアルミニウム合金への複合技術の開発が望まれている。しかし、従来の製造方法では、粒径ミクロンオーダーやナノオーダーの粒子のアルミニウム合金への複合化は非常に困難であるため、新たな粒子分散法の開発が望まれている。
【0009】
なお、この混合法に関連して、本発明者は、金属溶融中にセラミックス粒子を添加して混合する際に、ホモジナイザーを用いてセラミックス粒子を溶湯中に分散させることで、セラミックス粒子を均一に分散できる粒子強化金属複合材料の製造方法を提案している(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
また、セラミックス粒子と、金属粒子とを予混合して混合粒子を作製した後、撹拌法でその混合粒子を溶湯アルミニウムまたは溶湯アルミニウム合金に分散させるセラミックス粒子強化アルミニウム複合材料の製造方法も提案している(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−31292号公報
【特許文献2】特開2010−43297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、セラミックス粒子とアルミニウム合金との間の濡れ性を改善できて、セラミックス粒子の分散性を向上させることができるセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するためのセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法は、ケイ素を含まない亜共晶アルミニウム合金の溶湯にセラミックス粒子を添加し、該セラミックス粒子を溶湯中に均一に分散させた後、ケイ素を添加することによりセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料を製造する方法である。
【0014】
この製造方法によれば、セラミックス粒子とアルミニウム合金との濡れ性を改善させるため、まず、ケイ素(Si)を含まない亜共晶のアルミニウム合金にセラミックス粒子を添加し、その後、ケイ素を添加して、アルミニウム合金の組成をアルミニウム−ケイ素系合金にする。
【0015】
この方法によれば、ケイ素を含まない亜共晶アルミニウム合金とセラミックス粒子との濡れ性が良いので、セラミックス粒子を均一に分散できる。また、ケイ素の添加量を調節することにより、アルミニウム−ケイ素系合金を亜共晶、共晶、または過共晶にすることができる。なお、このケイ素を含まない亜共晶アルミニウム合金とは、完全にケイ素が無い状態だけでなく、コンタミネーション程度の不純物としてのケイ素が含まれている合金であってもよい。また、この「亜共晶」は、冷却の過程で一つの融液から二つ以上の固相が密に混合した組織への変化の反応で生じた「共晶」よりも合金元素濃度が少ない場合を言い、「過共晶」は「共晶」よりも合金元素濃度が多い場合を言う。
【0016】
また、上記のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法において、前記亜共晶アルミニウム合金は、アルミニウム−ニッケル、アルミニウム−銅、アルミニウム−マグネシウムのいずれかの二元亜共晶アルミニウム合金、又は、ニッケル、マグネシウム、銅のいずれかを含む三元以上の亜共晶アルミニウム合金である。
【0017】
また、上記のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法において、前記亜共晶アルミニウム合金に、ニッケル、マグネシウム、カルシウムと銅の少なくとも一つの元素を添加し、前記亜共晶アルミニウム合金中のニッケル、マグネシウム、カルシウム又は銅の濃度を高めて、前記セラミックス粒子と前記亜共晶アルミニウム合金の濡れ性を改善する。
【0018】
つまり、アルミニウム(Al)−ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)−銅(Cu)、アルミニウム(Al)−マグネシウム(Mg)などの亜共晶アルミニウム合金に、更に、銅、ニッケル、マグネシウムなどの金属を添加し、亜共晶アルミニウム合金中の銅、ニッケル、マグネシウムの濃度を高めることにより、セラミックス粒子とアルミニウム合金間の濡れ性を改善し、セラミックス粒子の分散性を向上させる。
【0019】
更に、上記のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法において、前記セラミックス粒子を、酸化アルミニウム(アルミナ:A123)、スピネル(MgA124)、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)のいずれかの粒子とする。
【0020】
また、上記のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法において、前記セラミックス粒子を分散させたアルミニウム−ケイ素系アルミニウム合金の溶湯に、更に、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、アンチモン(Sb)、ストロンチウム(Sr)、リン(P)、又は、これらの成分を有するアルミニウム合金を添加して、アルミニウム−ケイ素系合金の組成を調整する。
【0021】
また、上記のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法において、前記アルミニウム−ケイ素系合金は、ニッケル、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、鉄、チタン、バナジウム、ジルコニウム、アンチモン、ストロンチウム、リンのいずれかの元素を含むアルミニウム−ケイ素系合金であり、ケイ素の添加量を調節することにより、アルミニウム−ケイ素系合金を亜共晶、共晶、または過共晶にする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法によれば、セラミックス粒子とアルミニウム合金との間の濡れ性を改善できて、セラミックス粒子の分散性を向上させることができる。
【0023】
また、ケイ素を含まないアルミニウム亜共晶合金に、銅、マグネシウム、ニッケル、カルシウムのいずれかを添加し、セラミックス粒子とアルミニウム合金との間の濡れ性を改善することにより、容易にセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系アルミニウム合金複合材料を作製することができる。
【0024】
また、この製造方法により作製されたセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系アルミニウム合金複合材料は、微細なセラミックス粒子により強化されているため、強度、耐摩耗性、高温特性が改善されており、高強度軽量化部材として自動車産業等で使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法について説明する。
【0026】
本発明に係る実施の形態のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法は、セラミックス粒子とアルミニウム合金間の濡れ性を改善させるため、まず、ケイ素(Si)を含まない亜共晶のアルミニウム合金(A1合金)にセラミックス粒子を添加し、その後、ケイ素を添加して、アルミニウム合金の組成をアルミニウム−ケイ素系合金(A1−Si系合金)にする製造方法である。
【0027】
ケイ素を含まない亜共晶アルミニウム合金は、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、アンチモン(Sb)、ストロンチウム(Sr)、リン(P)などの元素を含む合金である。なお、このケイ素を含まない亜共晶アルミニウム合金とは、完全にケイ素が無い状態だけでなく、コンタミネーション程度の不純物としてのケイ素が含まれている合金であってもよい。
【0028】
このケイ素を含まない亜共晶アルミニウム合金においては、液相線と固相線の間に液相と固相が共存する領域があり、溶解したアルミニウム合金をその温度範囲に冷却すると、まず、初晶としてα−アルミニウム(α−Al)が析出する。そして、溶湯アルミニウムの温度が低くなるにつれ、初晶α−アルミニウムが増え、液相の量が減る。半凝固の温度範囲では、液相の成分は共晶で、初晶α−アルミニウムの析出につれ、共晶液中の合成成分の濃度が相対的に高くなる。
【0029】
また、ケイ素を含まない、アルミニウム−銅(A1−Cu)、アルミニウム−ニッケル(A1−Ni)、アルミニウム−マグネシウム(A1−Mg)などの亜共晶アルミニウム合金、または、ニッケル、マグネシウム、銅を含む三元以上の亜共晶アルミニウム合金に、銅、ニッケル、マグネシウム、カルシウム(Ca)などを添加することで、亜共晶アルミニウム合金中の銅、ニッケル、マグネシウム、カルシウムなどの濃度を高めることにより、セラミックス粒子とアルミニウム合金間の濡れ性を改善できるので、セラミックス粒子の分散性が向上する。
【0030】
また、セラミックス粒子を分散させた亜共晶アルミニウム合金に更にケイ素を添加すると、アルミニウム合金は、アルミニウム−ケイ素系合金(A1−Si系合金)になる。更に、ケイ素の添加量を調節することにより、亜共晶、共晶、過共晶アルミニウム−ケイ素系合金(A1−Si系合金)複合材料が得られる。
【0031】
一方、アルミニウム−銅、アルミニウム−ニッケル、アルミニウム−マグネシウムなどの亜共晶アルミニウム合金、または、ニッケル、マグネシウム、銅を含む三元以上の亜共晶アルミニウム合金に、銅、ニッケル、マグネシウム、カルシウムなどを添加し、亜共晶アルミニウム合金中の銅、ニッケル、マグネシウム、カルシウムなどの濃度を高めて粒子の分散性を改善させた後、ケイ素を添加するとともに、アルミニウムを添加すると、銅、ニッケル、マグネシウム、カルシウムなどの濃度を希釈して、所定の濃度にすることができる。
【0032】
本発明で作製されるアルミニウム−ケイ素系合金の主要な成分は、アルミニウム−ケイ素であるが、必要に応じて、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、ボロン(B)、バナジウム(V)、マンガン(Mn)、ストロンチウム(Sr)、アンチモン(Sb)、ジルコニウム(Zr)、リン(P)などの合金元素を添加してもよい。これらの元素またはアルミニウムとの合金を溶湯アルミニウム合金に添加するタイミングは、セラミックス粒子を添加する前でもよいが、セラミックス粒子を添加した後でもよい。また、ケイ素を添加すると同時に添加してもよい。
【0033】
セラミックス粒子の濡れ性を改善するためは、ニッケル、マグネシウム、銅、カルシウムの添加量が多ければ多いほどよいが、添加量が多すぎると、合金の融点が下がるため、耐熱性に対して悪い影響が生じる。また、カルシウム、マグネシウムの量が多すぎると、合金が脆くなる傾向があるので、適切な量にすることが必要となる。
【0034】
自動車エンジン用ピストンにおいては、従来はJIS規格のAC8Aのようなアルミニウム−ケイ素系合金が使われている。このAC8A合金の組成は、JIS規格では、ケイ素が11〜13mass(質量)%、マグネシウムが0.7〜1.3mass%、ニッケルが0.8〜1.5mass%、銅が0.8〜1.3mass%と定めている。
【0035】
燃焼室の温度の向上に従い、ピストン材料の強度と耐熱性が求められており、銅とニッケルを多めに添加して改良したAC8A系合金(Cuの添加量は3−5mass%、Niの添加量は1−3mass%になり、便宜上、ここではAC8A系合金と呼ぶ)が広く使われている。本発明では、粒子の濡れ性を改善させるために、ニッケル、銅を用いるので、改良されたAC8A系合金を容易に得ることができる。
【0036】
また、使用するセラミックス粒子としては、酸化アルミニウム( アルミナ:A123)粒子、スピネル(MgA124)粒子、炭化ケイ素(SiC)粒子、炭化ホウ素(B4C)粒子などのセラミックス粒子を用いるが、他のセラミックス粒子を使用することもできる。
【0037】
上記のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法によれば、セラミックス粒子とアルミニウム合金との間の濡れ性を改善できて、セラミックス粒子の分散性を向上させることができる。
【0038】
また、ケイ素を含まないアルミニウム亜共晶合金に、銅、マグネシウム、ニッケル、カルシウムのいずれかを添加し、セラミックス粒子とアルミニウム合金との間の濡れ性を改善することにより、サブミクロンオーダーのセラミックス粒子でも容易にアルミニウム−ケイ素系合金に分散させることができ、優れた性能を持つセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系アルミニウム合金複合材料を容易に作製することができる。
【0039】
また、この製造方法により作製されたセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系アルミニウム合金複合材料は、微細なセラミックス粒子により強化されているため、強度、耐摩耗性、高温特性が改善されており、高強度軽量化部材として自動車産業等で使用できる。
【実施例】
【0040】
次に、上記の製造方法を用いた実施例1,2について説明する。実施例1では、750℃でアルミニウム−銅(4mass(質量)%)合金を溶かし、最終的にアルミニウム−ケイ素系合金の成分が、アルミニウム−銅(4mass%)−ニッケル(2mass%)−ケイ素(11mass%)−マグネシウム(0.8mass%)になるようニッケル、マグネシウムと銅を添加した後、溶湯亜共晶アルミニウム合金を、液相と固相が共存できる半凝固の温度範囲に冷却し、攪拌しながら、粒径10μmの炭化ケイ素粒子を8mass%になるように添加した。
【0041】
粒子を均一に分散させた後、溶湯アルミニウム合金を再び750℃に加熱し、アルミニウム−ケイ素系合金の成分をアルミニウム−銅(4mass%)−ニッケル(2mass%)−ケイ素(11mass%)−マグネシウム(0.8mass%)になるようにケイ素を添加した。その後、炭化ケイ素粒子を含んだ溶湯アルミニウム−ケイ素系合金を鋳込み、JIS規格のT6で熱処理した後、その組織を観察し、また、その引張強度を測定した。
【0042】
光学顕微鏡で観察した結果、炭化ケイ素粒子がアルミニウム合金に均一に分布していることが確認された。炭化ケイ素粒子強化アルミニウム−銅(4mass%)−ニッケル(2mass%)−ケイ素(11mass%)−マグネシウム(0.8mass%)アルミニウム複合材料の引張強度は、425MPaで、アルミニウム−銅(4mass%)−ニッケル(2mass%)−ケイ素(11mass%)−マグネシウム(0.8mass%)合金そのものより約7%高くなった。
【0043】
次に、実施例2について説明する。この実施例2では、750℃でアルミニウム−銅(4mass%)合金を溶かし、最終的にアルミニウム−ケイ素系合金の成分がアルミニウム−銅(4mass%)−ニッケル(2mass%)−ケイ素(11mass%)−マグネシウム(0.8mass%)になるようニッケル、マグネシウムと銅を添加した後、溶湯亜共晶アルミニウム合金を液相と固相が共存できる半凝固の温度範囲に冷却し、攪拌しながら、粒径2μmのスピネル(MgA124)粒子を4mass%になるように添加した。
【0044】
スピネル粒子を均一に分散させた後、溶湯アルミニウム合金を再び750℃に加熱し、アルミニウム−ケイ素系合金の成分がアルミニウム−銅(4mass%)−ニッケル(2mass%)−ケイ素(11mass%)−マグネシウム(0.8mass%)になるようにケイ素を添加した。その後、炭化ケイ素粒子を含んだ溶湯アルミニウム−ケイ素系合金を鋳込み、JIS規格のT6で熱処理した後、その組織を観察し、また、その引張強度を測定した。
【0045】
光学顕微鏡で観察した結果、スピネル粒子がアルミニウム合金に均一に分布していることが確認された。スピネル粒子強化アルミニウム−銅(4mass%)−ニッケル(2mass%)−ケイ素(11mass%)−マグネシウム(0.8mass%)アルミニウム複合材料の引張強度は428MPaで、アルミニウム−銅(4mass%)−ニッケル(2mass%)−ケイ素(11mass%)−マグネシウム(0.8mass%)合金そのものより約7%高くなった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法によれば、セラミックス粒子とアルミニウム合金との間の濡れ性を改善できて、セラミックス粒子の分散性を向上させることができるので、自動車等の内燃機関における高強度軽量化部材として使用できるセラミックス粒子強化アルミニウム−ケイ素系合金複合材料の製造方法として利用できる。