特許第5834616号(P5834616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834616
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 30/30 20060101AFI20151203BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   B29D30/30
   B60C5/14 A
   B60C5/14 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-178848(P2011-178848)
(22)【出願日】2011年8月18日
(65)【公開番号】特開2013-39763(P2013-39763A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峻
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 秀樹
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−167829(JP,A)
【文献】 特開平11−005261(JP,A)
【文献】 特開2009−190448(JP,A)
【文献】 特開2009−241855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/30
B60C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと、該熱可塑性樹脂または該熱可塑性樹脂組成物と加硫接着するゴムを積層した積層体シートの端部をオーバーラップによるラップスプライスした後、タイヤの加硫成形を行うことにより前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートと前記ゴムを加硫接着させる工程を有する空気入りタイヤの製造方法において、前記加硫接着をさせた後、前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートの先端にバフィングをして該シート先端を削る鋭化処理をすることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記先鋭化処理が、前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートの先端から、(t×3)長さ分内側に入った位置での厚さT(mm)が、0.05t≦T≦0.8tを満足する関係を有することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤの製造方法。
ここで、
t:熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの非先鋭化処理部分のタイヤ周方向平均厚さ(mm)
T:熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの先端から、(t×3)長さ分内側に入った位置でのシートの厚さ(mm)
【請求項3】
前記バフィングにより削られる前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるタイヤ周方向のシート長さX(mm)が、タイヤ周方向のラップ長さL(mm)と、下記(a)式を満足する関係にあることを特徴とする請求項1または2記載の空気入りタイヤの製造方法。
X(mm)≦L(mm)………(a)
【請求項4】
前記バフィングにより削られるバフ深さをD(mm)、前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートがオーバーラップしている部分での該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートに挟まれたゴムの厚さをG(mm)、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートの厚さをt(mm)としたとき、それらが下記(b)式を満足する関係にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
D<(G+t)………(b)
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、およびイミド系樹脂の少なくとも一種を含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記エラストマーが、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水添物、含ハロゲンゴム、シリコンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴムおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも一種を含んでなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記積層体シートが1枚もしくは複数枚が用いられ、1枚の場合はその両端部が、複数枚の場合は相互の端部が、ラップスプライスされることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤの製造方法に関する。
【0002】
更に詳しくは、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと、該熱可塑性樹脂または該熱可塑性樹脂組成物と加硫接着するゴムを積層した積層体シートを所定長さで切断し、該積層体シートの端部をスプライスし、さらに加硫成形を経て空気入りタイヤを製造する方法において、該方法により製造された空気入りタイヤが走行を開始した後、前記スプライスされた積層体シートのスプライス部分付近においてクラックが発生することがなく、該積層体シートの持つ特性・性能を、長期間にわたり耐久性良く発揮できる空気入りタイヤの製造方法に関する。
【0003】
該積層体シートは、代表的には、例えば近年の空気入りタイヤにおける重要部材の一つであるインナーライナー層を構成するものである。その場合、本発明は、上記の如き積層体シートから形成されたインナーライナー層を有する空気入りタイヤであって、該空気入りタイヤの走行を開始した後、スプライスされた積層体シート(インナーライナー層)のスプライス部分付近においてクラックが発生することがなく、インナーライナー層の耐久性に優れた空気入りタイヤの製造方法と空気入りタイヤに関するものである。
【0004】
また、該積層体シートは、インナーライナー層以外には、例えば重量増加をさほど伴うことなく、タイヤの軽量化や補強のための部材として、タイヤ内のそれぞれの重要位置で使用されることができる。その場合は、本発明は、上記の如き積層体シートから形成された補強シートを使用した空気入りタイヤの製造方法であって、スプライスされた補強シートのスプライス部分付近においてクラックが発生することがなく、該補強シートの効果を耐久性良く発揮できる空気入りタイヤの製造方法と空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0005】
近年、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート状物を空気入りタイヤのインナーライナーに使用するという提案がされ、検討されている(特許文献1)。
【0006】
この熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート状物を、実際に空気入りタイヤのインナーライナーに使用するにあたっては、通常、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物のシートと、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物のシートと加硫接着されるゴム(タイゴム)シートの積層体シートを、タイヤ成形ドラムに巻き付けてラップスプライスして、タイヤの加硫成形工程に供するという製造手法がとられる。
【0007】
しかし、ロール状の巻き体をなして巻かれた上述の積層体シートを、該ロール状巻き体から所要の長さ分を引き出して切断し、タイヤ成形ドラムに巻き付けて該ドラム上などにおいてラップスプライスし、更に加硫成形をしてタイヤを製造したとき、タイヤ走行開始後にインナーライナーを構成している熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物のシートと、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物のシートと加硫接着されたタイゴムシートとが剥離してしまう場合があった。
【0008】
これを図で説明すると、図2(a)に示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2とタイゴム層3とからなる積層体シート1は、刃物などで所要サイズ(長さ)に切断されて、タイヤ成形ドラム上にて、その両端部にラップスプライス部Sを設けて環状を成すようにしてラップスプライスされる。なお、該積層体シート1は、1枚の使用のときは、その両端部がラップスプライスされて環状を成すように形成され、あるいは複数枚の使用のときは、それら相互の端部同士がラップスプライスされて複数枚で一つの環状を成すように形成されることなどがされる。
【0009】
そして、更にタイヤの製造に必要なパーツ材(図示せず)が巻かれ、ブラダーで加硫成形される。
【0010】
加硫成形後においては、図2(b)にモデル図で示したように、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物のシート2とタイゴム層3からなるインナーライナー層10が形成され、ラップスプライス部S付近では、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2が、露出している部分とタイゴム層の中に埋設している部分が形成されている。
【0011】
そして、上述した熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物のシート2と加硫接着されたタイゴムシート3とが剥離してしまう現象は、特に、図2(b)で示した熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物のシート2が露出していてかつその先端部付近4などにおいて発生し、まずクラックが発生し、それがさらに進んでシート2の剥離現象へと進行していく。
【0012】
上記においては、インナーライナー層として、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2とタイゴム層3とからなる積層体シート1を使用する場合について述べたが、インナーライナー層以外の部材、たとえば、タイヤのサイドウォール部(図示せず)、あるいはインナーライナー層のタイヤ外周側に周方向全体に配した補強シート層(図示せず)などとして使用する場合であっても同様である。特に、上記のような積層シートが補強シート層として配されるようなタイヤの部位は、長期にわたり繰り返して負荷が加えられるというような過酷な条件で使用されることが通常であり、クラックや剥離の発生といった問題を伴うことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−241855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上述したような点に鑑み、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物と加硫接着するゴムを積層した積層体シートの端部をラップスプライス(重なり合う部分を設けて行うスプライス)し、さらに加硫成形を経て、該積層体シートから形成されたインナーライナー層あるいは補強シート層を有する空気入りタイヤを製造する方法において、製造された空気入りタイヤの走行を開始した後、該スプライスされた積層体シート(インナーライナー層あるいは補強シート層)のスプライス部分付近においてクラックや剥離を発生することがなく、該積層体シートの持つ特性・性能を、長期間にわたり、耐久性良く良好に発揮し得る空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成する本発明の空気入りタイヤの製造方法は、下記(1)の構成を有する。
(1)熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物と加硫接着するゴムを積層した積層体シートの端部をオーバーラップによるラップスプライスした後、タイヤの加硫成形を行うことにより前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートと前記ゴムを加硫接着させる工程を有する空気入りタイヤの製造方法において、前記加硫接着をさせた後、前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートの先端にバフィングをして該シート先端を削る鋭化処理をすることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【0016】
また、かかる本発明の空気入りタイヤの製造方法において、下記(2)〜(7)のいずれかの構成をとることが好ましい。
(2)前記先鋭化処理が、前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートの先端から、(t×3)長さ分内側に入った位置での厚さT(mm)が、0.05t≦T≦0.8tを満足する関係を有することを特徴とする上記(1)に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【0017】
ここで、
t:熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの非先鋭化処理部分のタイヤ周方向平均厚さ(mm)
T:熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの先端から、(t×3)長さ分内側に入った位置でのシートの厚さ(mm)
【0018】
(3)前記バフィングにより削られる前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるタイヤ周方向のシート長さX(mm)が、タイヤ周方向のラップ長さL(mm)と、下記(a)式を満足する関係にあることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の空気入りタイヤの製造方法。
X(mm)≦L(mm)………(a)
(4)前記バフィングにより削られるバフ深さをD(mm)、前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートがオーバーラップしている部分での該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートに挟まれたゴムの厚さをG(mm)、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートの厚さをt(mm)としたとき、それらが下記(b)式を満足する関係にあることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
D<(G+t)………(b)
(5)前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、およびイミド系樹脂の少なくとも一種を含んでなることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
(6)前記エラストマーが、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水添物、含ハロゲンゴム、シリコンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴムおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも一種を含んでなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
(7)前記積層体シートが1枚もしくは複数枚が用いられ、1枚の場合はその両端部が、複数枚の場合は相互の端部が、ラップスプライスされることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の空気入りタイヤの製造方法。
【0019】
また、本発明により得られる空気入りタイヤは、下記(8)の構成を有する。
(8)熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートとゴム層とが積層されかつ両者が加硫接着されてなる積層シート部材を有する空気入りタイヤにおいて、前記積層シート部材の端部同士がラップスプライスされ、かつ該ラップスプライス部における前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートの先端が、前記加硫接着された後に、バフィングを施されて鋭化処理されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0020】
請求項1にかかる本発明によれば、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物と加硫接着するゴムを積層した積層体シートの端部をラップスプライスし、さらに加硫成形を経て、該積層体シートから形成されたインナーライナー層あるいは補強シート層を有する空気入りタイヤを製造する方法において、製造された空気入りタイヤの走行を開始した後、該スプライスされた積層体シート(インナーライナー層あるいは補強シート層)のラップスプライス部分付近において、クラックや剥離を発生することがなく、該積層体シートの持つ特性・性能を、長期にわたり、耐久性良く良好に発揮できる空気入りタイヤの製造方法が提供される。
【0021】
請求項2〜請求項4のいずれかにかかる本発明によれば、請求項1にかかる本発明の方法の効果を有するとともに、該効果を明確に発揮できる空気入りタイヤの製造方法が提供される。
【0022】
請求項5にかかる本発明によれば、請求項1にかかる本発明の方法の効果を有するとともに、熱可塑性樹脂を適宜に選択して、気体透過性、耐久性、柔軟性、耐熱性、加工性等の要求物性を満たす熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートを作製することができ、それを部材として用いた空気入りタイヤの製造方法が提供される。
【0023】
請求項6にかかる本発明によれば、請求項1にかかる本発明の方法の効果を有するとともに、エラストマーを適宜に選択して、耐久性、柔軟性、加工性等の要求物性を満たす熱可塑性樹脂組成物からなるシートを作製することができ、それを部材として用いた空気入りタイヤの製造方法が提供される。
【0024】
請求項7にかかる本発明によれば、請求項1にかかる本発明の方法の効果を有するとともに、タイヤのサイズに合わせて、積層体シートのラップスプライス部のラップ量(重なり合っている部分のタイヤ周方向長さ)や該積層体シートの使用枚数を適宜に変更して、各種サイズの空気入りタイヤの製造が可能な空気入りタイヤの製造方法が提供される。
【0025】
本発明によれば、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートと、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物と加硫接着するゴムを積層した積層体シートの端部をラップスプライスし、さらに加硫成形を経て、該積層体シートから形成されたインナーライナー層あるいは補強シート層を有する空気入りタイヤにおいて、製造された空気入りタイヤの走行を開始した後、該スプライスされた積層体シート(インナーライナー層あるいは補強シート層)のラップスプライス部分付近において、クラックや剥離を発生することがなく、該積層体シートの持つ特性・性能を、長期にわたり、耐久性良く良好に発揮できる空気入りタイヤが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の空気入りタイヤの製造方法と空気入りタイヤを説明する図であり、(a)は積層体シートの端部をラップスプライスして加硫成形をした後の状態(先鋭化処理前の状態)を示したモデル図であり、(b)は(a)に示した加硫成形をした後(先鋭化処理前の状態)の積層体シート中の熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の先端付近を拡大して示したモデル図であり、(c)は(b)に示した積層体シート中の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の先端付近をバフィングして該シート先端を削る鋭化処理をした後の状態を示したモデル図である。
図2】本発明以外の方法を説明する図であり、(a)は、先端が先鋭化処理されていない熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2と、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物と加硫接着するゴム3を積層した積層体シート1を所定長さで切断し、タイヤ成形ドラムに巻き付けて、該積層体シート1の両端部をラップスプライスした状態を示すモデル図であり、(b)は、(a)に示した状態で加硫成形した後の状態を示したモデル図である。
図3】本発明の空気入りタイヤの製造方法にかかる空気入りタイヤの形態の1例を示した一部破砕斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、更に詳しく本発明について、説明する。
【0028】
本発明の空気入りタイヤの製造方法は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2と、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物と加硫接着するゴム3を積層した積層体シート1の端部をオーバーラップによるラップスプライスした後、タイヤの加硫成形を行うことにより前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートと前記ゴムを加硫接着させる工程を有する空気入りタイヤの製造方法において、前記加硫接着をさせた後、前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の先端にバフィングをして該シート先端を削る鋭化処理をすることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の空気入りタイヤは、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2とゴム層3とが積層されかつ両者が加硫接着されてなる積層シート部材を有する空気入りタイヤにおいて、前記積層シート部材の端部同士がラップスプライスされ、かつ該ラップスプライス部における前記熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシートの先端が、前記加硫接着された後に、バフィングを施されて鋭化処理されていることを特徴とするものである。
【0030】
本発明者らは、従来方法によるものの不都合点である、例えばインナーライナー層を構成している熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物のシートと、熱可塑性樹脂または該該熱可塑性樹脂組成物のシートと加硫接着されたタイゴムシートとが相互間で剥離する原因について種々検討した結果、以下の知見を得た。
【0031】
すなわち、上述の積層体シート1を、通常の方法で準備した場合、図2(a)、(b)に示した積層体シート1の両端のラップスプライス部S付近では、上下に存在する剛性の大きな熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物のシート2に挟まれたゴム部に大きな応力が発生し、そのため、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物のシート2の先端部付近4などにおいてクラックの発生や、さらに該クラックが大きくなって剥離が発生すると考えられるものであった。
【0032】
これに対して、本発明の空気入りタイヤの製造方法においては、加硫成形をした後の図2(b)に示した状態のものに対し、さらに、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の先端にバフィングをして該シート先端を削る鋭化処理をするものである。
【0033】
図1を用いてさらに説明すると、同図(a)は、図2(b)と同じ積層体シートの端部をラップスプライスして加硫成形をした後の状態(先鋭化処理前の状態)を示したモデル図である。この図では、オーバーラップスプライスされている部分について、タイヤ周方向のラップ長さL(mm)、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2に挟まれたゴム3の厚さをG(mm)、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の厚さをt(mm)を示している。
【0034】
同図(b)は(a)に示した熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の先端付近を拡大して示したバフィングされるべき付近のモデル図であり、(c)は(b)に示した積層体シート中の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の先端付近をバフィングして該シート先端を削る鋭化処理をした後の状態を示している。
【0035】
本発明は、このように加硫後に熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の先端付近をバフィングして該シート先端を削る鋭化処理をすることにより、応力を逃がし、かつクラックの起点をなくすものであり、タイヤの使用開始後に、該熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物のシート2とタイゴムシート3との間で互いの剥離現象を起こすことを抑制する顕著な効果を発揮する。
【0036】
本発明において、「バフィングをして、シートの先端を削る先鋭化処理をする」とは、バフあるいはやすり、グラインダー等を用いて該シートの先端を物理的に研削して、先端を細くさせることをいう。処理動作は、機械・装置によるもののほか、手作業によるものであってもよい。図1の(c)にモデル的に示したように、例えば、回転するバフを用いたバフィングにより、側面からみると円弧状に削られて窪んだ部分Bが現出し、該シートの先端は、該部分Bにおいて先端に向かって徐々に細くなっている先鋭化処理部分5を有しているものであり、そのような側面形状になるように、シート2の切断端部に対してバフィング処理を行うことをいう。
【0037】
上述の「先鋭化処理」は、シート2の最も先端付近において、多少の丸味あるいは角が残っている程度のものでもよく、そのような丸味あるいは角が残っていても、全体としては先鋭化された形状と言えるように処理されていれば、上述したクラックの発生や剥離の発生の抑制効果は顕著に認められる。
【0038】
上述したように、シート2の先端での先鋭化処理は、先端で丸味あるいは角が多少残っている程度でも効果を発揮するが、特に、高い効果を安定して得るには、該先鋭化処理が、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂中にエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の先端から、(t×3)長さ分内側に入った位置での厚さT(mm)が、0.05t≦T≦0.8tを満足する関係を有することが好ましい。
【0039】
ここで、tとTは、それぞれ、
t:熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの非先鋭化処理部分のタイヤ周方向平均厚さ(mm)
T:熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなるシートの先端から、(t×3)長さ分内側に入った位置でのシートの厚さ(mm)であり、図1(c)に示したとおりである。
【0040】
また、図1(a)、(c)に示したように、バフィングにより削られる熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2のタイヤ周方向のシート長さX(mm)が、タイヤ周方向のラップ長さL(mm)と、下記(a)式を満足する関係にあることが好ましい。
【0041】
すなわち、オーバーラップしている部分のタイヤ周方向長さ分よりも、先鋭化部分が長くなるほどの先鋭化処理は、該積層シートを使用することの本来の作用・効果を失わせる可能性があり、好ましくない。例えば、インナーライナーであれば、オーバーラップしていない領域が生ずる可能性があり、そのためエア漏れが悪化する可能性がある。
X(mm)≦L(mm)………(a)
【0042】
また、同じく、バフィングにより削られるバフ深さをD(mm)、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2がオーバーラップしている部分での上下の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2に挟まれたゴム層3の厚さをG(mm)、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の厚さをt(mm)としたとき、それらが下記(b)式を満足する関係にあることが好ましい。
D<(G+t)………(b)
該バフ深さD(mm)のより好ましい範囲は、下記(c)式で表される範囲である。
0.7×t≦D≦1.2×t………(c)
【0043】
すなわち、深さD(mm)は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の厚さt(mm)よりも、多少浅くても、本発明の効果を発揮でき、上記(c)式の範囲とすることが処理の容易さ、積層シートの強度面などから最も好ましい。
【0044】
また、バフィングは、ラップスプライス部の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2の全部の先端に対して行う必要は必ずしもなく、適宜に、本発明の効果がより大きく発揮できる部分に対してのみ重点化して行うようにしてもよい。加硫成形後に行うものであるため、全ての先端に対してバフィングをうまく行うことができないことがあり、内外の表面上に露出している部分に対して行うこと、さらにその一部に対して行いことでも、その部分での効果は得られるからである。バフィング(バフがけ)で採用される砥粒の大きさは、通常の金属製品、ゴム製品、樹脂製品などに使用されているものと同程度のものでよい。熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物およびゴムに対するバフィングであるので、研磨砥粒、研磨剤などは特別なものを使用する必要はない。
【0045】
図3は、本発明の空気入りタイヤの製造方法にかかる空気入りタイヤの形態の1例を示した一部破砕斜視図である。
【0046】
空気入りタイヤTは、トレッド部11の左右にサイドウォール部12とビード部13を連接するように設けている。そのタイヤ内側には、タイヤの骨格たるカーカス層14が、タイヤ幅方向には左右のビード13、13間に跨るように設けられている。トレッド部11に対応するカーカス層4の外周側にはスチールコードからなる2層のベルト層15が設けられている。矢印Yはタイヤ周方向を示している。カーカス層14の内側には、本発明方法によりラップスプライスされて形成されているインナーライナー層10が配され、そのラップスプライス部S(図1および図2のSと共通)がタイヤ幅方向に延びて存在している。
【0047】
本発明にかかる空気入りタイヤでは、タイヤ内周面上でこのラップスプライス部S付近で従来は生じやすかったクラックの発生や、インナーライナー層10を形成している熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物からなるシート2とタイゴム層3の間のクラックの発生、さらに剥離の発生が抑制されて耐久性が著しく向上するものである。
【0048】
本発明の空気入りタイヤの製造方法および本発明の空気入りタイヤにより得られる上述した効果は、前述した積層体シートを、インナーライナー層としてではなく、空気入りタイヤ内の補強シートとして使用する場合でもラップスプライス部Sを有するものであれば同様である。例えば、タイヤのサイドウォール部(図示せず)、あるいはインナーライナー層のタイヤ外周側に周方向全体に配した補強シート層(図示せず)などとして使用する場合であっても同様である。
【0049】
ラップスプライス部Sの重なり長さは、タイヤサイズや使用される場所にもよるが、一般的に、好ましくは7〜20mm程度、より好ましくは8〜15mm程度とするのがよい。重なり長さが長すぎると、タイヤのユニフォミティーが悪化する方向であり、短すぎると成形時等にスプライス部が開いてしまうおそれがあるためである。
【0050】
積層体シートは、1枚である場合に限られず、1枚もしくは複数枚が用いられ、1枚の場合はその両端部がラップスプライスされ、あるいは、複数枚の場合は相互の端部が、ラップスプライスされて一つの環状を形成するようにするとよい。ラップスプライス部Sの重なり長さと、積層体シートの使用枚数を適宜に設定すれば、あらゆる寸法の空気入りタイヤの製造に際して本発明の製造方法を適用することができ、本発明の所期の効果を得ることができ、このことも本発明の大きな効果ということができる。
【0051】
本発明で用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
【0052】
特に、熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリメタクリレート系樹脂、ポリビニル系樹脂、セルロース系樹脂、フッ素系樹脂、およびイミド系樹脂の少なくとも一種を含んでいることが、耐久性、柔軟性、耐熱性、加工性、気体透過性等の要求物性を満たしやく好ましい。
【0053】
また、本発明で使用できる熱可塑性樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂とエラストマーは、熱可塑性樹脂については上述したものを使用することができる。エラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。中では、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水添物、含ハロゲンゴム、シリコンゴム、含イオウゴム、フッ素ゴムおよび熱可塑性エラストマーの少なくとも一種を含んでなるエラストマーを用いることが、耐久性、柔軟性、耐熱性、加工性等の要求物性を満たしやく好ましい。
【0054】
また、前記した特定の熱可塑性樹脂と前記した特定のエラストマーとの組合せでブレンドをするに際して、相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。ブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散層を形成しているエラストマーの粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方または片方の構造を有する共重合体、あるいは熱可塑性樹脂またはエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらはブレンドされる熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)およびそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレンまたはEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定されないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部がよい。
【0055】
熱可塑性樹脂とエラストマーがブレンドされた熱可塑性樹脂組成物において、特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように適宜決めればよく、好ましい範囲は重量比90/10〜30/70である。
【0056】
本発明において、熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物には、インナーライナーあるいは補強部材などとしての必要特性を損なわない範囲で相溶化剤などの他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性を改良するため、材料の成型加工性をよくするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をインナーライナーとしての必要特性を損なわない限り任意に配合することもできる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、インナーライナーあるいは補強部材に十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果に、より十分な剛性を併せ付与することができるとともに、エラストマーの多少によらず、成形に際して熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができるものである。
【0057】
本発明で使用できる熱可塑性樹脂、エラストマーのヤング率は、特に限定されるものではないが、いずれも好ましくは1〜500MPa、より好ましくは50〜500MPaにするとよい。
【実施例】
【0058】
実施例1〜7、比較例1
以下、実施例などにより、本発明の空気入りタイヤの製造方法と空気入りタイヤについて具体的に説明する。
【0059】
熱可塑性樹脂組成物のシートとして、表1に示すように熱可塑性樹脂としてN6/66用い、エラストマーとしてBIMSを用いて、それらを50/50でブレンドした熱可塑性樹脂組成物からなる厚さ(t)0.13mm、融点190℃のシートを用意した。
【0060】
【表1】
【0061】
一方、タイゴム層として、表2に示すような組成の厚さ0.7mmのタイゴムを用意した。
【0062】
【表2】
【0063】
熱可塑性樹脂組成物のシートとタイゴム層を、以下の手順でインナーライナー層として空気入りタイヤに使用して評価した。
(a)上記熱可塑性樹脂組成物シートの作成(t=0.13mm)、
(b)該熱可塑性樹脂組成物シートと加硫接着させるゴム層の作製、
(c)該熱可塑性樹脂組成物シートとゴム層とをプレアッシーしての積層体の作製、
(d)成形ドラム上で該積層体をスプライス成形し、加硫してタイヤを作製、
(e)表3に記載した実施例、比較例の各条件で、タイヤ内腔側表面に露出している熱可塑性樹脂組成物シートの先端部をバフがけ(#400のやすりがけ。手作業)処理による鋭化処理、
(f)製造したタイヤを、タイヤ耐久試験(所定の走行テスト)後、スプライス部のクラック、剥離の発生程度を評価。
【0064】
なお、試験タイヤは、215/70R15 98Hを用い、各実施例、比較例ごとに各2本を作製し、これをJATMA標準リム15×6.5JJに取り付け、タイヤ内圧をJATMA最大空気圧(240kPa)とした。
【0065】
試験タイヤの評価は、各試験タイヤの内腔のインナーライナー層として、本発明にかかる先端鋭化積層体シートを採用したものであり、そのスプライス部付近でのクラックの発生、剥離の発生をそれ以外の部分での状況とも比較しつつ行った。該空気入りタイヤを7.35kNで50,000kmを走行させた後、クラック・剥離の発生、エア漏れについての評価を行った。
【0066】
その結果を表3に示した。効果(クラック、剥離の発生の抑制効果)は、「優」、「良」、「可」、「不可」の4段階で評価した。エア漏れは、比較例1を100とした指数評価で行い、数値が大きいほどエア漏れが悪いものである。
【0067】
本発明の各実施例は、50,000km走行後も、スプライス部付近、それ以外の場所のいずれでも特に問題は発生しなかった。実施例5、実施例7は、エア漏れが105、110と他の例よりも劣ったが、従来のブチルゴムのインナーライナーと比べると十分に良好なレベルであり、特に問題はないと判断できるものだった。
【0068】
【表3】
【符号の説明】
【0069】
1:積層体シート
2:熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性樹脂組成物のシート
3:タイゴム層
4:熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物のシート2の先端部付近
5:先鋭化処理されている部分
10:インナーライナー層
11:トレッド部
12:サイドウォール部
13:ビード
14:カーカス層
15:ベルト層
S:ラップスプライス部
Y:タイヤ周方向
図1
図2
図3