特許第5834627号(P5834627)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834627
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】ギアポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/10 20060101AFI20151203BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   F04C2/10 341G
   F04C15/00 H
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-185722(P2011-185722)
(22)【出願日】2011年8月29日
(65)【公開番号】特開2013-47475(P2013-47475A)
(43)【公開日】2013年3月7日
【審査請求日】2014年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山盛 元康
(72)【発明者】
【氏名】大野 誉洋
(72)【発明者】
【氏名】神田 大地
(72)【発明者】
【氏名】高木 賢一
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−278670(JP,A)
【文献】 特開平07−229479(JP,A)
【文献】 特開昭59−049383(JP,A)
【文献】 特開2001−153066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/10
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に開口する凹部を有するポンプハウジングと、このポンプハウジングの一端に取り付けられかつ前記凹部を閉じることでロータ組込空間を構成すると共に、前記ポンプハウジングに対向する面に吸入ポートと吐出ポートとがそれぞれ形成されるポンププレートと、前記ロータ組込空間に回転可能に嵌込まれるアウタロータと、このアウタロータの内歯に噛み合う外歯を有するインナロータと、前記ポンプハウジングの凹部の底壁に形成された貫通孔を通しかつ前記インナロータの軸孔にトルク伝達可能に非円形断面形状で嵌挿されて前記インナロータを回転する駆動軸とを備えたギアポンプであって、
前記インナロータの軸孔には該軸孔に嵌挿される前記駆動軸の先端面と前記ポンププレートの内端面との間に空間部が形成されており、該空間部により前記嵌挿された箇所の前記軸孔の内周面に発生する磨耗粉を該箇所から除去し、
前記ポンププレートと前記インナロータとの間には前記磨耗粉の逃がし路が形成されており、該逃がし路の一端は前記空間部に連通し、他端は吸入ポートに連通した構成となっていることを特徴とするギアポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のギアポンプであって、
前記逃がし路は、ポンププレートの内端面に形成された凹溝状の逃がし溝と、この逃がし溝の溝開口部を閉じるインナロータの一端面によって構成されていることを特徴とするギアポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はギアポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ギアポンプにおいては、ポンプハウジングと、ポンププレートと、これら両者間に形成されたロータ組込空間に回転可能に嵌込まれるアウタロータと、このアウタロータの内歯に噛み合う外歯を有するインナロータと、インナロータの軸孔にトルク伝達可能に嵌挿されてインナロータを回転する駆動軸とを備えた構造のものが知られている。
このような構造をもつギアポンプにおいて、インナロータの軸孔と、駆動軸とをトルク伝達可能に嵌合するために、駆動軸の先端部外周面の軸方向に面取り加工された平坦面が形成され、インナロータの軸孔は、駆動軸の先端部の横断面形状に対応する非円形に形成される。
このような構造をもつギアポンプにおいて、インナロータの軸孔と駆動軸との嵌合部分の接触摩擦力によってインナロータの軸孔の内周面に摩耗粉が発生することがある。
特に、駆動軸が鋼鉄製で、インナロータがアルミ合金製である場合には、インナロータの軸孔の内周面の平坦部分が駆動軸の平坦面のエッジ部分によって摩耗されやすくなる。
そして、インナロータの軸孔の内周面に摩耗粉が発生すると、この摩耗粉によって、インナロータの軸孔の内周面の平坦部分の摩耗が助長されることが想定される。
また、駆動軸が鋼鉄製で、インナロータがアルミ合金製であるギアポンプにおいて、インナロータの軸孔の内周面の平坦部分の摩耗を防止するために、例えば、特許文献1に開示されたギアポンプが知られている。
これにおいては、インナロータの軸孔の内周面の平坦部分に耐摩耗性部材を組み付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−107933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたギアポンプにおいては、インナロータの軸孔の内周面の平坦部分に耐摩耗性部材を組み付けることによって、摩耗を抑制することができる。しかしながら、耐摩耗性部材を製作してインナロータの軸孔の内周面の平坦部分に組み付ける分だけ部品点数や組付工数が多くなり、コスト高となる。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、極めて簡単な構造によってインナロータの軸孔と駆動軸との嵌合部分の摩耗を抑制することができるギアポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係るギアポンプは、一端側に開口する凹部を有するポンプハウジングと、このポンプハウジングの一端に取り付けられかつ前記凹部を閉じることでロータ組込空間を構成すると共に、前記ポンプハウジングに対向する面に吸入ポートと吐出ポートとがそれぞれ形成されるポンププレートと、前記ロータ組込空間に回転可能に嵌込まれるアウタロータと、このアウタロータの内歯に噛み合う外歯を有するインナロータと、前記ポンプハウジングの凹部の底壁に形成された貫通孔を通しかつ前記インナロータの軸孔にトルク伝達可能に非円形断面形状で嵌挿されて前記インナロータを回転する駆動軸とを備えたギアポンプであって、
前記インナロータの軸孔には該軸孔に嵌挿される前記駆動軸の先端面と前記ポンププレートの内端面との間に空間部が形成されており、該空間部により前記嵌挿された箇所の前記軸孔の内周面に発生する磨耗粉を該箇所から除去し、
前記ポンププレートと前記インナロータとの間には前記磨耗粉の逃がし路が形成されており、該逃がし路の一端は前記空間部に連通し、他端は吸入ポートに連通した構成となっている。
【0007】
前記構成によると、インナロータの軸孔の内周面に摩耗粉が発生したとしても、この摩耗粉が、駆動軸の先端面と ポンププレートの内端面との間に形成される空間部及びポンププレートとインナロータとの間の逃がしに逃がされる。このため、インナロータの軸孔の内周面の摩耗が摩耗粉によって助長されることを防止することができる。すなわち、部品点数や組付工数を増加させることなく、極めて簡単な構造によって、インナロータの軸孔と駆動軸との嵌合部分の摩耗を抑制することができる。
【0009】
また、前記構成によると、インナロータの軸孔の内周面に発生した摩耗粉は、逃がし路の一端から流入して他端に向けて流れる。そして、逃がし路の達した摩耗粉は吸入ポートに流れる。このため、インナロータの軸孔の内周面に発生した摩耗粉が軸孔の周縁部に滞留することを防止することができる。
【0010】
請求項に係るギアポンプは、請求項に記載のギアポンプであって、
逃がし路は、ポンププレートの内端面に形成された凹溝状の逃がし溝と、この逃がし溝の溝開口部を閉じるインナロータの一端面によって構成されていることを特徴とする。
【0011】
前記構成によると、ポンププレートの内端面の凹溝状の逃がし溝と、インナロータの一端面によって逃がし路を容易に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施例1に係るギアポンプのポンプハウジング、アウタロータ及びインナロータの組み付け状態を示す正面図である。
図2】同じくギアポンプ全体を示す図1のII−II線に沿う断面図である。
図3】同じくギアポンプ全体を示す図1のIII−III線に沿う断面図である。
図4】同じくポンププレートを示す斜視図である。
図5】同じくポンププレートの逃がし溝とインナロータ端面との協働によって逃がし部としての逃がし路が構成された状態を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0014】
この発明の実施例1に係るギアポンプを図面にしたがって説明する。
図1図2に示すように、ギアポンプは、ポンプハウジング10と、ポンププレート20と、アウタロータ30と、インナロータ35と、駆動軸50とを備える。
ポンプハウジング10は、円板状の底壁11と、この底壁11の周縁部に沿って円筒状に形成された周壁13とを備え、これら底壁11と周壁13によって一端側に開口する凹部14が形成されている。
また、底壁11には、その中心から後に詳述するアウタロータ30とインナロータ35との偏心量Aに相当する分だけ偏心した位置に中心をもつ貫通孔12が形成されている。
【0015】
ポンププレート20は、ポンプハウジング10の周壁13の端面にボルト等(図示しない)によって密封状に取り付けられ、ポンプハウジング10の凹部14を閉じてロータ組込空間15を構成する。
図3図4に示すように、ポンププレート20のポンプハウジング10に対向する面(以下、内端面と記す)には、正面形状が円弧形状をなす吸入ポート溝22を主体して構成された吸入ポート21と、正面形状が円弧形状をなす吐出ポート溝26を主体として構成された吐出ポート25とが対向状をなしてそれぞれ形成されている。
また、ポンププレート20には、吸入ポート溝22の円弧の中央部に位置して吸入ポート孔23が貫通状に形成されると共に、吐出ポート溝26の円弧の中央部に位置して吐出ポート孔27が貫通状に形成される。
そして、吸入ポート溝22と吸入ポート孔23によって吸入ポート21が構成され、吐出ポート溝26と吐出ポート孔27によって吐出ポート25が構成される。
【0016】
図1図3に示すように、アウタロータ30は、ロータ組込空間15に回転可能に嵌込まれる。このアウタロータ30の内周面の周方向には複数の内歯31が形成される。
インナロータ35は、アウタロータ30の内周面に偏心量Aだけ偏心した状態で組み込まれ、その外周面の周方向には、アウタロータ30の複数の内歯31に噛み合う複数の外歯36が形成されている。そして、アウタロータ30の内歯31とインナロータ35の外歯36との間には閉鎖空間40が形成されている。
インナロータ35の中心部には非円形の軸孔37が形成され、この軸孔37には、ポンプハウジング10の貫通孔12を通して駆動軸50の先端軸部50aがトルク伝達可能に嵌挿される。
この実施例1において、駆動軸50の先端軸部50a外周面の軸方向に面取り加工された平坦面51が形成され、軸孔37の内周面には、平坦面51に対向する位置において軸孔37の円弧の弦をなすようにして平坦部分38が形成されている。
そして、駆動軸50のトルク伝達を受けてインナロータ35が回転することで、このインナロータ35の外歯36にアウタロータ30の内歯31が噛み合った状態でアウタロータ30が追従回転し、これによってポンプ作用をなす。
また、この実施例1において、駆動軸50は鋼鉄製で、インナロータ35(及びアウタロータ30)はアルミ合金製である。
【0017】
図4図5に示すように、ポンププレート20とインナロータ35との間には、インナロータ35の軸孔37の内周面に発生する摩耗粉を逃がすための逃がし部60としての逃がし路61が形成されている。この逃がし路61は、一端が駆動軸50の先端軸部50aの先端面とポンププレート20の内端面との間の空間部55(軸孔37の一部)に連通し、他端が吸入ポート21に連通する。
また、逃がし路61は、ポンププレート20の内端面に形成された凹溝状の逃がし溝62と、この逃がし溝62の溝開口部を閉じるインナロータ35の一端面35aによって構成されている。
【0018】
この実施例1に係るギアポンプは上述したように構成される。
したがって、駆動源からの動力伝達を受けて駆動軸50が回転すると、この駆動軸50の先端軸部50aとインナロータ35の軸孔37との嵌合部でトルク伝達されてインナロータ35が回転する。これに伴ってアウタロータ30が追従回転することで、吸入ポート21に供給された流体(例えばオイル)がアウタロータ30の内歯31とインナロータ35の外歯36との間の閉鎖空間40を経て吐出ポート25から吐出される。
【0019】
駆動軸50は鋼鉄製で、インナロータ35はアルミ合金製であるため、駆動軸50の先端軸部50aとインナロータ35の軸孔37との嵌合部でトルク伝達されてインナロータ35が回転する際、インナロータ35の軸孔37の平坦部分38が駆動軸50の先端軸部50aの平坦面51のエッジ部分によって摩耗され、軸孔37の内周面に摩耗粉が発生することがある。
この場合、摩耗粉が、逃がし部60としての逃がし路61の一端から他端に向けて流れた後、吸入ポート21内に流れて逃がされる。
このため、インナロータ35の軸孔37の内周面に発生した摩耗粉が軸孔37の周縁部に滞留することを防止することができる。この結果、軸孔37内周面の摩耗が摩耗粉によって助長されることを防止することができる。
また、この実施例1において、ポンププレート20の内端面の凹溝状の逃がし溝62と、インナロータ35の一端面によって逃がし路61を容易に構成することができる。
【0020】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1においては、ポンプハウジング10の底壁11には吸入ポートと吐出ポートとが形成されない場合を例示したが、ポンププレート20の吸入ポート21と吐出ポート25とにそれぞれ対向するポンプハウジング10の底壁11の各部分に、吸入ポートと吐出ポートとをそれぞれ形成してもよい。
また、ポンププレート20とインナロータ35との間でかつ軸孔37の外周囲に空間部を形成し、この空間部によって摩耗粉の逃がし部を構成してもよい。この場合、逃がし部をなす空間部に摩耗粉を吸着可能な吸着部材を配設することが望ましい。
【符号の説明】
【0021】
10 ポンプハウジング
11 底壁
12 貫通孔
13 周壁
14 凹部
15 ロータ組込空間
20 ポンププレート
21 吸入ポート
25 吐出ポート
30 アウタロータ
31 内歯
35 インナロータ
36 外歯
37 軸孔
38 平坦部分
50 駆動軸
51 平坦面
60 逃がし部
61 逃がし路
62 逃がし溝
図1
図2
図3
図4
図5