特許第5834644号(P5834644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834644
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】1つ割れ保持器
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/51 20060101AFI20151203BHJP
   F16C 19/26 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   F16C33/51
   F16C19/26
【請求項の数】5
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2011-192973(P2011-192973)
(22)【出願日】2011年9月5日
(65)【公開番号】特開2013-60954(P2013-60954A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2010-205691(P2010-205691)
(32)【優先日】2010年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-257211(P2010-257211)
(32)【優先日】2010年11月17日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-172599(P2011-172599)
(32)【優先日】2011年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-182771(P2011-182771)
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100108589
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 利光
(72)【発明者】
【氏名】石橋 豊
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第01815990(DE,A1)
【文献】 特開2009−014078(JP,A)
【文献】 実開昭63−125221(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/51
F16C 19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状を成して対向配置された一対の円環部と、
当該円環部相互間に亘って連続して延在し、かつ周方向に沿って所定間隔で配列された複数の柱部と、
一対の円環部と複数の柱部とで囲まれた部位に形成され、周方向に沿って所定間隔で構成された複数のポケットとを備えた1つ割れ保持器であって、
1つ割れ保持器には、その周方向の1箇所を、当該周方向を横断する方向に沿って分割する分割部が設けられており、
分割部は、周方向に沿って隣り合うポケット相互間に延在する領域に形成され、これらポケット相互間における周方向中央位置において、当該領域を分割することで構成された一方側分割面と他方側分割面とが、周方向に沿って対向して配置されていると共に、
一方側分割面及び他方側分割面には、それぞれ、互いに係合可能な係合部が設けられ、これら係合部は、周方向に沿って対向して配置されており、
一方側分割面には、係合部として、他方側分割面に向けて突出させた複数の一方側凸部と、これら一方側凸部相互間を窪ませた一方側凹部とが設けられていると共に、
他方側分割面には、係合部として、複数の一方側凸部が係合可能な複数の他方側凹部と、これら他方側凹部相互間を一方側分割面に向けて突出させ、かつ一方側凹部に係合可能な他方側凸部とが設けられており、
一方側分割面及び他方側分割面の双方の係合部が互いに係合した状態において、一方側凸部と他方側凹部との間、及び、一方側凹部と他方側凸部との間には、それぞれ、所定の隙間が構成され、
当該隙間において、周方向に沿った方向における係合部相互間の隙間は、周方向に沿った方向における一方側分割面と他方側分割面との間の隙間よりも小さく設定されていることを特徴とする1つ割れ保持器。
【請求項2】
一方側分割面及び他方側分割面の双方の係合部が互いに係合した状態において、周方向に沿った方向における一方側分割面と他方側分割面との間の隙間と、周方向に沿った方向における係合部相互間の隙間とは、
一方側分割面と他方側分割面との間に構成される隙間をA、
一方側凸部と他方側凹部との間に構成される隙間をB、
一方側凹部と他方側凸部との間に構成される隙間をCとすると、
A>B=C
なる関係を満足するように設定されていることを特徴とする請求項に記載の1つ割れ保持器。
【請求項3】
一方側分割面及び他方側分割面の双方の係合部が互いに係合した状態において、周方向に直交した方向における係合部相互間の隙間は、
一方側凸部と他方側凹部との間に構成される隙間をD、
一方側凹部と他方側凸部との間に構成される隙間をEとすると、
D>E
なる関係を満足するように設定されていることを特徴とする請求項又はに記載の1つ割れ保持器。
【請求項4】
前記一方側分割面には、複数の一方側凸部の軸方向外側に拡径規制用凹部が形成され、
前記他方側分割面には、複数の他方側凹部の軸方向外側に、拡径規制用凹部と係合可能な拡径規制用凸部が形成され、
前記拡径規制用凹部と前記拡径規制用凸部の互いに対向する軸方向側面は、前記分割部が周方向に拡張した際に、互いに当接するようにテーパ形状に形成されていることを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の1つ割れ保持器。
【請求項5】
前記拡径規制用凹部と前記拡径規制用凸部との間に構成される周方向に直交した方向における隙間は、前記一方側凹部と前記他方側凸部との間に構成される周方向に直交した方向における隙間よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の1つ割れ保持器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円環状を成す保持器において、その周方向の1箇所が分割された1つ割れ保持器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンパクト化を図りつつ同時に、転動体(ころ)を数多く組み込むことで負荷能力の向上を図ることが可能な軸受として、例えば針状ころ軸受(ニードルベアリング)が知られている。そして、針状ころ軸受には、軸受回転時におけるフレッチング防止対策が施されており、その防止対策の一例として、1つ割れ保持器が適用される場合がある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
例えば図18に示された1つ割れ保持器2は、円環状を成して対向配置された一対の円環部4,6と、当該円環部4,6相互間に亘って連続して延在し、かつ周方向に沿って所定間隔(例えば、等間隔)で配列された複数の柱部8とを備えている。この場合、周方向に沿って隣り合う各柱部8と一対の円環部4,6とで囲まれた部位には、当該周方向に沿って所定間隔(例えば、等間隔)で複数の空間領域が形成されており、これら複数の空間領域は、転動体(ころ)を1つずつ回転可能に保持する複数のポケット2pとして構成されている。これにより、1つ割れ保持器2には、周方向に沿って所定間隔(例えば、等間隔)で複数の転動体(ころ)が保持される。
【0004】
ここで、1つ割れ保持器2において、各ポケット2pに保持される転動体(ころ)は、それぞれ、その直径が小さく、長さが直径の3〜10倍という細長いころとして構成されている。そして、1つ割れ保持器2は、当該転動体(ころ)を各ポケット2pに1つずつ回転可能に保持しながら例えば内外輪間に組み込まれ、その状態で軸受回転時において、当該各転動体(ころ)と共に内外輪間に沿って公転する。なお、1つ割れ保持器2は、その全体が樹脂(例えば、熱可塑性樹脂)で成形(例えば、射出成形)されている。
【0005】
また、1つ割れ保持器2には、その周方向の1箇所を、当該周方向を横断(直交)する方向に沿って分割する分割部10が設けられている。分割部10は、周方向に沿って隣り合うポケット2p相互間に延在する領域(以下、分割領域10a,10bという)に形成されており、かかる分割領域10a,10bを2つに分割することで構成された一方側分割面Saと他方側分割面Sbとが、周方向に沿って対向して配置されている。この場合、一対の円環部4,6は、一方側分割面Saが構成された一方側分割領域10aから円環状を成して延在し、他方側分割面Sbが構成された他方側分割領域10bまで連続することになる。
【0006】
更に、一方側分割面Saには、その中央部分の一部を、他方側分割面Sbに向けて突出(延出)させた矩形状の凸部12が設けられており、これに対して、他方側分割面Sbには、その一部を矩形状に窪ませることで、凸部12が入り込んで係合可能な凹部14が設けられている。これにより、例えば、当該1つ割れ保持器2を内外輪間に組み込む際における分割面Sa,Sb相互のずれ(具体的には、軸受回転時に内外輪間に沿って公転する当該1つ割れ保持器2の回転軸Zに沿った方向へのずれ)が防止される。
【0007】
また、特許文献2に記載の1つ割れ保持器では、保持器の分割面の一方側分割面に凸部、他方側分割面に凹部が設けられ、一旦係合された後円周方向にはずれないように各端面がテーパ形状に形成されたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−261407号公報
【特許文献2】実開昭63−125221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記した従来の1つ割れ保持器2において、一方側分割領域10aの肉厚W1(具体的には、周方向に沿った肉厚W1)は、他方側分割領域10bの肉厚W2(具体的には、周方向に沿った肉厚W2)よりも小さく設定されている。換言すると、一方側分割領域10aが他方側分割領域10bよりも薄肉に設定、即ち、他方側分割領域10bが一方側分割領域10aよりも厚肉に設定されている。
【0010】
ここで、一方側分割領域10aと他方側分割領域10bの強度(剛性)について着目すると、薄肉の一方側分割領域10aにおける強度(剛性)は、厚肉の他方側分割領域10bにおける強度(剛性)に比べて低くなっている。この場合、1つ割れ保持器2の分割部10において、互いに肉厚が異なる2つの分割領域10a,10bが構成され、これにより、これら分割領域10a,10b相互に強度(剛性)差が生じることとなる。
【0011】
そうなると、当該強度(剛性)差の程度によっては、1つ割れ保持器2全体の強度(剛性)を周方向に沿って均等に維持(確保)することが困難な状態となり、かかる状態で1つ割れ保持器2に複数の転動体(ころ)を保持させた場合には、例えば、強度(剛性)の低い部分に作用した外力によって当該一方側分割領域10aが早期に劣化して、各転動体(ころ)を長期に亘って安定して保持し続けることが困難になり、その結果、1つ割れ保持器2が早期に劣化してしまう虞がある。
【0012】
また、一方側分割領域10aと他方側分割領域10bの肉厚W1,W2について着目すると、樹脂製の1つ割れ保持器2を射出成形する際において、肉薄の一方側分割領域10aと肉厚の他方側分割領域10bとに、冷えムラ(引け巣)が発生し易くなる。ここで、2つの分割領域10a,10bに冷えムラ(引け巣)が発生した場合、分割部10において、一方側分割面Saと他方側分割面Sbとの間の寸法精度を一定に維持することが困難になり、分割面Sa,Sb相互を正確に対向して配置構成させることができなくなってしまう。
【0013】
そうなると、当該冷えムラ(引け巣)の程度によっては、1つ割れ保持器2を予め設定した輪郭形状(姿勢)に維持することが困難になり、かかる状態で1つ割れ保持器2に複数の転動体(ころ)を保持させた場合には、例えば内外輪間に組み込まれた複数の転動体(ころ)を長期に亘って安定して保持し続けることが困難になり、その結果、1つ割れ保持器2が早期に劣化してしまう虞がある。
【0014】
更に、分割部10において分割領域10a,10bを2分割(分離)する一方側分割面Saと他方側分割面Sbとの配置構成について着目すると、当該分割部10(一方側及び他方側分割面Sa,Sb)は、その周方向両側のポケット2p相互間における周方向中央位置(具体的には、周方向両側のポケット2p相互間の周方向長さを2分割した位置)から相対的に外れた(ずれた)位置に設けられている。
【0015】
換言すると、当該分割部10(一方側及び他方側分割面Sa,Sb)は、複数のポケット2pの周方向に沿った間隔ピッチに一致した部位から外れた(ずれた)位置に設けられている。別の捉え方をすると、当該分割部10(一方側及び他方側分割面Sa,Sb)の配置位置と、その周方向両側のポケット2p相互間における周方向中央位置との位相が周方向に沿って相対的にずれている。
【0016】
この場合、例えば自動組立機によって当該1つ割れ保持器2を所定箇所に組み込む際には、その組込方向を予め設定する必要がある。そうなると、組立プロセスに手間や時間がかかり、その取扱性及び組立性が低下してしまうため、その分だけ組立に要するコストの低減には一定の限界があった。なお、組込方向を無視して組み込んだ場合には、当該組込プロセスに用いられる位置決めピンによって1つ割れ保持器2自体が損傷してしまう虞もある。
【0017】
また、分割部10において、一方側分割面Saが構成された一方側分割領域10aと、他方側分割面Sbが構成された他方側分割領域10bとの双方の肉厚が、互いに同一の肉厚(W1=W2)となるように、例えば一方側分割領域10aの肉厚W1を、他方側分割領域10bの肉厚W2と同程度まで大きく(拡大)することも考えられる。しかし、そのようにすると、その分だけポケット2pの数を減らさざるを得なくなる。そうなると、転動体(ころ)の組込数が減少し、その結果、当該1つ割れ保持器2の負荷能力の維持向上を図ることができなくなってしまう。
【0018】
さらに、特許文献2の1つ割れ保持器では、凹部と凸部のテーパ形状の端面が、運転時の保持器の微小な動き(フレッチング対策となる動き)に対して軸方向にも分力が生じながら摺動するため、保持器が摩耗したり、破損したりする虞がある。
【0019】
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、分割領域相互の強度(剛性)差を無くし、保持器全体の強度(剛性)を周方向に沿って均等に維持すると共に、成形時における分割領域相互の寸法精度を一定に維持することで、複数の転動体を長期に亘って安定して保持し続けることが可能であって、負荷能力の向上並びに組立に要する低コスト化を図ることが可能な取扱性及び組立性に優れた1つ割れ保持器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の構成によって達成される。
(1)円環状を成して対向配置された一対の円環部と、当該円環部相互間に亘って連続して延在し、かつ周方向に沿って所定間隔で配列された複数の柱部と、一対の円環部と複数の柱部とで囲まれた部位に形成され、周方向に沿って所定間隔で構成された複数のポケットとを備えた1つ割れ保持器であって、1つ割れ保持器には、その周方向の1箇所を、当該周方向を横断する方向に沿って分割する分割部が設けられており、分割部は、周方向に沿って隣り合うポケット相互間に延在する領域に形成され、これらポケット相互間における周方向中央位置において、当該領域を分割することで構成された一方側分割面と他方側分割面とが、周方向に沿って対向して配置されていると共に、一方側分割面及び他方側分割面には、それぞれ、互いに係合可能な係合部が設けられ、これら係合部は、周方向に沿って対向して配置されている。また、一方側分割面には、係合部として、他方側分割面に向けて突出させた複数の一方側凸部と、これら一方側凸部相互間を窪ませた一方側凹部とが設けられていると共に、他方側分割面には、係合部として、複数の一方側凸部が係合可能な複数の他方側凹部と、これら他方側凹部相互間を一方側分割面に向けて突出させ、かつ一方側凹部に係合可能な他方側凸部とが設けられており、一方側分割面及び他方側分割面の双方の係合部が互いに係合した状態において、一方側凸部と他方側凹部との間、及び、一方側凹部と他方側凸部との間には、それぞれ、所定の隙間が構成され、当該隙間において、周方向に沿った方向における係合部相互間の隙間は、周方向に沿った方向における一方側分割面と他方側分割面との間の隙間よりも小さく設定されている。
【0022】
) 上記()において、一方側分割面及び他方側分割面の双方の係合部が互いに係合した状態において、周方向に沿った方向における一方側分割面と他方側分割面との間の隙間と、周方向に沿った方向における係合部相互間の隙間とは、一方側分割面と他方側分割面との間に構成される隙間をA、一方側凸部と他方側凹部との間に構成される隙間をB、一方側凹部と他方側凸部との間に構成される隙間をCとすると、A>B=Cなる関係を満足するように設定されている。
) 上記()又は()において、一方側分割面及び他方側分割面の双方の係合部が互いに係合した状態において、周方向に直交した方向における係合部相互間の隙間は、一方側凸部と他方側凹部との間に構成される隙間をD、一方側凹部と他方側凸部との間に構成される隙間をEとすると、D>Eなる関係を満足するように設定されている。
) 上記()から()のいずれかにおいて、一方側分割面には、複数の一方側凸部の軸方向外側に拡径規制用凹部が形成され、他方側分割面には、複数の他方側凹部の軸方向外側に、拡径規制用凹部と係合可能な拡径規制用凸部が形成され、拡径規制用凹部と拡径規制用凸部の互いに対向する軸方向側面は、分割部が周方向に拡張した際に、互いに当接するようにテーパ形状に形成されている。
) 上記()において、拡径規制用凹部と拡径規制用凸部との間に構成される周方向に直交した方向における隙間は、一方側凹部と他方側凸部との間に構成される周方向に直交した方向における隙間よりも大きい
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、分割領域相互の強度(剛性)差を無くし、保持器全体の強度(剛性)を周方向に沿って均等に維持すると共に、成形時における分割領域相互の寸法精度を一定に維持することで、複数の転動体を長期に亘って安定して保持し続けることが可能であって、負荷能力の向上並びに組立に要する低コスト化を図ることが可能な取扱性及び組立性に優れた1つ割れ保持器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係る1つ割れ保持器の全体構成を概略的に示す斜視図、(b)は、同図(a)に示された分割部周りの周辺構成を拡大して示す平面図、 (c)は、同図(a)に示された分割部における隙間の寸法関係を拡大して示す平面図。
図2図1(a)に示された1つ割れ保持器において、図1(b)のX−X線に沿う断面図。
図3】本発明の第1実施形態の第1の変形例に係る1つ割れ保持器の構成を一部拡大して示す図であり、(a)は、図1(b)のY−Y線に沿う断面図、(b)は、同図(a)に示された構成の他の構成例を示す断面図。
図4】本発明の第1実施形態の第2の変形例に係る1つ割れ保持器の外観構成を一部拡大して示す平面図。
図5】本発明の第1実施形態の第3の変形例に係る1つ割れ保持器の外観構成を一部拡大して示す平面図。
図6】(a)は、本発明の第1実施形態の第4の変形例に係る1つ割れ保持器の外観構成を一部拡大して示す平面図、(b)は、同図(a)のb−b線に沿う断面図、(c)は、同図(b)のc−c線に沿う断面図。
図7】(a)は、本発明の第1実施形態の第5の変形例に係る1つ割れ保持器の外観構成を一部拡大して示す平面図、(b)は、同図(a)に示された分割部における隙間の寸法関係を拡大して示す平面図。
図8】本発明の第1実施形態の第6の変形例に係る1つ割れ保持器の外観構成を一部拡大して示す平面図。
図9】本発明の第1実施形態の第7の変形例に係る1つ割れ保持器の外観構成を一部拡大して示す平面図。
図10】本発明の第1実施形態の第8の変形例に係る1つ割れ保持器の外観構成を一部拡大して示す平面図。
図11】本発明の第1実施形態の第9の変形例に係る1つ割れ保持器の外観構成を一部拡大して示す平面図。
図12】本発明の第1実施形態の第10の変形例に係る1つ割れ保持器の外観構成を一部拡大して示す平面図。
図13】本発明の第2実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器(1つ割れ保持器)の全体構成を示す斜視図。
図14】本発明の第3実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器(1つ割れ保持器)の全体構成を示す斜視図。
図15】本発明の第4実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器(1つ割れ保持器)の全体構成を示す斜視図。
図16】本発明の第5実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器(1つ割れ保持器)の全体構成を示す斜視図。
図17】本発明の第6実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器(1つ割れ保持器)の全体構成を示す斜視図。
図18】従来の1つ割れ保持器の全体構成を概略的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第1実施形態に係る1つ割れ保持器について、添付図面を参照して説明する。
なお、本実施形態は、図15に示された1つ割れ保持器2の改良であるため、以下、改良部分の説明にとどめる。この場合、上記した1つ割れ保持器2(図15)と同一の構成については、その構成に付された参照符号と同一の符号を本実施形態に用いた図面上に付すことで、その説明を省略する。
【0026】
図1及び図2に示すように、本実施形態の1つ割れ保持器2には、その周方向の1箇所を、当該周方向を横断(直交)する方向に沿って分割する分割部10が設けられている。分割部10は、周方向に沿って隣り合うポケット2p相互間に延在する領域(即ち、分割領域10a,10b)に形成され、これらポケット2p相互間における周方向中央位置において、当該分割領域10a,10bを2つに分割することで構成された一方側分割面Saと他方側分割面Sbとが、周方向に沿って対向して配置されている。
【0027】
ここで、分割部10(一方側及び他方側分割面Sa,Sb)が配置構成されるポケット2p相互間における周方向中央位置について説明する。
周方向中央位置は、分割部10(一方側及び他方側分割面Sa,Sb)の周方向両側のポケット2p相互間の周方向長さを2分割する位置に設定することが好ましい。換言すると、分割部10に周方向で隣り合う各ポケット2pに転動体(ころ)16を保持させた状態で(図1(b)及び図2)、保持器2の回転軸Zから各転動体(ころ)16の回転中心16rを結ぶ線分が、周方向に沿って互いに等しい角度θαを成すように、分割部10の周方向中央位置を設定することが好ましい。
【0028】
また、各ポケット2pに転動体(ころ)16を保持させた状態の1つ割れ保持器2において(図1(b)及び図2)、当該保持器2の回転軸Zから各転動体(ころ)16の回転中心16rを結ぶ線分が、周方向に沿って互いに等しい角度θを成すように設定することが好ましい。この場合、θα=θとしてもよいし、或いは、θα≠θとしてもよい。
【0029】
いずれの場合でも、分割部10の周方向両側のポケット2p(転動体(ころ)16)相互間に延在する領域(分割領域10a,10b)において、一方側分割面Saが構成された一方側分割領域10aの肉厚W1(具体的には、周方向に沿った肉厚W1)と、他方側分割面Sbが構成された他方側分割領域10bの肉厚W2(具体的には、周方向に沿った肉厚W2)とは、互いに同一の肉厚(W1=W2)に設定される(図1(b))。
【0030】
また、分割領域10a,10bの肉厚が相互に同一(W1=W2)に設定された1つ割れ保持器2において、分割部10(一方側分割面Sa及び他方側分割面Sb)には、それぞれ、互いに係合可能な係合部が設けられており、これら係合部は、周方向に沿って対向して配置されている。そして、一方側分割面Sa及び他方側分割面Sbの双方の係合部が互いに係合した状態において、一方側分割面Saと他方側分割面Sbとの間、及び、係合部相互間には、所定の隙間が構成されている。
【0031】
具体的に説明すると、一方側分割面Saには、係合部として、他方側分割面Sbに向けて突出させた複数(図面では一例として、2つ)の一方側凸部18と、これら一方側凸部18相互間を窪ませた一方側凹部20とが設けられている。これに対して、他方側分割面Sbには、係合部として、複数の一方側凸部18が一部入り込んで係合可能な複数(図面では一例として、2つ)の他方側凹部22と、これら他方側凹部22相互間を一方側分割面Saに向けて突出させ、かつ一方側凹部20に一部入り込んで係合可能な他方側凸部24とが設けられている。
【0032】
即ち、本実施形態では、一方側凸部18の軸方向内側面18sが一方側凹部20の軸方向側面20sを構成し、他方側凹部22の軸方向内側面22sが他方側凸部24の軸方向側面24sを構成しており、互いに平行に周方向に沿って形成されている。
【0033】
なお、凸部18,24並びに凹部20,22の形状については、図面では一例として、矩形状を示したが、これに限定されるものではない。要するに、例えば、1つ割れ保持器2を内外輪間に組み込む際における分割面Sa,Sb相互のずれ(具体的には、軸受回転時に内外輪間に沿って公転する当該1つ割れ保持器2の回転軸Zに沿った方向へのずれ)が防止できるような形状であれば、例えば三角形状、円弧形状など任意に設定することができる。また、凸部18,24並びに凹部20,22の大きさ、個数については、例えば、分割領域10a,10bの大きさ、1つ割れ保持器2の使用目的や使用環境に応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。
【0034】
ここで、一方側分割面Sa及び他方側分割面Sbの双方の係合部が互いに係合した状態において、一方側凸部18と他方側凹部22との間、及び、一方側凹部20と他方側凸部24との間には、それぞれ、所定の隙間が構成される。この場合、当該隙間において、周方向に沿った方向における係合部相互間の隙間は、周方向に沿った方向における一方側分割面Saと他方側分割面Sbとの間の隙間よりも小さく設定されている。
【0035】
詳しくは、双方の係合部が互いに係合した状態において、周方向に沿った方向における一方側分割面Saと他方側分割面Sbとの間の隙間と、周方向に沿った方向における係合部相互間の隙間とは、
一方側分割面Saと他方側分割面Sbとの間に構成される隙間をA、
一方側凸部18と他方側凹部22との間に構成される隙間をB、
一方側凹部20と他方側凸部24との間に構成される隙間をCとすると、
A>B=C
なる関係を満足するように設定することが好ましい(図1(c))。
【0036】
なお、隙間Bと隙間Cとは、必ずしも同一(B=C)に設定されるものではなく、例えば、例えば、分割領域10a,10bの大きさ、1つ割れ保持器2の使用目的や使用環境に応じて、隙間Bを隙間Cより大きく(B>C)したり、これとは逆に、隙間Bを隙間Cより小さく(B<C)したりすることができる。しかしながら、いずれの場合でも、隙間Bと隙間Cは、隙間Aよりも小さく設定することが好ましい。
【0037】
また、係合部相互間の隙間については、上記した周方向に沿った方向だけでなく、周方向に直交した方向も考慮することが好ましい。
即ち、一方側分割面Sa及び他方側分割面Sbの双方の係合部が互いに係合した状態において、周方向に直交した方向における係合部相互間の隙間は、
一方側凸部18と他方側凹部22との間に構成される隙間をD、
一方側凹部20と他方側凸部24との間に構成される隙間をEとすると、
D>E
なる関係を満足するように設定することが好ましい(図1(c))。
【0038】
なお、隙間Dと隙間Eの位置関係について説明すると、隙間Dは、例えば、2つの一方側凸部18の外側(即ち、円環部4,6寄り)における当該一方側凸部18と他方側凹部22との間に構成される隙間として規定することができる。一方、隙間Eは、例えば、一方側凹部20の外側(即ち、円環部4,6寄り)における当該一方側凹部20と他方側凸部24との間に構成される隙間として規定することができる。
【0039】
以上、本実施形態によれば、ポケット2p相互間における周方向中央位置に分割部10を設定したことにより、一方側分割面Saが構成された一方側分割領域10aの肉厚W1と、他方側分割面Sbが構成された他方側分割領域10bの肉厚W2とを、互いに同一の肉厚(W1=W2)に設定することができる。
【0040】
この場合、一方側分割領域10aと他方側分割領域10bの強度(剛性)について着目すると、分割領域10a,10b相互の肉厚を同一(W1=W2)にしたことにより、肉厚W1の一方側分割領域10aにおける強度(剛性)と、肉厚W2の他方側分割領域10bにおける強度(剛性)とを同一(均等)にすることができる。即ち、これら分割領域10a,10b相互に強度(剛性)差を無くすることができる。
【0041】
これによれば、1つ割れ保持器2全体の強度(剛性)を周方向に沿って均等に維持(確保)することができる。このため、例えば、1つ割れ保持器2に複数の転動体(ころ)を保持させた状態において、軸受回転時に外力が作用した場合でも、当該外力を保持器2全体に亘って均等に負荷することができるため、当該1つ割れ保持器2の耐久性(耐フレッチング性)を維持向上させることが可能となり、その結果、各転動体(ころ)を長期に亘って安定して保持し続けることができる。
【0042】
また、一方側分割領域10aと他方側分割領域10bの肉厚W1,W2について着目すると、樹脂製の1つ割れ保持器2を射出成形する際において、双方の分割領域10a,10bに、冷えムラ(引け巣)が発生するようなことは無い。この場合、成形後の分割部10において、一方側分割面Saと他方側分割面Sbとの間の寸法精度を一定に維持することが可能となり、その結果、当該分割面Sa,Sb相互を正確に対向して配置構成させることができる。
【0043】
これによれば、1つ割れ保持器2を予め設定した輪郭形状(姿勢)に維持することができる。このため、例えば、1つ割れ保持器2に対して複数の転動体(ころ)を安定して保持することができるため、軸受を長期に亘って安定して回転させることができる。
【0044】
更に、分割部10において分割領域10a,10bを2分割(分離)する一方側分割面Saと他方側分割面Sbとの配置構成について着目すると、当該分割部10(一方側及び他方側分割面Sa,Sb)を、その周方向両側のポケット2p相互間における周方向中央位置(具体的には、周方向両側のポケット2p相互間の周方向長さを2分割した位置)に設けることができる。
【0045】
この場合、例えば自動組立機によって1つ割れ保持器2を所定箇所に組み込む際に、その組込方向を予め設定するプロセスが不要となる。これによれば、組立プロセスの効率化を図ることができるため、その取扱性及び組立性を飛躍的に向上させることができる。このため、組立に要するコストを大幅に低減することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、1つ割れ保持器2を内外輪間に組み込む際における分割面Sa,Sb相互のずれ防止については、分割部10の係合部だけで充分に対応することができる。この場合、一方側分割面Saと他方側分割面Sbとの間に構成される隙間Aを任意に設定することができる。これによれば、例えば隙間Aを、当該組込プロセスに用いられる位置決めピン26(図1(b))が挿入可能な大きさに設定することが可能となり、その結果、当該位置決めピン26によって1つ割れ保持器2自体が損傷してしまうといった不具合の発生を無くすることができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、分割部10(一方側及び他方側分割面Sa,Sb)を、その周方向両側のポケット2p相互間における周方向中央位置(周方向両側のポケット2p相互間の周方向長さを2分割した位置)に設けることができる。この場合、ポケット2p相互間の分割領域10a,10bを増加させる必要が無いため、ポケット2pの数を減らすこと無く、上記した係合部を構成することができる。これによれば、転動体(ころ)の組込数を現状維持、或いは、向上させることが可能となり、その結果、1つ割れ保持器2の負荷能力の維持向上を図ることができる。
【0048】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されることは無く、以下の各変形例に係る技術思想も本発明の技術的範囲に含まれる。
第1の変形例として、分割部10の係合部において、径方向(軸受回転時に内外輪間に沿って公転する1つ割れ保持器2の回転軸Zに直交する方向)に沿って段差を施すようにしてもよい。その一例として図3(a)には、係合部における一方側凹部20と他方側凸部24とに径方向の段差を施した構成が示されている。
【0049】
ここで、径方向の段差として、一方側凹部20には、その一部(図面では一例として、内径側)を他方側凸部24に向けて突出させた突出部20aが形成されており、他方側凸部24には、突出部20aが一部入り込んで係合可能な窪み部24aが、当該他方側凸部24の一部(図面では一例として、内径側)を窪ませて形成されている。
【0050】
なお、突出部20a及び窪み部24aの形状や大きさは、例えば一方側凹部20と他方側凸部24の形状や大きさに応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。
例えば図3(b)に示すように、一方側凹部20の径方向中央に突出部20aを形成し、他方側凸部24の径方向中央に窪み部24aを形成してもよい。
【0051】
以上、第1の変形例によれば、分割部10の係合部に径方向の段差(図3(a),(b))を施すことにより、一方側分割面Sa及び他方側分割面Sbの双方の係合部が互いに係合した状態において(図1(a))、突出部20aと窪み部24aとが径方向に係合するため、当該分割部10を介して、1つ割れ保持器2が径方向に拡がって拡径(拡大)するのを防止することができる。
【0052】
第2の変形例として図4に示すように、各一方側凸部18の外側(即ち、円環部4,6寄り)における当該一方側凸部18の端面18tにテーパを施すようにしてもよい。これにより、各一方側凸部18の根元部分(具体的には、端面18tから一方側分割面Saに連続する部分)の強度(剛性)を高めることができる。その結果、分割部10の係合部の耐久性を向上させることができる。なお、一方側凸部18の端面18tにテーパを施すことに対応して、当該一方側凸部18が一部入り込んで係合する他方側凹部22にも、上記した端面18tに対向して、テーパが施された端面22tを構成することが好ましい。
【0053】
第3の変形例として図5に示すように、分割部10において、一方側分割面Sa及び他方側分割面Sbから円環部4,6に移行する角部(隅部)にそれぞれ面取り4r,6rを施すようにしてもよい。これにより、上記した組込プロセスに用いられる位置決めピン26(図1(b))を隙間Aに挿入し易くなり、組込プロセスの効率を更に向上させることができる。なお、面取り4r,6rの形状は、図面では一例として、円弧形状としたが、これに限定されることはなく、例えば楕円形状としてもよい。
【0054】
第4の変形例として図6(a)〜(c)に示すように、1つ割れ保持器2に潤滑性能向上手段を施すようにしてもよい。この場合、潤滑性能向上手段の一例として、複数の柱部8の外周側には、当該柱部8に沿って延在する潤滑剤収容溝28が形成されている。また、円環部4,6の外周側には、それぞれ、周方向に沿って連続するテーパ面4t,6tが形成されていると共に、円環部4,6の内周側には、それぞれ、他の部位よりも窪ませた段差部4g,6gが形成されている。
【0055】
ここで、潤滑剤収容溝28は、複数の柱部8全てに形成しても良いし、任意に選択した柱部8のみに形成してもよいが、当該潤滑剤収容溝28に収容した潤滑剤(例えば、グリース、油)が1つ割れ保持器2の全体に亘って均等に行き渡るようにするために、周方向に沿って等間隔に形成することが好ましい。
【0056】
なお、潤滑剤収容溝28の溝幅、溝深さ、溝長さについては、例えば柱部8の大きさや形状などに応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。また、潤滑剤収容溝28の断面形状については、図面では一例として、三角形状に近い台形状としたが、これに限定されることは無く、例えば円弧形状、矩形状など各種の形状を適用することができる。要するに、潤滑剤(例えば、グリース、油)を収容できるような形状であればよい。
【0057】
また、テーパ面4t,6tの傾斜角度、及び、段差部4g,6gの窪ませ量や窪ませ形状については、例えば1つ割れ保持器2の使用環境や使用目的、或いは、円環部4,6の大きさや形状などに応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。要するに、軸受回転時における1つ割れ保持器2の公転に伴って、潤滑剤(例えば、グリース、油)を効率よく循環させることができるように、テーパ面4t,6tの傾斜角度、及び、段差部4g,6gの窪ませ量や窪ませ形状を設定すればよい。
【0058】
以上、第4の変形例によれば、1つ割れ保持器2に潤滑性能向上手段(潤滑剤収容溝28、テーパ面4t,6t、段差部4g,6g)を設けたことにより、上記した第1の実施形態の効果と合わせて、潤滑剤(例えば、グリース、油)を1つ割れ保持器2の全体に亘って均等に行き渡らせることができると共に、軸受回転時における1つ割れ保持器2の公転に伴って、潤滑剤(例えば、グリース、油)を効率よく循環させることができる。
【0059】
図7に示す第5の変形例では、一方側分割面10aには、係合部として設けられた複数の一方側凸部18の軸方向両外側に、複数の拡径規制用凹部30が形成されており、他方側分割面10bには、係合部として設けられた複数の他方側凹部22の軸方向両外側に、拡径規制用凹部30と係合可能な拡径規制用凸部32が形成されている。
【0060】
拡径規制用凹部30の軸方向内側面30tは、一方側凸部18の軸方向外側面18tを構成し、拡径規制用凸部32の軸方向内側面32tは、他方側凹部22の軸方向外側面22tを構成する。
【0061】
そして、この拡径規制用凹部30の軸方向内側面30tと、拡径規制用凸部32の軸方向内側面32tとは、互いに平行にテーパ形状にそれぞれ形成されており、分割部10が拡張するように周方向に力が加わった際に、互いに当接して分割部10が開き過ぎるのを抑制することができる。即ち、拡径規制用凸部32の先端面と、拡径規制用凹部30の軸方向内側面30tを構成する一方側凸部18の先端面とは、周方向から見てオーバーラップしている。
【0062】
また、拡径規制用凹部30の軸方向内側面30tと拡径規制用凸部32の軸方向内側面32tとの間隔は、上記実施形態と同様に、一方側凸部18と他方側凹部22との間に構成される隙間Dとして規定されるので、D>Eなる関係を満たすように設定される。さらに、拡径規制用凹部30の軸方向外側面30oと拡径規制用凸部32の軸方向外側面32oとの間隔Iも、I>Eなる関係を満たすように設定される。
さらに、拡径規制用凹部30と拡径規制用凸部32との間に構成される周方向に沿った方向おける隙間をJとすると、A>Jなる関係を満たすように設定されればよく、A>B=C=Jなる関係を満たすように設定されることが好ましい。
【0063】
これにより、第5の変形例によれば、保持器2のトランスミッション等への組み付け時に分割部10が開き過ぎるのを抑制できるとともに、運転時は、一方側凹部20と他方側凸部24で案内することができ、保持器2の摩耗や破損を抑制することができる。
【0064】
図8に示す第6の変形例では、第5の変形例における1つ割り保持器2に対して、一方側分割面10aと他方側分割面10bとが、径方向にずれるのを規制する構成であり、複数の拡径規制用凸部32のうち、一方の拡径規制用凸部32の内径側を部分的に切り欠いて径方向の段差を施し、他方の拡径規制用凸部32の外径側を部分的に切り欠いて径方向の段差を施している。そして、内径側を切り欠いた拡径規制用凸部32に形成された窪み部32aには、隣接する一方側凸部18の内径側を拡径規制用凹部30内に延出させ、窪み部32aに向けて突出させた突出部18aが係合し、また、外径側を切り欠いた拡径規制用凸部32に形成された窪み部32aには、隣接する一方側凸部18の外径側を拡径規制用凹部30内に延出させ、窪み部32aに向けて突出させた突出部18aが係合する。
【0065】
なお、第6の変形例では、拡径規制用凸部32の内径側又は外径側を部分的に切り欠いて径方向の段差を施しているが、図9に示す第7の変形例のように、拡径規制用凸部32の内径側又は外径側を軸方向全体に亘って切り欠いて径方向の段差を施してもよい。この場合、一方側凸部18に形成される突出部18aは、第6の変形例に比べて大きく形成することができ、一方側分割面10aと他方側分割面10bとが径方向にずれるのを規制する、窪み部32aと突出部18aの対向面をより広く確保することができる。
【0066】
図10に示す第8の変形例では、上記した第1実施形態(具体的には、図4に示された第2の変形例)に係る1つ割れ保持器2の部分的な改良として、他方側凸部24の軸方向中央部分を一部窪ませて(換言すると、一部切り欠いて)、窪み部200を構成してもよい。
【0067】
窪み部200の大きさは、他方側凸部24の大きさに応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。また、窪み部200の形状は、例えば、台形状、矩形状、三角形状、円弧状など任意の形状とすることができる。図10には一例として、平面視で台形状を成す窪み部200が示されているが、そうすると、台形状の窪み部200の両側に、その窪ませ方向に向って先細り形状を成すテーパ面200sが構成され、これにより、窪み部200の両側に残留した各他方側凸部24の強度(剛性)を向上させることができる。なお、テーパ面200sは、必ずしも必要な構成ではない。
【0068】
このような構成において、窪み部200の両側に残留した他方側凸部24と、一方側凹部20との間の周方向隙間F1,F2、並びに、一方側凸部18と他方側凹部22との間の周方向隙間G1,G2については、F1=F2、G1=G2なる関係を満足するように設定することが好ましい。このとき、F1(=F2)とG1(=G2)との大小関係は、F1(=F2)>G1(=G2)なる関係を満足するように設定してもよいし、或いは、F1(=F2)<G1(=G2)なる関係を満足するように設定してもよい。
【0069】
以上、本変形例によれば、他方側凸部24に窪み部200を構成したことで、その分だけ他の柱部8との間の体積差(肉厚差)を縮小し、これにより、保持器成形時の「ひけ」などの影響を抑え、成形性(成形精度)の向上を図ることができる。なお、他の効果は、上記した第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0070】
また、上記した実施形態及び各変形例では、単列タイプの1つ割れ保持器2を想定して説明したが、複列タイプの1つ割れ保持器にも本発明の技術思想を適用することができる。第9の変形例として、図11には、一方側分割領域10aから他方側分割領域10bに亘って周方向に沿って延在する中央柱部202を中心にして、その軸方向両側に、図10に示された1つ割れ保持器2の構成が配された複列タイプの1つ割れ保持器2が示されている。
【0071】
この場合、窪み部200の軸方向中央部分に向けて、一方側凹部20の軸方向中央部分を一部突出させた突出部204を構成することが好ましい。かかる構成において、突出部204の大きさは、窪み部200の広さに応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。また、突出部204の形状は、例えば、台形状、矩形状、三角形状、円弧状など任意の形状とすることができる。図11には一例として、平面視で台形状を成す突出部204が示されているが、そうすると、台形状の突出部204の両側に、その突出方向に向って先細り形状を成すテーパ面204sが構成され、これにより、複列タイプの1つ割れ保持器2の強度(剛性)を向上させることができる。なお、テーパ面204sは、必ずしも必要な構成ではない。
【0072】
また、突出部204の構成位置は、中央柱部202に沿って周方向に整列した位置に設定することが好ましい。これにより、複列タイプの1つ割れ保持器2の強度(剛性)をさらに向上させることができると共に、当該1つ割れ保持器2のバランスを維持向上させることができる。
【0073】
このような構成において、突出部204と窪み部200との間の周方向隙間Hは、窪み部200の両側に残留した他方側凸部24と、一方側凹部20との間の周方向隙間F1,F2、及び、一方側凸部18と他方側凹部22との間の周方向隙間G1,G2のうち、いずれか小さい方の周方向隙間に合わせて(即ち、一致させて)設定することが好ましい。なお、周方向隙間F1,F2及び周方向隙間G1,G2については、F1=F2、G1=G2なる関係を満足するように設定することが好ましい。このとき、F1(=F2)とG1(=G2)との大小関係は、F1(=F2)>G1(=G2)なる関係を満足するように設定してもよいし、或いは、F1(=F2)<G1(=G2)なる関係を満足するように設定してもよい。
【0074】
以上、本変形例によれば、突出部204を構成したことで、当該突出部204に隣接する一対のポケット2pのうち、その中央柱部202側で、かつ突出部204寄りの隅部2r近傍の肉厚を充分に確保することができるため、複列タイプの1つ割れ保持器2の強度(剛性)を一定に維持させることができる。なお、他の効果は、図10に示された1つ割れ保持器2と同様であるため、その説明は省略する。
【0075】
なお、図11では、一方側凹部20の軸方向中央部分を一部突出させて突出部204を構成したが、これに代えて、窪み部200側の一部を突出させて逆向きの突出部を構成してもよいし、或いは、一方側凹部20及び窪み部200の双方から突出部を突出させてもよい。
【0076】
図12には、第10の変形例として、一方側凹部20及び窪み部200の双方から突出部204を突出させて構成された複列タイプの1つ割れ保持器2が示されている。この場合、突出部204相互の周方向隙間Hは、図11に示された1つ割れ保持器2と同様に、周方向隙間F1,F2及び周方向隙間G1,G2のうち、いずれか小さい方の周方向隙間に合わせて(即ち、一致させて)設定すればよい。
【0077】
このような構成によれば、一方側凹部20及び窪み部200の双方から突出部204を構成したことで、それぞれの突出部204に隣接する各ポケット2pのうち、その中央柱部202側で、かつ各突出部204寄りの隅部2r近傍の肉厚を充分に確保することができるため、複列タイプの1つ割れ保持器2の強度(剛性)を一定に維持させることができる。なお、他の効果は、図10に示された1つ割れ保持器2と同様であるため、その説明は省略する。
【0078】
なお、上記した実施形態並びに各変形例において、1つ割れ保持器2は、その全体が樹脂(例えば、熱可塑性樹脂)で成形(例えば、射出成形)されている場合を想定しているが、樹脂以外の弾性材料で当該1つ割れ保持器2を形成しても、上記した実施形態並びに各変形例と同様の構成を適用し、同様の効果を実現することができる。
【0079】
次に、本発明の他の実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器について、添付図面を参照して説明する。後述する他の実施形態では、強度の低下及びころ保持数の減少を回避しつつ、割れ部を容易かつ十分に拡張させることが可能であるとともに、内方部材への乗り上げを有効に防止可能なラジアルころ軸受用保持器(一例として、1つ割れ樹脂保持器)を提供することを目的とし、かかる目的を実現するための技術思想が示されている。
【0080】
なお、本発明に係るラジアルころ軸受用保持器が組み込まれる軸受としては、自動車や鉄道等の車両などに備えられた動力機構(一例として、自動車のトランスミッション)における回転系を軸支するための軸受などを想定することが可能であるが、これに限定されるものではない。
【0081】
かかる軸受は、内周面に円筒状の外方軌道を有する外方部材(例えば、常時非回転状態に維持される外輪やハウジング、あるいは、使用時に回転可能な歯車やローラなど)と、当該外方部材の内径側に配された内方部材(例えば、使用時に回転可能な内輪やシャフトなど)の外周面(内方軌道)と前記外方軌道との間へ転動可能に組み込まれる複数のラジアルころ(一例として、複数本のニードル)を備えている。なお、軸受のサイズ、内輪の有無、ころのサイズ(径や長さ)及び個数などは、軸受の使用条件や使用目的などに応じて任意に設定することが可能であるため、ここでは特に限定しない。
【0082】
そして、これらのころは、軌道間(外方軌道及び内方軌道)での転動時において、各ころが相互に接触して摩擦が生じることによる回転抵抗の増大や焼付きなどを防止すべく、軸受用保持器によってそのポケット内で回転自在に保持される。なお、このような回転抵抗の増大や焼付きなどをさらに効果的に防止すべく、軸受潤滑(油潤滑やグリース潤滑)を行っても構わない。
【0083】
図13には、本発明の第2実施形態に係るラジアルころ軸受用保持器(以下、1つ割れ保持器という)102の構成が示されている。なお、本実施形態においては、1つ割れ保持器102が所定の弾性材製(一例として、樹脂製)であり、当該弾性材を金型へ射出することによって全体(後述するリム部104a,104b及び柱部106)が一体成形されている場合(射出成形)を想定するが、既知の他の方法によって成形することを排除するものではない。また、射出成形後の成形体に対して切削加工や研削加工などを別途施し、完成品としての1つ割れ保持器102を形成しても構わない。
【0084】
かかる1つ割れ保持器102は、一対の円環部104a,104b(以下、リム部という)と複数の柱部106を備えて構成されており、その周方向の1箇所を、当該周方向を横断(直交)する方向に沿って分割されている。分割された領域において、一対のリム部104a,104bは、それぞれ一箇所ずつ欠損部108a,108bを有する非連続の欠円環状(略C字状)をなし、各リム部104a,104bの欠損部108a,108bが周方向に対して同一の位相をなした状態(周方向に対する欠損部108a,108bの位置が一致している状態)で、軸方向に対して同心上に所定間隔を空けて対向配置されている。すなわち、1つ割れ保持器102は、周方向に対して1つの分割部120(以下、割れ部という)を有する外観形状が略円筒状をなす(いわゆる1つ割れの保持器構造)。なお、リム部104aとリム部104bの径寸法や軸方向に対する対向間隔は、軸受のサイズなどに応じて任意に設定すればよい。
【0085】
複数の柱部106は、一対のリム部104a,104bを軸方向に連結するとともに当該リム部104a,104b間の領域を当該リム部104a,104bの周方向に隔て、図示しない転動体であるころ(ニードル)を挿入して回転自在に保持するためのポケット110を形成している。すなわち、周方向に隣り合う2つの柱部106、及び一対のリム部104a,104bで囲まれた空間に1つのポケット110が形成されている。これにより、1つ割れ保持器102は、柱部106とポケット110が周方向へ交互に配された構造となる。ただし、各リム部104a,104bの欠損部108a,108bに対して周方向の両側に近接して配された2つの柱部106(以下、欠損部近接柱部162,164という)によって隔てられるリム部104a,104b間の領域には、割れ部(分割部)120が存在し、ポケット110は形成されない。したがって、1つ割れ保持器102は、かかる領域(つまり割れ部120)に限ってころが欠落する構造、すなわち、当該領域以外は各ポケット110に1つずつころが挿入され、これらのころが周方向に対して等間隔(均一ピッチ)で配される構造をなす。
【0086】
なお、柱部106により形成するポケット110の大きさは、ころの径寸法及び長さに応じ、ポケット110において当該ころを回転自在に保持可能となるように設定すればよく、ポケット110の数(別の捉え方をすれば、柱部106の数)は、保持器102の容量(保持させるころの個数)に合わせて任意に設定すればよい。また、ポケット面(ころの周面との接触面)の形態(別の捉え方をすれば、隣り合う柱部106の周方向対向面の表面形状)は、凹曲面状(例えば、ころの周面よりもわずかに曲率の小さな凹曲面状など)とすればよい。ポケット110の周縁部には、当該ポケット110へ挿入したころが脱落不能に保持されるように、ポケット開口を狭めるような突出部(例えば、ころを把持する爪状の突起など)を設けることも可能である。
【0087】
このように、一対のリム部104a,104bにそれぞれ1箇所ずつ欠損部108a,108bを形成し、保持器102が周方向に対して1つの割れ部120を有する構造(いわゆる1つ割れの保持器構造)とすることで、かかる1つ割れ保持器102に対して割れ部120を拡張させる方向、別の捉え方をすれば、各リム部104a,104bの周方向両端面(欠損部108a,108bにおける対向面)をそれぞれ離間させる方向へ力が加わると、1つ割れ保持器102の全体が弾性変形される。この結果、割れ部120(欠損部108a,108b)を拡張させること、すなわち、1つ割れ保持器102(端的にはリム部104a,104b)を拡径させることができる。また、この状態から割れ部120を縮小させる方向、別の捉え方をすれば、各リム部104a,104bの周方向両端面(欠損部108a,108bにおける対向面)をそれぞれ近接させる方向へ力が加わると、1つ割れ保持器102の全体が上記割れ部120の拡張前のもとの状態に弾性変形される。この結果、割れ部120(欠損部108a,108b)を縮小させてもとの状態まで戻すこと、すなわち、1つ割れ保持器102(端的にはリム部104a,104b)を縮径させてもとの径寸法(拡径前の径寸法)まで戻すことができる。なお、1つ割れ保持器102に対して割れ部120を縮小させる方向へ力を加えることなく、割れ部120を拡張させる方向へ加えていた力を解除することによる1つ割れ保持器102自体の弾性復元力のみで、あるいは、当該弾性復元力に前記縮小方向への力を加えつつ、1つ割れ保持器102を縮径させ、もとの径寸法(拡径前の径寸法)まで戻すような保持器構成も想定可能である。
【0088】
これにより、1つ割れ保持器102の径寸法を自由に拡縮させることができ、各種大きさの段部や鍔部などを有する回転シャフトへの軸受の組み付けに対応することが可能となる。軸受を前記回転シャフトへ組み付けた後は、1つ割れ保持器102の割れ部120(欠損部108a,108b)が再度拡張され、当該1つ割れ保持器102の脱落や位置ずれなどが生ずることを防止する必要があり、1つ割れ保持器102にはかかる事態を防止するための係止機構が備えられている。すなわち、係止機構は、欠損部108a,108bの拡張(端的には再拡張)を防止することで、一対のリム部104a,104bを一定の径寸法に維持し、1つ割れ保持器102を定常径寸法に保つことを可能とする。
【0089】
図13には、相互に嵌合される凸部112aと凹部112bとから成る係合部を係止機構として備えた1つ割れ保持器102の構成が例示されている。この場合、割れ部120を挟んで周方向に隣り合い、対向配置された欠損部近接柱部162,164のうち、一方側分割領域(一例として、欠損部近接柱部162)には凸部112a、他方側分割領域(同、欠損部近接柱部164)には凹部112bをそれぞれ設けている。凸部112aは、欠損部近接柱部162における欠損部近接柱部164との対向面から周方向へ所定の形状及び大きさ(長さ)で突出し、凹部112bは、前記凸部112aを嵌合可能となるように、欠損部近接柱部164における欠損部近接柱部162との対向部分を、所定の形状及び大きさ(周方向への深さ)で内径側から外径側まで切り欠いている。なお、凸部112a及び凹部112bは、相互に嵌合可能であれば、これらの形状及び大きさ(長さや深さ)などは特に限定されず、1つ割れ保持器102の材質、大きさ(径寸法や幅)などに応じて任意に設定すればよい。また、前記係止機構は、1つ割れ保持器102の割れ部120(欠損部108a,108b)の再拡張を抑止することが可能であれば、相互に嵌合可能な凸部112aと凹部112bのような機構に限定されるものではなく、既知の各種機構に適宜変更可能である。
【0090】
本実施形態において、一対のリム部104a,104bは、その内周部が柱部106の内周部よりも拡径され、径方向に対して肉薄とされた薄肉部142a,142bと、当該薄肉部142a,142bよりも縮径され、径方向に対して肉厚とされた厚肉部144a,144bを有している。そして、一対のリム部104a,104bの内周部のうち、その中心に対して欠損部108a,108bの反対側に位置する部位、換言すれば、欠損部108a,108bから周方向に対して180°だけ位相をずらした部位(図13において140a,140bで示す部位、以下、起点部140a,140bという)には、薄肉部142a,142bが配されている。このように、一対のリム部104a,104bの内周部に薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bを配することで、保持器102に対して割れ部120を拡張させる方向(各リム部104a,104bの周方向両端面(欠損部108a,108bにおける対向面)をそれぞれ離間させる方向)へ力が加えた際、薄肉部142a,142bを厚肉部144a,144bよりも先んじて大きく弾性変形させることができ、1つ割れ保持器102の全体を容易に弾性変形させることができる。これにより、割れ部120(欠損部108a,108b)を容易に拡張させること、すなわち、1つ割れ保持器102を容易に拡径させることができる。
【0091】
これらの薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bは、少なくとも薄肉部142a,142bが一対のリム部104a,104bの起点部140a,140bに配されていれば、その大きさや形状、数や配設間隔は特に限定されず、任意に設定することができる。
例えば、図13には、薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bを3つずつ配した保持器102の構成を示している。この場合、起点部140a,140bに位置付けた薄肉部142a,142b(以下、便宜上、起点薄肉部142a,142bという)から周方向の両側へ略等間隔で1つずつ薄肉部142a,142bを配し、周方向に隣り合う薄肉部142a,142bの間に厚肉部144a,144bを1つずつ配している。すなわち、薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bが3つずつ、各リム部104a,104bの内周部に対して周方向へ交互に並んで、周方向に隣り合う薄肉部142a,142bと厚肉部144a,144bの境界に段差146a,146bが形成される構成となっている。そして、起点部140a,140b及びその近傍に薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)が配されるとともに、欠損部108a,108bの近傍に厚肉部144a,144b(以下、便宜上、欠損部近傍厚肉部144a,144bという)が配された構成となっている。
【0092】
また、リム部104aの3つの薄肉部142a(起点薄肉部142a)と、リム部104bの3つの薄肉部142b(起点薄肉部142b)は、周方向に対していずれも同一の位相をなして配されており、リム部104aの3つの厚肉部144a(欠損部近傍厚肉部144a)と、リム部104bの3つの厚肉部144b(欠損部近傍厚肉部144b)もまた、周方向に対していずれも同一の位相をなして配されている。つまり、薄肉部142a(起点薄肉部142a)及び厚肉部144a(欠損部近傍厚肉部144a)と、薄肉部142b(起点薄肉部142b)及び厚肉部144b(欠損部近傍厚肉部144b)とは、双方のリム部104a,104bで周方向に対称をなして配されている。
【0093】
これらの薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)と厚肉部144a,144b(欠損部近傍厚肉部144a,144b)は、複数の柱部106及びポケット110(換言すれば、ころ)に跨って連続するリム部104a,104bの内周領域に配され、隣り合う薄肉部142a,142bと厚肉部144a,144bの境界、つまり段差146a,146bは、リム部104a,104bにおける柱部106上ではなくポケット110上に位置付けられている。その際、各薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)は、それぞれ複数の柱部106及びポケット110(換言すれば、ころ)に跨って、一定の径寸法(同一径寸法)で連続し、各厚肉部144a,144b(欠損部近傍厚肉部144a,144b)もまた、それぞれ複数の柱部106及びポケット110(換言すれば、ころ)に跨って、一定の径寸法(同一径寸法)で連続している。すなわち、各薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)、及び各厚肉部144a,144b(欠損部近傍厚肉部144a,144b)は、それぞれ径方向に対して一定の肉厚で前記所定の領域に亘って連続するとともに、薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)は、厚肉部144a,144b(欠損部近傍厚肉部144a,144b)よりも径方向に対して肉薄に前記所定の領域に亘って連続する。
なお、起点薄肉部142a,142bは、その周方向中間部位が起点部140a,140bと略一致するように位置付けられている。また、欠損部近傍厚肉部144a,144bは、欠損部108a,108bにおいて2分割された状態となっているが、これらを一連のものとして1つと捉えた場合、前記所定の領域に亘って連続することとなる。
【0094】
このように、本実施形態においては、薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)が複数の柱部106及びポケット110(換言すれば、ころ)に跨って連続して配されているため、割れ部120を拡張させる際、1つ割れ保持器102に対して加えた力の応力を薄肉部142a,142bの全体(特に、起点薄肉部142a,142bの全体)に分散して作用させ、これを緩和させることができる。したがって、かかる応力がリム部104a,104bや柱部106の極限られた特定の箇所に集中して作用することを有効に回避させることができる。
【0095】
また、リム部104a,104bの内周部には、薄肉部142a,142bと厚肉部144a,144bを交互に配し、隣り合う薄肉部142a,142bと厚肉部144a,144bの境界に段差146a,146bを形成することで、かかるリム部104a,104bの内周部の径方向に対する肉厚が全周に亘って均一となることを防ぎ、これを変化させることができる。したがって、例えば、内方軌道が内方部材(使用時に回転可能な内輪やシャフトなど)の外周面に凹設され、1つ割れ保持器102が端面案内となる場合であっても、厚肉部144a,144bを前記凹設された内方軌道の縁に沿って干渉させることができ、1つ割れ保持器102が前記内方部材の外周面に乗り上げてしまうことを有効に防止することができる。この結果、軸受周りの構成に制限を受けることなく、1つ割れ保持器102、ひいては軸受を構成することが可能となる。
【0096】
さらに、薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bはリム部104a,104bに配されており、柱部106の構成には特段影響しない。このため、柱部106をより細くすることが可能となる。すなわち、同一径の1つ割れ保持器102に同一数のころを保持する場合、ころ径が大きくなるに従って柱部106は細くなるが、この場合であっても、割れ部120を拡張させ難くすること(換言すれば、1つ割れ保持器102を拡径させ難くすること)もない。したがって、1つ割れ保持器102におけるころの保持数を減少させずにころ径を大きくすることができ、軸受の負荷容量の向上を図ることが可能となる。
【0097】
なお、上述したように、これらの薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bは、少なくとも薄肉部142a,142bが一対のリム部104a,104bの起点部140a,140bに配されていれば、その大きさや形状、数や配設間隔は任意に設定することが可能であり、薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bの構成は、本実施形態(図13)に限定されない。
例えば、図14に示す本発明の第3実施形態のように、薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bを1個ずつ配した構成としてもよいし、図9に示す本発明の第4実施形態のように、薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bを10個ずつ配した構成であっても構わない。
【0098】
第3実施形態においては、図14に示すように、起点部140a,140b側に1つの薄肉部142a,142bを配し、欠損部108a,108b側に1つの厚肉部144a,144bを当該薄肉部142a,142bと連続して配している。すなわち、一対のリム部104a,104bの内周部には、起点薄肉部142a,142bと欠損部近傍厚肉部144a,144bのみが双方のリム部104a,104bで周方向に対称をなして配され、これら起点薄肉部142a,142bと欠損部近傍厚肉部144a,144bの境界に段差146a,146bが形成される構成となっている。その際、段差146a,146bは、リム部104a,104bにおける柱部106上ではなくポケット110上に位置付けられている。
【0099】
また、第4実施形態においては、図15に示すように、起点薄肉部142a,142bから周方向の両側へ略等間隔で、当該起点薄肉部142a,142bも含めて合計10個の薄肉部142a,142bを配し、周方向に隣り合う薄肉部142a,142bの間に厚肉部144a,144bを1つずつ、欠損部近傍厚肉部144a,144bも含めて合計10個配している。この場合、薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)は、1つのポケット110(換言すれば、ころ)と2本の柱部106に跨って一定の径寸法(同一径寸法)で連続し、一対のリム部104a,104bにおいて、周方向の両側に隣り合うポケット110(ころ)を1つずつ飛ばすように配されている。換言すれば、薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)と厚肉部144a,144b(欠損部近傍厚肉部144a,144b)の境界(つまり、段差146a,146b)は、一対のリム部104a,104bが柱部106によって連結される部位(リム部104a,104bにおける柱部106上)に位置付けられている。
【0100】
このように、薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)と厚肉部144a,144b(欠損部近傍厚肉部144a,144b)の境界(段差146a,146b)をリム部104a,104bにおけるポケット110上ではなく柱部106上に位置付けることで、1つ割れ保持器102の全体、すなわち、リム部104a,104b(薄肉部142a,142bと厚肉部144a,144b)及び柱部106を一体的に射出成形する場合、その金型の合わせ面が柱部106の断面上に位置付けられるため、第2実施形態(図13)や第3実施形態(図14)のように、前記境界(段差146a,146b)がリム部104a,104bにおけるポケット110上に位置付けられた場合と比べ、成形時に生じるバリの影響を抑制することができる。
【0101】
なお、上述した第2実施形態(図13)や第3実施形態(図14)において、かかる境界(段差146a,146b)をリム部104a,104bにおけるポケット110上ではなく、柱部106上に位置付けた構成とすることも可能である。
一例として、図16には、上述した第2実施形態(図13)のように、薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bを3つずつ配した1つ割れ保持器102において、これらの境界(段差146a,146b)をリム部104a,104bにおけるポケット110上ではなく、柱部106上に位置付けた構成を本発明の第5実施形態として示す。
【0102】
このように、上述した第2実施形態から第5実施形態(図13から図16)に係る1つ割れ保持器102によれば、強度の低下及びころ保持数の減少を回避しつつ、割れ部120を容易かつ十分に拡張させることが可能であるとともに、内方部材(使用時に回転可能な内輪やシャフトなど)の外周面への乗り上げを有効に防止することが可能となる。
【0103】
また、上述した第2実施形態から第5実施形態(図13から図16)においては、周方向に隣り合う薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)と厚肉部144a,144b(欠損部近傍厚肉部144a,144b)の境界に段差146a,146bを形成し、これらの薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bを一対のリム部104a,104bの内周部に対して周方向へ交互に並べた構成としているが、かかる境界に段差146a,146bを形成することなく、薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)と厚肉部144a,144b(欠損部近傍厚肉部144a,144b)を連続させた構成とすることも想定可能である。
【0104】
このように、薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)と厚肉部144a,144b(欠損部近傍厚肉部144a,144b)を段差なく連続させた構成を、本発明の第6実施形態として図17に示す。
本実施形態において、薄肉部142a,142b及び厚肉部144a,144bは、当該薄肉部142a,142bの最薄肉部位から徐々に内径寸法が縮径され、前記厚肉部144a,144bの最厚肉部位に到るまで段差なく連続されている(図17(a),(b))。このように、薄肉部142a,142b(起点薄肉部142a,142b)及び厚肉部144a,144b(欠損部近傍厚肉部144a,144b)を段差なく連続させることで、リム部104a,104bの欠損部108a,108bを連続させてなる仮想内周円の中心C1と仮想外周円の中心C2がずれた状態、すなわち両円が偏心した状態となる(図17(b))。なお、このような保持器102の構成においては、薄肉部142a,142bが径方向に対して最も薄肉となる部位である最薄肉部位が起点薄肉部142a,142bに相当し、厚肉部144a,144bが径方向に対して最も厚肉となる部位である最厚肉部位が欠損部近傍厚肉部144a,144bに相当する。
【0105】
本実施形態では、リム部104a,104bの内周部には、隣り合う薄肉部142a,142bと厚肉部144a,144bの境界に段差146a,146b(図13から図16)は形成されないが、かかるリム部104a,104bの内周部の径方向に対する肉厚が全周に亘って均一となることを防ぎ、これを変化させることは可能となる。したがって、例えば、内方軌道が内方部材(使用時に回転可能な内輪やシャフトなど)の外周面に凹設され、1つ割れ保持器2が端面案内となる場合であっても、起点薄肉部142a,142bから欠損部近傍厚肉部144a,144bに到るリム部104a,104bの内周部の任意の領域を前記凹設された内方軌道の縁に沿って干渉させることができ、1つ割れ保持器102が前記内方部材の外周面に乗り上げてしまうことを有効に防止することができる。この結果、上述した第2実施形態から第5実施形態(図13から図16)と同様に、軸受周りの構成に制限を受けることなく、1つ割れ保持器102、ひいては軸受を構成することが可能となる。
【0106】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、適宜、変形、改良、等が可能であり、上記した実施形態及び各変形例は、実施可能な範囲において、組み合わせて適用することができる。
例えば、第2〜第6実施形態における1つ割れ保持器は、第1実施形態で説明した分割部を有する構成であってもよく、また、図11及び図12で説明した複列タイプの1つ割れ保持器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0107】
2 1つ割れ保持器
2p ポケット
4,6 円環部
8 柱部
10 分割部
10a 一方側分割領域
10b 他方側分割領域
30 拡径規制用凹部
32 拡径規制用凸部
Sa 一方側分割面
Sb 他方側分割面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図17
図18