特許第5834710号(P5834710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834710
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】無段変速装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/44 20060101AFI20151203BHJP
   F16H 15/38 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   F16H3/44 B
   F16H15/38
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-213784(P2011-213784)
(22)【出願日】2011年9月29日
(65)【公開番号】特開2013-72533(P2013-72533A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2014年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】大石 保徳
(72)【発明者】
【氏名】西井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 英司
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−280867(JP,A)
【文献】 特開2006−132595(JP,A)
【文献】 特開2008−208927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/44
F16H 15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源により回転駆動される入力回転軸と、この入力回転軸の周囲に、この入力回転軸と同心に設けられて、この入力回転軸をその入力部として運転されるトロイダル型無段変速機と、この入力回転軸と平行に設けられた出力回転軸と、動力の伝達方向に関してこれら入力回転軸と出力回転軸との間部分に、これら入力回転軸及び出力回転軸と平行に設けられた中間回転伝達軸と、この中間回転伝達軸の周囲に設けられた、前進用、後退用両遊星歯車機構と、前記トロイダル型無段変速機の出力部とこれら両遊星歯車機構の入力部との間に設けられた入力側動力伝達機構と、クラッチ装置と、これら両遊星歯車機構の出力部と前記出力回転軸との間に設けられた出力側動力伝達機構とを備え、
前記クラッチ装置はその切換に伴って、前記両遊星歯車機構のうちの何れか一方の遊星歯車機構を前記トロイダル型無段変速機の出力部と前記出力回転軸との間の動力伝達経路中に組み込み、他方の遊星歯車機構をこの動力伝達経路中から切り離す機能を有し、前進時に接続され後退時に切断される前進用クラッチと、後退時に接続され前進時に切断される後退用クラッチとから構成されるものであり、
前記前進用、後退用両遊星歯車機構は何れも、前記トロイダル型無段変速機の出力部の回転に伴って回転する太陽歯車と、それぞれの太陽歯車の周囲に配置されたリング歯車と、それぞれの太陽歯車とリング歯車との間に設けられ、それぞれがこれら太陽歯車とリング歯車との両方の歯車に噛合した複数の遊星歯車とを備えたシングルピニオン型であり、前記前進用、後退用両遊星歯車機構のうちの一方の遊星歯車機構は、キャリアが固定されていて前記リング歯車の回転を前記出力回転軸に伝達するものであり、他方の遊星歯車機構は、前記リング歯車が固定されていてキャリアの回転を前記出力回転軸に伝達するものである、無段変速装置。
【請求項2】
前記前進用、後退用両クラッチが、前記トロイダル型無段変速機の出力部と、前記前進用、後退用両遊星歯車機構を構成する1対の太陽歯車との間にそれぞれ設けられたものである、請求項1に記載した無段変速装置。
【請求項3】
前記中間回転伝達軸が、内径側回転伝達軸と、この内径側回転伝達軸の中間部周囲に、この内径側回転伝達軸に対する相対回転を可能に配置された、円管状の外径側回転伝達軸とから成る二重構造であり、前記前進用、後退用両遊星歯車機構を構成する1対の太陽歯車が、それぞれ前記内径側回転伝達軸又は前記外径側回転伝達軸の一部に、当該回転伝達軸と同期した回転を自在に設置されており、前記前進用、後退用両クラッチは、それぞれ前記内径側回転伝達軸又は前記外径側回転伝達軸と前記トロイダル型無段変速機の出力部との間に設けられている、請求項2に記載した無段変速装置。
【請求項4】
前記入力側動力伝達機構が、前記トロイダル型無段変速機の出力部に設けられた出力部材を含んで構成されるものであり、前記中間回転伝達軸の軸方向に関して、前記クラッチ装置と前記前進用、後退用両遊星歯車機構とが、互いに反対側に配置されている、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した無段変速装置。
【請求項5】
出力側動力伝達機構は、デファレンシャルギヤを含んで構成されたものであり、前記クラッチ装置の切換に伴って、前記前進用、後退用両遊星歯車機構のうちの何れか一方の遊星歯車機構の出力部により前記デファレンシャルギヤの入力部を回転駆動し、このデファレンシャルギヤの出力部により、左右1対の出力回転軸を回転駆動する、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した無段変速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変速比を変更する為の変速機構としてトロイダル型無段変速機を組み込み、自動車用の自動変速機として使用する無段変速装置の改良に関する。具体的には、小型に構成できて限られた空間に設置し易く、しかも優れた伝達効率を有する、前置エンジン前輪駆動車(FF車)用として好適な構造を実現するものである。
【背景技術】
【0002】
変速機構としてトロイダル型無段変速機を組み込み、比較的小型に構成できるFF車用の自動変速機として、特許文献1に記載されたものが知られている。図5は、この特許文献1に記載された無段変速装置の原理を示している。この無段変速装置は、動力の伝達方向に関して上流側から順番に、入力回転軸1と、第一中間回転伝達軸2と、アイドラ軸3と、第二中間回転伝達軸4と、出力回転軸5とを互いに平行に設けている。このうちの入力回転軸1は、駆動源である図示しないエンジンにより、トルクコンバータ等の発進クラッチ6を介して一方向に回転駆動される。この様な前記入力回転軸1の周囲に、トロイダル型無段変速機7を設けている。この入力回転軸1の回転は、1対の入力ディスク8、8と図示しないパワーローラとを介して出力ディスク9に伝わり、この出力ディスク9の回転が、入力側歯車伝達機構10を介して、前記第一中間回転伝達軸2に伝達される。次に、この第一中間回転伝達軸2の回転は、前進用クラッチ11及び前進用歯車伝達機構12を介して、又は、後退用クラッチ13及び後退用歯車伝達機構14を介して、前記第二中間回転伝達軸4に伝達される。更に、この第二中間回転伝達軸4の回転は、出力側歯車伝達機構15を介して、デファレンシャルギヤ16の入力部に伝達され、このデファレンシャルギヤ16の出力部である、前記出力回転軸5が回転駆動される。車両を前進させる場合には、前記前進用クラッチ11を接続すると共に、前記後退用クラッチ13の接続を断つ。これに対して、車両を後退させる場合には、この後退用クラッチ13を接続すると共に、前記前進用クラッチ11の接続を断つ。
【0003】
上述の図5に示した様な無段変速装置の場合、比較的小型に構成できるとは言え、互いに平行な5本の軸1〜5を備えており、未だ十分な小型・軽量化を図れるとは言えない。前記発進クラッチ6と前記トロイダル型無段変速機7との間に逆転機構を設ける事も考えられるが、この場合には前記トロイダル型無段変速機7を両方向に回転させる必要が生じ、このトロイダル型無段変速機7の制御が面倒になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−75863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、トロイダル型無段変速機の制御を面倒にする事なく、入力部と出力部との間に配置する軸の数を少なく抑えて、より小型且つ軽量に構成できる無段変速装置の構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の無段変速装置は、入力回転軸と、トロイダル型無段変速機と、出力回転軸と、中間回転伝達軸と、前進用、後退用両遊星歯車機構と、入力側動力伝達機構と、クラッチ装置と、出力側動力伝達機構とを備える。
このうちの入力回転軸は、エンジン等の駆動源により回転駆動される。
又、前記トロイダル型無段変速機は、前記入力回転軸の周囲に、この入力回転軸と同心に設けられて、この入力回転軸をその入力部として運転される。
又、前記出力回転軸は、この入力回転軸と平行に設けられ、例えば、回転に伴って左右1対の駆動輪を回転駆動する。
又、前記中間回転伝達軸は、動力の伝達方向に関して前記入力回転軸と前記出力回転軸との間部分に、これら入力回転軸及び出力回転軸と平行に設けられている。
又、前記前進用、後退用両遊星歯車機構は、中間回転伝達軸の周囲に設けられている。
又、前記入力側動力伝達機構は、前記トロイダル型無段変速機の出力部と前記両遊星歯車機構の入力部との間に設けられている。
又、前記クラッチ装置は、その切換に伴って、前記両遊星歯車機構のうちの何れか一方の遊星歯車機構を前記トロイダル型無段変速機の出力部と前記出力回転軸との間の動力伝達経路中に組み込み、他方の遊星歯車機構をこの動力伝達経路中から切り離す機能を有する。
更に、前記出力側動力伝達機構は、前記両遊星歯車機構の出力部と前記出力回転軸との間に設けられている。
又、前記クラッチ装置は、具体的には、前進時に接続され後退時に切断される前進用クラッチと、後退時に接続され前進時に切断される後退用クラッチとにより構成する事ができる。
【0007】
又、本発明の無段変速装置場合には、追加的に、前記前進用、後退用両遊星歯車機構を何れも、前記トロイダル型無段変速機の出力部の回転に伴って回転する太陽歯車と、それぞれの太陽歯車の周囲に配置されたリング歯車と、それぞれの太陽歯車とリング歯車との間に設けられ、それぞれがこれら太陽歯車とリング歯車との両方の歯車に噛合した複数の遊星歯車とを備えたシングルピニオン型とする。そして、前記両遊星歯車機構のうちの一方の遊星歯車機構を、キャリアが固定されていて前記リング歯車の回転を前記出力回転軸に伝達するものとし、他方の遊星歯車機構を、前記リング歯車が固定されていてキャリアの回転を前記出力回転軸に伝達するものとする。
【0008】
上述の様な本発明の無段変速装置を実施する場合には、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記前進用、後退用両クラッチを、前記トロイダル型無段変速機の出力部と、前記前進用、後退用両遊星歯車機構を構成する1対の太陽歯車との間にそれぞれ設ける。
この様な請求項2に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記中間回転伝達軸を、内径側回転伝達軸と、この内径側回転伝達軸の中間部周囲に、この内径側回転伝達軸に対する相対回転を可能に配置された、円管状の外径側回転伝達軸とから成る二重構造とする。そして、前記前進用、後退用両遊星歯車機構を構成する1対の太陽歯車を、それぞれ前記内径側回転伝達軸又は前記外径側回転伝達軸の一部に、当該回転伝達軸と同期した回転を自在に設置し、前記前進用、後退用両クラッチを、それぞれ前記内径側回転伝達軸又は前記外径側回転伝達軸と前記トロイダル型無段変速機の出力部との間に設ける。
【0009】
上述の様な請求項1〜3に記載した無段変速装置を実施する場合、例えば請求項4に記載した発明の様に、前記入力側動力伝達機構を、前記トロイダル型無段変速機の出力部に設けられた出力部材を含んで構成されるものとし、前記中間回転伝達軸の軸方向に関して、前記クラッチ装置と前記前進用、後退用両遊星歯車機構とを、互いに反対側に配置する。
【0010】
上述の様な本発明の無段変速装置を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、出力側動力伝達機構を、デファレンシャルギヤを含んで構成されたものとし、前記クラッチ装置の切換に伴って、前記前進用、後退用両遊星歯車機構のうちの何れか一方の遊星歯車機構の出力部により前記デファレンシャルギヤの入力部を回転駆動し、このデファレンシャルギヤの出力部により、左右1対の出力回転軸を回転駆動する。
【0011】
尚、本発明の範囲からは外れるが、例えば、前記前進用、後退用両遊星歯車機構を、固定部分に支持されて回転しないキャリアを備え、これら両遊星歯車機構は何れも、前記中間回転伝達軸と共に回転する太陽歯車と、それぞれの太陽歯車の周囲に配置されたリング歯車と、それぞれの太陽歯車とリング歯車との間に設けられた複数の遊星歯車とを備えたものとする事もできる。そして、何れか一方の遊星歯車機構を、各遊星歯車を前記太陽歯車と前記リング歯車との両方の歯車に噛合させるシングルピニオン型とし、他方の遊星歯車機構を、各遊星歯車毎に1対ずつ設けた遊星歯車素子を互いに噛合させると共に、一方の遊星歯車素子を前記太陽歯車に、他方の遊星歯車素子を前記リング歯車に、それぞれ噛合させたダブルピニオン型とする。
この様な構成を有する無段変速装置を実施する場合に好ましくは、例えば、前記シングルピニオン型の遊星歯車機構を構成する各遊星歯車と、前記ダブルピニオン型の遊星歯車機構を構成する各遊星歯車素子のうち、前記リング歯車と噛合している各遊星歯車素子とを同期した回転を自在に結合する事により、前記前進用、後退用両遊星歯車機構で1個のリング歯車を共用する事もできる。
又、上述の様な構成を有する無段変速装置を実施する場合に、例えば、前記前進用、後退用両クラッチを、前記前進用、後退用両遊星歯車機構を構成する1対のリング歯車と、前記出力側伝達機構との間にそれぞれ設ける事もできる。
【発明の効果】
【0012】
上述の様に構成する本発明によれば、入力回転軸を一方向に回転させた状態のまま、出力回転軸を両方向に回転させられる無段変速装置を、これら入力、出力両回転軸に加えて中間回転伝達軸を加えたのみの、3軸構造により実現できる。この為、前述の図5に示した様な5軸構造の無段変速装置に比べて、大幅な小型・軽量化が可能になる。又、トロイダル型無段変速機の回転方向を変更する必要もない為、このトロイダル型無段変速機の制御が面倒になる事もない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に関する参考例の第1例を示す略断面図。
図2同じく参考例の第2例を示す略断面図。
図3本発明の実施の形態の第1例を示す略断面図。
図4同じく実施の形態の第2例を示す略断面図。
図5】従来構造の1例を示す略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
参考例の第1例]
図1は、本発明に関する参考例の第1例を示している。尚、本参考例を含めて本発明の特徴は、入力回転軸1の周囲に設けたトロイダル型無段変速機7の出力部と、出力回転軸5を設けたデファレンシャルギヤ16との間に設けられた、前後進切換機構を備えた動力伝達機構部分の構造にある。前記トロイダル型無段変速機7及びデファレンシャルギヤ16を含めて、その他の部分の構造及び作用は、従来から広く知られている為、詳しい図示並びに説明は省略乃至簡略にし、以下、本参考例の特徴部分を中心に説明する。
【0015】
前記トロイダル型無段変速機7と前記デファレンシャルギヤ16との間部分に中間回転伝達軸17を、前記入力回転軸1及び前記出力回転軸5と平行に設けている。そして、前記トロイダル型無段変速機7の出力部である、出力ディスク9の回転を、入力側歯車伝達機構10aにより、前記中間回転伝達軸17に伝達自在としている。本参考例の場合、これら出力ディスク9と入力側歯車伝達機構10aとの間に設ける入力側動力伝達機構として歯車式のものを使用しているが、チェンとスプロケットとから成る構造等、歯車式以外の構造を採用する事もできる。何れにしても、前記中間回転伝達軸17の周囲に、前進用、後退用、2組の遊星歯車機構18、19を設けている。
【0016】
これら両遊星歯車機構18、19は、共通のキャリア20を備えており、このキャリア20は、変速装置のケーシングの内部に設けた取付部等の固定部分に支持固定されて回転しない。又、前記中間伝達軸17の中間部先端寄り部分に前進用太陽歯車21を、同じく先端部に後退用太陽歯車22を、それぞれ前記中間伝達軸17と同期した回転を自在に組み付けている。又、このうちの前進用太陽歯車21の周囲に前進用リング歯車23を、同じく後退用太陽歯車22の周囲に後退用リング歯車24を、それぞれこれら両太陽歯車21、22と同心に、互いに独立した回転を自在に配置している。
【0017】
そして、前記前進用太陽歯車21と前記前進用リング歯車23とに、前記キャリア20の先端寄り(図1の左寄り)部分に回転自在に支持した、複数個(3〜4個)の前進用遊星歯車25、25を噛合させて、シングルピニオン型である、前記前進用遊星歯車機構18を構成している。これに対して、前記後退用太陽歯車22と前記後退用リング歯車24とに、前記キャリア20の基端寄り(図1の右寄り)部分に回転自在に支持した、複数組(3〜4組)の後退用遊星歯車26、26を設置している。これら各後退用遊星歯車26、26は、それぞれ1組ずつの遊星歯車素子27a、27bから成る。これら各組の遊星歯車素子27a、27bは、互いに噛合すると共に、一方(前記後退用遊星歯車機構19の径方向に関して内側)の遊星歯車素子27a、27aを前記後退用太陽歯車22に、他方(前記後退用遊星歯車機構19の径方向に関して外側)の遊星歯車素子27b、27bを前記後退用リング歯車24に、それぞれ噛合させて、ダブルピニオン型の、前記後退用遊星歯車機構19を構成している。
【0018】
上述の様に、前記前進用遊星歯車機構18をシングルピニオン型とし、前記後退用遊星歯車機構19をダブルピニオン型とすると共に、これら両遊星歯車機構18、19の太陽歯車21、22を、前記中間回転伝達軸17と共に、互いに同方向に回転する様にしている。この為、前記前進用遊星歯車機構18を構成する前進用リング歯車23と、前記後退用遊星歯車機構19を構成する後退用リング歯車24とは、互いに逆方向に回転する。そこで、これら両リング歯車23、24の回転を、選択的に前記デファレンシャルギヤ16に、出力側歯車伝達機構15aを通じて取り出し自在としている。この為に本参考例の場合には、前記前進用リング歯車23と前記出力側歯車伝達機構15aとの間に前進用クラッチ28を、前記後退用リング歯車24とこの出力側歯車伝達機構15aとの間に後退用クラッチ29を、それぞれ設けている。これら両クラッチ28、29は、多板クラッチ等、十分なトルク伝達容量を備えたもので、一方のクラッチ28(29)が接続された場合には、他方のクラッチ29(28)の接続が断たれる。両方のクラッチ28、29の接続が断たれる瞬間はあっても、両方のクラッチ28、29が同時に接続される事はない。
【0019】
上述の様な本参考例の無段変速装置の場合、車両を前進させる際には、前記前進用クラッチ28を接続すると共に、前記後退用クラッチ29の接続を断つ。この状態では、前記トロイダル型無段変速機7を構成する、前記出力ディスク9から前記中間回転伝達軸17に伝えられた回転が、前記前進用遊星歯車機構18と、前記前進用クラッチ28と、前記出力側歯車伝達機構15aとを介して前記デファレンシャルギヤ16に伝達され、このデファレンシャルギヤ16の出力部に設けた左右1対の出力回転軸5、5を同方向に回転させて、図示しない駆動輪を前進方向に回転駆動する。これに対して、車両を後退させる際には、前記後退用クラッチ29を接続すると共に、前記前進用クラッチ28の接続を断つ。この状態では、前記中間回転伝達軸17の回転が、前記後退用遊星歯車機構19と、前記後退用クラッチ29と、前記出力側歯車伝達機構15aとを介して前記デファレンシャルギヤ16に伝達され、前記駆動輪を後退方向に回転駆動する。
【0020】
上述の様に本参考例の無段変速装置の場合、前記入力回転軸1と、前記中間回転伝達軸17と、前記出力回転軸5、5との、3軸構造であり、小型且つ軽量にする為の設計が容易であるにも拘らず、前記入力回転軸1を一方向に回転させた状態のまま、前記出力回転軸5、5を両方向に回転させられる。この為、設置スペースが限られたFF車用の自動変速機として、非常に有用性が高い。又、前進時と後退時とで、前記トロイダル型無段変速機7の回転方向を変更する必要もない為、このトロイダル型無段変速機7の制御が面倒になる事もない。更に、小型に構成できる事に伴い、無段変速装置全体としての摩擦損失を少なく抑えて、この無段変速装置の伝達効率の向上の図り易い。
【0021】
参考例の第2例]
図2は、本発明に関する参考例の第2例を示している。本参考例の場合には、シングルピニオン型である前進用遊星歯車機構18aを構成する各前進用遊星歯車25a、25aと、ダブルピニオン型の後退用遊星歯車機構19aを構成する各遊星歯車素子27a、27cのうち、径方向外側の遊星歯車素子27c、27cとを互いに結合固定して(軸方向寸法が長い一体構造として)これら各遊星歯車素子27c、27cと前記各前進用遊星歯車25a、25aとが同期して回転する様にしている。そして、これら各遊星歯車素子27c、27c及び各前進用遊星歯車25a、25aを、単一のリング歯車30に噛合させている。又、このリング歯車30の回転を、出力側歯車伝達機構15aを介して、デファレンシャルギヤ16の入力部に伝達する様にしている。
【0022】
本参考例の場合には、前進用遊星歯車機構18aを構成する前進用太陽歯車21aと、前記後退用遊星歯車機構19aを構成する後退用太陽歯車22aとを、トロイダル型無段変速機7の出力ディスク9の回転に基づき、選択的に回転駆動する様に構成している。即ち、本参考例の場合には、動力の伝達方向に関して、前記出力ディスク9の回転を取り出す為の入力側歯車伝達機構10bの下流側端部に、クラッチ装置を構成する、前進用、後退用両クラッチ28a、29aを設けている。これら両クラッチ28a、29aにより、前記前進用、後退用両太陽歯車21a、22aを選択的に回転駆動させる為、本参考例の場合には、中間回転伝達軸17aを、円管状の外径側回転伝達軸31の内側に円杆状の内径側回転伝達軸32を挿通した、二重構造としている。言い換えれば、この内径側回転伝達軸32の中間部周囲に前記外径側回転伝達軸31を、この内径側回転伝達軸32に対する相対回転を可能に配置している。
【0023】
そして、前記前進用太陽歯車21aを前記外径側回転伝達軸31の先端部に、前記後退用太陽歯車22aを前記内径側回転伝達軸32の先端部に、それぞれこれら外径側回転伝達軸31又は内径側回転伝達軸32と同期した回転を自在に設置している。前記前進用クラッチ28aは、前記外径側回転軸31の基端部と前記入力側歯車伝達機構10bとの間に、前記後退用クラッチ29aは、前記内径側回転伝達軸32の基端部とこの入力側歯車伝達機構10bとの間に、それぞれ設置している。本参考例の場合には、この入力側歯車伝達機構10bを挟んで、前記前進用、後退用両クラッチ28a、29aと、前記前進用、後退用両遊星歯車機構18a、19aとを、軸方向に関して互いに反対側に配置している。
【0024】
上述の様に構成する本参考例の構造の場合も、3軸構造で小型・軽量化を図り易い構造であるにも拘らず、前記前進用、後退用両クラッチ28a、29aを選択的に接続する事により、入力回転軸1を一方向に回転させたまま、出力回転軸5、5を両方向に回転させられる。しかも本参考例の構造の場合には、次の(1)〜(3)の効果を、合わせて得られる。
(1) 前記前進用、後退用両クラッチ28a、29aと、前記前進用、後退用両遊星歯車機構18a、19aとをバランス良く配置できて、小型・軽量化を図る面から有利である。
(2) これら前進用、後退用両遊星歯車機構18a、19aで、単一のリング歯車30を共用している為、径が大きく、従って重量が嵩むリング歯車の数を減らす事で、より小型・軽量化を図れる。
(3) 前記前進用、後退用両クラッチ28a、29aを、動力の伝達方向に関して、減速機として機能する、前記前進用、後退用両遊星歯車機構18a、19aよりも上流側に配置するので、前記前進用、後退用両クラッチ28a、29aを通過するトルクを低く抑えられる。この結果、これら両クラッチ28a、29aのトルク伝達容量を低く抑え、これら両クラッチ28a、29aを小型化する事ができて、無段変速装置全体としての小型・軽量化も図り易い。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例の第1例とほぼ同様であるから、重複する説明は省略する。
【0025】
[実施の形態の第1例
図3は、請求項1〜5に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の場合、前進用、後退用両遊星歯車機構18b、19bは何れも、シングルピニオン型である。即ち、このうちの前進用遊星歯車機構18bは、中間伝達軸17aを構成する内径側回転伝達軸32の先端部に設けた前進用太陽歯車21aと、この前進用太陽歯車21aの周囲に設けた前進用リング歯車23aとの間に複数個の前進用遊星歯車25、25を設け、これら各前進用遊星歯車25、25を、前記前進用太陽歯車21a及び前記前進用リング歯車23aに噛合させて成る。又、前記各前進用遊星歯車25、25を回転自在に支持したキャリア20aを、ケーシングの内部に設けた取付部等の固定部分に支持固定して、回転を阻止している。更に、前記前進用リング歯車23aの回転を、前記後退用遊星歯車機構19bを構成するキャリア20bと出力側歯車伝達機構15aとを通じて、デファレンシャルギヤ16に取り出す様にしている。
【0026】
これに対して、前記後退用遊星歯車機構19bは、前記中間伝達軸17aを構成する外径側回転伝達軸31の先端部に設けた後退用太陽歯車22aと、この後退用太陽歯車22aの周囲に設けた後退用リング歯車24aとの間に複数個の後退用遊星歯車26a、26aを設け、これら各後退用遊星歯車26a、26aを、前記後退用太陽歯車22a及び前記後退用リング歯車24aに噛合させて成る。又、この後退用リング歯車24aを、固定の部分に支持固定し、回転を阻止している。更に、前記各後退用遊星歯車26a、26aを回転自在に支持した、前記キャリア20bの回転(これら各後退用遊星歯車26a、26aの公転運動)を、前記出力側歯車伝達機構15aを通じて、前記デファレンシャルギヤ16に取り出す様にしている。
【0027】
上述の様に構成する本例の場合も、3軸構造で小型・軽量化を図り易い構造であるにも拘らず、前進用、後退用両クラッチ28a、29aを選択的に接続する事により、入力回転軸1を一方向に回転させたまま、出力回転軸5、5を両方向に回転させられる。又、本例の構造の場合には、上述した参考例の第2例の場合に得られる、前記(1)(3)の効果に加えて、前記前進用、後退用両遊星歯車機構18b、19bを、何れもシングルピニオン型とする事による、構造の簡略化も図れる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した参考例の第2例とほぼ同様であるから、重複する説明は省略する。
【0028】
[実施の形態の第2例
図4も、請求項1〜5に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、前進用、後退用両遊星歯車機構18c、19cの配置を、上述した実施の形態の第1例の場合とは逆にしている。これに合わせて、前進用、後退用両クラッチ28a、29aの配置、並びに、回転を阻止する部材を、中間回転伝達軸17aの軸方向に関して、上述の実施の形態の第1例とは逆にしている。配置が逆になった点以外の基本的な構造及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明を構成するトロイダル型無段変速機は、図示の様なハーフトロイダル型に限らず、フルトロイダル型であっても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 入力回転軸
2 第一中間回転伝達軸
3 アイドラ軸
4 第二中間回転伝達軸
5 出力回転軸
6 発進クラッチ
7 トロイダル型無段変速機
8 入力ディスク
9 出力ディスク
10、10a、10b 入力側歯車伝達機構
11 前進用クラッチ
12 前進用歯車伝達機構
13 後退用クラッチ
14 後退用歯車伝達機構
15、15a 出力側歯車伝達機構
16 デファレンシャルギヤ
17、17a 中間回転伝達軸
18、18a、18b、18c 前進用遊星歯車機構
19、19a、19b、19c 後退用遊星歯車機構
20、20a、20b キャリア
21、21a 前進用太陽歯車
22、22a 後退用太陽歯車
23、23a 前進用リング歯車
24、24a 後退用リング歯車
25、25a 前進用遊星歯車
26、26a 後退用遊星歯車
27a、27b、27c 遊星歯車素子
28、28a 前進用クラッチ
29、29a 後退用クラッチ
30 リング歯車
31 外径側回転伝達軸
32 内径側回転伝達軸
図1
図2
図3
図4
図5