特許第5834751号(P5834751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許5834751着磁パルサリング及びその製造方法、並びに転がり軸受装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5834751
(24)【登録日】2015年11月13日
(45)【発行日】2015年12月24日
(54)【発明の名称】着磁パルサリング及びその製造方法、並びに転がり軸受装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20151203BHJP
   F16C 19/18 20060101ALI20151203BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20151203BHJP
   F16C 41/00 20060101ALI20151203BHJP
【FI】
   G01D5/245 110M
   F16C19/18
   F16C33/78 Z
   F16C41/00
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-225878(P2011-225878)
(22)【出願日】2011年10月13日
(65)【公開番号】特開2013-88134(P2013-88134A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 貴則
【審査官】 大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−025088(JP,A)
【文献】 特開2009−257410(JP,A)
【文献】 特開2010−232942(JP,A)
【文献】 特開2009−025200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/245
G01P 3/487
F16C 19/18
F16C 33/78
F16C 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のフランジ部を有し、回転体に一体回転可能に固定される支持部材と、前記フランジ部の一側面に設けられかつ多数の磁極が周方向に所定間隔で配列された合成樹脂製の環状の磁石部材と、を備えている着磁パルサリングであって、
前記磁石部材と前記フランジ部との間に挟まれて両者を接着し、磁石部材15と支持部材11との熱変形量の差を弾性によって吸収する接着部と、前記磁石部材の径方向端部に係止する第1係止部と、前記フランジ部の径方向端部に係止する第2係止部とを一体に備え、かつ前記磁石部材の合成樹脂材とは異なる材質である熱可塑性エラストマーによって形成された固定部材を備え
前記磁石部材の径方向外端面の全面が、前記フランジ部側ほど直径が大きくなる傾斜面に形成され、前記固定部材の第1係止部が、前記磁石部材の径方向外端面の全面に当接することによって係止する傾斜面からなる係止面を有しており、
前記フランジ部の径方向外端面の全面が、磁石部材側ほど直径が大きくなる傾斜面に形成され、前記固定部材の第2係止部が、前記フランジ部の径方向外端面の全面に当接することによって係止する傾斜面からなる係止面を有しており
前記第1係止部は、フランジ部側ほど径方向の厚さが小さく、
前記第2係止部は、前記磁石部材側ほど径方向の厚さが小さいことを特徴とする着磁パルサリング。
【請求項2】
前記支持部材と成形済みの前記磁石部材をインサート部品として、前記固定部材がインサート成形されている、請求項1に記載の着磁パルサリング。
【請求項3】
請求項2に記載の着磁パルサリングを製造する方法であって、
前記支持部材と成型済みの前記磁石部材とを金型内に挿入し、前記固定部材の成型材料を前記金型内に充填することによって、前記支持部材、前記磁石部材、及び前記固定部材をインサート成形により一体化することを特徴とする着磁パルサリングの製造方法
【請求項4】
回転体としての内輪と、
この内輪の径方向外方に配置される外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に転動可能に設けられる複数の転動体と、
前記内輪の外周面に取り付けられる請求項1又は2に記載の着磁パルサリングと、を備えていることを特徴とする転がり軸受装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪等の回転速度(回転数)を検出するためのセンサ装置を構成する着磁パルサリング及びその製造方法、並びに着磁パルサリングを備えた転がり軸受装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)を備えた自動車等の車両には、車輪の回転速度を検出するためのセンサ装置が備えられている。このセンサ装置としては、車両に車輪を取り付けるためのハブユニットの内輪側(回転側)に設けられた着磁パルサリングと、外輪側(固定側)に設けられた磁気センサとを備えたものが知られている。
【0003】
下記特許文献1、2に記載された着磁パルサリングは、環状の支持部材と、この支持部材に接着された磁石部材とから構成されている。支持部材は、金属材料によって形成されており、内輪の外周面に嵌合される円筒部と、この円筒部の軸方向外端部から径方向外方へ屈曲して延びるフランジ部とを有して断面略L字形状に形成されている。磁石部材は、合成樹脂材料によって形成され、支持部材のフランジ部の軸方向外側面にインサート成形によって一体化されている。また、支持部材のフランジ部には予めフェノール樹脂系等の熱硬化性の接着剤が塗布され、インサート成形の際に、溶融した磁石部材からの熱で接着剤を硬化させることによって、フランジ部と磁石部材とが強固に接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−3222号公報
【特許文献2】特開2006−170308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載された着磁パルサリングのように、支持部材が金属材料によって形成され、磁石部材が合成樹脂材料によって形成されている場合、両者は熱膨張率が異なるため、例えば、着磁パルサリングが過酷な温度環境下(例えば、−40℃〜120℃外の環境下)で使用されると、磁石部材と支持部材との熱変形量の差(熱膨張差、熱収縮差)によって接着剤の接着力が弱まり、支持部材に対して磁石部材が位置ずれしたり、支持部材から磁石部材が剥離ないし脱落したりする可能性がある。また、このような位置ずれや剥離等を防止するために磁石部材と支持部材との接着強度を高めると、支持部材と磁石部材との熱変形量の差によって磁石部材に大きな応力が発生する。特に、低温環境下では磁石部材が脆化するため、前記応力によって磁石部材が破損しやすくなる可能性がある。
【0006】
また、磁石部材の強度を向上させるために、ガラス繊維等によって強化することも考えられるが、これでは材料コストが増大するとともに、相対的に磁性粉の量が減少するため、磁力が低下して検出精度が悪化するという弊害がある。
さらに、支持部材と磁石部材とを接着剤を用いずにインサート成形によって一体化し、支持部材のフランジ部に対する磁石部材の脱落等を防止するために、磁石部材の外周部にフランジ部に係合する鉤状部分を一体に形成する技術も知られている。しかしながら、この場合には、低温環境下において磁石部材が支持部材よりも大きく熱収縮すると、鉤状部分に応力が集中して破損する可能性がある。また、この応力集中を緩和するためにフランジ部の外周端の断面形状を曲面形状等にすることも考えられるが、これでは加工コストが増大する。また、接着剤を用いずに磁石部材とフランジ部とインサート成形すると、両者の間に水が入り込みフランジ部に錆が生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、支持部材に対する磁石部材の位置ずれや剥離等を防止することができる着磁パルサリング及びその製造方法、並びに転がり軸受装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、環状のフランジ部を有し、回転体に一体回転可能に固定される支持部材と、前記フランジ部の一側面に設けられかつ多数の磁極が周方向に所定間隔で配列された合成樹脂製の環状の磁石部材と、を備えている着磁パルサリングであって、前記磁石部材と前記フランジ部との間に挟まれて両者を接着し、磁石部材15と支持部材11との熱変形量の差を弾性によって吸収する接着部と、前記磁石部材の径方向端部に係止する第1係止部と、前記フランジ部の径方向端部に係止する第2係止部とを一体に備え、かつ前記磁石部材の合成樹脂材とは異なる材質である熱可塑性エラストマーによって形成された固定部材を備え、前記磁石部材の径方向外端面の全面が、前記フランジ部側ほど直径が大きくなる傾斜面に形成され、前記固定部材の第1係止部が、前記磁石部材の径方向外端面の全面に当接することによって係止する傾斜面からなる係止面を有しており、前記フランジ部の径方向外端面の全面が、磁石部材側ほど直径が大きくなる傾斜面に形成され、前記固定部材の第2係止部が、前記フランジ部の径方向外端面の全面に当接することによって係止する傾斜面からなる係止面を有しており、前記第1係止部は、フランジ部側ほど径方向の厚さが小さく、前記第2係止部は、前記磁石部材側ほど径方向の厚さが小さいことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、着磁パルサリングが温度変化の激しい環境下で使用されることによって支持部材と磁石部材とが異なる熱変形量で変形したとしても、支持部材のフランジ部と磁石部材とが熱可塑性エラストマーにより形成された固定部材の接着部によって接着されるので、当該接着部によって磁石部材と支持部材との熱変形量の差を吸収することができ、磁石部材に付与される応力を低減することができる。さらに、接着部によってフランジ部と磁石部材との間の水の浸入を防止することができ、フランジ部の錆の発生を防止することができる。また、固定部材の係止部が磁石部材及びフランジ部の径方向端部に係止しているので、フランジ部に対して強固に磁石部材を固定することが可能となる。
【0010】
(2)前記フランジ部の径方向端面の全面は、前記磁石部材側ほど直径が大きくなる傾斜面に形成されており、前記固定部材の第2係止部が、前記フランジ部の径方向端面の全面に当接することによって係止する係止面を有しているので、フランジ部の径方向端面に対して係止面を当接するだけで、フランジ部と固定部材との軸方向及び径方向の相対移動を規制することができる。
【0011】
(3)前記磁石部材の径方向端面の全面は、前記フランジ部側ほど直径が大きくなる傾斜面に形成されており、前記固定部材の第1係止部が、前記磁石部材の径方向端面の全面に当接することによって係止する係止面を有しいているので、磁石部材の径方向端面に対して係止面を当接するだけで、磁石部材と固定部材との軸方向及び径方向の相対移動を規制することができる。
【0012】
(4)前記固定部材は、前記支持部材及び成形済みの前記磁石部材をインサート部品としてインサート成形されていることが好ましい。
このような構成によって、支持部材、磁石部材、及び固定部材を一体化した着磁パルサリングを容易に製造することができる。
【0013】
(5)この場合、前記着磁パルサリングの製造方法は、前記支持部材と成型済みの前記磁石部材とを金型内に挿入し、前記固定部材の成型材料を前記金型内に充填することによって、前記支持部材、前記磁石部材、及び前記固定部材をインサート成形により一体化することができる。
【0014】
(6)本発明に係る転がり軸受装置は、内輪と、この内輪の径方向外方に配置される外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動可能に設けられる複数の転動体と、前記内輪の外周面に取り付けられる上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の着磁パルサリングと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支持部材に対する磁石部材の位置ずれや剥離等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る着磁パルサリングを備えた転がり軸受装置を示す断面図である。
図2図1に示される密封装置(着磁パルサリング)を拡大して示す断面図である。
図3】着磁パルサリングの要部を拡大して示す断面図である。
図4】着磁パルサリングの製造工程を示す説明図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る着磁パルサリングの要部を拡大して示す断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る着磁パルサリングの要部を拡大して示す断面図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る着磁パルサリングの要部を拡大して示す断面図である。
図8】着磁パルサリングの製造工程における変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る着磁パルサリングを備えた転がり軸受装置を示す断面図である。図2は、図1における密封装置(着磁パルサリング)を示す断面図である。なお、これらの図における左右方向を軸方向といい、上下方向を径方向という。また、軸方向に関して、転がり軸受装置1の内部から外部へ向かう側(又は方向)を軸方向外側(又は軸方向外方)といい、転がり軸受装置1の外部から内部へ向かう側(又は方向)を軸方向内側(又は軸方向内方)という。
【0018】
図1に示されるように、この転がり軸受装置1は、車両の車輪が取り付けられる内輪9と、この内輪9の径方向外方に設けられた外輪3と、内輪9と外輪3との間に設けられた複列の転動体4、5とを備えている。
【0019】
内輪9は、内軸2と内輪構成部材6とからなり、内軸2は車両アウタ側(図1における左側)の端部に車輪側部材(図示せず)を取り付けるためのフランジ2cを有している。内軸2の車両インナ側(図1における右側)には、小径部2dが形成されており、その小径部2dに内輪構成部材6が外嵌されている。内輪構成部材6はその外周面に車両インナ側の転動体5用の内側軌道6aが形成されている。また、内軸2の軸方向中間部の中径部2eに車両アウタ側の転動体4用の内側軌道2aが形成されている。更に、内軸2は、車両インナ側の端部に、径方向外方へ拡開状に折曲されたかしめ部2fを有しており、このかしめ部2fによって内輪構成部材6が内軸2に対して抜け止め固定されている。
【0020】
外輪3は、複列の転動体4、5を介して内輪9と同軸心状に設けられている。この外輪3の内周面には、複列の転動体4、5用の外側軌道3aが形成されている。また、外輪3の外周面にはフランジ3cが形成されており、このフランジ3cが図示しない車体側部材に取り付けられることによって、転がり軸受装置1が車体側部材に固定される。したがって、外輪3が固定側とされ、内輪9が軸心回りに回転する回転側(回転部材)とされる。そして、内輪9と外輪3との間の環状空間Rを封止するために、軸方向両端部に環状の密封装置7が設けられている。そして、車両インナ側(右側)の密封装置7に、本発明に係る着磁パルサリング20が設けられている。
【0021】
図2に示されるように、車両インナ側の密封装置7は、外輪3の内周面3bと内輪構成部材6の外周面6bとの間に設けられ、転動体4、5側である転がり軸受装置1の内部からの潤滑剤の漏洩と、転がり軸受装置1の外部から転動体4、5側への泥水等の異物の侵入を防止する。
【0022】
密封装置7は、外輪3に固定されるシール部材10と、内輪構成部材6に固定されるスリンガ11とを備えている。
シール部材10は、芯金12とシール部13とからなる。芯金12は、外輪3に内嵌される円筒部12aと、この円筒部12aの軸方向内側(図2における左側)の端部12bから径方向内方へ屈曲して延びるフランジ部12cとからなり、断面略L字型に形成されている。芯金12は全体が環状となっており、例えば、冷延鋼板であるSPCC,SPCD,SPCE等をプレス加工することで形成される。そして、主として芯金12の円筒部12aの外周面及びフランジ部12cの軸方向外側(図2における右側)の側面には、ゴム等の弾性体からなるシール部13が芯金12と一体となるよう固着されている。
【0023】
スリンガ11は、内輪構成部材6の外周面6bに外嵌された円筒形状の円筒部11aと、この円筒部11aの軸方向外側の端部11bから径方向外方へ略垂直に屈曲して延びるフランジ部11cとからなり、断面略L字型に形成されている。このスリンガ11は、全体が環状となっており、例えばステンレス鋼等の金属板をプレス加工(絞り加工)することで形成される。また、スリンガ11の円筒部11aが芯金12の円筒部12aに間隔をあけて対向し、スリンガ11のフランジ部11cが芯金12のフランジ部12cに間隔をあけて対向するように、密封装置7が転がり軸受装置1に組み付けられている。
【0024】
シール部材10のシール部13は、芯金12のフランジ部12cの径方向内端部近傍に位置する基部13aからスリンガ11の円筒部11aの外周面に向けて延び、当該外周面に摺接するラジアルリップ部13bと、基部13aからスリンガ11のフランジ部11cの軸方向内側の側面に向けて延び、当該側面に摺接するアキシャルリップ部13cとを備えている。
【0025】
密封装置7のスリンガ11は、内輪9の回転速度(回転数)を検出するためのセンサ装置19の一構成要素としての機能も有している。具体的に、センサ装置19は、着磁パルサリング20とセンサ18とからなる。着磁パルサリング20は、前述したスリンガ11によって構成される支持部材と、この支持部材11のフランジ部11cに設けられた磁石部材15とを有し、この磁石部材15の軸方向外側の側面(図2における右側の側面;以下、「外側面」ともいう)15aに対向するようにセンサ18が設けられている。センサ18は、着磁パルサリング20の回転に伴う磁界の変化を検出し、その検出信号を図示しない車両のECU等の制御部に出力するように構成されている。
【0026】
磁石部材15は円環状の磁石であり、例えば、PA11、PA610、PA612、PA12、PA6、PPS等の熱可塑性樹脂母材にフェライト系磁石等の粉末を混合したプラスチック磁石が用いられる。また、磁石部材15は、N極とS極とが周方向に交互に着磁されている。本実施形態の磁石部材15は、その軸方向内側の側面(図2における左側の側面;以下、「内側面」ともいう)15bが、支持部材11のフランジ部11cに固定部材32によって固定されている。
【0027】
図3は、着磁パルサリング20の要部を拡大して示す断面図である。
固定部材32は、支持部材11のフランジ部11cと磁石部材15との対向面に挟まれ、両者を接着する接着部33と、この接着部33の径方向外端部に連なり、フランジ部11c及び磁石部材15の径方向外端部に係止する係止部34,35と、を備えている。
【0028】
磁石部材15の径方向外端面15dは、軸方向内側(フランジ部11c側)ほど外径が大きくなるように傾斜する傾斜面に形成されている。また、フランジ部11cの径方向外端面11dは、軸方向外側(磁石部材15側)ほど外径が大きくなるように傾斜する傾斜面に形成されている。そして、固定部材32の軸方向外側の係止部(第1係止部)34は、磁石部材15の径方向外端面15dと同一の傾斜角度で傾斜し、当該外端面15dに当接することによって係止する係止面34aを有している。また、固定部材32の軸方向内側の係止部(第2係止部)35は、フランジ部11cの径方向外端面11dと同一の傾斜角度で傾斜し、当該外端面11dに当接することによって係止する係止面35aを有している。
【0029】
固定部材32は、例えばポリエステル系の熱可塑性エラストマーによって形成されており、600%以上の引張破断伸び、10MPa以上の引張強度、60g/10min以上のMFR(メルトフローレート)等の物性を有している。例えば、固定部材32の材料として、東洋紡績株式会社製の「ペルプレン(登録商標)P−40HMA」を使用することができる。この材料は、引張強度:20MPa、引張破断伸び:800%、MFR(メルトフローレート):76g/10min、硬度:ショアA91の物性を有しており、後述する固定部材32の機能を十分に発揮しうる。
【0030】
磁石部材15と支持部材11とは材質が異なるため、熱膨張率も当然に異なり、温度変化の激しい過酷な環境下で使用されると、両者に熱変形量の差(熱膨張差又は熱収縮差)が生じる。このような熱変形量の差は、磁石部材15とフランジ部11cとの間の接着力を弱めたり、磁石部材15に過大な応力を発生させて磁石部材15を破損させたりし、フランジ部11cからの磁石部材15の剥離や脱落の原因になる。
しかしながら、本実施形態では、磁石部材15とフランジ部11cとが、熱可塑性エラストマーからなる固定部材32の接着部33により接着されているので、磁石部材15と支持部材11との熱変形量の差が接着部33の弾性によって吸収される。したがって、支持部材11と磁石部材15との間の接着力が弱まったり、磁石部材15に過大な応力が発生したりすることがなく、支持部材11からの磁石部材15の剥離や脱落を好適に防止することができる。また、接着部33によって磁石部材15とフランジ部11cとの間の密封性が確保されるので、当該間への水の浸入が防止される。したがってフランジ部11cに錆が発生するのを防止することができる。
【0031】
また、固定部材32の係止部34,35は、磁石部材15及びフランジ部11cの径方向外端部に係止しているので、フランジ部11cに対する磁石部材15の径方向の位置ずれが防止されると共に、軸方向への離反が防止される。したがって、磁石部材15はフランジ部11cに対して適正な位置に固定される。
【0032】
すなわち、本実施形態の固定部材32は、接着部33によってフランジ部11cと磁石部材15とを接着すると共に両者間への水の浸入を防止する機能(接着・シール機能)と、係止部34,35によってフランジ部11cと磁石部材15とを機械的に固定する機能(メカストッパ機能)と、接着部33によって磁石部材15に発生する応力(熱衝撃)を低減する機能(緩衝機能)とを有している。
【0033】
固定部材32の第1係止部34は、磁石部材15における傾斜した径方向外端面15dに当接する係止面34aを備えているので、この一つの係止面34aによって径方向と軸方向との両方向について磁石部材15の相対移動を制限することができる。同様に、固定部材32の第2係止部35は、フランジ部11cにおける傾斜した径方向外端面11dに当接する係止面35aを備えているので、この一つの係止面35aによって径方向と軸方向との両方向についてフランジ部11cの相対移動を制限することができる。したがって、磁石部材15、フランジ部11c、及び固定部材32の係止部34,35の構造を簡素化しつつ、効果的にフランジ部11cに対して磁石部材15を固定することができる。
【0034】
図4は、本実施形態の着磁パルサリングの製造工程を示す説明図である。
着磁パルサリング20における磁石部材15は合成樹脂製であり、射出成形等によって成形される。また、支持部材11は金属製であり、プレス等を用いた切断、折曲加工等によって形成される。このように磁石部材15及び支持部材11をそれぞれ個別に成形(工程(I))した後、工程(II)においては、これらをインサート部品として金型60に挿入する。そして、この金型60のキャビティ内に、固定部材32の成形材料である溶融した熱可塑性エラストマーを充填し、固定部材32を成形する。すなわち、磁石部材15、支持部材11、及び固定部材32は、インサート成形によって一体化される。なお、図4に示す例では、多点ピンゲート方式で金型内に成形材料が充填されるようになっている。
【0035】
このように、磁石部材15及び支持部材11をインサート部品として固定部材をインサート成形することによって、これらが一体化された着磁パルサリング20を容易に製造することができる。
【0036】
図3に示されるように、固定部材32の第1,第2係止部34,35及び接着部33における各厚さ寸法t1,t2,t3は次のように設定することができる。
固定部材32における係止部34,35の最小厚さt1は、0.1mm〜1.0mm、より好ましくは0.1mm〜0.5mmとすることができる。厚さt1が0.1mmよりも小さいと、金型成形の際に固定部材32の成形材料が流動し難くなり、厚さt1が1.0mmよりも大きいと、相対的に磁石部材15の外径寸法が小さくなり、磁力の低下によりセンサ18の検出精度が低下するからである。
【0037】
係止部34,35における最大厚さt2は、最小厚さt1よりも0.5mm以上大きい寸法、すなわち、t2≧t1+0.5(mm)に設定することができる。最大厚さt2が、t1<t2<t1+0.5(mm)であると、係止面34a,35aの傾斜角度が小さくなり、特に、フランジ部11c及び磁石部材15の軸方向についての相対移動を制限する機能が十分に得られなくなるからである。
【0038】
接着部33の厚さt3は、0.1mm〜1.0mm、より好ましくは0.1mm〜0.5mmとすることができる。厚さt3が0.1mmよりも小さいと、金型成形の際に固定部材32の成形材料が流動し難くなり、1.0mmよりも大きいと、着磁パルサリング20の肉厚が大きくなり、センサ18との間隔を適切に保つことが困難になるからである。
【0039】
ただし、以上の各寸法t1〜t3はあくまで例示であり、着磁パルサリング20の使用形態等に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。なお、固定部材32の物性として、MFR(メルトフローレート)を規定しているのは、上述のような小さい寸法t1〜t3に対する成形材料の流動性を考慮したものである。
【0040】
図5は、本発明の第2の実施形態における着磁パルサリングを拡大して示す断面図である。
本実施形態の着磁パルサリング20は、固定部材32における第1係止部34の形態が第1の実施形態と異なっている。具体的には、磁石部材15の径方向外端面15dには、軸方向内側面15b側の一部に傾斜面15eを有する凹部15fが形成され、第1係止部34はこの凹部15f内に入り込み、傾斜面15eに当接、係止する係止面34aを有している。したがって、第1係止部34は、軸方向の長さが短く、磁石部材15の軸方向外側面15aにまで到っていない。したがって、本実施形態では、磁石部材15の軸方向外側面15aの面積を広く確保することができ、センサ18による検出面積を拡大し、センサ装置19の検出精度を高めることが可能となっている。
【0041】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る着磁パルサリングを拡大して示す断面図である。
本実施形態の着磁パルサリング20は、固定部材32における第2係止部35の形態が、第1,第2の実施形態とは異なっている。第1係止部34の形態は、第2の実施形態と同様である。本実施形態のフランジ部11cは、径方向外端面11dが水平な面とされている。これに対して、第2係止部35は、フランジ部11cの径方向外端面11dの径方向外側に位置して当接する円筒部(径方向規制部)35bと、この円筒部35bの軸方向内側端部から径方向内方に屈曲し、フランジ部11cの径方向内側面側に係止する円環部(軸方向規制部)35cとからなり、断面略L字状に形成されている。
【0042】
したがって、本実施形態においても第1の実施形態と略同様の作用効果を奏する。しかしながら、本実施形態では、第2係止部35が、円筒部35bと円環部35cとからなっており、第1の実施形態の第2係止部35と比較して若干構造が複雑化し、金型成形の際に円筒部35b及び円環部35cに対して成形材料が流動し難くなる。したがって、これらの点に関しては、第1の実施形態の方がより有利であるといえる。
【0043】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る着磁パルサリングを拡大して示す断面図である。
本実施形態の着磁パルサリング20は、固定部材32における第1係止部34の形態が、第1〜第3の実施形態とは異なっている。第2係止部35の形態は、第3の実施形態と同様である。本実施形態の磁石部材15は、径方向外端面15dが軸心に対して略平行な面とされている。これに対して、第1係止部34は、磁石部材15の径方向外端面15dの径方向外側に位置して当接する円筒部(径方向規制部)34bと、この円筒部34bの軸方向外側端部から径方向内方に屈曲し、磁石部材15の径方向外側面側に係止する円環部(軸方向規制部)34cとからなり、断面略L字状に形成されている。
したがって、本実施形態においても第1の実施形態と略同様の作用効果を奏する。また、本実施形態では、第1係止部35が、円筒部34bと円環部34cとからなっており、第1の実施形態の第1係止部34と比較して若干構造が複雑化し、金型成形の際に円筒部34b及び円環部34cに対して成形材料が流動し難くなる。したがって、これらの点に関しては、第1の実施形態の方がより有利であるといえる。
【0044】
図8は、着磁パルサリングの製造工程における変形例を示す説明図である。具体的には、図4を参照して説明した支持部材11及び磁石部材15をインサート部品とする固定部材32のインサート成形において、固定部材32の成形材料の充填方式を例示している。図8(a)は、ディスクゲート方式であり、固定部材32における接着部33の径方向内端部にゲートを設けた例である。図8(b)は、いわゆるトンネルゲート方式であり、磁石部材15の内周面側にゲートを設けた例である。この場合、型開きと同時にゲートカットを行うことができるという利点がある。図8(c)は、サイドゲート方式であり、固定部材32の第1係止部34の外周側にゲートを設けた例である。上述した第1〜第4の実施形態における着磁パルサリング20の製造においては、図4及び図8(a)〜(c)に示されたゲート方式のうち、いずれのゲート方式を採用してもよい。
【0045】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において適宜変更できるものである。
例えば、固定部材32は、上述したような所定の物性を満たす限りにおいて種々の材料から形成することができる。また、固定部材32の係止部34,35は、フランジ部11c及び磁石部材15の外周面の全周に設けられていてもよいし、周方向複数箇所に間隔をあけて設けられていてもよい。また、上記実施形態においては、固定部材32の接着部33が磁石部材15の軸方向内側面15bの全体に設けられているが、当該内側面15bの一部、例えば、磁石部材15の外周側だけに設けられていてもよい。上記各実施形態では、固定部材32の第1係止部34と第2係止部35とについてそれぞれいくつかの形態を説明したが、第1係止部34と第2係止部35との形態の組み合わせは自由に変更することができる。また、本発明は、フランジ部11cと磁石部材15の径方向内端部に係止部34,35を係止させる構成であってもよい。例えば、上述したように支持部材11のフランジ部11cが円筒部11aから径方向外方へ屈曲している場合には、第1,第2係止部34,35を接着部33の径方向内端部に設けると共に、第1係止部34をそのまま磁石部材15の径方向内端部に係止させ、フランジ部11cの基部に孔を形成してこれに第2係止部35を侵入させることによってフランジ部11cの径方向内端部に第2係止部35を係止させることができる。また、フランジ部11cが円筒部11aから径方向内方へ屈曲している場合には、第1,第2係止部34,35を接着部33の径方向内端部に設けると共に、そのままフランジ部11c及び磁石部材15の径方向内端部に第1,第2係止部34,35を係止させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1:転がり軸受装置、3:外輪、4:転動体、5:転動体、9:内輪(回転部材)、11:スリンガ(支持部材)、11c:フランジ部、15:磁石部材、20:着磁パルサリング、32:固定部材、33:接着部、34:第1係止部、34a:係止面、35:第2係止部、35a:係止面
図1
図2
図4
図5
図6
図7
図8
図3