(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子のレーザ光をそれぞれ伝送する複数のシングルモード型光ファイバと、これらのシングルモード型光ファイバの端部を束ねて各レーザ光の出射点を近接させるためのファイババンドル端部と、このファイババンドル端部から出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する放物面鏡と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ集光する放物面鏡と、この放物面鏡から出力された集光を結合させるマルチモード型光ファイバと、このマルチモード型光ファイバを介して伝送されたレーザ光を分波する分波手段と、分波手段により分波された分波光のうちの可視波長域に感度を有する可視光用受光素子と、分波手段により分波された分波光のうちの近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子と、可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子のレーザ光をそれぞれ伝送する複数のシングルモード型光ファイバと、これらのシングルモード型光ファイバの端部を束ねて各レーザ光の出射点を近接させるためのファイババンドル端部と、このファイババンドル端部から出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する放物面鏡と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ集光する放物面鏡と、可視波長域に感度を有する可視光用受光素子および近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子が一体化されており受光側光学部から出力された集光について両者が検出信号を出力する受光素子と、受光素子のうちの可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、受光素子のうちの近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子のレーザ光をそれぞれ伝送する複数のシングルモード型光ファイバと、これらのシングルモード型光ファイバの端部を束ねて各レーザ光の出射点を近接させるためのファイババンドル端部と、このファイババンドル端部から出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する放物面鏡と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ集光する放物面鏡と、受光側光学部から出力された集光について検出信号を出力する近赤外波長域に感度のピークを持ちかつ可視波長域にも感度を有する広帯域近赤外光用受光素子と、広帯域近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする多成分用レーザ式ガス分析計。
【背景技術】
【0002】
多成分用レーザ式ガス分析計の従来技術として、例えば、特許文献1(特開2000−74830号公報(特許第4038631号公報)、発明の名称「半導体レーザ分光法を用いた温度・濃度・化学種の高速計測方法および計測システム」)に記載の発明が知られている。この計測システムについて図を参照しつつ説明する。
【0003】
図15は、従来技術の光ファイバを用いたレーザ式ガス分析計の実施形態を示す全体構成図である。
図15において、501,502は発光部としての半導体レーザで、互いに異なる波長λ
1(例えば1.996μm)、λ
2(例えば2.050μm)のレーザ光を発するものであり、例えば分布帰還型(DFB)半導体レーザよりなる。これらの半導体レーザ501,502は、ファンクションジェネレータ503によってそれぞれ電流制御される。
【0004】
504,505は半導体レーザ501,502に光ファイバ506,507を介して接続されるファイバカプラ、508は半導体レーザ501,502がそれぞれ発するレーザ光を後述するセル513に測定光として送出するためのファイバカプラで、509,510は光ファイバである。なお、ファイバカプラ504,505には、参照光としてのレーザ光用の光ファイバ511,512がそれぞれ接続されている。
【0005】
513は前記ファイバカプラ508の後段に設けられるセルである。このセル513の両端部は、2μm付近のレーザ光を透過させるセル窓513a,513bで封止されるとともに、ガス導入口513c、ガス導出口513dを備え、ガス導入口513cには例えばCO
2と空気とを適宜の割合で供給できるように開閉弁514,515を備えたガス供給ライン516,517が接続され、ガス導出口513dには開閉弁518および真空ポンプ519を備えたガス排出ライン520が接続されている。
【0006】
また、セル窓513a,513bの外部にミラー521,522を設け、セル513に入射したレーザ光がセル513内を数回通過した後、出射するように構成されている。
そして、523,524はセル513の前段側および後段側にそれぞれ設けられるコリメータで、後段側のコリメータ524の後段には分波器525が設けられている。この分波器525は、セル513を透過した二つの波長のレーザ光(測定光)を波長λ
1,λ
2のレーザ光に分離するものである。
【0007】
526,527は測定光用のフォトダイオード、528,529は参照光用のフォトダイオードで、これらのフォトダイオード526,527には分波器525によって分離された波長λ
1,λ
2のレーザ光(測定光)が入射し、フォトダイオード528,529には光ファイバ511,512を経て波長λ
1,λ
2のレーザ光(参照光)が入射する。
【0008】
530〜533は前記フォトダイオード526〜529にそれぞれ対応して設けられるプリアンプで、これらのプリアンプ530〜533は、A/D変換器534を経て図示していない信号処理装置(例えばコンピュータ)に入力されるように構成されている。
【0009】
上述のように構成されたレーザ式ガス分析計においては、セル513にCO
2と空気とを適宜の割合で混合したガスが被測定ガスとして供給される。この状態において、半導体レーザ501,502からそれぞれ発せられた二つの波長のレーザ光λ
1,λ
2が、混合した状態で被測定ガスが充填されたセル513を測定光として透過する。この測定光は、分波器525において元の波長λ
1,λ
2のレーザ光となり、フォトダイオード526,527に入射する。一方、前記半導体レーザ501,502からそれぞれ発せられた二つの波長のレーザ光λ
1,λ
2は、そのまま光ファイバ511,512を経て参照光としてフォトダイオード528,529に入射する。
【0010】
そして、フォトダイオード526〜529からは、入射する光に応じた信号を出力し、これらの出力信号は、プリアンプ530〜533を経てA/D変換器534に入り、その変換出力がコンピュータに入力され、信号処理される。セル513に供給された被測定ガスの温度・濃度・化学種が求められる。
【0011】
このレーザ式ガス分析計においては、計測に用いるレーザ光を、従来よりも長い波長である2μm付近の相異なる波長λ
1,λ
2のレーザ光を用いているので、吸収の強い吸収線で計測を行うことができ、必要光路長の短縮や、温度・濃度・化学種の測定におけるS/Nの向上が図れる。従来技術はこのようなものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この先行技術では、発光側において異なる波長のレーザ光をファイバカプラ508によって1本の光ファイバ上に結合しているが、一般に、ファイバカプラには挿入損失が存在する。例えば、2入力1出力の溶融延伸型ファイバカプラであれば少なくとも一方の入力ポートにおいて3dB以上の挿入損失がある。また、異なる2波長のみを結合する場合は、それら特定の2波長に対して挿入損失を3dB以下に低減するように設計された波長分割多重(WDM)型ファイバカプラを用いることが可能であるが、異なる3波長以上では、波長分割多重方式は適用できない。
【0014】
すなわち、例えば酸素検出用の波長763nmレーザと、二酸化炭素検出用の波長2004nmレーザと、一酸化炭素検出用の波長2330nmレーザの3波長をファイバカプラで1本の光ファイバ上に結合する場合には、波長分割多重型ファイバカプラであらかじめ2波長を1本の光ファイバに結合し、そこでの各挿入損失を3dB以下に抑えたとしても、残りの1波長と前記の2波長を結合するためにもう一段ファイバカプラで結合することとなり、結局少なくとも1波長は3dB以上の挿入損失を生じる。
【0015】
このように、発光側において異なる3波長以上のレーザ光をファイバカプラによって1本の光ファイバ上に結合する場合には、レーザ光源から出た光のパワーを受光素子まで効率よく伝送することができず、測定ガスの吸収信号の強度が低下するという問題がある。
【0016】
そこで、本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、発光側において、異なる複数波長以上のレーザ光源から出た光を、ファイバカプラを使用せずに空間に放射することによって、発光側での挿入損失を無くし、光のパワーを効率よく受光素子まで伝送することで、測定ガスの吸収信号の強度を高める多成分用レーザ式ガス分析計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、請求項1に係る
発明は、レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子のレーザ光をそれぞれ伝送する複数のシングルモード型光ファイバと、これらのシングルモード型光ファイバの端部を束ねて各レーザ光の出射点を近接させるためのファイババンドル端部と、このファイババンドル端部から出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する放物面鏡と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ集光する放物面鏡と、この放物面鏡から出力された集光を結合させるマルチモード型光ファイバと、このマルチモード型光ファイバを介して伝送されたレーザ光を分波する分波手段と、分波手段により分波された分波光のうちの可視波長域に感度を有する可視光用受光素子と、分波手段により分波された分波光のうちの近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子と、可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項2に係る
発明は、レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子のレーザ光をそれぞれ伝送する複数のシングルモード型光ファイバと、これらのシングルモード型光ファイバの端部を束ねて各レーザ光の出射点を近接させるためのファイババンドル端部と、このファイババンドル端部から出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する放物面鏡と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ集光する放物面鏡と、
可視波長域に感度を有する可視光用受光素子および近赤外波長域に感度を有する近赤外光用受光素子が一体化されており受光側光学部から出力された集光について両者が検出信号を出力する受光素子と、受光素子のうちの可視光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う可視光用処理回路と、
受光素子のうちの近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする
。
【0019】
請求項3に係る
発明は、レーザ光による検出光を出射する発光部と、複数の測定対象ガスが存在する空間を介して伝播された検出光を受光する受光部と、を備え、複数種類の測定対象ガスの濃度を測定する周波数変調方式の多成分用レーザ式ガス分析計であって、
前記発光部は、
それぞれの測定対象ガス別に設けられる素子であって周波数変調されたレーザ光を出射する複数のピグテール型発光素子と、これらのピグテール型発光素子のレーザ光をそれぞれ伝送する複数のシングルモード型光ファイバと、これらのシングルモード型光ファイバの端部を束ねて各レーザ光の出射点を近接させるためのファイババンドル端部と、このファイババンドル端部から出射された結合光に対して収差の影響を低減しつつ前記空間に検出光として出射する放物面鏡と、を備え、
前記受光部は、
前記空間を透過した検出光を収差の影響を低減しつつ集光する放物面鏡と、
受光側光学部から出力された集光について検出信号を出力する近赤外波長域に感度のピークを持ちかつ可視波長域にも感度を有する広帯域近赤外光用受光素子と、広帯域近赤外光用受光素子からの検出信号に基づいてガス分析を行う近赤外光用処理回路と、を備え、
前記ピグテール型発光素子は、
発光素子本体と、この発光素子本体の温度検出手段と、前記発光素子本体の加熱冷却手段と、前記発光素子本体からの出射波長が所定値になるように前記温度検出手段による検出温度に応じて前記加熱冷却手段を制御する温度制御手段と、前記発光素子本体への供給電流を変化させて測定対象ガスの吸光特性を走査するための波長走査駆動信号およびトリガ信号を生成する波長走査駆動信号発生手段と、高周波変調信号を生成する高周波変調信号発生手段と、前記波長走査駆動信号を前記高周波変調信号により変調して前記発光素子本体に対する駆動信号を生成する駆動信号発生手段と、をそれぞれ備えると共に、
前記可視光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記可視光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備え、
前記近赤外光用処理回路は、
各ピグテール型発光素子における高周波変調信号の2倍周波数成分を有する参照信号をそれぞれ生成する参照信号発生手段と、前記近赤外光用受光素子の出力信号から前記2倍周波数成分をそれぞれ検出する同期検波手段と、トリガ信号を基準として所定時間経過したときの同期検波手段の出力信号の値に基づいて測定対象ガスの濃度を演算する演算手段と、を備えたことを特徴とする
。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、発光側において、異なる複数波長以上のレーザ光源から出た光を、ファイバカプラを使用せずに空間に放射することによって、発光側での挿入損失を無くし、光のパワーを効率よく受光素子まで伝送することで、測定ガスの吸収信号の強度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
続いて、本発明を実施するための形態に係る多成分用レーザ式ガス分析計について図を参照しつつ以下に説明する。
図1は、本形態の多成分用レーザ式ガス分析計の全体構成図である。
本形態の多成分用レーザ式ガス分析計1は、周波数変調方式を採用している。この多成分用レーザ式ガス分析計1は、変調光生成部10、発光側光学部20、受光側光学部30、分析部40を備えている。このうち、
図1でも示すように、変調光生成部10、発光側光学部20で本発明の発光部100を構成する。また、受光側光学部30、分析部40で本発明の受光部200を構成する。
【0024】
変調光生成部10は、さらにピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dと、シングルモード型ファイバ(ピグテール)12a,12b,12c,12dと、を備える。
発光側光学部20は、さらにファイババンドル端部21と、コリメート放物面鏡22と、発光側ウェッジ付窓板23と、を備える。
【0025】
受光側光学部30は、さらに集光放物面鏡31と、ファイバ端部32と、受光側ウェッジ付窓板33と、を備える。
分析部40は、さらにマルチモード型光ファイバ41,43a,43bと、分波器42と、可視光用受光素子44aと、近赤外用受光素子44bと、可視光用処理回路45aと、近赤外用処理回路45bと、を備える。
【0026】
発光側光学部20、受光側光学部30は、
図1に示すように、複数の測定対象ガスからなるガスが流通する配管等の壁71a,71bに、溶接等により固定されたフランジ72a,72b及び光軸調整フランジ73a,73bを介して取り付けられる。ここで、光軸調整フランジ73a,73bは、発光側光学部20から出射される検出光60が受光側光学部30において最大の光量で受光されるように光軸を調整するためのものである。
【0027】
なお、発光側ウェッジ付窓板23、受光側ウェッジ付窓板33は、光路内にあり、検出光60を透過させつつ、複数の測定対象ガスを含むガスが発光側光学部20や受光側光学部30の内部に進入しないようにし、コリメート放物面鏡22、集光放物面鏡31やファイババンドル端部21、ファイバ端部32が直接ガスに触れないよう保護する役割を果たす。
【0028】
次に、発光部100、および、受光部200の詳細構成について説明する。まず、発光部100について
図1〜
図4を参照しつつ詳細に説明する。
変調光生成部10は、測定対象ガスの吸光特性に応じたレーザ光の発光素子を複数設けて、測定対象ガスの個数のレーザ光を照射するようになされており、これらレーザ光に対して周波数を変調した変調光を複数生成し、これら複数の変調光を発光側光学部20へと伝送するユニットである。
【0029】
変調光生成部10は、
図1で示すように、さらに測定対象ガスの種類の数に等しい個数(本形態では例示的に4個として説明する)のピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dと、ピグテール型発光素子と同じ本数(本形態では例示的に4本として説明する)のシングルモード型光ファイバ(ピグテール)12a,12b,12c,12dとを備えている。なお、ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dと、シングルモード型光ファイバ12a,12b,12c,12dとは、それぞれ、予め光学的に接続された状態でピグテール型レーザ素子として市販されているものもあり、この場合、光学的な調整が不要である。
【0030】
ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dは、詳しくは後述するが、
図2で示すような構成としている。
ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dは、それぞれ発光素子本体111a,111b,111c,111dを内蔵している。これら発光素子本体111a,111b,111c,111dは、測定対象ガス1成分につき1個の発光素子を用いるように構成している。これらは、例えば、DFBレーザ(Distributed Feedback Laser)、もしくはVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)といわれるレーザ素子である。
【0031】
これらレーザ素子は、発光波長がガスの吸光特性に一致する可視領域や近赤外領域にて発光が可能であり、かつ、電流と温度により、発光波長を可変可能である。本形態では説明の具体化のため、可視領域を発するのはピグテール型発光素子11aであるとし、また、近赤外領域を発するのはピグテール発光素子11b,11c,11dであるものとして説明する。
【0032】
なお、このような構成は測定対象ガスの実状に応じて決定されるものであり、例えば、可視領域を発するピグテール型発光素子を2個、近赤外領域を発するピグテール型発光素子を4個というように適宜選択することができる。一般に可視領域を発するm個のピグテール型発光素子および近赤外領域を発するn個のピグテール型発光素子を配置するものである。
【0033】
本形態では測定対象ガスとして酸素ガス(O
2ガス)、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO
2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)を測定するものとする。
可視領域として、例えば、酸素ガス(O
2ガス)を検出するために波長763nmを発光するピグテール型発光素子11aとし、近赤外領域として、例えば塩素ガス(HClガス)を検出するために波長1780nmを発光するピグテール型発光素子11bとし、二酸化炭素ガス(CO
2ガス)を検出するために波長2004nmを発光するピグテール型発光素子11cとし、一酸化炭素ガス(COガス)を検出するために波長2330nmを発光するレーザ素子11dとする。
【0034】
これらのピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dは、ガスの吸収特性に一致する可視領域・近赤外領域の波長にて発光が可能であり、さらに、
図3(a)に示したようにドライブ電流により発光波長を可変とすることができる。また、
図3(b)に示したように温度によって発光波長を可変とすることができる。このように温度と電流で、レーザの発光波長を可変可能である。なお、レーザ素子以外でも上記の条件を満たす、つまり測定対象ガスの吸収波長帯域で波長掃引できるものであれば他種の発光素子を用いてもよい。
【0035】
続いてピグテール型発光素子11a,11b,11c,11d内の制御について説明する。
図2において、発光素子本体111a,111b,111c,111dの温度は、サーミスタ等の温度検出素子112a,112b,112c,112dを用いて検出される。これらの温度検出素子112a,112b,112c,112dは温度制御回路113a,113b,113c,113dに接続されている。これら、温度制御回路113a,113b,113c,113dは、発光素子本体111a,111b,111c,111dの発光波長を安定化させるため、温度検出素子112a,112b,112c,112dの抵抗値がそれぞれ一定になるようにPID制御等を行ってペルチェ素子114a,114b,114c,114dの温度制御を行い、発光素子本体111a,111b,111c,111dの温度を調節する。
【0036】
また、発光波長を変化させる波長走査駆動信号発生回路115a,115b,115c,115dの出力信号と、発光波長を周波数変調させるための高周波変調信号発生回路1116a,116b,116c,116dの出力信号とを、駆動信号発生回路117a,117b,117c,117dにより合成して駆動信号を生成し、この駆動信号をV−I変換して発光素子本体111a,111b,111c,111dに供給する。これにより、発光素子本体111a,111b,111c,111dからは、それぞれ異なる種類の測定対象ガスの吸光特性を走査するための、周波数変調された所定波長のレーザ光が出射される。したがって、ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dから所定波長のレーザ光が出射される。
【0037】
そして、波長走査駆動信号発生回路115a,115b,115c,115dからはそれぞれトリガ信号a,トリガ信号b,トリガ信号c,トリガ信号dが出力される。これらトリガ信号aは、通信線50を介して可視光用処理回路45aの演算回路455aへ入力され(
図7(a)参照)、また、トリガ信号b,トリガ信号c,トリガ信号dは近赤外光処理回路45bの演算回路455b,455c,455dへ入力される(
図7(b)参照)。これらトリガ信号については後述する。
【0038】
図1にもどるが、ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dから出射したレーザ光は、それぞれシングルモード型光ファイバ12a,12b,12c,12d内を伝送される。これらシングルモード型光ファイバ12a,12b,12c,12dは、ピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dの各々の発光波長に応じた適切なコア径や屈折率のものを選ぶことができる。
【0039】
このことにより、マルチモード型光ファイバを用いて複数の波長をまとめて伝送する場合と比較して、伝送損失を小さく抑えることができる。また、途中に光ファイバカプラを使用しないため、挿入損失が発生せず、効率よく光を伝送できるという利点がある。こうしてピグテール型レーザ素子11a,11b,11c,11dから出射したレーザ光は、発光側光学部30内にあるファイババンドル端部21へと効率よく伝送される。
【0040】
次に、ファイババンドル端部21の詳細を説明する。ファイババンドル端部21は、
図4に示すように、フェルール211により、シングルモード型光ファイバ12a,12b,12c,12dの端部を束ねて、各レーザ光の出射点を近接させる役割を果たす。
図4では、4本の光ファイバを束ねた場合の断面の一例を示す。
【0041】
フェルール211は、その中心部に、断面が正方形状の中空穴212を備えている。中空穴212の大きさは、シングルモード型光ファイバ12a,12b,12c,12dを断面が正方格子状に接するように並べたときに、内接する大きさとしており、そのため光ファイバ同士の位置関係は固定される。
【0042】
例えば、典型的なシングルモード型光ファイバの直径は125μmであるから、正方形状の中空穴212の一辺の長さを250μmとして、光ファイバ同士の位置関係を固定する。このようにシングルモード型光ファイバ12a,12b,12c,12dを近接させることにより、レーザ素子からの発光点を近接させる。
【0043】
図4の場合においては、シングルモード型光ファイバ12a,12b,12c,12dは正方格子状に並んでいるため、発光点の間隔は最近接で125μmとなる。これにより複数のシングルモード型光ファイバ12a,12b,12c,12dから発せられる各レーザ光をファイババンドル端部21で近接させつつ出射することで結合して結合光を生成することができる。
【0044】
また、ファイババンドル端部21の先端は、断面での反射による戻り光の影響を低減するために、斜め研磨あるいは斜め球面研磨とすることができる。なお、中空穴212の形状は正方形に限定されるものではなく、例えば円形であってもよく、光ファイバ同士の位置関係が固定できればよい。また、シングルモード型光ファイバが2本,3本,5本、6本という場合でも適宜形状の中空穴212を形成してファイババンドル端部21で把持することが可能である。
【0045】
図1に戻って説明する。ファイババンドル端部21から出射したレーザ光は、コリメート放物面鏡22により平行光に変換される。ここで、放物面鏡について説明する。放物面鏡とは、その反射面が回転放物面の一部からなる鏡である。放物面鏡の回転軸に対して平行に反射面に入射した光は、放物面鏡の焦点に集光する。一方、放物面鏡の焦点から発し反射面に入射した光は、放物面鏡の回転軸に対して平行な光に変換される。上記の性質を利用して、以下のようにコリメート光学系を構成する。
【0046】
すなわち、ファイババンドル端部21をコリメート放物面鏡22の焦点に配置することにより、ファイババンドル端部21から出射した結合光24はコリメート放物面鏡22によって反射され、検出光60は平行光となる。実際には、光ファイババンドル端部21を焦点に配置しても、シングルモード型光ファイバ12a,12b,12c,12dの発光点のすべてを焦点と完全に一致させることはできず、光ファイバの半径程度の距離をもって離れることとなる。
【0047】
この影響は、検出光60に含まれる複数のレーザ光の断面形状が非円形状となることや、光軸に対して若干の角度をもつこととなって現れるが、光路長が数m程度であればその影響は十分に小さい。なお、レーザ光のコリメートにレンズではなく放物面鏡を採用した理由を説明すると、レンズはコリメートの原理に屈折を利用するために色収差の影響があり、波長760nmから2330nmに渡る広帯域なレーザ光を等しく平行にすることが困難であるからである。放物面鏡であればコリメートの原理に反射を利用するために、レンズの場合のような色収差は発生しないので、波長によらずレーザ光を等しくコリメートすることが可能である。
【0048】
上記のように平行光となった検出光60は、発光側ウェッジ付窓板23を透過し、壁71a,71bの内部区間(複数の測定対象ガスが流通する空間)を伝播し、受光側ウェッジ付窓板33を透過する。ここで平行平面窓板ではなく、ウェッジ付窓板を採用する理由を説明する。
一般に、窓板の表面あるいは裏面では、レーザ光が多少の反射を起こす。このため、窓板の表面あるいは裏面(本実施形態の場合は、発光側ウェッジ付窓板23の表面と裏面および受光側ウェッジ付窓板33の表面と裏面の合計4面ある)のうち、複数の面が光軸に対して垂直に配置されていると、多重反射を生じ光学干渉ノイズを引き起こす。その結果、受光信号の強度を変調させ、ガス濃度の計測が不正確となってしまう。この現象を避けるために、平行平面窓板を採用せず、ウェッジ付窓板を採用する。また、ウェッジ付窓板の表面、裏面はそれらのどれもが光軸に対して垂直とならないように配置することが望ましい。
【0049】
続いて、受光部200について説明する。受光部200は、検出光60を受光し、測定対象ガスの吸光特性により吸収された光について分析するユニットである。すなわち、受光側光学部30では、
図1で示すように、受光側ウェッジ付窓板33を透過した平行光である検出光60は、集光放物面鏡31に入射し、反射してファイバ端部32へと集束する集光34となり、マルチモード型光ファイバ41に結合する。ファイバ端部32を集光放物面鏡31の焦点に配置し、集光放物面鏡31の回転軸を検出光60に対して平行に配置することにより、検出光60はマルチモード型光ファイバ41に効率よく結合する。従って、この形態によれば、レーザ光の波長に依存せずにコリメート及び集光が可能であるため、確実に検出光60をマルチモード型光ファイバ41に入力することが可能になる。
【0050】
続いて、分析部40について説明する。分析部40は、検出光60をマルチモード型光ファイバ41を介して受光し、測定対象ガスの吸光特性により吸収された光について分析するユニットである。
【0051】
ここで、マルチモード型光ファイバ41を採用した理由(シングルモード型ではなくマルチモード型である理由)を説明する。それは、マルチモード型光ファイバの方が、シングルモード型光ファイバに比べてコアの直径が大きく、レーザ光の結合効率が高いからである。集光放物面鏡31によって集光されたレーザ光は、必ずしも1点に集光されるわけではなく、有限の広がりをもつて集光する。シングルモード型光ファイバ12a,12b,12c,12dの発光点が、コリメート放物面鏡22の焦点からずれて配置される影響や、コリメート放物面鏡22および集光放物面鏡31の反射面の品質の影響により、集光されたレーザ光の断面形状はある程度の広がりをもつこととなる。
さらに、装置周辺の振動や温度変化によって徐々に光軸調整がずれた場合に、集光されたレーザ光が光ファイバ端部32から外れるため、コアの直径は十分に大きくして余裕をもたせることが望ましい。
【0052】
そのため、シングルモード型光ファイバのようにコアの直径が10μm程度の光ファイバではなく、マルチモード型光ファイバのように、コアの直径が50μm以上あるような光ファイバを採用し、集光されたレーザ光を効率よく結合させ、かつ光軸調整のずれに対する余裕を与える。なお、マルチモード型光ファイバ41のコアの直径は、適当な値を選ぶことができるが、大きくするほど、伝送損失が大きくなることには注意が必要である。
【0053】
そして、分析部40では、マルチモード型光ファイバ41を伝送したレーザ光を分波器42が適当な分岐比で分波する。この分波器42は、分波機能を有しているものであればよく、具体的には、マルチモード型光ファイバカプラ、または、マルチモード型の光ファイバスイッチを採用することができる。
【0054】
これら分波光はマルチモード型光ファイバ43a,43bを介してそれぞれ可視光用受光素子44a、近赤外光用受光素子44bにてそれぞれ受光される。測定対象ガスとして酸素ガス(O
2ガス)、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO
2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)を測定するが、可視光用受光素子44aは、酸素ガス(O
2ガス)を検出するために、
図5に示すように400nm〜1000nmに感度をもつ可視波長域に感度をもつSiフォトダイオードを採用することができる。また、近赤外光用受光素子44bは、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO
2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)を検出するために、
図6に示すように1200nm〜2500nmに感度をもつ近赤外波長域に感度をもつInGaAsフォトダイオードを採用することができる。
【0055】
なお、分波器41により分波された分波光は、全ての波長のレーザ光が含まれているが、可視光用受光素子44a、近赤外光用受光素子44bは、波長に対して感度をもつ波長領域がそれぞれ決まっているため、それぞれ異なる領域の受光が可能となる。例えば、検出光のうち波長が763nmの光は可視光用受光素子44aでのみ検出される。また、検出光のうち波長が1780nm,2004nm,2330nmの光は近赤外光用受光素子44bでのみで検出される。
【0056】
これら可視光用受光素子44a、近赤外光用受光素子44bは、受光量に応じて、電気信号による検出信号に変換して可視光用処理回路45a,近赤外光用処理回路45bに送る。これら可視光用処理回路45a,近赤外光用処理回路45bは、例えば、検出信号に対して増幅やノイズのフィルタリングを行い、濃度を検出する。
【0057】
図7(a)は、可視光用処理回路45aの内部構成図である。可視光用受光素子44aから可視光用処理回路45aへ入力された検出信号は、I−V変換回路451aによって電流信号から電圧信号に変換される。また、参照信号発生回路(発振回路)452aは、前記高周波変調信号発生回路116aによる高周波変調信号の2倍周波数の信号を参照信号として出力する。I−V変換回路451aにより変換された電圧信号と前記参照信号とは同期検波回路453aに入力され、前記電圧信号から2倍周波数成分の信号が抽出される。これらの信号はフィルタ454aに入力され、ノイズ除去、増幅等の処理が行われて演算回路455aに入力されると共に、この演算回路455aにおいて測定対象ガス(詳しくは酸素ガス(O
2ガス))の濃度が演算されることになる。
【0058】
また、
図7(b)は、近赤外光用処理回路45bの内部構成図である。近赤外光用受光素子44bから近赤外光用処理回路45bへ入力された検出信号は、I−V変換回路451bによって電流信号から電圧信号に変換される。また、参照信号発生回路(発振回路)452b,452c,452dは、高周波変調信号発生回路116b,116c,116dによる高周波変調信号の2倍周波数の信号を参照信号として出力する。I−V変換回路451bにより変換された電圧信号と前記参照信号とは同期検波回路453b,453c,453dに入力され、前記電圧信号から2倍周波数成分の信号が抽出される。これらの信号はフィルタ454b,454c,454dに入力され、ノイズ除去、増幅等の処理が行われて演算回路455b,455c,455dに入力されると共に、この演算回路455b,455c,455dにおいて測定対象ガス(詳しくは、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO
2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス))の濃度が演算されることになる。
【0059】
次に、上記の構成において、測定対象ガスの濃度を検出する原理について説明する。ここでは可視領域にある酸素ガス(O
2ガス)と近赤外領域にある塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO
2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)について検出する。酸素は、
図8に示すように760nm〜768nmで吸光特性を有する。酸素検出するために、可視領域として、波長763nmを発光するピグテール型発光素子11aとする。同様に、近赤外領域として、例えば、塩素ガスを検出するために波長1780nmを発光するピグテール型発光素子11bとし、二酸化炭素ガスを検出するために波長2004nmを発光するピグテール型発光素子11cとし、一酸化炭素ガスを検出するために波長2330nmを発光するピグテール型発光素子11dとする。本発明では500〜2500nmまでの光が光ファイバ、分波器を伝播されるようにしたため、検出は可能である。
【0060】
まず、変調光生成部10から出射した検出光60は、測定対象ガスが流通する壁71a,71b内の空間を透過し、吸光されたものとする。これらの検出光は分析部40に入射する。
そして、可視光に感度をもつ可視光用受光素子(Siフォトダイオード)44aでは、763nmのピグテール型発光素子11aからの光のみを受光し、また、近赤外波長域に感度をもつ近赤外光用受光素子(InGaAsフォトダイオード)44bは、波長1780nmのピグテール型発光素子11bからのレーザ光、2004nmのピグテール型発光素子11cからのレーザ光、波長2330nmのピグテール型発光素子11dからのレーザ光を受光する。
【0061】
図9(a)は、例えばピグテール型発光素子11aの駆動電流波形の一例を示している。
測定対象ガスの吸光特性を走査する波長走査駆動信号S
1は、ピグテール型発光素子11aの駆動電流値を直線的に変化させてピグテール型発光素子11aの発光波長を徐々に変化させ、例えば、0.2nm程度の吸光特性を走査する。一方、信号S
2は、駆動電流値をピグテール型発光素子11aが安定するスレッショルドカレント以上に保ち、一定波長で発光させるためのものである。さらに、信号S
3では、駆動電流値を0mAにしておく。
【0062】
図9(b)は、
図2の高周波変調信号発生回路116aから出力される変調信号の波形図であり、測定対象ガスの吸光特性を検出するための信号S
4は、例えば周波数が10kHzの正弦波とし、波長幅を0.02nm程度変調する。
図9(c)は、
図2の駆動信号発生回路117aから出力される駆動信号(波長走査駆動信号発生回路115aの出力信号と高周波変調信号発生回路116aの出力信号との合成信号)の波形図であり、この駆動信号S
5を発光素子本体111aに供給すると、発光素子本体111aからは、測定対象ガスの0.2nm程度の吸光特性を波長幅0.02nm程度で検出可能な変調光が出力される。
【0063】
他の発光素子本体111b,111c,111dも、上記と同様にして、測定対象ガスの吸光特性に応じて分析される。
4個の発光素子本体111a,111b,111c,111dの変調波周波数を、例えば10kHz,12.5kHz,15kHz,17.5kHzとすると、変調信号の2倍周波数成分はそれぞれ20kHz,25kHz,30kHz,35kHzとなり、参照信号発生回路452a,452b,452c,452dがこれらの周波数の参照信号を出力することで、同期検波回路453a,453b,453c,453dは上記2倍周波数成分に吸光特性を有する測定対象ガス、すなわち、O
2ガス、CO
2ガス、HClガス、COガスの吸光特性のみをそれぞれ検出して出力することができる。
【0064】
測定対象ガス、すなわちO
2ガス、CO
2ガス、HClガス、COガスに吸光特性がある場合、同期検波回路453a,453b,453c,453dからは
図10に示すような吸光特性が得られる。なお、検出光60の光路上に測定対象ガスが存在しない場合には、同期検波回路453a,453b,453c,453dの出力に
図10のような吸光特性は現れず、
図11で示すような出力となる。
【0065】
続いて演算回路による濃度算出方法について説明する。ここではO
2ガスについて例示的に説明する。
演算回路455aには、波長走査駆動信号発生回路115aからトリガ信号aが入力される。
図9(a)におけるトリガ信号は、上記S1,S2,S3を含めた1周期ごとに出力される信号であり、波長走査駆動信号発生回路116aより出力され、通信線50を介して、演算回路455aへ入力される。トリガ信号は、波長走査駆動信号のS3と同期がとれている。
図10で示すように、トリガ信号から所定時間tb,tc,td経過したときに同期検波回路出力波形でB点の最小値B、C点の最大値C、D点の最小値Dが登場する。これら所定時間tb,tc,tdは工場出荷前や校正時に実験的に予め算出しておいて、図示しないメモリに登録しておく。この値を用いて濃度を算出する。
【0066】
演算回路455aとしては、トリガ信号から所定時間tb,tc,td経過するときに同期検波回路出力波形の値を読みとって記憶し、その後に濃度を算出する処理を行う。この同期検波回路出力波形はその波形のピークにある最大値がそのままガス濃度を表すため、例えば、最大値を濃度として出力する。または最大値から最小値を減じた差分値を濃度とするというものである。他の測定対象ガス(CO
2ガス、HCLガス、COガス)の濃度検出動作についても、同様に行えばよい。
【0067】
特にガス濃度が低くなると、光学窓材料やレンズなどによるレーザ光の干渉による影響のノイズの影響が強くなり、これらのノイズがピークとなって検出されてしまうなど、ピークの発見が困難であるが、本発明ではこのようにガス吸収が発生する部分をあらかじめ設定しトリガ信号を基準にガス吸収のピークを検出するようにしたため、ノイズ等に影響されることなく正確なガス濃度検出ができるという利点がある。
【0068】
このような装置構成によって、従来技術と同様に、2倍周波数の信号を検出することでガス濃度が計測可能となる。本発明では特に光ファイバとしてマルチモード光ファイバを用いているので、500〜2500nmという広い波長域で計測可能となる。したがって、本形態で例示したピグテール型発光素子11a,11b,11c,11dだけでなく、変調周波数を変えるか、レーザの発光をシリーズに発光させることで、受光素子の波長領域が同一の場合も分離して計測可能である。
【0069】
また、低損失であるためピークが確実に表れるようにして低濃度のガスの検出能力を向上させた。加えて同期によりピーク位置を正確に検出できるようにしたため、やはり低濃度のガスの検出能力を向上させた。
このような装置構成によって、ガス濃度が計測可能となる。本発明では500〜2500nmという広い波長域で計測可能となる。
【0070】
以上本発明の多成分レーザ式ガス分析計について説明した。この多成分レーザ式ガス分析計では各種の変形形態が可能である。
続いて他の形態について説明する。この形態では、先の形態のうち、分析部40のみを変更するものである。先の形態の分析部40は、詳しくは、
図1で示したように、分波器41を用いる構成であったが、本形態では、分析部40側は、
図12に示すような可視光領域に感度をもつSiフォトダイオードと、近赤外領域に感度をもつInGaAsフォトダイオードとが一体化された可視光・近赤外光用受光素子46を用い、
図13で示すように、分波器を用いずに、マルチモード型光ファイバ41から直接照射されるレーザ光を可視光・近赤外受光素子46が受光し、Siフォトダイオードからは可視光用処理回路45aへ出力し、また、InGaAsフォトダイオードからは近赤外光用処理回路45bへ出力し、可視光用処理回路45や近赤外光用処理回路45bのそれぞれが信号処理するようにしてもよい。このような構成を採用しても本発明の実施は可能である。
【0071】
続いて他の形態について説明する。この形態では、
図1〜
図11を用いて説明した第1の形態のうち、発光部100は同じ構成とするが、受光部200を変更するものである。
第1の形態の受光部200は、詳しくは、
図1で示したように、分析部40において分波器42を用いる構成であったが、本形態では、受光部200の分析部40において、
図14に示すように分波器を用いずに、広帯域近赤外光用受光素子47、近赤外光用処理回路45bを備える構成とした。近赤外波長域に感度のピークを持ちかつ可視波長域にも感度を有する広帯域近赤外光用受光素子47を用い、マルチモード型光ファイバ41から直接照射される集光を広帯域近赤外光用受光素子47が受光し、広帯域近赤外光用受光素子47から出力される検出信号を、近赤外光用処理回路45bが受信して近赤外波長域の信号と可視波長域の信号とをそれぞれ信号処理する。このような構成を採用しても本発明の実施は可能である。
【0072】
続いて他の形態について説明する。先に説明した各形態では、周波数が異なる複数光線を結合した検出光であるものとして説明した。本形態では、それぞれのピグテール型光素子を、時分割で動作させるものとした。そして検波手段では、受光手段の信号から、高周波変調の基本波成分と2倍波成分を、動作中のピグテール型発光素子と同期しながら検波することとした。例えば、
図8の発光素子本体111a,111b,111c,111dと、参照信号発生回路452a,452b,452c,452dと、それぞれ演算回路455a,455b,455c,455dに接続し、ともに一個ずつ動作するように同期させて検波手段の信号から変調周波数成分を測定する。このように複数のガス成分を時分割で測定するような多成分用レーザ式ガス分析計としてもよい。
【0073】
続いて他の形態について説明する。先に説明した各形態では、ファイバ端部32の端面については限定していなかったが、本形態ではファイババンドル端部21やファイバ端部32をともに斜め研磨端とする。このように構成することで、戻り光は斜め研磨端での反射により光ファイバ内に戻ることがなく戻り光の影響を除去することが可能になる。
【0074】
続いて他の形態について説明する。先に説明した各形態では、受光側はマルチモード光ファイバカプラであったが、分枝カプラとしてもよい。この場合、変調周波数をそれぞれ、分けなくてもよい。
【0075】
続いて他の形態について説明する。先に説明した各形態では、例示的に酸素ガス(O
2ガス)、塩素ガス(HClガス)、二酸化炭素ガス(CO
2ガス)、一酸化炭素ガス(COガス)を測定するものとして説明したが、これらガスのみに限定される趣旨ではなく、他の成分のガスを含んでいても良い。その場合、他の成分のガスを検出できるような波長を有するピグテール型発光素子が追加され、この波長で検出できるように演算回路の演算処理内容が変更されて用いられるというものである。例えば、可視領域の波長を有するmのガスや近赤外領域を発するnのガスを検出するため、可視領域を発するm個のピグテール型発光素子および近赤外領域を発するn個のピグテール型発光素子を配置した場合でも、ファイババンドル端部21でm+n個のシングルモード型光ファイバを近接させた状態で固定し、受光部側ではm組のI−V変換回路、参照信号発生回路、同期検波回路、フィルタ、演算回路による可視光用処理回路とし、また、n組のI−V変換回路、参照信号発生回路、同期検波回路、フィルタ、演算回路による近赤外光用処理回路とするというものである。実状に応じて適宜変更される。
【0076】
以上本発明について説明した。本発明のレーザ式ガス分析計によれば、可視光および近赤外光に渉って吸光する複数のガスを含む測定対象ガスに対してガス成分を正確に検出することが可能となる。特に、波長500nmから2500nmまでの広い波長範囲にわたる異なる3波長以上のレーザ光源から出た光を、ファイバカプラを使用せずに空間に放射し、受光側で1本の光ファイバ上に結合することによって、発光側での挿入損失を無くし、光のパワーを効率よく受光素子まで伝送することで、測定ガスの吸収信号の強度を高めることができる。
【0077】
また、半導体レーザを用いた吸収分光法に基づくレーザ式ガス分析計において、従来の光ファイバ式ガス分析計では、ガスの吸収スペクトル波形のピークを検出するように信号処理していたが、信号強度が電気信号ノイズよりも大きくなければならず、濃度が低いガス濃度検出が困難であったが、本願提案では低損失であるためピークが確実に表れるようにして低濃度のガスの検出能力を向上させた。さらに波長走査信号のトリガ信号をもとに、ガス吸収ピークを検出することで、低濃度ガス検出が可能となった。加えて同時に複数成分測定が可能となる。