(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートクッションやシートバックやヘッドレストなどのシート構成部材を有するとともに、前記シート構成部材が、送風装置と、前記送風装置のエアを前記シート構成部材の着座側に導くダクト部材とを有し、
前記ダクト部材内の羽部材にて、前記送風装置のエアを一方向に導く第一状態と、前記一方向とは異なる他方向に導く第二状態との間で変位可能である車両用シートにおいて、
前記ダクト部材が、シート外に配置される壁面として、シート前方を臨む壁面と、シート上方又はシート下方を臨む壁面と、シート左方又はシート右方を臨む壁面とを有する立体形状とされ、
前記シート前方を臨む壁面に、前記一方向に向かう前記送風装置のエアが通過可能な第一連通部を設け、前記シート上方又はシート下方を臨む壁面に、前記他方向に向かう前記送風装置のエアが通過可能な第二連通部を設け、前記第一連通部と前記第二連通部がひとつながりの曲面形状をなすとともに、前記シート左方又はシート右方を臨む壁面においてもエアの通過を可能とした車両用シート。
前記第一連通部と前記第二連通部が、前記羽部材の配置位置からエアの送風方向下流側に向けて形成されるとともに、前記羽部材よりもエアの送風方向上流側のダクト部材が密閉状に形成される請求項1に記載の車両用シート。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用シートとして、特許文献1に開示の車両用シートが公知である。この車両用シートは、シートクッションと、シートバックと、ヘッドレストと、送風装置と、ダクト部材を有する。
ここでシートバックは、シートクッションに起立可能に連結する部材である。シートバックの上方にはヘッドレストが配設されており、シートバック内には送風装置が配設される。
そしてダクト部材は、略逆L字状の管部材(両端開放状)であり、格子要素を有する。格子要素は、メッシュ状の部材であり、ダクト部材の着座側(開口)に嵌装できる。
公知技術では、ダクト部材一側(屈曲部分)をシートバック上部から露出させつつ、ダクト部材の他側を、シートバック内に配置しつつ送風装置に連通する。そしてダクト部材一側を着座側に向けることで、送風装置のエアを、ダクト部材を介して着座側に導くことができる。
【0003】
ところで上述の構成では、ダクト部材内に羽部材を設けるなどして、送風の風向きを変えることができる。
例えば羽部材(平板状)を、格子要素の内側に配置しつつ、ダクト部材に回転可能に取付けることで、水平状態から傾斜状態に変位可能とする。
そして羽部材を水平状態とすることで、送風装置のエアがダクト部材から着座側に向かって水平に吹き出される。また羽部材を傾斜状態とすることで、送風装置のエアの向きをシート上方又は下方に変えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上述の構成では、ダクト部材内(格子要素の内側)に羽部材が配設される。このため送風の向きを上方又は下方に向けても、ダクト部材の壁面に遮られるなどして十分に送風できないことがあった(送風効率にやや劣る構成であった)。
もっともダクト部材から羽部材を露出させてもよいが、そうすると羽部材が他部材に接触するなどして破損することが懸念される。
本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、羽部材の破損を好適に阻止しつつ、送風装置のエアの風向きを効率良く変更することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シートは、シートクッションやシートバックやヘッドレストなどのシート構成部材を有する。そしてシート構成部材が、送風装置と、送風装置のエアをシート構成部材の着座側に導くダクト部材とを有する。
本発明では、ダクト部材内の羽部材にて、送風装置のエアを一方向に導く第一状態と、一方向とは異なる他方向に導く第二状態との間で変位可能である。この種の構成では、羽部材の破損を好適に阻止しつつ、送風装置のエアの風向きを効率良く変更できることが望ましい。
そこで本発明では、上述の
ダクト部材が、シート外に配置される壁面として、シート前方を臨む壁面と、シート上方又はシート下方を臨む壁面と、シート左方又はシート右方を臨む壁面とを有する立体形状とされる。そしてシート前方を臨む壁面に、一方向に向かう送風装置のエアが通過可能な第一連通部
を設け、シート上方又はシート下方を臨む壁面に、他方向に向かう送風装置のエアが通過可能な第二連通
部を設け、
第一連通部と第二連通部がひとつながりの曲面形状をなすとともに、シート左方又はシート右方を臨む壁面においてもエアの通過を可能とした。
本発明では、送風装置のエアの風向きに応じて、第一連通部又は第二連通部により、(ダクト部材の壁面に極力邪魔されることなく)送風装置のエアを送風することができる。
【0007】
第2発明の車両用シートは、第1発明の車両用シートであって、第一連通部と第二連通部が、羽部材の配置位置からエアの送風方向下流側(エアの風向きが変わる部位)に向けて形成される。また羽部材よりもエアの送風方向上流側(風向きの変更不要の部位)のダクト部材が密閉状に形成される。
本発明では、第一連通部と第二連通部を、ダクト部材一部(エアの風向きが変わる部位)に設けることで、送風装置のエアを効率良く送風することができる。またダクト部材他部(風向きの変更不要の部位)を密閉状とすることで、送風装置のエアを、より効率良く第一連通部又は第二連通部に導くことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る第1発明によれば、送風装置のエアの風向きを効率良く変更することができる。また第2発明によれば、送風装置のエアの風向きを更に効率良く変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜
図3を参照して説明する。各図には、適宜、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号B、車両用シート上方に符号UP、車両用シート下方に符号DWを付す。
図1の車両用シート2は、シートクッション4と、シートバック6と、ヘッドレスト8を有する。これらシート構成部材は、シート骨格をなすフレーム部材(4F,6F,8F)と、シート外形をなすクッション材(4P,6P,8P)と、クッション材に被覆の表皮材(4S,6S,8S)とを有する。
【0011】
シートバック6は、上記構成(6F,6P,6S)と、送風装置10と、ダクト部材20と、羽部材40を有する(各装置及び部材の詳細は後述)。
本実施例では、シートバック6を、シートクッション4に起倒可能に連結する。そしてシートバック6上方に、ステー部材8aを介してヘッドレスト8を取付けるとともに、シートバック6内に送風装置10を配設する。
そして送風装置10のエアを、シートバック6上部から露出のダクト部材20を通じて着座側(乗員首部等)に送る。このときダクト部材20内の羽部材40にて、送風装置10のエアをシート前方(一方向)に導く第一状態と、シート上方(他方向)に導く第二状態との間で変位させる。この種の構成では、羽部材40の破損を好適に阻止しつつ、送風装置10のエアの風向きを効率良く変更できることが望ましい。
そこで本実施例では、下記構成により、羽部材40の破損を好適に阻止しつつ、送風装置10のエアの風向きを効率良く変更することとした。以下、各構成について詳述する。
【0012】
[基本構成]
本実施例では、フレーム部材6F上にクッション材6Pを配置しつつ、クッション材6Pを表皮材6Sで被覆する(
図1を参照)。
ここでフレーム部材6Fは、アーチ状の枠部材(図示省略)であり、一対のサポート部材(図示省略)を有する。一対のサポート部材は、ともに筒状の中空部材であり、それぞれヘッドレスト8のステー部材8a(棒状部材)を挿設可能である。また表皮材6Sは、クッション材6Pを被覆可能な袋状部材であり、布帛(織物,編物,不織布)や皮革(天然皮革,合成皮革)にて形成できる。
そしてクッション材6Pは、シート外形をなす略長方形状の部材であり、ポリウレタンフォームなどの弾性力を有する樹脂にて形成できる。本実施例では、クッション材6P(起立状態)の上部に開口部6Xを設けて、ダクト部材20(後述)を外部に露出可能とする。ここで開口部6Xの形成位置は特に限定しないが、例えばシートバック6の上部中央(一対のサポート部材の間)に形成できる。
【0013】
[送風装置]
送風装置10は、中空の箱体(短尺な円筒状)であり、送風機構を内蔵する(
図1を参照)。
送風機構として、例えば遠心式の機構(装置軸方向から吸気しつつ遠心方向に送風する機構)を使用できる。この種の送風機構として、多翼ファン(シロッコファン)、プレートファン、ターボファン、翼形ファン、リミットロードファンを例示できる。
本実施例では、シートバック6内(略中央)に送風装置10を配置しつつ、フレーム部材6F等に固定する。そして送風装置10のエアを、ダクト部材20(後述)を通じて着座側に吹き出し可能とする。
【0014】
[ダクト部材]
ダクト部材20は、略逆L字状の中空管部材(両端開放状)であり、送風装置10のエアをシートバック6の着座側に導くことができる(
図1〜
図3を参照)。
本実施例のダクト部材20は、第一ダクト部21と、第二ダクト部22と、複数の連通部(第一連通部31,第二連通部32)と、羽部材40を有する。
第一ダクト部21と第二ダクト部22は、ともに角柱状の管状部位(中空)であり、送風装置10のエアが通過可能である。そして第一ダクト部21は、直線状の部位(比較的長尺)であり、送風装置10と開口部6Xを連通可能な長さ寸法を有する。
また第二ダクト部22は、第一ダクト部21の一側に連結する屈曲部位(比較的短尺)であり、第一ダクト部21から略直角に屈曲する(着座側に向かって屈曲する)。本実施例の第二ダクト部22(側壁)途中には、シート幅方向に開口する貫通孔(符号省略)が形成されており、羽部材40(後述)を取付け可能である。
【0015】
(羽部材)
羽部材40は、ダクト部材20内に配置可能な平板状の部材(略長方形状)であり、軸部42と、操作部44を有する(
図2及び
図3を参照)。
軸部42は、シート幅方向に延びる円筒状の棒状部位である。また操作部44は、軸部42の端部に取付け可能な棒状部位である。
本実施例では、羽部材40の一側に軸部42を取付けたのち、軸部42を、第二ダクト部22(貫通孔)に回転可能に取付ける。つぎに軸部42の一端を、第二ダクト部22から露出させつつ操作部44に取付ける。そして操作部44を上下動(操作)して軸部42を回転させることにより、羽部材40が、略水平となる第一状態から、傾斜状態となる第二状態に変位できる。
そして本実施例では、羽部材40を第一状態とする(略水平状態とする)ことにより、送風装置10のエアをシート前方に導くことができる。また羽部材40を第二状態として、羽部材40一側よりも他側をシート下方に配置することにより、送風装置10のエアをシート上方に導くことができる。
【0016】
(第一連通部,第二連通部)
複数の連通部(第一連通部31,第二連通部32)は、ともに送風装置10のエアが通過可能な部位であり、第二ダクト部22の先端側(詳細後述)に形成できる(
図1〜
図3を参照)。
本実施例の第一連通部31は、第二ダクト部22の前壁を構成する格子状部位(エアが通過可能なメッシュ状の部位)であり、シート前方に向かうエアの通過を許容する。また第二連通部32は、第二ダクト部22の上壁を構成する格子状部位であり、シート上方に向かうエアの通過を許容する。そして本実施例では、第一連通部31と第二連通部32がひとつながりの曲面状とされる。
なお第二ダクト部22の両側壁は、本実施例のように格子状とすることができ、また密閉状とすることもできる。
【0017】
[各連通部と羽部材の配置関係]
ここで第一連通部31と第二連通部32は、羽部材40の配置位置からエアの送風方向下流側(エアの風向きが変わる部位)に向けて形成できる(
図3を参照)。
例えば本実施例では、第一連通部31を、羽部材40よりも第二ダクト部22の先端側(着座側)に形成できる。また第二連通部32を、羽部材40の可動範囲(回転軌跡)に重なるダクト部材20の上壁部分から第一連通部31に向けて形成できる。このように第一連通部31と第二連通部32を、ダクト部材20一部(エアの風向きが変わる部位)に設けることで、送風装置10のエアを効率良く送風することができる。
さらに本実施例では、羽部材40よりもエアの送風方向上流側のダクト部材20が、密閉状に形成される(各連通部が非形成の部位とされる)。このようにダクト部材20他部(風向きの変更不要の部位)を密閉状とすることで、送風装置10のエア漏れを極力阻止できる。
【0018】
[ダクト部材の組付け作業]
図1を参照して、シートバック6内にダクト部材20を配設することにより、送風装置10のエアをシート着座側に送風可能とする。
本実施例では、第一ダクト部21を、シートバック6内に配設しつつ送風装置10に連通する。つぎに第二ダクト部22を、クッション材6P(開口部6X)から露出させつつシート前側に向けることで、送風装置10のエアをシート着座側に送風可能とする。
つぎに羽部材40を第一状態(略水平状態)とすることにより、送風装置10のエアを、第一連通部31を介してシート前方に導くことができる(
図3を参照)。
また操作部44を操作して羽部材40を第二状態(傾斜状態)とする。こうすることで送風装置10のエアが、羽部材40によりシート上方に導かれつつ、第二連通部32を通じてスムーズに吹き出される。
【0019】
以上説明したとおり本実施例によれば、送風装置10のエアの風向きに応じて、第一連通部31又は第二連通部32により、(ダクト部材20の壁面に極力邪魔されることなく)送風装置10のエアを送風することができる。
そして羽部材40は、第一連通部31よりもダクト部材20内方に配置する(ダクト部材20の外部に極力露出しない)ため、他部材との接触による羽部材40の破損を極力阻止できる。例えば本実施例の構成は、乗員の頭髪を羽部材40が巻きこむことで、羽部材40が破損する等の不具合が生じにくい構成である。
また本実施例では、第一連通部31と第二連通部32を、ダクト部材20一部(エアの風向きが変わる部位)に設けることで、送風装置10のエアを効率良く送風できる。さらにダクト部材20他部(風向きの変更不要の部位)を密閉状とすることで、送風装置10のエアを、より効率良く第一連通部31と第二連通部32に導くことができる(送風効率に優れる構成である)。
このため本実施例によれば、送風装置10のエアの風向きを効率良く変更することができる。
【0020】
本実施形態の車両用シートは、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施形態では、シートバック6にダクト部材20を配設する例を説明したが、ダクト部材20の配設位置を限定する趣旨ではない。ダクト部材20は、シートクッション4やヘッドレスト8等の各種シート構成部材に配設できる。
例えば
図1を参照して、ダクト部材20を、ヘッドレスト8の下部に設けることができる。このとき第一連通部31を、第二ダクト部22の前壁に設けるとともに、第二連通部32を、第二ダクト部22の下壁に設ける。
そして羽部材40を第一状態(略水平状態)とすることにより、送風装置10のエアを、第一連通部31を介してシート前方に導くことができる。また羽部材40を第二状態(傾斜状態)として、羽部材40一側よりも他側をシート上方に配置することにより、送風装置10のエアを、第二連通部32を介してシート下方に導くことができる。
【0021】
(2)また本実施形態では、第一連通部31又は第二連通部32に蓋部材を設けるなどして、開閉可能な構成とすることができる。
そして羽部材を第一状態(略水平状態)とするとともに第二連通部を閉鎖することで、送風装置のエアを、第一連通部を介してシート前方に導くことができる。また羽部材を第二状態(傾斜状態)とするとともに第一連通部を閉鎖することで、送風装置のエアを、第二連通部を介してシート上方に導くことができる。
上述の構成では、蓋部材の開閉動作を羽部材の状態変位に連動させることで、使い勝手の良いシート構成とすることができる。
【0022】
(3)また本実施形態では、ダクト部材20として、略L時状の管部材を例示したが、ダクト部材20の構成を限定する趣旨ではない。ダクト部材として、蛇腹状の管部材(屈曲又は湾曲自在の構成)を例示できる。また第一ダクト部と第二ダクト部を、着脱不能に連結することができ、また着脱可能に連結することもできる。
(4)また本実施形態では、第一連通部31と第二連通部32を格子状とする例を説明したが、各連通部の構成を限定する趣旨ではない。例えば第一連通部と第二連通部は、第二ダクト部を厚み方向に貫通する孔部(ダクト部材の開口よりも小さい孔部)や溝部であってもよい。
(5)また本実施形態では、第一連通部31と第二連通部32を、エアの送風方向下流側(エアの風向きが変わる部位)に形成する例を説明したが、第一連通部と第二連通部の形成位置を限定する趣旨ではない。
(6)また本実施形態では、羽部材40をシート上下に傾斜可能に配設する例を説明したが、シート幅方向に傾斜可能に配設することもできる。この場合には第二連通部を、ダクト部材の側壁に設けることができる。
(7)また本実施形態では、羽部材40にて、シート前方(一方向)とシート上方(他方向)に送風する例を説明した。一方向とは、シート前方とシート上方とシート下方とシート側方のいずれかであり、他方向とは、一方向とは異なる方向である。また羽部材は、3方向以上に風向きを変更可能な構成であってもよい。この場合には、羽部材による風向きの変更数に応じて、複数の連通部をダクト部材に設けることができる。